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コンタクトレンズトラブルへの対応(カラーコンタクトレンズを含む)

2018年11月30日 金曜日

コンタクトレンズトラブルへの対応(カラーコンタクトレンズを含む)HowtoDealwithContactLensTroubles佐渡一成*はじめにコンタクトレンズ(以下,CL)を取り巻く問題について,これまでいろいろと対処してきたが,解決されたとはいえない.われわれ眼科医は,CL装用者の眼の安全を守ることを第一に考えて,CLを取り巻く諸問題の解決を図らなければならない.このためにはCL診療の質を向上させることに加えて,販売などに関する問題も解決しなければならない.さらに厚生労働省などにも働きかけを強化する必要がある.本稿では,諸問題の背景から現状を整理し,これらを踏まえて眼科医が行うべき対応について,私見を述べる.ICLを取り巻く諸問題の背景①CLは,ユーザーにとって日用品・生活必需品である反面,高度管理医療機器である.②高度管理医療機器であるにもかかわらず,唯一管理をユーザーに委ねている商品である.③販売店もメーカーも医師の処方を守る法的な義務がない1).④個々の「株式会社の第一の使命は株主への利益還元を最大にすること」である2).⑤CL関連企業では社会的責任(corporatesocialresponsibility:CSR)よりも利益が優先されている.また,法令を遵守するより自分たちの組織が生き残ることが優先される「集団の凝集性」が存在している2).⑥ユーザーとメーカーでは情報量にきわめて大きな格差がある.⑦購入(販売)額は流通経路によって大きく異なっている1,3).⑧CL協会はメーカーや販売店などへの通知の周知や遵守の呼びかけを積極的に行っているが,協会に加入しているメーカーへの指導すらできない2).⑨保健所なども指導を行っているが,局長通知には強制力がないため,効果は認められない.⑩眼科医のCLを取り巻く問題への関心が低いのか,CLトラブルの実情を正確に伝えるためのチャンネルすべてで,眼科医からの報告がきわめて少ない.これでは厚生労働省(厚労省)が問題を過小評価し,有効な対策が遅れるのも無理はない2).II上記の背景が招いている現状①通知を守っていない販売店の乱立:店舗販売(図1)とネット販売(図2,3).②代表症例が示すこと.1)CL処方の禁忌例でも容易にCLが購入できることと国内未承認のカラーコンタクトレンズ(以下,カラーCL)の流通:<症例1>19歳,女子学生のカラーCLによる角膜びらん(図4).メーカーのホームページにはサンドイッチ構造という記載があった.販売していた雑貨店では「当店では装用の指導,処方は一切できません」と記載のある書類*KazushigeSado:さど眼科〔別刷請求先〕佐渡一成:〒980-0021宮城県仙台市青葉区中央2-4-11水晶堂ビル2Fさど眼科0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(41)1489図1通知を守っていない店舗販売図2通知を守っていないネット販売図3受診しなくてもそのままクリックすれば,なんらこれまでと変わらず容易に購入できる状態図4カラーCLによる角膜びらん(2012年11月5日,19歳,女子学生)図5定期検査を受診していればもっと早期に見つかったはずのPPGまたは原発開放隅角緑内障(2017年9月22日,29歳,女性医師)Q5:コンタクトレンズの定期検査を受けていますか(n=59)■受けている■受けていない■受けたり受けなかったり対象:眼科外来・病棟を中心とした病院スタッフ図6眼科・病院スタッフのアンケート結果Q10:定期検査を受けていない理由を教えてください(n=27複数選択可)■定期検査は必要ない■時間がない■検査を受けると費用がかかる■レンズ代金が高い■その他図7定期検査を受けていない理由図8PMDAおよび保健所への報告(FAX)図9国民生活センターへの報告(WEB)図10報告を受理したとPMDAから届いた葉書■用語解説■企業の社会的責任(corporatesocialresponsibility:CRS):「企業が,社会に及ぼす自己の事業のマイナスの影響を最小限にとどめる一方で,プラスの影響を最大化することを確保する経営上の実践である」(カナダ・フィランソロピー・センター)社会心理学でいう「集団の凝集性」:法令を遵守するより優先されるのは,自分たちの組織が生き残ること.集団規範は同調者に対する報酬として機能する一方で,逸脱者に対する制裁機能ももつため,同調圧力に抗して疑問の声を上げることは困難となる.

