《原著》あたらしい眼科34(4):560.562,2017c眼類天疱瘡2症例における角膜神経の病的変化─生体レーザー共焦点顕微鏡による観察─小澤信博小川葉子西條裕美子鴨居瑞加内野美樹山根みおHeJingliang向井慎坪田一男慶應義塾大学医学部眼科学教室TwoCasesofCornealNerveAlterationObservedbyInVivoLaserConfocalMicroscopyinPatientswithOcularCicatricialPemphigoidNobuhiroOzawa,YokoOgawa,YumikoSaijo,MizukaKamoi,MikiUchino,MioYamane,HeJingliang,ShinMukaiandKazuoTsubotaDepartmentofOphthalmology,KeioUniversitySchoolofMedicine眼類天疱瘡(ocularcicatricialpemphigoid:OCP)の角膜神経を生体レーザー共焦点顕微鏡(invivolaserconfocalmicroscopy:IVCM)にて観察し,興味ある知見を得たので報告する.症例1:73歳,女性.2007年,角膜輪部機能不全,瞼球癒着を認めた.その後,結膜.短縮,瞼球癒着が進行し,OCPと診断した.IVCMにて角膜神経の蛇行と周囲の樹状様細胞浸潤を認めた.症例2:84歳,女性.2004年より右眼上方より角膜潰瘍が出現した.角膜上方より結膜が侵入し,2006年に瞼球癒着を認め,OCPと診断した.IVCMにて角膜神経の蛇行と神経周囲の樹状様細胞浸潤を認めた.OCP症例のIVCM角膜神経所見では走行異常と神経周囲への樹状様細胞浸潤を認め,慢性炎症により神経形態に変化をきたすこと,神経周囲にも炎症があることが示唆された.Wereporttwocasessu.eringfromocularcicatricialpemphigoid(OCP)withcornealnervealterationaccom-paniedbydendriticin.ammatorycellin.ltration,asobservedbyinvivolaserconfocalmicroscopy(IVCM).Case1,a73-year-oldfemale,su.eredfromlimbalstemcellde.ciencyandsymblepharonin2007,followedbyprogressivefornixshortening.UnderadiagnosisofOCP,IVCMrevealedthatthecornealtortuositywasgrade3,accordingtotheclassi.cationprovidedbyOliveira-SotoandEfron,andthatmanydendriticcellshadin.ltratedtissuesaroundtortuousnerves.Case2,an84-year-oldfemale,hadacornealulcerattheupperregionofthecorneaandsubse-quentlydevelopedconjunctivalization.UpondiagnosisofOCP,IVCMshowedcornealtortuosityofgrade4;den-driticcellin.ltrationwasobservedaroundtortuousnerves.Conclusion:Collectively,theseobservationssuggestthatpatientswithOCP-inducedchronicin.ammationarehighlyvulnerabletocornealnervealterationandden-driticin.ammatorycellin.ltration.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)34(4):560.562,2017〕Keywords:眼類天疱瘡,重症ドライアイ,角膜神経,生体レーザー共焦点顕微鏡.ocularcicatricialpemphigoid,severedryeyedisease,cornealnerve,invivolaserconfocalmicroscopy.はじめに眼類天疱瘡(ocularcicatricialpemphigoid:OCP)は粘膜上皮基底膜に対する自己抗体による慢性炎症性眼疾患である1,2).眼類天疱瘡は中高年の女性に好発し,角結膜上皮の瘢痕性変化が慢性的に進行する.眼表面の線維化により,瞼球癒着,結膜.短縮などをきたし重症ドライアイをきたすことが知られている.角膜幹細胞疲弊により角膜への結膜侵入や結膜杯細胞の減少および消失を認める.手術や感染を契機として急性増悪することもある.角膜に遷延性上皮欠損をきたすこともあり,著しい角膜上皮炎をきたす.診断は臨床経〔別刷請求先〕小澤信博:〒160-8582東京都新宿区信濃町35慶應義塾大学医学部.