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前眼部OCTとオートケラトメータによる角膜乱視測定の再現性の比較

2024年10月31日 木曜日

《原著》あたらしい眼科41(10):1246.1250,2024c前眼部OCTとオートケラトメータによる角膜乱視測定の再現性の比較花月陸*1筒井健太*1多森崇人*2川路隆博*2佐藤智樹*1*1佐藤眼科*2佐藤眼科・内科CComparisonofRepeatabilityofCornealAstigmatismMeasurementsbyAnteriorSegmentOpticalCoherenceTomographyandAuto-KeratometryRikuKagetsu1),KentaTsutsui1),TakahitoTamori2),TakahiroKawaji2)andTomokiSato1)1)SatoEyeClinic,2)SatoEye&InternalMedicineClinicC前眼部光干渉断層計(OCT)の角膜前後面実測値から計算されるCFRCylの再現性を,Keratometric(K)とオートケラトメータ(以下,ケラト)のC3群で比較検討した.対象は前眼部COCTとケラトをC3回ずつ測定したC228例C228眼(66.9±11.8歳).3群間における角膜乱視量の平均値の比較,変動係数(CV)と級内相関係数(ICC)による再現性の比較,CVとの相関関係を検討した.角膜乱視量はCFRCyl,K,ケラトの順にC1.38±0.84D,1.28±0.84D,1.40±0.93Dであり,有意差は認めず(p=0.314),CVはC15.21%,13.15%,10.99%であり,FRCylのばらつきが大きかった(p<C0.001).ICCはすべての項目でC0.9以上と高い再現性を示した.また,3群のすべてにおいて角膜乱視量とCCVとの間に負の相関を認めた.FRCylは角膜乱視量が小さいほどばらつきやすいため測定時の注意が必要と思われた.CPurpose:Therepeatabilityofcornealtotalpower(FRCyl)calculatedfromthemeasuredvaluesoftheanteri-orCandCposteriorCcornealCsurfacesCbyCusingCanteriorCsegmentCopticalCcoherencetomography(AS-OCT)wasCcom-paredandexaminedinthreegroups:FRCylgroup,Keratometric(K)group,andauto-keratometer(AK).Subjectsandmethods:Thisstudyincluded228eyesof228patients(meanage:66.9±11.8years)whowereexaminedbyAS-OCT(CASIA2;Tomey)andAK(TONOREFC.;Nidek),CwithCtheCmeasurementsCrepeatedCthreeCtimes.CWeCcomparedthemeancornealastigmatism,withrepeatabilityassessedbythecoe.cientofvariation(CV)andintra-classCcorrelationcoe.cient(ICC),CandCexaminedCtheCcorrelationCwithCCVCamongCtheC3Cgroups.CResults:IntheFRCylCgroup,CKCgroup,CandCAKCgroup,CtheCmeanCastigmatismCvaluesCwereC1.38±0.84D,C1.28±0.84D,CandC1.40±0.93D,respectively,withnosigni.cantdi.erencesobsereved(p=0.314).TheCVswere15.21%,13.15%,and10.99%,respectively,withalargevariabilityinFRCyl(p<0.001).TheICCwas0.9orhigher,showinghighreproduc-ibilityinall3groups.AnegativecorrelationwasfoundbetweentheCVandcornealastigmatisminall3groups.Conclusion:SinceCFRCylCtendsCtoCvary,CespeciallyCwhenCcornealCastigmatismCisClower,CourC.ndingsCshowCthatCitCvitaltobecarefulwhenobtainingthemeasurement.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)41(10):1246.1250,C2024〕Keywords:前眼部OCT,Fourierrealpowercylinder,再現性.anteriorsegmentopticalcoherencetomogra-phy,Fourierrealpowercylinder,repeatability.Cはじめに古くから汎用されているオートケラトメータ(以下,ケラト)には,リング方式やテレセントリック光学系方式があり,おもに角膜前面の中心からC3Cmm付近の円周上を測定している.角膜後面乱視は測定していないため,角膜換算屈折率1.3375を用いて,角膜前面のみの値から角膜全体の屈折力を推測している.一方,前眼部光干渉断層計(opticalcoher-encetomography:OCT)であるCCASIA2(トーメーコーポレーション)にもケラトと同様に角膜前面のC3Cmm円周上を測定しているCKeratometric(以下,K)があるが,近年はト〔別刷請求先〕花月陸:〒836-0072福岡県大牟田市上屋敷町C1-1-2佐藤眼科Reprintrequests:RikuKagetsu,SatoEyeClinic,1-1-2Kamiyashiki-machi,Omuta,Fukuoka836-0072,JAPANC1246(98)表1平均値の比較:3群間における平均角膜屈折力,角膜乱視量,J0,J45n=228C平均角膜屈折力角膜乱視量CJ0CJ45CFRCyl(D)C43.38±1.53D(C38.39.C49.13)C1.38±0.84D(C0.50.C6.53)C0.05±0.73D(.2.40.C2.09)C.0.06±0.33D(.0.94.C2.21)CK(D)C44.33±1.44D(C39.61.C49.49)C*1.28±0.84D(C0.14.C4.69)C0.14±0.70D(.1.85.C2.21)C.0.02±0.27D(.0.96.C1.44)Tケラト(D)C44.22±1.44D(C39.54.C49.79)C1.40±0.93D(C0.26.C5.17)C0.17±0.76D(.1.69.C2.58)C.0.03±0.30D(.0.91.C1.91)(平均±標準偏差)(最小値.最大値)*=p<0.001,One-wayANOVA,Tukeyの多重比較検定FRCyl:FourierRealpowerCylinder,K:Keratometry,Tケラト:TONOREFCRIII.ーリック眼内レンズ(toricintraocularlens:T-IOL)向けに考案されたCFourierRealpowerCylinder(FRCyl)も搭載されている1).FRCylは角膜前面と後面を実測しており,角膜前後面の中心C3Cmm円周内(領域内)すべての測定点と,角膜厚から計算されたCRealpowerのCFourier解析における正乱視成分をもとに算出されている1).近年のCT-IOL度数計算式では角膜後面乱視の重要性が注目されており,角膜後面乱視を含んだ角膜全乱視による度数決定が推奨されている2,3).角膜後面乱視は平均C0.3D程度の倒乱視とされているが,角膜前面乱視によって後面乱視の程度は異なるため2),角膜乱視の評価は角膜後面乱視までの実測が望ましいと思われる.角膜前後面実測による角膜全乱視測定における再現性についてはいくつか報告がある4.6).しかし,CASIA2でのFRCyl測定の再現性を検討した報告はなく,今回筆者らは,角膜屈折力および角膜乱視測定の再現性について,FRCyl,KとケラトのC3群で,比較検討したので報告する.CI対象および方法対象は,2023年C2月.2023年C8月に当院で白内障手術前にCCASIA2とケラトを測定し,FRCylによる角膜乱視が0.5D以上の228例C228眼(男性C97例,女性C131例,平均年齢C66.9C±11.8歳)である.全症例とも右眼を対象とした.ケラトの測定には,リング方式であるCTONOREFIII(ニデック)(Tケラト)を用いた.測定は検者C1名がCASIA2とCTONOREFRIIIのC2機種を各3回ずつ測定し,FRCyl・K・TケラトのC3群間における角膜屈折力と角膜乱視量を算出した.角膜不正乱視を認めた症例,角膜疾患および眼手術歴のある症例は除外した.検討項目は,FRCyl・K・TケラトのC3群間における角膜屈折力,角膜乱視量の①平均値の比較,②変動係数(coe.cientCofvariation:CV)と級内相関係数(intraclassCcorrelationcoe.cient:ICC)による再現性の比較,③CCVとの相関関係,について検討した.また,検討①と②のCICCについては,powervector解析によりCJ0(直・倒乱視)成分とCJ45(斜乱視)成分を求め7),乱視軸も含めた評価を行った8).CVは測定値のばらつきの程度を示し,一般にC10%未満は再現性良好である.ICCは複数回測定による測定値の一致度(類似性)を示す指標で,一般にC0.7以上で再現性があると判定される.統計解析については,検討①と②のCCVの比較にはCOne-wayANOVAを用い,有意である場合はCTukeyの多重比較検定を行った.検討③にはCSpearman順位相関係数を用いて解析し,有意水準は5%未満とした.本研究はヘルシンキ宣言を遵守し,佐藤眼科の倫理審査委員会の承認のもと,後ろ向き研究で行った.CII結果①平均値の比較:3群間における角膜屈折力,角膜乱視量,J0,J45角膜屈折力はCFRCyl,K,Tケラトの順にC43.38C±1.53D,C44.33±1.44D,44.22C±1.44Dであり,KとTケラトに差は認めなかったが(p=0.680),FRCylはCKとCTケラトに比べ,有意に小さかった(p<0.001)(表1).角膜乱視量は同順にC1.38±0.84D,1.28C±0.84D,1.40C±0.93D(p=0.314),J0ではC0.05C±0.73D,0.14C±0.70D,0.17C±0.76D(p=0.168),J45がC.0.06±0.33D,C.0.02±0.27D,C.0.03±0.30Dであり(p=0.375),いずれも有意差を認めなかった(表1).②CCVとCICCによる再現性の比較:3群間における角膜屈折力,角膜乱視量,J0,J45角膜屈折力のCCVは,FRCyl,K,Tケラトの順にC0.31%,0.15%,0.20%であり,FRCylはCKおよびCTケラトに比べ,p<0.001p<0.00110.990.15.00.0FRCylKTケラト0.0FRCylKTケラト平均角膜屈折力角膜乱視量図1CVによる再現性の比較:3群間における平均角膜屈折力,角膜乱視量左はFRCyl・K・TケラトのC3群間における平均角膜屈折力,右は角膜乱視量を示す.CV:coe.cientofvariation,FRCyl:FourierRealpowerCylinder,K:Keratometry,0.630.00.5p<0.00125.0CV(%)CV(%)0.420.00.315.00.210.0Tケラト:TONOREFCRIII.表2ICCによる再現性の比較:3群間における平均角膜屈折力,角膜乱視量,J0,J45平均角膜屈折力角膜乱視量CJ0CJ45CFRCylC0.996C0.982C0.993C0.975CKC0.999C0.988C0.995C0.981TケラトC0.998C0.991C0.995C0.988ICC:intraclassCcorrelationcoe.cient,FRCyl:FourierCRealCpowerCylinder,K:Keratometry,Tケラト:TONOREFCRIII.有意に高いCCVを示した(p<0.001)(図1).また,KはFRCyl,Tケラトに比べ,有意に低いCCVを示した(p<C0.001)(図1).角膜乱視量では同順に,15.21%,13.15%,10.99%であり,KとCTケラトとの間に差は認めなかったが(p=0.724),FRCylはCKとCTケラトに比べ,有意に高いCVを示した(p<0.001)(図1).ICCはC3群間におけるすべて目においてC0.9以上であった(表2).③C3群間における角膜屈折力,角膜乱視量とCCVとの相関関係角膜屈折力ではCFRCyl,K,Tケラトの順にCr=.0.014(p=0.830),r=.0.048(p=0.472),r=0.042(p=0.527)であり,いずれもCCVとの間に有意な相関は認めなかった(図2).角膜乱視量については,FRCylがCr=.0.508,KがCr=.0.552,TケラトがCr=.0.480(いずれもCp<0.001)であり,すべてにおいて,CVとの間に有意な負の相関を認めた(図2).CIII考按T-IOL度数計算において,測定時のばらつきはCT-IOLモデル選択や術後の乱視矯正効果に影響する可能性があるため,機器の再現性を把握しておくことは重要である.今回筆者らはCFRCylの再現性を,KおよびCTケラトとのC3群間で比較検討した.その結果,角膜屈折力に関してはCFRCylが有意に小さかったものの,角膜乱視量,J0,J45については3群間に差はみられなかった.角膜前後面を実測した角膜屈折力は,角膜前面のみの測定値に比べ小さい値を示す,という報告は多く9,10),本検討においても同様の結果を示した.再現性については,FRCylによる角膜屈折力および角膜乱視量のCCVが,KやCTケラトに比べ有意に高く,ばらつきが大きい結果となった.しかし,CVは一般的にC10%未満であれば再現性良好といわれており,角膜屈折力ではC3群ともにC0.4%未満であり,ICCもC0.9以上であるため再現性は高いといえる.一方,角膜乱視量,J0とCJ45のCICCはC3群いずれもC0.9以上であったが,角膜乱視量のCCVはいずれも10%以上とばらつきがみられた.とくにCFRCylはCCVがC15%以上を示し,もっともばらつきが大きい結果となった.原因として以下に述べる測定原理や測定位置,角膜後面の実測の有無による違いが考えられる.ケラトの測定に用いたCTケラトはリング方式であり,角膜前面のC3.3Cmm位置にリング光源を投影し,その反射像より直接的に角膜の傾斜を計測している.一方,CASIA2はOCT方式であり,16本の断層像から常にC3Cmm位置の高さ情報を解析しており,角膜の形状情報から間接的に角膜の傾斜を計算している.光学的に重要な角膜中央部の軸上屈折力であるCAxialpowerは,角膜の傾斜の程度,つまり屈折そのものを計測している.角膜の傾斜を精度良く測定することを考えた場合,OCT方式はリング方式より測定精度が不利になると考える.また,FRCylは領域測定によって中心C3mm内を詳細に解析しているが,axialpowerは中心部ほどFRCylKTケラトy=-0.0071x+0.61421.6y=-0.0011x+0.1981.6y=0.0086x-0.1787r2=0.00021.2r2=0.00231.2r2=0.0018CV(%)CV(%)CV(%)CV(%)CV(%)CV(%)0.80.40.80.40.00.00.038.0043.0048.0053.0038.0043.0048.0053.0038.0043.0048.0053.00平均角膜屈折力(D)平均角膜屈折力(D)平均角膜屈折力(D)FRCylKTケラト707070y=-4.9658x+19.50860y=-5.6695x+23.01560y=-4.2539x+16.92960222=0.3047=0.2581=0.2304rrr5050504030204030204030201010100000.002.004.006.000.002.004.006.000.002.004.006.00角膜乱視量(D)角膜乱視量(D)角膜乱視量(D)図23群間における平均角膜屈折力,角膜乱視量とCVとの相関関係縦軸はCCVを示し,上段はCFRCyl・K・TケラトのC3群間における平均角膜屈折力,下段は角膜乱視量を示す.角膜乱視量においては,FRCylがCr=.0.508,KがCr=.0.552,TケラトがCr=.0.480)(いずれもCp<0.001)であり,すべてにおいて,CVとの間に有意な負の相関を認めた.CV:coe.cientofvariation,FRCyl:FourierRealpowerCylinder,K:Keratometry,Tケラト:TONOREFIII.表3既報との比較IOLMaster7004)(n=213)CIOLMaster7005)(n=69)CANTERION6)(n=96)測定機器(CarlZeissMeditec)(CarlZeissMeditec)(HeidelbergEngineering社)本検討:CASIA2(n=228)TotalKeratometryCTotalKeratometryCTotalcornealpowerCFRCyl(角膜全乱視量)(角膜全乱視量)(角膜全乱視量)(角膜全乱視量)CV(%)23.48%10.30%FRCyl:FourierRealpowerCylinder.わずかな傾斜の変化による屈折の変動が大きいため,中心部データを使用するCFRCylは測定時にばらつきが生じてしまうと思われる.さらにCFRCylは角膜前面のみではなく,角膜後面も実測している.後面乱視の実測は効果的に働いていると思われるが,複数の情報を扱うほどばらつきは加算的に大きくなってしまう.角膜前面と後面を実測した角膜全乱視測定の再現性を検討した既報はいくつかあるが,本検討で用いたCCASIA2とは測定機器が異なるものの,角膜全乱視測定では一定のばらつきが認められ,FRCylと同様の結果であった(表3)4.6).また,角膜乱視量のばらつきについては,3群間いずれも角膜乱視量が小さいほどばらつきの割合が大きい傾向を示した.Saviniら5)は,角膜乱視量の増加に伴い測定時のばらつきは小さくなると報告している.近年は角膜乱視C1.0D未満にも対応したCT-IOLの需要が高まっており,角膜乱視が小さいほど,測定時のばらつきや軸角度の再現性11)を確認する必要があると思われる.12.95%15.21%また,FRCylを用いてCT-IOL度数計算を行う際には,角膜前後面の実測値を用いた式を使用する必要がある.CASIA2にはCCASIAToric式が搭載されており,FRCylを用いたCT-IOL度数計算が可能である.CASIAToric式は,角膜のみのパラメーターで構築し算出しているため,測定時のばらつきを最小限に抑えることが,正確なCT-IOL度数計算に繋がると思われる.また,筆者らは過去にCFRCylを用いたCCASIAToric式による術後乱視誤差の検討をしているが12),対象がC39眼と少なかったため,今後はより症例数を増やして検討する必要があると考えている.本検討の結果より,FRCylはばらつきが生じやすいものの,角膜乱視量や各乱視成分の平均値に差はなかった.そのため,複数回測定による値の安定化がより正確な評価につながると思われる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)上野勇太:CASIA2におけるCRealpower値とフーリエ解析.IOL&RSC33:345-352,C20192)KochDD,AliSF,WeikertMPetal:Contributionofpos-teriorCcornealCastigmatismCtoCtotalCcornealCastigmatism.CJCataractRefractSurgC38:2080-2087,C20123)KochCDD,CJenkinsCRB,CWeikertCMPCetal:CorrectingCastigmatismCwithCtoricCintraocularlenses:e.ectCofCposte-riorCcornealCastigmatism.CJCCataractCRefractCSurgC39:C1803-1809,C20134)SharmaA,BatraA:Assessmentofprecisionofastigma-tismCmeasurementsCtakenCbyCaCswept-sourceCopticalCcoherencetomographybiometer-IOLMaster700.IndianJOphthalmolC69:1760-1765,C20215)SaviniCG,CTaroniCL,CSchiano-LomorielloCDCetal:Repeat-abilityoftotalKeratometryandstandardKeratometrybytheIOLMaster700andcomparisontototalcornealastig-matismbyScheimp.ugimaging.EyeC35:307-315,C20216)Schiano-LomorielloCD,CHo.erCKJ,CSaviniCGCetal:Repeat-abilityCofCautomatedCmeasurementsCbyCaCnewCanteriorCsegmentopticalcoherencetomographerandbiometerandagreementwithstandarddevices.SciRepC11:983,C20217)ThibosLN,HornerD:Powervectoranalysisoftheopti-caloutcomeofrefractivesurgery.JCataractRefractSurgC27:80-85,C20018)ZhaoY,ChenD,SaviniGetal:Theprecisionandagree-mentofcornealthicknessandkeratometrymeasurementswithCSS-OCTCversusCScheimp.ugCimaging.CEyeCVis(Lond)7:32,C20209)HasegawaCA,CKojimaCT,CYamamotoCMCetal:ImpactCofCtheCanterior-posteriorCcornealCradiusCratioConCintraocularClenspowercalculationerrors.ClinOphthalmolC12:1549-1558,C201810)HosikawaR,KamiyaK,FujimuraFetal:ComparisonofconventionalkeratometryandtotalkeratometryinnormalCeyes.BiomedResIntC13:1-6,C202011)二宮欣彦,金沢弥生,小島啓尚ほか:オートケラトメーターの再現性およびピッチの違いがトーリック眼内レンズの適応や乱視矯正効果などに及ぼす影響のシミュレーション.日眼会誌117:621-628,C201312)花月陸,筒井健太,堀田美木子ほか:前眼部COCTを用いたC2つのトーリック眼内レンズ計算式による術後乱視誤差の検討.日本視能訓練士協会誌C52:151-158,C2022***

