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屈折矯正手術:近視進行抑制とバイオレットライト

2017年12月31日 日曜日

監修=木下茂●連載211大橋裕一坪田一男211.近視進行抑制とバイオレットライト鳥居秀成慶應義塾大学医学部眼科学教室世界の近視人口は増加の一途をたどっている.世界中の近視研究者のコンセンサスが得られている唯一の近視進行を抑制する環境因子として,屋外活動がある.筆者らはそのなかでも,屋外環境に豊富にあるC360~400nmのバイオレットライトが近視進行抑制に重要な役割を果たすことを基礎研究・臨床研究より明らかにした.*****●はじめに―バイオレットライトとは―5世界の近視人口は全世界で増加の一途をたどっており,.0.50D以下を近視,C.5.00D以下を強度近視と定義した場合,近視人口はC2050年には全世界人口のC49.8%のC47億C5800万人,失明リスクのある強度近視の人口はC9.8%のC9億C3800万人になると報告1)されている.屈折(ジオプター)0-5-10-15日本国内でも,文部科学省平成C28年度学校保健統計調査結果によると,裸眼視力C1.0未満の割合が小学校・中学校・高校において昭和C54年以来過去最高を記録した.この近視人口の世界的な急増は近年約C50年前からの変化であり2),遺伝因子よりも環境因子の変化が主因であると考えられている.近視と関連する環境因子のうち,これまでに屋外活動が近視進行を抑制することが複数の疫学研究や動物実験から指摘されてきており,近年,屋外活動が注目されている3,4).そのなかで近視進行抑制にかかわる因子としては,運動・遠方視・ビタミンCD・光環境などが考えられているが,そのうち何が効いているのか,また,そのメカニズムはわかっていなかった.そこで筆者らは屋外環境因子のうち,屋外環境に豊富にある波長C360~400Cnmのバイオレットライトに着目し,動物実験・臨床研究・環境調査を行った.JIS/CIEが可視光下限をC360Cnmと定義しているように,人間はバイオレットライトの色を認識することは可能である.C●動物実験実験近視モデルとして確立しているヒヨコを用いて,バイオレットライトをあてる群とあてない群で近視進行程度(屈折値・眼軸長)を比較・検討し,バイオレットライトの近視進行抑制効果の有無を評価した.近視誘導には,バイオレットライトを透過することを確認した凹(99)0910-1810/17/\100/頁/JCOPY-20VL-VL+VL-VL+近視誘導なし近視誘導あり図1ヒヨコ実験近視モデルにおけるバイオレットライトの近視進行抑制効果バイオレットライト(VL)に暴露されたヒヨコ(VL+)は,暴露されていないヒヨコ(VLC.)に比べ,近視誘導の表現型が抑制された.(文献C5より引用)レンズ効果をもつクリアレンズを使用し,片眼装用を行った.屈折値・眼軸長データから表現型の確認を行うとともに,メカニズム解明のため,眼球を摘出し,網脈絡膜サンプルを用いて網羅的遺伝子発現解析を行い,ターゲット遺伝子の絞り込みを行い,PCRで確認を行った.その結果,バイオレットライトを浴びたヒヨコの近視進行が抑制され,バイオレットライトを浴びたヒヨコの眼で,近視進行を抑制する遺伝子として知られているearlygrowthresponse1(EGR1[ZENK,zif268])が有意に上昇していることがわかり,バイオレットライトが近視進行を抑制するメカニズムとしてCEGR1が関与している可能性が示唆された(図1).C●臨床研究屈折矯正に用いるコンタクトレンズ(contactClens:CL)のバイオレットライトの透過率を調査し,バイオあたらしい眼科Vol.34,No.12,2017C17370.25*0.301.60分光放射照度(W/m2/nm)1.401.201.00眼軸長の変化量(mm/年)0.200.800.600.400.200.150.100.000.05図3現代社会に欠如しているバイオレットライトオフィス内,車内,病院内ではC360~400Cnmのバイオレットライトがほとんどないことがわかる.0.00300350400450500550600650700750800(文献C5より引用)図2異なるバイオレットライト透過率のコンタクトレンズ装用による眼軸長変化量の比較バイオレットライト(VL)を透過するコンタクトレンズを装用している群(VL+)は,透過を抑制したコンタクトレンズを装用している群(VLC.)に比べて眼軸長変化量が有意に少なかった.(文献C5より引用)Cレットライトの透過率が高い群と低い群での近視進行程度を後ろ向きに比較・検討した.13~18歳の対象において,バイオレットライトを透過するCCL(透過率C80%以上)を装用している群(116例116眼)と,バイオレットライト透過を抑制したCCL(透過率C80%未満)を装用している群(31例C31眼)の眼軸長伸長量を比較した.その結果,バイオレットライトを透過するCCLを装用している群の眼軸長伸長量はC0.14Cmm/年,バイオレットライト透過を抑制したCCLを装用している群の眼軸長伸長量はC0.19Cmm/年であり,バイオレットライトを透過するCCLを装用している群のほうが,有意に眼軸長伸長量が少ないことがわかった(図2).C●環境調査われわれを取り巻く屋内・屋外環境において,バイオレットライトがどの程度存在するのかを調査した.その結果,現在われわれが日常的に使用しているCLEDや蛍光灯などの照明にはバイオレットライトはほぼ含まれておらず,眼鏡や硝子などの材質もCUVカットに加えてバイオレットライトをほとんど通さないことがわかった(図3).C●おわりに現代社会におけるわれわれを取り巻く環境において,波長C360~400Cnmのバイオレットライトが欠如しており,これが近年の近視の世界的な増大と関係している可能性が考えられる.バイオレットライトの研究は今後の近視人口増加に歯止めをかける一助になる可能性があるものと期待され,慶應義塾大学医学部からプレスリリースされ各種メディアに取りあげられた.ただし,屋外活動によりバイオレットライトは容易に取り入れられるものの,屋外活動だけでは同時に有害な短波長紫外線にも暴露されてしまうため,可視光であるバイオレットライトのみをとり入れる工夫も今後必要であると思われる.文献1)HoldenCBA,CFrickeCTR,CWilsonCDACetCal:GlobalCpreva-lenceCofCmyopiaCandChighCMyopiaCandCtemporalCtrendsCfrom2000through2050.COphthalmologyC123:1036-1042,C20162)DolginE:Themyopiaboom.NatureC519:276-278,C20153)RoseKA,MorganIG,IpJetal:OutdooractivityreducestheCprevalenceCofCmyopiaCinCchildren.COphthalmologyC115:1279-1285,C20084)JonesLA,SinnottLT,MuttiDOetal:Parentalhistoryofmyopia,CsportsCandCoutdoorCactivities,CandCfutureCmyopia.CInvestOphthalmolVisSci48:3524-3532,C20075)ToriiCH,CKuriharaCT,CSekoCYCetCal:VioletClightCexposureCcanbeapreventivestrategyagainstmyopiaprogression.EbiomedicineC15:210-219,C20171738あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017(100)C

