‘記事’ カテゴリーのアーカイブ

基礎研究コラム 18.緑内障による中枢神経障害について

2018年11月30日 金曜日

緑内障による中枢神経障害について緑内障による中枢神経障害緑内障は,眼球の眼圧が上昇することにより眼球に視神経障害が生じ,その結果として視野障害をきたすことが知られていますが,日本人では,眼圧が正常で緑内障性の視神経障害をきたす正常眼圧緑内障が緑内障患者全体のC70%程度を占めています1).このことから,眼圧以外の因子の検索の必要度はきわめて高いと考えられます.最近では,緑内障は視神経の障害だけではなく,より高次の脳中枢の外側膝状体,上丘や視皮質まで障害されると報告されています.しかしながら実験動物として一般的なマウス,ラットでは脳中枢神経系が未発達であるため詳細な解析が行えず,ヒトやサルで解析を行うしかありませんが,これまでに詳細な検討はなされていません2).実験動物としてのフェレットは,マウスではC5%程度しか非交叉性神経線維がないのに対し,35%程度の非交叉性神経線維が存在するため,緑内障による中枢神経障害をより容易に解析することができます.欧米では実験動物としての社会的なコンセンサスが得られていますが,これまで眼科疾患への応用はありませんでした.しかし,高度な脳中枢をもつメリットを生かせることから,筆者らはファレットを実験動物として用い,世界で初めて緑内障モデルを作製することに成功しました3).フェレット高眼圧モデルを用いた視覚路の検討フェレットの結膜を採取し培養を行い,con.uentとなった結膜培養細胞を前房内に注入すると,結膜細胞が隅角で増殖して隅角閉塞を起こし,閉塞隅角緑内障を発症させること藤代貴志東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科学ができました3).図1に示すように,緑内障となった眼球から投射する中枢神経である外側膝状体と上丘で色素の減弱がみられ,視神経だけでなく,外側膝状体,上丘における神経障害をフェレットにおいて証明することができました.さらにこれまでサル,ヒトで解析がむずかしかったCKonio細胞の障害も,フェレットでは外側膝状体の構造がサル,ヒトと異なることから容易に解析できるようになりました.今後の展望今後は外側膝状体,上丘だけでなく,より高次の視皮質の障害を詳しく検討することで,緑内障の中枢神経障害を視覚路の中枢神経全般にわたって詳細に解析できます.これらの神経細胞の障害のメカニズムの解明を進めることで,緑内障での神経障害抑制の手がかりをつかめる可能性があります.そしてこれらの知見から,これまで眼圧下降だけが唯一の選択肢であった緑内障治療において,中枢神経の保護をターゲットとする異なったアプローチによる新しい治療法の開発が期待できます.文献1)IwaseA,SuzukiY,AraieMetal:Theprevalenceofpri-maryCopen-angleCglaucomaCinJapanese:theCTajimiCStudy.OphthalmologyC111:1641-1648,C20042)YucelYH,ZhangQ,WeinrebRNetal:E.ectsofretinalganglioncelllossonmagno-,parvo-,koniocellularpath-waysinthelateralgeniculatenucleusandvisualcortexinglaucoma.ProgRetinEyeResC22:465-481,C20033)FujishiroCT,CKawasakiCH,CAiharaCMCetal:EstablishmentCofCanCexperimentalCferretCocularChypertensionCmodelCforCtheCanalysisCofCcentralCvisualCpathwayCdamage.CSciCRepC4:6501,C2014図1右眼を高眼圧にしたフェレットの脳幹写真LGN:外側膝状体,SC:上丘,OH:高眼圧.左側:Normalフェレットの色素の分布.右眼に赤色素,左眼に緑色素を注入した.中枢神経では,交叉するため,左のCLGN,SCには赤色素が投射さて,右のCLGN,SCには緑色素が投射される.両側ともに色素の減弱はなく,正常に投射が行われている.右側:右眼を緑内障にしたフェレットの色素の分布.Normalフェレットと同様に右眼に赤色素,左眼に緑色素を注入した.右眼から投射される左のCLGN,SCにおいて赤色素の減弱がみられる一方で,左眼から投射される右のCLGN,SCにおいて緑色素はNormalフェレットと同様に投射され,減弱はみられない.以上から,眼球の緑内障の障害が高次の中枢であるCLGN,SCまで及んでいることが確認できた.(71)あたらしい眼科Vol.35,No.11,2018C15190910-1810/18/\100/頁/JCOPY

硝子体手術のワンポイントアドバイス 186.星状硝子体症を伴う黄斑円孔に対する硝子体手術(中級編)

2018年11月30日 金曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載186186星状硝子体症を伴う黄斑円孔に対する硝子体手術(中級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに星状硝子体症(asteroidhyalosis:AH)を伴う症例は後部硝子体未.離眼が多く,網膜硝子体癒着が強固で後部硝子体.離(posteriorvitreousdetachment:PVD)作製がむずかしいことが多い.このような解剖学的特徴のため,AHを伴う増殖糖尿病網膜症や裂孔原性網膜.離(retinaldetachment:RD)などでは,硝子体手術の難易度が高いことを本シリーズでも紹介した1,2).AH眼に生じる黄斑合併症としては黄斑浮腫や黄斑上膜などが多く,黄斑円孔(macularhole:MH)はまれである.筆者らは以前にAHを伴うMHを2例経験し,同様に網膜硝子体癒着が強固で,人工的PVD作製時には注意を要することを報告した3).●症例症例1は67歳,女性.中心窩周囲のPVD(perifovealPVD)は生じており(図1a),後極部の人工的PVD作製は容易であった(図1b)が,中間周辺部からは網膜硝子体癒着が面状に強固で,人工的PVD拡大時に下方中間周辺部に医原性裂孔を形成した(図1c).眼内光凝固を施行し術後にRDの発症は認めなかった.症例2は74歳,男性.症例1と同様にperifovealPVDは生じていた(図2a)が,中間周辺部からは網膜硝子体癒着が面状に強固で,人工的PVD作製時に中間周辺部に複数個の医原性裂孔を形成し,術中にRDが生じた.眼内光凝固とガスタンポナーデを施行したが,術後にRDが再発し,複数回の再手術を要した(図2b).●硝子体手術時の注意点AHを伴うMHは,通常のMHと同様にperifovealPVDによって生じるものと考えられる.よって黄斑円孔周囲の硝子体や内境界膜の処理は通常のように問題な図1症例1の術前,術中所見術前のOCTではperifovealPVDが認められ(a),黄斑円孔周囲の人工的PVD作成は容易であったが(b),中間周辺部からは網膜硝子体癒着が強固であった(c).(文献3より引用)図2症例2の術前,術後所見症例1と同様に術前のOCTではperifovealPVDが認められた(a)が,中間周辺部からは網膜硝子体癒着が強固で,人工的PVD作製時に複数の医原性裂孔を形成した(b).(文献3より引用)く施行できることが多いが,中間周辺部からは網膜硝子体癒着が強固で,不用意な硝子体牽引は医原性裂孔形成のリスクが高くなる.人工的PVD作製時は網膜硝子体癒着の境界部位の網膜が線状に挙上される所見が全周で観察されることが多いので,網膜が過度に挙上され,医原性裂孔形成のリスクが高くなると判断された場合には,それ以上の人工的PVD拡大は控えるべきである.文献1)池田恒彦:硝子体手術のワンポイントアドバイス(93)星状硝子体症を伴う増殖糖尿病網膜症の硝子体手術(上級編).あたらしい眼科28:249,20112)池田恒彦:硝子体手術のワンポイントアドバイス(180)星状硝子体症を伴う網膜.離(中級編).あたらしい眼科35:657,20183)KitagakiT,SuzukiH,KohmotoRetal:Idiopathicmacu-larholewithasteroidhyalosis:Twocasereports.Medi-cine97:e11243,2018(69)あたらしい眼科Vol.35,No.11,201815170910-1810/18/\100/頁/JCOPY

