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涙道手術・再閉塞をへらす術中・術後の工夫

2021年1月31日 日曜日

涙道手術・再閉塞をへらす術中・術後の工夫DevisingLacrimalSurgeriestoDecreaseRecurrenceoftheObstruction三村真士*はじめに涙道手術は,閉塞した涙道を開放して,正常な涙液排泄を促すことで健常な眼表面を保ち,視機能の発揮に貢献している.涙道手術には大きく分けて,閉塞した涙道を再建するCre-canalizationと,閉塞部を回避して新たな道を作製するCbypasssurgeryの二通りがある.Re-canalizationはCLacrifast(ロート製薬),PFカテーテル(ニデック),FCIヌンチャク(FCI)といった,日本で開発されたCbi-canalicularチューブを一時的に留置して閉塞部を開放する方法である.Bypasssurgeryは涙道の一部を外科的に切除して,バイパスを作製することで新涙道を形成する方法がもっとも一般的に行われている.いずれの涙道手術も,ハード面もソフト面も近年非常に洗練され,手術成功率の向上と低侵襲化が達成されてきており,社会への貢献度を大きく伸ばすことができているが,さらに洗練度を高める努力を怠ることはできない.本稿では,現在まで蓄積されてきたエビデンスに基づき,深く考慮した涙道手術の洗練化について紹介する.CI手術適応涙道手術は基本的に流涙症を改善するために行うが,涙液の排泄は涙道のみで行われているわけではない.涙道以外に,涙液の蒸発や涙道粘膜での涙液吸収も涙液の排泄に大いに関与する.つまり,分泌された涙液を処理する能力が上記排泄因子の総合力で賄えればそれで問題ない.したがって,涙道閉塞の有無のみならず,ドライアイや結膜・涙道粘膜の炎症(吸収が落ちる)などを同時に評価する必要があるし,逆に涙道閉塞がまったくなくても,いわゆる機能性流涙症では,涙道手術が適応となることもある.たとえば前者では,鼻涙管閉塞を伴うSjogren症候群の場合,涙道を開放することは逆に涙液減少性ドライアイを悪化させることになる可能性が高く,涙.炎を涙道洗浄や点眼で予防することで,保存的に症状の改善を図ることも一つの選択肢として考えられる.つまり,その流涙症を解決するうえで,涙道手術がどのように効果を発揮するかを,涙液の循環を総合的に評価して,手術適応を決める必要があることを念頭に入れなければならない(図1).CIIRe.canalizationsurgeryわが国においては,2000年代初頭に涙道内視鏡が登場したことより,術中に涙管チューブ誤挿入の有無を客観的に捕らえられるようになったため,現在ではとくに後天性原発性涙道閉塞においては,かぎりなくC100%に近い確率で涙管チューブを誤道なく挿入することができるようになっている.これを前提に以下の話を進めるが,このような洗練されたCre-canalizationをベースに論じられた論文はわが国以外では少なく,涙管ブジーに細いシリコーン製チューブが接続されたCCrawfordチューブといった古典的な涙管チューブを盲目的に挿入するような,誤挿入の可能性を排除できないCre-canalization*MasashiMimura:大阪医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕三村真士:〒569-8686大阪府高槻市大学町C2-7大阪医科大学眼科学教室C0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(53)C53図2インジゴカルミンを使用した涙道粘膜の生体染色(涙道内視鏡写真)閉塞した涙.鼻涙管移行部がインジゴカルミンにより青く染色されている.図1涙道閉塞症とドライアイの合併a:術前.非常に軽度のドライアイとCtearmeniscusheight(TMH)の上昇を認める.Cb:術後.Re-canalizationCsur-geryによりCTMHは改善しているが,角膜上皮障害が悪化している.図3結膜鼻腔吻合術により留置したJonesチューブ(鼻内視鏡写真)ガラス製のCJonesチューブ(*)が右側中鼻道に留置されている.図4非常に厚い上顎骨前頭突起を有する症例に対する涙.鼻腔吻合術鼻内法(鼻内視鏡写真)a:3Cmmの平鑿を使用して,上顎骨前頭突起で構成された厚い左側の前涙.稜を切除している.Cb:切除後.インジゴカルミンで青染された涙.()内に挿入された涙道内視鏡の光()が透見できる.切除部位の前頭突起は約C5Cmmの厚さ()であった.図5涙管チューブ留置後のバイオフィルムと肉芽形成(涙道内視鏡写真)涙管チューブ挿入術後C1カ月間,涙道洗浄をしなかった症例の涙道内視鏡所見.涙管チューブ(*)の周りにバイオフィルム()が付着し,涙.粘膜が隆起した肉芽組織の形成を認める().-

エビデンスに基づいた眼窩骨折の手術時期と再建材料の選択

2021年1月31日 日曜日

