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網膜・硝子体:Medical Retina 加齢黄斑変性

2018年1月31日 水曜日

網膜・硝子体:MedicalRetina加齢黄斑変性Retina-Vitreous:MedicalRetinaAge-RelatedMacularDegeneration大島裕司*石橋達朗**はじめに滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegenera-tion:AMD)の治療は,光凝固による直接凝固の時代から2000年に入り,ベルテポルフィンを用いた光線力学療法(photodynamictherapy:PDT)が開始され大きな変化が起きた.その後,2008年にペガプタニブ,2009年にラニビズマブが滲出型AMDの治療薬として認可され,抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)療法の時代を迎えることとなった.2012年にはアフリベルセプトが登場し,今まで滲出型AMDに対してなしえなかった視力維持のみならず視力改善する症例も認められるようになり,現在では抗VEGF薬が治療の主流となっている.抗VEGF療法はペガプタニブの登場以来,約10年が経った.短期的には抗VEGF療法にて視力改善が得られた症例も少なくないが,その改善した視力を維持するためには頻回の投与が必要であることが次第に知られるようになり,現在は長期的な治療管理が新たな問題となってきている.また,病型によっては抗VEGF療法のみならず,PDTとの併用など治療方法の選択が拡大してきている.そして,既存の抗VEGF薬のみならず,新たな抗VEGF薬や,新たな分子ターゲット薬などが開発中である.本稿では,新しい潮流として滲出型AMDの長期的な治療マネージメントや新しい治療薬や治療法の選択について解説する.I滲出型加齢黄斑変性の長期治療マネ-ジメント1.Reactiveによるアプローチ滲出型AMDの治療は,2008年のペガプタニブ,2009年ラニビズマブの認可後,抗VEGF療法が主流となっていることはいうまでもない.滲出型AMDに対する抗VEGF療法は,毎月1回の投与を3回連続で行い(導入期),その後の期間を維持期とよんで治療を行う.わが国のラニビズマブの維持期における再投与ガイドラインでは,維持期においては症状の悪化を認めた場合に投与を行うこととなっている.再投与の基準は,ETDRS視力で5文字以上の悪化を認めた場合と網膜病態が悪化した場合である.この方法は必要時投与(prorenata:PRN)法とよばれ,広く臨床の現場で使用されるようになった.しかし,この方法では,導入期に得られた視力を長期に維持することは困難であることが次第に知られるようになった.滲出型AMDに対してラニビズマブを用いた大規模臨床試験であるMARINA試験1),ANCHOR試験2)では,ラニビズマブを毎月,2年間固定投与を行い,視力の改善維持が得られている.2年間の試験終了後,実臨床下において治療を受けた登録患者の平均視力は徐々に悪化がみられ,試験開始から7年後には治療開始前のベースライン視力より8.6文字悪化したと報告されている(SEVEN-UPStudy)3).筆者らのラニビズマブ*YujiOshima:福岡大学筑紫病院眼科,九州大学大学院医学研究院眼科学分野**TatsuroIshibashi:九州大学大学院医学研究院眼科学分野〔別刷請求先〕大島裕司:〒818-8502福岡県筑紫野市俗明院1-1-1福岡大学筑紫病院眼科0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(35)35BCVA変化(logMAR)-0.3-0.2-0.100.10.20.3Time(month)p<0.0001*図1実臨床における必要時投与法を用いた滲出型加齢黄斑変性の平均視力変化(自験例)滲出型加齢黄斑変性に対して,導入期毎月連続3回,維持期は必要時にラニビズマブ投与を行った(PRN法).導入期終了後に改善した視力は徐々に低下し,24カ月後には治療前とほぼ同等となった.36.60カ月後にはさらに低下,治療前に比して有意に悪化した.03691215182124273033363942454851545760治療前(0.4)12W(1.0)16W168W(1.0)68W194W(0.7)(1.0)(1.0)180W(0.7)(1.0)(1.0)(1.0)(0.7)24W84W32W100W16週間隔3回投与後206W(1.0)42W投与中断期間(1.2)54W218W(1.0)156W(1.2)(0.8)図2滲出型加齢黄斑変性に対してTreatandExtend法で治療を行った症例77歳,男性.治療前視力はC0.4,中心窩下にCclassic型の脈絡膜新生血管(CNV)およびその周囲に漿液性網膜.離を認め,アフリベルセプトを用いて治療を開始した.導入期終了後,滲出はドライになり視力はC1.0に改善した.TreatCandCextend法にて治療を行い,100週後にはC16週間隔で連続C3回投与を行い病態が安定化したと考え治療を中断し,モニタリングのみに移行した.その後C56週間は治療なしで経過観察を行ったが,156週に網膜下出血,視力はC0.8へ低下,再燃と考え,再度治療をCtreatandextendで開始した.218週で視力C1.2である(治療回数:1年目C7回,2年目C3回,3年目C1回,4年目C3回,5年目C3回).BCVA変化(logMAR)-0.3-0.2-0.100.10369121518212427303336Time(month)(*p<0.05pairedt-test)図3実臨床におけるTreatandExtend法を用いた滲出型加齢黄斑変性の平均視力変化(自験例)滲出型加齢黄斑変性に対して,導入期毎月連続C3回,維持期はCtreatandextend法にてアフリベルセプト投与を行った.導入期後に改善した視力はC36カ月後までほぼ維持でき,治療前と比較して有意に視力改善していた.比較した大規模臨床試験であるCEVEREST試験では,6カ月後のポリープ退縮率が併用療法でC77.8%,PDT単独でC71.4%,ラニビズマブ単独でC28.6%とCPDTが治療に組み入れられると有意であったと報告している13).その後にCEVERESTII試験として,PDTとラニビズマブ併用群とラニビズマブ群の比較試験が行われ,1年成績が発表されている.1年後のポリープ退縮率は有意に併用群が高いだけでなく(併用群C69.3%,ラニビズマブ群34.7%),視力改善率も併用群が高かったと報告している(併用群C8.3文字,ラニビズマブ群C5.1文字)14).Matumiyaらはアフリベルセプト併用したCPDT治療C1年経過を検討し,視力および中心窩網膜厚は有意改善したと,その有効性を報告している(ポリープ閉塞率C78%)15).このように副作用リスクの減少,解剖学的,機能的改善が得られ,硝子体注射の治療回数を短期的に減少させることができることが明らかとなり,PCVに対するCPDTと抗CVEGF併用療法が見直されてきている.しかし,まだ短期的な成績報告が多く,長期にわたっての有効性および安全性が不明であるため,今後さらなる検討が必要であると考える.C2.抗VEGF単独療法ラニビズマブの認可以来,PCVに対しても抗CVEGF療法が多く行われるようになった.しかし,ラニビズマブを用いた単独治療では滲出を減少させるが,ポリープ状病巣の退縮に関してはCPDTに比べて劣ることが知られている.Hikichiらは,ラニビズマブを導入期C3回投与後,PRN法にて経過観察を行った前向き研究結果を報告している.それによるとC1年後にC94%で視力改善維持が得られるが,ポリープ閉塞率はC40%,異常血管網閉塞はなく,平均治療回数はC4.2回であった16).アフリベルセプトが認可されたC2012年以降,PCVに対してもアフリベルセプトを用いた単独治療が多く行われるようになった.多くの施設からその有効性が報告され,ラニビズマブ同様に滲出を減少させるだけでなく,ポリープ状病巣の退縮率が高率であった17,18).筆者らは,PCVに対してアフリベルセプト単独療法を多施設共同,前向き研究で行った(APOLLOCstudy).アフリベルセプトを導入期C3回投与後,2カ月毎の固定投与を行い,1年後の治療効果を検討した.1年後にはC97.6%の症例で視力改善維持が得られ,ポリープ退縮率はC72.5%,drymacula率はC78.1%と高率であった19).アフリベルセプト導入期治療後にレスキュー治療としてCPDTを併用した大規模臨床試験としてCPLANET試験が行われた.そのC1年結果は,97%以上の症例で視力改善維持が得られ,81%以上の症例でポリープの活動性が認められなかったというものであった.しかもC85%以上の症例でPDTによるレスキュー治療が必要なく,アフリベルセプト単独療法が可能であったと報告されている.これらのことより,PCVに対する抗CVEGF療法は現時点ではアフリベルセプトが第一選択であると考える.しかし,まだ長期的な効果や安全性の評価は不明であり,今後検討が必要であると考える(図4).CIII開発中の新しい薬剤現在,加齢黄斑変性に対する新しい治療が数多く開発中である.VEGFをターゲットとする新しい薬剤や新たなる分子をターゲットとした薬剤,VEGFを標的とした遺伝子治療,新しいドラッグデリバリーシステムなどである.そのなかで臨床応用が近いと考えられる新しい抗CVEGF薬について紹介する.C1.Brolucizumab(RTH258)Brolucizumab(RTH258)は,VEGF-Aを阻害する分子量約C26kDaのヒト化C1本鎖抗体(scFV)断片である.Brolucizumabはアフリベルセプトと同程度のCVEGF親和性およびレセプター結合阻害作用を有し,FC領域をもたず,分子量が小さい.そのため,他剤に比して臨床用量でアフリベルセプトのC11.13倍,ラニビズマブの22倍高いモル濃度で使用することが可能であり,その効果が期待されている.海外で行われた第二相臨床試験では,アフリベルセプトを対照薬として効果が検討されている.導入期後,両剤ともC8週ごと固定投与をC32週まで行い,それ以降はアフリベルセプトC8週ごと投与を続行し,brolucizumabはC12週ごと投与を行い,52週においてCbrolucizumabの非劣性を報告している20).最近発表された第三相大規模臨床試験(HAWKandHARRIERstudy)では,維持(39)あたらしい眼科Vol.35,No.1,2018C39治療前(0.8)3カ月後(1.5)1年後(1.2)2年後(1.2)3年後(1.2)図4ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)に対してアフリベルセプト単独療法を行った症例60歳,男性.治療前視力C0.8.中心窩下にポリープ状病巣と異常血管網,中心窩耳下側に出血性色素上皮.離を認めた.アフリベルセプト単独療法を導入期C3回の後,treatandextend法で施行した.3カ月後には色素上皮.離は縮小したがポリープ状病巣と異常血管網は残存,視力はC1.5に改善した.1年後にはポリープ状病巣は退縮,異常血管網は残存していた.3年後まで視力C1.2を維持している.治療回数はC1年目C8回,2年目C5回,3年目C4回(3年間合計C17回)であった.和性を有している.海外で行われた第一/二相臨床試験では,無治療の加齢黄斑変性患者を対象に安全性と効果が検討された.32名の対象患者は,abiciparpegol0.04.3.6CmgまでC1回硝子体投与されその後C16週まで経過観察された.その結果によるとC1.0CmgおよびC2Cmg投与では有意に中心窩網膜厚の改善と蛍光眼底造影による蛍光漏出の減少が認められている.しかし,高濃度になると有害事象として眼内炎が認められ(32人中C11人),さらなる検討が必要である21).現在,二つの第三相臨床試験(CedarandSequoiastudy)が行われているが,その結果が待たれる.おわりに滲出型CAMDの治療は抗CVEGF療法により大きく変革し,その良好な治療成績は広く認識され,現在では治療の第一選択となっている.しかし,治療効果を維持するためには継続的な加療が必要であり,患者および医療者の負担も増加している.より少ない治療回数で最大の効果を維持できるよう,既存の治療法の工夫や新たなる治療の開発が待たれるところである.いつまでも患者の視力を維持できるように,患者個々人の病態に合わせた治療を行っていく必要がある.文献1)RosenfeldPJ,BrownDM,HeierJSetal:RanibizumabforneovascularCage-relatedCmacularCdegeneration.CNEnglJMedC355:1419-1431,C20062)BrownCDM,CKaiserCPK,CMichelsCMCetCal:RanibizumabCversusCvertepor.nCforCneovascularCage-relatedCmacularCdegeneration.NEnglJMedC355:1432-1444,C20063)RofaghaS,BhisitkulRB,BoyerDSetal:Seven-yearout-comesCinCranibizumab-treatedCpatientsCinCANCHOR,MARINA,CandCHORIZON:aCmulticenterCcohortCstudy(SEVEN-UP).OphthalmologyC120:2292-2299,C20134)PedenCMC,CSunerCIJ,CHammerCMECetCal:Long-termCout-comesineyesreceiving.xed-intervaldosingofanti-vas-cularendothelialgrowthfactoragentsforwetage-relatedmaculardegeneration.OphthalmologyC122:803-808,C20155)RayessCN,CHoustonCSKS,CGuptaCOPCetCal:TreatmentCout-comesCafterC3CyearsCinCneovascularCage-relatedCmacularCdegenerationCusingCaCtreat-and-extendCregimen.CAmJOphthalmolC159:3-8,Ce1,C20156)KohCA,CLanzettaCP,CLeeCWKCetCal:RecommendedCguide-linesCforCuseCofCintravitrealCa.iberceptCwithCaCtreat-and-extendCregimenCforCtheCmanagementCofCneovascularCage-relatedCmacularCdegenerationCinCtheCasia-paci.cCregion:Creportfromaconsensuspanel.AsiaPacJOphthalmol6:C296-302,C20177)MunkCMR,CArendtCP,CYuCSCetCal:TheCimpactCofCtheCvit-reomacularCinterfaceCinCneovascularCage-relatedCmacularCdegenerationCinCaCtreat-and-extendCregimenCwithCexitCstrategy.OphthalmologyRetina1-7,C20178)FreundKB,KorobelnikJ-F,DevenyiRetal:Treat-and-extendregimenswithanti-VEGFagentsinretinaldiseas-es:aCliteratureCreviewCandCconsensusCrecommendations.CRetinaC35:1489-1506,C20159)MarukoI,IidaT,SaitoMetal:ClinicalcharacteristicsofexudativeCage-relatedCmacularCdegenerationCinCJapaneseCpatients.AmJOphthalmol144:15-22,C200710)GomiF,OhjiM,SayanagiKetal:One-yearoutcomesofphotodynamicCtherapyCinCage-relatedCmacularCdegenera-tionCandCpolypoidalCchoroidalCvasculopathyCinCJapaneseCpatients.OphthalmologyC115:141-146,C200811)KurashigeCY,COtaniCA,CSasaharaCMCetCal:Two-yearCresultsCofCphotodynamicCtherapyCforCpolypoidalCchoroidalCvasculopathy.AmCJOphthalmolC146:513-519,C200812)GomiF,SawaM,WakabayashiTetal:E.cacyofintra-vitrealbevacizumabcombinedwithphotodynamictherapyCforCpolypoidalCchoroidalCvasculopathy.CAJOPHTC150:C48-54,Ce1,C201013)KohCA,CLeeCWK,CChenCL-JCetCal:EVERESTCstudy:Ce.cacyCandCsafetyCofCvertepor.nCphotodynamicCtherapyCinCcombinationCwithCranibizumabCorCaloneCversusCranibi-zumabCmonotherapyCinCpatientsCwithCsymptomaticCmacu-larCpolypoidalCchoroidalCvasculopathy.CRetinaC32:1453-1464,C201214)KohCA,CLaiCTYY,CTakahashiCKCetCal:E.cacyCandCsafetyCofranibizumabwithorwithoutvertepor.nphotodynamictherapyforpolypoidalchoroidalvasculopathy:arandom-izedCclinicalCtrial.CJAMACOphthalmolC135:1206-1213,C201715)MatsumiyaCW,CHondaCS,COtsukaCKCetCal:One-yearCout-comeCofCcombinationCtherapyCwithCintravitrealCa.iberceptCandvertepor.nphotodynamictherapyforpolypoidalcho-roidalCvasculopathy.CGraefesCArchCClinCExpCOphthalmolC1-8,C201616)HikichiCT,CHiguchiCM,CMatsushitaCTCetCal:One-yearCresultsCofCthreeCmonthlyCranibizumabCinjectionsCandCas-neededCreinjectionsCforCpolypoidalCchoroidalCvasculopathyCinCJapaneseCpatients.CAmCJCOphthalmolC154:117-124,C201217)YamamotoA,OkadaAA,KanoMetal:One-yearresultsofCintravitrealCa.iberceptCforCpolypoidalCchoroidalCvascu-lopathy.OphthalmologyC122:1866-1872,C201518)LeeCJE,CShinCJP,CKimCHWCetCal:E.cacyCofC.xed-dosingCa.iberceptCforCtreatingCpolypoidalCchoroidalCvasculopa-thy:1-yearCresultsCofCtheCVAULTCstudy.CGraefesCArch(41)あたらしい眼科Vol.35,No.1,2018C41