眼内レンズ:術中波面収差解析装置

2017年12月31日 日曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋373.術中波面収差解析装置荒井宏幸みなとみらいアイクリニック術中波面収差解析装置を使用することにより,眼内レンズ(IOL)度数計算困難症例への対応,乱視度数と乱視軸の確認と決定,手術終了時における屈折誤差の確認が可能となった.乱視用CIOLにおいては,IOLの回転すべき方向を表示する.付加価値CIOLが普及してきた近年において,重要なアイテムとして注目されている.●術中測定の意義光学的眼軸長測定装置の発達により,眼内レンズ(intraocularClens:IOL)の度数計算の精度は飛躍的に向上した.測定装置の発展に呼応するように,度数計算式も改良され続けている.標準的なプロポーションの眼球であれば,術後の屈折誤差は臨床上問題にならないことがほとんどである.しかし,不良なプロポーションの眼球,屈折矯正術後,角膜不正乱視などにおいては,従来の計算式を用いても精度が不安定である.また,近年に普及している乱視用CIOLにおける軸決定なども,術前検査のみでの決定には限界がある.術中測定には度数決定と屈折度数の確認という二つの要素があり,通常症例であっても有益な術中情報が得られる1).今回はアルコン社の術中波面収差解析装置CORAの機能と有用性に関して解説する(図1).C●どんな症例に有用か・放射状角膜切開(radialCkeratotomy:RK),LASIK(laserCinCsituCkeratomileusis),レーザー屈折矯正角膜切除(photorefractivekeratectomy:PRK),治療的レーザー角膜除去(phototherapeuticCkeratectomy:PTK)後:近年のCLASIK(PRK)後眼に対する度数計算式は精度も向上し,大きな誤差を生じることは少なくなっている.しかし,RK後やCLASIK,PRKによる偏心照射などの場合には精度が極端に低下する.また,PTKの不整な角膜形状の場合などもCK値の設定に苦慮することが多い2).・角膜不正乱視(円錐角膜・翼状片術後・角膜移植後・角膜瘢痕など):角膜形状解析において非対称性の強い乱視を示すことが多い.IOL度数計算に採用するCK値と乱視軸の決定は非常にむずかしい.・光学的眼軸長測定不能:若年性のアトピー性白内障や外傷性白内障では,多焦点CIOLを希望する症例が多い.超音波による眼軸長測定での度数決定には限界がある.(97)0910-1810/17/\100/頁/JCOPY図1ORAの計測ユニットと本体計測ユニットは大きくCworkingdistanceは小さくなる.本体は常に米国のサーバーと通信して最新の最適化がなされている.・乱視用CIOL:単焦点・多焦点に限らず,すべての乱視用CIOLを使用する際には,全乱視の測定に基づく乱視軸を決定可能である.前眼部光断層干渉計(opticalcoherenceCtomography:OCT)検査などによる角膜前後面の乱視測定も有用な方法であるが,無水晶体の状態における全乱視測定がより本質的である.C●術中計測の実際術中計測におけるポイントは,角膜の乾燥状態と眼圧である.角膜上皮の水濡れ性を損なうことなく手術を進行させなければならない.ウェットシェル法などが有効であろう.手術終了時にも確認の測定を行うため,手術の全行程を通して角膜の乾燥には注意を払う必要がある.眼圧はCORAのプロコール上,20CmmHg以上を維持する必要がある.BSSでも粘弾性物質でもよいが,均一な媒質での測定が必要となる.測定は約C3秒間にC40回計測され,その標準化されたデータを元に計算もしくは表示される.ORAの本体ユあたらしい眼科Vol.34,No.12,2017C1735図2顕微鏡にオーバーレイされた乱視軸赤色がCORAで,緑色がCVERIONの示す乱視軸である.図4ORAによって解析された結果のレポートORAを使用した乱視用CIOL症例の術後残余乱視を示す.左(赤)が当院,右(青)が全世界での平均値を示している.ニットは常に米国のデータベースと通信しており,データベース内で常に最適化された係数を使用してCIOL度数計算を行う.全世界からのデータが逐次入力されているため,最適化係数は常に最新のものである.測定から結果の表示まで約5~7秒である.最適な乱視軸は顕微鏡内にオーバーレイされる(図2).IOL挿入後には残余乱視および補正すべきCIOLの回転方向を指示する画面が表示される.残余乱視がC0.5D以下になった場合には“NoCRotationCRecommended”(回転不要)との表示がされ,toricIOLの軸が最適な位置にあることを確認できる(図3).C●術後結果と課題ORAのデータベースに術後結果を入力すると,定期図3乱視用IOLの最終確認画面乱視用多焦点CIOLの例である.残余乱視はC0.35Dであり,屈折誤差は-0.15D(画面右下)であることが示されている.的な結果のレポートを受けることができる.当院での乱視用CIOL使用例における残余乱視のデータを図4に示す.課題としては,測定ユニットがかなり大きいため,workingCdistanceが狭くなる.また,硝子体手術を行う施設では,眼底広角観察用のユニットが設置されているが,それとの共存はできない.一時的に硝子体用のユニットをはずしてCORAを付けることは可能であるが,手術時間は相当に延長する.計測の結果にもよるがC3~5分程度の延長になると思われる.最後にコストの問題であろう.C●将来的な必要性今後の白内障手術においては,量よりも質を求められることは容易に想像がつくであろう.多焦点CIOLのような付加価値をもったCIOLも多く開発されてくるであろう.そうした状況のなかで,術後視力や矯正精度へのこだわりはもっとも大切なポイントであり,術中測定は不可避の技術になると思われる.文献1)DavisonCJA,CPotvinCR:PreoperativeCmeasurementCvsCintraoperativeaberrometryfortheselectionofintraocularlensCsphereCpowerCinCnormalCeyes.CClinCOphthalmolC11:923.929,C20172)IanchulevCT,CHo.erCKJ,CYooCSHCetCal:IntraoperativeCrefractiveCbiometryCforCpredictingCintraocularClensCpowerCcalculationafterpriormyopicrefractivesurgery.Ophthal-mologyC121:56.60,C2014

コンタクトレンズ:球面コンタクトレンズと眼精疲労

2017年12月31日 日曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方つぎの一歩~症例からみるCL処方~監修/下村嘉一38.球面コンタクトレンズと眼精疲労梶田雅義梶田眼科●はじめにコンタクトレンズ(CL)は眼鏡よりも見え方にクリアさが欠如しているため,過矯正になりやすい.また,矯正度数を下げた“弱めの矯正”も眼精疲労を生じやすい.快適と感じる矯正を行うことが大切である.●CLで眼精疲労を防ぐために最近では自覚的屈折検査の前に,オートレフラクトメータ(以下,オートレフ)を用いた他覚的屈折値を測定している.適切な他覚的屈折値が得られるように,オートレフの操作に精通することが大切である.・オートレフの設定オートレフは通常の測定モードで測定することが大切である.クイックモードは1回の雲霧機構が作動した後に数回の測定を繰り返して計測を終了するモードである.測定時間は短いが,雲霧機構が十分に機能しないため調節の介入が大きくなると同時に,調節が介入していてもデータのバラツキが少ないので,測定値の信頼度が低くなる.一方,通常モードでの測定は1回の雲霧機構が作動した後に1回だけ屈折値を計測し,これを繰り返すモードで,測定に要する時間は長くなるが,調節が介入している場合にはデータのバラツキが大きくなるため,数回の測定結果にバラツキがないときの測定結果は信頼度が高い.・オートレフ測定時に気をつけることオートレフの測定時には,被験者には視標の中央部分を正しく見てもらう必要がある.これによって視軸方向の屈折値を測定することができる.測定中にはモニター画面に注意を払い,モニター画面に映し出されたマイヤーリングに途切れや不規則な歪みが観察されない状態で測定を開始する必要がある.オートレフの自動追尾機能に任せないで,検者自らがシューティングゲームのように正しく視線を追跡することが大切である.・オートレフの値を用いた自覚的屈折検査十分な注意を払って測定したオートレフの結果の信頼(95)度はかなり高い.自覚屈折の測定では,オートレフの値を参照にして,先に検眼枠に円柱レンズを装入する.通常,円柱レンズ度数は,オートレフ値の円柱度数が.0.75D以下ならば円柱レンズは省略し,.1.00Dならば.0.50Dを,.1.25D以上あれば.0.75Dを減じた値の円柱レンズを,オートレフの円柱軸度を10°ステップで近似した値に装入する.球面度数はオートレフの球面度数よりも.075D低い値を採用して,視力表を読んでもらう.この設定ですでに1.0以上の視力が得られている場合には,さらに.0.75D弱い球面度数を装入して,視力測定を開始する.すなわち,一度は1.0未満の視力値が得られる矯正状態を提供してから,.0.25Dずつ矯正度数を強めて,最良視力が得られる最弱屈折値を求めることにより,極力調節が介入しない自覚屈折を求めることができる.・両眼同時雲霧法円柱レンズは自覚的屈折値の値そのままを採用して検眼枠に装入する.球面レンズは自覚的屈折値に+3.00Dを加えた値を装入して,すぐに測定を開始する.両眼の視力値を確認しながら,両眼同時に.0.50Dずつ加える.両眼での視力値が0.5~0.7に達したところで,交互に片眼遮蔽を行い,左右眼のバランスを確認する.1回目は見やすいほうの矯正を.0.25Dだけ戻し,2回目以降は見づらいほうの度数に.0.25Dを加えて,左右眼のバランスを整える.左右眼のバランスが取れたら,その後は両眼同時に.0.25Dずつ矯正度数を強めて,最良視力が得られる最弱屈折値を求める.これが眼鏡レンズで快適な矯正度数である.両眼同時雲霧法による屈折値は一般には前述の自覚的屈折値よりも.0.50D~.0.75D低い値で得られることが多い.もし,この範囲を超えて異常に強い値になるときには外斜位が存在し,斜位近視が介入している可能性がある.反対に異常に弱い値になるときには内斜位が存在することがある.この場合には,斜位の検査を行い,プリズムレンズを装入した状態で両眼同時雲霧を行うと適切な値の屈折値が得られることがある.あたらしい眼科Vol.34,No.12,201717330910-1810/17/\100/頁/JCOPY図1頂点間距離補正表・眼鏡レンズ度数をコンタクトレンズ度数に変換するソフトCL(SCL)を処方するときには,眼鏡レンズ度数を頂点間距離補正する必要がある(図1).乱視が.1.00D以下であれば,球面レンズ度数に円柱レンズ度数の半分を加えた値(等価球面度数)を頂点間距離補正した値のトライアルレンズを装着してみる.乱視が.1.00Dを超える場合には,強弱主経線方向それぞれの頂点間距離補正を行ない,乱視用SCLで必要な球面度数と円柱レンズ度数を求めてからトライアルレンズを決定する.たとえば,眼鏡レンズ度数がsph.7.00D(cyl.1.50DAx180°の場合,180°方向の度数は.7.00Dであり,頂点間距離補正値は.6.50Dである.90°方向の度数は.8.50Dであり,頂点間距離補正値は.7.75Dである.その差.1.25Dが乱視用SCLの矯正に必要な円柱レンズ度数である.したがって,トライアルレンズはsph.6.50D(cyl.1.25DAx180°を選択する.●近視過矯正を疑ったらSCL装用者が眼精疲労を訴えたら,まず近視過矯正を疑う.SCLを装用した状態でオートレフ値(オーバーレフ値)を測定してみる.オーバーレフ値の円柱度数が.1.00Dを超えている場合には,乱視矯正不足によって球面度数が過矯正になっている可能性がある.また,球面度数が.0.50Dよりも遠視寄りであれば,球面度数の過矯正を疑ってSCL装用状態で両眼同時雲霧を行ってみる.●過矯正の治し方過矯正であることがわかり,適切な度数のSCLに変更して問題なく装用できればよいが,なかには,適切な矯正度数を提供したにもかかわらず,矯正視力が著しく低下して,強い不満が生じることがある.このような場合にはモノビジョン矯正を勧めると意外に容易に過矯正から抜け出すことができる.また,乱視の未矯正や矯正不足による球面度数過矯正が生じている場合には,乱視用SCLを用いて乱視を矯正し,同時に球面度数は加えた乱視度数分くらいを減じた値を用いることで,疲れにくい矯正を提供することができる.●おわりにSCL処方時には最初のトライアルレンズの選択がもっとも重要である.眼鏡で処方する適切な矯正度数を求めて,その値を適切なSCL度数に変換した値のトライアルレンズを用いることで,処方時間も短縮できると同時に,過矯正も予防できる.眼鏡度数の決定は屈折矯正の基本である.CL処方に携わる者は適切な眼鏡を処方できる技術を必ず身についてほしい.ZS988

