特集●ドライアイの新しい治療あたらしい眼科32(7):935~942,2015特集●ドライアイの新しい治療あたらしい眼科32(7):935~942,2015ムチンと水分を供給するジクアス点眼薬3%DiquafosolOphthalmicSolutionPromotesMucinandTearFluid山口昌彦*大橋裕一**はじめにわが国のドライアイ診断基準1)では,「ドライアイとは,さまざまな要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり,眼不快感や視機能異常を伴う」と定義されている.つまり,ドライアイは,乾燥感や異物感などの原因になるばかりでなく,かすむ,まぶしいなどの視機能異常を伴うことがあり,qualityoflife(QOL)を脅かしかねない疾患であるといえる.昨今,生活様式や社会構造の変化は著しく,パソコンやスマートフォンなどvisualdisplayterminal(VDT)にかかわる時間の増加,密閉した空間での空調設備による低湿度化,コンタクトレンズユーザーの増加,高齢化社会の到来など,ドライアイの発症に影響する環境因子は増加傾向にあり,実際,ドライアイの罹患率は上昇している2).このようにドライアイという疾患が非常に注目されるようになってきたなかで,2010年12月にジクアホソルナトリウム点眼液(ジクアスR点眼液3%,参天製薬,以下ジクアス点眼薬)が上市され,ドライアイ治療に大きな進歩をもたらしている.本稿では,ジクアスの薬理作用とその有効性,安全性について,これまでの報告をもとにレビューする.Iジクアス点眼薬の薬理作用(図1)ジクアホソルナトリウムはP2Y2受容体アゴニスト作用を有するジヌクレオチド誘導体で3),市販のジクアス点眼薬は,1ml中にジクアホソルナトリウムを30mg含有する無色澄明の水性点眼液である.剤型は5mlボトルで,pHは7.2~7.8,浸透圧比は1.0~1.1,有効点眼回数は1日6回である(図2).1.分泌型ムチン分泌促進作用P2Y2受容体アゴニストであるアデノシン三リン酸(adenosinetriphosphate:ATP)やウリジン三リン酸(uridinetriphosphate:UTP)は,ヒト結膜組織からのムチン分泌を促進することが知られており4),UTPと同程度のP2Y受容体アゴニストであるジクアホソルナトリウムも正常ウサギ5)や正常ラット6)の結膜組織から糖蛋白の分泌を促進することが報告されている.眼表面に分泌されているムチンの大部分は結膜杯細胞から分泌されるMUC5ACであり,豊富なシステイン残基をもつ4つのドメインと大量の糖鎖と結合するtandemrepeatからなる糖蛋白である.糖鎖はコア蛋白に結合してブラシ状の構造を形成し,その一つひとつがジスルフィド結合で重合しているため,MUC5ACの粘性は非常に高く,眼表面の涙液保持に重要な役割を担っていると考えられている7).実際,ドライアイを有するSjogren症候群では結膜上皮でのMUC5ACの発現が低下して涙液安定性の低下を招く可能性が指摘され8),眼表面におけるMUC5ACの維持がドライアイの治療には重要であると考えられる.ジクアホソルナトリウムは,ウサギ結膜組織からのMUC5AC分泌を濃度依存的に促進し9),その分泌は結*MasahikoYamaguchi:愛媛県立中央病院眼科**YuichiOhashi:愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻高次機能制御部門感覚機能医学講座視機能外科学分野〔別刷請求先〕山口昌彦:〒790-0024愛媛県松山市春日町83愛媛県立中央病院眼科0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(13)935結膜上皮細胞H2OH2OCl-Ca2+Ca2+Ca2+ClチャネルジクアホソルナトリウムP2Y2lP3PLCGlP3小胞体小胞体ジクアホソルナトリウムP2Y2lP3PLCGCa2+lP3胚細胞ムチンマイボーム腺脂質分泌促進結膜上皮細胞からの水分分泌促進結膜杯細胞からのムチン分泌促進膜結合型ムチンの発現促進油層水層分泌型ムチン膜結合型ムチン上皮細胞結膜上皮細胞H2OH2OCl-Ca2+Ca2+Ca2+ClチャネルジクアホソルナトリウムP2Y2lP3PLCGlP3小胞体小胞体ジクアホソルナトリウムP2Y2lP3PLCGCa2+lP3胚細胞ムチンマイボーム腺脂質分泌促進結膜上皮細胞からの水分分泌促進結膜杯細胞からのムチン分泌促進膜結合型ムチンの発現促進油層水層分泌型ムチン膜結合型ムチン上皮細胞図1ジクアス点眼薬の薬理作用ジクアス点眼薬(アデノシン三リン酸,ATP)が結膜上皮細胞あるいは結膜杯細胞表面のP2Y2受容体を刺激すると,G蛋白(G)を介してホスホリパーゼC(PLC)によるイノシトール三リン酸(IP3)産生が刺激され,それが細胞内小胞体からのカルシウムイオン(Ca2+)放出を誘導して細胞内Ca2+濃度が上昇する.