京都府立医科大学眼科における眼瞼腫瘍の病理組織学的分類と特徴

2024年10月31日 木曜日

京都府立医科大学眼科における眼瞼腫瘍の病理組織学的分類と特徴北野ひかる*1,2渡辺彰英*1中山知倫*1米田亜規子*1外園千恵*1*1京都府立医科大学眼科学教室*2バプテスト眼科クリニックCHistopathologicalClassi.cationandFeaturesofEyelidTumorsTreatedattheDepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicineHikaruKitano1,2)C,AkihideWatanabe1),TomomichiNakayama1),AkikoYoneda1)andChieSotozono1)1)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,2)BaptistEyeInstituteC目的:京都府立医科大学附属病院眼科で治療した眼瞼腫瘍の病理組織学的分類および特徴を明らかにする.対象および方法:2009年C1月.2020年C5月に京都府立医科大学附属病院眼科を受診し,生検または切除術を施行した眼瞼腫瘍を対象に,病理組織学的分類と臨床的特徴を後ろ向きに検討した.結果:全C477例の内訳は,良性C330例,悪性147例で,平均年齢は良性C59.1C±18.9歳,悪性C75.1C±13.0歳であった.良性は母斑細胞母斑C112例(33.9%),脂漏性角化症C83例(25.1%)の順に多く,悪性は脂腺癌がC78例(53.1%),基底細胞癌がC50例(34%)で大半を占めた.脂腺癌は上眼瞼中央にもっとも多く発生し,結節型が大半を占めた.脂腺癌C78例中C11例に(14.1%)に転移を認め,耳側病変は他部位と比較して転移率がC22.7%と高かった.結論:眼瞼悪性腫瘍では脂腺癌が半数以上を占め,脂腺癌の耳側病変は他部位と比較して転移率が高く,注意が必要である.CPurpose:Toclarifyhistopathologicaltrendsofeyelidtumorsdiagnosedandtreatedatasingleinstitute.Sub-jectsandMethods:Weretrospectivelyinvestigatedthehistopathologicclassi.cationandclinical.ndingsofeyelidtumorsCdiagnosedCbetweenCJanuaryC2009CtoCMayC2020CatCtheCDepartmentCofCOphthalmology,CKyotoCPrefecturalCUniversityCofCMedicine.CResults:InCaCtotalCofC477CpatientsCseen,C330CbenignCtumorsCandC147CmalignantCtumorsCwereobserved.Meanpatientageatdiagnosisinthebenigntumorandmalignanttumorscaseswas59.1±18.9and75.1±13.0years,respectively.Ofthe477casesseen,thebenigntumorswerenevocellularnevus(112cases,33.9%)andseborrheickeratosis(83cases,25.1%)C,andthemalignanttumorsweresebaceouscarcinoma(SC)(78cas-es,53.1%)andbasalcellcarcinoma(50cases,34%)C.IntheSCcases,thetumorsweremostfrequentlylocatedinthecentralregionoftheuppereyelid,withthemajoritybeingofanodulartype,ofwhichtemporallesionshadthehighestrateofmetastasis(22.7%).CConclusion:SCaccountedformorethan50%Cofthemalignanteyelidtumorsseen,andthetemporallesionsofSChadthehighestrateofmetastasis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C41(10):1241.1245,C2024〕Keywords:眼瞼腫瘍,病理組織学的分類,疫学,脂腺癌,基底細胞癌.eyelidtumor,histopathologicalclassi.cation,epidemiology,sebaceouscarcinoma,basalcellcarcinoma.Cはじめに眼瞼はさまざまな組織から構成されているため,多種多様な眼瞼腫瘍が存在し,眼科領域の腫瘍に占める割合は高い1).眼瞼腫瘍には,母斑細胞母斑や脂漏性角化症,乳頭腫といった良性腫瘍と,基底細胞癌や脂腺癌といった悪性腫瘍があるが,悪性の場合は切除後の整容面や機能面,生命予後にも影響するため,診察時に腫瘍の組織型を推測することは治療方針や予後を考えるうえで重要であり,頻度の高い腫瘍の種類や特徴を知っておくと有用である.一般的に,眼瞼悪性腫瘍は基底細胞癌,扁平上皮癌,脂腺癌といった上皮性腫瘍が多いといわれている.国外では基底細胞癌の割合が多い国が多く,とくに欧米2,3)では基底細胞〔別刷請求先〕北野ひかる:〒602-8566京都市上京区梶井町C465京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学Reprintrequests:HikaruKitano,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,465Kajii-cho,Kamigyo-ku,Kyoto602-8566,JAPANC症例数90788072706053505243384034302317000~910~1920~2930~3940~4950~5960~6970~7980~8990~年齢20171511991031200図1良性腫瘍330例と悪性腫瘍147例の年齢別分布良性腫瘍はC60歳代にピークがあった.悪性腫瘍はC70歳代がもっとも多く,70歳以上の症例で悪性腫瘍全体の約C4分のC3を占めた.癌が悪性腫瘍のC90%前後を占め,シンガポール4)や香港5),台湾6)などのアジア諸国でも基底細胞癌が多い傾向にある.それに対し脂腺癌は,欧米ではC2.7%,アジア諸国ではC6.12%とまれであることが報告されている2.6).一方でわが国では国外と比較して悪性腫瘍に占める脂腺癌の頻度がC29.C44%1,7)と高いという特徴があるが,日本人の生活スタイルや食生活の変化とともに,その傾向が変化している可能性がある.今回,京都府立医科大学病院眼科(以下,当科)で加療した眼瞼腫瘍を対象に,病理組織学的分類およびその特徴について検討を行ったので報告する.CI対象および方法対象は,2009年C1月.2020年C5月に当科を受診し,生検・切除術を施行し,病理組織検査にて診断が確定した眼瞼腫瘍C477例である.診療録および病理診断部のデータベースを用いて後ろ向きに調査し,良性腫瘍と悪性腫瘍に分け,各群においてそれぞれ,男女比,受診時平均年齢,年齢別分布,病理診断別頻度について検討した.とくに病理診断が脂腺癌と基底細胞癌であった症例について,発症部位と転移率を調べた.さらに脂腺癌については臨床病型の分類についても検討し,診療録,術前写真の情報から結節性病変を有するものをCnodulartype,びまん性の眼瞼肥厚病変を有するものをCdi.usetypeと分類した.今回の検討では,眼瞼縁に発生した腫瘍を眼瞼腫瘍に分類し,瞼結膜に発生した腫瘍は眼瞼腫瘍ではなく結膜腫瘍として除外した..胞は自律性増殖という腫瘍の定義を考えると厳密には腫瘍ではないが,臨床上腫瘍の鑑別疾患として重要なため,今回の検討に加えた.また,霰粒腫は厳密には腫瘍でないため除外した.CII結果今回の対象となった眼瞼腫瘍C477例の内訳は良性がC330例,悪性がC147例であり,それぞれの男女比は,良性が男性C126例(38.2%),女性C204例(61.8%)で,悪性が男性C58例(39.5%),女性C89例(60.5%)であった.受診時の年齢は,良性C59.1C±18.9歳(平均C±標準偏差),悪性C75.1C±13.0歳であった.年齢別分布を図1に示した.良性腫瘍は年齢とともに徐々に症例数が増加し,60歳代にピークがあった.悪性腫瘍はC0.29歳の若年では存在せず,30歳代に初めて1例認めた.70歳代がもっとも多く,80歳以上の症例も多数あり,70歳以上の症例がC111例と悪性腫瘍のC75.5%を占めた.良性腫瘍,悪性腫瘍それぞれの病理組織学的分類を,頻度の高い順に表1,2に示した.良性腫瘍C330例のうち,おもなものは母斑細胞母斑C112例(33.9%),脂漏性角化症C83例(25.1%),粉瘤(表皮.胞)36例(10.9%),肉芽腫C14例(4.2%)であった.悪性腫瘍C147例でおもなものは脂腺癌C78例(53.1%),基底細胞癌C50例(34%),扁平上皮癌C12例(8.2%)であり,このC3疾患で眼瞼悪性腫瘍のC95.2%を占めた.脂腺癌C78例の臨床病型はCnodularCtype66例(84.6%),Cdi.usetype12例(15.4%)であり,53例(67.9%)が上眼瞼病理診断性別症例数(%)年齢平均年齢±標準偏差男女母斑細胞母斑C27C85112(C33.9)C56.0±18.5脂漏性角化症C34C4983(C25.1)C66.4±14.3粉瘤(表皮.胞)C14C2236(C10.9)C58.3±19.6肉芽腫C7C714(C4.2)C58.6±19.3脂腺腺腫C5C611(C3.3)C71.0±11.8乳頭腫C3C710(3)C50.4±23.5.胞C8C210(3)C57.9±20.9脂腺過形成C3C47(2C.1)C71.6±9.2黄色腫C3C47(2C.1)C61.3±8.6血管腫C3C25(1C.5)C53.6±27.1疣贅C2C24(1C.2)C51.3±20.3その他C17C1431(C9.4)C50.1±23.8計C126C204330(C100)C59.1±18.9その他:伝染性軟属腫,黄色肉芽腫,線維腫,毛母腫,顆粒細胞腫,石灰化上皮腫,神経鞘腫,多形腺腫,毛包腺腫,反応性リンパ過形成,偽癌性軟属腫,管状腺腫など.表2眼瞼悪性腫瘍147例の病理組織学的分類病理診断性別計症例数(%)年齢平均年齢±標準偏差男女脂腺癌C29C4978(C53.1)C74.2±13.6基底細胞癌C18C3250(34)C77.3±11.7扁平上皮癌C8C412(C8.2)C71.1±14.8悪性黒色腫C1C34(2C.7)C73.8±6.2Merkel細胞癌C1C01(0C.7)C105鼻腔癌浸潤C1C01(0C.7)C71Bowen病C0C11(0C.7)C78計C58C89147(C100)C75.1±13.0Cに局在していた.NodularCtype66例の部位は上眼瞼がC44例,下眼瞼がC22例であった.nodulartypeをさらに鼻側,中央部,耳側に分類すると,3例は明確に分類することができず,分類可能だったC63例はそれぞれC12例,29例,22例であった.