眼瞼・結膜:眼瞼ヘルペス

2018年11月30日 金曜日

眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人福田昌彦44.眼瞼ヘルペス近畿大学医学部眼科学教室眼瞼ヘルペスの原因は,単純ヘルペスウイルスと水痘・帯状ヘルペスウイルスの2種類がある.両者は似ているところもあるので,しっかり鑑別する必要がある.また,単純ヘルペスがアトピー性皮膚炎に合併すると,広範囲に皮疹を伴うKaposi水痘様発疹症となる.ウイルス性眼瞼炎は結膜炎を合併することも多いので,そちらにも留意する必要がある.●はじめに眼瞼ヘルペスは,単純ヘルペスウイルス(HSV)の初感染,再活性化時,あるいは水痘・帯状ヘルペスウイルス(VZV)の再活性化時(眼部帯状ヘルペス)に発症する.HSVの場合,アトピー性皮膚炎があると皮疹が眼周囲に広範囲に拡大して非常に重症化することがあり,Kaposi水痘様発疹症とよばれ,眼部帯状ヘルペスとの鑑別がむずかしくなるケースもある.●単純ヘルペスウイルス眼瞼炎HSVの初感染,再活性化時に眼周囲にできる眼瞼の皮疹である.頻度としては多いほうではないが,特徴的な所見に注意しておく必要がある.小児の角膜ヘルペス患者は眼瞼ヘルペスを頻回に起こしている場合もあるので,問診上注意が必要である.皮疹の特徴はわずかな発赤として始まり,その上に中央が臍のようにくぼんだ小水疱が集まって発症する.ピリピリした軽度の疼痛を伴い,眼瞼は腫脹,発赤する.上下眼瞼に広がることが多い.初感染,再活性化を問わず,眼瞼炎は片側性の流行性角結膜炎様の強い濾胞性結膜炎を伴うこともある.アトピー性皮膚炎のある患児では皮膚のバリア機能が弱く,皮膚病変に沿って感染が拡大して両眼周囲から顔面全体に広がり,Kaposi水痘様発疹症とよばれる(図1).皮疹は7.14日で痂疲化する.感染のメカニズムへの理解は重要である.初感染は不顕性感染が多く,HSVは三叉神経の第一枝領域に潜伏感染する.潜伏感染ウイルスは発熱,紫外線暴露,ストレス,過労などがきっかけで再活性化する.感染したウイルスの病原性の強弱と個体の免疫力の強弱が発症に関与すると考えられる.診断はHSV-1の証明が必要である.水疱内容から塗(67)0910-1810/18/\100/頁/JCOPY図1Kaposi水痘様発疹症両眼周囲にHSV眼瞼炎を認める.抹標本を作製し,モノクローナル抗体を用いた蛍光抗体法を行う.ウイルス分離培養は普通の施設ではむずかしい.血清学的診断は発症2週間後のIgGおよびIgMの抗体価を測定する.IgG抗体価は上昇せず,IgM抗体価だけが上昇した場合は初感染と診断できる.治療は抗ヘルペスウイルス薬の内服が中心となる.バラシクロビル,ファムシクロビルのいずれかを5日間投与する.外用薬は皮膚用の5%アシクロビル軟膏が保険適用であるが,眼周囲には使いにくいので,眼科用の3%アシクロビル眼軟膏を2,3回眼瞼に塗布する.ただしこちらは眼瞼ヘルペスへの保険適用はない.●水痘・帯状ヘルペスウイルス眼瞼炎VZVの初感染は水痘であるので,眼周囲に特徴的な眼瞼炎を呈することはない.VZV眼瞼炎は眼部帯状ヘルペスの三叉神経第一枝領域の皮疹に伴う眼瞼炎である.神経痛様の痛みが先行,または同時に発疹を生じる.発疹は片側性,不連続の帯状に分布する.はじめはあたらしい眼科Vol.35,No.11,20181515図2眼部帯状ヘルペス鼻尖や鼻背部に皮疹があり,Hutchinson徴候が認められる.紅斑,ついで赤い丘疹,小水疱,出血性の膿疱と変化し,痂疲を伴い瘢痕治癒する.経過はほぼ2週間である.眼瞼炎を伴った場合,眼瞼の発赤,腫脹が強く,流涙,羞明もある.軽度の結膜炎を合併することが多く,角膜炎,虹彩炎を伴うこともある.HSVは頻繁に再発する例があるが,VZVの再発は通常1回のみとされている.感染メカニズムは,初感染で水痘を発症したVZVは神経節の外套細胞に潜伏し,なんらかの誘因でウイルスの再活性化が起こり,帯状ヘルペスとして再発する.眼瞼炎となるのは三叉神経第一枝領域に再発した場合である.とくに鼻背から鼻尖部に皮疹を認めた場合,眼合併症の頻度が高くなる(図2).これは三叉神経第一枝からの分枝である鼻毛様神経が角膜,強膜,虹彩,毛様体とともに鼻背にも分布しているためで,これをHutchin-son徴候という.診断はHSV-1同様,水疱内容液からの免疫組織化学でVZV抗原が陽性ならば確定診断できる.補体結合反応を用いて測定したVZVの抗体価は,健常人ではほとんどの場合8倍以下を示す.眼部帯状ヘルペス発症後1週間目から16倍以上に上昇し,6カ月間は継続するとされているので,これを参考とすることも可能である.眼部帯状ヘルペスの治療は多くは皮膚科で行われる.皮膚科領域においては,遅くとも皮疹発現後5日以内に抗ウイルス薬による治療を開始することが皮疹の治癒,および帯状ヘルペス後疼痛に対して有効とされている.重症例では入院,アシクロビルの点滴静注も行われる.多くの場合はバラシクロビル,ファムシクロビルいずれ1516あたらしい眼科Vol.35,No.11,2018かを7日間投与する.HSV-1と比較すると,量は倍で期間は2日長いことになる.●Kaposi水痘様発疹症Kaposi水痘様発疹症はHSVがおもにアトピー患者の皮膚に感染することにより発症する.顔が好発部位であり,乳幼児に多く発症するが,成人にもときに発症する.感染はアトピー性皮膚炎の皮膚病変に沿って広がるので,顔面以外に体幹にも及ぶことがある.前駆症状として感冒様症状や発熱などが多い.中心のくぼんだ小水疱が生じ,まもなく融合し,膿疱,出血性びらん,血痂などが混在するようになる.この状態はあたかも既存の湿疹が悪化したようにみえる.病変は一般に皮膚表層に限局している.経過は2週間ほどで軽快することが多いが,ときに予後不良のことがある.診断,治療はHSV眼瞼炎に準じるが,重症例が多いので皮膚科で入院,点滴治療になることが多い.眼合併症の精査のために眼科対診となることが多い.自験例では眼合併症は50%で,結膜炎は39%,角膜炎は27%,そのうち樹枝状角膜炎は14%であった.HSVの樹枝状角膜炎は通常は片眼性であるが,Kaposi水痘様発疹症に関しては両眼性に認められることがあるのが特徴である.眼合併症を眼部帯状ヘルペスと比較すると,Kaposi水痘様発疹症は頻度,重症度ともにやや少ないといえる.●おわりに眼瞼ヘルペスは結膜炎,角膜炎と密接に関連している.眼周囲に広範囲の皮疹をみた場合は,VZV眼瞼炎かKaposi水痘様発疹症かの鑑別が必要である.また,アレルギー性の眼瞼炎と間違い,ステロイド眼軟膏を処方したりしないように知識の整理が重要である.文献1)内田幸男:水痘・帯状ヘルペスウイルス感染症.眼とヘルペス(真鍋禮三編),p42-51,医学書院,19902)村田恭子,福田昌彦,妙中直子ほか:眼部帯状ヘルペスとカポジ水痘様発疹症の眼合併症.眼科45:97-102,20033)高村悦子:ウイルス性眼瞼炎(HSV/VZV).眼感染症の傾向と対策(下村嘉一,福田昌彦編),p113-117,医学書院,2016(68)