白内障手術における新しい潮流

2018年1月31日 水曜日

白内障手術における新しい潮流NewErainCataractSurgery平沢学*ビッセン宮島弘子*はじめに白内障手術は,外科的治療として完成度が高く,新しい技術革新があまりないように思われるかもしれない.しかし,手術の精度や再現性を向上させ,より良好な視機能を提供できる技術が導入され,実際に臨床現場でその実力を発揮している.ここでは,前者の技術としてフェムトセカンドレーザーと術中ガイダンスシステム,後者の技術として多焦点眼内レンズ(intraocularlens:IOL)に特化して,それぞれの概要をまとめる.フェムトセカンドレーザーは,術中の前眼部画像解析に基づき,設定どおりのレーザー照射ができる.このため,術者が顕微鏡下で自分の眼で観察しながら手加減で行う操作とは次元が異なる精度と再現性を有している.術中ガイダンスシステムは,手術前の座位による測定結果に基づき,手術中の仰臥位における眼球回旋を補正し,切開位置,前.切開,乱視軸などを顕微鏡の術者視野に投影するものと,術中の屈折測定結果からIOL度数や挿入位置,乱視軸位置を提示するものがある.どちらも理想的なIOL度数や固定位置をガイドするため,術後の視機能をさらに向上させることが期待される.多焦点IOLは種類が増え,患者が裸眼において,遠方,中間,近方でどのような見え方を希望するかによってモデル選択できる時代となった.白内障手術におけるこれらの新しい潮流を紹介する.Iフェムトセカンドレーザーを用いた白内障手術1.前眼部解析結果に基づいたレーザー照射白内障手術にやっとレーザー技術が導入され,白内障手術が新しい方向に進む可能性が出てきた.フェムトセカンドレーザーを用いた白内障手術(femtosecondlaser-assistedcataractsurgery:FLACS)は,レーザーを使うことが主体のように思われがちだが,この技術の優れた点は,手術中に手術眼を前眼部解析装置で測定し,レーザー照射デザインを決めていくことである.従来の眼科におけるレーザーは,水晶体後.,虹彩,網膜の照射したい部位に,眼科医が接眼レンズを通して焦点を合わせて行っていた.フェムトセカンドレーザーでは,切開したい部位にミクロン単位の照射スポットをつなげていくので,平面のみでなくZ軸方向も余裕をもって照射することができる.2.2008年から現在までFLACSは,2008年にハンガリーにてNagyらが初めて臨床例に施行し1),10年近く経過している.現在,数社からFLACS用のフェムトセカンドレーザーが販売されているが,わが国ではアルコン社のLenSx(図1)およびAMO社のカタリスプリシジョンレーザー(図2)の2機種が医療機器として承認され,2017年までに合計で約40台が導入された.レーザー装置が高価で,症*ManabuHirasawa&*HirokoBissen-Miyajima:東京歯科大学水道橋病院眼科〔別刷請求先〕ビッセン宮島弘子:〒101-0061東京都千代田区三崎町2-9-18東京歯科大学水道橋病院眼科0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(27)27図1LenSx(アルコン社)図2カタリスプリシジョンレーザー(AMO社)図3前眼部解析結果とレーザー照射位置の確認a:モニター画面に水晶体内照射デザインが提示されている.b:水晶体断面において前.切開の深さを提示(ピンク色の線).c:水晶体への照射範囲.前.切開の深さ(ピンク色の線).水晶体内照射(黄色での塗りつぶし).C図4レーザー照射の状態a:レーザーモニター画面:照射のCcavitationbubbleが観察できる.Cb:手術顕微鏡画面.前.および水晶体内照射レーザー照射が確認できる.結果が出るかもしれない.臨床に導入されてC10年.これからC10年の発展が期待される技術である.CII術中ガイダンスシステム1.手術顕微鏡に提示されるガイダンス手術精度を上げるために,切開やCIOLの位置を術者視野に提示する装置が開発され,トーリックCIOL挿入時に活用されている.術中ガイダンスは大きく分けて,術前検査時のデータをもとに術中に提示するものと,術中の計測結果をもとに提示するものがある.前者に,Zeiss社のCCALLISOCeye(図5)とアルコン社のVERION(図6),後者にアルコン社のCORAsystem(図7)がある.C2.トーリックIOLにおける乱視軸合わせ白内障患者のうち,約C6割にC0.75D以上の角膜乱視を認めるとされ9),トーリックCIOLによる乱視矯正が可能となった.わが国においても,トーリックCIOLの良好な術後成績が報告されている10).トーリックCIOLは,乱視軸のずれC1°につき術後乱視矯正効果が約C3%低下することが知られており11),手術時の仰臥位での眼球回旋を補正する工夫がなされてきた.一般的には,手術前の検査室で坐位における水平軸や垂直軸をマークして,これを基準にして,手術時にCIOLの乱視軸を合わせる強主経線のマークを行う.しかし,マークをつける手間,マークそのもののずれが問題で,術中ガイダンスはこれらの問題を解決するすぐれた装置である.C3.術前検査結果に基づく術中ガイダンス検査時に撮影された結膜血管などの画像と,手術顕微鏡で観察される画像を一致させ,仰伏位の眼球回旋を補正し,顕微鏡の術者視野内に強主経線を提示する装置が登場した.代表的なものが,Zeiss社のCCALLISTOeye(図5)とアルコン社のCVERION(図6)である.CAL-LISTOCeyeは,術前に角膜曲率半径や眼軸長を測定しIOL度数を決定するのに用いるCIOLマスターで撮影された結膜血管を,手術時の画像と一致させ,水平線と強主経線を示す.そのほか,必要に応じて角膜切開の位置や前.切開のガイドも可能である.VERIONも同様に,MeasurementModuleで測定した結果をもとにCPlannerでCIOL度数やトーリックCIOLのモデルを決定する.この画像データをもとに,手術室のCDigitalCMakerCMで必要な情報が提示される.これらのデジタルマーキングでのトーリックCIOL乱視軸合わせはマニュアルでの乱視軸調整と比較して精度,軸調整に要する時間ともに有意に優れていると報告されている12).マニュアルでの乱視軸合わせに比べ,装置の費用がかかるが,マーキングの手間がかからず,より精度が高い軸合わせができるので,徐々に普及することが予想される.C4.術中測定結果に基づく術中ガイダンス現在,IOL度数は,術前の検査値をもとに計算されているが,理想は水晶体を摘出した後の屈折をみてCIOL度数を決めることである.アルコン社のCOptiwaveRefractiveCAnalysis(ORA)SystemCwavefrontCaber-rometer(ORACSystem)は,術中の屈折情報がリアルタイムに顕微鏡下に表示され,症例に対する最適化されたCIOL度数が提案される(図7).事前に計算して出されたCIOL度数と異なる場合は,別のCIOLが必要になる場合があり,予定CIOL度数の前後のCIOLを用意している施設もある.IOL挿入後,トーリックCIOLでは,角膜全乱視のデータをもとにもっとも適切な位置に合うまでCIOL位置を誘導するため,術後残余乱視がさらに軽減されることが期待される.導入当初は,開瞼器,角膜表面の状態,眼圧の影響が危惧されていたが,測定結果は安定しており,臨床使用に問題ないレベルになっている.とくに,IOL度数予測が困難な屈折矯正手術後例で,効力が発揮されている13).単なる屈折測定装置というだけではなく,世界中の手術結果をもとに手術によって生じる変数を定期的に最適化・アップデートし,症例を重ねるごとに医師の手技にあったCIOL定数・惹起乱視を検証することが可能となっている.海外では,先に紹介したCVERIONと一体化されたものが紹介されており,日本でも近い将来使用可能になるであろう.CIII多焦点IOL1.多焦点IOLの種類2007年から,新世代多焦点CIOLとして屈折型の30あたらしい眼科Vol.35,No.1,2018(30)図5CALLISTOeye(Zeiss社)a:IOLマスター.測定時の画像に結膜血管が記録される.Cb:顕微鏡に搭載されたCCALLISTOeye.IOLマスター撮影時と顕微鏡下の結膜血管を一致させ回旋を補正する.トーリックCIOLの乱視軸を提示.Ca図6VERION(アルコン社)a:VERIONMeasurementModuleおよびPlanner.Cb:手術顕微鏡に搭載されたCVERIONDigitalMakerM.トーリックIOLの乱視軸を提示する.ab図7ORASystem(アルコン社)a:顕微鏡につけられた測定器.b:測定画面:トーリックCIOL挿入後,最適な乱視軸に合うよう誘導する.C屈折型回折型エイエフ-1アイシーテクニスマルチシンフォニーシンフォニートリックレストアシングルピースレストアトーリックレストアマルチピースPY-60MVZMA00ZMB00ZLB00ZKB00ZXR00VZXV150-375SN6AD3SN6AD1SV25T0SND1T3-6MN60D3HOYAAMOAlcon非球面非球面非球面非球面非球面非球面非球面非球面非球面非球面非球面球面+3.0D+4.0D+4.0D+3.25+2.75extendedrangeextendedrange+4.0D+3.0D+2.5D+3.0D+4.0D2011年2009年2011年2015年2015年2017年2017年2008年2010年2014年2014年2008年図8多焦点眼内レンズ(国内承認)–