カラーコンタクトレンズに関する診療のあり方

2018年11月30日 金曜日

カラーコンタクトレンズに関する診療のあり方ClinicalPracticeRelatingtoColorContactLenses宇津見義一*はじめに若い女性にとってカラーコンタクトレンズ(以下,カラーCL)は美容上必須アイテムともなっている.2000年以前からもカラーCLは装用されていたが,その頃のカラーCLはグループIの低含水性2-hydroxyethyl-methacrylate(以下,HEMA)の酸素透過性の低いもので,品質的にも問題があった.2004年2月にグループIVの高含水素材の1日使い捨てタイプのカラーCLの販売が開始された.現在,カラーCLの種類は約400種類にも達しているが,そのほとんどはグループIであり,その品質,不適切な販売と購入,そして不適切な使用法などが大きな問題となっている.日本眼科医会(以下,日眼医)が実施した「平成27年度全国学校現場でのコンタクトレンズ使用状況調査」(2015年)では,カラーCLの使用率は6年間で中学生が25.5倍,高校生が6.5倍に増加した.購入場所では,医師の処方を必ずしも必要としない利便性のよいインターネット・通信販売,雑貨店などが中学生81.4%,高校生68.8%であり,不適切購入・販売・使用と多くの問題を抱えていることが明白となった1).本稿では,カラーCL診療の変遷,学校でのカラーCL使用状況と行政の対応,そしてカラーCL装用者のコンプライアンスと啓発活動などについて述べる.IカラーCL診療の変遷2000年以前からもカラーCLは装用されていたが,その頃のカラーCLはグループIのHEMA素材の透過性の低いもので,品質的にも問題があった.一般眼科医療機関では処方されておらず,そのほとんどがCLの営利的処方,販売を主とする医療機関,販売店,ネット・通販で処方されていた.眼科医はカラーCLによる重症な角膜潰瘍など多くの重症例を経験するとともに,その患者の中にはコンプライアンスが低く,診療態度に問題がある者が少なくなかった.そのためか,眼科医にとって,カラーCLは問題が多く,処方をすることに疑念をもたざるを得なかった.2005~2008年の日眼医による全国調査にてカラーCLによる眼障害が167例報告され,そのうちの21名が失明の恐れがある重症例であった.2009年日眼医のインターネット・通信販売による購入者のCL眼障害調査の種類別では,カラーCLによる眼障害者が全体の45.9%ともっとも高率であった2).種類も視力補正・非視力補正(度なしおしゃれ)用が混在しており,レンズ素材と使用者の低いコンプライアンスが問題となっていた.それに伴い,それまで雑貨扱いであった度なしのカラーCL(非視力補正用CL)が2009(平成21)年11月4日以降は通常のCLと同様に医師の処方が必要な高度管理医療機器となり,2011(平成23)年2月4日以降は薬事法〔現,医薬品医療機器等法(以下,薬機法)〕にて認可されたものでないと販売できないようになった.以後,厚労省は,過去に承認されているCL素材であ*YoshikazuUtsumi:宇津見眼科医院〔別刷請求先〕宇津見義一:〒231-0066神奈川県横浜市中区日ノ出町2-112宇津見眼科医院0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(31)1479れば,色素の有無とは関係なく承認しており,まったく同じカラーCL製品であっても製品名が異なれば,それを別のCLとして承認しているために,現在,400種類にも及ぶカラーCLが販売されている.2011年以前より,CL販売店(ネット・通販を含む)は医師の処方を経ずにCLを販売しても処罰されることがないために,堂々と処方せん不要とする販売を広告している.装用者は低価格で利便性がよく,医師の処方を経なければ診療費もかからないために,そのような販売店で購入する者が増加した.2011年と2015年に日本コンタクトレンズ学会は処方せんの法制化を認めるよう日眼医に要望したが,日眼医は反対していた.2014年の神奈川県眼科医会調査では,神奈川県内8,000名の中高生のCL全種類の購入先は,一般眼科隣接販売店が高校生11.5%,中学生20.0%であり,カラーCLでも同様であり,一般眼科を受診する子どもたちが激減してきていた(宇津見義一,坂本則敏,小口和久ほか:平成26年度神奈川県の学校のコンタクトレンズ・カラーコンタクトレンズ使用調査.第57回日本コンタクトレンズ学会総会一般口演.2015).2016年4月になり,日眼医はやっとCL販売における処方せんの法的規制に同意し,行政への働きかけをしてきたが,罰則がないために現在でも不適正販売の歯止めとはなっていない.II国民生活センターの注意呼びかけ2014年5月22日に国民生活センターはカラーCLの使用について,注意をよびかけた3).2009年から5年間に全国消費生活センターにはカラーCLトラブルの相談が541件あった.カラーCLは酸素の通りにくい素材の使用が多く,着色の影響などにより透明のCLより眼障害が生じやすいため注意が必要であると報告した.薬事法で認可された17製品のカラーCLを調査し,11製品は色素が角膜・まぶたに直接触れていたが,製品表示には内部に色素が封入と記され,6製品はレンズの厚さ,直径,曲率半径,度数などの基準を満たしていなかった.さらに,度数入りのカラーCL16製品のうち,15製品は8時間装用で角膜浮腫,角結膜上皮障害,輪部充血などの治療や使用中止が必要な眼障害を生じた.アンケート調査(10~20代使用者1千人)では,購入先はインターネット通販が約39%,約43%は購入時に眼科を受診せず,眼異常があった約23%のうち半数も眼科を受診しなかったと報告した.カラーCLを使用する場合はそのリスクを理解したうえで,必ず眼科医を受診し,眼科医の処方に従ったレンズを選ぶこと.粗悪品を消費者が見分けることが困難であるため,必ず眼科を受診して眼科医と相談のうえで商品を選んでほしい.異常時は眼科を受診し,異常がなくても必ず眼科医の定期検査の受診を推奨し,業界団体に安全な商品開発を,厚生労働省に業者に品質管理を指導するよう要望など,国民に使用注意のよびかけをした.それに伴い,消費者庁からは2018年5月28日にカラーCLの販売業者に対する指導要請の通知があった4).III学校でのCLの使用状況日眼医の2015年度の調査では,全国の学校の子どもたちのCL使用率は小学生が0.2%,中学生が8.0%,高校生が27.0%である(表1,図1).とくに中学生は年々使用者が増えている.この調査では,使い捨てソフトCL(以下,ソフト)は1日使い捨てソフト,1週間連続装用ソフト,2週間頻回交換ソフト,消毒して1~6カ月使用する定期交換ソフトとの名称を使用しているために,この報告でも同様の名称とした.2015年の調査でのCLの種類は,小中高生ともに使い捨てソフトがもっとも多く,小学生はオルソケラトロジー(以下,オルソK)が15.9%と多く,オルソKガイドラインを守っていないことが危惧された.中高生はソフト通常が使い捨てソフトに続いた(表2).CLの種類の年度別変化では,中高生は使い捨てソフトがもっとも多く,中学生は2000~2012年まで増加したが,2015年は80.3%と低下した.高校生は2000~2009年まで増加したが,2012年以降低下し,2015年は78.6%と低下した(図2).カラーCL使用者では2009年は中学生が0.2%,高校生が0.6%,2015年は中学生が5.1%,高校生が3.9%であり,6年間で中学生が25.5倍,高校生が6.5倍と増加した.とくに中学生に急速に広まっていることが危惧された(図3).2015年カラーCLの種類では,カラーCL1480あたらしい眼科Vol.35,No.11,2018(32)表12015年度全国の学校現場でのコンタクトレンズ使用状況調査2000年調査人数2003年調査人数2006年調査人数2009年調査人数2012年調査人数2015年調査人数102,924名92,797名101,571名99,751名97,233名100,239名44校30校54校55校55校56校小学生19,235名中CL使用者12,714名中CL使用者29,792名中CL使用者30,683名中CL使用者30,194名中CL使用者30,402名中CL使用者31名12名36名53名54名63名(0.2%)(0.1%)(0.1%)(0.2%)(0.2%)(0.2%)61校63校53校54校53校55校中学生33,265名中CL使用者30,627名中CL使用者25,598名中CL使用者26,296名中CL使用者25,555名中CL使用者25,174名中CL使用者1,544名(4.6%)1,727名(5.6%)1,511名(5.9%)1,687名(6.4%)1,877名(7.3%)2,008名(8.0%)56校60校55校53校54校57校高校生50,424名中CL使用者49,456名中CL使用者46,181名中CL使用者42,772名中CL使用者41,484名中CL使用者44,663名中CL使用者11,027名(21.9%)11,492名(23.2%)11,640名(25.2%)11,366名(26.6%)11,484名(27.7%)12,075名(27.0%)各調査年度別の小学生,中学生,高校生の調査対象者とコンタクトレンズ使用者の割合.(文献1より引用)■2015年■2012年■2009年■2006年■2003年■2000年27.0%27.7%高校生中学生小学生図1小中高校生のコンタクトレンズ使用割合と年度別変化(文献1より引用)表22015年度調査でのコンタクトレンズの種類小学生中学生高校生ハード通常0.0%3.8%5.6%ハード連続装用0.0%0.4%0.5%オルソK15.9%1.3%0.2%ソフト通常3.2%9.0%13.1%カラーCL0.0%5.1%3.9%使い捨てソフト81.0%80.3%76.6%この調査では,1日使い捨てソフト,1週間連続装用ソフト,2週間頻回交換ソフト,消毒して1~6カ月使用する定期交換ソフトを総称して「使い捨てソフト」とした.オルソケラトロジーはオルソKと略す.(文献1より改変引用)(%)中学生(%)高校生100100808060604040202000図2中高生が使用していたコンタクトレンズ種類と年度別変化2015年と比較し高校生は使い捨て,ソフト通常,定期交換はすべて有意差あり,*p<0.01,c2検定(文献1より改変引用)20%10%0%図3小中高生カラーコンタクトレンズの年度別変化2015年と比較:**p<0.01,*p<0.05,c2検定(文献1より改変引用)■高校生■中学生カラーCL合計カラーCL(度数入)カラーCL(度数なし)カラーCL(度数入)透明CL併用0%1%2%3%4%5%6%図42015年の中高生のカラーコンタクトレンズの種類(文献1より改変引用)50%40%30%20%10%図52015年の中高生カラーコンタクトレンズ購入場所必ずしも医師の処方に基づかない購入が可能な販売店のインターネット・通信販売と雑貨店・化粧品店・CLショップ・薬局の総計は,中学生が81.4%,高校生が68.8%であった.(文献1より改変引用)■毎日■週3~6日■週1~2日■月1~3日■遊びに行く時高校生図62015年の中高生カラーコンタクトレンズの使用頻度(文献1より改変引用)図72015年の中高生カラーコンタクトレンズ購入時の使用方法の説明(文献1より改変引用)6.0%5.7%3.9%中学生3.5%■眼科を受診しなかった■眼科を受診した高校生■ある■ない高校生中学生中学生図82015年の中高生カラーコンタクトレンズで充血,痛み図92015年の中高生カラーコンタクトレンズの使用を中止で使用を中止した割合(文献1より改変引用)した時の対処(文献1より改変引用)中学生CL全体合併症高校生CL全体合併症中高生カラー合併症カラーCL高校生購入前の検査(2015年)中学生カラーCL高校生購入後の検査(2015年)中学生カラーCL高校生定期検査状況(2015年)中学生33.2%66.8%19.0%81.0%30.5%69.5%14.3%85.7%41.1%36.5%22.3%36.7%36.7%26.7%図102015年の中高生カラーコンタクトレンズ購入前後の検査と定期検査(文献1より改変引用)角膜炎・角膜むくみ角膜のキズ角膜新生血管アレルギー性その他病名不明角膜潰瘍中学生は有意差なし結膜炎18.3%16.4%*0.7%1.0%0.9%43.8%*40.7%37.7%38.1%39.3%*13.9%7.4%10.6%5.3%*角膜炎・角膜潰瘍角膜むくみ角膜のキズ角膜新生血管アレルギー性結膜炎その他病名不明■2009年■2012年■2015年*2p<0.01(2015年との比較,x検定)80.0%(2015年)0%角膜炎・角膜むくみ角膜のキズ角膜新生血管アレルギー性その他病名不明角膜潰瘍結膜炎図112015年の中高生コンタクトレンズ(全体,カラーCL)合併症(複数回答))有効回答数CL全体:中学生211名(10.5%),高校生1,864名(15.4%)カラーCL:中学生5名(4.9%),高校生466名(19.5%)(文献1より改変引用)40%20%0%60%40%20%0%80%60%40%20%表3まとめ(文献1より改変引用)表4平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業「カラーコンタクトレンズの規格適合性に関する調査研究」(文献5より改変引用)売している.また,カラーCLを含むCL使用者は眼科を受診しないでCLを購入している方が増加している.今までの多くのCL(カラーCLを含む)調査ならびに啓発活動が実施されているが,CL販売側とCL使用者のコンプライアンスが改善する見通しはきわめて暗い.罰則を含めた行政の対応が必須である.2016年6月~2017年4月に日眼医と日本コンタクトレンズ学会は共同で,CL処方せん,適正販売などに関する検討会を立ち上げた.オブザーバーとして,日本CL協会とともに厚労省医薬・生活衛生局,医政局と保険局の担当者を迎えて協議した.その後,2017年5月に日本コンタクトレンズ学会,日眼医と日本CL協会は共同でCL処方せんと適正販売についての要望書を厚労省へ提出した.要望の概要は,「CLの不適正な販売に対する罰則規定を定める法律改正」「CL処方せん不要,検査不要の広告等への行政指導を行う通知の発出」「CLに関する話題を提供し,適正販売への一層の注意喚起」などである.その結果,厚労省は2017年6月29日から1カ月間にCL適正販売に対するパブリックコメントを求め,その後に正式な通知を発出する予定とした.2017年9月26日に厚労省医薬・生活衛生局長から「CLの適正使用に関する情報提供等の徹底について」の通知10)が発出された.その概要では,今までの通知ではCL販売・製造販売業者に対しては日本CL協会の販売自主基準の周知徹底を図ることとしているが,今回の通知は,厚労省が自らの基準を守るよう通知しているために,CL販売・製造販売業者がその基準に違反した場合に,都道府県がCL販売の規制ができることであるが,CLの不適正な販売に対する罰則規定は含まれていない.2018年8月現在,CL処方せん不要を広告するなどの不適切販売は収まっていないのが現状である.VカラーCL装用者のコンプライアンスと啓発活動カラーCLを含めてCL装用者のコンプライアンスを改善するためには,啓発活動がある.CLを初めて装用する時期は,前述のように中学生以上が多い1).初めてCLを装用する者に適切な指導があれば,医師の処方を経て,CLを購入し装用するし,医師の指導に従いやすい.さらに将来にわたってCLの基礎知識として記憶に残る.最初に適切な処方を受けないで,数年以上経過し問題がなかった装用者は,説明しても聞こうとしない場合が多くなり,コンプライアンスが低くなる.学校の眼科学校医はCLの健康教育,学校保健委員会などを有効に利用して,子どもたちにCLの基本的な知識を周知すべきである.さらに,保護者,養護教諭などの学校関係者,教育委員会,医師会などへの啓発活動も同様である.横浜市では学校や学校関係者,教育委員会,医師会などCLの啓発活動を積極的に実施してきた(宇津見義一,池田桐子,戸倉純ほか:横浜市中学・高等学校のコンタクトレンズ教育による装用状況の効果.第44回日本コンタクトレンズ学会総会,展示,2001).2000年頃は定期健康診断にて中学生に「CLはトラブルを生じやすいでしょうか」と問うとほとんどが返答できなかった.帰宅したらCLをはずしてメガネを使用するようにと指導しても,怒りだす子どももいた.しかし,啓発活動を実施してからは,それに従う子どもたちがほとんどとなった.学校,地区での啓発活動,そしてマスコミ報道などにより,正しいCLの基礎知識の周知が必要である.もっとも有効な啓発活動はTVなどのマスコミ報道であるが,マスコミ報道が数年ないと再度コンプライアンスは低下する.カラーCLを含むCLのコンプライアンスの向上を図るために日本コンタクトレンズ学会,日眼医,日本CL協会は個々で,さらにその3団体で構成されている日本CL協議会,そして日本学校保健会などの各団体は,今までに学会発表,論文,ポスター,冊子・チラシ,ネットでの注意喚起,メディア(TV,新聞など),学校など地域での啓発活動,そして前述のような行政対応などによっても,コンプライアンスの向上を図ってきたが,その改善はむずかしい.啓発活動は継続的に実施することが不可欠である.現在,費用負担や時間が必要となる医師の処方を受けないCL装用者は激増し,価格が安く,ネットなどで簡単に手に入る利便性に優れた方法で装用しているCL装用者は激増している.CL添付文書には,「定期検査を受けること」と必ず記載されている.「自覚症状がなく装用していても,眼(39)あたらしい眼科Vol.35,No.11,20181487やレンズにキズがついたり,眼障害が進行していることがあります.異常がなくても医師に指示された定期検査を必ず受けてください」と赤字の警告として表紙に記載されている.禁忌として,「医師の指示に従うことができない人」ともある.一方,インターネットの書込みどには,「眼科医は自らの利益のために眼科受診を勧めている」などの主張がある.高度管理医療機器であるCLを安全に使用するには,添付文書のように定期検査は不可欠であることを理解しているのであろうか.VIカラーCLの処方筆者は平成20年(2008年)頃まではカラーCL処方には否定的であった.しかし,一般眼科での処方を拒めば,装用者は医師の処方なしで,不適切な販売所で購入する.CL販売業者は医師の処方は不要であるとして,不適切な販売していることで,さらなる眼障害の増加が懸念されたために,どうしてもカラーCLを希望する場合には処方している.現在,薬機法で認可されたカラーCLは約400品目である.その多くはグループIのHEMA素材であり,前述したように多くの問題点がある.一部,酸素透過性の高い素材のカラーCLもある.筆者は従来からグループIのカラーCLは角結膜上皮への影響が大きいために,酸素透過性の高いグループのカラーCLを処方してきている.筆者らは,グループIのカラーCLを使用していた者が,グループIVのカラーCLに変更すると,著明に角結膜上皮障害が軽減することを報告した(植田喜一,宇津見義一,渡邉潔:カラーコンタクトレンズの安全使用を目指して,日本コンタクトレンズ学会モーニングセミナー講演,2017).以上より筆者のカラーCL処方は,コンプライアンスが保たれている者,酸素透過性の高い素材,1日使い捨てタイプ,1日6~8時間の短い時間での使用を条件に,通常は透明なCLを使用し,カラーCL使用が必要な場合のみの使用を推奨している.カラーCLの使用は美容目的であり,風紀上の問題もあるため学校現場には好ましくないと考える.おわりに「カラーCLの使用は通常のCLに比して眼に負担がかかる.通常のCLは酸素透過性の高い素材が多いが,カラーCLはまったく逆で酸素透過性の低い素材が多くを占めていることに,十分に注意してほしい.現在,装用者のコンプライアンスを上げることが困難となっており,カラーCLを含めて,CL販売には罰則のある行政の積極的な介入が不可欠となっている.文献1)宇津見義一,柏井真理子,宮浦徹ほか:平成27年度学校現場でのコンタクトレンズ使用状況調査,日本の眼科88:179-199,20172)植田喜一,宇津見義一,佐野研二ほか:インターネット・通信販売による購入者のコンタクトレンズ眼障害の集計結果報告(平成21年度).日本の眼科81:75-84,20103)国民生活センター:カラーコンタクトレンズの安全性─カラコン使用で目に障害も─.国民生活センター報道発表資料,平成26年5月22日4)消費者庁消費者安全課長:カラーコンタクトレンズの安全性,消費者庁消費者安全課長通知,消安全第186号,平成26年5月28日5)渡邉潔,植田喜一,佐渡一成ほか:カラーコンタクトレンズ装用にかかわる眼障害調査報告.日コレ誌56:2-10,20146)金井淳,澤充,小野浩一:学校現場でのコンタクトレンズ使用状況調査データの2次解析(分担研究課題),平成26年度厚生科学研究費補助金特別研究事業カラーコンタクトレンズの規格適合性に関する調査研究(H26-特別-指定-009).50-60,平成27(2015)年3月7)厚生労働省医薬食品局長:コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供等の徹底について,厚生労働省医薬食品局長通知,薬食発0718第17号,平成24年7月18日8)厚生労働省医薬食品局長:コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供等の徹底について(再周知).厚生労働省医薬食品局長通知,薬食発0628第17号,平成25年6月28日9)厚生労働省医薬食品局長:コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供等の徹底について(再周知).厚生労働省医薬食品局長通知,薬食発0628第17号,平成26年10月1日10)厚生労働省医薬生活衛生局長:コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供等の徹底について.厚生労働省医薬生活衛生局長通知,薬生発0926第5号,平成29年9月26日1488あたらしい眼科Vol.35,No.11,2018(40)