エビデンスに基づいた眼窩骨折の手術時期と再建材料の選択Evidence-BasedSurgicalTimingandChoiceofReconstructiveMaterialsforOrbitalFractures山中行人*はじめに眼窩骨折は眼窩を構成する骨が外力によって骨折をきたした状態であり,外眼筋や眼窩脂肪の偏位,障害によって眼球運動制限が引き起こされる.救急外来,一般外来ともに眼科医がしばしば遭遇しうる疾患でありながらも,その診断・治療に関してはあまり自信をもてない眼科医が多いのではないだろうか.これは眼窩骨折の手術を施行している施設がごく限られており,一般眼科医が眼窩骨折の手術適応や手術時期について正確な知識を得る機会に乏しいことが少なからず影響していると考える.たとえば,「眼窩骨折」はしばしば「吹き抜け骨折」と同義の言葉として認識されているが,これは誤りであり,正しくは「眼窩開放型骨折=吹き抜け骨折」である.また,初診時に外来で見逃しがちな「眼窩閉鎖型骨折」のほうが「眼窩開放型骨折」と比べてより重篤な病態であり,早急な手術加療が必要であることも意外と知られていないのが現状である.本稿では,「このタイプの眼窩骨折は経過観察をしてもよいのか」「経過観察はどれくらいの期間まで可能なのか」「受傷直後に受診して経過観察とした場合,どれくらいのタイミングで再診するべきなのか」というような実際の臨床で眼科医がもつであろう疑問にもエビデンスを示して回答を提示する.眼窩骨折で複視や眼球運動時痛などの症状がある場合は速やかな手術加療が望ましい.この際に,眼窩骨折の手術の目的は「骨折を治すこと」ではなく,「眼球運動を正常化させること」であることを認識しておくことが大変重要である.眼窩骨折でも,とくに筋絞扼型の閉鎖型骨折であれば,速やかな全身麻酔下での整復術が必要となる.また,術後早期に眼球運動が正常化するわけではなく,術後に眼球運動のリハビリテーションを行うことで数カ月~半年程度かけて眼球運動障害が改善してくるということを理解する必要がある.本稿では,眼窩骨折診療の実際からエビデンスに基づいた手術時期と再建材料の選択までを解説する.眼科医のみならず眼窩骨折手術を行う医師にとっても,明日からの診療の一助となれば幸いである.I眼窩骨折とは眼窩骨折はSmithらによって1957年に最初に報告された1).眼窩前方からの鈍的外力によって眼窩内圧が急激に上昇し,眼窩内でもっとも弱い部分である眼窩下壁や内壁が骨折を起こすのが眼窩骨折のメカニズムである.眼窩内にはconnectivetissueseptaとよばれる結合組織のネットワークが外眼筋・眼窩脂肪・骨膜の間に形成されているが2),眼窩骨折によってこのネットワークが破綻あるいは偏位,絞扼すると眼球運動障害が引き起こされる.眼窩骨折の受傷機転としては,小児ではスポーツや偶発的な衝突が多く,青年から中年ではスポーツ,喧嘩,飲酒後の転倒などが多い.そして高齢者になると圧倒的に転倒が原因となることが多い.京都府立医科大学眼科での検討では,384例の眼窩骨折において,*YukitoYamanaka:明治国際医療大学附属病院眼科〔別刷請求先〕山中行人:〒629-0392京都府南丹市日吉町保野田ヒノ谷6-1明治国際医療大学附属病院眼科0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(47)47図1右眼窩下壁開放型骨折図2右眼窩下壁閉鎖型骨折(眼窩内組織が嵌頓)図3右眼窩下壁閉鎖型骨折(筋絞扼型)る」という訴えである.眼窩下壁骨折では,三叉神経第二枝の通る眼窩下溝の鼻側が骨折の好発部位であり,骨折によって三叉神経第二枝が障害されると,頬部および口唇部の違和感が生じるからである.この訴えがあった際にも,必ず眼窩部CCTを撮像するべきである.眼窩部CCT検査については,眼窩C3方向(冠状断・矢状断・水平断)の条件で,可能な限り薄いスライス(2Cmm以下)で撮像するように放射線科にオーダーする.撮影したCCT画像は,骨条件と軟部条件を比較して臨床症状とあわせて評価する.冠状断は内下壁,左右の眼窩骨を同時に評価することが可能であり,眼窩骨折の診断を比較的つけやすい.開放型骨折であれば,眼形成専門医でなくても眼窩骨折の診断は比較的容易と考えられるが,閉鎖型骨折の場合には,眼窩骨折にあまり慣れていない眼科医にとって骨折の診断を確定するのは少しためらわれるかもしれない.その際に診断の一助になるのが,閉鎖型眼窩骨折を疑う特徴的なCCT所見である.たとえばCmissingrectusとよばれる眼窩内の外眼筋の消失所見や,bonethicknesssignとよばれる骨折部位の骨膜の肥厚所見は眼窩閉鎖型骨折を示唆する重要な所見である.また,筆者も経験があるが,骨折線が線状でCTのスライスと並行に存在する症例では,CT上明らかな骨折が確認できないこともある.このような症例では,眼球運動障害や複視・眼球運動時痛の有無といった臨床所見と合わせて眼窩骨折の診断を慎重に行う必要がある.受傷の原因が交通外傷や高所からの転落など高エネルギー外傷の場合には,眼窩骨折以外にも頬骨骨折や前頭骨骨折,鼻骨骨折,上顎骨骨折などの顔面骨折および頭蓋骨の骨折の可能性についても必ず考慮する.もしこれらの骨折が判明した場合には該当する耳鼻咽喉科・形成外科・歯科・脳神経外科などに紹介することが望ましい.とくに頭蓋内のCfreeairを認めたときは,頭蓋底骨折の可能性があるため脳神経外科に必ず紹介を行うべきである.眼窩骨折は,鈍的外傷によって引き起こされるため,前房出血・外傷性散瞳・虹彩離断・網膜振盪症などの眼球打撲による症状を合併していることも少なくない.