抗VEGF治療:未熟児網膜症における抗VEGF療法

2018年11月30日 金曜日

●連載監修=安川力髙橋寛二58.未熟児網膜症における抗VEGF療法福嶋葉子大阪大学医学系研究科眼科学未熟児網膜症(ROP)に対するベバシズマブの効果を示した前向き無作為比較試験(BEAT-ROPstudy)が報告されてからC5年以上経過し,適応外使用とはいえ,抗CVEGF薬がCROPに有効であることは広く知られるところとなった.その使用に関する知見は徐々に蓄積され,新たな課題も生じている.はじめに未熟児網膜症(retinopathyofprematurity:ROP)では,過剰に産生されたCVEGFにより正常血管の伸展過程が破綻し,血管伸長の停滞と異常血管新生が生じる.そのため,VEGFを抑制する薬剤を用いて治療することは理に適っている.ただし,VEGFは異常血管の原因となる一方で,正常血管の伸展にも必須であるため,その抑制は正常な網膜血管発達にも影響を与えることが懸念される.現在,ROPに対する抗CVEGF薬は適用外使用であるため,各医療機関の倫理委員会の承認を得たうえで,医師の判断により投与されている.治療適応と方法多くの報告では,BEAT-ROP(BevacizumabCElimi-natestheAngiogenicThreatofRetinopathyofPrema-turity)studyに準じて使用されている1).また,病期とは別に,光凝固治療が困難な視認性が悪い症例,麻酔のリスクがある症例には有効な選択肢となる.一方,すでに網膜.離がみられる場合や,円周方向に連続する増殖膜や丈の高い増殖膜に対する投与は控えるべきである.治療方法は,初回治療として抗CVEGF薬を用いるmonotherapy(図1),光凝固と同時に投与するCcom-binedtherapy,光凝固治療後の再燃に対して投与するCsalvagetherapy(図2)があげられる.いずれも数日で効果が出現し,増殖膜ならびにCplusdiseaseは速やかに退縮する.抗CVEGF薬の硝子体内投与は光凝固と比べて施行時間が短く,治療に伴う患児への全身負担は少ない.抗VEGF薬が網膜血管に与える影響Monotherapyでは,増殖組織が退縮した後,血管は周辺網膜に向かって伸長を再開する.しかし,その過程は正常発達から大きく遅延することが明らかになってきた.ベバシズマブ投与後,修正C54週までに最周辺まで血管が到達したものはC9%のみで,1例は最終的に修正108週(暦年齢C1歳C5カ月)まで到達しなかったとの報告がある2).報告によってばらつきはあるが,網膜血管の完成は修正C54週以降に遅延する傾向があることは間違いない3).自験例で網膜最周辺まで血管が伸展した平均時期を調べたところ,発症なし群では修正C41週,発症あり治療なし群では修正C49週であった.この結果から,早産による未熟性だけでなく,抗CVEGF薬が血管伸展の遅延に影響すると考えられる.こうした血管伸展の遅延により,再燃の可能性も継続する.再燃時には,以前の増殖組織の位置あるいは新たに伸展した血管先端の位置に増殖組織が形成されてくる4)(図3).追加治療時期は初回治療からおおむねC3,4カ月後で,光凝固治療と比較すると再燃までの期間は長い3,4).再燃リスクのある期間は毎週診察をするのが望ましいが,通院の負担や脱落の可能性もあり,実臨床では現実的でない.そこで,一定期間が経過しても無血管領域が残存すれば,光凝固を施行しておく方法も選択肢の一つと考えられるようになっている.抗VEGF薬が視機能に与える効果冷凍凝固や光凝固に比較して近視化は有意に少ない3).視野や視力発達についての効果はまだわかっていない.抗CVEGF薬は非常に未熟な児に多い重症CROPに選択されるため,長期的に知的発達障害がみられる頻度は高くなり,年齢相応の視覚評価がむずかしくなる可能性がある.抗VEGF薬が全身に与える影響全身移行による組織発達の影響や精神運動発達への影響が懸念されているが,いまのところ一貫した結論は得られていない3).わが国では極小低出生体重児の救命率が高いため,非常に未熟な重症CROP児の治療に携わる機会が多いと想定される.このため,未熟性の高い児におけるCVEGF抑制のリスクを十分理解しておく必要がある.(65)あたらしい眼科Vol.35,No.11,2018C15130910-1810/18/\100/頁/JCOPY図1Monotherapy前後の眼底写真a:修正C32週(在胎C24週C6日,出生体重C562g).血管の拡張蛇行が顕著で,明瞭な境界線はみられないが鼻側に増殖組織があり,AP-ROPと判断される.Cb:ベバシズマブ投与C5日で増殖は消退し,血管拡張も改善した.図2Salvagetherapy前後の眼底写真a:修正C36週(在胎C23週C4日,出生体重C740g).Zone1stage3+ROPに対する光凝固後C1カ月.耳側に増殖膜が形成されている.Cb:ベバシズマブ投与C1カ月.増殖は消退し,血管拡張もみられない.おわりにROPに対する抗CVEGF薬治療はさまざまなレジメンが試みられており,統一された方法は確立されていない.抗CVEGF薬適応の追加承認に向けた取り組みとして,ラニビズマブと光凝固術との比較試験が行われており,近い将来には光凝固・抗CVEGF薬の二つの選択肢を生かした標準治療が確立されることが期待される.文献1)Mintz-HittnerCHA,CKennedyCKA,CChuangAZ;BEAT-ROPCooperativeCGroup:E.cacyCofCintravitrealCbevaci-zumabCforCstageC3+retinopathyCofCprematurity.CNEnglJMedC364:603-615,C2011図3抗VEGF薬投与後の再燃投与C1カ月の眼底写真.治療時の境界線()から血管は伸展し,新たにCridgeが形成されている().Ridgeは自然軽快し,再治療は不要であった.(あたらしい眼科35:1229-1236,2018より引用)2)ToyCBC,CSchacharCIH,CTanCGSWCetal:ChronicCvascularCarrestCasCaCpredictorCofCbevacizumabCtreatmentCfailureCinCretinopathyCofCprematurity.COphthalmologyC123:2166-2175,C20163)VanderVeenDK,MeliaM,YangMBetal:Anti-vascularendothelialCgrowthCfactorCtherapyCforCprimaryCtreatmentCofCtypeC1CretinopathyCofprematurity:ACreportCbyCtheCAmericanCAcademyCofCOphthalmology.COphthalmologyC124:619-633,C20174)Mintz-HittnerCHA,CGeloneckCMM,CChuangAZ:ClinicalCmanagementofrecurrentretinopathyofprematurityafterintravitrealCbevacizumabCmonotherapy.COphthalmologyC123:1845-1855,C20161514あたらしい眼科Vol.35,No.11,2018(66)