カラーコンタクトレンズの眼障害

2018年11月30日 金曜日

カラーコンタクトレンズの眼障害OcularComplicationsofColorContactLensWear糸井素純*はじめにソフトコンタクトレンズ(SCL)の素材は低含水性ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyethylmethac-rylate:HEMA),中含水性HEMA,高含水性HEMA,シリコーンハイドロゲルの四つの素材に分けることができる.酸素透過性は低含水性HEMA,中含水性HEMA,高含水性HEMA,シリコーンハイドロゲルの順に高くなる.一般に流通している透明なSCLは高含水性HEMA素材,中含水性HEMA素材,あるいはシリコーンハイドロゲル素材が主流であるが,カラーコンタクトレンズ(以下,カラーCL)は低含水性HEMA素材のものが多い.とくに台湾,韓国で製造され,日本で販売されているカラーCLは,一部の製品を除き酸素透過性が低い低含水性HEMA素材である.日本では低含水性HEMA素材のSCLの歴史は長いため,たとえカラーCLであっても,新たな臨床試験を実施せずに,書類上の手続きだけで高度管理医療機器として承認を受けることができる.多くのカラーCL装用者は,度あり,度なしカラーCLともに,眼科医の処方を受けずに,インターネット,通信販売,雑貨店,薬局,カラコンショップなどでCLを購入している1).近年,とくに非対面販売であるインターネットによる購入が増えている.日本コンタクトレンズ学会が2012年7~9月に実施したカラーCLの眼障害調査によると,インターネット,通信販売,雑貨店,大型ディスカウントショップでのカラーCLの購入が81.0%,購入時に眼科を受診していない人が80.5%と報告された2).国民生活センターが10代,20代のカラーCL使用者に行ったアンケート調査でも,インターネット,通信販売でカラーCLを購入した人が39.2%ともっとも多く,とくに10代では45.6%を占めていた.購入時に眼科を受診していない人も43.5%,10代では52.6%と半数以上を占めた3).現在,流通しているカラーCLで眼科医の処方に基づいて販売されているカラーCLは10品目以下と推測される.トライアルレンズが流通し,眼科医の処方に基づいて販売されているカラーCLの多くは高含水性HEMA,中含水性HEMA,あるいは,シリコーンハイドロゲル素材のカラーCLで,低含水性HEMA素材のカラーCLでは数品目にかぎられる.ほとんどの低含水性HEMA素材のカラーCLは,トライアルレンズが流通していない.低含水性HEMA素材のカラーCL装用者の多くは,眼科医の処方を受けず,レンズの素材やフィッティングなどに左右される安全性を無視して,パッケージやカラーCLを装用しているモデルの写真などをみて,好みのデザインのカラーCLを選択し,インターネットや大型雑貨店で購入している.カラーCL装用者に眼障害が多いことが問題となっているが,中含水性HEMA,あるいは,高含水性HEMA素材のカラーCL装用者の眼障害は,通常の透明なSCL(1日使い捨てSCL,2週間交換SCL)の装用者と眼障害の内容や発症頻度も大きく変わらない印象がある.臨*MotozumiItoi:道玄坂糸井眼科医院〔別刷請求先〕糸井素純:〒150-0043東京都渋谷区道玄坂1-10-19糸井ビル1F道玄坂糸井眼科医院0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(23)1471表1低含水性HEMA素材のカラーコンタクトレンズの問題点図1前眼部OCT(SS.1000)CASIAの2D画像色素が眼瞼側の低含水性HEMA素材のカラーコンタクトレンズの断面像.図2前眼部OCT(SS.1000)CASIAの2D画像色素が角膜側の低含水性HEMA素材のカラーコンタクトレンズの断面像.表2おもな低含水性HEMA素材の従来型ソフトコンタクトレンズの規格販売名含水率(%)中心厚(mm).3.00Dの場合レンズ径(mm)ベースカーブ(mm)シードスカイ37.60.0714.08.4,8.7,9.0クララソフトファシル1437.60.0714.08.1~9.9クララソフトファシル1337.60.1214.07.9~9.3図3低含水性HEMA素材の1日使い捨てカラーコンタクトレンズ装用者にみられた色素の露出による角膜上皮障害図4図3と同一眼図5低含水性HEMA素材の1カ月交換カラーコンタクトレン角膜上皮障害の部位に色素の沈着がみられる.ズ装用者にみられた角膜上皮障害色素による角膜側のレンズ表面の凹凸が原因と考えられた.図6各種カラーコンタクトレンズ装用(8時間)による角膜浮腫の違い左上:非装用.右上:中含水性C1日使い捨てカラーコンタクトレンズ.左下:低含水性C1日使い捨てカラーコンタクトレンズ.右下:低含水性C1カ月交換カラーコンタクトレンズ.図7約1年間の低含水性HEMA素材の1日使い捨てカラーコンタクトレンズ装用者にみられた角膜内皮細胞障害(右).左は正常角膜図8低含水性HEMA素材の1カ月交換カラーコンタクトレンズ装用者にみられた慢性酸素不足が原因と考えられた点状表層角膜症図9カラーコンタクトレンズ装用者にみられた角膜変形カラーCCLの装用歴:13年.上段:初診時(左:instantaneousradiusmap,右:pachymetrymap),下段:SCL装用中止C1カ月後(左:instantaneousradiusmap,右:pachymetrymap)図10低含水性HEMA素材の従来型カラーCL装用者に図11低含水性HEMA素材の1カ月交換カラーコンタクトみられた角膜上皮障害(角膜上方)レンズ装用者にみられた結膜ステイニングタイト症状が原因と考えられた.タイト症状が原因と考えられた.図12低含水性HEMA素材の1日使い捨てカラーコンタクトレンズ装用者にみられた輪部充血タイト症状が原因と考えられた.図13低含水性HEMA素材の1カ月交換カラーコンタクトレンズの短時間(8時間)装用後にみられた角膜変形右:装用前,左:装脱直後.図14低含水性HEMA素材のサークルタイプ1日使い捨て図15低含水性HEMA素材の1カ月交換カラーコンタクトカラーコンタクトレンズ装用者にみられた角膜潰瘍レンズ装用者にみられた角膜浸潤,輪部充血,球結上方の角膜輪部に病変がみられる.膜充血

カラーコンタクトレンズの処方

2018年11月30日 金曜日

カラーコンタクトレンズの処方CosmeticColorContactLensPrescription月山純子*,**はじめにカラーコンタクトレンズ(以下,カラーCL)の処方は,基本的には通常の透明なレンズの処方と同様であるが,カラーCL独特の留意点がいくつかある.色素があるために,透明なレンズよりも処方時に注意すべき点,定期検診時にチェックすべきポイントなどを解説する.また,本来CL処方は視力補正目的であるが,これに美容効果が絡んでくることが,カラーCL処方の面倒臭さであると思う.カラーCLを希望するのは,男性もいるものの圧倒的に女性が多く,若い人が多い.男性医師にとっては,女性の美容に関する熱い情熱は理解しがたいと思われる.筆者は女性であるが,世代がかなり違うので,コミュニケーションに難渋することも多々ある.本稿では,カラーCLを処方する際,男性医師でも対応しやすい方法について筆者なりに考えてみた.IどのようなカラーCLを選べばよいか当然のことであるが,カラーCLであっても透明なレンズと同等の安全性をもつレンズを処方したい.素材については,低含水性ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyethylmethacrylate:HEMA)素材は酸素透過率の低さから避けたい.しかし,パッケージや添付文書,ホームページの製品紹介には低含水性HEMAとは書かれてはいない.見分け方は,含水率が38%前後で,素材のところにはHEMA(2-hydroxyethylmethacry-late),EGDMAあるいは2-HEMA,EGDMA(ethyleneglycoldimethacrylate)と記載されている.EGDMAは架橋剤である.低含水性HEMAは約50年前に開発された素材で,当時は画期的な素材であったが,酸素透過率の低さから,近年,透明なレンズではほとんど使用されなくなっていた.しかし,カラーCLの流行とともに再び復活してきてしまった.汚れにくく安定した素材であるはあるが,シリコーンハイドロゲルレンズなどDk/L値(酸素透過率)が100を超えるようなレンズが主流となってきている現在において,低含水性HEMA素材のDk/L値は6~8程度とかなり低い1).厚みによってはさらに低くなる.雑貨店やインターネット通販などで販売されているカラーCLの多くは,未だにこの素材が使われていることが多い.インターネット通販や雑貨店で購入したカラーCLを使用しており,トラブルを起こして眼科を受診し,トラブルが改善してCLを処方するときに,こちらが勧めるカラーCLに対して抵抗されることも多いが,酸素透過率について説明すると聞き入れてくれることが多い.患者には,「トラブルを起こしたレンズは,約50年前に開発された素材なので,最新のレンズと比べて酸素が1/10~1/20ぐらいしか通りません.酸素が不足すると,角膜の一番内側の内皮細胞という細胞が死んで,残念ながら一生元に戻りません.あなたの細胞の一部もカラーCLによる酸素不足で,すでに死んでしまっています」などと,実際のスペキュラーマイクロスコープの画JunkoTsukiyama:博寿会山本病院眼科,近畿大学医学部眼科学教室**,*〔別刷請求先〕月山純子:〒648-0072和歌山県橋本市東家6-7-26博寿会山本病院眼科0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(17)1465図1各種乱視用カラーCLa,b:厚生労働省承認レンズ.c~f:個人輸入の厚生労働省未承認レンズ.~~図2図1のレンズのシュリーレンスコープ(SLM.20,溝尻光学)による観察a,b:レンズには乱視用のガイドマークがある.c~f:レンズに乱視用のガイドマークがない.図4インターネット通販で購入したカラーCLを装用すると,夜間の運転が困難という訴えで受診した患者のフィッ図3図2cの拡大図ティング切削痕と思われる筋がレンズに入っている.フィッティングが不良である.-a図5カラーCLのフィッティングa:上を見たときにずれる.b:横を見たときにずれる.Ca図6カラーCLをはずした状態でのフルオレセイン染色a:SEALs様の角膜上方の上皮障害.Cb:結膜への圧痕.図7アプリを使ってのシミュレーション画像カラーCCLよりも,髪型を変えたほうが印象が大きく変化する.Ca:元の写真.b:ブルーのオパークレンズ.c:茶色のサークルレンズ.d~f:カラーCCLを装用せず,髪型のみ変更.~