このため,まずは視力・眼圧といった眼科一般の検査を行い,それらに追加してCHessチャートや両眼単一視野などの検査を施行する.Hessチャートでは日常生活で最低限必要な範囲とされるC30°の範囲までを必ず測定する.両眼単一視野検査ではCHessチャートでは検出できないC30°以上の範囲の複視の存在を確認することが可能である.眼窩骨折の患者であっても,前房出血・硝子体出血・網膜振盪症・外傷性黄斑円孔などで患眼の視力が不良である場合,複視の訴えがはっきりしないことも多い.このような場合,開放型骨折の眼窩骨折であればしばらく経過観察することも可能であるため,まずは視力不良となっている状態の改善を優先するべきである.視力が改善した時点で複視,眼球運動障害,眼球運動時痛の有無を再評価して手術の必要性を検討することが望ましい.多発交通外傷などでは救命にかかわる疾患が優先され,眼科疾患は後回しにされがちであるが,眼窩骨折は放置したまま治癒すると複視が残存することも多く,その後の患者の人生におけるCQOV(qualityofvision)に大きな影響を及ぼす疾患でもあることから,適切なタイミングで眼科医が診断・治療に参加することが望ましいと考える.CIV眼窩骨折の症状開放型骨折と閉鎖型骨折では症状が若干異なる.開放型骨折は前述したように,骨折部位が開放しているために眼窩内組織の偏位はあっても絞扼はないため,眼球運動障害,眼球運動時痛,複視などの症状がそれほど表れないこともある.しかしながら大きな開放型骨折ではしばしば眼窩内組織が大きく偏位しているため,眼球運動障害を引き起こし患者が複視を訴えることも多い.また,開放型骨折による副鼻腔への眼窩内組織の偏位は,眼窩内容積の減少による眼球陥凹を引き起こす.脱出した眼窩内組織と副鼻腔粘膜の癒着は受傷後C1週間程度から起こり,徐々に進行してくるので,複視の自覚症状があり,眼窩内組織,とくに外眼筋の偏位があれば手術加療を考慮する必要がある.閉鎖型骨折,とくに筋絞扼型の閉鎖型骨折では受傷直後より強い眼球運動障害をきたし,迷走神経反射により(49)あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021C49悪心・嘔吐,頭痛などの症状が出現する.診察室にぐったりとした状態で搬送されてくることも多く,一見して重篤な状態とわかることもしばしばある.眼窩内組織が挟まったタイプの閉鎖型骨折は筋絞扼型の閉鎖型骨折ほど自覚症状が強くないが,眼球運動障害,眼球運動時痛,複視などの症状が出現することが多い.また,開放型および閉鎖型いずれの骨折でも,下壁骨折であれば三叉神経第二枝が障害されることによって,患者は頬部および口唇部の違和感を訴えることも多い.CV眼窩骨折の手術適応筋絞扼型の閉鎖型骨折は,絶対的な手術適応となる.開放型骨折と筋絞扼型以外の閉鎖型骨折は複視の自覚があるか,眼球運動時痛がある,いずれかの症状があれば患者と相談のうえ積極的な手術加療が望ましいと考える.ただし眼球運動時痛は受傷直後の眼球打撲に起因することもあるため,きちんとCHessチャートおよび両眼単一視野で眼球運動障害の有無を把握するべきである.実臨床では,Hessチャートで眼球運動障害があっても自覚的な複視がない眼窩骨折患者にしばしば遭遇する.この場合は手術適応となるかを患者としっかり相談することが重要である.広範囲に及ぶ開放型骨折であれば,受傷後長期の経過において眼球陥凹が顕在化することもあるので患者にしっかりそのことを説明しておく必要がある.また,前述したとおり,前房出血・硝子体出血・網膜振盪症・外傷性黄斑円孔などで骨折側の視力が不良な場合には,健常眼と患眼の視力差が大きくなり複視の訴えが出にくいことも留意しておく.眼窩骨折の手術目的は,「骨折を治すこと」ではなく「正常な眼球運動を取り戻すこと」である.そのために手術加療によって,「骨折により眼窩外に脱出・骨折部位に嵌頓した眼窩内組織を眼窩内に元通り整復することで,正常な眼球運動を阻害している要因を取り除くこと」が重要である.また,手術はあくまで,「正常な眼球運動を取り戻すための下地作り」であり,術後に眼球運動のリハビリテーションを継続して行うことでC3カ月~半年程度かけて徐々に眼球運動障害が改善してくることを,きちんと患者に理解しておいてもらうことが大切である.手術によって眼窩内組織に侵襲が加わり炎症・腫脹が生じることから,術直後に一時的に眼球運動障害が増悪する可能性についても術前に説明しておく必要がある.また,下壁骨折では三叉神経第二枝が障害されることによって,患者は頬部および口唇部の違和感をしばしば訴える.この違和感は手術加療によりすぐに軽快するわけではなく,軽快には半年~1年程度の時間を必要とすることが多い.そして少数ではあるが術後も長期にわたり違和感が残存することもある.CVI眼窩骨折の手術時期筋絞扼型の閉鎖型骨折については可及的速やかな手術が望ましい.これは外眼筋が絞扼されると,循環障害から筋肉が壊死し不可逆的な眼球運動障害が残ることが多いからである.筋絞扼型以外の閉鎖型骨折,開放型骨折の手術時期についてはまだ統一した見解がない3,4).近年,受傷後時間が経過してから眼窩骨折整復術を施行した症例の良好な成績が報告されているが5,6),基本的には受傷後C2週間以内の手術が推奨されている3,7).