結膜上皮細胞では,細胞内Ca2+の上昇がカルシウム依存型クロライドチャネル(Clチャネル)を開口させ,Cl.が涙液側へ移動した結果生じる浸透圧差によって細胞内の水(H2O)が涙液側へ移動し,水分分泌が促進される.杯細胞においても同様の機序によって細胞内Ca2+の上昇が起こり,ムチンの分泌が亢進すると考えられている.(参天製薬株式会社製品情報概要から引用改変)膜細胞内のカルシウムイオン濃度の上昇とともに起こMUC1612),MUC2013)の存在が知られており,親水性り10),正常ヒトにおいてもジクアホソルナトリウム点眼の糖鎖による保水作用12),非接着分子機能による閉瞼時後に涙液中のムチン様物質濃度が上昇することが報告さの眼瞼結膜上皮と角膜上皮の癒着防止作用12),さらにれている11).実際には,ドライアイ罹患眼にジクアス点galectin3とともに糖衣(glycocalax)を形成して眼表面眼薬を投与した場合,どの程度のムチン分泌能が存在すバリア形成14)などが知られている.るのかは,今後の研究に委ねなければならないが,実験SV40不死化ヒト角膜上皮細胞に100μMジクアホソ的,臨床的にジクアス点眼薬に分泌型ムチンの分泌促進ルナトリウムで処理を行い,膜結合型ムチン遺伝子作用があるのは明らかである.(MUC1,4,16)の発現をRT-PCR法により検討した結果15)では,いずれの遺伝子発現量も,添加3時間後に2.膜結合型ムチン発現促進作用一過性に上昇し,その後定常レベルまで減少した.この眼表面の膜結合型ムチンとしては,MUC1,MUC4,上昇は無処置群よりも有意であり,さらに濃度依存的で936あたらしい眼科Vol.32,No.7,2015(14)あったことから,ジクアホソルナトリウムは,角膜上皮細胞において膜型ムチンの遺伝子発現を促進されることが明らかになった.なお,このinvitroの実験で用いられたジクアホソルナトリウムの濃度(100μM)は,invivoでは0.88~8.8%に相当する.3.水分分泌促進作用ジクアホソルナトリウムを正常ウサギに点眼すると,Schirmer試験Ⅰ法値が有意に上昇することから,ジクアホソル点眼には涙液分泌促進作用があることが報告されている16).また,正常ウサギにおいて,ジクアホソル点眼15分後に涙液分泌が最大となり,その作用は用量依存的であることがわかった17).また,ジクアホソル点眼液が結膜上皮細胞のP2Y2受容体に作用し,細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を介してクロライド(Cl)チャネルを開くことによって,結膜上皮細胞から眼表面への水移動を促進することが示された.また,この涙液の分泌は涙腺に依存していない可能性も示唆された17).臨床的には,ヒト正常者の涙液貯留量について涙液メニスコメトリー法を用いた涙液メニスカス曲率半径測定により比較した報告がある18).ジクアホソル点眼群は人工涙液点眼群よりも点眼後30分まで有意に涙液メニスカス曲率半径を増加させることが示され,ジクアス点眼右眼ジクアス切替前ジクアス切替3週間後薬の涙液分泌促進作用が確認されている.ジクアホソルナトリウム点眼液(ジクアスR点眼液3%)構造ジヌクレオチド誘導体・P2Y2受容体アゴニストおもな薬理作用◎分泌型ムチン分泌促進(結膜杯細胞)◎水分分泌促進(結膜上皮細胞)○膜結合型ムチン発現亢進△マイボーム腺機能改善(エビデンスの高い順に◎,○,△)剤型,特性5mlボトル無色透明水性点眼液pH:7.2~7.8浸透圧比:1.0~1.11日4~6回点眼おもな副作用眼刺激感,粘液眼脂図2ジクアス点眼薬左眼図3涙液減少型ドライアイに対するジクアス点眼薬の効果70歳,女性.Sjogren症候群.人工涙液点眼薬および0.1%ヒアルロン酸点眼薬をそれぞれ両眼に6回/日点眼していたが,乾燥感スコア4(いつもある)であった.平均BUTは左右とも1秒,角結膜上皮障害スコア(9点満点)は右眼6点,左眼5点であった.ジクアス点眼薬を両眼6回/日に切り替えて3週間後,平均BUTは左右とも1秒と変化なかったが,角結膜上皮障害スコアは右眼3点,左眼3点に減少し,乾燥感スコア2(ときどきある)まで軽快した.