緑内障:さらに進歩した緑内障領域におけるOCT angiography

2018年11月30日 金曜日

●連載221監修=岩田和雄山本哲也221.さらに進歩した緑内障領域における新田耕治福井県済生会病院眼科COCTangiography非侵襲的に眼局所の血流動態を観察できるCOCTangiography(OCTA)をC2015年からわが国でも使用できるようになり,緑内障領域でもCOCTAによる新たな知見が増えている.しかし,artifactやトラッキングシステムの欠如による画質不良や位置ずれによる再現性の課題もある.本稿では,Optovue社のCRTVueXRAvantiを取りあげ,OCTAの緑内障領域における有用性と最新の機能について述べる.●OCTangiographyのartifactOCTangiography(OCTA)撮影にはさまざまなCarti-factが出現する1).CProjectionartifactは血管部のシグナル変化の対象となる血球が動くとそれに連動して動く影によるCartifactで,血管組織のない部位でもシグナル変化が抽出され,描出される可能性がある.このCprojectionartifactはとくに網膜色素上皮を光が通過した際に生じることが多く,血管を通過する光は常に変化し,その光の反射が血球の流れとよく似た影を別の層に映し出すことがある.Optovue社のCRTVueCXRAvantiのCOCTAソフトウェアCAngioVueの新バージョンでは,3DCprojectionCarti-factremoval(3DPAR)という新しいアルゴリズムによりCprojectionartifactの軽減が期待される.また,眼球が動いてもCmotionCcorrectiontechnologyにより画像ブレがかなり修正できるが,再現性の欠如した画像となることがある.眼球運動だけでなく,脈拍,呼吸,振戦などでも生じるが,新バージョンではその点を解決するためにトラッキングシステムを搭載したので,画質のさらなる向上が期待できる.良好なCOCTAの画質を得るためには強い強度のシグナルが必要となるが,シグナル強度の弱い領域では,ノイズの変動により一つの画像が次の画像と比較される際に,血流に関する誤った所見を生み出すCfalse.owarti-factを生じる可能性がある.網膜浮腫,萎縮,出血などのほかに,緑内障後期の乳頭周囲の撮像でも同様のことが起きる.このような画像はCsignalCstrengthCindex(SSI)が低く,40以下のことが多い.緑内障進行評価に際し血管密度も参考にするのであれば,SSIがC60以上の画像で比較することが望ましいと思われる.なお,新バージョンではCSSIは廃止され,ScanQuality(SQ)としてC10段階表示されるようになった.SQ7以上の画像にて評価することが望ましい.(63)C0910-1810/18/\100/頁/JCOPY●緑内障眼におけるOCTAの放射状乳頭周囲毛細血管評価当院にてC2015年C3月より使用しているCbバージョンでは,乳頭周囲は,nervehead(撮影画面上端.内境界膜C150Cμm下方まで),vitreous(撮影画面上端.内境界膜C50Cμm下方まで),radialperipapillarycapillaries(内境界膜.網膜神経線維層まで),choroid/disc(網膜色素上皮よりC75Cμm下方.撮影画像下端まで)のC4区画がセクターごとにデフォルトでCangioC.owdiscとして表示される(図1a).2018年C6月から使用している新バージョンでは,vitreous(画像の上部.内境界膜),super.cial(内境界膜.内網状層),radialCperipapillarycapillaries(内境界膜.網膜神経線維層),choroid/disc(内境界膜.画像の下部)が表示される(図1b).楔状網膜神経線維層欠損(nerveC.berClayerdefect:NFLD)を有する正常眼圧緑内障症例にCOCTAを乳頭中心に撮像してみると,いずれのバージョンの画像においても楔状CNFLDに一致して放射状乳頭周囲毛細血管(radialperipapillaryCcapillaries:RPC)の減少を認め,RPC密度低下領域と視野障害部位もほぼ一致していることがわかる(図1).OCTAを使用した報告では,緑内障眼では病期の進行とともにCRPCの血管密度がびまん性に脱落しており,前視野緑内障>初期緑内障>中期.後期緑内障の順に毛細血管は減少している2).そのほか,緑内障診断や進行評価にCOCTAを使用した解析報告が相次いでおり,その有用性が確認されてきている3.7).さらに新バージョンでは,RPC血管密度カラーマップと網膜神経節細胞複合体(ganglionCcellcomplex:GCC)mapが同時に表示され,しかもそれぞれのマップにセクター別のCGCC厚や血管密度が表示されるようになった(discquickvue表示,図2).これらを生かして新たに血管密度変化のtrendを解析できるようにもなった(disctrendAnaly-あたらしい眼科Vol.35,No.11,2018C1511a図1OCTAの各層における毛細血管の分布a:旧バージョンで撮影した緑内障眼.Cb:新バージョンで撮影した同一症例.Caでは,左からCopticCnervehead,vitreous,RPC,choroidの順に表示Cbされている.Cbでは,硝子体側から脈絡膜層へ順番に表示されている.いずれの画像においても楔状CNFLD部位に一致して乳頭周囲の浅層毛細血管が減少していることが確認できる.しかし,aよりCbが血管密度低下領域をより明瞭に表記できている().sis表示)ので,緑内障における治療強化の新たなツールとしてこれらが活用できる可能性がある.文献1)SpaideCRF,CFujimotoCJG,CWaheedNK:ImageCartifactsCinCopticalCcoherenceCtomographyCangiography.CRetinaC35:C2163-2180,C20152)YarmohammadiCA,CZangwillCLM,CDiniz-FilhoCACetal:CRelationshipCbetweenCopticalCcoherenceCtomographyCangi-ographyvesseldensityandseverityofvisual.eldlossinglaucoma.Ophthalmology123:2498-2508,C20163)RaoHL,PradhanZS,WeinrebRNetal:Acomparisonofthediagnosticabilityofvesseldensityandstructuralmea-surementsCofCopticalCcoherenceCtomographyCinCprimaryCopenangleglaucoma.PLoSOneC12:e0173930,C2017図2新バージョンのdiscquickvue表示新バージョンのCdiscCquickvue表示は,OCTAだけでなく,OCTによる乳頭周囲の網膜神経線維厚も同時に撮影し表示される.4)RaoCHL,CPradhanCZS,CWeinrebCRNCetal:VesselCdensityCandCstructuralCmeasurementsCofCopticalCcoherenceCtomog-raphyinprimaryangleclosureandprimaryangleclosureglaucoma.AmJOphthalmol177:106-115,C20175)MansooriCT,CSivaswamyCJ,CGamalapatiCJSCetal:RadialCperipapillaryCcapillaryCdensityCmeasurementCusingCopticalCcoherenceCtomographyCangiographyCinCearlyCglaucoma.CJGlaucomaC26:438-443,C20176)YarmohammadiCA,CZangwillCLM,CDiniz-FilhoCACetal:CPeripapillaryCandCmacularCvesselCdensityCinCpatientsCwithCglaucomaandsingle-hemi.eldvisual.elddefect.Ophthal-mology124:709-719,C20177)AkilH,HuangAS,FrancisBAetal:Retinalvesseldensi-tyCfromCopticalCcoherenceCtomographyCangiographyCtoCdi.erentiateearlyglaucoma,pre-perimetricglaucomaandnormaleyes.PLoSOneC12:e0170476,C20171512あたらしい眼科Vol.35,No.11,2018(64)