緑内障ドラッグデリバリー研究の現況と将来

2018年1月31日 水曜日

緑内障ドラッグデリバリー研究の現況と将来NewCurrentinGlaucomaMedicalTherapy:DrugDeliverySystems山本哲也*はじめに緑内障の診療にかかわる諸分野においていくつかの新潮流が認められる.本稿ではそれらの中から緑内障薬物のドラッグデリバリーに関する最近の研究成果を紹介し,薬物治療の将来を占ってみたい.現時点においては緑内障には持続的な点眼治療が常識である.しかしながら,筆者は10年以内には点眼以外の実用的なドラッグデリバリーシステムが開発され,緑内障診療が変化すると予測している.ドラッグデリバリーシステムを用いた緑内障薬物投与法としては,①薬物を入れた微小装置を用いる方法と,②薬物を生体内で分解する性質をもった担体に混入あるいは封入して用いる方法がある.投与部位としては眼内と眼外に大別される.眼内投与としては,眼球内として前房内または隅角近傍,脈絡膜上腔および硝子体内があり,眼球外として結膜下がある.眼外投与は,結膜円蓋部留置型,涙点プラグ型,コンタクトレンズ型などに細分される.本稿では,まず現在論文化されている代表的な緑内障用のドラッグデリバリーシステムをレビューする.そのうえで,ドラッグデリバリーシステムに対する筆者の考えを述べる.なお,実用化をめざして開発されているためと推定されるが,試験の成績などが論文としては公表されず,企業のプレスリリースなどとして発表されているものも数多く存在する.本稿では,ヒトを対象とした臨床試験成績でpeer-reviewjournalに公表されているものを中心として紹介する.また,すでに開発の中止された製剤は割愛した.I眼球内留置.投与型ドラッグデリバリーシステム1.BimatoprostSR眼内で自然に溶解する材質の担体にビマトプロストを含有させ眼内に投与するBimatoprostSRとよばれるドラッグデリバリーシステムがあり,すでに24カ月の第II相臨床試験が進行中で,その6カ月経過後の成績がLewisら1)により報告されている.BimatoprostSRは薬剤を含むインプラントを28ゲージの特製注射装置を用いて前房内に注射し,前房隅角に置かれたインプラントから薬物が自然に溶出するのを待つしくみである(図1).眼圧下降効果は1回投与で4~6カ月持続するように設計されているとのことである.眼圧下降量(投与16週間の平均)はベースライン眼圧と比較して,Bima-toprostSRでは平均7.2~9.5mmHg(投与量により異なる)であり,通常の点眼を行った僚眼(ビマトプロスト0.03%,1日1回点眼)では平均8.4mmHg下降していたので(図2),ビマトプロスト0.03%点眼とBimato-prostSRの眼圧下降量はほぼ同程度といえる.眼内に投与されるビマトプロストの総量は0.03%点眼用製剤のほぼ1滴分に近いとされている.また,目標組織の近傍に留置されるため,点眼製剤に認められる各種の副作用(睫毛伸長,皮膚色素沈着など)が少ないことが予想*TetsuyaYamamoto:岐阜大学大学院医学系研究科眼科学〔別刷請求先〕山本哲也:〒501-1194岐阜市柳戸1-1岐阜大学大学院医学系研究科眼科学0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(19)19abc図2BimatoprostSRによる眼圧下降量(文献1より許可転載)図1BimatoprostSR挿入後の隅角所見a:2週後,b:9カ月後,c:12カ月後.(文献1より許可転載)図3Bimatoprostocularringの挿入法(文献C4より許可転載)MeanIOP(mmHg)302928272625242322212019181716151413121110Day0Wk2Wk6Wk12Mo4Mo5Mo68AM10AM4PM8AM10AM4PM8AM10AM4PM8AM10AM4PM8AM10AM4PM8AM10AM4PM8AM10AM4PMBIMInsert+Arti.cialTears(n=63)TIMBID+Non-medicatedInsert(n=64)図4Bimatoprostocularringによる眼圧下降(文献C4より許可転載)MeanIOP(mmHg)PercentagereductioninIOPMeanIOPmeasurementandpercentagereductionateachstudyvisit30.000.0%26.8025.0021.4122.1222.49-5.0%20.3920.00-10.0%15.00-15.6%-15.0%-17.0%10.00-20.3%-20.0%5.00-24.0%-25.0%0.00-30.0%BaselineDay3Day10Day20Day30StudyvisitsMeanIOPPercentageIOPreduction図5OTX.TPによる眼圧下降(文献C6より許可転載)になるということが最大の長所である.したがって,点眼に伴う副作用やアドヒアランスの問題が大幅に改善する.点眼指導という実務的に重要な課題もなくなる.一方で,ドラッグデリバリーシステムにより眼圧下降が不十分な場合に点眼を併用するということになれば,そうした長所の一部が帳消しになる.加えて,1~6カ月ごとにドラッグデリバリーによる投与を繰り返すことは面倒なことである.また,コストもかさむことになる.眼外留置型のドラッグデリバリーシステムでは,脱落の可能性,またそれに気がつかないために事実上無治療状態が継続するといった新規の問題も生じる.C2.ドラッグデリバリーシステムの相互比較眼内,とくに眼球内投与の場合,長期的に使用するものとして副作用をとらえる必要がある.現時点までの報告では緑内障用のドラッグデリバリーシステムを用いての眼内感染の報告はないようである.しかしながら,抗VEGF薬の眼内投与による眼内炎発症率はC0.035~0.039%8)などと報告されており,緑内障薬のドラッグデリバリーシステムにおいて眼内炎発症がより少なくなるとする根拠はない.緑内障は長期管理を必要とし,したがってドラッグデリバリーによる投与を何十回も繰り返す可能性は高いので,むしろ眼内炎発症のリスクはより高くなると考えるべきである.結膜下投与の場合,投与が繰り返されるのに従い投与部位に瘢痕の生じる可能性が高い.したがって,将来の濾過手術の予後を若干不良にすることが推定される.眼外留置の場合には,上述の眼内投与に伴う問題点はない.しかしながら薬物の総量はその分多くなるので,従来から知られている点眼薬の副作用を一掃することは期待できないだろう.こうした点を総合的に考えると,複数の選択肢が提供された場合には,眼外留置型のものを選択することが少なくとも最初は無難という考えが多くなるかと思われる.C3.緑内障薬物治療体系におけるドラッグデリバリーの位置づけドラッグデリバリーによる薬物投与が,忍容性が高く,かつそれだけで他の薬物を要しないということであれば,ドラッグデリバリーが第一選択になる可能性が高い.しかしながら,その場合でも必ずしも最初からドラッグデリバリーシステムで治療開始することにはならないと考える.初めて診断を受けたばかりの患者の場合は,緑内障に関する認識が不足している状況にあることが多く,とくに初期緑内障(前視野緑内障を含む)では自覚症状がほとんどないので,点眼に比べてやや初期導入のハードルが高いと考えられるドラッグデリバリーシステムによる薬物投与を,最初の治療として勧めるべきかどうかは議論の余地がある.また,半年ごとに交換するようなドラッグデリバリーシステムでは,交換のための受診がついつい遅れがちになるといった“副作用”も懸念される.少なくとも初診の頃には,従来型の点眼薬を用いて眼圧下降効果と副作用の確認をするとともに,規則的な受診と治療の必要性を教育し,その上のステップとして,単剤治療で治療が可能だと思われる患者をドラッグデリバリーシステムに移行させるというアプローチが穏当であろう.換言すると,“単独の点眼治療C⇒単剤で治療可能であることの確認C⇒同種薬物を用いたドラッグデリバリーへの移行”がよいと考える.複数の点眼薬を用いている患者の場合には,おもに点眼の手間や副作用の減少を目的としてドラッグデリバリーシステムは使用されることになろう.もっとも,複数の薬物を含有した配合剤型のドラッグデリバリーシステムの登場で話の変わることも期待される.C4.レーザー線維柱帯形成術・MIGSとの兼合いドラッグデリバリーの総説のなかでは少し奇異に聞こえるかもしれないが,筆者はドラッグデリバリーシステムとレーザー線維柱帯形成術やCMIGS,とりわけ選択的レーザー線維柱帯形成術の類似性に着目している.ドラッグデリバリーシステムとレーザー線維柱帯形成術やMIGSは,どちらも眼圧下降効果,副作用(合併症)の少なさ,薬物アドヒアランスへの配慮の軽減といった点で類似性がある.とくに,選択的レーザー線維柱帯形成術は繰返し治療の必要性(可能性)という点でも類似している.したがって,ドラッグデリバリーシステムの実用化にあたっては,レーザー線維柱帯形成術やCMIGS24あたらしい眼科Vol.35,No.1,2018(24)

デジタルデバイス用ソフトコンタクトレンズ

2018年1月31日 水曜日

デジタルデバイス用ソフトコンタクトレンズSoftContactLensesforDigitalDeviceUsers小玉裕司*はじめにスマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスの近年の普及には目を見張るばかりである.2015年,MonicaAndersonは“TechnologyDeviceOwnership”において,米国におけるスマートフォンの普及率は2011年の35%から2015年には68%にまで増加しており,タブレットの普及率は2011年の8%から2015年には45%にまで増加していると報告している.デジタルデバイスの普及に伴い,デジタルデバイスを使用することによる目の疲れ(digitaleyestrain)が話題になってきている.VisionCouncilは2015年の“digitaleyestrainreport”において,digitaleyestrainは目の疲れだけではなく乾燥感,目の不快感,ぼやけ,かすみを特徴とし,首や肩の痛みなども伴うことがあると報告している.また,ミレニアル世代(18~29歳)の88%が,そして18歳以上の約70%がデジタルデバイスによる目の疲れを感じているとも報告している.このようにデジタル機器にさらされた現代人の目を護る目的で,各社からデジタルデバイス用ソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)が市販されてきている.本稿ではそのいくつかを紹介するとともに,実際の処方例もあわせて呈示する.Iデジタルデバイス用SCLデジタルデバイス用SCLとは,遠くの見え方の質を落とさない程度に加入度数を抑えた超低加入遠近両用SCLということができる.ほとんどの遠近両用SCLの加入度数は+0.75~+3.0Dであるが,超低加入SCLの加入度数は+0.5D以下となっている.このような超低加入SCLは初期老視への対応として処方されるだけでなく,デジタルデバイスによる眼性疲労などへの対応レンズとして処方することができる.1.2WEEKメニコンデュオ(表1)このSCLは初期老視対応遠近両用SCLとして発売されているが,筆者は早くからデジタルデバイス用SCLとしても処方してきている.症例:26歳,女性.事務職.A社FDA分類グループIVの2週間頻回交換SCLを使用しているが,長時間のパソコン業務で眼性疲労,乾燥感,軽度の頭痛を訴えて来院した.SCLのフィッティングには問題なく,視力もRV=(1.2×8.7/.3.25/14.0),LV=(1.2×8.7/.4.50/14.0)と良好で過矯正でもなかった.少し度数を下げることも考慮したが,夜間の運転が必要とのことで,長時間の近見作業による目の疲れを疑い,2WEEKメニコンデュオを処方した.RV=(1.2×8.6/.3.25/14.5),LV=(1.2×8.6/.4.75/14.5)と良好な遠見視力が得られて,その後は長時間のパソコン業務の後も眼性疲労,乾燥感,頭痛から解放され,快適な社会生活を送られている.このレンズは光学部が鼻側に偏位しており,目の照準*YujiKodama:小玉眼科医院〔別刷請求先〕小玉裕司:〒610-0121京都府城陽市寺田水度坂15-459小玉眼科医院0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(17)17表12WEEKメニコンデュオ表2バイオフィニティRアクティブTM========

屈折矯正手術

2018年1月31日 水曜日

屈折矯正手術RefractiveSurgery:Up-to-DateLiteratureReview小橋英長*坪田一男*はじめに近視,遠視,乱視などの屈折異常は,矯正視力に異常がなければ治療を要する疾患ではないという考えから以前は治療介入が軽視されてきた背景がある.しかし,高度近視はわが国の失明原因の第C4位であり,屈折異常に伴うCqualityofvision(QOV)の低下を防ぐ必要がある.近年ClaserCinCsituCkeratomileusis(LASIK),photore-fractiveCkeratectomy(PRK),有水晶体眼内レンズ(phakicCintraocularClens:phakicCIOL)に代表される屈折矯正手術は,わが国においても次第に普及しつつある.海外に比べ,わが国ではエキシマレーザーの承認が遅れたが,2000年にCPRKへの使用が承認されて以来,2000年代後半CLASIK手術件数が爆発的に増えていった.近年では,PRK後C18年,LASIK後C15年の良好な臨床成績が報告されている1,2).屈折矯正手術後に眼鏡やコンタクトレンズから開放された幸せは,多くの眼科医が想像する以上に大きい.しかし,わが国ではC2013年末に消費者庁から安易に手術を受けることを避けるよう注意喚起がなされた結果,屈折矯正手術に否定的な意見が広がった.また,屈折矯正手術の実際は一般の眼科医に十分に理解されているとは言いがたい.一方で,近年ライフスタイルの変化や社会的な知識の普及に伴い,中高年者においても高いCQOVや裸眼視機能向上のニーズが高まってきている.本稿では,屈折矯正手術の最新情報をアップデートしながら,老視矯正にも言及する.屈折矯正手術の現状を理解することは,情報が氾濫している現代において手術に対する誤解をなくし,真実の目を養うだけでなく,今後増加し続ける術後患者の転帰を考えるうえでも役立つと考えられる.CI角膜屈折矯正手術屈折矯正手術には,角膜を平坦化させ屈折力を変化させる方法と,眼内レンズ(intraocularlens:IOL)を眼内に挿入する方法がある(図1).角膜屈折矯正手術は1885年にCSchiotzが白内障術後の残余乱視に角膜切開によって矯正を行ったのが初めてとされている.わが国ではC1939年に角膜前後面放射状切開(佐藤式Cradialkeratotomy,以下CRK)が登場したが,水疱性角膜症を必発することから衰退した.1970年代には軽度~中等度近視に対してCRKが行われたが,角膜強度の低下や屈折値の日内変動を生じる問題があった.1980年代になりエキシマレーザーが開発され,PRK,LASIKが行われるようになり,以後今日に至るまで角膜屈折矯正手術の代表的術式となっている.C1.PRKPRKはCsurfaceCablationの代表的な方法である.現在,レーザーで上皮を除去する方法(trans-epithelialPRK)が通常行われている.フラップ作製に伴う合併症はないが,術後疼痛や視機能回復の遅延,角膜Chazeなどの特有の合併症が生じることがある.*HidenagaKobashi&*KazuoTsubota:慶應義塾大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕小橋長英:〒160-8582東京都新宿区信濃町C35慶應義塾大学医学部眼科学教室0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(11)C11PRKLASIK角膜SMILEPiXLPhakicIOL眼内レンズRLE図1屈折矯正手術の種類大きく分けて角膜で矯正する方法と眼内レンズ挿入術による方法がある.PRK:photorefractiveCkeratectomy,LASIK:laserCinCsitukeratomileusis,SMILE:smallCincisionClenticuleCextraction,PiXL:photorefractiveCintrastromalCcross-linking,RLE:Crefractivelensexchange.Ca図2SMILEa:VisuMaxフェムトセカンドレーザシステム(CarlZeiss社製)Cb:角膜実質をレンチクルとして抜去して屈折矯正を行う.表1SMILEとLASIKの術式比較フラップ作製なしありアイトラッキングなしありドライアイC±+乱視矯正精度やや劣る良好高次収差増加C±+RegressionC±+図3PiXLMosaic(avedro社製)がトポガイドでCUVA照射を行う.ICL中央にC0.36Cmmの貫通孔付きのレンズ(ICLCKS-AquaPORT)が開発された14).レンズ中央の貫通孔を通しCICL-水晶体間の房水循環が改善されているため,ICLと水晶体の距離Cvaultへの注意は以前ほど必要とせず,lowCvault例においても白内障進行を認めない.従来と比べCICLサイズ選択に注意を払う必要はないであろう.通常の近視性乱視だけではなく,円錐角膜や白内障手術後の屈折誤差へのタッチアップとしても有効であり,適応拡大が期待される15,16).C2.Artisan.Arti.ex前房型はCPMMA製のCArtisanと,シリコーン製のArti.exが代表的である.挿入切開創としてCArti.exは3.2Cmmであるのに対しCArtisanはC6Cmm必要であり,縫合も要する.また,術後瞳孔ブロック発症予防として虹彩切除が必要である.筆者らはバイオレットライトの近視進行抑制に着目し,光学部の分光透過率の違いから,Arti.exのほうがCArtisanよりも術後の眼軸長の延長が抑制されることを報告した17).今後,屈折矯正手術後のCregressionの予防にバイオレットライトが重要な役割を果たすことが期待される.前房型CphakicIOLの術後合併症としては角膜内皮細胞減少があり,とくにレンズ先端での虹彩把持が弱い症例は角膜内皮減少に十分注意する.CIII老視矯正中高年者に対する屈折矯正手術としては老視矯正を考慮する必要があり,アプローチとしてCrefractiveClensexchange(RLE)と角膜内Cinlayの二つがある.C1.RefractivelensexchangeRLEは屈折矯正をおもな目的とした白内障手術を意味する.水晶体摘出に伴い調節力が喪失するため,適応対象は基本的にC50歳以上の強度近視や強度遠視などの屈折異常とする.現代では白内障手術の安全性や予測性が向上し,狙い通りの矯正が可能となったことでCRLEが注目されるようになった.術前に眼鏡装用者かコンタクトレンズ装用者かどうか,その度数は遠方,中間,近方,モノビジョンのどれなのか確認する必要がある.さらに術後CIOLの狙いをどのように選択するのかを,事前にシミュレーションしておくことが望ましい.RLEは内眼手術であり,白内障手術同様に確率は低いが,網膜.離や眼内炎のリスクがある.術前の調整力,高次収差,散乱など視機能評価を十分に行い総合的にCRLEの実施を判断する必要がある.RLEを成功させるうえで,輪部減張切開やトーリックCIOLの併施もポイントとなる.今後,白内障手術のなかでもCRLEとなる症例は増加すると考えられ,最新情報に注意を払う必要がある.C2.角膜内inlayフェムトセカンドレーザーの技術によって新しく登場した治療法として,ピンホール効果による人工瞳孔(KAMRA),角膜を急峻化させて多焦点性を確保するレンズ(RainDrop)がある.筆者は角膜内Cinlayによる老視矯正手術は,RLEが何らかの理由により選択できない場合には適応となるが,いくつかの理由から発展途上の手術と考える.一つ目はフェムトセカンドレーザーが必要であり,実施施設が限定されること.二つ目は効果の個人差が大きいため不確実性が大きいこと18).三つ目は内眼手術の際にCKAMRAの着色不透明部分が手術操作の障害となることが危惧されているからである19).これらの課題を克服できる角膜内Cinlayの改良を期待する.おわりにこのC10年間で,屈折矯正手術分野の大きな変化の一つはフェムトセカンドレーザーの登場により角膜手術の多様性を拡大したことである.それによりさまざまなアプローチで屈折矯正手術が可能となり,選択肢が増えた.また,phakicCIOLは,貫通孔付きタイプが開発され,周辺虹彩切除が必要なくなり,白内障の併発が予防されることが期待される.治療法それぞれの特徴を理解し,適切な治療選択を患者に提供することが今まで以上に重要である.不満足例や合併症については,その理由を深堀してサイエンスとして解決することも重要である.屈折矯正手術は長期成績を確認することで,有効性および安全性の高い術式だけが今後生き残るであろう.14あたらしい眼科Vol.35,No.1,2018(14)’–