写真:術後にILM flapで架橋された大型黄斑円孔

2017年12月31日 日曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦403.術後にILM.apで架橋された永田健児京都府立医科大学大学院医学研究科大型黄斑円孔視覚機能再生外科学C術前術後2週間術後3週間術後5週間術後6カ月術後1年図1OCTの変化大型黄斑円孔の手術後,内境界膜による架橋のみでつながっていたが,徐々に黄斑円孔は閉鎖し,網膜分離も改善した.1年後には網膜の層構造も確認されるようになった.(93)0910-1810/17/\100/頁/JCOPY図2図1の術後2週間のシェーマ黄斑円孔は翻転した内境界膜(①)により架橋されているが,網膜の接着は認めない.網膜分離(②)も残存している.図3手術時の写真内境界膜.離し,黄斑円孔周囲は除去せず残した.この後,残した内境界膜を黄斑円孔上に翻転した.図4最終受診時のOCT外境界膜は連続性がみられ,ellipsoidzoneも検出された.あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017C1731黄斑円孔は硝子体による黄斑の牽引と接線方向の牽引により発症すると考えられており,これらを解除するために手術が行われる.硝子体手術や内境界膜の染色法などの進歩により,硝子体手術を行い,内境界膜.離のうえガスタンポナーデを行うことでC90%以上の症例で黄斑円孔の閉鎖が得られるようになった.しかしながら,円孔径が大きな黄斑円孔や強度近視眼における黄斑円孔については閉鎖が得られにくく,新規治療法が必要と考えられていた.2010年にCMichalewskaらは最小円孔径C400Cμm以上の黄斑円孔に対し,内境界膜を.離し,円孔周囲は残して黄斑円孔の上に翻転して被せる内境界膜翻転法(invertedCinternalClimitingCmembrane.apCtechnique)を開発し,従来法と比較して円孔閉鎖率が改善したことを報告した1).さらに,内境界膜翻転法は強度近視眼に伴う黄斑円孔や2),黄斑円孔網膜.離にも有用なことが報告され3),耳側や上方の内境界膜のみを翻転するといった変法も報告されている.通常,黄斑円孔の閉鎖はガス消失時に得られており,ガス消失時に非閉鎖の場合は追加治療が必要となる.ただし,術後,閉鎖した中心窩下にわずかなスペースがあり,徐々に消失していくことはよくみられる現象である.一方で内境界膜翻転法を用いた場合,術後に網膜の閉鎖は得られていないものの,翻転した内境界膜で円孔が架橋されていることがある.当初はこの場合,非閉鎖として再手術をするかどうか悩ましい症例であった.筆者は強度近視を伴う大きな黄斑円孔に対し,内境界膜翻転法を用いた硝子体手術を施行し,術後に黄斑円孔が内境界膜で架橋された症例を経験した(図1,2).術前,強度近視眼で黄斑上膜と網膜分離を伴う大きな黄斑円孔を認めた.円孔は最小円孔径がC549Cμmで,最大円孔径がC2,302Cμmととくに円孔底径が大きく,従来法では黄斑円孔の閉鎖はむずかしいと考えられた.そこで内境界膜翻転法を用いた硝子体手術を行い,20%CSFC6ガスタンポナーデを行って手術を終了した(図3).術後C2週間で光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomography:OCT)撮影をしたところ,黄斑円孔は翻転した内境界膜で架橋されているものの,網膜間の接着はみられなかった.当時このような症例の経験や報告はなく,再手術も検討したが,1週間経過観察したところ,架橋した内境界膜の下に変化がみられ,徐々に網膜が連続し閉鎖してきた.さらに経過観察したところ,網膜下のスペースも消失し,外境界膜が検出されるようになり,ellipsoidzoneも不明瞭ながら検出されるようになった(図4).これらの変化とともに,矯正視力は術前C0.08からC1年後にはC0.4まで改善した.このような症例はほかにも経験しており,本症例のようにきれいに内境界膜で架橋されていなくても,OCT上,中心窩のあたりに内境界膜が存在すれば,経過観察で黄斑円孔が閉鎖する症例がある.まだ十分には解明されていないが,黄斑円孔の閉鎖には,翻転した内境界膜がグリア細胞の増殖に関与することが考えられている.内境界膜翻転法を行った場合は,術直後に黄斑円孔が閉鎖していなくても,しばらく経過観察するのがよいと考えられる.文献1)MichalewskaZ,MichalewskiJ,AdelmanRAetal:Invert-edCinternalClimitingCmembraneC.apCtechniqueCforClargeCmacularholes.OphthalmologyC117:2018-2025,C20102)KuriyamaCS,CHayashiCH,CJingamiCYCetCal:E.cacyCofCinvertedinternallimitingmembrane.aptechniquefortheCtreatmentofmacularholeinhighmyopia.AmJOphthal-molC156:125-131,C20133)LaiCC,ChenYP,WangNKetal:Vitrectomywithinter-nallimitingmembranerepositioningandautologousbloodforCmacularCholeCretinalCdetachmentCinChighlyCmyopicCeyes.COphthalmologyC122:1889-1898,C2015