屈折矯正手術:角膜クロスリンキングの適応

2018年11月30日 金曜日

監修=木下茂●連載222大橋裕一坪田一男222.角膜クロスリンキングの適応中村葉四条烏丸眼科小室クリニック角膜クロスリンキングは厚生労働省未認可であるが,効果が認められつつある方法である.適応は,角膜形状解析装置にて円錐角膜またはペルーシド角膜変性と確定診断を受け,2年間で自覚乱視度数やCsteepKのC1.0D以上の増加,またはハードコンタクトレンズのベースカーブのC0.1Cmm以上の減少を認めた場合に適応と判断する.●はじめに角膜クロスリンキング(cornealcross-linking,以下CXL)は,2003年にドイツのドレスデン工科大学のSeilerらにより開発された円錐角膜に対する治療法である1).基本原理としては,長波長紫外線(UV-A)に対するリボフラビン(ビタミンCBC2)感受性を利用し,一重項酸素を発生させることにより角膜実質のコラーゲン線維の架橋(クロスリンク)を強め,剛性を高める方法である.C●適応疾患(円錐角膜およびペルーシド角膜変性)円錐角膜は,角膜中央部が菲薄化し突出する進行性角膜形状異常疾患である.眼をこすることやアトピー性皮膚炎との関連性が指摘されており,遺伝的な要因も検討されているが原因は確定されていない2).円錐角膜の進行はC10歳未満.20歳と若年で生じることが多く,30歳代頃まで進行する症例が多い.若年者で急激な視力低下を生じた場合や強度乱視を認めた場合は,角膜形状解析を行う必要がある(図1,2).CXLによる予防ができるようになるまでは,ハードコンタクトレンズ(hardCcontactlens:HCL)による矯正を行う方法,20歳以上については角膜内リングを挿入する方法も可能であったが,他の治療法を行っても進行してしまい矯正視力が落ちた場合は角膜移植術が行われていた.CXLができるようになった現在でも,基本的にはCHCLによる矯正治療が必要ではあるが,予防ができるようになったため,世界的に円錐角膜に対する角膜移植症例が減少したとの報告も出てきている3).関連疾患としてペルーシド角膜変性がある.下方の角膜周辺部が菲薄化し,菲薄部位の上方がやや下方に垂れたような形状で突出する疾患である.角膜形状解析を行(61)C0910-1810/18/\100/頁/JCOPYうと「かにの爪」や「蝶々の羽」とよばれる形状パターン所見を認める(図1).円錐角膜との合併や家族例なども散見され,円錐角膜類縁疾患と考えられており,円錐角膜同様,原因不明の疾患である.発症は円錐角膜より遅く,20歳頃からであり,頻度は円錐角膜より低い.いずれの疾患も,確定診断をつけるためには角膜形状解析が必要である.角膜前面にプラチドリングを投影させて判定をするCTMS(トーメーコーポレーション)やPR-8000(サンコンタクトレンズ)で確定診断をつけることができるが,初期段階は判定できない場合もある.スリット光を投影させて前後面の形状や角膜厚を測定できるオーブスキャン(ボシュロム),角膜収差も測定の上判定できるCOPD-scan(ニデック),シャインプルーフ像の投影によって角膜前後面,角膜厚も測定できるペンタカム(OCULUS社),光干渉を用いて詳細な形状まで測定できるビサンテ(カールツァイス),カシア(トーメーコーポレーション)など,さまざまな機種がある.後面測定ができる機種は早期診断をつけることができる図1TMS(トーメーコーポレーション製)で測定した円錐角膜とペルーシド角膜変性の症例角膜前面にプラチドリングを投影させて形状を測定する.Ca:円錐角膜症例の角膜前面形状.下方突出を認める.Cb:ペルーシド角膜変性の角膜前面形状.「かにの爪」または「蝶々の羽」とよばれる形状を示している.あたらしい眼科Vol.35,No.11,2018C1509表1クロスリンキングの適応が,角膜混濁があると測定精度が落ちる場合もある.一方,前面プラチドリング形式は再現性がよいが涙液状態や上皮障害に左右される可能性があるなど,機種により長所短所があるため,可能であれば複数の機種で確認することが望ましい.C●円錐角膜に対する角膜CXLの適応前提として,上記のように角膜形状解析を行い,確定診断がついていることである.そのうえで進行を認めた場合が適応となる.わが国では未認可であるが,若年者の進行例が多いことから,米国食品医薬品局(FDA)では上皮.離を伴うドレスデン法についてC14歳以上を適応年齢としている.進行の指標としては,24カ月以内でCsteepKがC1.0D以上増加,自覚乱視度数がC1.0D以上増加,自覚屈折度数(等価球面)がC1.0D以上増加,HCLのベースカーブがC0.1Cmm以上減少のうち,いずれか一つを満たす場合と考えてよい4)(表1).進行例になると通常のケラトメータでは測定困難になることもあり,角膜形状解析装置によって確認していくこととなる.角膜の厚みがあまりに薄い場合は,紫外線照射による内皮障害が起こることが報告されている.角膜厚は,C1510あたらしい眼科Vol.35,No.11,2018図2カシア(トーメーコーポレーション製)で測定した円錐角膜症例光干渉を用いて前面のみならず後面や隅角の形状も測定可能である.a:円錐角膜である確率.前面後面とも突出していることより94%と算出.Cb:角膜前面ケラトマップ.中央部からやや下方の突出を認める.Cc:角膜厚マップ.最薄点はC423μm.Cd:角膜後面ケラトマップ.中央からやや下方の突出を認める.Ce:角膜後面の各点の接線方向の変化を示したマップ.各地点での細かい変化をとらえやすい.通常のパキメーターではもっとも進行して薄くなっている部分の測定が困難であるため,局所的な角膜厚測定のできるペンタカムやカシアなどを用いて確認することが必要である.角膜のもっとも薄い部分がC450Cμm以上あることが望ましいが,400Cμm以上あれば術中の処置によって通常の方法を行うことが可能になることが多い.角膜厚が大きいほど安全性が高くなるため,進行を認めた場合はCHCLで視力が十分得られていても,できるだけ早期にCCXLを行うことが望ましいと考えられる.C●おわりに近年,CXLの術後成績として多くの報告が集まりつつあり,一定の進行抑制効果が認められてきている.円錐角膜を疑った場合は角膜形状解析を行い,診断がつけば,適切な時期にCCXLを受けていただくことが望ましいと考える.文献1)WollensakG,SpoerlE,SeilerT:Ribo.avin/ultraviolet-a-inducedcollagencrosslinkingforthetreatmentofkerato-conus.AmJOphthalmol135:620-627,C20032)Perez-StraziotaCC,CGasterCRN,CRabinowitzYS:CornealCcross-linkingCforCpediatricCkeratcoconusCreview.CCorneaC37:802-809,C20183)SandvikGF,ThorsrudA,RaenMetal:Doescornealcol-lagenCcross-linkingCreduceCtheCneedCforCkeratoplastiesCinCpatientswithkeratoconus?Cornea34:991-995,C20154)加藤直子:角膜クロスリンキング.角膜・結膜・屈折矯正,眼手術学C4(大鹿哲郎監修),p198-201,文光堂,2013(62)

