●連載105監修=安川力髙橋寛二85.加齢黄斑変性の長期マネジメント中間崇仁塩瀬聡美九州大学大学院医学研究院眼科学分野抗CVEGF治療は滲出型CAMDに対する第一選択であるが,長期マネジメントにおいては患者負担や医療経済負担,治療抵抗例の存在などが問題となる.また,片眼発症症例では僚眼のマネジメントも必要となる.本稿では滲出型CAMD治療における長期マネジメントについて述べる.はじめに抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)治療が滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)に対する治療として日本で承認されC10年以上が経過し,現在では治療の第一選択肢となっている.これにより滲出型CAMD治療は新たな時代を迎えたが,その一方で長期的には頻回の再来・投与が必要な患者の存在や,高額な薬剤費による患者負担・医療経済負担が問題となってきている.また,既存薬に対する治療抵抗症例も存在し,今なお滲出型AMD治療においてCqualityCofvision(QOV)を改善し,それを維持するための長期マネジメントには課題が多くある.本稿では滲出型CAMD治療の長期マネジメントについて,九州大学病院(以下,当院)の方針を述べる.抗VEGF治療の投与方針滲出型CAMDに対する抗CVEGF治療長期マネジメントにおいて,3回導入期投与後の投与方針は大きな要素のひとつである.投与方針として,reactive治療であるCproCrenata(PRN),proactive治療である固定投与,Ctreatandextend(TAE)があげられるが,当院では基導入期TAE・・・4週4週6週8週10週drydrydrydry本的にはCTAEでの抗CVEGF治療としている.これは,治療により改善したCQOVを可能な限り維持し,かつ再来回数を減らすためである.PRNではCSEVEN-UPstudyで示されたように,QOV維持が困難な可能性があること1),固定投与では過多投与・治療不足となる可能性があることから,それぞれ第一選択の投与方針とはしていない.しかしながら長期マネジメントとして,僚眼が視力良好で患眼の抗CVEGF治療に対する疲れを感じている患者ではCPRN,僚眼が視力不良で患眼の視力維持のために積極的な治療が必要な患者では固定投与など,治療経過や僚眼の状況などによってはCTAE以外での抗CVEGF治療を選択することもあり,個別化医療をめざしている.当院におけるCTAEは,滲出がなくなった時点からC2週ごとに延長し,投与間隔を最大C16週まで延長する.16週の投与間隔でC1年間Cdrymaculaを維持できれば,いったん抗CVEGF治療を終了して経過観察の方針とし,治療回数の軽減をめざしている.治療中止してもC1年間再発がない患者は,近医での経過観察を依頼し,地域連携をしながら診ている(図1).しかし,長らく落ち着いていても突然再発する症例も存在し,今後も最適なマネジメントの検討が必要である.また,polypoidalchoroi-・投与間隔は最大16週まで延長・16週で1年drymacula維持→治療終了・治療終了後1年再発なし→近医にて経過観察図1当院でのTAEでの抗VEGF治療3回導入期投与後,滲出がなくなったらC2週ごとに投与間隔を延長する(最大C16週).16週の投与間隔でC1年間Cdrymaculaを維持できれば治療を終了する.中止後C1年間再発がなければ近医での経過観察を依頼する.(91)あたらしい眼科Vol.38,No.3,2021C3290910-1810/21/\100/頁/JCOPY切り替え前切り替え後図2アフリベルセプトからブロルシズマブに切り替えた症例アフリベルセプトからブロルシズマブに切り替え,PED・SRDの改善を認める.その一方で周辺部の網膜静脈閉塞を認める.Cdalvasculopathy(PCV)やCpachychoroidCneovasculop-athy(PNV)では,EVEREST2studyなどの結果を踏まえて,抗CVEGF治療回数軽減を目的とした光線力学的療法(photodynamicCtherapy:PDT)を併用することもある2).抗VEGF治療抵抗症例への対応これまで滲出型CAMDに対する抗CVEGF薬として,おもにペガプタニブ,ラニビズマブ,アフリベルセプトが用いられてきた.それぞれ効果や作用期間の点などで違いがあるものの,これら従来の薬による抗CVEGF治療に抵抗を示す症例をC10~20%程度に認める.とくに網膜色素上皮.