角膜

2018年1月31日 水曜日

角膜Cornea:RecentAdvancesandFuturePerspectives福岡秀記*外園千恵*はじめに角膜は,生体内で数少ない透明性のある組織である.角膜は,外界の病原体が眼球内へ侵入するのを防ぐとともに,外界の情報である「光」から低波長の有害な紫外線などを吸収し,可視光を網膜へ伝達する機能を備えている.生体組織である角膜が透明性を維持するためには,角膜のみならず角膜に隣接する組織,たとえば眼球結膜や眼瞼結膜,眼瞼,瞬目機能,涙液,マイボーム腺や虹彩組織などが健常であることが重要であり,角膜は隣接する組織および環境のすべてに支えられていると考えられる(図1).つまり角膜は,エネルギー状態が高くエントロピー(乱雑さ)が増大する法則を考慮すると,いったん,上皮ステムセル(stemCcell)が疲弊した状態や涙液減少などの状態に陥って周辺組織が健常性を失い支えがなくなると,角膜自体も不安定になる危険性を秘めている.したがって,角膜疾患を治療するためには,角膜をサポートする隣接する組織の健常状態も考慮に入れて治療方針を立てる必要がある.ここでは,角膜の新しい診断法および治療法の流れや将来像について述べる.CI角膜の構造角膜は,角膜上皮,角膜実質,角膜内皮に大きく分類され,角膜上皮と角膜実質の間はCBowman層,角膜実質と角膜内皮の間にはCDescemet膜が存在している.ま角膜を支える図1角膜と隣接組織との関係角膜は隣接組織である眼球結膜や眼瞼結膜,眼瞼,瞬目機能,涙液,マイボーム腺や虹彩組織とその環境に支えられている.た,近年の報告によるとCDescemet膜前部,Descemet膜と角膜実質との間にCDuaC’sClayerという強靭な膜構造があり,角膜の形状の維持に重要なのではないかと考えられている1).C1.角膜上皮角膜上皮は非角化の重層上皮で,約C50Cμmの厚みがある.角膜上皮細胞は細胞生物学的にみると角膜上皮基底細胞がおもに増殖(X)し,角膜輪部から角膜中央に移動(Y)して角膜上皮表層から脱落(Z)する.ThoftとCFriendは,これらCXYZが正常状態では均衡を保つ(X+Y=Z)というCXYZ理論を提唱し,その後長く支*HidekiFukuoka&*ChieSotozono:京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕福岡秀記:〒602-0841京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町C465京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(3)C3XX図2XYZ理論細胞増殖(X)細胞移動(Y)細胞脱落(Z)が正常では均衡(X+Y=Z)を保っている.C図3走査型レーザー顕微鏡走査型レーザー顕微鏡CHRT-2(Ca)にロストック角膜モジュール(Cb)を装着し角膜に焦点を合わせることが可能である.Map-dot-.ngerprintCdystrophy患者の角膜基底膜部に丸い構造物(Cc)を認める.図4前眼部光干渉断層画像CASIA(TOMEY)により得られた画像角膜感染巣に角膜浮腫と角膜後面のプラークを認める.図5接触型マイクロスコープCellChekC(コーナン)の角膜内皮細胞画像鮮明でコントラストの高い画像が取得可能である.図6細菌性眼内炎の硝子体を用いたBroad.rangePCRの一例細菌に独自に保存されたCDNA領域C16Sを利用してプライマー設計している.目的であるC590bp付近にバンドを認める.aメンブレンフィルター上皮表面の一層のみ実質bバラバラな細胞ブラシ上皮実質図7インプレッションサイトロジーとブラッシュサイトロジーインプレッションサイトロジー(Ca)では最表層の一層の細胞が面状に採取されるのに対し,ブラッシュサイトロジー(b)では任意の深さまで採取されるが組織構造は破壊される.図8インプレッションサイトロジー免疫染色(角膜への結膜侵入が疑われた症例)サイトケラチンC4陽性(黄色)の扁平な上皮が得られた.免疫染色結果より侵入した組織が結膜であることがわかる(青色は核染色).ABCDE角膜上皮Bowman膜角膜実質Descemet膜角膜内皮図9角膜パーツ移植角膜の一部分のみ移植する方法である.A:角膜上皮/輪部移植,B:表層角膜移植,C:深層層状角膜移植,D:角膜内皮移植.E:全層角膜移植/人工角膜.C混濁部位を除去し光学的特性を改善する「光学的角膜移植」と,角膜感染巣の物理的除去あるいは角膜穿孔に用いて眼球形状の改善を目的とする「治療的角膜移植」がある.近年の医療の進歩により,透明なホスト組織を可能な限り温存するパーツ移植が現実として可能になってきた.今後の治療の方向性を考察すると,可能な限り移植されるドナー組織が最小になるような低侵襲の術式に変遷していくと考えられる.同時に角膜の安定に寄与する周辺組織の修復や,それを補う併用治療もこれまで以上に重要になるであろう.C1.全層角膜移植角膜移植の基本ともいうべき手術方法である.どの深さの混濁にも対応でき,白内障と同時手術ができるなどの利点があげられるが,構造上ドナー組織全層を移植する術法であり,持ち込む抗原量がもっとも多い.手術はホスト角膜とドナー角膜をマニュアルで縫合するため,高度の不正乱視が発生する.フェムトセカンドレーザー技術の進歩により,周辺部がある程度透明性がある場合にレーザーによりきれいな角膜切除面を作製することが可能となった.具体的にはジグザグ型,トップハット型,マッシュルーム型などのカット方法があり,従来の方法と比較して層間のアダプテーションの改善による縫合不全の減少,強度の上昇,術後乱視の減少が期待される.術後の慎重な経過観察を行っていても,一定の割合でさまざまな合併症をきたしてCfailedgraftとなる.その合併症としては,拒絶反応,続発緑内障,感染症,角膜内皮機能不全などがあげられる.近年の長期治療成績の報告によれば,原疾患により術後の成績が異なることが明らかになった.円錐角膜やCFuchs角膜ジストロフィなどでは良好な成績である一方,水疱性角膜症,角膜再移植例,角膜炎の順に成績が悪いことが明らかとなっている.また,Stevens-Johnson症候群や眼類天疱瘡などは手術禁忌とされている.そのような疾患別の成績を考慮し,以下に記述するパーツ移植が治療成績を改善する方法として期待されている.C2.パーツ移植角膜を角膜上皮,角膜実質,角膜内皮細胞層のパーツに分けて考え,障害が発生したパーツのみ移植を行う方法である.抗原となる移植するドナー片を最小にできることで拒絶反応のリスクの低減が期待できる.これには角膜上皮/輪部移植,表層角膜移植,深層層状角膜移植,角膜内皮移植,人工角膜などが存在する(図9).ここでは角膜上皮/輪部移植,角膜内皮移植,人工角膜に絞って記述する.Ca.角膜上皮.輪部移植化学外傷やCStevens-Johnson症候群などの幹細胞疲弊による上皮性の混濁に対して,角膜上皮細胞を移植する方法である.角膜上皮細胞には強い抗原性があることから,術後の拒絶反応を考慮して,アロジェニックな細胞の使用からオートジェニックな細胞を用いる流れがある.アロジェニックな細胞を用いた角膜上皮移植術は1994年頃から行われ,免疫抑制薬の使用状況によるが,経過良好な成績を得られることもある.オートジェニックな細胞を用いた移植として,培養自家口腔粘膜上皮シート移植4.6)の長期成績が比較的良好である.ただし,片眼性の病態には僚眼の角膜輪部組織から採取された裁断片を疾患眼に移植するCSLET(simplelimbalepithelialtransplantation)7)が注目されている.現在,体細胞由来胚性幹細胞(embryonicstemcells:ES)や人工多能性幹細胞(inducedpluripotentstemcells:iPS)から角膜上皮細胞に分化した細胞を作製することが試行されており,臨床試験へ進むことが期待されている.ただし,8あたらしい眼科Vol.35,No.1,2018(8)培養ヒト角膜内皮細胞移入療法などの革新的な手術法PKPDLEKDSAEKUltra-thinDMEKDSAEK角膜内皮細胞治療の新しい潮流図10角膜内皮移植の変遷と今後ドナー由来の実質組織が薄くしていく流れにあり,それに伴い良好な術後の矯正視力が得られてきている.PKP:PenetratingCkeratoplasty,DLEK:DeepClamellarCendothelialCkeratoplasty,DSAEK:Descemetstrippingautomatedendothelialkeratoplasty,DMEK:Descemetmembraneendothelialkeratoplasty.C’’

序説:眼科のあたらしい潮流

2018年1月31日 水曜日

眼科のあたらしい潮流NewErainOphthalmology木下茂*今回の特集は,平成C30年のお正月号にふさわしく「眼科のあたらしい潮流」と題して,眼科のほぼすべての分野の話題性ある内容を網羅してみた.短期間でまとめていただいた各分野の専門家の先生方に感謝する次第である.さて,われわれは,しばしば過去に起こった事実を紐解き,そこから未来に起こりえるであろうことを予測するというプロセスを用いることがある.そこで,眼科医療についてこれを行ってみたいと思う.過去C40年間のなかで眼科を大きく変えてきたものといえば,眼内レンズ,硝子体手術,屈折矯正手術,角膜内皮移植,さまざまな抗菌薬,ドライアイ,緑内障の点眼薬の開発,抗CVEGF薬,などである.いわゆる眼科におけるアンメットニーズを掘り起こしたものである.ここには多くの日本の眼科の先達が携わってきた.一方,現在形で発展しているものとしては,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT),汎網膜眼底カメラ,mini-mallyinvasiveglaucomasurgery(MIGS),角膜クロスリンキングなどがあげられる.今回の特集では,この現在から未来への橋渡し的技術などを各専門家にまとめていただいた.角膜領域はというと,前眼部COCTに代表される画像診断技術の進歩,角膜パーツ移植,とくに角膜内皮移植と角膜クロスリンキングという新しい治療法があげられている.角膜屈折矯正手術では,laserinsituCkeratomile-usis(LASIK)から発したCsmallCincisionClenticuleextraction(SMILE)などの次世代屈折手術法,phakicCIOL,そして老視へのさまざまな対処法が取り上げられている.コンタクトレンズ領域では,日本での処方頻度が少ない遠近両用ソフトコンタクトレンズ,とくにデジタルデバイスに対応した低加入度数入りのレンズが解説されている.これは眼精疲労を防止する意味でも有用である.緑内障領域では,近未来を見据えた薬剤の投与方法として,大きな注目を集めている眼内・眼外ドラッグデリバリーシステムの開発を紹介していただいた.白内障手術はというと,フェムトセカンドレーザーによる白内障手術,術中ガイダンスシステムによる乱視矯正,そして多焦点眼内レンズに移行しそうである.滲出性加齢黄斑変性では,reactive法かCproac-tive法かを考慮しながらの抗CVEGF治療,さらには光線力学的療法(photodynamicCtherapy:PDT)*ShigeruKinoshita:京都府立医科大学感覚器未来医療学0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(1)C1が全盛期を迎えている.糖尿病網膜症では,内科的治療に大きな進歩があり,かつ抗CVEGF薬の使用が認められたことから,重症化を阻止することが可能になってきた.病的近視では,後部ぶどう腫の診断,近視性黄斑症の定義と診断が明確になり,いよいよ病態解明が間近になってきたようである.Surgicalretinaでも大きな進歩がなされている.たとえば,極小切開硝子体手術,3Dモニターによる硝子体手術(heads-upsurgery),そして黄斑円孔などへの網膜自家移植術である.ぶどう膜炎や強膜炎といった眼炎症性疾患の診断には,眼内液のCPCR(polymerasechainreaction),そしてCOCTが威力を発揮し,治療では免疫抑制薬とともにCTNF(tumorCnecrosisCfactor)阻害薬が有用になってきた.神経眼科領域では,視神経炎とCLeber遺伝性視神経症の病態についての理解が大いに進んできている.そして,最後に感染症では,multipleCPCRによる診断と,新しい治療の試みが示されている.このように,眼科のそれぞれの分野で,非常に大きな進歩がもたらされてきているのである.さて,前述のような学術的内容ではないが,米国,欧州そしてアジアへの海外出張を通して個人的に強く感じていることがある.それは各国における医療技術の発展のスピードの違い,そしてこのことへの国際企業の強い関与と各国の医療行政の規制についてである.あるいは,米国の絶対的優位性がやや脆弱化し,欧州の地位が相対的に向上し,そしてアジア,とくにCASEAN諸国が飛躍的に進歩していることである.海外出張や海外視察は地政学的な三次元的移動にもかかわらず,われわれが過去に経験してきた医療の進歩の過程をみる四次元的な移動にもつながって見えてくる.最近では,日本の眼科医にとっては,どの地域に行っても後ろ向き移動,すなわち「自己の過去の経験に照らし合わせる」体験ばかりで,前向き移動,すなわち,「ここから未来が見えてくる」ような体験は減ってきた.日本の眼科医療が熟成し,欧米社会のそれと肩を並べているからかもしれない.他方,アジア諸国における発展のスピードは恐ろしいほどの早さである.去年と今年とでは別世界と感じるようなことが日常茶飯事である.これは,未だアジアのトップ医療機関だけのことであるといえばそれまでであるが,われわれと近いレベルの眼科医療が行われているところが,シンガポールのみならず,バンコク,ホーチミン,マニラ,ニューデリー,ハイデラバードなどにも散見されるようになってきた.とくにアジアの若手眼科医の熱意と努力には敬意を払わなければならない.かつての日本人がハングリー精神をもって前のめりになって海外に出向き,努力していたのと同じ姿を目のあたりにするからである.日本の眼科医療は間違いなく成熟期を迎えており,国際化にもある程度成功しているように思われる.ただし,世界最先端の医療を日常的に行えているかというと,必ずしもそうではない.なぜなら,そこに医療保険制度という別次元の制約が諸外国以上にかかっているからである.世界における最先端医療と未来の医療に常に眼を向けながら診療を行うことは,日本の眼科が今後を生き抜くためにきわめて重要なことと思われる.2あたらしい眼科Vol.35,No.1,2018(2)