眼科学教室Reprintrequests:NobuhiroOzawa,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KeioUniversitySchoolofMedicine,35Shinano-machi,Shinjuku-ku,Tokyo160-8582,JAPAN560(100)0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(100)5600910-1810/17/\100/頁/JCOPY過や,結膜生検により行う.生体レーザー共焦点顕微鏡(invivolaserconfocalmicros-copy:IVCM)は共焦点光学系を応用した顕微鏡で,厚みのある観察対象に対しても任意の深さの光学切片を得ることができる.この機能が角膜の観察に応用されたのは1990年代であり,以降,真菌性角膜炎や角膜混濁などについての知見が報告されてきた3).眼類天疱瘡のIVCM像については,2016年にはLongらが報告している4).12例の症例報告であり,角膜実質細胞の活性化および樹状細胞の浸潤などがみられたと報告されている.しかし,これまでにOCP患者の角膜神経およびその周辺領域の所見についての報告はなされていない.今回筆者らはOCP患者のIVCM所見として,角膜神経およびその周囲の新たな知見を得たので報告する.I方法慶應義塾大学病院眼科ドライアイ外来に通院加療中のOCP患者について書面による同意を得てIVCMを撮影した(倫理委員会承認#20130013).撮影にはハイデルベルグレチナトモグラフII(HeidelbergRetinaTomographII:HRTII)ロストック角膜モジュール(ハイデルベルク社,ドイツ)を用いた3).Sequenceモード(1秒間に10枚の画像を連続して撮影する)で撮影を行い,撮影中連続的に深さを変化させた.観察範囲は400μm×400μmに設定した.取得した図1症例1の前眼部細隙灯顕微鏡所見(a,b)と生体レーザー共焦点顕微鏡所見(c,d)a:高度の結膜瞼球癒着.b:角膜フルオレセイン染色像.高度の角膜上皮障害を認める.c,d:角膜中央のIVCM像.角膜神経の蛇行(→)と数珠状変化(*)を示す.Oliveira-Sotoの分類でtortuosityはgrade3.神経周囲には樹状様の炎症性細胞浸潤(.)を認める.図d右下のスケールバーは100μm.画像のなかから角膜神経が鮮明に描出されたものを選び評価した.画像の評価にはOliveira-Sotoらが2001年に発表した定性的評価法を用いた5).また,樹状様細胞については樹状様の突起をもつ細胞として,形態学的に判定を行った.細胞密度についてはHRTII付属の画像解析ソフトを用いた.II症例〔症例1〕73歳,女性.2006年頃より充血,眼痛が出現し,近医にてドライアイ,睫毛乱生の診断で点眼,治療用ソフトコンタクトレンズ使用により経過観察されていた.症状が持続するために当院外来を紹介受診した.2007年11月初診時より輪部機能不全による角膜輪部周辺部からの結膜侵入を認め,瞼球癒着を認めた.12月にかけて結膜.短縮,瞼球癒着が進行し,OCPの診断のもとレクチゾールを開始した(図1a,b).内服開始後,結膜所見の改善を認めた.以降,0.1%フルオロメトロン点眼,3%ジクアホソル点眼,2%レバミピド点眼で経過観察しており,眼所見は落ち着いている.本症例について角膜中央でのIVCM所見を示す(図1c,d).角膜神経は多数に分岐し,神経周囲には樹状様細胞の浸潤を認めた.Oliveira-Sotoらの分類によれば,tortuosityはgrade3であった.樹状細胞密度はそれぞれ85cells/mm2(図1c),79cells/mm2(図1d)であった.〔症例2〕84歳,女性.図2症例2の前眼部所見(a,b)と生体レーザー共焦点顕微鏡所見(c,d)a:結膜.短縮と瞼球癒着を認める.b:フルオレセイン染色像.角膜全体に点状表層角膜炎を認める.c,d:角膜中央での角膜神経IVCM像.角膜神経は複雑に走行が変化している(→).Tortuosityはgrade4.神経の数珠状変化(*)と神経周囲の樹状様細胞の浸潤(.)を認める.図d右下のスケールバーは100μm.(101)あたらしい眼科Vol.34,No.4,20175612001年3月頃より眼異物感,流涙が出現した.近医を受診し,点状表層角膜炎と診断され,点眼加療されていたが,症状が悪化したために紹介受診した.2001年11月当院ドライアイ外来受診.ドライアイの診断のもと加療を開始したが,2004年7月頃より右眼上方より角膜潰瘍が出現した.涙点プラグ挿入,涙点焼灼術などを行ったが軽快せず.徐々に角膜上方より結膜が侵入し,2006年3月頃には瞼球癒着を認め,OCPと診断した(図2a,b).レクチゾール内服,0.1%ヒアルロン酸点眼,1.5%レボフロキサシン点眼,0.1%フルオロメトロン点眼による加療を継続していた.急性期を脱したと判断し2013年11月にはレクチゾール内服を終了した.結膜の線維化を認めるものの所見悪化なく,現在は0.1%ヒアルロン酸点眼で経過観察している.本症例についてのIVCM所見について,角膜中央での角膜神経像を示す(図2c,d).角膜神経は複雑に走行が変化しており,Olivei-ra-Sotoらの分類でtortuosityはgrade4であった.