離(pigmentCepithelialdetachment:PED)は,従来の薬での抗CVEGF治療では完全に消退しないことも多い.PEDの完全消退がCQOVにどこまで寄与するかについては議論の余地があるため,滲出型AMD治療の長期マネジメントにおいてCPEDをどの程度まで積極的に治療をするかは悩ましい.とくに大きなPEDでは,抗CVEGF治療をきっかけに網膜色素上皮裂孔(retinalCpigmentCepithelialtear:RPEtear)が発生し,不可逆的なCQOV低下を招く可能性もあるため,慎重な判断が必要と考える.当院では従来の薬での抗VEGF治療で完全消退しないCPEDに対して,追加加療としてCPDTの併用を行ったり,日本でC2020年C3月に新たに承認されたブロルシズマブへの切り替えを検討したりしている.ただし,ブロルシズマブは投与後の血管炎発症の報告もあり,RPEtear発生と同様に不可逆的なCQOV低下を招く可能性もあることから,視力,治療経過,僚眼の状態などを含めて慎重に対象を選択している(図2).また,type1脈絡膜新生血管では,浅い漿液性網膜C330あたらしい眼科Vol.38,No.3,2021.離が遷延する症例にも遭遇する.このような患者は視力がよいことが多く,漿液性網膜.離の完全消退をめざして投与を行っていても再発を繰り返す.各種Cstudyでフルイドの残存は視力低下の原因となることが知られてはいるが,このような患者に厳密に毎月投与を行うと通院や治療の自己中断につながるため,明らかな視力低下や患者の自覚悪化がある場合を除いて,患者と相談しながら投与間隔を決め,やや寛容な固定投与を行うことにしている.僚眼のマネジメント片眼発症の滲出型CAMD症例では,僚眼発症の可能性があり,両眼性になるとCQOVが著明に落ちるため,滲出型CAMD治療の長期マネジメントにおいて僚眼のマネジメントも重要と考える.当院では,滲出型CAMD患者の喫煙歴を必ず確認し,再来時に喫煙に対する注意喚起をするようにしている.また,食生活やサプリメント摂取に関してもアンケートを用いて積極的に聴取し,とくに片眼発症の滲出型AMD患者には,AREDS・AREDS2試験の結果を踏まえて,ビタミンCC,ビタミンCE,亜鉛,ルテイン,ゼアキサンチンなどを含むサプリメントを推奨している3,4).これにより僚眼発症リスクを軽減し,長期のCQOV維持をめざしている.AMD発症に関しては未だに病態が不明な部分があり,遺伝子の違いによる発症リスクの変化に関しても研究が進んできているため,今後も僚眼を含めた長期マネジメント方法の更新が必要であると考える.文献1)RofaghaS,BhisitkulRB,BoyerDSetal:Seven-yearout-comesCinCranibizumab-treatedCpatientsCinCANCHOR,CMARINA,CandHORIZON:aCmulticenterCcohortCstudy(SEVEN-UP).Ophthalmology120:2292-2299,C20132)KohCA,CLaiCTYY,CTakahashiCKCetal:E.cacyCandCsafetyCofranibizumabwithorwithoutvertepor.nphotodynamictherapyforpolypoidalchoroidalvasculopathy:Arandom-izedCclinicalCtrial.CJAMACOphthalmolC135:1206-1213,C20173)Age-RelatedCEyeCDiseaseCStudyCResearchGroup:ACran-domized,placebo-controlled,clinicaltrialofhigh-dosesup-plementationCwithCvitaminsCCCandCE,CbetaCcarotene,CandCzincCforCage-relatedCmacularCdegenerationCandCvisionloss:AREDSCreportCno.C8.CArchCOphthalmolC119:1417-1436,C20014)Age-RelatedCEyeCDiseaseCStudyC2CResearchGroup:CLutein+zeaxanthinandomega-3fattyacidsforage-relat-edCmaculardegeneration:theCAge-RelatedCEyeCDiseaseCStudy2(AREDS2)randomizedCclinicalCtrial.CJAMAC309:C2005-2015,C2013(92)