糖尿病に関する視能訓練士の意識,知識調査

2017年12月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科34(12):1784.1789,2017c糖尿病に関する視能訓練士の意識,知識調査齊藤瑞希*1上野恵美*1黒田有里*1荒井佳子*1吉崎美香*1山下英俊*3堀貞夫*1井上賢治*2*1西葛西・井上眼科病院*2井上眼科病院*3山下内科/糖尿病クリニックCSurveysofOrthoptistsinanEyeHospitalRegardingAwarenessandKnowledgeofDiabetesMellitusMizukiSaitou1),EmiUeno1),YuriKuroda1),KeikoArai1),MikaYoshizaki1),HidetoshiYamashita3),SadaoHori1)andKenjiInoue2)1)NishikasaiInouyeEyeHospital,2)InouyeEyeHospital,3)YamashitaInternalDiabetesMedicalClinic目的:視能訓練士の糖尿病に関する意識をアンケートにより,知識を試験により調査した.対象および方法:対象は井上眼科グループ視能訓練士C49名で,経験年数C5年未満をC1群,5年以上をC2群とし,糖尿病に対する意識調査をアンケートにより,また知識調査を試験により実施した.結果:意識調査アンケートの結果を点数化したところ,1群はC7.9±1.3点(平均±標準偏差),2群はC8.5±1.3点で有意差はなかった(p=0.15).知識調査の正答率はC1群でC66.6%,2群でC67.0%と差はみられなかった.試験問題の分野別正答率はC1群,2群とも糖尿病の合併症の分野がもっとも高く,日常生活の分野がもっとも低い結果であった.2群では意識と知識に中等度の相関がみられた.結論:視能訓練士に対する糖尿病教育が必要な分野は日常生活であることが明らかとなった.CPurpose:Tosurveyorthoptistsinaneyehospitalregardingtheirpresentawarenessandknowledgeofdiabe-tesCmellitus.CSubjectsandMethods:ACtotalCofC49CorthoptistsCworkingCatCourCfacilityCwereCdividedCintoCtwogroups:Group1:27individualswithlessthan5years’experience,andGroup2:22with5years’ormoreexperi-ence.CTheCsubjectsCwereCaskedCtoCanswerCtheCquestionnaireConCawarenessCregardingCdiabetesCmellitus,CandCthenCundergoCaCbriefCexaminationConCknowledgeCofCdiabetes.CTheCresultsCofCeachCquestionnaireCwereCscoredCintoC3Cgrades.CTheCexaminationCconsistedCofC50Cquestions,CwithC2CpointsCgivenCforCeachCcorrectCanswer.CResults:TheawarenessscoresinGroup1were7.9±1.3(mean±SD)andthoseinGroup2were8.5±1.3.Therewasnostatisti-callysigni.cantdi.erencebetweenthegroups(p=0.15).Prevalenceofcorrectexaminationanswerswas66.6%CinGroup1and67.0%inGroup2;thedi.erencewasnotstatisticallysigni.cant.Inbothgroups,prevalenceofcor-rectanswerswashighestforquestionsondiabeticcomplicationsandlowestforquestionsondailylifecare.Moder-atecorrelationwasobservedbetweenawarenessandknowledgeinGroup2(Pearson,r=0.51).CConclusion:Thepresentstudysuggeststhatorthoptistsdeepentheirknowledgeregardingdailylifecareofdiabeticpatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)34(12):1784.1789,C2017〕Keywords:糖尿病,視能訓練士,知識調査,意識調査.diabetesmellitus,orthoptists,knowledgeinvestigation,awarenessinvestigation.Cはじめに眼科には全身疾患に起因し,眼症状が発症する疾患が多く存在する.それらの疾患の代表的なものの一つに糖尿病があげられる.厚生労働省の国民健康・栄養調査によると,日本における糖尿病患者はC950万人と急激に増加しており1),西葛西・井上眼科病院(以下,当院)にも糖尿病を有する患者が多数来院する.当院では診察の前に検査を行うことが多く,来院した患者の大半がはじめに視能訓練士と接する.糖尿病は病状により,眼症状の変化,体調の急変が起こる病気であるため,視能訓練士は患者の様子に気を配り,状態に合わせた正しい判断をする必要がある.また,糖尿病療養指導士の役割・機能〔別刷請求先〕齊藤瑞希:〒134-0088東京都江戸川区西葛西C3-12-14西葛西・井上眼科病院Reprintrequests:MizukiSaito,M.D.,Ph.D.,NishikasaiInouyeEyeHospital,3-12-14,Nishikasai,Edogawa,Tokyo134-0088,CJAPAN1784(146)によると,初診時にできる限り多くの患者情報を得ることが,治療方針の決定や療養指導計画に大きな影響力をもつとあることから2),来院後,患者にはじめに接する視能訓練士は糖尿病についての正しい知識が必要であると考えられる.これまでの看護師を対象にした富永らの研究では,質問表を用いて糖尿病看護に関する意識調査を行った結果,経験年数C10年以上とC10年未満では,いずれのカテゴリーにおいても平均点に有意差を認めなかったと報告されているが3),これまで視能訓練士を対象にした糖尿病に対する意識調査や知識調査を考察した報告はない.そこで当院の視能訓練士が糖尿病についてどの程度の意識を有しているかを知るためにアンケートを,また糖尿病の知識についての試験を実施し,当院視能訓練士の糖尿病についての意識・知識の実情を知り,糖尿病に対する意識の向上ならびに知識の習得と今後の教育に役立てることを目的とした.CI対象および方法1.対象対象は井上眼科グループの視能訓練士C49名(男性C8名,女性C41名)であった.49名を業務の大部分が自立してでき,教育にも携わっているかどうかを基準とし,経験年数C5年未満とC5年以上に分けた.経験年数C5年未満(平均経験年数C2.3±1.3年)のC27名をC1群,5年以上(平均経験年数C14.0C±6.2年)のC22名をC2群とした.C2.方法はじめに自らの糖尿病についての意識を調査するため,①意識調査アンケートを実施した(図1).意識調査アンケートは計C5問で分野ごとに分類した.分野CA:病態生理,分野B:診断,分野CC:合併症,分野CD:治療法,分野CE:日常生活とし,よく知っている・知っている・あまり知らないの3段階で回答してもらった.結果では,よく知っているをC3点,知っているをC2点,あまり知らないをC1点に点数化し集計した.②糖尿病の知識について簡潔な試験(図2)を実施した.当院の看護師に協力を依頼し,日本糖尿病学会専門医監修のもとに作成したC1問C2点,計C25問,50点満点の試験問題を使用した.実際の試験用紙に分野と解答,および各問題に対するC1群とC2群の正答率を追記したものが図2である.試験問題はアンケートと同様の分野A.Eに分類した.③意識と知識の相関を知るため,Pearsonの積率相関係数を施行した.CII結果①意識調査アンケートによる合計点数はC1群でC7.9C±1.3点(平均C±標準偏差),2群でC8.5C±1.3点であった(t検定p=0.15)(図3).意識調査アンケートを分野別に比較したところ,各分野でC1群とC2群に有意差はみられなかった(図4).②糖尿病の試験はC1群でC33.3C±4.8点(平均C±標準偏差),2群でC33.5C±4.6点で,正答率はC1群C66.6%でC2群C67.0%と経験年数による有意差はみられなかった(t検定p=0.3)(図5).分野別正答率は,分野CAはC1群C81.9%,2群C81.3%;分意識調査アンケート入職年名前①糖尿病の原因について(分野A:病態生理)よく知っている・知っている・あまり知らない②CHbA1c,血糖値それぞれいくつ位から糖尿病かについて(分野CB:診断)よく知っている・知っている・あまり知らない③糖尿病の合併症について(分野C:合併症)よく知っている・知っている・あまり知らない④糖尿病の治療について(分野D:治療法)よく知っている・知っている・あまり知らない⑤低血糖発作が起きた時の対応について(分野E:日常生活)よく知っている・知っている・あまり知らない図1意識調査アンケートの設問「よく知っている」をC3点,「知っている」をC2点,「あまり知らない」をC1点に点数化し集計した.(147)あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017C1785視能訓練士の糖尿病に関する基礎知識の設問月日氏名経験年目正しいものには○,間違っているものには×を記入せよ.(1問C2点)(○)C1.糖尿病は,慢性の高血糖を主徴とする代表疾患である.(×)C2.血糖を下げるホルモンは,グルカゴンである.(×)C3.糖尿病の診断基準として,HbA1c6.5%以上空腹時血糖値140以上などがある.(×)C4.HbA1c(NGSP)は日本の基準値である.(○)C5.1型糖尿病は自己免疫により膵臓が破壊されインスリンが分泌されなくなる病気である.(×)C6.II型糖尿病には遺伝要素はない.(○)C7.糖尿病のC3大合併症は糖尿病網膜症,糖尿病性腎症,糖尿病性神経障害である.(○)C8.糖尿病の慢性合併症は,血管の動脈硬化による狭窄,閉塞によって引き起こされる.(×)C9.多発する軟性白斑の存在は,増殖糖尿病網膜症である.(×)10.網膜症CA2(P)と記載されているのは増殖前糖尿病網膜症である.(×)11.現在,失明の原因疾患の第C1位は糖尿病である.(○)12.血糖のコントロールを良くすると単純網膜症は改善する.(○)13.糖尿病による腎障害が進行すると尿から蛋白が出る.(○)14.糖尿病神経障害を発症すると,足の裏に違和感を感じる.(○)15.神経障害によるしびれは,手足の末端から出現する.(×)16.糖尿病は血糖値が下がり,検査値が正常範囲になれば完治したという.(×)17.血糖値が高い場合は,意識障害は起こらない.(○)18.血糖値が高いと,血圧,悪玉コレステロールなども上がりやすい.(×)19.手術などの大きなストレスがかかると,一般的に血糖値は低下する.(○)20.運動療法は,食後すぐに行うのが良い.(○)21.低血糖症状を疑った場合は,速やかに糖質を摂取する.(×)22.2型糖尿病の場合,インスリン治療は行わない.(×)23.進行性の網膜症がある場合は,急激に血糖を下げる必要がある.(×)24.糖尿病患者には,運転免許取得・継続に関する条件はない.(×)25.糖尿病患者は職業に制限や条件をかけられることはない.分野A:病態生理,分野B:診断,分野C:合併症,分野D:治療法,分野E:日常生活設問分野正答率(%)1群正答率(%)2群C1CAC80.0C75.0C2CAC95.0C80.0C3CBC25.0C35.0C4CBC80.0C65.0C5CAC80.0C95.0C6CAC65.0C75.0C7CCC95.0C95.0C8CCC75.0C75.0C9CBC45.0C30.0C10CBC40.0C35.0C11CAC90.0C75.0C12CCC70.0C75.0C13CCC75.0C75.0C14CCC70.0C70.0C15CCC95.0C100.0C16CAC100.0C90.0C17CCC65.0C65.0C18CAC85.0C85.0C19CAC65.0C75.0C20CDC5.0C0.0C21CDC80.0C100.0C22CDC80.0C80.0C23CDC80.0C95.0C24CEC20.0C5.0C25CEC10.0C25.0図2試験1問C2点,計C25問,50点満点にて採点し,さらにC25問を分野A,B,C,D,Eに分類した.全問題の正答率は1群66.6%,2群67.0%であった.分野Aは1群81.9%,2群81.3%;分野Bは1群48.8%,2群42.5%;分野Cは1群C77.8%,2群C78.6%;分野CDはC1群C61.1%,2群C69.3%;分野CEはC1群C14.8%,2群C13.6%であった.野Bは1群4C8.8%,2群4C2.5%;分野Cは1群7C7.8%,C2群がC1群に比べ点数が高く,有意差がみられた(Ct検定p=群7C8.6%;分野Dは1群6C1.1%,2群6C9.3%;分野Eは10.04).群C14.8%,C2群C13.6%であった(図6).分野CAの正答率がC1その他の分野では有意差はみられなかった.群C2群ともに高く,分野CEの正答率はC5つの分野のなかで③意識と知識の相関:C1群では意識と知識に相関はみられもっとも低い結果となった.分野CDについての設問ではC2なかったが,C2群では意識,知識に中等度の相関がみられた平均点7.9±1.3点8.5±1.3点図3意識調査アンケート結果(点)1群C27名,2群C22名の意識調査アンケートの結果を点数化し,平均点を比較した.2群間に有意差はなかった.(t検定p=0.15).C平均点正答率33.3±4.8点66.6%33.5±4.6点67.0%18.24図5試験結果(点)1群C27名,2群C22名の試験結果の合計点の平均点を比較した.2群間に有意差はなかった(t検定p=0.42).(Pearsonの積率相関係数Cr=0.48)(図7a,b).CIII考察①意識調査:1群は意識調査アンケートによる自己評価にて糖尿病についてC1.5のすべての項目に対し,あまり知らないと評価する職員が多くみられた.これは経験の浅さによる自信不足が原因と考えられる.とくに,低血糖発作時の対応についてC1群は意識調査アンケートにてあまり知らないと答える職員が多い傾向にあった.1群には,今後,自信不足を補う教育が必要と考えられるが,とくに低血糖発作時の対応についての教育が必要であることが意識調査アンケートから読み取ることができた.②知識調査:1群とC2群に共通していた事項として,分野(149)分野A1.6点1.7点分野B分野E1.1点1.3点1.4点1.7点1.8点2.0点1.8点分野D分野C2.0点図4意識調査アンケート分野別比較(平均点)意識調査アンケートの結果を分野別に分け平均点をC1群とC2群で比較した.すべての分野においてC2群間に有意差はなかった(t検定各p>0.05).C81.9%分野A81.3%分野E分野B14.8%48.8%13.6%42.5%61.1%分野D分野C77.8%69.3%78.6%t検定(p<0.05)図6試験分野別正答率(%)試験の結果を分野別に分け平均点をC1群とC2群で比較した.分野CDのみC2群間に有意差がみられた(t検定p=0.04).Aの正答率がもっとも高く,分野CEの正答率がもっとも低かった.また,設問別では設問C20の正答率がもっとも低かった.分野CAは糖尿病の病態生理にかかわる内容である.分野CAの正答率が高かったことは,コメディカルも知っておきたいガイドラインにおおむね準じており4),好ましい結果となった.正答率がもっとも低かった分野CEは患者の日常生活にかかわる内容である.視能訓練士は検査を行うだけではなく,患者への情報提供,ロービジョンケアも行う.また,当院では患者と接する機会が多い視能訓練士が運転免許取得・継続にかかわる問い合わせを患者から受けることがある.そのため,病気に関する知識だけではなく,患者の日常生活にかかわる事項についての知識を有することも重要である5).分野CEの設問C25は糖尿病と職業についての設問で,Cあたらしい眼科Vol.34,No.12,2017C17875050454540403535303025201525201510r2=0.019105Pearson’sr=0.145000123456789101112131415意識調査(点)図7a意識・知識の相関(1群)1群の意識と知識の相関をCPeasonの積率相関係数にて調べた結果を示す.1群では意識と知識に相関はみられなかった(r=0.14).C低血糖が起きたときに危険な職業などでは制限や条件がかけられることがあるということを知っているかを問う目的で作成したが,WHO(世界保健機構)が「糖尿病であることを理由に職業が制限されるべきではない」としているなか,必ず制限や条件をかけられるような印象の文章となっているため正答率に影響を及ぼした可能性があった.また,全C25の設問のなかでもっとも正答率が低かった設問C20に関しても,運動療法を行うのは食間や空腹時ではないことを知っているか問う目的で『糖尿病治療のてびき改訂第C56版』を参考にして作成したが5),具体的な時間はなく「食後」とのみ記されていたため,「運動療法は,食後すぐ行う方が良い」を正解としている.しかし「すぐ」は「直後」とも解釈可能であり,設問として適切な表現ではなかったことと,『糖尿病治療ガイドC2014-2015』では「食後C1時間頃が望ましい」と時間が記されており6),それを読んだことがある職員がいた場合は試験結果に影響を及ぼした可能性があった.1群とC2群に有意差がみられたのは,分野CDの正答率であった.分野CDは治療法にかかわる内容である.治療法には低血糖発作時の対応を問う問題もあり,2群はC1群よりも経験を有しているため,臨床の現場で実際に低血糖発作を起こした患者をC1群よりも多くの職員が経験したことがあるためと推測でき,①の意識調査とも関連していると考えられた.③相関の考察:2群は意識と知識に中等度の相関がみられ,自己の意識を正当に評価する職員が多くみられたが,1群に比べ経験があるにもかかわらず全試験問題の正答率はC2群と大差なかった.このことはC1群は経験の浅さから「あまり知らない」と自己評価した職員が多かったためと思われた.1群のなかでC1年目,2年目,3年目のアンケートと試験の平均点を比較したところ,1年目:アンケートC7.4点・試験0123456789101112131415意識調査(点)図7b意識・知識の相関(2群)2群の意識と知識の相関をCPeasonの積率相関係数にて調べた結果を示す.2群では意識と知識に中等度の相関がみられた(r=0.48).35.3点,2年目:アンケートC8.3点・試験C31.3点,3年目:アンケートC8.0点・試験C33点と,1年目は試験の平均点が一番高いにもかかわらずアンケート平均点が一番低かったことからも実情を反映できているのではないかと推測した.ただし,自己申告制であるため謙遜して答えた場合は意識・知識調査の相関に影響が出ることは否めず,アンケート方法には今後検討が必要である.今回の調査により,視能訓練士の知識が糖尿病患者の日常生活に関する分野で不足していることが明らかとなり,その分野に重点を置いて視能訓練士の教育を行う必要があることがわかった.また,意識と知識の相関を調べた結果,1群は2群と同程度の知識を有しているが知識を有しているという意識が低いことがわかり,意識を向上させることが重要であることがわかった.今後は視能訓練士に試験結果にて点数が低かった分野に重点を置き教育を行うことで知識が向上し,それに伴い糖尿病について知識を有しているという意識も向上することが期待される.今回の意識調査と知識調査の設問に関して不適切と思われる部分があったため詳細に再検討したが,結果が多少変動したものの,結論の変更に至らないことを確認した.今後調査を行う際には十分配慮して行う方針である.CIV結論糖尿病患者に安全な診療を行うためには,視能訓練士が糖尿病について正しい知識を習得する必要があり,今後は知識が保たれているかどうかと,知識に相関し,意識の向上が認められるかどうかを調査するため,試験と意識調査アンケートを期間をあけて繰り返し定期的に行い,視能訓練士の教育に資する必要があると考える.C文献1)中江公裕,増田寛治郎,妹尾正ほか:わが国における視覚障害の現状.厚生労働科学研究研究費補助金難治性疾患克服研究事業網脈絡膜・視神経萎縮障害に関する研究平成C17年度統括・分担研究報告書(主任研究者:石橋達朗),p263-267,20062)日本糖尿病療養指導士認定機構編:糖尿病療養指導士の役割・機能.日本糖尿病療養指導士受験ガイドブックC2000,p9-14,20003)富永玲子,松本千佳,松山典子ほか:質問表を用いた糖尿病看護に関する意識調査.糖尿病53:713-718,C20104)石井純:コメディカルも知っておきたいガイドラインC1,2.糖尿病ケア7:225-269,C20105)雨宮伸,石塚達夫,犬飼敏彦ほか:糖尿病と日常生活.糖尿病治療の手びき,改訂第C56版(日本糖尿病学会編・著),p195-200,南江堂,20146)日本糖尿病学会:運動療法.糖尿病治療ガイドC2014-2015.p44-45,文光堂,2014***