しかしながらこれらの報告は,開放型骨折や閉鎖型骨折について区別することなく論じられており,やや客観性に乏しい.筆者らは眼球運動を評価する客観的な指標としてCpercentageCofCHessCarearatio(HAR%)を用いて手術時期の検討を行った(図4).HAR%はCHessチャートから算出される数値であり8),健常者であればC100%である.これまでの報告ではCHAR%がC80%以上あれば日常生活の範囲で基本的に支障がないとされている9).筆者らの検討では,筋絞扼型以外の閉鎖型骨折については,受傷後C8日以内,開放型骨折であればおおむね受傷後C1カ月以内に手術加療を行うことが望ましいと考えられた10).したがって,受傷後の初診時に眼瞼腫脹などがひどく眼球運動を正確に評価することが困難である症例であれば,この期間内に再診を行い,再度眼球運動の評価を行って手術適応を決定すればよいと考える.しかし,受傷から時間が経過するほど眼窩内組織の癒着が進行するため,開放型骨折であってもなるべく早く手術加療を行うのが望ましいと考える.50あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021(50)左眼右眼HAR%=A.ectedside(vertical×horizontal)mm2×100(%)HAR%=58×60/62×62×100(%)=90.5図4Hessチャートを用いたHAR%の算出図5スーパーフィクソーブMX図6図1と同一症例の術後右眼窩下壁開放型骨折(術後)耳側耳側Healthyside(vertical×horizontal)mm2

生検か全摘か?画像診断による眼窩腫瘍の術式選択

2021年1月31日 日曜日

生検か全摘か?画像診断による眼窩腫瘍の術式選択BiopsyorCompleteRemoval?─SelectionofSurgicalProcedureforOrbitalTumorbyDiagnosticImaging辻英貴*はじめに眼窩には,良性・悪性のさまざまな種類の腫瘍が生じ,表面からは見えない部位であるため,MRI(mag-neticCresonanceimaging)やCCT(computedCtomogra-phy)などの画像診断は必須である.腫瘍は全摘出がもっとも望ましいのは当然であるが,画像上,びまん性でリンパ増殖性疾患などが疑われる場合には,可能な範囲で十分量を切除して病理診断にて確定する.本稿では,眼窩腫瘍の画像診断に応じた術式選択について述べる.CI眼窩腫瘍の画像診断まず,画像が周囲組織と境界をもった一塊のものか,境界不鮮明なびまん性のものかを鑑別する.アレルギーや腎機能障害などがなければ,腫瘍の性状を詳しく観察可能な造影剤を併用する.腫瘍の部位,大きさ,広がり,性状,造影の様子などが重要であるが,MRIはこれらの情報に富み,有用である.周囲組織と境界をもった一塊のものであれば,腫瘍全体が染まる実質性の腫瘍か,周囲が染まる.胞かを判断する.実質性で良性のものとしては,海綿状血管腫(血管奇形)や,神経鞘腫,涙腺では多形腺腫などがある.悪性では腺様.胞癌,腺癌,肉腫などが考えられる.また,副鼻腔手術後の.胞が眼窩内に侵入したものもみられる.視神経に生じるものでは,中高年の女性に多い視神経鞘髄膜腫や,小児に多い視神経膠腫などがある.周囲との境界不鮮明なびまん性の腫瘍の場合には,MALTリンパ腫(extranodalCmarginalCzoneClymphomaCofCmucosa-associatedClym-phoidtissue)(図1)を筆頭とするリンパ増殖性疾患や,転移などが鑑別となる.リンパ腫ではCMRIの拡散強調画像(di.usionweightedimaging:DWI)が有用で,見図1MALTリンパ腫筋円錐の内外にまたがり,眼球後部を覆うように増殖したCMALTリンパ腫.a:T1強調で低信号,b:T2強調で中間信号,c:ガドリニウム造影で均質に濃染.*HidekiTsuji:がん研有明病院眼科〔別刷請求先〕辻英貴:〒135-8550東京都江東区有明C3-8-31がん研有明病院眼科C0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(43)C43図2両眼窩に生じたマントル細胞リンパ腫眼窩内の隙間を埋める(molding)ようにびまん性に増殖している.図3IONE(infraorbitalnerveenlargement)IgG4関連眼疾患に特徴的な所見であるCIONE().左上眼窩の腫瘍部からの生検にて病理診断された.図4海綿状血管腫a:MRIT1強調で低信号,Cb:MRIT2強調でやや高信号,Cc:ガドリニウム造影にて特徴的な網目状の遅延性造影所見がみられる.図5類皮.胞(デルモイドシスト).胞は眼窩上方に存在し,粥状の内容物を含み,ニボー形成がみられる.内容物を周囲に散らさないように吸引しながら.胞を全摘した.海綿状血管腫図6眼窩骨を一時的にはずして腫瘍を摘出手術は視野がもっとも大切である.眼窩骨を一時的にはずして術野を確保する.図7視神経膠腫視神経自体の充実性の腫瘍で,視神経管の拡大・破壊がみられる.紡錘形で中央部に特徴的なCkinking(屈曲)がみられる.