(15)あたらしい眼科Vol.32,No.7,2015937938あたらしい眼科Vol.32,No.7,2015(16)涙液メニスカス高)が6カ月間に渡り有意に改善し,Schirmer試験Ⅰ法値は有意ではないものの改善傾向がみられた26).b.BUT短縮型(図4)BUTは極端に短縮しているが,角結膜上皮障害は軽微で強いドライアイ症状を訴えるタイプのドライアイが臨床上問題になっている27,28).0.1%ヒアルロン酸点眼薬(防腐剤無添加)で改善しなかったBUT短縮型ドライアイ30例にジクアス点眼薬を1日6回点眼で3カ月間継続投与したところ,BUTおよびVASで測定した自覚症状の有意な改善を認めた29).また,ほぼ同じクライテリアのBUT短縮型ドライアイに対してジクアス点眼薬を1日6回点眼で継続したところ,BUTの有意な改善とともに実用視力および眼球高次収差30),角膜後方散乱31)が有意に改善するとし,ジクアス点眼薬の涙液安定性低下に伴う視機能異常への改善効果が示唆されている.c.LASIK後LASIK術後の角膜知覚低下が原因となり,一過性のドライアイが発症することが知られている.LASIK術後1週間および1カ月後の時点で,ジクアス点眼薬と0.3%ヒアルロン酸点眼を併用した群が0.3%ヒアルロン酸点眼またはジクアス点眼薬単独群よりも,遠見,近見ともに裸眼視力および1カ月後の遠見実用視力が有意に改善し,自覚症状は1週間後で併用群において有意な改善が認められた32).また,人工涙液点眼やヒアルロン酸点眼が投与されているものの,遷延(12カ月以上)しているLASIK術後ドライアイに対して,12週間ジクアス点眼薬を投与したところ,矯正視力および涙液分泌能には変化がなかったが,BUT,角結膜上皮障害および自覚症状(眼疲労感,乾燥感,異物感,眼不快感,読書困難,乾燥空間での不快感)が有意に改善した33).d.コンタクトレンズ関連近年,ソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)ユーザーの増加に伴い,SCL装用者のドライアイ患者が急増している.ドライアイ症状を訴えるSCL常用者に対して,0.3%ヒアルロン酸点眼を3カ月以上投与したが症状が改善せず,ジクアス点眼薬を追加して4週間観察したところ,BUT,角膜上皮障害,自覚症状4.マイボーム腺機能への作用P2Y2受容体はサル19)やラット20)のマイボーム腺組織にも存在することが確認されている.臨床的には,マイボーム腺機能不全(meibomianglanddysfanction:MGD)に対するジクアス点眼薬の有効性が報告されてはいる21).ジクアホソルがマイボーム腺脂質の分泌機構にどのように関与しているか,今後の研究が待たれる.IIジクアス点眼薬の有効性1.治験の結果第II相試験におけるプラセボ点眼との比較では,1%および3%ジクアホソル点眼,1日6回,4週間投与において,角膜上皮障害(フルオレセイン染色),角結膜上皮障害(ローズベンガル染色),自覚症状が有意に改善した22).第III相試験における0.1%ヒアルロン酸点眼との比較では,3%ジクアホソル点眼,1日6回,4週間投与において,角膜上皮障害(フルオレセイン染色),角結膜上皮障害(ローズベンガル染色),自覚症状が有意に改善した23).また,同試験において,角膜中央の上皮障害の改善率を比較した場合,3%ジクアホソル点眼は0.1%ヒアルロン酸点眼よりも有意に改善を認めた.角膜中央の上皮障害は,視機能に影響を及ぼすことが報告24)されており,ドライアイによる視機能異常をジクアス点眼薬が改善する効果が期待されている.実際,角膜中央に点状表層角膜症を有する涙液減少型ドライアイに対してジクアス点眼薬を4週間投与したところ,波面センサーにより測定される眼球高次収差が有意に改善することも報告されている25).2.各種ドライアイにおける有効性a.涙液減少型(図2)涙液液層(水分+分泌型ムチン)の減少が本態である涙液減少型ドライアイ(Sjogren症候群を含む)においては,水分分泌および分泌型ムチン分泌促進作用を有するジクアス点眼薬が理論的に有効である可能性が高い.涙液減少型ドライアイ15例(Sjogren症候群13例を含む)にジクアス点眼液を1日6回点眼で6カ月間継続投与したところ,自覚症状(乾燥感,異物感および合計スコア)および他覚所見(BUT,角結膜上皮障害スコア,右眼左眼ジクアス切替前ジクアス切替6カ月後図4BUT短縮型ドライアイに対するジクアス点眼薬の効果49歳,女性.主訴は異物感(DEQSサマリースコア:51.7点),平均BUTは左右とも0秒でスポットブレークを示し,角結膜上皮障害は認められなかった.両眼に人工涙液点眼薬を5~10回/日,0.1%ヒアルロン酸点眼薬を4~6回/日を行っていたが改善しないため,ジクアス点眼薬両眼6回/日に切り替えて経過をみたところ,切り替え1カ月目から自覚的に改善しはじめ,その後も点眼コンプライアンスは良好のまま,切り替え6カ月目において,平均BUTは右眼2.0秒,左眼3.3秒に延長し,DEQSサマリースコア:35.0点に改善した.