結節性硬化症に難治性の裂孔原性網膜剝離を合併した1例

2017年12月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科34(12):1781.1783,2017c結節性硬化症に難治性の裂孔原性網膜.離を合併した1例平井和奈*1青木悠*1佐藤圭悟*2井田洋輔*2伊藤格*2渡部恵*1大黒浩*1*1札幌医科大学眼科学講座*2市立室蘭総合病院眼科CACaseofRefractoryRetinalDetachmentinaPatientwithTuberousSclerosisKazunaHirai1),HarukaAoki1),KeigoSato2),YousukeIda2),KakuIto2),MegumiWatanabe1)andHiroshiOoguro1)1)DepartmentofOphthalmology,SapporoMedicalUniversity,2)DepartmentofOphthalmology,MuroranCityGeneralHospital目的:今回筆者らは結節性硬化症患者に難治性の裂孔原性網膜.離を合併したC1例を経験したので報告する.症例:18歳,男性.平成C28年C1月より右眼の視力低下を自覚し近医を受診.眼底に結節性硬化症による網膜過誤腫および硝子体出血を伴う網膜.離を認め,札幌医科大学附属病院紹介となった.初診時に周辺部に多発する網膜過誤腫および鼻側上方に裂孔を認め,同年C4月に網膜輪状締結術を施行した.しかし,網膜復位を得ることができず,右眼硝子体手術,六フッ化硫黄ガス(sulferhexa.uoride:SCF6)置換を施行.その後網膜復位を得ることができたが,経過観察中に再.離を認めたため,同年C5月に右眼硝子体手術,シリコーンオイル置換を施行し現在まで再.離なく経過している.結論:本症例では周辺部網膜に多発した網膜過誤腫により硝子体の牽引や網膜収縮が生じ,これらの要因が網膜.離の復位を困難にさせた可能性が示唆された.CPurpose:ToCreportCaCcaseCofCrefractoryCretinalCdetachmentCinCan18-year-oldCmaleCwithCtuberousCsclerosis.CCasereport:Thepatientvisitedanophthalmologicclinicbecauseofvisuallossinhisrighteye.Hamartomaandvitreoushaemorrhagerelatedwithtuberoussclerosiswerefoundintheeye,andhewasreferredtoSapporoMedi-calCUniversityCHospital.CRetinalCdetachmentCwithCmultipleChamartomaCwasCobservedCinCtheCeye.CInitialCsurgeryCemployedtheencirclingprocedure,butretinopexycouldnotbeattained.TheeyewasthenoperatedbyPPVwithgastamponade,andretinopexywasachieveded.Duringfollow-up,retinaldetachmentwasagainfoundintheeye,whichthenunderwentPPV+PEA+IOL+siliconeoiltamponade.Retinopexyhasbeenmaintainedthusfar.Conclu-sion:Retinalmultiplehamartomamaycausevitreoustractionandretinalshrinkage,resultinginrefractoryretinaldetachment.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C34(12):1781.1783,C2017〕Keywords:結節性硬化症,過誤腫,網膜.離.tuberoussclerosis.hamartoma,retinaldetachment.はじめに結節性硬化症は全身の諸臓器に過誤腫や白斑を認め,精神発達障害や行動異常などさまざまな症状を呈する疾患である1).眼合併症として網膜過誤腫および無色素斑を認めることが多い2)が裂孔原性網膜.離を合併した報告例は少ない.今回筆者らは結節性硬化症に合併した網膜.離で治療に難渋した症例を経験したので報告する.CI症例患者:18歳,男性.主訴:右眼の視力低下.既往歴および家族歴:0歳:結節性硬化症,3歳:てんかん発作(1度のみ),9歳,17歳:脳腫瘍で手術.現病歴:平成C28年C1月,右眼視力低下を自覚し近医を受診.網膜.離の精査目的に市立室蘭総合病院紹介となり,右眼眼底に結節性硬化症による網膜過誤腫と硝子体出血を伴う裂孔原性網膜.離が認められ,手術目的にC4月C12日札幌医科大学附属病院(以下,当院)紹介となった.初診時視力右眼C0.02(n.c.),左眼C0.3(1.0C×.2.75D(cyl.1.00DCAx25°),眼圧右眼C10.0CmmHg,左眼C11.0CmmHg,前眼部および中間〔別刷請求先〕平井和奈:〒060-8543札幌市中央区南C1条西C16丁目札幌医科大学眼科学講座Reprintrequests:KazunaHirai,DepartmentofOphthalmology,SapporoMedicalUniversity,S.1,W.16,Chuo-ku,Sapporo,Hokkaido060-8543,JAPAN0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(143)C1781図1入院時右眼眼底所見右眼C1時方向に原因裂孔,11.2時にかけて網膜.離を認め,周辺部に器質化した硝子体出血を伴っていた.図3退院時右眼眼底所見シリコーンオイル下にて再.離なし.透光体に特記すべき異常なし.右眼C1時方向に裂孔を認め,11.2時方向に網膜.離を認め,周辺部に器質化した硝子体出血およびC2,9,11時方向に多発する網膜過誤腫を認めた(図1).硝子体出血減少後の眼底検査や眼底写真では網膜.離は黄斑部までは達していなかったが,硝子体出血のため黄斑部COCTは描出不良だった.CII経過平成C28年C4月C13日に右眼網膜.離に対し全身麻酔下で右眼網膜輪状締結術を施行した.術式は,原因裂孔に対して冷凍凝固を行い,網膜下液の排液はせず,2,4,7,10時に輪部からC13Cmmの位置に強膜トンネルを作製し,厚さC0.6図2術後所見網膜復位を得ることができた.mm,幅C2.5Cmmのシリコーンバンド(#240,MIRA社)で輪状締結を行った.網膜下液は減少したが,裂孔の閉鎖を得ることができずC11.7時方向の網膜.離が残存したため,4月25日全身麻酔下で水晶体温存のC25ゲージ硝子体切除術を施行し,SFC6ガス置換をして終了となった.その後は網膜復位し退院となり,市立室蘭総合病院通院となった(図2).5月C19日に再.離を認めC5月C20日当院に再入院となった.入院時視力右眼手動弁C30Ccm,前眼部および中間透光体に特記すべき異常なし.右眼眼底にC11時方向に原因裂孔を認め,ほぼ全周にわたる網膜.離で黄斑.離を伴っていた.5月23日に全身麻酔下で右眼水晶体再建術,眼内レンズ挿入術,25ゲージ硝子体切除術,シリコーンオイル置換を行った.術中は輪状締結周囲の硝子体皮質の癒着が認められ,鉗子を用いて丁寧に癒着を解除する必要があった.その後は網膜復位を得ることができ,退院時視力右眼(0.2)で現在まで良好な経過をたどっている.現在オイル下での網膜復位を得ることができており,今後シリコーンオイル抜去を行う予定となっている.CIII考按結節性硬化症はCtuberousCsclerosisCcomplex1(TSC1),tuberoussclerosiscomplex2(TSC2)のいずれか一方に生じた遺伝子変化により遺伝子の発現が低下もしくは抑制され,遺伝子にコードされる腫瘍抑制因子の発現が低下することで全身の諸臓器に局所性の形成異常や過誤腫を発生する疾患として知られている2).約C50%に眼病変を合併するといわれており3),眼病変の多くが網膜過誤腫や無色素斑で,網膜.離の症例報告は少ない4).現在,結節性硬化症のさまざまな病1782あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017(144)変に関する発生メカニズムが解明されてきているが,まだ具体的なメカニズムが明らかになっていない病態も多い.過去に,結節性硬化症患者が網膜過誤腫により漿液性網膜.離や硝子体出血を引き起こした症例が複数認められているが,これらの症例では自然軽快を認める例も多く,外科的な治療を要する例は少ない5).裂孔原性網膜.離に関しては,網膜過誤腫により硝子体牽引を引き起こした症例が報告されている6,7).本症例は初回手術では若年で周辺側に単一の裂孔があったことから強膜内陥術を施行した.初診時には硝子体出血を認めていたが,.離は黄斑部まで達しておらず視力低下は器質化した硝子体出血の影響が考えられた.また,裂孔の径が小さかったことから,眼球運動障害の出にくいシリコーンバンドのみでの輪状締結術としたが,裂孔の閉鎖を得ることができず,硝子体の牽引が強く輪状締結のみでは網膜下液が引き切らなかったため硝子体切除術を施行した.1回目の硝子体切除術では水晶体温存で行ったが,本症例のような若年者の場合,人工レンズ挿入術を行うことで近見障害を惹起し,術後の視機能が劣化するため,有水晶体眼の状態で硝子体切除術を行った.それにより硝子体牽引は解除し,いったんは復位したが,若年者の完全な硝子体の郭清の困難さに加え,網膜過誤腫による硝子体癒着が影響し,再.離を起こしたものと考えられた.したがって,結節性硬化症に伴う裂孔原性網膜.離は,硝子体牽引や網膜収縮を引き起こし再.離を引き起こす可能性があると考えられた.今回筆者らは結節性硬化症に難渋した裂孔原性網膜.離を合併した症例を経験した.多発する網膜過誤腫は硝子体牽引や網膜収縮を引き起こし治療を困難にさせる可能性があるため手術を行う際は,輪状締結併用硝子体手術や周辺まで徹底した硝子体郭清など慎重に治療方針を検討する必要があると考えられた.文献1)NorthrupH,KruegerDA;InternationalTuberousSclero-sisCComplexCConsensusCGroup:TuberousCsclerosisCcom-plexCdiagnosticCcriteriaCupdate:recommendationsCofCtheC2012CInternationalTuberousCSclerosisCComplexCConsensusConference.PediatrNeurol49:243-254,C20132)金田眞里,吉田雄一,久保田由美子ほか:結節性硬化症の診断基準および治療ガイドライン.日皮会誌C118:1667-1676,C20083)RowleyS,O’CallaghanF,OsborneJ:Ophthalmicmanifes-tationsCofCtuberousCsclerosis:aCpopulationCbasedCstudy.CBrJOphthalmolC85:420-423,C20014)MennelCS,CMeyerCCH,CPeterCSCetCal:CurrentCtreatmentCmodalitiesforexudativeretinalhamartomassecondarytotuberoussclerosis:reviewoftheliterature.ActaOphthalC-molScandC85:127-132,C20075)DuttaJ:Ararecaseofvisuallossduetoserousdetach-mentassociatedwithretinal“mulberry”hamartomainacaseoftuberoussclerosis.JOculBiolDisInforC5:51-53,C20136)GoelCN,CPangteyCB,CBhushanCGCetCal:Spectral-domainCopticalCcoherenceCtomographyCofCastrocyticChamartomasCintuberoussclerosis.IntOphthalmolC32:491-493,C20127)ShieldsCCL,CBenevidesCR,CMaterinCMACetCal:OpticalCcoherencetomographyofretinalastrocytichamartomain15cases.OphthalmologyC113:1553-1557,C2006***(145)あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017C1783