白点症候群

2017年12月31日 日曜日

白点症候群MultimodalImagingofWhiteDotSyndromes岩田大樹*南場研一*はじめに白点症候群は,眼底後極部の網膜深層から脈絡膜の内層にかけて白点病変が散在性に多発する疾患群である.網膜に散在性の白点を伴う疾患には,サルコイドーシス,結核,梅毒,眼トキソプラズマ症や真菌など全身疾患に伴うものもあるが,全身疾患に伴わない眼局所に所見が限定され,原因が特定不能な症例も多数ある.白点症候群の代表的なものに,急性後部多発性斑状色素上皮症(acuteposteriormultifocalplacoidpigmentepitheli-opathy:APMPPE),多発消失性白点症候群(multipleevanescentwhitedotsyndrome:MEWDS),点状脈絡膜内層症(punctateinnerchoroidopathy:PIC),多巣性脈絡膜炎(multifocalchoroiditis:MFC),急性網膜色素上皮炎(acuteretinalpigmentepithelitis:ARPE)などがあげられる.これらは互いに類似する所見があり,境界病変というべき所見を呈する症例では慎重に鑑別しなければならない.本稿では,白点症候群の眼底所見,フルオレセイン蛍光眼底造影検査(.uoresceinangiography:FA),インドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(indocyaninegreenangiography:IA),光干渉断層計(opticalcoher-encetomography:OCT),眼底自発蛍光(fundusauto-fuluorescence:FAF)などの各種画像所見について紹介する.また,レーザースペックルフローグラフィー(laserspeckle.owgraphy:LSFG)は近年発達した非侵襲的な眼底血流画像化装置であり,眼底血流動態を画像化・定量化できる装置である.LSFGを行うことで,網脈絡膜や視神経乳頭の任意の部位で,血流速度の相対値の指標であるmeanblurrate(MBR)を得ることができる.また,MBRを疑似カラー化することにより,眼球中心部の網脈絡膜血流動態をカラーマップとしてみることができる.検査時間も約4秒と短く簡便であり,再現性も良好であることから,さまざまな疾患における網脈絡膜血流速度を,経時的にかつ定量的に評価するのに適していると考えられており,各疾患におけるLSFGの解析結果についても紹介する.I急性後部多発性斑状色素上皮症APMPPEは,20~30歳代に多く,性差はない1).急激な視力低下がみられるが,視力予後はよい.前駆症状として感冒様症状がみられることがあり,ウイルス感染による血管炎の可能性が指摘されている.両眼性で,眼底後極部の網膜深層に均一な大きさの淡い滲出班が多発する疾患である.病変は後極部から中間周辺部にみられ,その境界は比較的明瞭で,融合することは少ない(図1a).また,黄斑部の漿液性網膜.離,視神経乳頭の発赤・腫脹,網膜血管炎や網膜出血を伴うこともある2).enhanceddepthimaging(EDI)-OCTでは急性期で脈絡膜厚がやや肥厚する3)(図1b).漿液性網膜.離を伴うことがあり,病変に一致して網膜外層に高反射領域がみられる.これは回復とともに消失するが,ellip-soidzone(EZ)の断裂がみられることがある.病変部*DaijuIwata&*KenichiNamba:北海道大学大学院医学研究科眼科学分野〔別刷請求先〕岩田大樹:〒060-8638札幌市北区北15条西7丁目北海道大学大学院医学研究科眼科学分野0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(87)1725位はCFAで早期に低蛍光,後期に過蛍光となり,いわゆる蛍光の逆転現象をきたす(図1c).滲出斑の境界は比較的明瞭で,融合することは少ない.IAでは,静脈相初期では脈絡膜の中大血管は軽度不鮮明となる.病変部Cc図1急性後部多発性斑状色素上皮症(APMPPE)a:黄斑部,視神経乳頭周囲に黄白色の滲出斑がみられる.Cb:EDI-OCTでは急性期で脈絡膜厚がやや肥厚する.Cc:FAの早期では滲出斑は斑状の低蛍光となるが,後期では低蛍光斑は滲出性変化により過蛍光となる逆転現象がみられる.d:急性期のCIAで静脈層病変部位は早期から低蛍光で,後期にも低蛍光斑が残存する.e:FAFでは網膜色素上皮の障害の程度に応じて低蛍光となり,その周囲は過蛍光となる.位は初期相から低蛍光で,後期相にも低蛍光斑が残存する4,5)(図1d).FAFでは網膜色素上皮の程度に応じて低蛍光となり,その周囲は過蛍光となる(図1e).LSFGでは急性期に黄斑部CMBRが減少,寛解期に1726あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017(88)MBRが上昇することから,脈絡膜循環障害が示唆される3).以上の結果から,病変部位では脈絡膜毛細血管板が小葉単位で閉塞していると考えられ,その病態として毛細血管板への流入血管の血管炎が推測されている6).発症から数週間後に改善傾向がみられるようになり,次第に滲出斑は消退する.病変の多くは瘢痕を残さないが,軽度の脱色素斑や色素沈着を残すものがある.したがって,中心窩にかかる病変がみられる場合には,ステロイドの内服や後部CTenon.下注射を検討する.CII多発消失性白点症候群MEWDSは,20~50歳代の女性に好発する7)(男女比1:4).ほとんどが片眼性であるが両眼性もありうる.発症原因は不明であるが,しばしば感冒様症状が先行することから,ウイルス感染に続発する免疫やアレルギー反応が病因としてあげられている.自覚症状は急性の視力低下,光視症や霧視が多い.網膜深層から網膜色素上皮層に類円形のC100~200Cμm淡い白点が多数みられるが,一過性でC1~2カ月で色素沈着などを残さずに消退する.視力障害も一過性で回復する.病変は,黄斑部の外側から血管アーケードの内外に多く,赤道部付近まで観察される(図2a).EDI-OCTでは網膜外層のCEZやinterdigitationCzone(IDZ)は障害され8),脈絡膜はわずかに肥厚する9)(図2b).FAでは急性期において白点部位は早期から過蛍光を示し,後期まで過蛍光が持続する(図2c).回復期には正常化する.急性期のCIAでは,病変部位は静脈相初期には不明瞭であるが,静脈相中期から後期相にかけて徐々に明瞭な低蛍光斑となる(図2d).この低蛍光斑は白点の観察されない部位も含めて多数みられるのが特徴である10,C11).FAFでは病変は過蛍光となるが(図2e),回復期には正常化する.LSFGでは急性期に黄斑部CMBRが減少,寛解期にCMBRが有意に上昇し,発症時の脈絡膜循環障害が示唆される12).CIII点状脈絡膜内層症PICは若年の女性に好発し,近視眼に多い疾患である13).霧視をきたし,両眼性が多い.前房や硝子体の炎症はみられない.後極部中心に,網膜深層から脈絡膜内層に黄白色の点状病巣が数個程度出現する.EDI-OCTでは活動期に軽度の脈絡膜肥厚がみられる(図3a).また,EZの障害に伴い網膜色素上皮は部分的に隆起し,外網状層(outerCplexiformClayer:OPL)に中等度の反射亢進を伴う網脈絡膜結節がみられるようになる.その後にCBruch膜も障害され,外顆粒層の脈絡膜への引き込みがみられる14)(図3b).FAでは病巣は早期から点状の過蛍光となり,後期で蛍光漏出を示す(図3c).IAでは,病巣は静脈相初期から後期相にかけて比較的明瞭な低蛍光を呈し,後期相になっても消失しない15)(図3d).FAFでは急性期では低蛍光となりその周囲は過蛍光となる(図3e).LSFGでは急性期に黄斑部CMBRが減少し,寛解期に上昇する16).治療後は色素沈着を伴った瘢痕を残すが,予後は良好である.しかし,病巣部に脈絡膜新生血管が発生すると視力が低下する.原因は不明で,軽症の多巣性脈絡膜炎の特殊型と考える意見もある.CIV多巣性脈絡膜炎MFC17)はC20~40歳代の若い女性に好発し,両眼性が多い.片眼あるいは両眼に突然の視力低下,変視症や暗点を自覚する.前房と硝子体中に炎症がみられる.網膜色素上皮から内脈絡膜レベルの黄白色の斑状病変が後極部よりは周辺部に多くみられ,後に色素沈着を伴う瘢痕病巣となる.病変はCFAで初期に低蛍光,後期で過蛍光となる.萎縮部位はCwindowdefect,線維性組織は蛍光遮断となる.IAでは初期から低蛍光を示す.再発し慢性の経過をたどり,しばしば視力は不良となる特徴がある.約C25%に.胞様黄斑浮腫を伴い,15~40%に脈絡膜新生血管が発生し,しばしば網膜下増殖をきたす18).CV急性網膜色素上皮炎ARPE19)はC20~40歳代の若年者に多く,突然の霧視で発症する.網膜色素上皮に発症した急性の炎症と考えられている.前眼部から眼底まで炎症所見はほとんどみられない.後極部の網膜色素上皮レベルに境界明瞭な小さい褐色斑が集合してみられ,それぞれが黄色の脱色素を示す輪状帯(halo)で囲まれている.経過とともにhaloは不明瞭になる.急性期のCFAでは中心部の色素沈着部は蛍光遮断による低蛍光,その周囲は組織染によ(89)あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017C1727図2多発消失性白点症候群(MEWDS)a:網膜深層から網膜色素上皮層に類円形のC100~200Cμm淡い白点が多数みられる.Cb:EDI-OCTでは急性期で脈絡膜厚がやや肥厚し,後極部のCEZやCIDZは障害される.Cc:FAでは急性期に白点に一致して早期から後期まで過蛍光が持続する.Cd:急性期のCIAでは,病変は静脈相中期から徐々に明瞭な低蛍光斑となる.白点に一致する部位以外の健常部も含めて多数みられる.e:FAFでは白点病変は過蛍光となる.1728あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017(90)C図3点状脈絡膜内層症(PIC)a:後極部中心に網膜深層から脈絡膜内層に黄白色の点状病巣が数個程度出現する.b:EDI-OCTでは活動期に軽度の脈絡膜肥厚がみられる.また,EZの障害に伴い,網膜色素上皮は部分的に隆起し,OPLに中等度の反射亢進を伴う網脈絡膜結節がみられるようになる.その後にCBruch膜も障害され,外顆粒層の脈絡膜への引き込みがみられる.Cc:FAでは病巣は早期から点状の過蛍光となり,後期で蛍光漏出を示す.Cd:IAでは静脈相初期は中大血管もよく造影され,病巣は静脈相初期から後期相には比較的明瞭な低蛍光斑となる.e:FAFでは急性期では低蛍光となり,その周囲は過蛍光となる.-