カラーコンタクトレンズの品質

2018年11月30日 金曜日

カラーコンタクトレンズの品質ColoredContactLensQuality植田喜一*はじめにカラーコンタクトレンズ(以下,カラーCL)は若い女性を中心に広がっているが,カラーCLの装用によって眼障害をきたした患者を診ることが多い.不適正な取り扱いが原因のことがあるが,眼所見から明らかにレンズの品質が問題だと推察することもある.そこで,レンズの品質について行われた二つの大規模な調査研究について概説する.I独立行政法人国民生活センターによるカラーCLの安全性の調査研究全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO-NET)にカラーCLに関する相談件数が増加していることに加えて,2012年に実施した日本コンタクトレンズ学会のカラーCLによる眼障害調査の報告から,カラーCLの安全性について国民生活センターと日本コンタクトレンズ学会,日本眼科医会が共同研究を行うことになり,レンズの品質については国民生活センターが試験を実施した.2013年8月にインターネットで「カラーコンタクト通販」と検索して上位に表示された販売サイトやCL専門店のホームページなどを調査して,使用者数が多いと考えられ承認された17製品をテスト対象とした.1日使い捨てタイプが8製品,2週間交換タイプが2製品,1カ月交換タイプが6製品,2週間~1年交換タイプが1製品であった.参考として1年交換の個人輸入の3製品も含まれたが,以下の結果は承認された17製品について述べる.1.直径,ベースカーブ,頂点屈折力,中心厚カラーCLは厚生労働省が定める「ソフト(ハイドロゲル)コンタクトレンズ承認基準」に適合することが求められるが,これらに規定されている事項のうち,直径,ベースカーブ(basecurve:BC),頂点屈折力(レンズ度数)を測定した.参考までに酸素透過率に影響するレンズ中心部の厚さ(以下,中心厚)についても測定を行った.頂点屈折力については許容差を超える製品はなかったが,直径については2製品,BCについては5製品が承認基準の許容差を超えていた.前眼部三次元光干渉断層計(opticalcoherencetomo-graphy:OCT)を用いて中心厚を測定したところ,製品によって差があり,もっとも厚い製品はもっとも薄い製品の2倍程度であった.添付文書に記載していた表示値の2倍程度厚い製品もあった.2.着色の状態の観察レンズの切断面をデジタルマイクロスコープを用いて観察して,着色部分の位置を確認したところ,9製品は角膜側に,8製品が眼瞼側にあった.走査型電子顕微鏡(scanningelectronmicroscope:SEM)で観察すると,着色部分がレンズ最表面に確認されたものは11製品であったが,9製品を提供する企業は着色部分がレンズ内*KiichiUeda:ウエダ眼科〔別刷請求先〕植田喜一:〒751-0872山口県下関市秋根南町1-1-15ウエダ眼科0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(11)1459部に埋め込まれていると反論した.3.レンズケアよる色落ちレンズケアを必要とする9製品について,マルチパーパスソリューション(multi-purposesolution:MPS)で通常のケアをすると,色落ちしたものが1製品あった.II国立医薬品食品衛生研究所によるカラーCLの規格適合性に関する調査研究国としてカラーCLの問題を調べるために規格適合性試験を行った.この研究は平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別事業として,国立医薬品食品衛生研究所(NationalInstituteofHealthSciences:NIHS)が実施したが,日本コンタクトレンズ学会,日本眼科医会,日本コンタクトレンズ協会も協力した.国民生活センターが対象とした承認レンズ17製品に,個人輸入の1製品を加えた18製品について試験を行った.1.直径,BC,頂点屈折力,中心厚レンズの規格の測定についてはその条件や装置によって異なることから,企業が指定している標準作業手順書(standardoperatingprocedure:SOP)に準拠(承認申請用)して行った試験(企業SOP法)に加えて,企業が指定する条件(溶液組成,温度,時間など)に従ってレンズを膨潤させてNIHSが所有している装置を用いた試験(NIHS-SOP法)と,企業指定の膨潤液がリン酸緩衝生理食塩液(phosphatebu.eredsaline:PBS)の場合にはNIHSが所有している装置を用いた試験(NIHS-PBS法)の3種を実施した.このNIHS-PBS法は国民生活センターが実施した試験に近いものである.a.企業SOP法による試験(対象は10製品)直径,BC,頂点屈折力,中心厚ともに基準値を逸脱する製品は認められなかった.b.NIHS.SOP法による試験(対象は8製品)頂点屈折力については8製品ともに適合した.一方,直径については6製品が適合したが,1製品については基準値をわずかに逸脱する検体が,残りの1製品についてはすべての検体が基準値を大きく逸脱していた.中心厚については投影法を行った8製品のうち3製品が基準値を超える検体があり,そのうち大きく逸脱した1製品についてはゲージ法を行っても基準値を大きく超えていた.c.NIHS.PBS法による試験(対象は18製品)頂点屈折力については18製品ともに適合した.一方,直径については3製品が基準値を下回っており,そのうち1製品が大きく逸脱していた.BCについては2製品が基準値を下回っており,そのうち1製品は上述した直径と同様に大きく逸脱していた.中心厚については投影法では基準値を超える検体が5製品あり,ゲージ法を行っても2製品が超えており,そのうち1製品は大きく超えていた.2.色素局在解析カラーCLの製造工程は,①ポリマー層形成→色素印刷→モノマー充.→重合,②モノマー充.→色素印刷→モノマー充.→重合,③色素印刷→重合→モノマー充.→重合,④色素印刷→モノマー充.→重合の四つに大別される.①の工程による製品はサンドイッチ構造を有するといわれるが,その構造が明らかではない製品がある.形成されるポリマー層の厚さが不均一であることが原因と考えられる.色素の局在をみるために光学顕微鏡観察,OCT解析,共焦点蛍光顕微鏡(Z-Stack)解析,SEM解析,X線光電子分光解析,エネルギー分散型X線解析,飛行時間二次イオン質量(TOF-SIMS)解析が検討された.色素成分がモノマーと混合されて色素上にポリマー被膜が存在する場合には,理論的に考えられるもっとも薄い被膜はナノメータ(nm)オーダーの単分子膜になるため,これを検出するにはTOF-SIMSがもっとも有用と考えられた.一方,OCT解析はカラーCLを切断せずに簡便に色素の分布状態が確認できるので,臨床的に活用できる.Z-Stack解析は色素局在の深度(レンズ表面からの距離)が測定できるというメリットがある.これらの特徴を表1に示す.a.光学顕微鏡検査と共焦点蛍光顕微鏡(Z.Stack)による解析解析結果は次のグループに分けられた.①色素が観測視野のすべてまたは一部でレンズ内に包1460あたらしい眼科Vol.35,No.11,2018(12)表1色素局在解析法の特徴分類解析方法破壊・非破壊測定深度単分子層の存在の有無の判定理由光干渉断層計(OCT)解析非破壊─×解像度不足形態観察共焦点蛍光顕微鏡(Z-Stack)解析非破壊─×解像度不足切片化/光学顕微鏡観察破壊─×解像度不足走査型電子顕微鏡(SEM)/形態観察破壊─×形態変化の可能性X線光電子分光(XPS)分析破壊数nm~10nm×感度不足元素解析走査型電子顕微鏡(SEM)/エネルギー分散型X線(EDX)分析破壊1um×測定深度が単分子層の厚さを超えている飛行時間二次イオン質量(TOF-SIMS)分析破壊1-3nm〇単分子層の厚さの範囲内で解析可能(平成26年度総括・分担研究費より引用)・色素成分はモノマーと混合されて印刷されるため,色素上にポリマー被膜が存在する可能性がある(理論的に考えられるカラーCLの最表面のもっとも薄い被膜はポリマー分子一層からなるnmオーダーの単分子膜).・光学的顕微鏡観察,OCT解析,Z-Stack解析では色素の分布状態を確認できる.Z-Stack解析では色素の存在深度(表面から1um以内)を数値化できる.・XPS解析は測定深度が数~10nm程度であるが,色素成分(数+ug/レンズ)を検出するためには感度が不十分である.・SEM/DEX解析はumオーダーの測定深度であるため,nmオーダーの単分子膜の存在を否定できない.・TOF-SIMS解析の測定深度は1~3nmであり,感度も高いので,色素の露出状況を科学的に判定するもっとも優れた手法である.表2Z.Stack解析により測定した各製品のレンズ表面からの色素局在深度レンズNo.焦点位置のズレ(枚数)表面からの距離(um)色素局在レンズNo.焦点位置のズレ(枚数)表面からの距離(um)色素局在1575.7レンズ内10-7-0.7表面付近210.1表面付近11-16-1.6レンズ外3-6-0.6表面付近12-10-1表面付近4-8-0.8表面付近13-30-3レンズ外5-2-0.2表面付近14-12-1.2表面付近6-10-1表面付近15-1-0.1表面付近710.1表面付近16434.3レンズ内8-11-1.1表面付近17-10-1表面付近9-9-0.9表面付近18181.8レンズ内(平成26年度総括・分担研究費より引用)黒色黒色赤褐色測定領域①測定領域②x102Ti+x103Fe+5002.05004001.8400黒色1.21.00.83001.6300赤褐色1.00.80.60.40.6C4H8+2001.42000.4C3H4O+1001.21000.20.201.000.0mm0400mm040047.8547.9548.0548.1555.9556.0056.05m/z47.94,i+m/z55.93,e+Mass(u)Mass(u)MC:1;TC:2.043e+003MC:17;TC:4.135e+004T200F200図1TOF.SIMS解析における典型的な陽性例金属色素(Fe,Ti)がレンズ表面下のきわめて浅い位置(3nm以内)に存在すると考えられる.(平成26年度総括・分担研究費より引用)表3TOF.SIMS解析結果レンズNo.色素面色素検出の有無検出された色素成分(検出部位)レンズNo.色素面色素検出の有無検出された色素成分(検出部位)12まぶた側角膜側××─#1Fe(全体)1011まぶた側角膜側〇〇Ti(褐色),sigmentoBlue15(黒色)Fe(黒色)3角膜側〇Ti(赤褐色),Fe(赤褐色)12角膜側×─4まぶた側△#2Fe(全体),PigmentBlue15(褐色)13まぶた側〇Fe(黒色)5角膜側×─14角膜側×─67まぶた側角間側△〇Fe(全体),スルホン酸#3Ti(赤褐色),Fe(赤褐色)PigmentYellow139(褐色)1516角膜側まぶた側〇×PigmentoYellow139(赤紫色)─89角膜側まぶた側×〇─#3Ti(全体),Fe(全体)PigmentBlue15(おもに紫色)17まぶた側〇Fe(黒色)#1Feがわずかに検出されたが,n=2で再現していない.(平成26年度総括・分担研究費より引用)#2光学顕微鏡で観察される色素の分布とFeの分布は一致していない.#3非常に少ない._

カラーコンタクトレンズの種類

2018年11月30日 金曜日

カラーコンタクトレンズの種類CosmeticSoftContactLensClassi.cations東原尚代*はじめにカラーコンタクトレンズ(以下,カラーCL)は女性に圧倒的な人気があり,お洒落アイテムの一つとして広く使われている.2009年に非視力補正用(度なし)CLが高度医療管理機器に指定され,カラーCLも薬事法で規制されるようになったが,現在もインターネットや雑貨店などで簡単にカラーCLを購入できる状況であり,市場に出回るカラーCLの数・種類を把握することは困難である.そこで本稿では,承認カラーレンズに焦点を当て,「トライアルレンズがなく眼科医の診察なしで購入されるカラーCL」と,「眼科医療機関で取り扱うカラーCL」に大別して考えることにする.Iなぜカラーコンタクトレンズは増えるのか現在,承認されたカラーCLは把握できないほど無数に存在する.その背景として,メーカーが工場をもたずに商品を企画して,製造を別会社に委託して生産を行っている点があげられる.1種類のカラーCLが承認されるとする.すると,同素材のカラーCLであれば,新たな商品もサブ番号のみ異なる形で承認されていく(図1)1).つまり,商品名は違っても元をたどれば同じ種類のCLであり,表現型を変えて同じ素材のカラーCLが市場に出回わるという図式である.インターネットや雑貨店で購入できるカラーCLの多くがこのタイプに該当し,パッケージや色素デザイン,商品名が次々に変わりながら,販売終了と新発売を繰り返すことでカラーCLは増え続ける.IIカラーコンタクトレンズ市場におけるODM,OEMインターネットや雑貨店で入手できるカラーCLの製品情報をみると,製造元と販売元が異なることが多い.「ODM」とは,IT用語辞典(http://e-words.jp/)によるとoriginaldesignmanufacturingの略語であり,製品の受注生産をさす.おもに発注元企業のブランド名で販売される製品の企画や設計,製造までを行う.カラーCLの場合,ODM企業も自社製品をもって販売していることが多いが,自社製品として掲載していないカラーCLも製造元をたどるとこれらの企業に行きつく(表1).実際,ODM企業のホームページ(HP)には,異なる発注企業(販売元)の商品が数多くラインナップされている(表2).また,驚くことに,カラーCLの商品化までの流れが明記され,「独自のプライベートブランドとしてカラーCLを商品化しませんか?」と受注生産を誘う文言が記載されている.一方,「OEM」とは,originalequipmentmanufac-turingまたはoriginalequipmentmanufacturerの略語で,製品の企画や設計,開発などを原則として発注企業(販売元)で行い,ODM生産で納品された商品を独自のプライベートブランドとして取り扱い,自らの営業・販売ルートで顧客へ販売する.事業生産コストを削減するために製品をほかの国内企業や海外企業に委託すれば,*HisayoHigashihara:ひがしはら内科眼科クリニック〔別刷請求先〕東原尚代:〒621-0861京都府亀岡市北町57-13ひがしはら内科眼科クリニック0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(3)1451例アルファコーポレーション(テクノメディカル,メリーサイトが承継)医療機器センターホームページ371商品目(55承認)2010年10月5日~2014年6月12日単回使用非視力補正用色付CL承認番号16桁(一連番号とサブ番号)新承認番号は,承認した年,厚生大臣承認か知事承認かの別,承認の種類(国産か輸入かの別),当該年における承認一連番号,およびサブ番号の組み合わせとする.例20900BZZ01234000年大臣種類一連番号サブ番号承認番号商品名22200BZX00842000ワンデーアイ22200BZX00842A01ミセマスカラー22200BZX00842A02コイワナワンデー22200BZX00842A03ハニートラップワンデー22200BZX00842A04ビーハートビーワンデー22200BZX00842A05ベビークイーンワンデー22200BZX00842A06トゥインクルビーワンデー22200BZX00842A07ガンリキクイーンワン22200BZX00842A08トゥインクルカラーワンデー22200BZX00842A09フラッシュレーベル1製品の状況が把握しにくい図1カラーコンタクトレンズの承認番号はじめに承認を得たアルファコーポレーションの1日使い捨て度なしカラーCLがテクノメディカル,メリーサイトにより継承される.9種類の商品目が加わっているが,サブ番号が異なるだけで元は同じ1種類のレンズであることがわかる.(文献1より引用)表1カラーコンタクトレンズの製造会社一覧筆者が調べたところ,市場に出回るカラーCLは表に示す製造元に行きつくことが多かった.アイクオリティ株式会社株式会社ティー・アンド・エイチ株式会社シーンズエイショウ光学株式会社株式会社アジアネットワークスメリーサイト株式会社株式会社I・VICEPegavisionJapan株式会社フロムアイズ株式会社株式会社ElDorado株式会社シンシア株式会社アイセイPIA株式会社株式会社フロンティアステージ株式会社アイレhttp://eyequality.JP/http://tandh.co.jp/?page_id=39https://scenes.co.jp/business/eyecare-and-beauty/http://www.hydron-japan.com/http://www.asia-networks.co.jp/productshttp://ms2012.jp/index.htmlhttp://i-vice.jp/http://www.pegavision.com/jp/index.phphttp://refrear.jp/aboutus/http://www.eldorado2007.co.jp/http://www.sincere-vision.com/http://www.aiseis.jp/index.phphttps://www.pia-corp.co.jp/http://fstage.jp/http://aire-cl.com/表2ODM企業のホームページに紹介されているカラーCLラインナップ(一例)異なる商品名で多くのカラーCCLが販売されるが,製品はすべて同じ製造元(ODM企業)で造られているのがわかる.承認番号下3桁(サブ番号)以外は同じであり,一つの承認番号で多くのカラーCCLの商品目が加わっていることがわかる.商品名製造元販売元承認番号エンジェルカラーデイリーズフラワーアイズワンデーアンヴィーセクシービジョンワンデーCaリッチベイビーワンデーシジーナDAZZSHOPカラーコンタクトレンズCONEDAYベビーアイズワンデージーヴルアシストシュシュCHANABIワンデー株式会社アジアネットワークス株式会社アジアネットワークス株式会社アジアネットワークス株式会社アジアネットワークス株式会社アジアネットワークス株式会社アジアネットワークス株式会社アジアネットワークス株式会社アジアネットワークス株式会社アジアネットワークス株式会社アジアネットワークス株式会社CT-GardenC株式会社ビューフロンティアC株式会社ジャパンゲートウェイC株式会社ベルC株式会社ノベルフォースC株式会社アジアネットワークスC株式会社エステティクスC株式会社CdazzyC株式会社CANWC株式会社エヌ・アイ・アイC22600BZX0001100022600BZX00011A0122600BZX00011A0222600BZX00011A0322600BZX00011A0522600BZX00011A0622600BZX00011A0822600BZX00011A0922600BZX00011A1222600BZX00011A16カラーCLのOEM企業図2カラーCLにおけるODM企業とOEM企業の関係カラーCCLを受注製造するCODM企業とともに,発注するCOEM企業が増えている.ODM企業の主力製品は透明なCCLではなくカラーCCLである.また,OEM企業はカラーCCLだけでなく,ヘアケア用品や化粧品を取り扱うことが多い.表3視力矯正用クリアCLを主力とするメーカーが発売するカラーCL一覧商品名ワンデーアキュビューディファインモイスト2ウィークアキュビューディファインCJILLSTUARTC1dayUVCEyeco.ret1dayUVヒロインメイクC1dayUVCPlusmodeC1-DayHommeメーカージョンソン・エンド・ジョンソンシード使用方法1日終日装用2週間終日装用1日終日装用枚数1色30枚入り1色6枚入り1箱30枚入り(トライアルレンズ1箱C10枚入り)1色C30枚入り,1色10枚入り1色30枚入り1色30枚入り製造方法SSM製法キャストモールド製法キャストモールド製法素材Ceta.lconAC2-HEMA,MAA,ECDMA,TMPTMA2-HEMA,EGDMA含水率58%58%38%CBCC8.5CmmC8.3CmmC8.7C8.7パワー+1.00,+0.50,C±0.00C‘.0.50.C.6.00(C0.25ステップ)C.6.50.C.9.00(C0.50ステップ)C±0.00,+0.50,+1.00C‘.0.50.C.6.00(C0.25ステップ)C‘.6.50.C.9.00(C0.50ステップ)C±0.00D,C.0.25D.C.6.00D(C0.25ステップ)C.6.50D.C.10.00D(C0.50ステップ)C±0.00,C.0.50.C.6.00(C0.25Dステップ),C.6.50.C.12.00(C0.50Dステップ)C±0.00,C.0.50.C.6.00(C0.25Dステップ),C.6.50.C.10.00(C0.50Dステップ)CDIAC14.2CmmC14.0CmmC14.2CmmC14.0Cmm中心厚*C0.084CmmC0.08CmmC0.05CmmDk値C28C19.73C12CDk/LC33.3C24.6C24FDA分類グループCIVグループCIVグループCICUVカットありあり(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)ありカラーCNaturalCShineCVividCAccentCRadiantCBrightCRadiantCCharmCRadiantCSweetCRadiantCChicCVividフローラルピンクC/オートクチュールオリーブC/ブリリアントブルーCBasemakeCNaturalmakeCRichmakeCHeroinebrownヒロインブラウンforビジネスforプライベート環状着色外径C12.7C12.8C12.5C12.7C12.7C12.7C12.7C12.8C13.6C12.8C13.0C13.2C13.4C13.5環状着色内径C6.6C6.2C8.7C6.7C6.5C6.9C6.4C6.2C6.6C7.3C7.0C7.0C7.0C7.2商品名フレッシュルックデイリーズイルミネートエアオプティクスブライトC/カラーズフレッシュルックデイリーズボシュロムメダリストナチュレールスターリーメニコンC2WeekRayメーカー日本アルコンボシュロム・ジャパンメニコン使用方法1日終日装用シリコーンハイドロゲル素1日終日装用1日終日装用1日終日装用2週間終日装用枚数1色C10枚入り,1色C30枚入り1箱6枚入り1色10枚入り1色30枚入り1色10枚入り1色6枚入り製造方法モールド製法CDSMモールド製法素材Cnel.lconACLotra.lconBCnel.lconACHila.lconBC2-HEMAEGDMA含水率69%33%69%59%38%7200%CBCC8.6CmmC8.6C8.6CmmC8.6mm4mm,8C.6mm,C8.8CmC8.6パワー0.00D.C.6.00D(C0.25Dステップ)C.6.50D.C.8.00D(C0.50Dステップ)0.00D.C.6.00D(C0.25Dステップ)C.6.50D.C.8.00D(C0.50Dステップ)0.00D.C.6.00D(C0.25Dステップ)C.6.50D.C.8.00D(C0.50Dステップ)C±0.00C.0.25.C.6.00(0C.25Dstep)C.6.50.C.9.00(0C.50DStep)C±0.00C.0.50.C.6.00D(C0.25ステップ)C.6.00.C.10.00(C0.50ステップ)C±0.00,C.0.25.C.6.00D(C0.25ステップ)C.6.00.C.10.00(C0.50ステップ)CDIAC13.8CmmC14.2C13.8CmmC14.2Cmm14.20.C14.60CmmC14.5Cmm中心厚C0.10CmmC0.08C0.10CmmC0.090.07.C0.12C0.11CmmDk値C26C112C26C22C9C34CDk/LC26C138C26C24.4C12.9C31FDA分類グループCIIグループCIグループCIIグループCIIグループCIグループCIIUVカットなしC─なしなしなしなしカラージェットブラックリッチブラウンライトブラウンエアオプティクスブライトピュアヘーゼルC/グリーン/グレー/ブルーピュアブラックエレガントブラウンマイルドブラックヌーディーブラウン環状着色外径C12.6C─C12.8C12.5C12.7C13C13.1C13.3環状着色内径C6.3C─C5.4C8.2C8.25.5.C5.8CmmC7C7Dk:C×10.9(cmC2/sec)・(mlOC2/ml×mmHg)Dk/L:C×10.11(cmC2/sec)・(mlOC2/ml×mmHg),UVカット:メーカーからの公開情報(HP・製品カタログ)においてCUVカットの記載の有無.*中心厚は.3.00Dでの計測値.商品名ワンデーアキュビューディファインモイストJILLSTUART1dayUVEyeco.ret1dayUVメーカージョンソン・エンド・ジョンソンシードデザイン商品名フレッシュルックデイリーズイルミネートエアオプティクスブライトカラーズボシュロムメダリストナチュレールメニコン2WeekRayメーカーアルコンボシュロム・ジャパンメニコンデザイン図3眼科医療機関で取り扱う代表的なカラーCL多くがCenhanceタイプであるが,製品によって着色デザイン(模様)や着色径が異なる(図はすべて各メーカーからの提供で,商品の一つを提示).a.着色部分がレンズ最表面に確認された銘柄の例(No.1)表面着色部分透明部分着色部分透明部分断面透明部分着色部分を最表面に確認50mm10mmb.着色部分がレンズ最表面に確認されなかった銘柄の例(No.4)表面着色部分がレンズ内に埋め込まれている断面50mm10mm透明部着色部50mmc.アイコフレの走査型電子顕微鏡(SEM)像着色顔料はレンズ素材でラミネートされており,表面に露出していない,観察時の乾燥で,ラミネートしている薄いレンズ素材に皺が形成されている.図4カラーコンタクトレンズの色素の分析インターネットや雑貨店で購入できるカラーCCL(Ca)は色素がレンズ表裏面にプリントされていることが多いが,眼科医療機関で取り扱うカラーCCL(Cb,c)は色素が埋没しているかラミネートされたものである.(a,bのC4枚は文献C4より引用したCCL断面像,cは文献C7より引用したCCL表面からの観察)図5カラーCLのパッケージ外観(例)カラーCCLを好む多くのユーザーが女性であることから,花柄の優しく可愛らしい絵柄になっている.(メニコン,シードからの提供)

