特集●デジタル眼科あたらしい眼科30(9):1239.1242,2013特集●デジタル眼科あたらしい眼科30(9):1239.1242,2013文献検索:“Papers”を用いた文献管理と論文執筆への応用ManagingBibliographywith‘Papers’Application吉村武*はじめに過去の文献の検索は,Medlineで雑誌・年代・ページ数を検索し,図書館へ行き冊子をめくり,コピーをしてくるというやり方が一般的であった.現在はPubmed(www.pubmed.gov)でキーワード検索を行い,フルテキストのPDF(PortableDocumentFormat)ファイルをダウンロードできるようになった.所属の大学や施設の図書館で契約している雑誌がある場合,フルテキストは大学のネットワーク経由で取り込むことができるが,出版から一定期間経過した論文は無料で配布されていることも多い.また,公共科学図書館(PublicLibraryofScience:PLOS)のように,オープンアクセス(無料)の論文も増えてきている.本稿では,筆者が現在行っている文献検索の方法・論文執筆時の参考文献の挿入などについて概説する.I論文の重要度による文献検索Pubmedでは年代順に検索することがほとんどであるが,重要度が高い,つまり引用回数の多い順番で検索することも有用である.GoogleScholar(www.scholar.google.com)を利用すると,「引用の順番」に論文を並べることができる.図1aに示すとおり,Pubmedを経由せずPDFをダウンロードすることも可能である.図1aの“cytedby**”をクリックし,引用件数を用いる「孫引き」をしていくことで,現在の自分のテーマのなかで重要とされる文献(価値がある文献)が明らかとなってくることが多い.II文献管理に関する考え方の変遷以上のようにして論文をPDF媒体として集められるようになり,フォルダにまとめて管理するようになった.「研究テーマ別」・「著者」・「年代」などの階層ファイルを作れるかもしれない.しかし,いざ使う場合にどこのフォルダにしまったのかわからなくなり,印刷して付箋を付けてリングファイルで管理したほうが良いかもという事態になってしまう.これを音楽に置き換えてみたい.昔は曲一つひとつをCDからMD(さらに昔はカセットテープ)に録音し,ケースに曲名などを綴り持ち出していた.いまでは,コンピュータ上でiTunes(Apple社)というアプリケーションを使い,CDやインターネット経由で購入する音楽ファイルはmp3の形式でハードディスク上に保存,聴きたい曲をクリックすると再生し音楽を聴くことが主流となっている(曲ごとの情報はインターネット経由で取得される).集めた音楽ライブラリーは,iPodに入れてかなり多くの曲を外に持ち出せる.iPhoneはiPodと携帯電話が融合した器械であり,世界中で大きなシェアを得ている.このような技術革新で音楽の聴き方は短期間で根本から変革した.また,最近は音楽ライブラリーそのものをクラウド注1上に保存し,iPhoneの3g電話回線経由でも聴きたい曲を再生できるようになった.*TakeruYoshimura:九州大学大学院医学研究院眼科学分野〔別刷請求先〕吉村武:〒812-8582福岡市東区馬出3-1-1九州大学大学院医学研究院眼科学分野0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(39)1239a.b.‘引用回数’の順番図1GoogleScholarの外観(説明は本文参照)文献管理も,ちょうど「曲」を「文献」に置き換えて考えられるような状況になっている.III文献管理ソフトPapersの紹介膨大なPDFを管理する場合,活躍するのが「Papers」というアプリケーションである(www.papersapp.com).1995年にオランダのアムステルダム大学の同級生として出会ったAlexanderGriekspoor氏とTomGroothuis氏は,2000年からオランダがん研究所(NetherlandsCancerInstitute:NCI)で大学院生活を始めた.研究の傍ら,検索で増え続けるPDFをなんとかできないものかと2人はソフトウェアの開発をはじめた.「Mek&Tosj」名義で作り上げたPapersという無料アプリケーションは瞬く間に研究者たちの間で話題となり,2004年の米国Apple社からの受賞をはじめ多方面から高評価を受けた.2006年の学位取得後にAlexander氏1240あたらしい眼科Vol.30,No.9,2013が英国のケンブリッジ大学で研究生活を続ける一方,Tom氏は「Mekentosj」法人を設立しさらにPapersを発展させた.2010年には米国Apple社のiOS部門に組み込まれ,iPhoneやiPad向けのソフトウェアも開発されることとなり,2012年にはドイツSpringerScience+BusinessMedia社の一部門となっている.開発時よりMacintoshRのみの対応であったが,昨年よりWindowsROS上での使用も可能となっている.筆者は大学院生時代の2003年頃から同ソフトウェアの使用を始めたが,ソフトウェアの不具合などは‘Papersforum’内でディスカッションされ,個人的な質問にもすぐにメールで答えてくれていた.事業拡大に伴い,最初は無料であったソフトが今は79ドルとなってしまったが,多くの機能も追加され使い勝手の良いソフトである.また,学生の先生方は,自分の顔と学生証を一緒に撮った写真を送ると40%の割引が受けられることも追記しておきたい.(40)d.d.a.c.b.