Vogt-小柳-原田病

2017年12月31日 日曜日

Vogt-小柳-原田病Vogt-Koyanagi-HaradaDisease(VKH)橋田徳康*はじめに脈絡膜を病変の主座にもつ疾患は多く,ぶどう膜炎疾患ではCVogt-小柳-原田病(Vogt-Koyanagi-HaradaCdis-ease:VKH)をはじめとして,脈絡膜炎および転移性脈絡膜腫瘍など多岐にわたっている.脈絡膜や網膜色素上皮細胞にはメラニン顆粒を含むメラノサイトがあり,これが炎症の起点になるばかりでなく,脈絡膜自体が全身臓器のなかでも一番血流の豊富な部位であるため,炎症細胞の浸潤と拡散が容易に起こり,炎症を惹起しやすい.本稿では,炎症疾患の代表例として発症頻度の高いVKHについて概説する.CI疫学VKHは,メラノサイトを標的とする両眼性の汎ぶどう膜炎であり,その頻度はC2009年に日本眼炎症学会が調査したわが国の大学病院におけるぶどう膜炎の原因疾患の調査においてはC7.0%(第C2位)と,疾患頻度の上位を占める重要な眼炎症疾患である1).日本人をはじめとしたアジア系の有色人種に多いとされる2).疾患発症がCHLAと強い相関があり,日本人を含むモンゴロイドにおいてはCHLA-DR4(DRB1*0405がC95.2%,DRB1*0410がC7.9%)やCHLA-DQB1*0401との相関が報告されている2,3).世界的にみると,VKHはアジア人(Asians),ヒスパニック(Hispanics),アメリカンインディアン(AmericanCIndians),中東人(MiddleCEast-erners)に多いことがわかっている.アフリカ系の黒人の発症はまれで,メラノサイトの存在自体で発症が決まるのではなく,黒色人種と有色アジア系人種では色素沈着の機序が異なる可能性があるからではないかと議論されている.同じアジア諸国において,近隣同士でも国により発症頻度の違いがみられることから,遺伝的背景のみならず環境因子が発症に及ぼす影響が考えられている4).40~50歳代に発症のピークがあるといわれているが,若年者から高齢者まで幅広く発症する.性差に関しては,わが国からの報告では性差はないという報告が多いが,世界的には女性に多いという報告が多く,エストロゲンやプロゲステロンなどの性ホルモンが発症にかかわるためと考えられている4).CII病態VKH病の発症メカニズムはいまだ明らかではないが,発熱や頭痛といった髄膜刺激様症状を引き起こすなんらかの感染(感冒様症状)などを契機として,HLA-DR4やそのほかの遺伝的背景がある人が発症する可能性が考えられている.最近の研究では,HLAだけでなくCkillerimmunoglobulin-likeCreceptor(KIR)とのかかわりを論じた報告もある.既報を概説すると,免疫抗原としてはチロシナーゼ遺伝子ファミリー,抗原提示機構としてHLAやCKIR,自然免疫関連因子としてCTollClike受容体・補体系,獲得免疫系としてはさまざまなサイトカイン関連因子,その他マイクロCRNAなども発症に関与するものとして報告されている4).VKHの病理は交感性眼*NoriyasuHashida:大阪大学大学院医学系研究科眼免疫再生医学講座〔別刷請求先〕橋田徳康:〒565-0871大阪府吹田市山田丘C2-2大阪大学大学院医学系研究科眼免疫再生医学講座0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(79)C1717図1発症早期の眼底所見(53歳,女性)両眼性に漿液性網膜.離を認め,視神経乳頭の発赤・腫脹および脈絡膜の皺壁もみてとれ,黄斑にはフィブリン析出所見も認められる.図2図1と同一症例のフルオレセイン眼底造影所見造影初期(造影開始約C1分後)から多発する顆粒状の蛍光漏出点を認め,視神経乳頭の過蛍光も認める.図3図1と同一症例のフルオレセイン蛍光眼底造影所見造影後期(造影開始約C15分後)には,びまん性の蛍光漏出点が融合し,胞状の大きなプーリングを形成している.図4フルオレセイン蛍光眼底造影所見視神経乳頭を中心とした多発する造影剤のプーリングが認められる.図6急性期の光干渉断層計(OCT)所見とくに炎症が強いと,網膜下にフィブリン析出が起こることもある.図5インドシアニングリーン蛍光眼底造影所見脈絡膜の造影パターンが,脈絡膜血管への造影剤の灌流不全により,充盈遅延(ダークスポット)・充盈欠損として観察される.図7VKH急性期のswept-sourceOCT所見脈絡膜厚の著しい増加と強膜との境界の不明瞭化がみられ,間質への炎症細胞浸潤により管腔構造が消失し,一見無構造な所見が認められる.網膜脈絡膜拡張した脈絡膜血管CSC網膜脈絡膜VKH炎症細胞の間質への湿潤図8CSCとVKHの脈絡膜構造のシェーマ両疾患とも脈絡膜の肥厚はみられるが,CSCにおいては脈絡膜血管拡張に伴い個々の血管腔の拡大による肥厚がみられるのに対し,VKHでは間質への炎症細胞浸潤により,血管構造が一見無構造化したように観察され,OCT像が両疾患の鑑別に役立つ.図10皮膚の白斑を生じた症例(45歳,男性)この症例は,眼所見に乏しく,頭痛・皮膚白斑など眼外症状が図9VKH回復期の夕焼け状眼底おもにみられた.ステロイド大量投与により十分な消炎を図ったものの,最終的に夕焼け状眼底を呈している.=recurrentday0day30nonrecurrentday0day30図11治療前後のレーザースペックルフローグラフィー(LSFG)VKHの再発例で,血管腔内赤血球の相対速度であるCmeanblurrate(MBR)の低下が認められる.’-

遺伝性脈絡膜疾患

2017年12月31日 日曜日

遺伝性脈絡膜疾患InheritedChorioretinalDystrophies亀谷修平*はじめに脈絡膜に病変の首座がある遺伝性疾患としてクリスタリン網膜症とコロイデレミアについて概説する.Iクリスタリン網膜症1.疫学クリスタリン網膜症(Bietti’scrystallinedystrophy:BCD)は進行性の網脈絡膜萎縮をきたす遺伝性疾患である.原因遺伝子はCYP4V2遺伝子で,遺伝形式は常染色体劣性である.頻度は5~10万人に1人程度の割合とされており,アジア人に多く,そのなかでもとくに中国人と日本人に多い.アフリカ人ではほとんど認めず,欧米人の患者もアジア系の祖先をもつものに多い.CYP4V2遺伝子変異のなかでもっとも頻度が高く,中国人と日本人に共通でみられるc.802-8_810del17ins2変異は中国で1,000~8,000世代前に起こり,その後日本に伝わり,日本人では300~1,000世代前から認められると推定されている.CYP4V2遺伝子はチトクロームP450ファミリーに属する酵素をコードしており,脂質の代謝に関与しているとされるが詳細な役割はわかっていない.CYP4V2がコードする酵素は全身性に発現し,眼組織では網膜色素上皮,網膜,脈絡膜,角膜で発現している.網膜と角膜にクリスタリン沈着を認めるほか,リンパ球や皮膚の線維芽細胞でもクリスタリン沈着が証明されている.全身性の脂質代謝異常であるが,病的意義のある異常をきたす部位は眼組織に限局されている.2.病態BCDは網膜のクリスタリン沈着を特徴とする(図1a).角膜にもクリスタリン沈着を認める.角膜のクリスタリン沈着は細隙灯顕微鏡でとらえられない場合,スペキュラーマイクロスコープにて検出できることがある.網膜のクリスタリン沈着は赤外光反射画像(infraredre.ectance:IR)で高反射となり非常に確認しやすくなる(図1b).IRは光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)の撮影部位を表示するガイドに使われていることが多いので,とくに新たな装置を購入しなくてもOCTのある施設であれば簡単に確認できる.眼底自発蛍光(fundusauto.uorescence:FAF)では網膜色素上皮の萎縮した部分が島状に低蛍光となって認められる(図1c).IRとFAFをよく比較すると,クリスタリン沈着がある部位はFAFでRPEがまだ完全に萎縮していない部分である.すなわち比較的健常な部分にクリスタリン沈着が存在することがわかる.さらに,補償光学眼底カメラ(図2)による解析でクリスタリン沈着がある部位で錐体視細胞を捕捉しやすいことがわかった(図3).クリスタリン網膜症では古くから「クリスタリン沈着が見えなくなるころに視力が著しく低下する」といわれており,クリスタリン沈着の上に錐体視細胞が残存しやすいという発見はこれまでの知見と矛盾しない1).網脈絡膜萎縮が高度に進行すると,クリスタリン沈着は徐々に減少し消失する.網膜電図(electroretino-gram:ERG)では錐体も杆体も同じように障害される.*ShuheiKameya:日本医科大学千葉北総病院眼科〔別刷請求先〕亀谷修平:〒千葉県印西市鎌苅1715日本医科大学千葉北総病院眼科0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(71)1709図1クリスタリン網膜症のmultimodal.imaginga:眼底写真.CYP4V2遺伝子c.802-8_810del17ins2ホモ変異症例.眼底のクリスタリン沈着が特徴.写真上ではクリスタリン沈着はドルーゼンと変わりないようにみえるが,実際の眼底ではクリスタリン沈着はキラキラ輝いて見える.b:赤外光反射画像(infraredre.ectance:IR).IR画像でクリスタリン沈着は高反射となり非常にわかりやすい.一つ一つのクリスタリン沈着が明瞭となる.c:眼底自発蛍光(fundusauto.uorescence:FAF).FAFでは網膜色素上皮(RPE)の萎縮した部分が島状に低蛍光となっている.IR画像と比べるとクリスタリン沈着はRPEが萎縮した部分ではなく,RPEが比較的健常な部分に存在していることがわかる.図2赤外線反射画像(IR)と補償光学眼底カメラ画像の比較(正常眼)補償光学(adaptiveoptics:AO)眼底カメラは非常に高解像度で網膜を観察可能な機器であり,黄斑中心から2°以上離れた場所から10°程度の位置までは錐体視細胞の一つ一つを識別可能である3).aは通常のIRで,bは同じ部位のAO眼底カメラ画像である.bに挿入した図はa,bの撮影範囲を示し,撮影した部位が黄斑から鼻側へ2~4°程度の位置であることを示す.bで錐体視細胞が小円形の過蛍光として識別可能である.この部位での錐体視細胞の直径はおよそ3~6μm.IRとAOは励起波長がほぼ同じである.図3クリルタリン沈着のAO画像a:クリスタリン網膜症のCIR画像.Cb:aの黄枠の部分の拡大図.とで示した部分はクリスタリン沈着が集簇して高反射となっている部分.+は黄斑中心を示す.Cc:同じ部位のCAO画像.IR画像で高反射となっているクリスタリン沈着の部位と同じ部位がCAOでも高反射となっている.Cd:cの部分の拡大.高反射となっている部分には小円形の高反射像,すなわち錐体視細胞が集簇していることがわかる.c,dのCBar=100Cμm.(b~dは文献C1より転載)C図4クリスタリン網膜症のswept.sourceOCT(SS.OCT)画像a:正常眼のCSS-OCT画像(水平断).b:クリスタリン網膜症のCSS-OCT画像(水平断).クリスタリン網膜症では脈絡膜が撮影範囲全体で菲薄化していることがわかる.強膜側脈絡膜の大血管は比較的残存しているが,網膜側脈絡膜の脈絡膜毛細血管が萎縮してほとんどみられなくなっている.b図5クリスタリン網膜症のOCTでの管状構造クリスタリン網膜症で網膜外層が比較的健常な部位と変性の強い部分の間で管状構造(outerretinaltubulation)を認める(C.).図6コロイデレミアの眼底写真眼底写真で脈絡膜大血管の透見性が非常に高くなっている.この症例のように進行した症例では,周辺部で脈絡膜毛細血管だけでなく脈絡膜大血管も萎縮して,白色の強膜が透見されている.CHM遺伝子Cp.R293X変異症例.Ca:FAで黄斑周囲の白く見える部分以外の場所では脈絡膜毛細血管の閉塞と網膜色素上皮の萎縮のため背景傾向が消失して,脈絡膜大血管が透見される.黄斑周囲の白く見える部位は比較的健常な部位の脈絡膜毛細血管による背景傾向である.Cb:FAFでも中心部の網膜色素上皮がわずかに残存している部分が過蛍光となり,その周囲は網膜色素上皮の萎縮のために低蛍光となっている.さらに周辺で白く見える部分は,脈絡膜毛細血管だけでなく脈絡膜大血管も萎縮して白色の強膜が見えている部分である.図8コロイデレミアのSS.OCT同じ症例のSS-OCT.視細胞の核がある外顆粒層は黄斑部のわずかな領域(C.の内側)に残存しその周囲では外顆粒層は消失している.EZ(ellipsoidCzone),IZ(interdigitationCzone)ラインは外顆粒層が残存する範囲よりもさらに狭い範囲(C.の内側)でのみ認められる.脈絡膜血管は外顆粒層が残存する部位にほぼ一致して認められるが,その部位でも菲薄化している.さらにその周囲では脈絡膜毛細血管と脈絡膜大血管の両者が萎縮し脈絡膜内に血管様構造はほとんど認められず,すぐ下方に強膜を認める.CHM遺伝子Cc.616dupA変異をヘテロでもつC44歳,女性.Ca:眼底写真で一見ドルーゼンと鑑別しにくい白色沈着物を多数認める.b:FAFではCspeckledFAFpattern(低蛍光と過蛍光の混在)を認める.図10コロイデレミア保因者のOCT図C4と同一症例.OCTでCRPEとCEZライン,IZラインの隆起と隆起した部分のCIZラインの不鮮明化を認める.脈絡膜の厚さは正常と変わらず,脈絡膜毛細血管と脈絡膜大血管の構造も正常と変わらない.