神経周囲には樹状様細胞の浸潤を認め,それぞれの写真における樹状様細胞の密度は106cells/mm2(図2c),66cells/mm2(図2d)であった.III考按OCPは結膜基底膜に対する自己抗体による慢性炎症性疾患である.生検が可能な結膜についての組織像は報告があるが,角膜の組織像についての報告は少ない.さらに角膜神経は死後または摘出後数時間で消失してしまうことが報告されており,生体のまま形態を観察できるIVCMがもっとも観察に適しているといえる.今回,筆者らはOCP2症例についてIVCMを用いて角膜神経の走行異常,蛇行,その周囲に浸潤する炎症性細胞の浸潤を見出した.角膜神経の走行異常は神経周囲の炎症を示唆すると考えられている.Villaniらは,Sjogren症候群の患者でtortuosityが有意に高かったと報告した6).同報告では炎症性の反応や神経成長因子(nervegrowthfactor:NGF)の異常分泌が角膜神経のtortuosity増加に関与している可能性が示唆されており,OCP患者においても同様の反応がみられたと思われる.樹状様細胞の分布について,Mastropasquaらは炎症眼の角膜中央部では樹状様細胞密度が有意に高かったと報告している7).これらの炎症眼群には単純ヘルペスウイルスの感染,アデノウイルスの感染,角膜移植片拒絶,春季カタルが含まれている.レーザー屈折矯正角膜切除(photorefractiveker-atectomy:PRK)眼では樹状様細胞の密度は変化しなかったことから,本症例においても角膜の機械的な障害による変化ではなく,免疫系が関与した異常が関与していると思われる.OCPは結膜上皮基底膜に自己抗体が蓄積するとされ,自己抗原にはBP180,ラミニン5などが報告されている1).上皮基底膜の自己抗原に対する病的反応が病態に関与するということから,神経細胞の基底膜にも病的変化が生じていることも可能性の一つとして推察される.また近年,各疾患において神経原性炎症がアレルギー疾患やドライアイ疾患に関連していることが指摘されている8).MicearaらはNGFと低親和性神経成長因子受容体(p75)がOCPにおける線維化を制御していることを示唆した9).今回観察された神経周囲の炎症所見は,OCPにおける線維化の悪化にも関与している可能性があると思われる.NGFは今後OCPの線維化を制御するための治療標的となる可能性があり,その際に角膜神経の状態変化は治療の指標となりうると思われる.今回,IVCMを用いて角膜神経を観察したことにより,OCPの病態に神経周囲の炎症性変化が関与していることが示唆された.OCPにはいまだ動物モデルがないことから,角膜神経の走行異常や炎症細胞浸潤についてのさらなる解析には,IVCMを用い症例数を増やしての解析が有用であると思われる.文献1)AhmedM,ZeinG,KhawajaFetal:Ocularcicatricialpemphigoid:pathogenesis,diagnosisandtreatment.ProgRetinEyeRes23:579-592,20042)横山真,佐々木香,齋藤禎ほか:眼類天疱瘡の急性期臨床所見としての膜様物質とそのムチン発現.あたらしい眼科28:119-122,20113)小林顕.レーザー生体共焦点顕微鏡による角膜の観察.臨眼62:1417-1423,20084)LongQ,ZuoYG,YangXetal:Clinicalfeaturesandinvivoconfocalmicroscopyassessmentin12patientswithocularcicatricialpemphigoid.IntJOphthalmol9:730-737,20165)Oliveira-SotoL,EfronN:Morphologyofcornealnervesusingconfocalmicroscopy.Cornea20:374-384,20016)VillaniE,GalimbertiD,ViolaFetal:ThecorneainSjo-gren’ssyndrome:aninvivoconfocalstudy.InvestOph-thalmolVisSci48:2017-2022,20077)MastropasquaL,NubileM,LanziniMetal:Epithelialdendriticcelldistributioninnormalandin.amedhumancornea:invivoconfocalmicroscopystudy.AmJOphthal-mol142:736-744,20068)OgawaY,TsubotaK:Dryeyediseaseandin.ammation.In.ammationandRegeneration33:238-248,20139)MiceraA,StampachiacchiereB,DiZazzoAetal:NGFmodulatestrkANGFR/p75NTRinalphaSMA-expressingconjunctival.broblastsfromhumanocularcicatricialpemphigoid(OCP).PLoSOne10:e0142737,2015***(102)