眼内レンズ:眼表面操作のためのスポンジ麻酔

2018年11月30日 金曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋原岳384.眼表面操作のためのスポンジ麻酔原眼科病院手術開始時,あるいは麻酔時などに結膜を鑷子で把持するとき,患者が痛がることがある.その予防策として筆者がしばしば用いているのが,手術用止血スポンジをキシロカインに浸したものを結膜上に眼瞼と挟むように留置する表面麻酔である.●はじめに〔筆者が大学を卒業した平成元年は,現在のような研修医制度はなく,卒業の翌月には眼科に入局し,すぐに眼科医として外来,病棟で患者の診察を開始した.平成元年末には最初の白内障手術を執刀し,平成3年頃は白土城照講師,新家眞講師が執刀したトラベクレクトミー後の患者をベッド上に並べて毎朝5-FU(5-Fluoro-uracil:術後の線維芽細胞の増殖抑制目的で使用)の結膜下注射を行うのが日課であった.平成5年には大宮(現さいたま)赤十字病院に勤務し,自らがトラベクレクトミーを執刀し始めたが,当時の流儀は白土講師,新家講師に倣って,上直筋付着部に制御糸をかけ,輪部基底結膜辺を作製するために円蓋部結膜を切開していた.上直筋付着部を太い鑷子で結膜上からつまむと痛がる患者がいたため,何とかできないかと考案したのが,今回ご紹介するキシロカインに浸したMQA(MedicalQuickAbsorber,イナミ),通称,「ヒタヒタ」(命名は獨協医科大学の松島博之先生)である.決して筆者自身のオリジナルを主張するものではなく,同様の麻酔方法を用いている先生もいらっしゃると思うが,より多くの先生方に眼表面操作時の患者の疼痛緩和に役立てていただけるように,筆を執った次第である.〕●スポンジ麻酔の手順とその適応(仮)2%キシロカインをシャーレに取り,MQAを切らず(59)0910-1810/18/\100/頁/JCOPYに浸しておく(図1①).線維柱帯切除術の術後に,線維芽細胞増殖抑制の目的でMMC(MitomycinC)に止血用スポンジを浸すのと要領は同じである.このスポンジを上眼瞼と結膜の間に挟んで約1分留置する(図1②).タイミングは皮膚消毒をしている間に留置してもよいし,洗顔後,ドレープをかけてから手術開始前に留置してもよい.スポンジ除去後,洗浄はせずに上直筋付着部を鑷子でつかむと(図1③),痛みが和らぐ.利点は,ベノキシール点眼よりも局所に接して塗布することで,鑷子で把持するときの疼痛を緩和する効果が期待できることである(図1④).最近では,白内障でも緑内障でも上直筋に制御糸をかけることはなくなったので,「スポンジ麻酔」を使用することはなくなっていた.しかしながら,この表面麻酔法は現在でも応用は可能である.若い患者にTenon.下麻酔をするときに,結膜をつまんだだけでも痛がる,あるいは結膜を切開したときに痛がり,その不安が手術中ずっと続いて硝子体圧が高くなったり,閉瞼の緊張が続くことを経験することがあるが,そのような事態を予防するためには有用であるかもしれない.また,適応範囲を拡大して可能性を考えれば,加齢黄斑変性に対する硝子体注射や,ぶどう膜炎の治療でのステロイド結膜下注射,結膜下結石除去など,結膜に接する直前に表面麻酔として応用できるかもしれない.若年者や疼痛に敏感な患者に内眼手術をする際の参考にしていただければ幸いである.あたらしい眼科Vol.35,No.11,20181507図1スポンジ麻酔の実際①2%キシロカインをシャーレにとり,MQAを1枚まるごと浸しておく.②MQAを下眼瞼と結膜の間に留置する.この症例は6時にTenon.麻酔を行う予定である.③Tenon.下麻酔を行うために結膜を把持したところ.疼痛が緩和され,患者の不安を和らげることができた.④上眼瞼,下眼瞼だけでなく,内眼角,外眼角でも応用は可能である.