計C6分割にすると,上眼瞼中央部がC23例と最多で,ついで上眼瞼耳側C13例,下眼瞼耳側C9例,上眼瞼鼻側7例であった.脂腺癌C78例中C11例(14.1%)に転移を認めたが,そのうちC10例がCnodulartypeであった.部位別の転移率は鼻側12例中C2例(16.7%),中央部C29例中C3例(10.3%),耳側22例中C5例(22.7%)であった.耳側の脂腺癌転移例C5例のうちC4例はまず耳前リンパ節への転移を認めたが,その他の脂腺癌転移例C6例(di.usetypeのC1例も含める)は全例,頸部リンパ節への転移を認めた.転移例C11例中C3例(全体のC3.8%)はリンパ節転移にとどまらず,眼窩内および脳・髄腔内転移を認めたものがC1例,全身転移を認めたものがC1例,肺転移を認めたものがC1例あり,全身転移を認めた症例についてはその後死亡した.基底細胞癌C50例中C37例(74%)が下眼瞼に局在し,転移例はなかった.脂腺癌と同様にC6部位に分類すると,下眼瞼鼻側がC14例と最多で,ついで下眼瞼中央部C12例,下眼瞼耳側C9例であった.なお,2例は下眼瞼の広範囲に及んでおり,局在による分類は不可能であった.CIII考按今回の対象となった眼瞼腫瘍C477例のうち,330例が良性,147例が悪性であった.悪性腫瘍を疑う場合は生検または切除術を行い,病理組織学検査に供するのに対して,臨床所見より良性とみなす場合は積極的に手術加療しない場合もあることより,良性腫瘍の症例数は実臨床ではさらに多いと考えられる.したがって,他施設との単純な比較はできないが,母斑細胞母斑および脂漏性角化症が多くを占めるという今回の結果は,国内外の既報1,2,7,8)と同様であった.地域(発表年)期間悪性総数眼瞼悪性腫瘍に占める割合脂腺癌基底細胞癌扁平上皮癌悪性腫瘍の男女比男C/女当院(本研究)2009.C2020C14753.1%34%8.2%C39.5/60.5聖隷浜松病院1)(C2014)2005.C2013C9831%48%15%記載なし東京医科大学病院7)(C2022)1995.C2019C41244%36%9%C43.9/56.1香港5)(C2011)1997.C2009C3611.1%75%5.6%C44.4/55.6台湾6)(C2006)1979.C1999C11207.9%65.1%12.6%C53.3/46.7シンガポール4)(C1999)1968.C1995C32510.2%84%3.4%C49.8/50.2ギリシャ2)(C2015)1983.C2012C3510%86%7%記載なし米国3)(C1999)1976.C1990C1740%90.8%8.6%C50/50ブラジル8)(C2018)2000.C2012C3246.8%69.8%17%C49/51C悪性腫瘍のもっとも若年の症例はC33歳の脂腺癌であったが,若年性の悪性腫瘍の既報に関しては,Shieldsらによる17歳の脂腺癌の症例や9),国内でもC29歳の扁平細胞癌や,31歳の脂腺癌,基底細胞癌の症例がある7).年齢的に悪性腫瘍の可能性が低そうではあっても,生検あるいは切除した腫瘍の病理組織検査で確認することが重要であると考える.眼瞼悪性腫瘍の頻度について,国内外の他施設との比較を表3に示す.今回の検討では女性がC60%以上と男性よりも多かった.この理由として,平均寿命が女性のほうが高いため,生命予後に影響の少ない眼科領域の腫瘍に関して女性患者が多くなった可能性や,女性のほうが男性に比較して健康や整容面への意識が高いため,早く眼瞼病変に気づき受診した可能性,眼瞼悪性腫瘍自体の有病率に性差がある可能性などがある.わが国は国外より眼瞼悪性腫瘍全体における脂腺癌の頻度が高いという特徴があるが1,7),今回の検討では眼瞼悪性腫瘍全体の半数以上を脂腺癌が占めており,当科はとくに脂腺癌の占める割合が高かった.その理由として,当科の専門外来は脂腺癌の切除後の眼瞼再建術も積極的に行っており,悪性を疑うような症例をはじめ,悪性の診断後や他施設での治療後のセカンドオピニオンとしての紹介も多く,結果的に悪性度の高い脂腺癌の症例が集まりやすいことが考えられる.脂腺癌は,欧米人ではCdi.usetypeが多いと報告されているが9),日本人ではCnodulartypeが多いとされており10,11),人種差のある腫瘍であることが知られている.本検討でも既C1244あたらしい眼科Vol.41,No.10,2024報に一致した結果であった.人種差や臨床像に差があることからなんらかの遺伝子背景があると推測されるが,脂腺癌についての遺伝子検索はこれまであまり行われておらず,はっきりしたことがわかっていない.脂腺癌はそのほとんどが瞼板内のマイボーム腺より発生するため眼瞼縁や瞼結膜に認めることが多く,マイボーム腺の数が多い上眼瞼の発生が多いといわれている9).本検討でも上眼瞼の発生が多かったが,さらなる検討で上眼瞼中央が全体の約C3分のC1を占めていることがわかった.脂腺癌の領域リンパ節転移,遠隔転移については,既報9,11.15)では,それぞれC8.23%,2.14%と報告されており,今回も同様の結果であった.AmericanJointCommit-teeonCancerによって定義された眼瞼腫瘍のCTNM分類で,T分類が脂腺癌転移の予測因子になりうると示唆している報告11.15)が多い.筆者らは今回その検討は行っていないものの,転移率について部位別に検討したところ,とくに眼瞼耳側は約C4分のC1の確率で転移しており,他部位に比較してリンパ節転移しやすい可能性が考えられた.また,その転移先として,眼瞼耳側病変の転移例は耳前リンパ節への転移を認める症例が大半であったのに対し,他部位の転移例はすべて頸部リンパ節への転移を認めており,これはリンパ流によって転移先が規定されるからであり,それに留意して経過観察する必要があると考える.基底細胞癌は紫外線曝露との関連があるとされており,上眼瞼は常時瞬目で動くうえ,眉毛により紫外線曝露を受けにくく,相対的に紫外線曝露が多い下眼瞼に発生しやすいと考えられている.今回の検討でも下眼瞼に多く発生しており,全症例で転移を認めなかった.今回の検討では,眼瞼悪性腫瘍のうち女性の割合が高く,脂腺癌が半数以上を占めた.脂腺癌は上眼瞼中央部の発生が多く,耳側病変は転移率が高く注意が必要である.眼瞼悪性腫瘍を疑った際には,必要に応じて積極的に生検を施行し,(96)利益相反北野ひかるなし渡辺彰英なし中山知倫なし米田亜規子なし外園千恵F(IV)参天製薬株式会社,サンコンタクトレンズ株式会社,CorneaGen文献1)末岡健太郎,嘉鳥信忠,笠井健一郎ほか:聖隷浜松病院眼形成眼窩外科における過去C9年間の眼窩,眼瞼,結膜腫瘍の検討.臨眼C68:463-470,C20142)AsproudisCI,CSotiropoulosCG,CGartziosCCCetal:EyelidCtumorsattheUniversityEyeClinicofIoannina,Greece:CAC30-yearCretrospectiveCstudy.CMiddleCEastCAfrCJCOph-thalmolC22:230-232,C20153)CookCBECJr,CBartleyGB:EpidemiologicCcharacteristicsCandCclinicalCcourseCofCpatientsCwithCmalignantCeyelidCtumorsinanincidencecohortinOlmstedCounty,Minne-sota.OphthalmologyC106:746-750,C19994)LeeCSB,CSawCSM,CEongCKGACetal:IncidenceCofCeyelidCcancersinSingaporefrom1968to1995.BrJOphthalmolC83:595-597,C19995)MakCST,CWongCACM,CIoCIYFCetal:MalignantCeyelidCtumorsCinCHongCKongC1997-2009.CJpnCJCOphthalmolC55:C681-685,C20116)LinCHY,CChengCCY,CHsuCWMCetal:IncidenceCofCeyelidCcancersCinTaiwan:AC21-yearCreview.COphthalmologyC113:2101-2107,C20067)GotoCH,CYamakawaCN,CKomatsuCHCetal:EpidemiologicalCcharacteristicsCofCmalignantCeyelidCtumorsCatCaCreferralChospitalinJapan.JpnJOphthalmolC66:343-349,C20228)DamascenoCJC,CIsenbergCJ,CLopesCLRCetal:LargestCcaseCseriesCofCLatinCAmericanCeyelidCtumorsCoverC13-yearsCfromCaCsingleCcenterCinCSaoCPaulo,CBrazil.CArqCBrasCOftal-molC81:7-11,C20189)ShieldsJA,DemirciH,MarrBPetal:Sebaceouscarcino-maCofCtheeyelids:personalCexperienceCwithC60Ccases.COphthalmologyC111:2151-2157,C200410)渡辺彰英:脂腺癌の臨床.あたらしい眼科C32:1717-1718,C201511)WatanabeCA,CSunCMT,CPirbhaiCACetal:SebaceousCcarci-nomaCinJapaneseCpatients:clinicalCpresentation,CstagingCandoutcomes.BrJOphthalmolC97:1459-1463,C201312)EsmaeliB,NasserQJ,CruzHetal:AmericanJointCom-mitteeonCancerTcategoryforeyelidsebaceouscarcino-maCcorrelatesCwithCnodalCmetastasisCandCsurvival.COphthal-mologyC119:1078-1082,C201213)LamSC,LiEYM,YuenHKL:14-yearcaseseriesofeye-lidCsebaceousCglandCcarcinomaCinCChineseCpatientsCandCreviewofmanagement.BrJOphthalmolC102:1723-1727,C201814)TakahashiY,TakahashiE,NakakuraSetal:RiskfactorsforClocalCrecurrenceCorCmetastasisCofCeyelidCsebaceousCglandCcarcinomaCafterCwideCexcisionCwithCpara.nCsectionCcontrol.AmJOphthalmol171:67-74,C201615)SaHS,RubinML,XuSetal:Prognosticfactorsforlocalrecurrence,metastasisandsurvivalforsebaceouscarcino-maoftheeyelid:observationsin100patients.BrJOph-thalmolC103:980-984,C2019***

