あたらしい眼科Vol.27,No.7,20109490910-1810/10/\100/頁/JCOPYファンクショナル・アプローチという手法が生まれたのは,1947年,今から60年以上も前のGE社(ゼネラル・エレクトリック社)でのことです.これほどの歴史を持っていながら,昨今のビジネス界ではほとんど知られていません.なぜ意外と知られていないかというと,それには理由があります.活用の場面が技術の分野中心だったからです.(本書より)しかし,世の中のあらゆる製品,サービス,ビジネス,組織などには必ずファンクション(機能)があります.必ずです.このファンクションを見抜く力が身につけば,状況を正しく分析できます.分析力があれば,それまでの常識を逆転させることができるのです.必要だと思っていたものが,本当は不必要であることに気がつくでしょう.あなたは,本当に必要なものだけを追いかけるべきです.(本書より)著者は,公共事業の設計に携わってきた建設コンサルタントです.必要なものを作り,必要でないものは作らない.ただひたすら,そのことにこだわってきた方です.「私が10年の間に扱った公共事業の総額は1兆円にのぼり,縮減提案したコスト縮減総額は,実に2000億円を超えました」(本書より)最近話題の「仕分け」とは違うのでしょうが,私たちの税金のムダを10年前からセーブしてきた方です.彼は,どうやって日本の公共事業に大きな影響を与えることができたのか?それは,ファンクショナル・アップローチの原理を理解したからである,ファンクショナル・アプローチの原理を使えば,問題を見る視点が変わる,問題に対する意識が変わりうる,と著者は言います.本書によれば,問題解決には5つのフェーズがあります.フェーズ1問題の認識(Identification)フェーズ2改善点の特定(Specification)フェーズ3解決手段の選択(Selection)フェーズ4解決手段の適用(Utilization)フェーズ5改善効果の評価(Evaluation)(本書より)問題解決のカギは「問題の認識」と「改善の特定」にあり,そもそも「問題の認識」とは,「問題があることに気づくこと」です.問題が問題なのは,何が問題であるかに気がついていないことにあります.パターン化した日常のなかでは,わざわざ,今どんな問題があるかを探すこともありません.したがって,今起こっている問題,または,近い将来に起こるであろう問題に目を向けることさえないのです.変化を感知しなければ,当然解決策もなければ,改善の可能性もないものです.さらに,問題解決には,3つの関所があります.認識の関所文化の関所感情の関所つまり,先入観であり,固定概念であるわけです.これらの関所こそが,問題を覆い隠す,問題なのです.問題を認識するには,次の3種類の方法があります.①短期的に現れる変化から問題を知る②わずかに現れている兆候から問題を見つける③事前に問題の発生を察する(本書より)(89)■7月の推薦図書■ワンランク上の問題解決の技術(実践編)横田尚哉著(ディスカヴァー)シリーズ─93◆伊藤守株式会社コーチ・トゥエンティワン950あたらしい眼科Vol.27,No.7,2010多くの場合,問題解決の手だてを見つけようと必死になりますが,まずは「ファンクション」というスタンスに立つ.ファンクション(機能,目的,効用,意図)が何かに立ち返ることです.形にこだわるのではなく,本来のファンクションがなんであったかに戻って観察してみること.「何故こうなってしまったのか」「どうしたらいいのだろう」「誰か知っている人はいないだろうか」これらの問いかけはあまり機能しません.たとえ改善点がわかっていても,問題は解決しません.解決手段がいくらあっても,問題は解決できません.「何を」「どのように」改善すればいいのか.この両方がそろって,はじめて問題は解決されるのです.(本書より)もう少し具体的に言えば,ファンクションは「それは○○を○○するものである」と名詞と他動詞で表現することで,使えるものになります.たとえば,眼鏡の度が合わなくなってきたときに,どこで眼鏡を買うか,視力検査をするか,といった質問が取り込まれます.しかし,目的は,視力を補うことであって,眼鏡を買うことではないのです.視力さえ補うことができれば,眼鏡である必要はありません.コンタクトでも,レーシックでもいいのです.ですから,最初に戻って,「眼鏡は視力を補うものである」「私の欲しいものは,視力を補うことである」そうであれば,眼鏡に対するこだわりから解放され,本来の目的に立ち返ることができます.問題解決の一つは,本来の目的がなんであるかを見つけることです.また,「努力のわりに効果があらわれない」と感じているときには,「他に,別のやり方があるかもしれない」「そもそも,どんな意味があったんだろう」「自分は,何を求められているんだろうか?」など,視点を変えることができれば,努力そのものも改善できます.また解決手段はまだまだ残されています.本書を読み進むと,考えかたやアプローチの方法は,コーチングと重なる部分が多くあります.それは「質問」や「問いの共有」によって視点を変え,そこに問題解決の可能性を見いだそうとする試みです.特に自分自身に対する質問にポイントがあります.「それは何のために」「それは誰のために」.もちろん相手にも向けられた質問ではありますが,これらは,日常的に自分自身に対してする質問として有効だと思います.コーチングにおいては,自分に対する質問として,以下を紹介しています.学ぶ人の質問□なにをしたら,うまくいく?□なにに責任をもって考えればいい?□事実はどういうこと?□全体の見通しを考えたらどうなる?□どんな選択ができる?□この件で役立つことはなに?□この件から私はなにを学べるだろうか?□あの人はなにを考え,なにを感じ,なにを必要としているのかな?□今できることはなに?批判する人の質問□なんでこんなひどいことが起きたのだろう?□だれのせい?□どうすれば自分がただしいと証明できるだろう?□他者から自分の縄張りを握れるのか?□なんで負けてしまうのか?□なんで私がひどい目に遭うの?□どうしてあの人はいつもくよくよするんだろう?すべては「前向き」質問でうまくいくマリリーG.アダムス著中西真雄美訳ディスカヴァー出版自分自身への質問は,他の人や組織の問題発見や問題解決のための一つの視点になると思います.著者の横田さんは「情熱大陸」でも紹介され,注目を浴びている方です.たまたま弊社の講演会でも話していただきました.横田さんのお話は,理論的であるだけでなく,ファンクショナル・アプローチを用いて,もっといい国にしたい,もっと人や組織をいいものにしたい,という情熱に裏付けられたものでした.講演の最後に,「私のやりたいことは,30年後の子供たちに輝ける未来を与えること,ファンクショナル・アプローチはそのための手段であり,それが目的な訳ではない」と言われました.事業仕分けの現場で,横田さんに「仕分け」をお願いしたいと思うのでした.(90)