脈絡膜腫瘍

2017年12月31日 日曜日

脈絡膜腫瘍ClinicalFeaturesofChoroidalTumor馬詰和比古*はじめに脈絡膜に発生する腫瘍は比較的まれであるが,検診などで偶然発見される良性腫瘍で視力予後のよいもの,良性であるものの視覚の質を著しく落とすもの,そして不幸な転帰をたどる悪性腫瘍と多岐にわたる.本稿ではそれらの疫学,診断方法,治療方法を中心に解説する.I脈絡膜血管腫脈絡膜血管腫は,Sturge-Weber症候群に伴いびまん性(di.use)に発生する場合と,孤立性(circumscribed)に発生する場合に分類される.A.びまん性脈絡膜血管腫Sturge-Weber症候群は,非遺伝性の母斑症の一つで,顔面の皮膚および脳髄膜の血管腫を特徴とした疾患である.本症候群の眼病変は,びまん性脈絡膜血管腫のほかに先天緑内障がある.緑内障は本症候群の48~71%に合併し,薬物療法に対する反応は乏しく,手術療法が必要となることが多い.びまん性脈絡膜血管腫は孤立性脈絡膜血管腫に比べて腫瘍の丈が厚く,遠視化,高頻度(60%以上)に漿液性網膜.離を生じて視力低下をきたす(図1).また,先天緑内障の手術後に漿液性網膜.離が併発することも報告されている.びまん性脈絡膜血管腫の治療法には,一般的に低線量の放射線治療が行われるが,通常の外照射以外の方法として密封小線源治療(60Co,125I,106Ru,103Pd),定位照射図1びまん性脈絡膜血管腫の眼底写真丈の高い橙赤色の隆起性病変が後極部全体に広がっており,漿液性網膜.離も併存している.(g-ナイフ),粒子線治療(陽子線)などがある.近年は,抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfac-tor:VEGF)薬や光線力学的療法(photodynamicthera-py:PDT)を用いた治療も報告されているが,その効*KazuhikoUmazume:東京医科大学臨床医学系眼科学分野〔別刷請求先〕馬詰和比古:〒160-0023東京都新宿区西新宿6-7-1東京医科大学臨床医学系眼科学分野0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(63)1701IA早期IA後期図2孤立性脈絡膜血管腫の眼底写真と蛍光眼底造影写真脈絡膜血管腫は橙赤色の隆起病変として観察される.IA早期では造影超早期からネットワーク血管や過蛍光領域が描出される.PDT治療前PDT治療後図3孤立性脈絡膜血管腫に対する光線力学的療法光線力学的療法によって,網膜分離症と漿液性網膜.離が消失している.矯正視力もC0.8からC1.2まで改善している.図4脈絡膜骨腫の眼底写真とOCT像a:黄斑下鼻側に灰白色から黄色の骨腫が存在し,黄斑部には脈絡膜新生血管の合併に伴う網膜下出血を認める.Cb:脈絡膜骨腫が存在している直上は,網膜色素上皮細胞の障害に伴い,視細胞層の欠損が確認される.C図5脈絡膜骨腫の超音波断層検査と眼窩単純CTa:腫瘍の後方にアコースティックシャドーを呈している().b:病変部は骨と同定程度の高吸収域として描出される.図6脈絡膜骨腫の超音波断層検査と眼窩単純CT眼科受診を契機に肺癌の診断に至った脈絡膜転移性腫瘍の症例.Ca:黄斑部に黄色から白色調のまだらな病変の下方に胞状網膜.離を認める.フルオレセイン(FA)蛍光眼底造影では病変周囲は低蛍光で縁取りされており,後期で過蛍光と低蛍光が混在している.b:化学療法が奏効し,原発巣の縮小とともに漿液性網膜.離も消失した.図7脈絡膜悪性黒色腫の眼底写真とBモード超音波断層像a:黒褐色の隆起性病変を視神経鼻側に認める.b:Bモード超音波断層検査ではマッシュルーム様の隆起性病変としてとらえられる.図8脈絡膜悪性黒色腫のMRI像と核医学検査a:T2強調CMRIでは病変部は低信号域として描出される.Cb:123I-IMPシンチグラフィでは病変部への取り込みが確認される.C

Uveal Effusion Syndrome

2017年12月31日 日曜日

UvealE.usionSyndrome盛秀嗣*髙橋寛二*はじめにUveale.usionsyndrome(以下,本症)は,強膜異常によりぶどう膜からの滲出が発生する比較的まれな疾患である.Schepens1)らによる疾患概念の提唱に始まり,Brockhurst2)やGass3)による治療法の提示,宇山・湖崎4)による臨床面からの病型分類,さらにこれまでの数少ない報告例から発症機序が解明されてきたが,現在なおも完全解明には至っていない.本稿では本症の疾患概念,臨床所見,治療法,強膜の組織所見のレビューを行い,最近明らかになった本症の光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)による脈絡膜所見について解説した.そして,従来の検査所見にOCT所見を加えて考えられる本症の発症機序を最後に示した.I疾患概念Uveale.usionは1963年にSchepens1)らにより,体位変換によって網膜下液が容易に移動する可動性が高い非裂孔原性(滲出性)網膜.離と眼底周辺部全周に存在する毛様体・脈絡膜.離を主病像とする疾患群として,17症例の臨床像が初めて報告された.発症の原因として,外傷や網膜復位術・線維柱帯切除術などの手術による低眼圧,脈絡膜循環障害,炎症,原発閉塞隅角緑内障,眼内悪性腫瘍,真性小眼球などがあると述べられている.1990年にGass5)は,何の誘因もなく脈絡膜.離をきたす疾患をidiopathicuveale.usionsyndromeとよぶことを提唱した.現在では一般的にそのなかでも,特発性または真性小眼球に伴うものがuveale.usionsyndromeとよばれている.II病型と病態Schepens1)による疾患概念の提唱後,本症の発生機序として,1980年にBrockhurst2)は渦静脈が強膜貫通部で強膜の肥厚および硬化により絞扼され,渦静脈流出障害のために脈絡膜の静脈灌流が障害されて血流のうっ滞が起こり,脈絡膜血管からの滲出が脈絡膜上腔液として貯留する経渦静脈流出路障害説を報告した.さらに1983年にGass3)は,強膜が厚く肥厚しているため強膜の透過性が低下し,眼内の組織液の眼外への流出が障害される経強膜的流出路障害説を報告した.わが国では,宇山・湖崎4)らが臨床像,手術時に採取した強膜の組織学的所見,手術後の成績から,真性小眼球,強膜肥厚の有無により本症を3病型に分類した(表1:湖崎・宇山分類).I型は小眼球・強膜肥厚ともに認めるもの,II型は小眼球を認めず強膜肥厚が認められるもの,III型は小眼球・強膜肥厚ともに認められないものとしている.III型は裂孔不明の裂孔原性網膜.離や他の原因による滲出性網膜.離などさまざまな症例が含まれている可能性があり,強膜疾患ではないので真の本症ではないと考えられている.これまでの報告から本症の病態の本体は強膜にあると理解されており,Gass3)説(経強膜的流出路障害説)のように強膜の肥厚および硬化により強膜を透過する眼内*HidetsuguMori&*KanjiTakahashi:関西医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕盛秀嗣:〒573-1191大阪府枚方市新町2-5-1関西医科大学眼科学教室0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(53)1691表1Uveale.usionsyndromeの病型分類(湖崎・宇山分類)I型II型III型小眼球+--強膜肥厚++-強膜開窓術有効有効無効図1I型患者の眼底およびFA所見(座位)a:眼底写真.眼底下方2象限に広がる胞状の滲出性網膜.離と周辺部の脈絡膜.離を認める.b:FA像.網膜下への著明な蛍光漏出や蛍光貯留はみられない.(文献13より引用)図2患者の眼底およびFA所見(座位)a:眼底写真.眼底周辺部全周にわたり脈絡膜.離および下方に胞状の滲出性網膜.離を認める.また,黄斑部に放射状の網膜皺襞を認める.これは仰臥位時,可動性のある網膜下液が黄斑部に貯留したことによるものである.b:FA像.眼底全体に顆粒状過蛍光と低蛍光が混在したleopardspotpatternを認め,網膜色素上皮のびまん性障害を示唆する所見である.また,網膜下への蛍光漏出はみられない.(文献13より引用)正常人活動期陳旧期図4Enhanceddepthimaging(EDI)OCT像本症の脈絡膜OCT所見として,①脈絡膜肥厚,②脈絡膜外層の低反射腔,③脈絡膜内.外層の多数の点状高反射,④陳旧期の網脈絡膜萎縮性変化がみられる.(文献10より改変引用)図3IA所見早期(17秒)の時点で脈絡膜細動脈への流入を認める部分もあるが,この時点で急速なびまん性過蛍光のため脈絡膜血管の描出は不明瞭となり,1秒後(18秒)の画像からは脈絡膜静脈の描出は不可能となった.脈絡膜びまん性過蛍光は,後期まで強い輝度を維持したままであった.(文献13より引用)図6I型のBモード超音波断層像小眼球と脈絡膜肥厚を認める.(文献C10より引用)図5MRI所見(T1強調画像)a:I型,Cb:II型のCMRI画像である.I型は小眼球・短眼軸を認めるが,II型は眼球の大きさは正常である.ともに強膜肥厚(→)を認める.(文献C13より引用)図7強膜弁下強膜切除術の模式図(初回手術)球結膜切開後,眼球赤道部レベルに前方凸の厚さC1/3層のC5C×5Cmmの大きさの強膜弁とC1.5C×1.5Cmmの小さい溝を作製する.さらに,その底でC4C×4Cmmの強膜全層切除し,脈絡膜を完全露出させることがこの手術のもっとも重要な点である.すると,上脈絡膜腔に貯留していた眼内液が緩徐に漏出してくる.強膜弁はC2糸で緩く縫合しておく.(文献C13より改変引用)a術前(I型)b術後5日目図10想定される本症の病態強膜肥厚に発する脈絡膜,網膜色素上皮の病態をフローチャートと模式図で示したものである.各検査所見との関連も記載した.(文献C10より改変引用)’-’