基礎研究コラム:89.高VEGF環境下でのCX3CR1陽性硝子体界面マクロファージ

2024年10月31日 木曜日

高VEGF環境下でのCX3CR1陽性硝子体界面山口宗男マクロファージ組織常在マクロファージとは単球とマクロファージは,組織の恒常性だけでなく,さまざまな病態においても重要な役割を果たしています.健常人のほとんどの組織には組織常在マクロファージが存在し,それらは血液中の単球からの補充に依存していることが広く認識されています1).病的状態においては,ケモカイン受容体の一つであるCC-Cケモカイン受容体C2型(CCR2)を発現する循環単球の浸潤亢進により,組織常在マクロファージが増加します.近年,ある種の組織常在マクロファージは炎症部位で増殖する能力を保持しているという報告がありました2).眼の領域ではどうでしょうか網膜硝子体界面には硝子体の組織常在マクロファージであるヒアロサイトが単層で広がっています.網膜前膜などで,このマクロファージの活性化と病態との関連性が報告されています.筆者らは,糖尿病網膜症(diabeticretinopathy:DR)の網膜硝子体界面における硝子体界面マクロファージの本態について,眼内でCVEGFを高発現するCKimbaマウスを用いて検討しました.F4/80陽性CM2-likeマクロファージは,野生型(wildtype:WT)マウスと比較して網膜硝子体界面で著明に増加していました.Ccr2Crfp/rfpCx3cr1gfp/gfpマウスとCKimbaマウスを交配させ,硝子体界面マクロファージを蛍光させたところ,硝子体界面マクロファージはCX3CR1を発現しており,CCR2を発現していないことがわかりました.BrdUの取り込み,Ki-67染色から,Kimbaマウスの硝子体界面マクロファージは,硝子体界面局所で自己増殖することにより増加していることがわかりました3).光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)の解像度が上がったことにより,マクロファージ,網膜色素上皮または視細胞からなる細胞病変と考えられるChyper-re.ectivefoci(HRF)の存在が知られるようになりました.Kimbaマウスでは硝子体界面のマクロファージの数が増加しているので,OCT(コーワCOCTBi-μ)で評価してみました.WTマウスではほとんど網膜硝子体界面のCHRFが検出できませんでしたが,Kimbaマウスでは多数検出することができました.また,クロドロネートリポソームを硝子体内注射してマクロファージを消去することにより,HRFの数も減少していることが観察できました.硝子体界面マクロファージの一部は網膜硝子体界面のCHRFとして画像評価できる可能性が示唆されました3).福岡赤十字病院眼科M2-likeCX3CR1(+)Mφ硝子体腔局所増殖血管新生,増殖膜形成図1高VEGF環境下での硝子体界面マクロファージと病態の仮説今後の展望筆者らは,基礎研究と臨床研究の橋渡し役として眼科イメージング機器を使用しています.実際にCDR患者の網膜硝子体界面のCHRFの数は,DRの進行に伴い増加していました.M2-likeマクロファージは一般的に創傷治癒,新生血管,増殖膜形成に関与しているとされています.DR患者の網膜硝子体界面でもCM2-likeマクロファージが病期の進行とともに自己増殖しているとするならば,増殖糖尿病網膜症の病態に関与していることが考えられます(図1)3).硝子体界面マクロファージとCDRの病態進行を結びつける分子メカニズムがはっきりすれば,DR進行のバイオマーカー,また治療ターゲットとなりうる可能性があると考えます.文献1)EglitisCMA,CMezeyE:HematopoieticCcellsCdi.erentiateCintoCbothCmicrogliaCandCmacrogliaCinCtheCbrainsCofCadultCmice.ProcNatlAcadSciUSAC94:4080-4085,C19972)HaaseCJ,CWeyerCU,CImmigCKCetal:LocalCproliferationCofCmacrophagesCinCadiposeCtissueCduringCobesity-inducedCin.ammation.CDiabetologiaC57:562-571,C20143)YamaguchiCM,CNakaoCS,CWadaCICetal:IdentifyingChyperre.ectiveCfociCinCdiabeticCretinopathyCviaCVEGF-inducedClocalCself-renewalCofCCX3CR1+vitreousCresidentCmacrophages.DiabetesC71:2685-2701,C2022(87)あたらしい眼科Vol.41,No.10,2024C12350910-1810/24/\100/頁/JCOPY

硝子体手術のワンポイントアドバイス:257.シリコーンオイル注入眼のOCT所見(初級編)