図2Papersの外観(説明は本文参照)IVPapersの使い方図2にあげるように,外観は音楽ソフトであるiTunesと非常に類似したものとなっている.以下に筆者が日常的に行っている方法を簡潔に記述する.①キーワード検索,PDF取得②Papers内へ保存③PDF情報の取得筆者はPubmedもしくはGoogle,GoogleScholar,医学中央雑誌経由でPDFを一旦デスクトップ上に保存したうえで,Papersソフトウェア上にドラッグ&ドロップでコピーして論文情報を取得するやり方をとっている.Papersもソフト内でウェブブラウザによる検索およびPDF取得ができるので,どちらでも便利である.①の段階でのPDFファイル名はまちまちであるが,②で雑誌名・年代・筆頭著者のフォルダに分けられ一つの大きな“Papers”フォルダにまとめられる(デスクトップ上のPDFは削除する).そして,③Papers内で論文を選択し,“Match”(control+command+M)を行う.これによりアブストラクトを含む論文詳細情報が取得され,以後Papers内の検索が可能となる.また,それぞれ論文のURLに再度アクセスするのも容易である.筆者は“Papers”ライブラリフォルダをクラウドサービスのDropbox注2上に保存し,自宅および医局のコンピュータと同期させている.以上のように文献を蓄積したのち,特に筆者が便利と感じる点を以下にあげる.①全文検索(図2a):Papers保存文献のあらゆるテキストから,指定した単語・文節を拾い上げてくれる.論文執筆時に,「英語での言い回し」などを探すときにも便利である.②スマートコレクション(図2b):アブストラクト・本文・著者・年代など,指定した条件を含む文献を自動的にフォルダとして管理できる.③RecentlyRead,RecentImportのタブ:最近読ん(41)あたらしい眼科Vol.30,No.9,20131241だ(取り込んだ)論文,つまりまだ印象に残っていとRobertMcGrath氏により設立された.る論文を順番に並べてくれる.両者ともPapersと同じように文献の管理,キーワーViPhone,iPadでのPapersの利用ドサーチができるが,一番の違いはアルゴリズムに基づき,「この文献も読んでみませんか」と推薦論文が出て前述のとおりiOS用にもPapersが開発され,WiFiくることである.(無線LAN)経由でPapersライブラリを共有できるよ筆者はまだ使用経験がないが,いずれもシンプルな外うになった.iPhoneはPDFを読むのに適したサイズで観と操作性を特徴としており,今後この分野でシェアをはないが,iPadは解像度が良くなり十分使用に耐える.拡大する可能性がある.しかし,操作性にはまだ改良の余地があるように思える.おわりにVI参考文献の編集・挿入LPレコードを聴かせてもらったとき,針が降りたあとの間合にどんな格好良い曲が始まるんだろうという期論文執筆の際,参考文献の作成にもPapersは有用で待感があった.ノイズも即興演奏の一部のように聴こえある.Word(またはPages注3)で文章作成中,以下の操たりもした.大事なCDから何度も聴いた音楽は,フレ作を行い文献を挿入する.ーズを現在でも思い出せる.音楽の印象は,周囲の状況①Controlキーをダブルクリックで検索ウィンドウがとともに残るものかもしれない.その一方,過去の音楽立ちあがる(図2c).がアクセスできる範囲に大量にある現在,自分の音楽を②キーワードを入れてPapersライブラリ内に保存し広げるのも容易となった.てある目的の参考文献を検索(図2d).論文も,じっくりと読むにはプリントもしくは雑誌で③文献をダブルクリックした後“insertcitation”を読むほうが印象に残ると思う.従来通り,アンダーライダブルクリックすることで,Word(またはPages)ンを引いたり書き込んだり,また人と議論しながら読んへ挿入される.だ論文は,いまでも印象に残る図や文節も多くある.引用文献を挿入し文章を完成させた後,巻末に参考文本稿のように‘Papers’を用いて文献を管理する現献リストの形で表示するには以下の操作を行う.在,大量の論文から自分の情報を取捨選択する能力がつ①Controlキーをダブルクリック.いていかないことも多くあるが,少なくとも多量の文献②“Selectstyle”で参考文献の形式を選択する.を集め管理し,論文の参考文献リストを作ることができ③“Formatmanuscript”をダブルクリック.るのは有益と感じている.紙面の都合上,詳細なアプリ以上により,簡単に参考文献リストが作成できる.ケーションの操作については別稿にゆずるが,先生方にVII類似のソフトウェアとって便利な文献管理をするきっかけとなれば幸いである.以下に類似のソフトウェアを紹介する.■用語解説■1.Mendeley(http://www.mendeley.com)注1クラウド:コンピュータのデータの格納を,ネット2007年英国ロンドンでLast.fm注4およびワーナーミュージックの元経営陣により設立,多くの研究者を集ワーク経由のサービスとして利用する形態のこと.注2DropBox:www.dropbox.com,オンラインストレージサービス.め開発された.現在Elsevier社に買収されている.注3Pages:Apple社提供の文章作成ソフト.注4Last.fm:2002年イギリスで設立されたオンライン2.ReadCube(http://www.readcube.com)音楽サービス.2007年米国ハーバード大学の学生SinisaHrvatin氏1242あたらしい眼科Vol.30,No.9,2013(42)