眼表面に配慮した眼瞼腫瘍切除再建術

2021年1月31日 日曜日

眼表面に配慮した眼瞼腫瘍切除再建術EyelidTumorSurgerywithConsiderationoftheOcularSurface中山知倫*はじめに眼瞼腫瘍のうち眼瞼原発良性腫瘍で頻度の高いものとして,母斑(nevus,図1),脂漏性角化症(seborrheickeratosis,図2),乳頭腫(papilloma),類表皮.胞(epi-dermoidcyst)があり,眼瞼原発悪性腫瘍で頻度の高いものとして,基底細胞癌(basalcellcarcinoma,図3),脂腺癌(sebaceouscarcinoma,図4),扁平上皮癌(squamouscellcarcinoma)といった上皮性の悪性腫瘍がある1).わが国では基底細胞癌の頻度が欧米に比べて低く,脂腺癌は逆に高くなっており,脂腺癌と基底細胞癌が日本の2大眼瞼原発悪性腫瘍となっている2).どちらも高齢者に多い疾患であることから,今後の症例数の増加が予想される.I眼瞼の解剖と機能眼瞼腫瘍治療の第一選択は外科的切除術となる.眼瞼腫瘍の切除および再建術について述べる前に,まず眼瞼の解剖と機能について理解しておく必要がある.1.眼瞼の解剖(図5,6)眼瞼は上下ともに前葉と後葉に分けて理解することが重要である.前葉とは眼瞼の「前」の組織のことで,皮膚と眼輪筋をさす.後葉とは眼瞼の「後」の組織のことで瞼板と眼瞼結膜をさす.眼表面には,粘膜を含む後葉が適切に接触している必要があり,粘膜のない前葉のみでは代替ができない.また,前葉は体表面であることから,皮膚である必要があり,やはり後葉のみでは代替ができない.また,前葉と後葉とのバランスが悪く,相対的なずれが生じれば眼瞼の内反や外反の原因となりうる.前葉と後葉の位置を支持する組織は,垂直方向は上眼瞼の上眼瞼挙筋と皮膚穿通枝,下眼瞼ではlowereyelidretractors(LER)と皮膚穿通枝である.水平方向は,上下の眼瞼瞼板に適切なテンションを与えている内眥靱帯,外眥靱帯である.基本的にはこのように考えてよいが,厳密にはそれぞれの支持組織が相互に影響している.2.眼瞼の機能眼瞼の役割としては,静的な役割と動的な役割がある.静的な役割としては,眼瞼の適切な形状による眼表面の保護機能と涙液導涙経路としての機能がある.動的な役割としては,瞬目による涙液ポンプ機能と眼表面への涙液供給機能がある.静的な役割,すなわち眼瞼の適切な形状が失われる状態とは,眼瞼内反や外反のなどの場合であり,前葉と後葉の位置関係のずれによって生じる.この場合,眼表面に刺激を生じて影響を与える.また,導涙経路としての適切な眼瞼形状も保たれなくなるため,涙液の眼表面への適切な供給が失われ,ドライアイなどで眼表面へ影響を与える可能性が生じる.動的な役割,すなわち適切な瞬目が失われるとは,や*TomomichiNakayama:京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕中山知倫:〒602-0841京都市上京区河原町広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(33)33図1母斑図2脂漏性角化症図3基底細胞癌図4脂腺癌結膜瞼板下瞼板動脈弓皮膚穿通枝LER前層(CPF)線維脂肪組織眼輪筋眼窩隔膜図6下眼瞼の解剖図5上眼瞼の解剖CPF:capsulopalpebralfascia,CPH:capsulopalpebralfascia,LER:lowereyelidretractors,SM:smoothmuscle(平滑筋).眼瞼の機能表1切除範囲に応じた再建法切除範囲静的役割動的役割眼表面の保護機能涙液導涙経路涙液ポンプ機能涙液供給機能破綻眼表面への刺激,違和感(内反症,外反症,ドライアイ,兔眼など)図7眼瞼の機能と障害上眼瞼1/3未満下眼瞼1/2未満上眼瞼1/3以上下眼瞼1/2以上前葉後葉全層単純縫縮(直接縫合)外眥切開Z形成Tenzel.ap1.局所皮弁2.眼輪筋皮弁3.植皮4.動脈皮弁(lateralorbital.ap)5.遊離組織移植1.硬口蓋粘膜2.鼻中隔軟骨+粘膜3.耳介軟骨+粘膜4.Hughes.ap1.眼瞼全層弁(switch.ap,cutler-beard)2.眼瞼全層遊離複合移植LERを前転することになり,lidretractionの状態となって眼表面へ影響を与えることがあり,注意を要する.表1に筆者の施設(以下,当科)での再建手術の方針をまとめて示す.2.