序説:カラーコンタクトレンズの今を知る

2018年11月30日 金曜日

カラーコンタクトレンズの今を知るTheActualStateofColorContactLenses植田喜一*小玉裕司**カラーコンタクトレンズ(以下,カラーCL)は白子症,虹彩欠損症や無虹彩症などの虹彩異常眼,角膜混濁や角膜白斑などの角膜異常眼の整容補正,羞明防止を目的として開発されたが,その後に美容(おしゃれ)を目的としたものが製品化されるようになった.屈折異常の矯正を目的としない(非視力補正用,度なし)CLは,高度管理医療機器ではなく雑貨品としてとらえられていたが,2009年の「薬事法施行令の一部を改正する政令」で,非視力補正用CLは高度管理医療機器に指定されたので,おしゃれを目的とした度なしカラーCLも薬事法(現行の医薬品医療機器法)で規制されることになった.現在,多くのカラーCLが販売されており,装用スケジュールから1日交換型,2週間交換型,1カ月交換型,従来型が,着色のタイプから虹彩の色を大きく変化させるものと,わずかに変化させるもの(いわゆるサークルレンズ)がある.一方で,整容を目的とした虹彩付きレンズもある.眼科医はメーカーから提供されたトライアルレンズを使用してカラーCLを処方するが,トライアルレンズを提供されていない製品も多い.カラーCL希望者はインターネット販売や雑貨店などで眼科医の知らない製品を購入していることもしばしばである.こうした現状では眼科医はカラーCLの種類について知らないことがあると思われる.そこで,東原尚代先生にカラーCLの種類について述べていただいた.日本コンタクトレンズ学会が2012年7.9月の3カ月間にカラーCLによる眼障害調査を実施したところ,395例の報告があり,点状表層角膜症,アレルギー性結膜炎,毛様充血,角膜浸潤,角膜びらんなどの眼障害が多かった.日本コンタクトレンズ学会,日本眼科医会,国民生活センターによる共同研究で,カラーCLの品質について調べたところ,サイズ,ベースカーブ,厚みに問題がある製品や着色部分がレンズの最表面に確認された製品がみられた.メーカーの広告には色素がレンズ内部に埋め込まれている(サンドウィッチ構造)と表示されていても,レンズ表面に漏出していると推察される製品があった.こうした問題を背景にして,平成26年度厚生労働省科学研究費補助金特別研究事業として「カラーコンタクトレンズの規格適合性に関する調査研究」が行われた.一連の調査に関与した植田喜一がカラーコンタクトレンズの品質についてまとめ,カラーコンタクトレンズの眼障害については糸井素純先生に調査結果をわかりやすくまとめていただいた.カラーCLによる不調を訴えて来院した患者を診*KiichiUeda:ウエダ眼科**YujiKodama:小玉眼科医院0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(1)1449