コンタクトレンズ:コンタクトレンズの弾性率

2018年11月30日 金曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方さらなる一歩監修/下村嘉一49.コンタクトレンズの弾性率●はじめにコンタクトレンズ(CL)は,ハードCCLとソフトCCL(SCL)に大別される.現在主流となっているCSCLは,含水性ゲル素材でできているため,その柔らかさゆえに装用感に優れる.SCLの弾性率(モジュラス)は柔らかさの指標の一つであり,装用感のみならず,前眼部への物理的な影響を考える場合においても重要である.本稿では,SCLの弾性率の臨床的意義について概説するとともに,弾性率とは何か,そして各種CSCLの弾性率の測定結果も紹介する.C●ソフトコンタクトレンズの弾性の臨床的意義弾性率の高いCSCLは,SCLを装着する際の取り扱いを容易にさせる.なぜならば,弾性率が高いと,SCLを指に乗せたときにレンズ形状(お椀のような形状)を保持しやすいので,指との接地面積が小さくなり,指からCSCLが離れやすく,眼に装着しやすくなるからである.一方で,弾性率が低いと,角結膜の形状にCSCLがフィットしやすくなり,装用感はよくなる.実際に,SCL装用時の装用感が弾性率と逆相関するという臨床結果も報告されている1).また,SCLの弾性率が眼表面に与える物理的な影響としては,epithelialCsplitting〔またはCsuperiorCepitheC-lialCarcuatelesions(SEALs)ともよばれる〕2)および乳頭性結膜炎〔CLにより生じる乳頭性結膜炎をCcontactClens-relatedpapillaryCconjunctivitis(CLPC)とよぶ〕3)などの合併症が知られている(図1).SEALsとは,上方の角膜輪部に沿った弓上の角膜上皮障害のことであり,輪部から角膜側へC3mm程度の部位にみられる.SEALsは弾性率の高いCSCLで発症しやすく,おもに弾性率の高い第一世代のシリコーンハイドロゲルレンズ(SHCL)で発症しやすいことが報告されている4).また,SEALsはCSCLの高い弾性率だけでなく,レンズデザインとも関係する.強度近視のような強いマイナス度数のSCLは周辺が厚くなり,SEALsが発症しやすくなる.(57)C0910-1810/18/\100/頁/JCOPY丸山邦夫ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニーEpithelialSplitting(Superiorepithelialarcuatelesions:SEALs)図1高い弾性率を有するSCLが眼表面に与える影響(イメージ図)CLPCとは,SCL装用によって生じる上眼瞼結膜の乳頭性結膜炎の総称であるが,とくに乳頭がC1.0Cmm以上のものを巨大乳頭性結膜炎(giantCpapillaryCconjunctivi-tis:GPC)とよぶ.GPCは,CLに付着した汚れ(おもに変性した蛋白質)による免疫学的反応と物理的刺激の関与が考えられている.CLPCは弾性率の高い第一世代のCSHCLで発症しやすいことが報告されており5),高い弾性率のCSCLはCCLPCのリスクになりうると考えられる.C●ソフトコンタクトレンズの弾性率の測定弾性率とは,18世紀にCThomasYoungが提唱した弾性特性の指標であり,引張,圧縮,せん断などによる応力負荷をかけることで得られる.SCLにおいては,一般的に引張強度試験が採用されてきた.弾性率は,ひずみに対する応力の比として計算でき,単位はメガパスカル(MPa)で表示され,メーカーの製品カタログなどでは「モジュラス」と記されている.応力は,試験サンプルに加えられる力をその断面積で割って算出され,ひずあたらしい眼科Vol.35,No.11,2018C1505A図2弾性率の応力-ひずみ曲線みは,試験サンプルが変形した量(サンプルの元の長さに対するサンプル長の変化率)を示す.図2に応力.ひずみ曲線を示すが,この曲線における立ち上がりの線形領域(B点-C点)の傾きが「弾性率」となる.SCLの柔らかさの指標である弾性率は,臨床的に重要な指標であるにもかかわらず,統一された測定方法がなく,各製造業者が独自の方法で測定しているため,異なる製造元の製品の弾性率を単純に比較することはむずかしい.そこで,同一方法にて測定した各社製品の測定値を図3に示した.この結果からわかるように,製品によって弾性率が異なることがわかる.C●おわりにSCLを処方する医療従事者は,ときとしてフィッティング不良やCCLに起因する合併症に遭遇する.そのよう1.000.900.900.780.800.690.680.670.650.630.600.470.700.500.400.300.260.200.100.00eta.lconoma.lconneso.lconnara.lconsten.lconseno.lconsomo.lcondele.lconnel.lconAAAAAAAAA弾性率(MPa)図3各社製品の弾性率の測定値(JohnsonandJohnson,Inc.,2017)な場合,対策を考えるうえでCSCLの弾性率も念頭におくことが大切である.眼表面への物理的な刺激による合併症や装用感を考慮すれば,弾性率の低いCSCLを選ぶことが望ましいという結論に至る.文献1)BrennanN:ContactClensCbasedCcorrelatesCofCsoftClensCwearingcomfort.AAOC86:E-abstract90957,20092)KlineCLN,CDeLucaTJ:AnCanalysisCofCarcuateCstainingCwiththeB&LSOFLENS.PartI.JAmOptomAssocC46:C1126-1132,C19753)SpringTF:Reactiontohydrophiliclenses.MedJAustC1:C449-450,C19744)DumbletonK:Nonin.ammatorysiliconehydrogelcontactlenscomplications.EyeContactLensC29:S186-S189,C20035)CarntNA,EvansVE,NaduvilathTJetal:Contactlens-relatedCadverseCeventsCandCtheCsiliconeChydrogelClensesCanddailywearcaresystemused.ArchOphthalmol127:C1616-1623,C2009CPAS111

写真:Stevens-Johnson症候群におけるLid Wiper部の異常に起因する角膜上皮障害

2018年11月30日 金曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦414.Stevens-Johnson症候群における吉川大和*,**横井則彦***大阪医科大学眼科**LidWiper部の異常に起因する角膜上皮障害京都府立医科大学眼科●①●②図2図1のシェーマ①病的角化を生じている眼結膜領域②耳側に生じている眼球癒着図1SJS発症1カ月後Lidwiperを含んで眼瞼結膜に幅をもって病的角化を生じている.図3眼表面のフルオレセイン染色所見眼瞼結膜の異常部位との摩擦亢進が生じる部位に高度の角膜上皮障害を生じている.図4眼瞼結膜のフルオレセイン染色所見(図1の8年10カ月後)健常結膜と病的角化の境界が明瞭である.慢性期でも病的角化領域の範囲が変化しうることがわかる.(55)あたらしい眼科Vol.35,No.11,2018C15030910-1810/18/\100/頁/JCOPYStevens-Johnson症候群(Stevens-Johnsonsyn-drome:SJS)は高熱や全身倦怠感などの症状を伴って全身に紅斑・びらん・水疱が多発し,皮膚・粘膜の壊死性障害をきたす重症薬疹の一つである.発症数日の急性期に眼病変を生じはじめることが多く,皮膚粘膜移行部はとくに障害されやすい.慢性期の眼合併症としてもっとも多いのはドライアイであるが1),その機序として,結膜の瘢痕性変化による涙液減少に加えて,結膜上皮の扁平上皮化生・病的角化による水濡れ性低下やマイボーム腺機能不全による涙液層の安定性低下がある.この涙液層の安定性低下に加えて,他のドライアイの他覚所見,自覚症状の悪化の原因として,皮膚粘膜移行部の後方移動やその領域の結膜の病的角化があり,これらは,瞬目時の摩擦を増強する要因となり,慢性期のCSJSにしばしばみられる異常である.症例はC52歳,女性.SJS発症当時はC40歳.2006年9月C23日より感冒様症状を自覚し,発熱に対して非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidalCanti-in.ammatorydrugs:NSAIDs)を内服した後にCSJSを発症した.急性期は広範囲の角膜上皮欠損や結膜の偽膜形成,体幹の発疹,口腔内潰瘍などの局所および全身所見を認めたが,局所および全身のステロイドによる消炎治療により全身状態は回復し,眼表面の急性期病変も治癒した.発症後C1カ月となるC2006年C10月C19日,今後の管理目的に京都府立医科大学附属病院眼科を紹介受診となった.紹介時には眼表面の上皮化は得られており,角膜への結膜侵入は伴っておらず,経過は良好であったが,眼球表面と眼瞼縁が接触するClidwiperから瞼結膜に幅をもって瘢痕化と病的角化を生じていた(図1,2).その後,矯正視力は比較的良好なものの,眼痛および眼の開けづらさといったドライアイ症状を訴えていた.そして,その原因として上眼瞼結膜のClidCwiper2)を含む病的角化部位と眼球表面との瞬目時の摩擦亢進が考えられた.2015年C8月の時点においても同部位の異常所見は持続し,SJSに伴う涙液層の安定性低下も加わり,瞬目時の摩擦亢進によると考えられる角膜上皮害は遷延していた(図3).ドライアイと上眼瞼結膜の瘢痕化,病的角化(図1,4)に伴う摩擦亢進に対してレバミピド点眼液のC1日C4回点眼,および防腐剤無添加の人工涙液点眼をC1日C4回開始することで症状の改善が得られた.また,同部位には白い蝋状の付着物がたえず生じており,瞬目時の摩擦を増強する要因になっていると考えられたため,それを除去したことで自覚症状はさらに改善した.SJSで眼表面上皮に高度の病的角化を伴う例では,角化した部位に本症例と同様の分泌物が生じることが知られており,脂質または角質と考えられている.SJSの上眼瞼縁の瘢痕化や病的角化に伴う摩擦亢進に対する治療としては,点眼治療だけではなく白色蝋状の分泌物の除去も重要と思われる.上眼瞼縁の瘢痕化や病的角化は,SJSに合併する涙液層の安定性低下に加えて,眼球表面上皮を障害する要因となる.レバミピド点眼薬は,結膜杯細胞増加を介した至適なムチンの産生作用によって,結膜に瘢痕形成を伴うCSJSの眼表面においても摩擦の軽減作用が期待できる3).より重症例では,眼瞼の瘢痕化組織を除去し,口唇粘膜を移植することで眼表面の障害と疼痛症状が改善するとの報告がある4).本症例のように,輪部疲弊を生じずに急性期を脱しても,眼瞼縁の瘢痕化やドライアイに伴う眼症状で長期にわたって苦しむCSJS患者が存在する.多くの眼科医がこの疾患を理解し,継続的に経過観察および治療してゆくことが必要であると思われる.文献1)SotozonoCC,CUetaCM,CNakataniCECetal:PredictiveCfactorsCassociatedwithacuteocularinvolvementinStevens-John-sonCsyndromeCandCtoxicCepidermalCnecrolysis.CAmCJCOph-thalmolC160:228-237,C20152)KorbDR,GreinerJV,HermanJPetal:Lid-wiperepithe-liopathyCandCdry-eyeCsymptomsCinCcontactClensCwearers.CCLAOJC28:211-216,C20023)UetaM,SotozonoC,YokoiNetal:Rebamipidesuppress-esPolyI:C-stimulatedcytokineproductioninhumancon-junctivalepithelialcells.JOculPharmacolCTherC29:688-693,C20134)IyerCG,CPillaiCVS,CSrinivasanCBCetal:MucousCmembraneCgraftingCforClidCmarginCkeratinizationCinCStevens-Johnsonsyndrome:Results.Cornea29:146-151,C2010