眼瞼良性腫瘍眼瞼腫瘍治療の第一選択は外科的切除術となり,良性腫瘍でも同様である.所見上で明らかに良性腫瘍であるなら,必ずしも切除しなければならないことはないが,腫瘍そのものが眼表面に接触したり,導涙機能を障害したりして物理的に眼表面に影響を与えることもある.一般的に良性腫瘍であれば,切除においてマージンは必要ないため,切除範囲は大きくならないことが多い.さらに前葉から発生することがほとんどであるから,切除の影響が眼表面に影響することは少ない.したがって,患者に切除希望があるなら,手術は容易でかつ眼表面への合併症も少ないため,積極的に行って問題はないと考える.手術方法は,腫瘍径が小さい場合には腫瘍を切除し,そのままにして肉芽形成と皮膚の再生を待つopentreatmentで問題ない.切除範囲が大きくなる場合は,前葉を単純縫縮すると適切な眼瞼形状が保てなくなる可能性があるため,皮弁を用いての再建を考慮する必要があるが,良性腫瘍は進行が緩徐であるため,そこまで大きくなることは少なく,実際には頻度は多くない.前葉再建については後述する.3.眼瞼悪性腫瘍眼瞼悪性腫瘍の場合,外科的切除が第一選択となる.基本的には切除にあたりマージンが必要である.そのために腫瘍よりも切除範囲が大きくなる.脂腺癌は瞼板より発生することがほとんどであり,すなわち後葉発生となるため,当然切除においては後葉も含む必要があるし,前葉発生の悪性腫瘍であっても,マージンの必要性から切除範囲に後葉も含むことが多い.III眼表面に配慮した眼瞼腫瘍切除再建術これより,それぞれの眼瞼腫瘍再建術について,表1に基づいて眼表面への影響の可能性と予防のために必要な配慮も含めて述べる.1.単純縫縮(欠損部が上眼瞼1.3未満,下眼瞼1.2未満)文字通り,切除したあとに眼瞼の耳側断端と鼻側断端を単純に縫合する方法である.前葉,後葉ともに全層で再建することになる.この場合,眼瞼の横方向の張力が増すことになり,眼表面との摩擦は増大し,瞬目も影響を受ける.あまりにきついと判断される場合には,外眥切開にて水平方向の張力を軽減するか,Tenzel.apにて外眥を移動させてしまうことで対応できる.理論的にはZ形成にて残存眼瞼組織の延長も可能であるが,残存瞼板の形状を変えることになるため,積極的に行うことはあまりない.また,水平方向の張力を軽減し過ぎれば,かえって外反内反の原因ともなり得るため,適切に調整する必要がある.単純縫縮は,基本的には元来の後葉がそのまま再建後にも後葉となるため,眼瞼の水平方向の張力を適切にコントロールできれば,眼表面への影響はほとんどない.Tenzel.apの際には耳側において,.apの皮下組織がそのまま眼球表面に接触することのないように,.apの皮下組織を残存結膜で覆うように縫合する.実際のTenzel.apを用いた眼瞼腫瘍切除再建術を示す(図8).2.前葉再建前葉再建の材料としては,血流のない遊離皮弁(graft)を用いるか,血流のある有茎皮弁(.ap)を用いるかに大別される.眼瞼の場合には,太い動脈もなく,皮弁のサイズも大きくないことがほとんどであるため,血管吻合をして血流を再建するような遊離皮弁(free.ap)を用いることはまずない.血流のない遊離皮弁を用いる場合で,眼科医にとっても容易なものとして,対側の上眼瞼余剰皮膚がある.また,血流のある皮弁を用いるのであれば,単純に周囲の皮膚をadvanced.apとして用いるのがもっとも容易であるし,そのほかには下眼瞼前葉再建時に同側の上眼瞼余剰皮膚を,耳側部分を茎としてrotation.apとする方法がある.血流のない組織を使用した場合,血流のある組織を用いた場合に比べて,術後の萎縮の程度が大きくなるが,36あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021(36)図8下眼瞼腫瘍(扁平上皮癌)切除術とTenzel.apによる再建(術者視点)a:左下眼瞼腫瘍.b:Tenzel.apのデザイン作成.Cc:下眼瞼腫瘍切除後(下眼瞼全層で眼瞼幅C1/2程度の欠損).d:Tenzel.apの作製.Ce:本来の外眥部の切断.Cf:眼瞼断端の縫合.Cg:外眥部の再作製.Ch:Flapの皮下組織を残存結膜で覆うように縫合.Ci:新たな外眼角の形成.j:眼瞼耳側創部の縫合.k:手術終了時.l:手術後C6カ月.眼表面への影響はとくに認めていない.図9基底細胞癌切除術局所皮弁による再建.