2024年10月31日 木曜日

257シリコーンオイル注入眼のOCT所見(初級編)池田恒彦大阪回生病院眼科●はじめにシリコーンオイル(siliconeoil:SiO)は網膜のタンポナーデ物質としてしばしば用いられるが,近年の光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)の解像度向上により,SiO界面と網膜の状態がより詳細に観察可能となってきている.C●症例提示72歳,男性.右眼は以前に網膜.離を発症し失明している.左眼にも多発裂孔を伴う網膜.離が発症し,初回手術として硝子体切除,輪状締結,SiOタンポナーデを施行し,術後網膜は復位した.術後のCOCTによる観察では中心窩陥凹部位にCSiOの界面と思われる水平ラインを認め,中心窩周囲ではその輝度が増強していた(図1).術後半年を経過し,SiOの乳化が進行してきたが,SiO界面と網膜の間に乳化CSiOあるいはフィブリンと思われる陰影が出現してきた(図2).SiOの抜去時期と思われたが,患者の強い希望により引き続き経過観察している.乳化がさらに進行あるいは眼圧上昇してきた時点でCSiO抜去を施行する予定である.C●SiO注入眼のOCT所見SiOはその比重と界面張力により,OCTでは特徴的な所見を呈する.Osterらは黄斑円孔に対する硝子体手術で気体に加えてCSiOを使用し,術後CSiOの界面が黄斑円孔縁をブリッジし,黄斑円孔部位への房水を遮断していること,多くの症例で中心窩陥凹の部位で液化腔が存在していること,仰臥位では網膜面からCSiO界面が遊離し,タンポナーデ効果が減弱していることなどを報告している1).Ozsaygiliらは長期のCSiO留置により網膜内層と外層,とくに神経節細胞層と外顆粒層の菲薄化をきたしたとし,その原因としてCSiOの網膜への毒性(85)C0910-1810/24/\100/頁/JCOPYab図1術後1カ月後の眼底写真(a)とOCT画像(b)中心窩陥凹部位にCSiOの界面と思われる水平ラインを認め,中心窩周囲ではその輝度が増強していた.Cab図2術後6カ月後の眼底写真(a)とOCT画像(b)SiO界面と網膜の間に乳化CSiOあるいはフィブリンと思われる陰影が出現してきた.を推測している2).本提示例でもCSiOと網膜面に液化腔が存在し,その間隙に陰影が観察されたように,OCTは眼底検査では捉えにくい液化CSiOやフィブリン析出などを可視化できる可能性があり,SiOタンポナーデ後の眼底所見をより詳細に評価できる利点がある.それとともに,網膜の層状構造の変化から網膜傷害の程度を推測することで,SiO抜去の時期決定にも有用な指標になると思われる.文献1)OsterSF,MojanaF,BartschDUGetal:Dynamicsofthemacularhole-siliconeoiltamponadeinterfacewithpatientpositioningCasCimagedCbyCspectralCdomain-opticalCcoher-encetomography.CRetinaC30:924-929,C20102)OzsaygiliCC,CBayramN:E.ectsCofCdi.erentCtamponadeCmaterialsConCmacularCsegmentationCafterCretinalCdetach-mentrepair.JpnJOphthalmolC65:227-236,C2021あたらしい眼科Vol.41,No.10,20241233

考える手術:34.ニードリングのこだわり

2024年10月31日 木曜日

考える手術.監修松井良諭・奥村直毅ニードリングのこだわり庄司拓平小江戸眼科内科ニードリングは,トラベクレクトミーを含めた濾過手術系の術後に濾過が不十分なことにより眼圧が再上昇した患者に対して,比較的簡便な濾過胞再建方法として広く行われている術式である.2022年以降「濾過胞再建術(needle法)」として保険収載されているが,術式自体は30年以上前から報告されている.ただし,ニードリングの際に使用する器具や施行する場所(診察室・処置室・手術室など)は術者や施設によって異なり,ニー聞き手:濾過手術後に眼圧が上昇した場合は,どのような処置をとることが多いでしょうか?庄司:術直後~2週間程度であれば,レーザー切糸術やマッサージによって濾過量を増加させることも可能ですが,それ以降になればこれらの処置による眼圧下降効果は限定的になります.その場合の次の対応方法には表1のようなものがあげられます.この中から眼圧値,病期,他疾患の有無,患者の社会的背景,医療機関の条件(入院の可否,手術室へのアクセスのしやすさなど),術者の経験などを考慮して,最適と思われる方法を選択します.ニードリングはこの選択肢の一つと考えられています.聞き手:ニードリングとはどのような術式でしょうか?庄司:前房水を眼外に濾過することにより眼圧を下降させる手術を行ったあとに,なんらかの原因で癒着が生じて濾過量が減少したために眼圧が再上昇した状態となった眼に,癒着を外科的に解除して濾過量を増加させ,眼圧下降をめざす手術がニードリングです.トラべクレクトミーの術後に行われることがもっとも一般的です.細隙灯顕微鏡下で代謝拮抗薬(5-FUまたはマイトマイシンCC)を使用したニードリングの有用性はC1990年代より報告されています1,2).ニードリングの効果が点眼薬と比較して有効ではない,という報告もありますが3),純粋なランダム化比較試験での報告が少ないためであると考えられ,日常臨床では広く行われています.また,トラベクレクトミーだけでなく,ロングチューブ施行例に対するニードリングの有効性も古くから報告されています4).近年ではニードリング時の代謝拮抗薬使用の有無で結果に差がなかったとの報告もあり5),代謝拮抗薬の使用については術者の判断に委ねられているといえるでしょう.(83)あたらしい眼科Vol.41,No.10,2024C12310910-1810/24/\100/頁/JCOPY考える手術聞き手:具体的にはどのような方法と違いがあるのでしょうか?庄司:ニードリングにはさまざまなバリエーションがありますが,施行場所によって施行可能な処置も異なります(表2).診察室の細隙灯顕微鏡で行う処置はもっとも簡便ですが,制御糸をかけたり,縫合をするには適していないと考えられます.一方で入院して手術室を使用するのはもっとも安全に処置が可能であり,唯一眼にも積極的にアプローチ可能ですが,手術室へのアクセスの容易さは各医療機関によって異なります.どの方法を選択するかは患者の眼の状態,社会的背景,医療機関の条件(入院の可否,手術室へのアクセスのしやすさなど)などによって分かれます.前房内操作をするのであれば清潔環境下で行うことが推奨されます.一方で前房内と交通する危険性がある場合には,代謝拮抗薬の使用は慎重になるべきです.聞き手:具体的な方法を教えてください.庄司:ニードリングの目的は,眼圧上昇の原因となっている濾過胞の癒着を解除することです.まずは細隙灯顕微鏡での観察で癒着部位を考察する必要があります.前房水の流出経路として前房側から順に①虹彩切除部での閉塞,②強膜フラップ下の強膜-強膜の癒着,③強膜フラップエッジの癒着,④強膜-結膜(またはCTenon.)間の癒着が考えられます.ニードリングは経結膜的に遠位側から上記の癒着を.離していきます.Bleb形成がしっかりしているのであれば癒着しているのは④であると考えますが,bleb自体が平坦になっていた場合はより前房側に近い①~③の癒着が考えられます.私はニードリングを行う際には①~④のすべての部位での癒着を乖離し,確実に眼圧を下げることをめざしています.具体的には表2で示した「手術室で」「ブレブナイフを用いて」「制御糸を用いて」「代謝拮抗薬は用いずに」「前房内操作も行う」ニードリングを行っています.ニードリングによって前房内との交通を確認しておくことが術後の眼圧下降には重要であると考えています.また,風間成泰先生(新城眼科)が提唱されているコンバートポー表1濾過手術不成功時表2ニードリングのバリエーションの対応法施行場所(細隙灯・処置室・手術室)点眼再開使用器具(針・ナイフ)ニードリング制御糸の使用(有・無)ブレブ再建(結膜切開)代謝拮抗薬の使用(有・無)別創での追加手術前房内操作(有・無)入院(有・無)トも作製するようにしています.コンバートポートには専用のナイフ(recoveryPort1.0Cmm,マニー社)も販売されています(動画①②).聞き手:患者に伝えておくべき合併症はありますか?庄司:ニードリングに関連する合併症を表3に示します.術後いったん眼圧が下降しても,再癒着が生じ眼圧再上昇するリスクや,逆に過剰濾過になってしまい低眼圧になるリスクがあります.低眼圧になると視力が術前よりも低下することもあります.また,前房出血による視力低下のリスクもありますが,前房内穿孔時に前房出血をきたした場合は,エピネフリン入りCBSSを前房内に灌流することにより止血可能です.術後の一過性の視力低下や眼圧再上昇については,必ず術前に伝えておくべきだと思います.聞き手:ニードリングの術後成績はどの程度でしょうか.庄司:術後C2回連続で眼圧がC21mmHg以上,または追加手術を必要としたことを外科的死亡と定義すると,当院での術後C1年時点での生存率はC78%でした(図1).初回の濾過手術後半年以内の患者では,眼圧上昇時に点眼薬ではなく,積極的にニードリングによる濾過胞再建を選択するようにしています.文献1)EwingCRH,CStamperRL:NeedleCrevisionCwithCandCwith-outC5-.uorouracilCforCtheCtreatmentCofCfailedC.lteringCblebs.CAmJOphthalmolC110:254-259,C19902)MardelliCPG,CLedererCCMCJr,CMurrayCPLCetal:Slit-lampCneedlerevisionoffailed.lteringblebsusingmitomycinC.OphthalmologyC103:1946-1955,C19963)Feyi-WabosoCA,CEjereHO:NeedlingCforCencapsulatedCtrabeculectomyC.lteringCblebs.CCochraneCDatabaseCSystCRevC2012:CD003658,C20124)ChenCPP,CPalmbergPF:NeedlingCrevisionCofCglaucomaCdrainagedevice.lteringblebs.OphthalmologyC104:1004-1010,C1997C1.00.80.6表3ニードリング0.4の合併症0.2眼圧再上昇C0.0低眼圧C05101520前房出血図1当院におけるニードリングの術後成績結膜下出血2回連続して眼圧C21CmmHg以上,または追加結膜ボタンホール処置を行った場合を外科的死亡と定義した.処一過性視力低下置C1年後の生存率はC78%であった.1232あたらしい眼科Vol.41,No.10,2024(84)