※DEQS:DryEye-RelatedQuality-of-LifeScorequestionnaire.ドライアイ症状を目の症状6項目と日常生活に関する9項目について,それぞれの症状の頻度と程度を0~4点でスコア化し,サマリースコア(0:もっともよい~100:もっとも悪い)として算出することができる.(SakaneY,etal:JAMAOphthalmol131:1331-1338,2013)右眼左眼ジクアス投与前ジクアスムコスタ併用6カ月後図5上輪部角結膜炎(SLK)に対するジクアス点眼薬の効果31歳,女性.主訴は異物感,ムコスタ点眼液と0.1%ベタメタゾン点眼薬を投与されていたが,SLKのgrade(1~3)は右眼3,左眼2,平均BUTは両眼とも1.0秒であった.ムコスタ点眼液を中止してジクアス点眼薬に切り替えたところ,切り替え後2カ月目までは改善していたが,3カ月目から再び悪化してきたため,ムコスタ点眼液を併用したところ,SLKは改善し始め,併用6カ月後の時点では,平均BUTは両眼とも5秒以上に延長し,SLKは消失した.あたらしい眼科Vol.32,No.7,2015941(19)感,まぶたが重い,眼痛,かすみ,眼疲労感,眼不快感および合計スコア)が全経過中を通して有意に改善する一方,眼脂と流涙には有意な改善はなかった36).実臨床における多数例での検討では,ドライアイ患者3,196例に対して,ジクアス点眼薬を1日4~6回で2カ月間投与した場合,BUT,角結膜上皮障害,自覚症状(合計スコア)が投与1~2カ月後で有意に改善し,治療パターン(ジクアス点眼薬単独,ヒアルロン酸点眼薬にジクアス点眼薬を追加,ヒアルロン酸点眼薬からジクアス点眼薬への切替など)にかかわらず有効であり,ジクアス点眼薬を使用した76%の症例において自覚的な改善が得られた37).IIIジクアス点眼薬の安全性これまでの報告をまとめて安全性について検討したところ,655例中155例(23.7%)において何らかの副作用が認められた38).おもなものは,眼刺激感(6.7%),眼脂(4.7%),充血(3.7%),眼痛(2.7%),眼.痒感(2.4%),異物感(2.1%),眼不快感(1.1%)であった.重篤な副作用はなく,点眼の継続は可能であり,点眼継続中あるいは研究期間中または終了後に消失した.とくに眼刺激感と眼痛については,52%で点眼初日または翌日に発現するが,点眼を継続した状態でも47%は7日以内,79%は28日以内に消失した.また,最近公表(2015年6月)された使用成績調査(期間:2011年1月~2013年6月)によると,解析対象症例3,810例(観察期間:2カ月間)中202例(6.32%)に副作用が認められ,おもなものは,眼脂(0.94%),眼刺激感(0.94%),眼痛(0.69%),流涙増加(0.63%),眼瞼炎(0.59%),眼.痒感(0.44%),異物感(0.38%)であり,副作用出現までの日数(中央値)は,眼脂:30.5日,眼刺激感・眼痛:8.5日,流涙増加:22.0日であった.実臨床における副作用出現頻度は,前述の研究ベースの出現頻度よりも下回った結果となっているが,この理由としては,実臨床での点眼回数のばらつき,種々の併用薬使用などさまざまな要因が考えられる.おわりにジクアス点眼薬の薬理作用,有効性,安全性について述べた.P2Y2受容体アゴニストである本剤は,基礎研究では,水分分泌作用,分泌型ムチン分泌作用,膜結合型ムチン発現作用に対するエビデンスがあり,また,臨床研究では,基礎研究でのエビデンスをもとに,さまざまなタイプのドライアイへの有効性,安全性が明らかにされつつある.欧米では,ドライアイのコアメカニズムに炎症が関与しているとの説が有力であるが,わが国では,ドライアイに対する数々の臨床知見から,涙液層安定性の低下こそがドライアイのコアメカニズムである,との考え方が確立されつつある39).最近では,このコアメカニズムである涙液層の安定性を改善させる治療概念TFOT(TearFilmOrientedTherapy),いわゆる涙液層別治療が提唱され40),ジクアス点眼薬もTFOTにおける重要な構成要員となっている.ドライアイの病態に則した薬理作用をもつジクアス点眼薬はドライアイ治療に大きな進歩をもたらせた.そして,今後未知なる薬理作用が解明されることによって,新たな治療応用の可能性がさらに期待できる点眼薬であると考えられる.文献1)島崎潤ほか(ドライアイ研究会):2006年ドライアイ診断基準.