●連載223監修=岩田和雄山本哲也223.悪性緑内障の治療とロングチューブ千原悦夫医療法人千照会千原眼科シャント手術悪性緑内障では房水のCmisdirectionによって前部硝子体が虹彩根部を押し上げ,これによる閉塞隅角と高眼圧がさらなるCmisdirectionを誘発するという悪循環を起こす.治療としては硝子体手術と前房再建が重要であるが,隅角閉塞が周辺虹彩前癒着やCSoemmering輪のために開放できない場合は,経扁平部型のロングチューブシャント手術がよい適応になる.●悪性緑内障の病態悪性緑内障はCaqueousCmisdirectionsyndrome,cili-aryCblockglaucomaともいわれ,高齢の女性に多い.Chandlerによると,一般的には浅前房の眼に濾過手術をしたあとにC0.6~4%の割合で起こるが1),まれには手術既往なく起こることもある.悪性緑内障では房水がなんらかの原因で硝子体腔方向に流れ,前部硝子体ゲル(あるいは虹彩後面に形成された腫瘤)が前方に押しやられ,虹彩根部を前方移動させて隅角閉塞を起こし,眼圧が上昇してさらに硝子体の前方移動を悪化させるという悪循環に陥る.このタイプの緑内障はトラベクレクトミー,虹彩切除,前房内へのチューブ挿入といった方法を行っても前房と後房の間の交通路が確保できず,眼圧のコントロ―ルが困難で,しばしば失明に至る恐ろしい病態である.教科書的な治療法としてアトロピンによる散瞳,水晶体摘出,YAGレーザーによる前部硝子体膜の破壊,硝子体腔の液化した硝子体吸引,硝子体切除,毛様体破壊術などが報告されているが,必ずしも成功するわけではない.図1濾過手術既往のない眼に起こったタイプ2の悪性緑内障虹彩とCIOLは迷入した房水の圧力に押されて角膜後面に押し付けられ,虹彩後面と前部硝子体膜の間にまったく空間がないことがわかる(眼圧C53mmHg).(67)C0910-1810/19/\100/頁/JCOPY悪性緑内障を診断するためには,浅前房眼で瞳孔ブロックや,プラトー虹彩によるものではないことを示す必要があるが,その検査として前眼部光干渉断層計検査と超音波生体顕微鏡検査はきわめて大切であり,浅前房を確認するとともに,虹彩の後ろに水晶体や前部硝子体膜がべったりとくっついて,まったく空間がない状態を確認することが必要である(図1,2).C●悪性緑内障のタイプと治療悪性緑内障の治療としては経毛様体扁平部硝子体切除(parsplanaCvitrectomy:PPV)が必須であり,発症からの時間が短く,隅角における癒着が進行していない眼では,PPVと分散型の粘弾性物質による前房と隅角の再形成(あるいは隅角癒着解離術)だけで眼圧のコントロールが得られることもある(図3).筆者の経験によると悪性緑内障には大きく分けて二通りあり,一つは濾過手術のあとなどに房水が後房から硝子体腔に迷入(mis-direction)し,硝子体圧の上昇に伴って前部硝子体膜が虹彩後面に押し付けられるタイプである.もう一つは虹彩の後面に腫瘤が形成され,その成長に伴って虹彩が角膜後面に押し付けられ,そこから悪循環が始まって悪性緑内障になるタイプである.虹彩後面にできる腫瘤のなかでもっとも頻度が高いのがCSoemmering輪2)であり,そのほかにも腫瘍,出血塊,炎症産物などがありうる.図2タイプ1の悪性緑内障の症例偽水晶体と前部硝子体が虹彩後面にべったりと接触し,後房が形成されていない.あたらしい眼科Vol.36,No.1,2019C67図3図1の症例に硝子体手術を行い,分散型粘弾性物質によって前房形成を行って2日目の前眼部OCT像前房は深く形成され,隅角は開大され,眼圧はC13CmmHgに下がった.虹彩後面に対称性の球形像がみられ,これが悪性緑内障発症のきっかけとなったCSoemmering輪である.図5超音波生体顕微鏡検査で虹彩の後ろに楕円形の腫瘤を確認できるタイプ2の悪性緑内障レーザー虹彩切開による虹彩穿通があり経毛様体扁平部硝子体切除(PPV)もすんでいる眼で,なおかつ浅前房が進行する眼である.Soemmering輪が認められ隅角開放がむずかしい.タイプC1で陳旧化している場合は周辺虹彩前癒着(peripheralCanteriorsynechia:PAS)が形成されて,単に隅角を開大しても眼圧は下がらないことがあり(図2,4),タイプC2でも腫瘤が大きい場合,あるいは白内障手術から時間がたってCSoemmering輪が線維化して固くなっている場合は除去がむずかしく,硝子体手術を行っても隅角が開かず,眼圧のコントロールができないことがある.この場合の一つの解決法は硝子体手術と硝子体腔内へのチューブの挿入である(図5).虹彩後面のCSoemmering輪がまだ線維化していない柔らかいタイプである場合は,YAGレーザーによる前.開放3,4)や前房側から二手法による灌流と吸引5,6)でこの腫瘤を吸引して除くことにより,前房隅角の開大が得られることもある.図5はレーザー虹彩切開による虹彩穿通がありCPPVもすんでいるが,なお浅前房が進行する眼である.超音波生体顕微鏡で検査すると,虹彩の後ろに楕円形の腫瘤があることが確認された.これは白内障術後に起こったCSoemmering輪であり,このような眼では虹彩切除や濾過手術が効かない悪性緑内障になるC68あたらしい眼科Vol.36,No.1,2019図4図2の症例のPPV+バルベルト緑内障インプラント挿入術後の前眼部OCT所見と眼底a:眼圧は術前のC35~37CmmHgから術後4~7CmmHgに降下した.前眼部COCTで高度のCPASの残存が確認されるが図C2より前房が深くなり改善している.Cb:Optosで撮影したもの.上方に硝子体腔内のチューブが見える.リスクが高い.悪性緑内障はチューブシャント手術が導入される以前には失明のリスクが高かった.現在このような眼においても,硝子体腔にチューブを挿入することによって助かるようになったことは大きな進歩と考えられる.文献1)ChandlerPA,SimmonsRJ:Malignantglaucoma:MedicalandCsurgicalCtreatment.CAmCJCOphthalmologyC66:495-502,C19682)KungCY,CParkCSC,CLiebmannCJMCetal:ProgressiveCsyn-echialCangleCclosureCfromCanCenlargingCSoemmeringCring.CArchOphthalmolC129:1631-1632,C20113)SuwanCY,CPurevdorjCB,CTeekhasaeneeC:PseudophakicCangle-closureCfromCSoemmering.CBMCCOphthalmologyC16:91,C20164)松山加耶子,南野桂三,安藤彰ほか:Soemmeringによる続発閉塞隅角緑内障の一例.あたらしい眼科C27:1603-1606,C20105)BhattacharjeeH,BhattacharjeeK,BhattacharjeePetal:CLique.edaftercataractanditssurgicaltreatment.IndianJOphthalmolC62:580-584,C20146)石澤聡子,黒岩真友子,澤田明ほか:眼圧上昇をきたしたCSoemmering輪を伴う液性後発白内障の一例.眼科臨床紀要8:657-660,C2015(68)