抗VEGF治療セミナー:抗VEGF療法継続困難な症例

2024年10月31日 木曜日

●連載◯148監修=安川力五味文128抗VEGF療法継続困難な症例山本有貴兵庫医科大学眼科学教室抗CVEGF薬の適応疾患は慢性疾患が多く,繰り返しの硝子体内注射が必要となる場合がほとんどである.薬剤が高額で通院が長期に及ぶことから,経済的理由や高齢であることなどを理由に治療継続を断念する場合も少なくない.また,慢性期になると患者自身が抗CVEGF薬による治療効果を実感しにくいため,通院が途絶えてしまうケースも多い.今回は通院を自己中断後,広範な網膜下出血,硝子体出血をきたし,再紹介となった症例を提示する.a図1当院初診時の検査所見a:カラー眼底写真.黄斑部全体にCsoftdrusenを認め,中心窩には網膜色素上皮.離を認める.中心窩直上にCNVを疑う赤色病変がある.鼻側に出血を認める.b:OCT.網膜色素上皮.離と網膜浮腫Ceを認める.c:FA.赤色病変に一致して過蛍光を認める.Cd:IA.網膜血管との吻合が確認できる.e:OCTA.造影所見に一致したシグナルを認める.症例提示患者:80歳,男性主訴:左眼の歪み現病歴:3カ月前からの左眼歪視を主訴に近医受診.左眼黄斑変性を指摘され当院紹介受診.既往歴:高血圧内服加療中.喫煙C15本/日,55年.初診時所見:左眼矯正視力C0.5.前眼部には異常なく,中等度白内障を認めた.眼底は黄斑に色素上皮.離とその辺縁にCsoftdrusenの沈着,網膜浮腫を認めた.光干渉断層血管撮影(opticalCcoherenceCtomographyCangi-ography:OCTA)で中心窩上方に異常な血流シグナルを認め,フルオレセイン蛍光造影(.uoresceinangiog-raphy:FA)およびインドシアニングリーン蛍光造影(ndocyanineCgreenangiography:IA)で同部位に脈絡膜新生血管と網膜血管の吻合が確認された(図1).右眼dにもCsoftdrusenを認めたが,滲出性変化は認めなかった.経過OCTA,FA・IAの結果よりC3型黄斑新生血管(mac-ularneovascularization:MNV)網膜内血管腫状増殖(retinalangiomatousCproliferation:RAP)と診断し,アフリベルセプトを導入期C3回投与後,基本的にCtreatCandextend(TAE)で施行した.ただし患者希望でときどきスキップしたり,再診予約の無断キャンセルがあった.最終受診は初診からC2年C7カ月後であり,左眼矯正視力C0.9を維持していた.最終受診時にもアフリベルセプト投与を行っている(図2).その後来院せず,2年ぶりに左眼が真っ暗になったと近医を受診し,硝子体出血を指摘され当院へ再紹介となった.左眼視力は手動弁であった.硝子体手術+水晶体(81)あたらしい眼科Vol.41,No.10,202412290910-1810/24/\100/頁/JCOPY図2受診中断前の最終受診時(初診から2年7カ月後)網膜色素上皮.離,網膜浮腫は消失し,OCTAでもシグナルは確認できない.再建術を施行し,硝子体出血は除去できたものの,広範な網膜下出血(subretinalhemorrhage:SRH)は器質化し,網脈絡膜萎縮も著しく,現在は視力C0.02である(図3).解説通院中は治療が奏効しCdryな状態を維持できていたが,通院がとだえ,2年後に大出血を起こして再紹介となったCRAP(3型MNV)1)症例である.3型CMNVは抗CVEGF療法によく反応して滲出性変化は減少するが,再発率が非常に高く,また長期の経過で萎縮病巣が生じやすい.そしてしばしばポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalCchoroidalvasculopathy:PCV)同様,広範な網膜下出血をきたす.PCVは光線力学的療法(photodynamicCtherapy:PDT)が奏効する場合も多く,治療の選択肢があるが,萎縮病巣をきたしやすい3型CMNVに対しては基本的にCPDTは推奨されないため,現在の治療方法は抗CVEGF療法しかない.大幅に注射間隔を延長することができないこともドロップアウトを生みやすい要因であろう.治療を中止した加齢黄斑変性(age-relatedCmaculardegeneration:AMD)症例を後ろ向きに検討した研究では,16%にCSRHが発生し,なかでもC3型CMNVが出血のリスクが高いことが報告されている2).3型CMNVは通常両眼性であり,qualityofvision(QOV)を考えると厳格な治療マネージメントを必要とするが3),患者が他のCAMDに比較しても高齢であることも通院中断の大きな要因となっている.C1230あたらしい眼科Vol.41,No.10,2024図3最終受診から2年後,術後の所見a:広角眼底写真でアーケードを超えた広範な網膜下出血を認める.周辺部は器質化している.Cb:OCTでも器質化した出血が確認できる.おわりに3型CMNVに限らず,AMDは慢性疾患であるため,導入期よりむしろ維持期の治療のほうがむずかしい.抗VEGF薬は経済的負担が大きいことに加え,硝子体内注射は何回受けてもストレスだと訴える患者がほとんどである.本症例も,通院を継続していたときも何回か受診せず,注射の間隔がC7カ月ほどあいたことがあった.本人に通院中断の理由を聞くと,注射と待ち時間のストレスを理由としてあげた.右眼にもCsoftdrusenを認めているため,継続通院の必要性を強く説明し,納得いただいたが,いつまで継続してもらえるかはわからない.AMD診療のむずかしさを改めて感じた症例である.文献1)SpaideRF,Ja.eGJ,SarrafDetal:Consensusnomencla-tureforreportingneovascularage-relatedmaculardegen-erationdata:ConsensusConCNeovascularCAge-RelatedCMacularCDegenerationCNomenclatureCStudyCGroup.COph-thalmologyC127:616-636,C20202)KimCJH,CKimCJW,CKimCG:DevelopmentCofCsubretinalChemorrhageaftertreatmentdiscontinuationforneovascu-larCage-relatedCmacularCdegenerationCandCpolypoidalCcho-roidalCvasculopathy.CGraefe’sCArchCClinCExpCOphthalmolC2022:3231-3239,C20223)HajNajeebB,DeakGG,Schmidt-ErfurthUMetal:RAPstudy,report1:Novelsubtypeofmacularneovascularisa-tionCtypeCIII,CcilioretinalCMNV3.CBrCJCOphthalmolC105:C113-117,C2021(82)

緑内障セミナー:緑内障の神経保護・再生医療研究の現状

2024年10月31日 木曜日

●連載◯292監修=福地健郎中野匡292.緑内障の神経保護・再生医療研究の現状西島義道東京慈恵会医科大学眼科学講座緑内障の神経保護・再生医療研究では近年,遺伝子治療や薬物療法,インプラント治療など新たなアプローチが試みられている.改変型CTrkB受容体を用いた遺伝子治療では視神経軸索再生効果が,リパスジル・ブリモニジン配合点眼薬では神経保護効果が報告されている.また,CNTF徐放性眼内インプラントの臨床試験も現在進行中である.●はじめに緑内障は世界的に主要な失明原因の一つであり,網膜神経節細胞(retinalCganglioncell:RGC)および視神経軸索の不可逆的な障害によって引き起こされる進行性の視野障害を特徴とする1).以前より眼圧下降以外の治療法の開発のひとつとして神経栄養因子による軸索再生治療が注目されているが,これまで十分な効果が得られずにいた.しかし近年,遺伝子治療が急速に進展し,なかでもアデノ随伴ウイルス(adeno-associatedvirus:AAV)を使用した遺伝子治療は眼科分野でも臨床応用が進められている.ここでは神経栄養因子の受容体の一つであるCTrkBの改変型遺伝子を組み込んだCAAVによる遺伝子治療研究2)を中心に,近年の緑内障に対する神経保護および再生治療研究に関して述べる.C●改変型TrkB受容体の作製およびシグナル伝達TrkBは神経栄養因子の一つである脳由来神経栄養因子(brain-derivedCneurotrophicfactor:BDNF)の受容体であり,神経の分化および成長に重要な役割を担っている.筆者らはCTrkBの細胞内領域のみを取り出し,ファルネシル化シグナル配列を付加することで常時BDNF-TrkBシグナルを活性化することが可能なCfarne-sylatedCintracellularTrkB(F-iTrkB)を作製した(図1).C●F-iTrkB遺伝子を用いた視神経軸索の再生効果マウスの急性の傷害モデルである視神経挫滅(opticCnervecrush:ONC)モデルを用いて,F-iTrkBをAAVに組み込んだCAAV-F-iTrkBによる治療効果を検証した.その結果,AAV-F-iTrkB投与群では視神経の軸索再生効果を認め,再生した軸索の一部は,視神経損傷部位から約C4Cmm離れた視交叉に到達した(図2).さらに,マウスの視神経軸索をより中枢に近い上丘(superiorcolliculus:SC)近傍で切断したモデルについても検証を行った.その結果,AAV-F-iTrkB投与群のCSCでは再生軸索が観察された(図3a)2).同時に視機性眼球反応(optokineticresponse:OKR)を測定したところ,AAV-Control投与群ではCOKRはほぼ消失していたが,AAV-F-iTrkB投与群では有意に回復していることがわかった(図3b)2).C●リパスジル・ブリモニジン配合点眼薬による神経保護効果リパスジルとブリモニジン配合点眼薬による神経保護効果を報告した3).リパスジルとブリモニジンの点眼はそれぞれCRGC死を抑制するが,両剤の配合点眼によりさらなる保護効果が認められた(図4)3).リパスジルはp38のリン酸化や炎症性サイトカインの発現を抑制し,ブリモニジンはCp38のリン酸化を抑制するとともに,塩基性線維芽細胞増殖因子の発現を増加させた.これらのことから,リパスジルとブリモニジンの配合点眼薬は,複数の経路を介して相乗的に神経保護効果を示す可能性が示唆された.C●毛様体神経栄養因子(CNTF)徐放性眼内インプラントによる緑内障治療神経栄養因子を用いた緑内障に対する実際の臨床応用として,毛様体神経栄養因子(ciliaryCneurotrophicCfac-tor:CNTF)を眼内で徐放するインプラント(NT-501インプラント)の臨床試験が進められている.スタンフォード大学を中心として昨年CphaseIの臨床試験の結果が発表された4).開放隅角緑内障患者C11名を対象に,片眼にCNT-501インプラントを投与し,もう一方の眼を対照眼とした結果,投与眼では網膜神経線維層厚が治療前よりも増加する傾向を認めた.現在も臨床試験は継続されている.(79)あたらしい眼科Vol.41,No.10,202412270910-1810/24/\100/頁/JCOPY図1FarnesylatedintracellularTrkB(F-iTrkB)の模式図TrkBの細胞内領域のみを取り出し,Farnesyl基を付与した活性型CTrkBを作製した.aInjuryaPBSRipasudilBrimonidineMix図2視神経挫滅モデルにおけるAAV-F-iTrkBの軸索再生効果視神経挫滅モデルマウスの眼球内にCAAV-F-iTrkBを投与すると,視交叉に至るほどの軸索再生効果を認めた.(文献C2より改変引用)b1,000**図3上丘切断モデルにおけるAAV-F-iTrkBの軸索再生効果a:AAV-ControlまたはCAAV-F-iTrkBを眼球内投与したマウスの上丘付近における再生軸索上丘の領域は白い点線で示す.RBPMS陽性細胞数(cell/mm2)黄色の点線部分の拡大図を下段に示す(スケールバーは上段C0300Cμm,下段C50Cμm).Cb:左は視機性眼球反応の測定の様子.右はCAAV-ControlまたはCAAV-F-iTrkBを投与した上丘切断モデルの検査結果.StudentのCt検定.*はCp<0.05で有意差があることを示す.(文献C2より改変引用)PBSRipasudilBrimonidineMix●おわりにTrkBの改変型であるCF-iTrkBを用いた遺伝子治療による視神経軸索再生研究と,リパスジル・ブリモニジン配合点眼薬による神経保護効果研究,およびCCNTFを徐放する眼内インプラントによる緑内障に対する臨床試験の現状について述べた.これらの治療法は作用機序が異なることから,今後は併用治療なども含め,新たな緑内障治療の進展が期待される.文献1)MalihiCM,CMouraCFilhoCER,CHodgeCDOCetal:Long-termCtrendsCinCglaucoma-relatedCblindnessCinCOlmstedCcounty,CMinnesota.OphthalmologyC121:134-141,C20142)NishijimaE,HondaS,KitamuraYetal:Visionprotection1228あたらしい眼科Vol.41,No.10,2024図4視神経挫滅モデルマウスに対するリパスジル,ブリモニジン,および合剤を用いた点眼治療における神経保護効果a:視神経損傷C14日後における各治療後の網膜のCRBPMS陽性細胞(網膜神経節細胞)の免疫染色像(スケールバーはC100μm).Cb:網膜全体における網膜神経節細胞の定量グラフ.Tukeyの多重比較検定.*p<0.05,**p<0.01で有意差があることを示す.(文献C3より改変引用)CandCrobustCaxonCregenerationCinCglaucomaCmodelsCbyCmembrane-associatedCTrkCreceptors.CMolCTherC31:810-824,C20233)NamekataCK,CNoroCT,CNishijimaCECetal:DrugCcombina-tionCofCtopicalCripasudilCandCbrimonidineCenhancesCneuro-protectioninamousemodelofopticnerveinjury.JCPhar-macolSciC154:326-333,C20244)GoldbergCJL,CBeykinCG,CSatter.eldCKRCetal:PhaseCICNT-501ciliaryneurotrophicfactorimplanttrialforprima-ryCopen-angleglaucoma:Safety,Cneuroprotection,CandCneuroenhancement.OphthalmolSciC3:100298,C2023(80)