視能訓練士の関与が乳幼児健康診査視覚検査(三歳児眼科健診)の結果に及ぼす影響

2018年10月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科35(10):1440.1443,2018c視能訓練士の関与が乳幼児健康診査視覚検査(三歳児眼科健診)の結果に及ぼす影響蕪龍大*1,2竹下哲二*2盧渓*1加藤貴彦*1*1熊本大学大学院生命科学研究部公衆衛生学分野*2上天草市立上天草総合病院眼科CIn.uenceofOrthoptistonOphthalmologicalExaminationinInfantHealthCheckupRyotaKabura1,2),TetsujiTakeshita2),XiLu1)andTakahikoKatoh1)1)DepartmentofPublicHealth,FacultyofLifeSciences,KumamotoUniversity,2)DepartmentofOphthalmology,KamiamakusaGeneralHospitalC目的:三歳児を対象に行われる乳幼児健康診査の視覚検査(以下,三歳児眼科健診)は,検査項目や検査実施者などに関する規定がなく,自治体間で統一が図られていない.視能訓練士(orthoptist:ORT)が三歳児眼科健診に従事した場合の健診内容や結果について検討した.対象および方法:2012年C4月.2017年C3月に,ORTが三歳児眼科健診に従事しているCA市としていないCB市で三歳児眼科健診を受診したそれぞれC955名とC3,091名を対象とした.両市の健診結果および精密検査としての医療機関の受診結果を比較検討した.結果:要精密検査と判定された児の割合はA市が有意に高かった.斜視疑いとされた割合はCA市が有意に高く,精密検診を受診した割合もCA市が有意に高かった(すべてp<0.05).結論:精密検診を受診した児の割合がCA市のほうが高かったのはCORTが保護者に説明を行い,受診を促したためと考えられた.ORTが従事する三歳児眼科健診は精度が上がることが示唆された.CPurpose:AlthoughJapan’sinfanthealthcheckupfor3-year-oldchildrenincludestheophthalmologicalexami-nation,thereisnochecklistandnoclearrulesforinspectionoperators,norisuni.cationachievedbetweenlocalgovernments.Ourpurposeistocomparethedi.erente.ectsofcheckupwithandwithoutorthoptist(ORT)ineyescreeningfor3-year-oldchildren.SubjectsandMethods:Atotalof9553-year-oldchildreninA-city(ORTpar-ticipation)andC3,091C3-year-oldCchildrenCinB-city(ORTnonparticipation)duringC.scalCyears2012-2016(AprilC1.MarchC31CinJapan)wereCinvestigated.CTheC.rstCandCsecondCpartsCofCtheCeyeCscreeningCcheckupCresultsCwereCcompared.CResults:InCtheCeyeCscreeningCforC3-year-oldCchildren,CACcityCshowedCaChigherCpercentageCofCchildrenCwhoCrequiredCpreciseCexamination.CSimilarCresultsCwereCobservedCinCtheCrateCofCsuspectedCstrabismusCandCofCdetailedexaminationinAcity(allp<0.05).Conclusion:AstothehigherrateofdetailedexaminationinAcity,weCbelieveCthisCisCbecauseCinCACcityCtheCORTCgaveCanCexplanationCtoCtheCguardianCandCurgedCconsultation.CThisCresultsuggeststhatophthalmologicexaminationof3-year-olds’eyesbyORTcanimproveexaminationaccuracy.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)35(10):1440.1443,C2018〕Keywords:三歳児眼科健診,視能訓練士,三歳児眼科健診マニュアル.eyescreeningcheckupfor3-year-oldchildren,orthoptist,eyescreeningcheckupfor3-year-oldchildrenmanualCはじめに1992年,母子保健法の規定により三歳児を対象とした乳幼児健康診査視覚検査(以下,三歳児眼科健診)が全国導入され,1997年には事業主体が都道府県から各市町村に移管された1).問診票に各家庭で事前に測定した視力の結果を記入する欄があり,児と保護者は健診当日までに家庭で視力検査を行ってから健診に臨む必要がある.これを一次健診としているが,視力検査に不慣れなため苦慮したという保護者が多い2).健診会場で行われるスクリーニング検査が二次健診となり,一般にはこの二次健診のことを三歳児眼科健診とよぶ.ORTが従事する場合は『三歳児眼科健診マニュアル』(第一版)3)に則って,視力検査,屈折検査,両眼視機能検査,〔別刷請求先〕蕪龍大:〒866-0293熊本県上天草市龍ヶ岳町高戸C1419-19上天草市立上天草総合病院眼科Reprintrequests:RyotaKabura,CO.,KamiamakusaGeneralHospital,1419-19RyugatakemachiTakado,Kamiamakusa-shi,Kumamoto866-0293,JAPANC1440(128)眼位検査,眼球運動検査のC5項目の検査を行い,視機能の発育を妨げる要因の有無を総合的に評価している4).ORTが従事していない場合は保健師が視力検査を行っている場合が大半を占めるが,5項目すべての検査を行っている自治体は少なく,一次健診で視力良好だったと保護者から申告があれば二次健診では再検査を行わない自治体や,検査に不慣れな検査員が二次健診で視力検査を行っている自治体も存在する.そのため自治体間で健診の精度に差が生じている.筆者らの以前の調査5)によれば,一次健診で視力検査を行ってこなかった保護者がC4割を超えており,自治体によっては異常を検出されずに見逃されている児が多数存在する可能性がある.三歳児眼科健診にCORTが従事することによって,異常検出率や異常検出の正確さが上がるかについて検討した.また,要精査とされた児の精密検診の受診率が上がるかについても検討した.なお,「健診」と「検診」の使い分けについて明確に定義した文献は存在しない.本報告においては日本視能訓練士協会の慣習に従い,乳幼児健康診査については「健診」,眼科検査を指す場合については「検診」と使い分けることにした.CI対象および方法2012年4月.2017年3月の5年間にORTが三歳児眼科健診に従事したCA市C955名とCORTが従事していないCB市3,091名のC3歳児を対象とした.A市では対象児全員に視力検査,屈折検査,両眼視機能検査,眼位検査,眼球運動検査を行い,いずれか一つでも三歳児眼科健診マニュアルに記載されている基準を満たしていない場合は要精査と判断している.要精査とされた児についてはCORTから保護者に対して検査結果についての説明を行い,精密検査の受診の重要性を伝えた.視力検査はC2.5Cmの距離にて最初に字一つCLandolt環を用い,検査理解不十分の場合は絵視標を用いた.屈折検査は手持ちオートレフ(WelchCAllynR社CShureSightCTMVisionScreener)および検影法を用いて行った.両眼視機能検査にはCLANGstereotestIを用い,眼位検査にはCHirsch-berg法と遠見および近見の定性的眼位検査を行った.B市は一次健診に視力検査未施行もしくは検査不十分児に対してのみ,担当保健師がC2.5Cmの距離での絵視標による視力検査を行っている.Landolt環は用いていなかった.また,精密検診受診の指導なども行っていなかった.本調査で用いたデータは各市役所より,特定の個人を識別することができないよう匿名化されたもの(特定の個人を識別することができないものであって,対応表が作成されていないもの)を提供してもらい,要精査者数,精密検査受診者数,精密検査結果の情報を得た.統計解析にはCSPSSCVer.22を用いた.PearsonC’sCChi-squaredtestとCFisher’sexacttest(すべてのセルがC10未満である場合)を用い,p<0.05を統計学的に有意とした.本調査は熊本大学大学院生命科学研究部の倫理委員会の承認(2017年C10月C12日,倫理第C1461号)を得ている.CII結果要精査と判定された児の割合は,A市がC9.2%(88名),B市がC1.3%(39名)で,要精査と判定され精密検査として医療機関を受診した児のうち,要経過観察・治療とされた割合はCA市C68.0%(60名),B市C25.7%(10名)でCA市が有意に高かった(p<0.05).二次健診で要精査となったが医療機関では異常なしと判断された割合は,A市C16.0%(14名),B市C41.0%(16名)でCB市が有意に高かった.要精査とされながら精密検診を受診しなかった児は,A市C16.0%(14名),B市C33.3%(13名)でCB市が多かった(すべてCp<0.05)(表1).要精査と判断された検査項目は,A市では屈折異常がもっとも多くC75.0%(66名),続いて視力不良C10.2%(9名),斜視C11.4%(10名)の順だった.B市では屈折検査を行っていないため屈折異常はC0.0%(0名)と該当児がなく,視力不良のC74.4%(29名)がもっとも多く,続いて斜視がC23.1%(9名)だった(図1).このうち斜視について内訳をみると,A市では間欠性外斜視疑いC8名,内斜視疑いC2名だった.一方CB市では内斜視疑いC6名,不明な眼位異常がC3名だった.精密検査の受診結果はCA市ではC10名中C8名が受診し,間欠性外斜視C5名,内斜視C1名,異常なしC2名という結果だった.B市ではC9名中C8名が受診し,全員が異常なしとされた.二次健診と精密検査の結果の一致率はCA市が有意に高かった(p<0.05)(表2).表1二次健診結果と精密検査結果A市(ORT有)B市(ORT無)p値健診結果Cn=955Cn=3,091異常なし867(C90.8%)C3,052(C98.7%)要精査88(9C.2%)39(1C.3%)<C0.0001*精密検査結果Cn=88Cn=39異常なし14(C16.0%)16(C41.0%)C0.0032*要経過観察・治療60(C68.0%)10(C25.7%)<C0.0001*未受診14(C16.0%)13(C33.3%)C0.0348**Pearson’sChi-squaredtest(<0.05).ORT:視能訓練士(orthoptist)3.4%(3)2.6%(1)0.0%(0)■屈折異常■視力不良■斜視■その他図1要精査と判断した検査項目の割合左:A市,右:B市の割合を示す.括弧内は実数.CIII考察三歳児眼科健診に従事しているCORTは全国的に数が少なく6),保健師が視力検査のみを行っている自治体が多い.全国の三歳児眼科健診の要精査者の割合はC7.0%となっている1).ORTが三歳児眼科健診に従事しているCA市では要精査者の割合はC9.2%と,この報告より高かったが,ORTが従事していないCB市ではC1.3%ときわめて低かった.B市における三歳児眼科健診では異常がありながら見逃されている児が多い,つまり健診の感度が低いことが考えられる.B市には健診会場となっている保健センターがC3カ所あり,視力検査を行う保健師が当番制になっている会場と固定となっている会場が存在した.いずれにおいても不適切な方法での視力検査を行っている様子はなかった.しかし,検査実施者である保健師が三歳児眼科健診マニュアルに記載されている視力検査以外の検査を行えないため,総合的に要精査と判断できないことが多かったのではないかと思われる.また視力検査は自覚的検査であるため,被検者の検査への理解と協力が不可欠である.さまざまな小児に対応するための知識や経験が浅いことによる評価判断のむずかしさも課題として指摘されている7).医療機関での日常業務のなかで小児の検査に慣れているCORTのほうが異常を引き出しやすかったのかもしれない.一方,二次健診で要精査とされ精密検査を受診した児のうちCA市では要経過観察・治療が68.0%で異常なしは16.0%しかいなかったのに対し,B市では要経過観察・治療はC25.7%と少なく異常なしがC41.0%と多かった.つまりCB市の二次健診は異常のない児を要精査とする傾向があり,健診の特異度も低いということがいえる.しかしこれに関しては後述するように,見逃しを少なくするという観点からは問題があるとはいえない.要精査と判断された検査項目は,A市では屈折検査がも表2斜視における二次健診結果と精密検査結果A市(ORT有)B市(ORT無)健診結果Cn=10Cn=9間欠性外斜視C8C0内斜視C2C6不明C0C3精密検査結果異常なしC2C8*斜視C6C0間欠性外斜視C5C0内斜視C1C0未受診C2C1精密検査にて斜視(間欠性外斜視および内斜視)と診断された数(A市:6,B市:0)と異常なし数(A市:2,B市:8)を用いて検定を行った.*Fisher’sexacttest(<0.05).っとも多かったのに対し,B市は屈折測定機器を所有していないため要精査数がC0名という結果だった.三歳児眼科健診の視力値の基準はC0.5であるが,0.5の視標が見えたからといって弱視ではないとは判断できない.A市で屈折異常と判断された児の大半は,視力検査は基準値を満たしていたものの屈折値が基準値を超えていた場合だった.視力検査による弱視の検出率はC1.5%程度とされており8),視力検査のみでは十分なスクリーニングが困難である.2017年C4月C7日付で,厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課から各都道府県保健所設置市母子保健主管部宛に「三歳児眼科健診における視力検査の実施について」の協力依頼に関する事務連絡が発出されたが,その内容は視力検査を適切に実施することという趣旨であった.視力検査しか行っていない自治体ではCLandolt環による視力検査を行えば少しは異常を発見しやすくなるかもしれない.しかし屈折検査を含むその他の検査を行わない限り異常検出率の向上は見込めず,現在の三歳児眼科健診の方法では限界があると筆者らは考える.斜視は特別な道具を用いずに検査を行うことができるが,訓練を受けていない保健師には検査は困難である.3歳児の斜視有病率は約C0.20.0.34%で高くはないとされる9).しかしCA市で要精査とされた斜視疑いC10名のうちC6名が精密検査で斜視と診断されたのに対し,より人口が多いCB市の精密検査で斜視と診断された児がいなかったというのは不自然である.その反面CB市の二次健診で内斜視疑いとされた児がC6名いたが,精密検査を受診した児のなかに内斜視と診断された児はいなかった.未受診者がC1名いるものの,多くは偽内斜視を内斜視疑いとした可能性が高い.保健師による二次健診では外斜視を検出することが困難であると同時に,偽内斜視を内斜視と判断するケースが多いことが判明した.ORTがいなくても屈折異常や眼位異常を検出する方法として,近年発売になったCSpotCTMCVisonScreener(WelchAllynR社)を利用する方法がある.この装置は筆者らが使用しているCShureSightCTMCVisionScreenerの後継機種であり,より簡易的にかつ短時間で屈折異常や眼位ずれを検出することが可能である.ORTのいない自治体ではこの装置を活用することで健診の精度を上げることが可能となるかもしれない.しかしCSpotCTMCVisonScreenerは自治体にとっては決して安い器械とはいえない.どこの自治体も財政はひっ迫しており,費用対効果を理解してもらえないと導入はむずかしいだろう.二次健診で要精査とされた児のうち,精密検査の未受診者が全国ではC38.0%である1)のに対しCA市ではC16.0%と比較的良好な結果だった.その理由としてCA市では,要精査と判断された児の保護者に対して,ORTがなぜ要精査と判断したのかを測定値や結果に基づき説明を行い,斜視や弱視を未治療のまま放置した場合のリスクや,早期発見できた利点について伝えるようにしていることから,それが保護者の理解と健診結果に対する戸惑いの解消につながり,未受診率を減らしたのではないかと考えられた.しかし,A市はC16.0%の児が,B市はC33.3%の児が精密検査を受診していないことに対しては,両市とも今後受診をうながす案内文を配布するなどの対策をとる必要があると考える.本調査の限界点として,個人情報保護の観点から対象児の月齢,性別,他診断結果などといった個人を識別できる可能性のある情報を得ることができなかった.A市,B市ともに乳幼児健康診査の受診喚起はC3歳C0.2カ月であり,受診する児もおおむねそれに従っていた.小児の発育は月齢単位で大きく変化するためC3歳C0.2カ月の早い段階では検査を十分に理解できない場合も少なくない.かといって筆者らの以前の調査5)で月齢が増すごとにCLandolt環による視力検査の成功例が多くなったと報告したが,健診の時期を遅くすれば視覚障害や斜視の発見が遅れる場合もあるであろう.視力が出にくい場合は安易に検査時期を遅らせて再検査をするのではなく,積極的に要精査と判定することも重要である.CIV結論ORTが三歳児眼科健診に従事している場合は複数の検査結果から総合的に判断して異常を検出しているのに対し,ORTがいない場合は視力検査の結果のみで判断しており健診の感度と特異度に地域差が生じていた.ORTが三歳児眼科健診に従事できる地域は限られていると思われるため,今後何らかの方法で検査項目を追加できないか検討すべきと思われた.謝辞:最後に今回の調査に協力いただいたC2市の市役所関係者各位に謝意を表したい.文献1)日本眼科医会公衆衛生部(福田敏雅):三歳児眼科健康診査調査報告(V)―平成C24年度―.日本の眼科C85:296-300,C20142)古賀聖典,南慶子,戸高奈津美ほか:山口県柳井市での3歳児集団検診における視能訓練士介入効果に関する検討.日農医誌59:518-523,C20103)社団法人日本視能訓練士協会健診業務委員会:三歳児眼科健診マニュアル(第一版).4)永田規子:三歳児健康診査―主に視力スクリーニングについて―.日視会誌21:16-35,C19935)蕪龍大,小野晶嗣,竹下哲二:三歳児眼科健診における一次検診の重要性.日視会誌41:137-141,C20126)山田昌和:弱視スクリーニングのエビデンス.あたらしい眼科27:1635-1639,C20107)宇部雅子,渋谷政子,工藤利子ほか:3歳児健診で視力異常を指摘されなかった弱視症例.日視会誌C35:189-194,C20068)川瀬芳克:「三歳児健診を見直そう.」3歳児健康診査視覚検査における視力検査の基準,方法と効果について.日視会誌39:61-65,C20109)MatsuoT,MatsuoC,MatsuokaHetal:Detectionofstra-bismusandamblyopiain1.5-and3-year-oldchildrenbyapreschoolvision-screeningprograminJapan.ActaMed-icaOkayamaC61:9-16,C2007***