カラーコンタクトレンズの将来(なにを求めるか)

2018年11月30日 金曜日

カラーコンタクトレンズの将来(なにを求めるか)TheFutureofColorContactLenses渡邉潔*はじめにカラーコンタクトレンズ(以下,カラーCL)は,透明なコンタクトレンズ(CL)と同様に,見えやすく,装用感がよく,安全なCLである必要がある.透明なCLとの大きな違いは,色素(金属)が含まれていること,酸素透過性の低いヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyethylmethacrylate:HEMA)の素材のCLが多いことである.生産国は,欧米と東アジア(台湾,韓国など)に大別できる.カラーCLの購入ルートは,眼科医の処方を受けるルートは少なく,診察を受けずに通販や大型ディスカウントショップで購入するルートがほとんどである.したがって,正しい装脱方法や消毒方法を知らない装用者がほとんどである.また,眼痛や充血が生じても,眼科に行くと医者に怒られるから薬局の市販目薬でなんとか治そうとする者がほとんどである.数年前までは,カラーCL装用者のコンプライアンスは悪いから診察はしたくないという眼科医もいたが,眼科離れした現在では,受診してきたら「よくぞ,眼科に来てくれました」と患者を褒めるべきであろう.カラーCLの将来を語るためには,これまでの歴史と現状も把握する必要がある.IカラーCLの歴史カラーCLは,白内障手術による虹彩欠損や広範な角膜白斑を自然な虹彩色に見せるために,治療目的に近い意味で開発使用されていた.現在は,シード社がその目的の「シード虹彩付きソフト」を販売してくれている.1990年頃までは,ハードのカラーCLも販売されていた.1990年頃から,虹彩色がいろいろな人種のいる米国では,髪の毛の色を変えるのと同様に虹彩色を変えたいということで,グレー,グリーン,ブルー,ブラウンなどのソフトのカラーCLが販売された.日本でも米国製のカラーCLが輸入され,カラーCLの第一次のブームになったが,素材が酸素透過性の低いグループ1(用語解説参照)のHEMAという素材で酸素不足を起こし,色素は表面に露出しており,角膜や結膜を擦って眼障害を起こした.しかも,1年以上使う従来型のタイプであり,HEMAのCLは熱に比較的強いため煮沸消毒を用いることが多く,6カ月以上使っているとCLは熱でオムレツ状に丸まって変形することが多かった.その後,2004年にジョンソン・エンド・ジョンソン社のワンデーアキュビューカラー(グループ4)が発売され,カラーCLの第二次のブームが始まった.茶色の虹彩色のアジア人などが角膜径を大きく見せるエンハンスタイプのカラーCLを希望し,台湾や韓国でグループ1のHEMAのレンズ表面に色素を印刷したようなカラーCLが安価に製造され,一気に市場を拡大した.2005年頃より,度数が入っていないカラーCLによる眼障害が多発したため,日本眼科医会と日本コンタクトレンズ学会などが厚生労働省に要望書を出し,2009年に厚生労働省は度数の入いっていないカラーCLも*KiyoshiWatanabe:ワタナベ眼科〔別刷請求先〕渡邉潔:〒530-0001大阪市北区梅田1丁目大阪駅前ダイヤモンド地下街5-5270ワタナベ眼科0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(49)1497ハード1950年1970年→RGP現在に至るソフト1970年1980年1991年2006年高含水使い捨てシリコーングループ2グループ4ハイドロゲルグループ51984年図1CLの歴史(日本)・透明なソフトCL1970年1980年1991年2006年2000年にはほぼ使用されなくなった・カラーCL2009年図2ソフトCLの歴史(日本)180156160140120100806040200201320142015(年度)図3ワタナベ眼科においてカラーCLによる中等度以上の眼障害を認めた医療機器安全性情報報告件数の年次変化症例数■オパーク(opaque)タイプ■エンハンス(enhancers)タイプ図4カラーCLのデザインによる分類201816141210864202012201320142015201620172018(年)(451)(454)(457)(465)(482)(493)(493)(女子高生総数)■オパークタイプ■エンハンスタイプ図5女子高校生の健診時にカラーCLを装用していた生徒の頻度頻度(%)頻度(%)10090807060504030201002011201320152017(年)(152)(145)(173)(186)(調査人数)■オパークタイプ■エンハンスタイプ図6接客業の女性のカラーCL装用者の頻度表1カラーCLの安全性の見きわめの要因安全性が高い安全性が低い1.色素封入の部位2.Dk/t値素材(ISO分類)厚み3.使用サイクル眼瞼側近くにサンドイッチ表面が平滑24以上グループ5,4,2(高含水)0.10mm以下毎日2週間角膜側or近くに色素が露出レンズ表面に凹凸24未満グループ1(低含水)0.11mm以上1カ月交換従来型図7ソフトCLの素材による分類厚生労働省・FDA分類とISO分類の違い.■用語解説■厚生労働省分類,FDA分類,ISO分類:2006年に日本でもシリコーンハイドロゲルのSCLが販売されるようになり,厚生労働省のソフトCLの分類では,無理やりグループ1や3に分類している.ISO分類では,シリコーンハイドロゲルはグループ5として分類している(図7).たとえば,HEMAを素材とするカラーコンタクトレンズ(カラーCL)はグループ1に分類され,Dk/t値が10くらいである.シリコーンハイドロゲルレンズのエアーオプティクスカラーズというカラーCLも厚生労働省の分類では同じグループ1に分類されるが,Dk/t値は138であり,とても同じグループのレンズとはいえない.日本コンタクトレンズ学会の理事会(2016年1月)でも議論し,厚生労働省の含水性SCLの分類はあくまで消毒液の申請のための分類と考え,学術的にはISO分類を用いることを推奨することになった.