図10下眼瞼腫瘍(脂腺癌)切除術とHughesl.apによる再建(術者視点)a:左下眼瞼腫瘍.b:下眼瞼腫瘍摘出後(下眼瞼ほぼ全幅欠損).c:Hughes.apのデザイン.d:HughesC.apの作製.Ce:HughesC.apの展開.Cf:Hughes.apと残存後葉(瞼板と結膜)の縫合.Cg:前葉再建材料として,advanced.apの作製(瞼板皮膚穿通枝と眼窩隔膜の切離).h:前葉皮弁の縫合.Ci:手術終了時.Cj:手術後C1.5カ月(吸収糸で縫合し,抜糸をしていないため縫合糸が残る).眼表面への影響はとくに認めていない.ab図11上眼瞼脂腺癌に対するmodi.edHughes.ap後に生じた角膜障c害に対し上眼瞼挙筋後転術にて改善した症例a:術前.上眼瞼脂腺癌.Cb:上眼瞼腫瘍切除とCmodi.edHughesC.apによる眼瞼再建後とC.ap切り離し直後ではややClidretractionを認めた.Cc:Flap切り離しC1Cmm後.Lidretractionと点状表層角膜炎を認める.Cd:Flap切り離しC3Cmm後.Lidretractionと点状表層角膜炎に改善なし.Ce:挙筋後転術後.CLidretractionと点状表層角膜炎の改善Cdを認めた.Ceて加療した症例を示す(図9).C3.後葉再建先述の通り,眼瞼後葉は瞼板と眼瞼結膜である.したがって,その再建には瞼板の代替となるようなある程度固く支持力のある組織と粘膜が必要となる.そのために表1に示すような再建材料が用いられる.CHughes.apと遊離瞼板は元来の瞼板と眼瞼結膜を再建材料としているが,そのほかの粘膜はやはり本来の結膜とは異なるため,Hughes.apと遊離瞼板が再建材料としては眼表面への影響がもっとも少ない.また,これらのうちでCHughes.ap以外は血流がない再建材料であるため,再建後に大きく萎縮をして内反の原因となることがあり,それを考慮して再建時にはあえて後葉のほうが前葉よりも瞼縁側へ延長した状態にしておくなどの工夫を行う必要がある.当科では,眼表面への影響が軽微なこと,また再建材料の生着が良好なことからHughes.apを用いたHughes法を行うことが多い.Hughes.apとは上眼瞼の瞼結膜と瞼板を下眼瞼後葉再建のために有茎弁として用いるもので,後日切り離すことにより,より本来の状態に近い形での眼瞼再建が可能となる.原法は上眼瞼から下眼瞼への移植だが,当科では下眼瞼から上眼瞼への移植を行うCHughes変法も行っており,今のところ術後経過は良好である.下眼瞼腫瘍に対して,腫瘍切除後にHughes.apにて再建した症例を示す(図10).下眼瞼からの比較的サイズの小さい後葉で再建を行うHughes変法では,残存組織を瞼縁まで引き出して再建することになるため,再建後には挙筋腱膜の前転に類似した状態となりがちである.すなわち術後にClidretrac-tionを生じる可能性があり,残存組織が上眼瞼挙筋を牽引しないよう,穿通糸や眼窩隔膜を切り離しておくことが予防のために重要である.当科でCHughes変法施行後にClidretractionを生じて,点状表層角膜炎を生じたために,眼瞼挙筋後転術を施行し,lidretractionが改善し点状表層角膜炎が軽快した症例を示す(図11).CHughes.apも遊離瞼板移植も,正常瞼板から移植片を採取するため,サイズに制限があり,眼瞼欠損が大きい場合などは,自由に再建組織のサイズを決定できる硬口蓋粘膜移植などが必要となる.C4.全層再建全層再建の場合,前葉と後葉は分離されていないため,そのバランスが崩れて内反や外反になるリスクは少ない.全層再建においてはCswitch.apなどのような血流のある眼瞼有茎全層弁や眼瞼全層遊離複合移植を用いるため,生着や移植片の萎縮などによる変形の点で有利である.眼表面への影響の点で有利な術式ではあるが,移植片を提供して全層欠損した組織の形成も必要となる.当科では眼瞼脂腺癌の再建術において,.apによる後葉再建(HughesC.ap)もしくは眼瞼全層弁(Tenzel.ap,switch.ap)のほうが遊離瞼板移植や硬口蓋粘膜移植といった遊離後葉移植より術後合併症が少なかったことを報告している3).おわりに眼瞼腫瘍の治療においては,腫瘍を切除して終了ではなく,眼瞼という静的な機能と動的な機能をもつ組織を再建する必要がある.そのために,まずは眼瞼の解剖と機能を理解することが基本となる.腫瘍の摘出において,眼瞼がどの程度失われるかは個々の患者によってまったく異なる.毎回異なる眼瞼欠損状態から適切に眼瞼の機能を回復するためには,できるだけ多くの再建方法を学んでおき,状態に応じて可能な限り最適な再建方法の組み合わせを考え出し,それを実行できる技術をもつことが大切である.