あたらしい眼科24:181-184,20072)UchinoMetal:PrevalenceofdryeyediseaseamongJapanesevisualdisplayterminalusers.Ophthalmology115:1982-1988,20083)PendergastW,YerxaBR,DouglassJG3rdetal:SynthesisandP2Yreceptoractivityofaseriesofuridinedinucleo-side5’-polyphosphates.BioorgMedChemLett11:157-160,20014)JumblattJE,JumblattMM:RegulationofocularmucinsecretionbyP2Y2nucleotidereceptorsinrabbitandhumanconjunctiva.ExpEyeRes67:341-346,19985)FujiharaT,MurakamiT,NaganoTetal:INS365sup-presseslossofcornealepithelialintegritybysecretionofmucin-likeglycoproteininarabbitshort-termdryeyemodel.JOculPharmacolTher18:363-370,20026)FujiharaT,MurakamiT,FujitaHetal:ImprovementofcornealbarrierfunctionbytheP2Y2agonistINS365inaratdryeyemodel.InvestOphthalmolVisSci42:96-100,20017)渡辺仁:ムチン層の障害とその治療.あたらしい眼科14:1647-1633,19978)ArguesoP,BalaramM,Spurr-MichaudSetal:DecreasedlevelsofthegobletcellmucinMUC5ACintearsofpatientswithSjogrensyndrome.InvestOphthal-molVisSci43:1004-1011,2002942あたらしい眼科Vol.32,No.7,2015(20)9)七條優子,阪元明日香,中村雅胤:ジクアホソルナトリウムのウサギ結膜組織からのMUC5AC分泌促進作用.あたらしい眼科28:261-265,201110)七條優子,篠宮克彦,勝田修ほか:ジクアホソルナトリウムのウサギ結膜組織からのムチン様糖蛋白質分泌促進作用.あたらしい眼科28:543-548,201111)ShigeyasuC1,HiranoS,AkuneYetal:Diquafosoltetra-sodiumincreasestheconcentrationofmucin-likesub-stancesintearsofhealthyhumansubjects.CurrEyeRes13:1-6,201412)GovindarajanB,GipsonIK:Membrane-tetheredmucinshavemultiplefunctionsontheocularsurface.ExpEyeRes90:655-663,201013)WoodwardAM,ArguesoP:ExpressionanalysisofthetransmembranemucinMUC20inhumancornealandcon-junctivalepithelia.InvestOphthalmolVisSci55:6132-6138,201414)ArguesoP,Guzman-AranguezAna,MantelliFetal:Associationofcellsurfacemucinswithgalectin-3contrib-utestotheocularsurfaceepithelialbarrier.JBiolChem284:23037-23045,200915)七條優子:培養ヒト角膜上皮細胞におけるジクアホソルナトリウムの膜結合型ムチン遺伝子の発現促進作用.あたらしい眼科28:425-429;201116)YerxaBR,DouglassJG,ElenaPPetal:PotencyanddurationofactionofsyntheticP2Y2receptoragonistsonSchirmerscoresinrabbits.AdvExpMedBiol506:261-265,200217)七條優子:正常ウサギにおけるジクアホソルナトリウムの涙液分泌促進作用.あたらしい眼科28:1029-1033,201118)YokoiN,KatoH,KinoshitaS:Facilitationoftearfluidsecretionby3%diquafosolophthalmi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