涙腺部腫瘍摘出における眼窩外上縁削骨法の有用性

2018年10月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科35(10):1437.1439,2018c涙腺部腫瘍摘出における眼窩外上縁削骨法の有用性横山達郎*1,2三戸秀哲*1井出智子*1井出醇*1柿崎裕彦*3飯田知弘*2*1井出眼科病院*2東京女子医科大学眼科学教室*3愛知医科大学病院眼形成・眼窩・涙道外科CUtilityofShavingSupraorbitalMarginforRemovingLacrimalGlandTumorTatsuroYokoyama1,2)CHidenoriMito1)CTomokoIde1)CAtsushiIde1)CHirohikoKakizaki3)andTomohiroIida2),,,,1)IdeEyeHospital,2)DepartmentofOpthalmology,TokyoWomen’sMedicalUniversity,3)DepartmentofOculoplastic,OrbitalandLacrimalSurgery,AichiMedicalUniversityC目的:眼窩外上側の骨を局所麻酔下で削ることによって涙腺部腫瘍を摘出する方法の有用性を報告すること.症例:67歳,男性.1年ほど前より左上眼瞼に腫瘤を触れ,涙腺部腫瘍の診断で,手術的に摘出することとなった.結果:局所麻酔下でCSonopetCRを使用することによって眼窩骨を削り,安全,確実に涙腺部腫瘍の摘出を行うことができた.腫瘍の病理結果は涙腺部に生じた神経鞘腫であった.結論:骨切りをせずとも,眼窩外上側の骨を削ることによって,局所麻酔下で安全,確実な涙腺部腫瘍の摘出が可能であった.CPurpose:WeCreportConCtheCutilityCofCshavingCtheCsupraorbitalCmarginCforCremovingClacrimalCglandCtumor.CCase:AC67-year-oldCmaleCwasCreferredCwithCaCtumorConCtheClateralCpartCofChisCleftCupperCeyelidCsinceC1CyearCbefore.COnCdiagnosingClacrimalCglandCtumor,CweCdecidedCtoCexciseCit.CResults:WeCusedCSonopetRCtoCshaveCtheCsupraorbitalCmarginCunderClocalCanesthesiaCandCremovedCtheCtumorCsafely.CTheCtumorCwasCaCschwannomaCarisingCwithinthelacrimalglandfossa.Conclusion:Notoperatingwithlateralorbitotomy,butshavingofthesupraorbitalmarginenabledremovalofthelacrimalglandtumorsafelyunderlocalanesthesia.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C35(10):1437.1439,C2018〕Keywords:眼窩外上縁削骨法,涙腺部腫瘍,局所麻酔.shavingsupraorbitalmargin,lacriminalglandtumor,lo-calanesthesia.Cはじめに眼窩腫瘍の摘出方法としては,腫瘍の存在する位置により前方アプローチ,側方アプローチなどが選択される.前方アプローチは経皮から眼窩内へ到達する方法であり,側方アプローチは,眼窩外側の骨切りを行い,骨膜を切開し眼窩内へ到達する方法である.涙腺部腫瘍に対しては,側方よりアプローチするのが一般的であり,通常,骨切りを伴う方法であるため,全身麻酔下で行われる1,2).骨削除の手術機器としてCSonopetCRがあり,脳外科領域の頭蓋底手術での骨削除や涙.鼻腔吻合術鼻外法での骨窓作製時などに使用されている.硬組織用超音波手術器であり,25CKHz,34CKHzの周波数の振動で骨を物理的に乳化,破砕削除する.ドリルとは違いバーの回転がなく周囲組織を巻き込むことがないので,安全に操作することが可能である3,4).今回筆者らは涙腺部腫瘍の摘出に対して,局所麻酔下でSonopetRを使用し,骨切りをせずに安全確実に摘出できたため,その方法の有用性を報告する.CI症例患者:67歳,男性.初診日:平成29年C4月C10日.現病歴:平成C28年C3月頃より左上眼瞼腫脹をきたしたため,平成C29年C3月C6日に近医受診した.頭部CCT(comput-edtomography),MRI(magneticresonanceimaging)の結果,涙腺部腫瘍と診断され,手術目的で当院に紹介受診となった.既往歴:高血圧,高脂血症,帯状疱疹.家族歴:特記事項なし.初診時所見:視力は,右眼がC0.3(1.2×+1.25D(cyl.1.00DAx85°),左眼が0.8(1.0×+1.50D(cyl.1.00DCAx115°)〔別刷請求先〕横山達郎:〒162-8666東京都新宿区河田町C8-1東京女子医科大学眼科学教室Reprintrequests:TatsuroYokoyama,DepartmentofOphthalmology,TokyoWomen’sMedicalUniversity,8-1Kawadachou,Shinjuku-ku,Tokyo162-8666,JAPANC0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(125)C1437であった.眼圧は,右眼がC15CmmHg,左眼がC10CmmHgであった,触診では左上眼瞼外側に小指頭大の可動性のある腫瘤を触知したが,圧痛や発赤は認めなかった(図1).両眼に白内障を認めたが,前眼部,眼底所見に異常所見はみられなかった.対光反射は直接反射,間接反射ともに迅速であった.相対性瞳孔求心障害や複視はみられず,眼球運動にも制限はみられなかった.当院初診前の平成C29年C3月C9日に近医で施行した頭部CT検査では,左涙腺の厚みがC17Cmmと腫大していた.主涙腺の正常の大きさは約C20C×25Cmm,厚みがC3Cmmである.石灰化は認めず,眼球や頬骨への浸潤,骨破壊像を認めなかった(図2).平成C29年C3月C15日に撮像した頭部CMRI検査では,腫瘍は筋円錐外の涙腺部に存在し,同部位はCT1強調画像で眼窩脂肪より低信号,T2強調画像では高信号を示した(図3).腫瘤は球状を呈しており,CT,MRIの所見から,涙腺上皮性良性腫瘍の可能性が高いと判断し,腫瘍全摘出術図1術前写真左上眼瞼外側に腫瘤が認められる.の方針となった.CII経過平成C29年C4月C11日に外側眼窩切開法を用いて手術を施行した.局所麻酔を行い,十分に浸潤させた後,眉毛下外側.頬骨弓にかけて皮膚を切開し,皮膚,眼輪筋を鈍的に.離を行い,11番メスで骨膜を切開した(図4a).骨膜を.離し頬骨と前頭骨を露出させた(図4b).頬骨前頭骨縫合のあたりで骨縁に沿ってCSonopetCRを用いて眼窩縁の骨をC7Cmm程度削った(図4c).腫瘍を露出させクライオプローブで牽引し,周囲組織との癒着を.がしながら腫瘍を摘出した(図4d).最後に,骨膜縫合を行い,皮膚縫合を行い終了した.摘出した腫瘍は,縦C16C×横C11C×高さC10Cmmで表面は平滑であり,被膜に覆われていた(図5a).病理像では,Schwann細胞が比較的長い束をなして増殖しており,束の一部では細胞核が柵状配列(pallisading)となっていた.また,多くの拡張静脈を含んでおり,出血も認めた.核に不整形腫大が目立つが悪性の像は認めなかった.以上より神経鞘腫(AntoniA型)と診断した(図5b,c).術後,1週間後に抜糸を行った.現在,術後C6カ月を経過しているが,術後経過は良好である.再発も認めていない(図6).CIII考察従来の骨切りを伴う側方からのアプローチは,術野を広く図2CT画像a:CT軸位断.Cb:CT冠状断.図3MRI画像a:T1強調画像.Cb:T2強調画像.1438あたらしい眼科Vol.35,No.10,2018(126)d図4術中所見a:眉毛下外側から頬骨弓にかけて皮膚切開.Cb:眼輪筋を.離し,骨膜を切開し頬骨と前頭骨を露出.Cc:SonopetRを使用して眼窩縁を削った.Cd:クライオプローブにて腫瘍と周囲組織を.離.図6術後写真瘢痕はほとんど目立たない.確保できる反面,眼窩骨をいったんはずさなければならず術後の強度低下が問題であった.そこで,筆者らは眼窩骨を削ることにより涙腺部腫瘍の摘出を行った.この方法は,骨切りが不要のため,局所麻酔下での手術が可能であり,術後の合併症のリスクを軽減することができる.眼窩腫瘍は,仰臥位になるとさらに眼窩深部に腫瘍が移動し摘出が困難になるが,今回は,眼窩上縁をC7Cmm程度削ることにより十分に視野も確保でき,クライオプローブを併用することによって被膜に覆われた状態での腫瘍摘出が可能であった.眼窩骨を削る際の注意点は,鼻側で前頭神経を障害しないようにすること,また眼窩上縁を削る際,硬膜に近づいてきたらCSonopetCRのハンドピースを骨に平行に動かすことによって硬膜損傷を避けること,などが考えられる.今回のようにC7Cmm程度の削骨であれば,硬膜の露出はまず心配ない.本症例では,硬組織用超音波手術器であるCSonopetCRを使図5病理所見a:摘出画像の半割断面像.Cb,c:AntoniA型(ヘマトキシリン・エオジン染色).用した.SonopetCRは電動ドリルと異なり回転モーメントがないため,周囲組織の巻き込みが起こらず,チップ先端の高周波数振動は軟部組織に吸収されるため軟部組織が傷つきにくい.また,乳化,吸引も同時に行えるため,術中の視認性が良好であり眼窩深部での手術に適していた.CIVまとめ眼窩縁の骨を削ることによって,骨切りせずとも術野を十分に確保することができ,安全・確実に涙腺部腫瘍を摘出することができた.本方法は,局所麻酔下での手術が可能であり,患者に与える侵襲も軽減することができ,有用な方法であると考える.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)三戸秀哲:眼窩腫瘍の観血的および保存的治療にはどのようなものがあるか.眼科19:573-577,C20022)KroleinRU:ZurCPathologieCundCBehandlungCderCDer-moidcystenderOrbita.BeiterKlinChirC4:149,C18883)高野俊之,高野眞綾:超音波手術器「ソノペットCTMCUST-2001」の骨窓作製時における使用経験.あたらしい眼科C30:1294-1297,C20134)Sivak-CallcottCJA,CLinbergCJV,CPatelS:UltrasonicCboneCremovalCwithCtheCSonopetCOmni.CArchCOphthalmolC123:C1595-1597,C2005C***(127)あたらしい眼科Vol.35,No.10,2018C1439