屈折矯正手術セミナー:白内障手術後の調節微動

2024年10月31日 木曜日

●連載◯293監修=稗田牧神谷和孝293.白内障手術後の調節微動貝田智子宮田眼科病院白内障手術後に眼精疲労を自覚する患者を経験する.眼精疲労の原因となる調節けいれんは,調節微動が増加して発症する.白内障手術後のCIOL挿入眼には調節微動が存在し,調節負荷により調節微動の高周波成分出現頻度(HFC)が増加し,調節けいれんでみられる高値CHFCも存在する.とくに長眼軸眼に高値CHFCが多く,術後調節けいれんに注意が必要である.●はじめに臨床において,白内障手術後に原因不明の眼精疲労を訴える患者にしばしば出会う.眼精疲労の原因の一つに調節けいれんがある.従来,白内障手術後は水晶体の調節作用がなくなるため調節反応は起こらないと考えられてきた.一方,多くの眼内レンズ(intraocularlens:IOL)挿入患者で調節作用が観察され,調節けいれん様他覚屈折(D)瞳孔径(mm)通常のIOL挿入眼調節微動調節微動屈折刺激(D)屈折刺激(D)の臨床像を経験する.これまで,IOL挿入眼は調節負荷が加わるとCIOLの前方移動により見かけ上の調節変化が生じること1,2)が報告されている.筆者らは,IOL挿入眼には調節微動が存在し,調節負荷で調節微動の高周波成分(high-frequencyCcomponents:HFC)出現頻度が増加することを示した3).さらに調節けいれんでみられる高値CHFCが約C3割に存在し,長眼軸眼で多い傾向であった3).これらの知見を紹介するとともに,白内障術後眼精疲労への治療症例を提示する.C●調節微動とは調節微動とは,一定の距離にピントを合わせている状態でみられる屈折値の揺らぎのことで,調節負荷による持続的な調節輻湊の際に生じる屈折値の急速で小さな変動である.この調節微動は,0.6CHz以下の低周波成分(low-fre-quencycomponents:LFC)と,1.0.2.3CHzのCHFCの二つの帯域パターンから構成される.HFCは毛様体筋やCZinn小帯の動きに由来し,HFC出現頻度は調節負荷時や調節けいれんで増加し,眼精疲労の指標として用いられている.C●IOL挿入眼の調節微動検査調節微動は,アコモレフCSpeedy-i(ライト製作所)で測定した.アコモレフCSpeedy-iは,調節負荷時の他覚屈折値の微動を測定し,1.0.2.3CHz帯成分の出現頻度(77)C0910-1810/24/\100/頁/JCOPY図1IOL挿入眼の調節微動検査結果調節微動はアコモレフCSpeedy-i(ライト製作所)で測定.調節安静位(0D),調節負荷(.1D,.2D,.3D)における調節微動のC1.0.2.3CHz帯の積算ゲイン(dB)を計算し,HFC値として表示.HFC値のC65以上を高値とし,赤色で表示している.調節けいれんでは高値CHFCが増加する.を積算した値を,毛様体筋の震えを反映した数値としてHFC値としている.HFC値C65以上を高値として赤色で表示し,高値CHFCの増加は調節けいれんと診断される.IOL挿入眼における通常の結果と調節けいれんの結果を図1に示す.C●研究結果と考察単焦点CIOLを挿入したC713例C1,160眼を対象とした.白内障手術後C2カ月とC6カ月時に調節負荷をかけると,HFC値は有意に増加し,年齢,術後の期間にかかわらず,約C3割の患者で高値CHFCがみられた.高値CHFCの割合は術後C2カ月におけるC26Cmm以上の眼軸長眼で有意に高かった.また,IOL挿入眼の安静位(0D負荷時)平均CHFC値は,以前の研究における有水晶体眼のHFC値とほぼ同じであった4).過去に,単焦点CIOL挿入眼は近見視力に対する自覚的屈折値と他覚的屈折値に差があり,調節力はほぼゼロであるが,調節努力が存在することが報告されている1).つまり,白内障手術後であっても,毛様体が動いてCIOLの位置や形状を変化させ,焦点を合わせるための調節努あたらしい眼科Vol.41,No.10,20241225a点眼開始前b点眼開始1カ月後点眼中止1カ月後d点眼再開始1カ月後図2提示症例の調節微動検査の結果60歳,男性(右眼C2焦点IOL,左眼有水晶体眼).0.05%シクロペントラート塩酸塩点眼前,HFCは高値を示し眼精疲労を自覚していた(Ca).点眼開始C1カ月後,HFCは低下し症状が改善したため点眼を中止した(Cb).点眼中止C1カ月後,HFCが高値を示し眼精疲労が再発したため(Cc)点眼を再開したところ,HFCは低下し症状は改善した(Cd).力が行われていると考えられる.筆者らの検討も,この調節努力が調節けいれんを生み,眼精疲労をもたらす可能性を裏付ける結果と考える.C●白内障手術後の眼精疲労への治療有水晶体眼では,調節けいれんを原因とした眼精疲労にC0.05%シクロペントラート塩酸塩点眼が有効である.筆者らはCIOL挿入眼にも調節けいれんが発症すると考え,白内障手術後,原因不明の眼精疲労があり高値HFCを認めた患者にC0.05%シクロペントラート塩酸塩点眼治療を行い,症状の改善を得たので紹介する5).患者はC60歳,男性.右眼C2焦点CIOL挿入眼,左眼有水晶体眼.術後視力:右眼C1.2(1.5C×cyl+0.75DAx110°),左眼0.9(1.2C×sph+0.5D×cyl.1.5DCAx90°)現病歴:右眼の白内障手術後から眼精疲労を自覚,高値CHFCを認めた.術後C8カ月目よりC0.05%シクロペントラート塩酸塩の就寝前C1回点眼を開始した.点眼開始後,HFCは低下し症状が改善したため点眼を中止した.中止後C1カ月目,HFCは高値を示し眼精疲労が再発したため点眼を再開したところ,HFCは低下し症状は改善したが,点眼は本人の希望により継続とした(図2).●おわりに臨床において白内障手術後も調節けいれんが発症する可能性があるため,原因不明の眼精疲労を訴えるCIOL挿入眼患者には調節微動の検査が有効である.とくに強度近視患者では術後の調節けいれんに注意することが重要である.文献1)Win-HallCDM,CGlasserA:ObjectiveCaccommodationCmea-surementsCinCpseudophakicCsubjectsCusingCanCautorefrac-torandanaberrometer.JCataractRefractSurgC35:282-290,C20092)Lesiewska-JunkCH,CKa.uznyJ:IntraocularClensCmove-mentandaccommodationineyesofyoungpatients.JCat-aractRefractSurgC26:562-565,C20003)KaidaT,OnoT,TokunagaTetal:Prevalenceofaccom-modativemicro.uctuationsineyesaftercataractsurgery.JClinMedC12:5135,C20234)梶田雅義,伊藤由美子,佐藤浩之:調節微動による調節安静位の検出.日眼会誌101:413-416,C19975)桑原直杜,貝田智子,徳永忠俊ほか:白内障手術後の眼精疲労に対するC0.05%シクロペントラート塩酸塩点眼の治療効果.臨眼77:1203-1208,C20231226あたらしい眼科Vol.41,No.10,2024(78)