Pachychoroid関連疾患

2017年12月31日 日曜日

Pachychoroid関連疾患Pachychoroid-RelatedDiseases大音壮太郎*はじめにPachychoroidneovasculopathyは新しい疾患概念であり,その診断基準や疫学はまだ確立していない.しかし,pachychoroidneovasculopathyと滲出型加齢黄斑変性(neovascularage-relatedmaculardegeneration:neovascularAMDもしくはwetage-relatedmaculardegeneration:wetAMD)との関係性はアジア人においてとくに重要であると考えられ,最近のホットトピックとなっている1).本稿では,“pachychoroid”とよばれる新しい考え方について紹介し,現在までに報告されている研究結果について解説する.I疾患概念と歴史Pachychoroidneovasculopathyは,中心性漿液性脈絡網膜症(centralserouschorioretinopathy:CSC)あるいはpachychoroidpigmentepitheliopathy(PPE)に続発して生じた脈絡膜新生血管(choroidalneovascular-ization:CNV)を有する疾患であり,2015年にFreundらによって報告された2).なぜこの概念が重要になるのかは,AMD・ポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvasculopathy:PCV)・CSCの研究における歴史に密接にかかわっている.これまでの研究では,neovascularAMDの表現型がアジア人と欧米人で大きく異なることが指摘されている.たとえば,欧米人のAMDでは高頻度にみられる軟性ドルーゼンが,アジア人のAMDでは必ずしも存在しない.また,欧米人のneovascularAMDではPCVの頻度は高くないが,アジア人のneovascularAMDではPCVが約半数を占める.欧米人ではAMDは女性に多い疾患であるが,日本人では男性に多い.こうした表現型の違いは,民族差だけでは説明が困難であり,疾患概念そのものを見直す必要がある.PCVにおいてCSCの既往をもつ症例があるということは古くから指摘されている.また,PCV・CSCとも脈絡膜が厚いという共通点をもつため,PCVとCSCの関連性について調べられてきた.ところが,従来CSCはCNVを生じないと考えられてきたため,「ドルーゼンがなく,脈絡膜が厚く,CSCの既往をもつCNV症例」は,「CSCから生じたCNV」ではなく,「やや特殊なneovascularAMD・PCV」という位置づけで解析が行われてきた.例としては,AMDやPCVを脈絡膜透過性亢進所見の有無で分類して解析した報告や,脈絡膜厚とAMD治療効果との関連を検討した報告などがあげられる3~5).近年,Freundらのグループを中心として,AMD・PCV・CSCの疾患概念を再定義しようとする試みが行われている.彼らは2012年,長期の経過でCSCにもtype1CNVが生じることを報告したほか6),2013年,CSCと同様の特徴をもちながら,既往も含め漿液性網膜.離を認めない症例をpachychoroidpigmentepithe-liopathy(PPE)と命名した(図1)7).さらに,2015年にはPPEから生じたと考えられるCNV症例をpachy-*SotaroOoto:京都大学大学院医学研究科眼科学〔別刷請求先〕大音壮太郎:〒606-8507京都市左京区聖護院川原町54京都大学大学院医学研究科眼科学0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(41)1679図1Pachychoroidpigmentepi-theliopathy症例(79歳,男性)a:眼底写真.ドルーゼンはみられない.色調は全体的にややオレンジがかっており,脈絡膜血管が不明瞭で,脈絡膜が厚いことを示唆する.b:眼底自発蛍光.軽度の低蛍光がみられ,網膜色素上皮異常が認められる().漿液性網膜.離の既往を示唆する過蛍光所見はない.c:スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT).深部強調法(EDI法)にて脈絡膜を可視化している.脈絡膜が厚く(),脈絡膜中大血管が拡張している(*).d:FA/IA早期相.e:同後期相.複数箇所で過蛍光がリング状に拡大しており,脈絡膜血管透過性亢進所見を示す().(文献1より改変転載)図2Pachychoroidneovasculopathy症例(42歳,男性)a:眼底写真.出血性網膜色素上皮.離とポリープ状病巣があり,周囲に漿液性網膜.離を認める.b:眼底自発蛍光.病巣部位から離れた箇所に,数カ所の網膜色素上皮異常所見がみられる().c:SD-OCT(通常スキャン).網膜色素上皮.離・ポリープ状病巣を認める(*).d:SD-OCT(EDI).脈絡膜が厚く,脈絡膜血管が拡張していることがわかる().e:FA/IA早期相.f:同後期相.ポリープ状病巣を認める().複数箇所でリング状に拡大する過蛍光がみられ,脈絡膜透過性亢進所見が存在している().(文献1より改変転載)echoroidCneovasculopathyとして報告している(図2)2).このような症例がどの程度の頻度で存在するかに関しては言及されていないが,pachychoroidCneovasculopathyの報告がC3例C3眼のCcasereportであったことを考えると,欧米人での頻度は高くないことが推察される.これは,日本人でみられるような典型的なCCSCが欧米人で少ないことを考えると自然であろう.筆者らは日本人におけるCpachychoroidCneovasculopa-thyの頻度を調べ,neovascularAMDとの相違について比較した8).この研究で,pachychoroidCneovasculop-athyはCneovascularCAMDの約C1/4程度の頻度で認められ,発症年齢・遺伝的背景が異なることが明らかとなった(詳細については第C4項に記述する).また,前房水中のCVEGF(vascularCendothelialCgrowthCfactor)濃度は,pachychoroidCneovasculopathyとCneovascularAMDで優位に異なっていた(pachychoroidCneovascu-lopathyで低値)9).さらにドルーゼンを認めずCpachy-choroidの特徴を有する地図状萎縮症例をpachychoroidgeographicCatrophy(GA)と定義したところ,従来からのCdryCAMDの約C1/4程度の頻度で認められ,同様に発症年齢や病変サイズ,遺伝的背景が異なることが明らかとなった(詳細は第C5項に記載)10).厚い脈絡膜を有するCpachychoroidCneovasculopathy・pachychoroidGAはCneovascularAMD・dryAMDと類似しているため,過去の研究ではCAMDとして扱われてきたと思われる.しかし,pachychoroidCneovasculopathy・pachy-choroidCGAはCneovascularCAMD・dryCAMDと表現型・遺伝型とも異なり,CNVやCGAの発生過程も異なる可能性があるため,区別して考えるべきである.このような症例が低くない頻度でCAMDに混ざっていたという事実は重要であり,アジア人におけるCAMD表現型の多様性や,欧米人との表現型の違いがこの事実に起因する可能性がある.今後診断基準が確立されていくことで,AMDとCpachychoroidCneovasculopathy・pachy-choroidCGAの線引きがより鮮明になり,理解が深まっていくと思われる.CII診断現在のところCpachychoroidCneovasculopathy・pachychoroidCGAの明確な診断基準は存在しないが,特徴的な所見は複数あげられている.Freundらの報告で示された特徴的所見と筆者らの行った研究での適格基準をあげ,現在提案している最新の診断基準について記載する.C1.ドルーゼンPachychoroidCneovasculopathy・pachychoroidCGAは,neovascularAMD・dryAMDと異なりドルーゼンを介さない機序で発症すると考えられる.ドルーゼンのないCneovascularAMDはアジアからの報告では数十パーセントの割合で存在するとされるが,欧米にはほとんど存在しない.こういった症例の大部分は,本来CneoC-vascularAMDではなくCpachychoroidneovasculopathyであった可能性がある.筆者らの報告では,「両眼とも黄斑部にCAREDSでのカテゴリー1〔noAMD:ドルーゼンがない,もしくは少量の硬性ドルーゼン(63Cmm未満)のみ〕」をCpachychoroidCneovasculopathy・pachy-choroidGAの適格基準とした.C2.脈絡膜厚厚い脈絡膜は,診断に重要な所見の一つである.Freundらのオリジナルの報告でCPPEとされた症例の中心窩下脈絡膜厚は,231~625Cμmであった.これをもとに筆者らの研究でのCpachychoroidCneovasculopa-thyの適格基準は,「両眼ともC200Cμm以上の中心窩下脈絡膜厚」とした8).