白内障術後眼内炎由来コアグラーゼ陰性ブドウ球菌12株の細菌学的特徴

2017年12月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科34(12):1776.1780,2017c白内障術後眼内炎由来コアグラーゼ陰性ブドウ球菌C12株の細菌学的特徴鳥飼智彦*1鈴木崇*1,2宮本仁志*3白石敦*1*1愛媛大学医学部眼科学教室*2いしづち眼科*3愛媛大学病院検査部CBacteriologicalPro.leofCoagulase-negativeStaphylococciIsolatedfromEndophthalmitisTomohikoTorikai1),TakashiSuzuki1,2),HitoshiMiyamoto3)andAtsushiShiraishi1)1)DepartmentofOphthalmology,EhimeUniversity,GraduateSchoolofMedicine,2)IshizuchiEyeClinic,3)ClinicalLaboratory,EhimeUniversityHospital2003.2014年まで愛媛大学病院で治療を行った白内障術後眼内炎症例の眼内液から分離されたコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)のC12株の細菌学的特徴について調査した.MALDICTOF-MSを用いた菌種同定,DiversiLabsystem(DL)による遺伝子相同性,ディスク拡散法,微量液体希釈法を用いた薬剤感受性,バイオフィルム形成能をプレート法により確認した.分離CCNS株はCS.Cepidermidis(9株),S.Chominis(2株),S.Cwarneri(1株)と同定された.DLによる解析では,2組(1組C2株)においてC95%以上の遺伝子相同性を認めた.すべての分離株はメチシリンとセフタジジムに耐性であり,レボフロキサシンにはC3株が中間耐性,6株が耐性であった.分離株はすべてバンコマイシン,リネゾリド,ミノサイクリンに感受性があった.バイオフィルム形成能をC12株中C7株で認めた.WeCinvestigatedCtheCmicrobiologicalCpro.lesCofC12Ccoagulase-negativeCstaphylococci(CNS)isolatesCtakenCfromCaqueousorvitreoushumorinpatientswithpostoperativeendophthalmitisbetween2003and2014.Toidentifytheisolates,Cmatrix-assistedClaserCdesorptionCionizationCtime-of-.ightCmassCspectrometry(MALDI-TOFCMS)wasCper-formed.CIsolatesCwereCtypedCusingCtheCDiversiLabCtypingCsystem(DL);CdrugCsusceptibilityCtestCwasCcheckedCbyCagardiscandmicrodilutionmethods.Bio.lmformationwascheckedusingmicrotiterplateassay.Theisolateswereidenti.edasS.epidermidis(9strains),S.hominis(2strains)andS.warneri(1strain).DLdemonstratedthattwopairCofCS.CepidermidisCisolatesChadCgeneticCsimilarityCofCmoreCthanC95%.CAllCisolatesCwereCresistantCtoCmethicillinandCceftazidime,CandCwereCsusceptibleCtoCvancomycin,ClinezolidCandCminocycline;3CandC6CisolatesCwereCintermedi-atelyresistantandresistanttolevo.oxacin,respectively.Ofthe12isolates,11hadbio.lm-formingability.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)34(12):1776.1780,C2017〕Keywords:白内障術後眼内炎,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,遺伝子相同性,薬剤感受性,バイオフィルム形成能.postoperativeendophthalmitis,coagulase-negativestaphylococci,geneticallysimilarity,drugsusceptibility,Cbio.lmformation.Cはじめに白内障術後眼内炎は発症頻度こそ低いものの発症すると,高度の視力低下や失明の可能性もあるため,もっとも重篤な術後合併症であると考えられている.そのため,迅速に診断し,早期に治療を開始することが望ましい.白内障術後眼内炎は,発症時期によって,術後数日.1週間以内に発症する急性(亜急性)眼内炎と術後C1カ月以上後に発症する遅発性眼内炎に分けられる.急性(亜急性)眼内炎は,著明な前房内フィブリン形成,前房蓄膿,硝子体混濁など急性の炎症反応を生じるのに対して,遅発性眼内炎では軽微な前房炎症細胞,角膜後面沈着物,水晶体.混濁を生じることなど比較的軽微な炎症所見を呈することが多い.急性(亜急性)眼内炎の原因菌としてはコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negativeCstaphylococci:CNS),黄色ブドウ球菌,腸球菌,〔別刷請求先〕鳥飼智彦:〒791-0204愛媛県東温市志津川愛媛大学医学部眼科学教室Reprintrequests:TomohikoTorikai,M.D.,DepartmentofOphthalmology,EhimeUniversity,GraduateSchoolofMedicine,Shitsukawa,Toon,Ehime791-0204,JAPAN1776(138)連鎖球菌などのグラム陽性球菌が,遅発性眼内炎の起因菌としてはCPropiobacteriumCacnesが多いとされ,原因菌によって臨床所見ならび術後から発症までの日数,視力予後は異なることが考えられている.そのため,眼内炎の治療においては正確な原因菌の同定が重要であり,原因菌に対してもっとも抗菌効果が高い抗菌薬を使用して治療することが望ましい.CNSはC31種あるが,ヒトから分離されるCCNSはC14種あり,なかでも検出される頻度が高いのがCS.epidermidisである.CNSの種の同定は,生化学性状を用いて行われるが,一般的には時間やコストもかかるため,種の同定まで行わないことも多い.一方,質量分析によって細菌の蛋白質重量を測定して,細菌を同定する手法が開発され,臨床検査室にも導入されつつある.今回,菌種同定に使用したCMALDI-TOFCMSは,質量測定の対象物にレーザー照射し,この衝撃に対しても対象物を壊すことなく真空管の中を飛行させ,その飛行時間の違いをもって対象物の質量を測定可能とする方法である.培地上のコロニーから数分で菌腫を同定することが可能であり,16SrRNAシークエンスを用いた同定法に限りなく近い精度も得られる.Mellmannらはブドウ糖非発酵菌対して,MALDI-TOFCMSによる菌種同定法と16SrRNAシークエンスを用いた菌種同定法を行い比較検討した結果,78株中C67株(85.9%)で属もしくは種レベルまで同定可能であったと報告した1).CNS臨床株のなかにはバイオフィルムを産生する株が存在する.バイオフィルムを産生すると眼内レンズなどのマテリアルに強固に接着し,抗菌薬や免疫細胞の攻撃から回避することが可能となる.とくにブドウ球菌においては,PIA(polysaccharideCintercellularadhesion)とよばれるCE-1,6-N-アセチルグルコサミン多糖を産生することによって生体内ポリマーに付着してバイオフィルムを形成することが知られている2).そのため,眼内炎において,原因であるCCNSがバイオフィルム形成能を有するかは治療反応にも影響する可能性がある.現在,術後眼内炎の治療としては,抗菌薬投与とともに,前房洗浄,硝子体切除,レンズ抜去などの外科的加療を迅速に行うことが望まれる.使用される抗菌薬としては,グラム陽性球菌からグラム陰性桿菌まで抗菌スペクトラルをカバーする目的にバンコマイシン,セフタジジムの眼内投与が使用されることが多く,CNSによる術後眼内炎の治療反応性はよいとされる3).しかしながら,CNSのメチシリン耐性を指摘する報告もあり,抗菌薬の選択には検出された眼内炎分離株の薬剤感受性や細菌学特徴を考慮する必要がある3,4).さらに,耐性菌の場合,遺伝子学的に類似した株が拡散することも多く,遺伝子学的類似性を確認することも重要と考えられる.今回筆者らは,白内障術後眼内炎症例から分離されたCNSの細菌学的特徴(菌種同定,遺伝子相同性,薬剤感受性,バイオフィルムの形成能)について調査した.CI対象および方法1.臨床分離株2003.2014年までに愛媛大学病院で治療した白内障術後眼内炎症例の眼内液から分離されたCCNSのC12株を使用した.C2.菌.種.同.定CNSの菌種の同定をCMALDI-TOFCMS(matrixCassistedClaserCdesorption/ionization-timeCofC.ightCmassCspectrome-try)(Bruker社)を用いて質量分析を用いて行った.C3.遺伝子相同性菌株間のゲノム配列の相同性を確認するためCDiversiLabCmicrobialCgenotypingCsystem(以下,DiversiLab,CBioMereiux社)を用いた.菌のCDNAを抽出後,キットを使用しCrepeti-tive-sequenced-basedCpolymeraseCchainCreaction(rep-PCR)増幅を行い,Ajilent2100バイオアナライザーを用いてCDNALabChipによる増幅断片の分離と検出を行った.検出された電気泳動結果はCDiversiLabソフトウェア(version3.4)を用い,Pearson相関係数による系統樹を作成してクラスター分類を行った.C4.薬剤感受性CNSに対するメチシリン耐性の判定にはCPCR法にてmecA遺伝子を検出し,mecA遺伝子保有CCNSをCmethicillinresistantCCNS(MR-CNS),mecA非保有株CCNSをCmethi-cillin-susceptibleCCNS(MS-CNS)と定義した.薬剤感受性の判定には,ディスク拡散法,微量液体希釈法を用いた.オキサシリン(MPIPC),セフォキシチン(CFX)のC2薬剤においてはディスク拡散法を用い,セフタジジム(CAZ),イミペネム(IPM),アルベカシン(ABK),バンコマイシン(VCM),テイコプラニン(TEIC),リネゾリド(LZD),ミノサイクリン(MINO),レボフロキサシン(LVFX),リファンピシン(RFP),サルファメトキサゾール,トリメトプリム合剤(ST)のC10薬剤においては微量液体希釈法を用い,ClinicalCandCLaboratoryCStandardsCInstitute(CLSI)のブレークポイントに準じて,耐性(R),中間耐性(I),感性(S)の三つに分類した.C5.バイオフィルム産生能バイオフィルム産生能の定性をコンゴレッド寒天培地法にて行った.Brainheartinfusionbroth(37Cg/l),スクロース(36Cg/l),Agar(15Cg/l),コンゴレッド色素(0.8Cg/l)の構成でコンゴレッド寒天培地を作製し,作製した培地上に菌株を塗布し,37℃でC24時間培養したのちに,室温で一晩培養した.バイオフィルム陽性の株は,培地上で黒色のコロニーを形成し,バイオフィルム陰性の株は赤色のコロニーを形成することにより,バイオフィルム産生能を定性的に判定した5).バイオフィルム産生能の定量は,マイクロプレート法で行った.まず,細菌株をC0.25%グルコース添加CTripcaseSoyCBroth(TSB)10Cmlに植菌し,37℃にて一晩,揺動培養を行った.この培養液にグルコースを添加したCTSBでC100倍に希釈し,96ウエルマイクロタイタープレートに分注した後に,好気的環境下C37℃で一晩静置培養した.ウエルを蒸留水でC3回洗浄し,0.2%サフラニンで染色したのちに吸光度(570Cnm)の測定を行い,バイオフィルム形成量を定量化した6).Christensenらの報告に従い,カットオフ値をC0.5として,それ以上を陽性と定義した7).CII結果1.菌.種.同.定MALDI-TOF/MSによる質量分析にて菌種同定を行ったところ,12株中C9株(75%)がCS.Cepidermidisであり,ついでCS.hominisが2株,S.warneriがC1株検出された(表1).C2.遺伝子相同性S.Cepidermidisと同定されたC9株を対象にCrep-PCRによる遺伝子相同性解析を実施した結果を図1に示す.遺伝学的系統樹は塩基配列を二つずつ総当たりで比較,スコアリングしたうえで,もっとも近縁な配列から逐次的に配列される.パーセンテージが高ければ高いほど比較した二つの菌株の塩基配列は遺伝子相同性が高いといえる.眼内炎発症時期が異なるにもかかわらず,1組C2株のC2組でC95%以上の遺伝子相同性を示した.また,90%以上の遺伝子相同性を示したものもC1組C5株,1組3株のC2組あった.C3.薬剤感受性菌種ごとの薬剤感受性を表2に示す.9株(75%)がCmecA遺伝子を保有しており,全体のC75%がCMR-CNSであった.Cbラクタム系薬剤では,ペニシリン系のCMPIPCがC9株(75%),セフェム系のCCFXがC7株(58%),CAZはすべての株において耐性を認め,とくに術後眼内炎で広く用いられているCCAZで高い耐性を認めた.