眼内レンズセミナー:Posterior optic captureによる偏位IOLの再固定術

2024年10月31日 木曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋449.Posterioropticcaptureによる浅野泰彦昭和大学医学部眼科学講座偏位IOLの再固定術3ピース眼内レンズ(IOL)単独偏位例は,水晶体.が残存していれば偏位したCIOLを.外固定しなおすことで再固定できる場合がある.偏位CIOLの支持部を.外固定し,さらに硝子体カッターで後.を開窓して光学部をキャプチャーすることで,より強固な再固定が可能となる.●はじめに近年,脱臼・亜脱臼といった眼内レンズ(intraocularlens:IOL)偏位例に遭遇する機会が増加している.IOL偏位例は.・IOL複合体が一体化して偏位する例とIOLが単独で偏位する例に分類される.単独偏位例では,偏位したCIOLがC3ピースレンズであれば,IOLを摘出することなく偏位CIOLを縫着・強膜内固定することにより確実な再固定が得られるが,その手術難度は高い.水晶体.が残存していれば支持部を.外固定することによって再固定できることがあるが,支持部間全長と毛様溝間距離の不一致やCZinn小帯断裂が原因で再偏位をきたす場合もある.GimbelらはCopticCcaptureによるCIOL固定法を報告した1).これは小児白内障手術における固定法として報告されたが,IOL偏位例に対しても応用可能である.本稿では偏位したC3ピースCIOLの支持部を.外固定し,さらに後.を開窓して光学部をキャプチャーして固定するCposteriorCopticCcapture(POC)による再固定術を紹介する.C●3ピースIOL単独偏位例の分類3ピースCIOLが単独で偏位する原因は,.外固定されていたCIOLがCZinn小帯断裂部にずり落ちて偏位する場合(以下,.外偏位例.図1a)と,片側支持部が.内固定,片側.外固定であったことにより.収縮に伴って偏位する場合(以下,.内・.外偏位例.図1b)がある.C●POCによる偏位IOLの再固定法.外偏位例においては,まずCIOLを拾い上げ,再度.外固定とする.この際,Zinn小帯断裂部と支持部固定部位が重ならないようにする..内・.外偏位例の場合は眼粘弾剤で.とCIOLを分離して.内の片側支持部をゆっくり抜き出し,両方の支持部を.外固定とする.前房メインテナーを設置し,フックで光学部を持ち上(75)げ,光学部と後.の間に角膜サイドポートから挿入した硝子体カッターを潜り込ませる.硝子体カッターにて後.を切開し,前部硝子体切除を行いながら少しずつ切開窓を拡大し,直径C4.5Cmmの後.切開窓を作製する.眼粘弾剤を前房内に満たし,フックを用いて光学部を後.切開窓に嵌め込む.図2に.内・.外偏位例に対する連続手術写真を示す.この方法より偏位したCIOLの支持部を.外固定し,さらに光学部を後.切開窓にキャプチャーして固定することができる(図3).C●POCの利点POCの利点は,①偏位したCIOL支持部を.外固定し,さらに光学部を後.切開窓で固定するため強固な固定となること,②必要な切開創がC3カ所の角膜サイドポートのみであり低侵襲であること,③硝子体カッター使用により硝子体脱出を防ぎつつ,適切な大きさの後.切開窓作製が可能であることである.さらに後発白内障切開による視力改善も期待できる.C●POCの適応と限界POCの適応は,①C3ピースCIOL単独偏位例であること,②光学部をキャプチャーできる範囲の水晶体.が残存していること,③CZinn小帯断裂範囲がC120°以下であることである.シングルピースアクリルレンズ偏位例は,.外固定によりCpigmentdispersionsyndromeによる虹彩炎や眼圧上昇を誘発するため禁忌である.また,広範囲のCZinn小帯断裂例は再偏位リスクがあるため適応外と考えるべきである.C●おわりにPOCによる偏位CIOL再固定術は,適応例は限定されるものの低侵襲かつ簡便な手技で施行可能であり有用性は高い.手術選択肢の一つとして記憶に留めていただければ幸いである.あたらしい眼科Vol.41,No.10,2024C12230910-1810/24/\100/頁/JCOPY図13ピースIOL単独偏位例の分類a:.外固定されていたCIOLがZinn小帯断裂部()にずり落ちて偏位した症例(.外偏位例).Cb:片側支持部が.内固定,片側が.外固定であったことにより,.収縮に伴って偏位した症例(.内・.外偏位例).図2.内・.外偏位例に対するPOCの手順(図1bと同一症例)a:眼粘弾剤で.とCIOLを分離する.Cb:.内の支持部をフックで抜き出す.Cc:両方の支持部を.外固定とする.Cd:角膜サイドポートから挿入した硝子体カッターで直径C4.5mmの後.切開窓を作製する.Ce:フックで光学部を押し込んで後.切開窓に嵌め込む.Cf:支持部は.外固定,光学部は後.にキャプチャーして固定した.図3POCによる再固定術後2年(図1b,図2と同一症例)a:前眼部写真.Cb:前眼部OCT.光学部の後.キャプチャーは維持され,IOLは正位を保っている.文献riccataractsurgery.JCataractRefractSurgC20:658-664,1)GimbelCHV,CDeBro.BM:PosteriorCcapsulorhexisCwithC1994opticcapture:Maintainingaclearvisualaxisafterpediat-

コンタクトレンズセミナー:英国コンタクトレンズ協会のエビデンスに基づくレポートを紐解く オルソケラトロジー(3)

2024年10月31日 木曜日

■オフテクス提供■コンタクトレンズセミナー英国コンタクトレンズ協会のエビデンスに基づくレポートを紐解く10.オルソケラトロジー(3)土至田宏順天堂大学医学部附属静岡病院眼科松澤亜紀子聖マリアンナ医科大学,川崎市立多摩病院眼科英国コンタクトレンズ協会の“ContactCLensCEvidence-BasedCAcademicReports(CLEAR)”の第C6章はオルソケラトロジーについてである.今回はその第C3回目で,近視コントロール関連が中心である.近視の定義,進行のメカニズム,管理,および治療の有効性に関する研究結果などがとりあげられている.近視と近視進行本章1)ではオルソケラトロジー(orthokeratology)はortho-kと略されており,本稿でも踏襲する.C1.近視の程度と評価法近視の定義は,一般的にも国際的にもC.0.50D以下としている報告が多い.近視の進行は,近視の程度や年齢,家族歴,民族的背景などの要因によって影響を受ける.とくにアジア系の子どもにおいては,若年層での近視進行が早く,6.8歳の中国系の子どもでは,年間C1D以上の進行が一般的とされる.①近視進行の評価法:近視進行の程度は,屈折値(D)や眼軸長(mm)で評価される.ortho-K装用による近視の真の進行を評価するためには,装用を中断し角膜が治療前の状態に戻るのを待つ必要がある.②近視抑制効果の定量化:近視抑制の効果は,治療群と対照群の平均変化量の差として報告されることが多いが,眼軸伸長や近視度数の絶対値も重要である.とくにortho-K治療の初期段階では進行の抑制が顕著にみられることが多いが,治療が長期化するとその効果が減少する傾向がある.C2.近視抑制の管理近年,近視の子どもをどのように管理し,治療を選択するかが重要視されている.ortho-Kは適切なガイドラインに基づいて実施されるべきであり,標準的な治療アプローチから個別化された治療へと移行することが推奨される.具体的には,年齢,屈折状態,近視の進行歴,親の近視の家族歴,個々のニーズやライフスタイルなどを考慮して,治療を個別化することが重要とされる.C①ortho-Kの開始:近視の進行を抑制するための段階的な戦略として,まずはC10歳未満の子どもには環境要因をコントロールとして,屋外活動を増やすことが推奨されている.ハイリスクの子ども,とくに病的な近視(.5.00D以上または眼軸長C26Cmm以上)の場合は,臨(73)C0910-1810/24/\100/頁/JCOPY床的介入が推奨されている.C②ortho-Kの中止:治療中に近視進行抑制効果が不十分な場合や,眼科的な問題が発生した場合には,他の治療法への切り替えを検討する必要がある.とくにortho-Kの治療中止後にも近視の進行が再発する可能性があるため,治療終了後も継続的な監視が推奨される.C3.近視進行抑制効果の有効性の評価ortho-Kによる近視進行抑制効果はC2005年にCLongi-tudinalCOrthokeratologyCResearchCinCChildren(LORIC)2)で初めて報告された.その後,RetardationCofCMyopiaCinOrthokeratology(ROMIO)スタディ3)や他の臨床試験でも同様の結果が報告されている.ortho-Kを装用した子どもは,単視眼鏡を使用した対照群と比較して眼軸の伸長が有意に抑制されたとされる.トーリックCortho-Kは,角膜乱視が中程度から高度の子どもにおいて近視進行抑制効果が報告されている.それによれば,単視眼鏡を使用した対照群と比較して,眼軸の伸長がC52%抑制されたとある.C4.近視抑制に関連する要因①開始年齢:ortho-Kによる効果は,治療を開始する年齢と強く関連している.とくに若いうちに治療開始することで,眼軸の伸長がより抑制されることが示されている.②屈折値:もともと近視の程度が強い子どもでは,ortho-K治療中の眼軸伸長が少ないことが報告されている.しかし一部の研究では,基礎屈折度と眼軸伸長の間に統計的に有意な関連がないとする報告もある.③角膜の屈折力とその変化:ortho-Kによる角膜形状の変化は,近視進行抑制の有効性に影響を与える可能性がある.とくに角膜の中間周辺部の屈折力変化が大きい場合は,眼軸の伸長が遅くなることが報告されている.あたらしい眼科Vol.41,No.10,2024C1221オルソケラトロジーによる近視進行抑制のメカニズムortho-kによる近視抑制効果の正確なメカニズムは完全には解明されていないが,本章では考えられる光学的な影響を説明している.①周辺部デフォーカス:視覚体験は眼の成長に影響を与えることが知られており,ortho-Kが引き起こす相対的な周辺部遠視性デフォーカスが,近視進行抑制効果に寄与していると考えられている.複数の研究において,中心部からC35°の範囲で相対的な周辺部遠視デフォーカスが報告されている.②高次収差:ortho-K治療後,角膜形状が変化することで,高次収差が増加する.とくに,主要な球面収差やコマ収差の増加が観察され,これが近視進行の抑制に関連している可能性がある.③調節:近業作業と調節が近視の発症と関連しているため,ortho-Kが調節機能に与える影響も調査されている.ortho-K装用により調節の遅延が減少し,これが近視抑制効果に寄与している可能性があるとする報告がある.④瞳孔径:瞳孔径は周辺部屈折,高次収差,調節反応に影響を与える可能性があるが,暗所での瞳孔径拡大がortho-K治療中の眼軸伸長の抑制に関連していることが示唆されている.⑤治療ゾーンサイズ:ortho-Kレンズの治療ゾーンサイズは治療効果に影響を与える可能性がある.たとえば治療ゾーンサイズがより小さい場合は,相対的な周辺部角膜急峻化と正の球面収差を引き起こし,近視進行の抑制に寄与する可能性がある.⑥ジェッセンファクター:ジェッセンファクター4)または圧縮係数とは,望ましい視力を維持するために目標矯正度数に追加される屈折バッファーで,C.0.75Dであることが多い.ジェッセンファクターの増加がCortho-K治療中の眼軸伸長を抑制する効果に関連していることが報告されている.⑦脈絡膜:脈絡膜は,眼球の成長に関与する信号の伝達に重要な役割を果たしている.ortho-K治療後に脈絡膜の厚みが増加することが観察されており,この変化が眼軸伸長の抑制と関連している可能性がある.オルソケラトロジーの未来ortho-kの技術は近年大きく進化し,将来的にはさらに発展が期待されており,その展望と課題について議論されている.C1.未来のortho-KレンズデザインOrtho-Kレンズデザインの目標は近視進行抑制効果を高めることであり,とくに軽度近視や角膜乱視をもつ患者への治療効果を向上させることが求められる.また,各患者の瞳孔径や角膜プロファイルに基づいたカスタマイズされたレンズデザインが,より一般的になることが予想されている.C2.組み合わせ治療最近の研究では,ortho-KとC0.01%アトロピンとを組み合わせた治療が近視進行抑制に有効であることが示されている.組み合わせ治療により,単独治療よりも効果的に眼軸伸長が抑制されることが報告されているが,費用やリスクを考慮する必要がある.まとめortho-kは近視の一時的な矯正や進行抑制に効果的な方法であるが,その効果を最大限に引き出すためには適切な管理と個別化が必要である.今後の技術の進歩と研究により,ortho-Kはさらに多くの患者に恩恵をもたらす可能性がある.文献1)VincentCSJ,CChoCP,CChanCKYCetal:CLEARC-Orthokera-tology.ContLensAnteriorEye44:240-269,C20212)ChoCP,CCheungCSW,CEdwardsMH:TheClongitudinalCorthokeratologyCresearchCinchildren(LORIC)inCHongKong:aCpilotCstudyConCrefractiveCchangesCandCmyopicCcontrol.CurrEyeResC30:71-80,C20053)ChoCP,CCheungSW:RetardationCofCmyopiaCinCorthokera-tology(ROMIO)study:a2-yearrandomizedclinicaltrial.CInvestOphthalmolVisSci53:7077-7085,C20124)ChanCB,CChoCP,CMountfordJ:TheCvalidityCofCtheCJessenCformulaCinovernightCorthokeratology:aCretrospectiveCstudy.OphthalmicPhysiolOptC28:265-268,C2008