ただし,脈絡膜厚は年齢・眼軸長との関連が大きい点や,脈絡膜厚が正規分布してかつ個体差が大きいことを考えると,特定のカットオフ値を設定するのは適当ではない.また,脈絡膜が肥厚していなくても,拡張した脈絡膜血管(pachyvessel)を認める部位には色素上皮異常・CNVが起こりうるとされている.筆者らの最新の診断基準では,脈絡膜厚のカットオフ値を設けず,pachychoroidの特徴を有するものとしている10).Pachychoroidの特徴とは,眼底で脈絡膜血管の透見性低下,光干渉断層計(opticalcoherencetomogra-phy:OCT),インドシアニングリーン蛍光造影(indo-cyanineCgreenCangiography:IA)で脈絡膜血管拡張,IAで脈絡膜血管透過性亢進である.1682あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017(44)図3脈絡膜血管透過性亢進所見脈絡膜血管透過性亢進所見の典型例.本症例ではCIA早期から脈絡膜透過性亢進所見がみられはじめ,時間とともにリング状に拡大していく.通常は,開始C10~15分にかけてリング状に過蛍光拡大がみられることが多い.Ca:0分47秒.Cb:2分52秒.Cc:9分57秒.Cd:15分C56秒.(文献C1より改変転載)~=adefbghij図4CSCの既往をもつpachychoroidneovasculopathy症例(50歳,男性)a,d:初診時.漿液性網膜.離を認め,ドルーゼンを認めない.蛍光眼底造影で噴出状の蛍光漏出を認め,CNVを示唆する所見はない.CSCの診断で経過観察となった.Ce:4カ月後,漿液性網膜.離は残存している.Cb,f:10カ月後.FA/IAでCCNVは明らかでないが,OCTでは網膜色素上皮がやや隆起している.Cg:2年半後.漿液性網膜.離は自然消失した.Ch:4年半後.Ci:6年半後.網膜色素上皮が隆起し,内部に反射を認め,CNVの発生を示唆する(矢印).c,j:7年後.FA/IAでCCNVを認める().OCTでCCNVはより明らかである().全過程において,ドルーゼンはみられない.(文献C8より転載)d図6Pachychoroidpigmentepitheliopathy(図6の症例の僚眼)a:カラー眼底写真.ドルーゼンを認めない.b:眼底自発蛍光にて顆粒状の低蛍光を示し,網膜色素上皮障害を認める.c:EDI-OCT.脈絡膜は厚く,脈絡膜血管は拡張している.は脈絡膜強膜境界面を示す.(文献C8より転載)C=3.4×10.14).IAでの脈絡膜血管透過性亢進所見は53.8%,網膜色素上皮異常はC89.7%とCpachychoroidneovasculopathyで有意に高率にみられたが,これらの所見は一部のCneovascularCAMD症例でも認められた.PachychoroidCneovasculopathyにポリープ状病巣は56.4%に認められ,neovascularAMDより多い傾向にあった.AMDの疾患感受性遺伝子として重要なCARMS2A69,CCFHCI62V多型におけるアレル頻度は,pachy-choroidCneovasculopathyとCneovascularCAMDで有意な差が認められた.ARMS2CA69S多型のCTアレル(リスクアレル)頻度はCpachychoroidCneovasculopathyで51.3%,neovascularCAMDでC64.8%であった(p=0.029).CFHCI62V多型のCAアレル頻度はCneovascularAMDでC25.5%であり,既報のCAMDにおける頻度(27%)11)とほぼ同等であったのに対し,pachchoridCneo-vasculopathyではC41.0%と,既報の正常人における頻度(40.5%)11)とほぼ一致していた(p=0.013).さらに欧米人・アジア人で共通してCAMD疾患感受性遺伝子としてあげられているC11の遺伝子を用いてCgeneticCriskscoreを定めたところ,pachychoroidCneovasculopathyとCneovascularAMDの間に有意な差を認めた(p=3.8C×10.3).これらの結果は,pachychoroidCneovasculopa-thyとCneovascularCAMDが遺伝学的に異なった疾患群であることを示唆する.このように,pachychoroidCneovasculopathyは従来のCneovascularAMDの約C1/4に認められた.本研究ではCAMDとの比較を行うためにCpachychoroidCneovas-culopathyの対象をC50歳以上としたが,40歳代にも少なからず存在するため,平均年齢はCneovascularAMDよりさらに若いことが考えられる.CSCの好発年齢が40~50歳であり,ドルーゼンの発症は通常C50~60歳以降であることを考えると,pachychoroidCneovasculopa-thyの発症年齢がCneovasucularCAMDより若めであることは理にかなっている.実臨床で,ときにC40歳代で硝子体出血を起こすようなCPCV症例を経験してきたが,このような症例はCpachychoroidCneovasculopathyであった可能性が高い.CIVPachychoroidGAと加齢黄斑変性筆者らはCpachychoroidCGAとCAMDの関係を調べるため,drusen-relatedCGA(dryCAMD)もしくはCpachy-choroidGAと診断された連続C92症例を対象として,臨床的・遺伝学的特徴について比較検討を行った10).全症例C92例のうち,21例(22.8%)がCpachychoroidGAと診断され(図7~9),71例(77.2%)がCdrusen-relatedCGAと診断された.PachychoroidCGA症例はdrusen-relatedGA症例に比べ,有意に年齢が若く(70.5歳vs78.5歳,p<0.001),病変サイズが小さく(0.9CmmC2Cvs4.0Cmm2,年齢調整後Cp=0.001),中心窩下脈絡膜厚が大きかった(353mmCvsC175mm,年齢調整後p=0.009).IAでの脈絡膜血管透過性亢進所見はC47.4%とpachychoroidCGAで有意に高率にみられた.Pseudo-drusenはCdrusen-relatedCGAのC56.3%にみられたが,pachychoroidGA症例では全例において認めなかった.病変の拡大率は,pachychoroidCGAとCdrusen-relatedGAで差を認めず,経過観察中に全例拡大した.AMDの疾患感受性遺伝子として重要なCARMS2CA69多型におけるアレル頻度は,pachychoroidGAとCdru-sen-relaetdCGAで有意な差が認められた.ARMS2A69S多型のCTアレル(リスクアレル)頻度はCpachy-choroidCGAでC31.6%,drusen-relatedCGAでC68.8%であった(p<0.001).PachchoridCGAでのリスクアレル頻度は,正常人における頻度(36.5%)程度である.さらに欧米人・アジア人で共通してCAMD疾患感受性遺伝子としてあげられているC11の遺伝子を用いてCgeneticriskCscoreを定めたところ,pachychoroidCGAとCdru-sen-relatedCGAの間に有意な差を認めた(p=0.001).これらの結果は,pachychoroidCGAとCdrusen-relatedGAが遺伝学的に異なった疾患群であることを示唆する.このように,pachychoroidCGAは従来のCdryCAMDの約C1/4に認められた.PachychoroidCGAの病変サイズが小さい理由としては,PPEの病変サイズが一般的に小さい(図1)のに対し,ドルーゼンは黄斑部全体に及ぶことがあり,ドルーゼンの退縮から形成されるdrusen-relatedGAは大きくなりやすいことがあげられ1686あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017(48)ab図7PachychoroidGA症例(60歳,男性.矯正視力0.5)a,b:カラー眼底写真では両眼ともドルーゼンを認めず,脈絡膜血管の透見性が低下している.右眼にCGAを認める.Cc,d:眼底自発蛍光ではCGAに一致して自発蛍光の低下を認め,境界部位に過蛍光を認める.Ce,f:OCTでは拡張した脈絡膜血管,圧排された脈絡膜毛細血管を認める.右眼では,GA領域の外顆粒層は菲薄化し,エリプソイドとCRPEのバンドが欠損している.中心窩下脈絡膜厚は右眼555mm,左眼521mm.(文献C10より転載)ef図8PachychoroidGA4症例(文献10より転載)a~c:82歳,男性.矯正視力C0.8.Cd~f:66歳,男性.矯正視力C0.5.Cg~i:82歳,男性.矯正視力C1.0.Cj,k:51歳,男性.矯正視力C0.5.全症例とも,眼底写真でCGAを認め,脈絡膜血管の透見性が低下し,ドルーゼンを認めない.眼底自発蛍光ではCGA領域で低蛍光.OCTは脈絡膜血管の拡張を認め,GA領域はCRPE欠損のため深部への信号強度が増加している.図9PachychoroidGAの進行(70歳,男性)a,c:初診時の眼底写真と眼底自発蛍光.矯正視力はC0.8.Cb,d:5年後の眼底写真と眼底自発蛍光.矯正視力はC0.6.GAは全方向に拡大している.(文献C10より転載)C-