また,カルバペネム系であるIPMはすべての株で感性であった.Cbラクタム系薬剤以外の薬剤では,術後眼内炎治療で用いられるCVCMのほか,アミノグリコシド系のCABK,オキサゾリゾノン系のCLZD,テトラサイクリン系のCMINO,RNAポリメラーゼ阻害薬のCRFP,サルファ剤の合剤であるCSTはすべての株において感性であった.グリコペプチド系のCTEICはC5株(42%)で耐性であ表1菌種同定菌種株数割合(%)CS.epidemidis9株75%CS.hominis2株17%CS.warneri1株8%合計割合(%)図1白内障術後眼内炎より分離されたS.epidermidis9株の遺伝子相同性95%以上の相同性を認めた場合,遺伝子の類似性が高いと考えられる.表2菌種ごとの薬剤感受性菌名CMecACMPIPCCCFXCCAZCIPMCABKCVCMCTEICCLZDCMINOCLVFXCRFPCSTCS.epidermidis+RCRCRCSCSCSCSCSCSCRCSCSCS.epidermidis+RCSCRCSCSCSCSCSCSCICSCSCS.epidermidisC.SCSCRCSCSCSCRCSCSCSCSCSCS.epidermidis+RCSCRCSCSCSCSCSCSCRCSCSCS.epidermidis+RCRCRCSCSCSCSCSCSCRCSCSCS.epidermidis+RCRCRCSCSCSCRCSCSCRCSCSCS.hominis+RCRCRCSCSCSCSCSCSCRCSCSCS.epidermidis+RCRCRCSCSCSCRCSCSCRCSCSCS.hominisC.SCSCRCSCSCSCSCSCSCSCSCSCS.epidermidis+RCRCRCSCSCSCRCSCSCICSCSCS.epidermidis+RCRCRCSCSCSCRCSCSCICSCSCS.warneriC.SCSCRCSCSCSCSCSCSCSCSCS※CLSIのブレークポイントに準じて,R:耐性,I:中間,S:感性.MecA:mecA遺伝子,MPIPC:oxacillin,CCFX:cefoxitin,CCAZ:ceftazidime,CIPM:imipenem,CABK:arbekacin,CVCM:vancomycin,TEIC:teicoplanin,LZD:linezolid,MINO:minocycline,LVFX:levo.oxacin,ST:sulfamethoxazole-trimethoprim.バイオフィルム形成量(OD570nm)1.210.80.60.40.201362784926136567189029891,1031,1041,1411,167CNS12株図2CNS分離株のバイオフィルム産生能分離されたCCNS株のバイオフィルム産生の定量を示す.カットオフ値をC0.5と定義した.0.5以上はC7株認められた.Cったが,術前,術後抗菌点眼で広く用いられているCLVFXはC9株(75%)において耐性もしくは中間耐性であり高い耐性率を認めた.C4.バイオフィルム産生能コンゴレッド寒天培地法による定性的検討では,12株中11株が黒色コロニーを認め,バイオフィルム産生能を認めた.さらに,マイクロプレート法を用いた定量的検討では,吸光度C570Cnmの平均値はC0.5989C±0.0547であった.バイオフィルム産生量C0.5をカットオフ値として産生能を検討すると,0.5以上を示したものがC12株中C7株であり,吸光度の平均値はC0.7096C±0.0727であった(図2).CIII考按わが国における白内障術後細菌性眼内炎の原因菌としてCNSがもっとも多く,日本眼科手術学会眼内炎スタディグループの報告によると約半数近くを占めるとされる4).当院においてもC2004.2013年のC10年間で眼内炎症例からC15株細菌が分離されたうちC12株(80%)がCCNSであった.術後眼内炎から同定されたCCNSの内訳に関して,既報でCS.Cepi-dermidisが約C8割を占めている3).今回,筆者らが行った検討でもCS.CepidermidisがC9株(75%)と同様に多く検出されたが,数は少ないながらも,S.Cepidermidis以外の株(S.hominis2株,S.warneri1株)が検出された.術後眼内炎の原因菌の由来に関しては,①患者の結膜.常在細菌叢,②手術器具や術者の手指,③手術室の浮遊細菌などおもに三つの可能性が考えられる.Speakerらは術後眼内炎原因菌と僚眼や鼻腔から分離した常在菌の遺伝子を比較検討し,17例中C14例(82%)で遺伝子相同性があったとし,結膜.常在細菌叢が術後眼内炎のプロフィールをよく反映していることを報告しており8),患者の結膜.常在細菌が術中もしくは術後に眼内に感染したと推測される.丸山らは,白内障術前患者における結膜.常在菌叢を調査し,CNSが1,012検体中C398検体(39.3%)とCCorynebacteriumについで高い検出率を示した9).さらに,白内障術前の結膜.分離株に関する星らの検討では,CNS366株のうちCMR-CNSは136株(37%)であり,抗菌薬点眼として使用頻度が高いLVFX耐性はC366株中C92株(25%)であった.また,MR-CNSではCMS-CNSと比較してフルオロキノロン耐性化率が有意に高かった10).すなわち,白内障術前患者の結膜.においてCCNSの保菌率は高く,メチシリン耐性やCLVFX耐性をもった薬剤耐性株も半数近くに認められると考えられる.今回の検討では前述のように白内障術後眼内炎の原因菌としてCS.Cepidermidisを中心としたCCNSが多く検出され,MR-CNSはC9株(75%),LVFX耐性はC9株(75%)と既報の白内障術前結膜.から分離した株に関する検討と比較しても,薬剤耐性株の割合を多く認めた.さらに,発症時期が菌株によって大きく異なるにもかかわらず,遺伝子相同性の高い株を多く認めた.遺伝子相同性が高くなる原因の一つに,薬剤耐性獲得が考えられる.ブドウ球菌はCgryA,parCとよばれるキノロン耐性決定領(quinolone-resistance-determin-ing-region:QRDR)を段階的に変異させることによってキノロン耐性を獲得することや,ブドウ球菌カセット染色体(StaphylococcalCcassetteCchromosomeCmec:SCCmec)とよばれる外来性のCDNA断片を挿入することでメチシリン耐性を獲得することが知られている.そのため,抗菌薬点眼使用によって多様な遺伝型をもった結膜.常在菌叢における耐性菌選択圧が増大し,薬剤耐性遺伝子を高確率に含む分子疫学的に近縁な株が術後眼内炎起炎菌株から多く認められた理由の一つであると考える.すなわち,抗菌点眼薬から回避した耐性CCNSが眼内炎を生じた可能性が高い.Suzukiらは健常者の顔面皮膚と結膜.よりCS.epidermidisのみを分離培養し,それぞれについてバイオフィルム形成能をCicaA遺伝子の検出率およびコンゴレッド寒天培地法,マイクロプレート法にて比較したところ,結膜.より分離培養された株のバイオフィルム産生能が有意に高かったと報告した11).その理由として,涙液中にはライソゾームやラクトフェリンなどの抗微生物ペプチドが豊富に存在しており,結膜.常在菌がバイオフィルム産生を行うことでその防御システムから逃れているのではないかと推測している11).今回の検討でもバイオフィルム産生株が多く認められた.バイオフィルム産生能を有する結膜常在CCNSが,バイオフィルム形成することで抗菌薬や消毒薬から回避し,術後眼内炎を発症したと考えられる.現在,白内障術後急性眼内炎が疑われた場合の早期治療として抗菌薬の硝子体注射があり,薬剤耐性菌を含むグラム陽性球菌に効果のあるバンコマイシンとグラム陰性菌にスペクトラムをもつセフタジジムとを組み合わせて投与することが多い.今回,術後眼内炎の原因菌として頻度の高いCCNSに対してバンコマイシンはすべて感受性があり,セフタジジムはすべての株で耐性があった.CNS原因の眼内炎症例に対して,バンコマイシンは治療効果をもつも,セフタジジムの治療効果はそれほど高くない可能性があると考えられた.一方,カルバペネム系のイミペネムはすべての株に感受性があった.術後眼内炎から分離培養されたCCNSに関する検討で,イミペネムは半数程度の株に効果があったとする報告12)もあり,さらなる検討は必要ではあるが,イミペネムはCCNSに対してある一定の効果はあると考えられる.イミペネムはセフタジジム同様グラム陰性菌にもスペクトラムをもつことが知られており,感染性眼内炎治療において有用である可能性が高いと考えられた.しかしながら,眼内投与における網膜毒性においては検討を重ねる必要がある.今回の検討で白内障術後眼内炎から分離されたCCNSにおいては薬剤耐性化が進んでおり,またバイオフィルム産生能も高いことがわかった.細菌学的特徴をさらに検討し,有効な予防法,治療法を構築する必要があると考えられた.文献1)MellmannA,CloudJ,MaierTetal:Evaluationofmatrix-assistedClaserCdesorptionCionization-time-of-.ightCmassCspectrometryCinCcomparisonCtoC16SCrRNACgeneCsequenc-ingCforCspeciesCidenti.cationCofCnonfermentingCbacteria.CJClinMicrobiolC46:1946-1954,C20082)RohdeH,FrankenbergerS,ZahringerUetal:Structure,functionCandCcontributionCofCpolysaccharideCintercellularadhesin(PIA)toCStaphylococcusCepidermidisCbio.lmCfor-mationCandCpathogenesisCofCbiomaterial-associatedCinfec-tions.EurJCellBiolC89:103-111,C20103)EndopthalmitisCVitrectomyCStudyCGroup:ResultsCofCtheCEndophthalmitisViterctomyStudy.ArandomizedtrialofimmedeateCvitrectomyCandCofCintravitreousCantibioticsCforCthetreatmentofpostoperativebacterialendophthalmitis.ArchOphthalmolC113:1479-1496,C19954)日本眼科手術学会眼内炎スタディグループ:白内障に関連する術後眼内炎全国症例調査.眼科手術19:73-79,C20065)ArciolaCR,CampocciaD,GamberiniSetal:DetectionofslimeCproductionCbyCmeansCofCanCoptimizedCCongoCredCagarplatetestbasedonacolourimetricscaleinStaphylo-coccusepidelmidisclinicalisolatesgenotypedforicalocus.BiomaterialsC23:4233-4239,C20026)PedersenCK:MethodCforCstudyingCmicrobialCbio.lmsCinC.owing-watersystems.ApplEnvironMicrobialC43:6-13,C19827)ChristensenCGD,CSimpsonCWA,CYoungerCJJCetCal:Adher-enceCofCcoagulase-negativeCstaphylococciCtoCplasticCtissuecultureplates:aquantitativemodelfortheadherenceofstaphylococciCtoCmedicalCdevices.CJCClinCMiclobiolC22:C996-1006,C19858)SpeakerCMG,CMilchCFA,CShahCMKCetCal:RoleCofCexternalCbacterialC.oraCinCtheCpathogenesisCofCacuteCpostoperativeCendophthalmitis.OphthalmologyC98:639-649,C19919)丸山勝彦,藤田聡,熊倉重人ほか:手術前の外来患者における結膜.内常在菌.あたらしい眼科C18:646-650,C200110)星最智:正常結膜.から分離されたメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌におけるフルオロキノロン耐性の多様性.あたらしい眼科C27:512-517,C201011)SuzukiT,UnoT,OhashiYetal:PrevalenceofStaphyloC-coccusCepidermidisCstrainsCwithCbio.lm-formingCabilityCinCisolatesCfromCconjunctivaCandCfacialCskin.CAmCJCOphthal-molC140:844-850,C200512)ChiquetC,MaurinM,AltayracJetal:CorrelationbetweenclinicalCdataCandCantibioticCresistanceCinCcoagulase-nega-tiveStaphylococcusspeciesisolatedfrom68patientswithacuteCpost-cataractCendophthalmitis.CClinCMicrobiolCInfectC21:592.Ce1-8,C2015