日本人小児の中隔視神経異形成症11例における臨床所見の検討

2018年10月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科35(10):1432.1436,2018c日本人小児の中隔視神経異形成症11例における臨床所見の検討脇屋匡樹*1松村望*1藤田剛史*1浅野みづ季*1水木信久*2*1神奈川県立こども医療センター眼科*2横浜市立大学大学院視覚器病態学講座CReviewofClinicalFindingsin11JapaneseChildrenwithSepto-opticDysplasiaMasakiWakiya1),NozomiMatsumura1),TakeshiFujita1),MizukiAsano1)andNobuhisaMizuki2)1)DepartmentofOphthalmology,KanagawaChildren’sMedicalCenter,2)DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,YokohamaCityUniversityGraduateSchoolofMedicineC目的:小児の中隔視神経異形成症(septo-opticdysplasia:SOD)の眼科所見と臨床像を報告する.対象および方法:1997.2016年に神奈川県立こども医療センター眼科を受診しCSODの診断基準を満たしたC11例について後ろ向きに検討した.結果:眼科的所見としては,視力障害は全例で認められ,視神経乳頭低形成がC10例(91%),眼振C8例(73%),斜視C8例(73%),黄斑低形成C1例(9%),眼球運動障害C1例(9%)がみられた.頭部CMRI所見としては,透明中隔は全欠損がC8例(73%),部分的欠損がC2例(18%)で認められ,視神経は両側低形成がC10例(91%),1例は正常範囲内であった.内分泌機能は,汎下垂体機能低下C4例(37%),成長ホルモン低値C2例(18%),正常範囲C4例(37%),不明C1例(9%)であった.結論:SODの臨床像は多彩であり,全身症状が少ない場合,眼科的所見を初期徴候として診断に至ることがある.視神経低形成を認めた場合には本疾患も念頭におき精査する必要がある.CPurpose:Toreportophthalmic.ndingsandclinicalfeaturesofsepto-opticdysplasia(SOD)inchildren.Meth-od:ClinicalCdataCfromC11CchildrenCwithCSODCwereCevaluatedCretrospectively.CResults:RegardingCophthalmicC.ndings,CallCtheCpatientsChadCvisualCdisturbance.COpticCdiscChypoplasiaCinCfundusCexaminationCwasCfoundCin91%,Cnystagmusandstrabismusin73%,andmacularhypoplasiaandocularmotilitydisorderin9%.MRIrevealedbilat-eralCopticCnerveChypoplasiaCin91%;1CpatientChadCnoCabnormality.CCompleteCabsenceCofCseptumCpellucidumCwasCfoundCin73%,CpartialCabsenceCin18%.CConclusions:TheCstateCandCseverityCofCSODCdependedConCtheCindividual.CAmongchildrenwithmildsystemicsymptoms,ophthalmic.ndingswereinitialsignsofSODinmostcases.There-fore,SODisoneoftheimportantdi.erentialdiagnosesinchildrenwithopticnervehypoplasia.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)35(10):1432.1436,C2018〕Keywords:中隔視神経異形成症,ドモルシア症候群,透明中隔,視神経低形成.septo-opticdysplasia,DeMorsi-er’ssyndrome,septumpellucidum,opticnervehypoplasia.Cはじめに中隔視神経異形成症(septo-opticCdysplasia:SOD)はCDeMorsier症候群ともよばれ,①脳の正中構造異常,②下垂体機能低下症,③視神経低形成をC3主徴とする先天性疾患である.罹患率は約C1/10,000生産児で,このC3主徴すべてを満たすものはCSOD患者全体のC30%と報告されており1,2),小児眼科領域では視神経低形成の鑑別診断としてあげられる疾患である.その歴史は古く,1941年に報告されたのが最初であり3),詳細な眼科所見を含めた臨床像に関して,海外では数十例規模の報告は存在するが4),筆者らの調べた限りわが国では眼科領域に関しては症例報告が散見されるのみである.今回筆者らは,神奈川県立こども医療センター眼科(以下,当科)を受診した小児のCSOD患児C11例の眼科的所見および全身所見を含めた臨床所見についてまとめ,考察を交えて報告する.〔別刷請求先〕脇屋匡樹:〒232-8555神奈川県横浜市南区六ッ川C2-138-4神奈川県立こども医療センター眼科Reprintrequests:MasakiWakiya,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KanagawaChildren’sMedicalCenter,2-138-4Mutsukawa,Minami-ku,Yokohama-shi,Kanagawa232-8555,JAPANC1432(120)表1SODの診断基準I.主要臨床症状1.眼症状(眼振・視力障害・半盲・斜視・小眼球)2.下垂体機能低下症(成長ホルモン分泌不全性低身長,中枢性甲状腺機能低下症,二次性副腎皮質機能低下症,低ゴナドトロピン性性腺機能低下症,中枢性尿崩症),ただし,ゴナドトロピン分泌亢進による思春期早発症状を認めることもある.II.重要な検査所見1.眼底検査で視神経低形成を認める.2.頭部CMRIで,正中脳構造の異常(透明中隔欠損,脳梁欠損,視交叉低形成)を認める.III.その他の所見1.発達遅滞/知的障害I1かつCII2,II1かつCII2,または,I2かつCII2を満たすとき,本症と診断する.Cabc図1症例1:1歳6カ月,女児の頭部MRI所見a:T1WI冠状断.透明中隔は左右とも完全欠損している.Cb:T1WI矢状断.下垂体に異常は認めない.c:T2WI水平断.視神経は両眼とも細い.CI対象および方法1997年C1月.2016年C10月に当科を初診し,SODの診断基準を満たしたC11例(男児C6例,女児C5例,初診時平均年齢C1歳C10カ月)について後ろ向きに検討した.なお,診断基準については,本症は特定疾患(指定難病C134)に指定されており,厚生労働省の策定した診断基準(表1)5)を用いた.本研究は神奈川県立こども医療センター倫理委員会の承認を受けて実施した.CII代.表.症.例〔症例1〕在胎C35週,2,202g,切迫早産で出生した女児.0歳C6カ月時に眼振,内斜視の精査目的にて当科初診となった.軽度の精神発達遅滞あり,内分泌異常なし.1歳C6カ月時に施行した頭部CMRIにてCSODと診断された(図1).眼底検査では両側の視神経低形成を認めた.8歳C4カ月時の字ひとつ視力CVD=(0.15C×sph+1.25D(cyl.1.50DCAx170°),CVS=(0.35C×sph+2.50D(cyl.3.00DAx180°)であった.〔症例2〕在胎C39週,2,870g,正常分娩で出生した女児.周産期異常なし.0歳C6カ月時に内斜視を指摘され,0歳9カ月時に当科を紹介初診.左眼内斜視および左の軽度外転制限がみられた.右眼健眼遮閉開始.1歳C9カ月時に左眼内斜視(30°)に対し斜視手術を施行.その後,眼鏡装用を開始した.明らかな精神運動発達遅滞なし,内分泌異常なし.3歳C11カ月時に眼底検査で左眼優位の両側視神経低形成が認められ(図2),視力不良および視神経低形成の精査目的にて撮影した頭部CMRIにて,左透明中隔の部分欠損と左に優位な両側視神経の形成不全がみられ,SODと診断された(図3).6歳C9カ月時の字ひとつ視力CVD=(0.6C×sph+0.50D(cyl.1.75DAx180°),VS=(0.25C×sph+0.50D(cyl.2.00DAx180°)であった.動的視野検査では左眼に広く視野異常を認めた(図4).CIII結果1.眼科所見および臨床所見a.眼.科.所.見(表2)視力障害は全例で認められ,良いほうの矯正視力は,光覚弁以下C2例(18%),手動弁.0.01がC3例(27%),0.02.0.3がC3例(27%),0.3以上がC3例(27%)であった.他の眼科的所見として,眼振C8例(73%),眼位異常C8例(73%)が多図2症例2:6歳9カ月,女児の眼底写真乳頭黄斑/乳頭径比(distancebetweenthecentersofthediscandthemacula/discdiameter:DM/DD比)は右眼C3.11,左眼C4.00と左眼視神経乳頭のほうが小さい.図3症例2:SOD不全型,6歳9カ月,女児の頭部MRI所見a:T1WI冠状断,Cb:T1WI水平断.左透明中隔は部分的に欠損している.右は正常である(.).Cc:T2WI水平断.視神経は両眼とも細いが左眼のほうが細い.Cd:右眼,Ce:左眼.T1WI矢状断でも左眼のほうが視神経が細いのがわかる.かった.眼振の性状は,確認できた症例に関しては水平眼振屈折値に関しては,遠視も近視も認められたが,いずれもであった.眼位に関しては内斜視,外斜視,正位とさまざま中等度にとどまり,4Dを超える高度の屈折異常はみられなであった.左眼の軽度外転制限がC1例にみられた.かった.両側視神経乳頭低形成がC10例(91%)でみられ,1図4症例2:SOD不全型,6歳9カ月,女児の動的視野検査視神経低形成が重度な左眼に,広く視野異常を認める.表2眼科所見症例性別右眼屈折値(※)左眼右眼最高視力左眼眼位視神経乳頭その他の眼所見1女C.0.5DC.1DC0.15C0.35外斜視両眼低形成眼振C2女C.0.875DC±0DC0.6C0.25内斜視両眼低形成だが左眼のほうが小乳頭左軽度外転制限C3男+0.75D+0.75DC0.2C0.1内斜視両眼低形成眼振C4女+0.5D+0.5D光覚あり光覚あり正位両眼低形成眼振C5男+1.25D+1.125D追視なし追視なし不明正常範囲内なしC6女C.3.75DC.3.75DC0.005C0.025内斜視両眼低形成眼振C7女C.0.75DC.0.75D追視あり追視あり内斜視両眼低形成眼振C8男C.2.0DC.2.0D光覚あり光覚あり内斜視両眼低形成両眼黄斑低形成C9男C.3.875DC.3.25DC0.6C0.01外斜視両眼低形成だが左眼のほうが小乳頭眼振C10男+1.5D+1.5DC0.2C0.2外斜視両眼低形成眼振C11男C.0.75DC.0.5D追視あり追視あり不明両眼低形成眼振(※)屈折値は最終受診時の等価球面値とした.例は正常範囲内であった.両側視神経乳頭の異常を認める症例のうち,その程度に明らかな左右差を認めるものがC2例あった.このほかの眼底所見としては,黄斑低形成がC1例でみられた.Cb.頭部MRI所見(表3)透明中隔に関して,全欠損はC8例(73%),部分的欠損は2例(18%)で認められ,1例は正常範囲内であった.視神経に関しては両眼性の視神経低形成がC10例(91%),うちC2例は視神経低形成の程度に左右差があった.画像上正常であるものはC1例あったが,これは検眼上視神経乳頭に異常を認めない症例と同一症例である.視神経を含めた視路の所見に関しては,眼窩内視神経,頭蓋内視神経,視交叉,視索と全体的に異常がみられた.Cc.内分泌所見汎下垂体機能低下C4例(37%),成長ホルモン低値C2例(18%),正常範囲C4例(37%),不明C1例(9%)であった.C2.診断の契機となった初発所見と平均診断月齢(表4)診断の契機となった所見は,眼科所見がC4例,内分泌所見がC4例,画像所見がC2例,神経学的所見がC1例であった.CIV考按SODの病因は多岐にわたり,HESX-I,SOX-2,3などの遺伝子変異が報告されている6)が,遺伝子診断されるものは1%以下にすぎず,多くは原因不明の孤発例である.環境因子,催奇形因子として若年出産や母体の薬物,アルコール摂取や母体喫煙,母体感染症,早産などの影響が報告されている.臨床症状に関しては,出生後まもなく視力障害や複数の先天異常が契機で診断に至る場合や,後から成長障害などの下垂体症状を示して診断に至る場合など,表現型は多様であり,重症度は個人差が大きい1,2).出生直後に突然死した症表3頭部MRI所見症例透明中隔の所見視神経,視交叉,視索の所見下垂体の所見その他の所見1両側の全欠損両側の眼窩内視神経,頭蓋内視神経,視交叉,視索の正常範囲内なし低形成右は正常両側の眼窩内視神経,頭蓋内視神経は低形成だが,左2左は部分的に欠損眼のほうがより細い.視交叉と視索は正常範囲内正常範囲内なし両側の頭蓋内視神経,視交叉,視索の低形成.眼窯内3両側の全欠損視神経は正常範囲内正常範囲内なし両側の眼窓内視神経.頭蓋内視神経.視交叉,視索の4両側の全欠損低形成正常範囲内なしC5両側の全欠損正常範囲内下垂体柄の狭小,異所脳梁低形成性後葉C6両側の全欠損両側の視神経低形成(部位は不明)下垂体が確認できない大脳皮質の広範な腫脹,脳梁低形成脳実質萎縮,脳室拡7両側の全欠損両側の眼窩内,頭蓋内視神経,視交叉,視索の低形成下垂体が確認できない大下垂体柄の狭小,異所頭頂葉,後頭葉の脳C8両側の全欠損両側の視神経低形成(部位は不明)性後葉実質破壊像,嗅球低形成C9正常範囲内視交叉の低形成,両側の眼窩内視神経,頭蓋内視神経,下垂体柄の狭小なし視索の低形成左大脳半球全体の破10両側の全欠損両側視神経の低形成(部位は不明)正常範囲内壊像,脳梁低形成右は部分的に欠損両側の眼窩内視神経,頭蓋内視神経の低形成.視交叉,左大脳半球全体の破11左は全欠損視索は不明下垂体が確認できない壊像表4診断の契機となった初発徴候と診断時平均月齢SOD診断の契機となった初発徴候眼科所見4例(36%)内分泌所見4例(36%)画像所見(胎児期の脳室拡大)2例(18%)神経学的所見(右片麻痺)1例(9%)初発徴候と診断時平均月齢眼科所見生後C18カ月内分泌所見生後C0.9カ月画像所見(胎児期の脳室拡大)在胎37週神経学的所見(右片麻痺)生後C26カ月例も報告されている7).筆者らの結果では,眼科的症状を初発徴候として診断に至った症例が内分泌症状を初発として並んで多く,36%であった.初発症状が内分泌症状であった症例の診断時平均月齢がもっとも低かったのは,全身状態が悪い症例が多いためと考えられた.眼科所見としては,今回の結果では視力障害は必発であったが,視力障害の程度は,光覚なし.矯正C0.6と,さまざまであることがわかった.視神経乳頭の低形成はC2番目に多くみられたが,乳幼児の場合は詳細な眼底検査や画像診断がむずかしいことから,視神経低形成を初診時から明確に診断できない症例もあった.次に多かった眼振,斜視に関しては比較的発見しやすい症状であることから,眼科の初発症状である症例が多かった.出生時から認められる眼振の鑑別としては,先天性眼振,黄斑低形成,視神経低形成,脳の形成異常などが含まれ,眼振の性状および眼振以外の臨床症状や神経学的所見により鑑別を行うが,今回の結果から,MRIによる頭蓋内の精査がとくに重要であると考えられた.また,症例C2のように初診時内斜視と診断されていた症例もあり,明らかな精神発達遅滞を伴わない弱視,眼振,斜視などの症例においても,SODを念頭において鑑別診断を行う必要があると考えられた.今後,さらなる症例の検討がなされ,SODの理解が深まることが望まれる.文献1)FardMA,Wu-ChenWY,ManBLetal:Septo-opticdys-plasia.PediatrEndocrinolRevC8:18-24,C20102)前田知己:中隔視神経異形成.別冊日本臨牀,新領域別症候群シリーズC29,神経症候群(第C2版)4,p87-89,日本臨牀,20143)ReevesDL:CongenitalCabsenceCofCtheCseptumCpellu-cidum.BullJohnsHopkinsHospC69:61-71,C19414)RiedlCSW,CMullner-EidenbockCA,CPrayerCDCetal:Auxo-logical,ophthalmological,neurologicalandMRI.ndingsin25CAustrianCpatientsCwithsepto-opticCdysplasia(SOD)C.CHormResC3:16-19,C20025)http://www.nanbyou.or.jp/entry/4403診断基準6)KelbermanCD,CDattaniMT:GeneticsCofCsepto-opticCdys-plasia.PituitaryC10:393-407,C20077)BrodskyMC,ConteFA,TaylorDetal:Suddendeathinsepto-opticdysplasia.Reportof5cases.ArchOphthalmolC115:66-67,C1997