文献1)SinghCU,CKolavaliRR:OverviewCofCeyelidCtumors.In:CSurgicalophthalmiconcologyChauguleS,HonavarS,Fin-gerP(eds)C,p3-10,Springer,Cham,20192)中山智佳,渡辺彰英,上田幸典ほか:眼瞼脂腺癌C34例の臨床像と組織学的検討.あたらしい眼科C30:1739-1743,C20133)福井歩美,渡辺彰英,外園千恵ほか:眼瞼脂腺癌の臨床像と再建術後合併症の検討.日眼会誌124:410-416,C202040あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021(40)

病態に即した眼瞼外反症手術

2021年1月31日 日曜日

病態に即した眼瞼外反症手術TreatmentStrategyforEctropionbasedonPathology米田亜規子*嘉鳥信忠*はじめに眼瞼外反症とは,さまざまな原因で眼瞼が眼表面から遊離し前方に翻ることにより眼表面および眼瞼結膜が露出した状態であり,通常は下眼瞼に生じる.眼瞼結膜との正常な接着を失った眼表面は,閉瞼時にも涙液で正常に覆われないため角結膜障害を生じ,流涙や眼乾燥感,疼痛,視力低下の原因となる.一方,眼表面に接着していない瞼縁や眼瞼結膜側も乾燥し,次第に肥厚し角化を認めるようになる.また,眼瞼内反症とは異なり機能面のみならず整容面での不満の訴えが多いのもこの疾患の特徴である.眼瞼外反症に対する治療は,これまでに多くの術式が報告されているものの,長期的にみると再発しやすく眼瞼疾患のなかでも治療に難渋することが多い.ひとくちに眼瞼外反症といってもその発生機序や病態はさまざまであり,個々の症例ごとに外反の発生機序を十分に把握したうえで,病態に即した治療方針を立てることが重要である.I下眼瞼を支持する組織下眼瞼は,眼球により後方から支える力に加えて,横方向および縦方向へ牽引される力によりその解剖学的構造を保っている.支持する力の低下やバランスの崩れ,あるいは支持されている組織自体の剛性低下が眼瞼外反の原因となる.1.水平方向の力鼻側は内眼角靱帯,耳側は外眼角靱帯でそれぞれ牽引されたハンモック構造で水平方向のバランスをとっている.水平方向の緊張が加齢や顔面神経麻痺により緩むと下眼瞼外反症を生じる.2.前後方向の力下眼瞼は眼瞼前葉(皮膚と眼輪筋)と,眼窩隔膜より結膜側に位置する眼瞼後葉〔瞼板,下眼瞼牽引筋腱膜(lowereyelidretractors:LERs)と結膜〕で構成される.後葉のLERsからcapsulopalpebralhead(CPH)につながる支持組織は,瞼板を眼球下方へ牽引することで下眼瞼が前後に翻らないように支持している.外傷や手術による皮膚の瘢痕で前葉が拘縮したり,.oppyeyelidにより後葉の支持力が低下すると眼瞼外反症が生じる.II眼瞼外反症の分類眼瞼外反症は,その原因により退行性,麻痺性,瘢痕性,機械性に大別される(表1).退行性は加齢により内眥,外眥,瞼板,眼輪筋などが全体的に弛緩した結果,外反症を生じたもの.麻痺性は顔面神経麻痺などにより,瞼板や眼輪筋が弛緩して外反症を生じたもの.瘢痕性は挫創や熱傷などの外傷や,手術による皮膚の瘢痕で前葉が拘縮し眼瞼縁が前方に牽引され外反症を生じたもの.機械性は眼瞼腫瘍や眼窩炎症,結膜浮腫などにより後葉が増大したりすることで生じる機械的な圧迫や牽引*AkikoYoneda&*NobutadaKatori:聖隷浜松病院眼形成眼窩外科〔別刷請求先〕米田亜規子:430-8558静岡県浜松市中区住吉2-12-12聖隷浜松病院眼形成眼窩外科0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(25)25表1眼瞼外反症の分類分類原因病態治療方針(例)退行性加齢眼瞼が水平方向や垂直方向など全体的に弛緩LTSなど麻痺性顔面神経麻痺など瞼板と眼輪筋の弛緩LTS,Kuhnt-Szymanowski法Smith変法,耳介軟骨移植など瘢痕性熱傷,外傷,手術など皮膚の瘢痕による前葉の拘縮瘢痕切除,Z形成,植皮などによる前葉延長機械性眼瞼腫瘍,炎症,結膜浮腫など眼瞼が物理的に圧迫あるいは牽引原疾患に対する治療初診時術後6カ月図1退行性の下眼瞼外反症外眼角靱帯短縮術(LTS)を施行したことで水平方向の緩みが改善し,眼瞼外反症が改善した.当科初診時再縫合後1.5カ月再縫合後8カ月術直前術後9カ月図2眼瞼裂傷後の下眼瞼外反症下涙小管断裂および眼瞼裂傷に対して右下涙小管形成手術および裂傷部の再縫合を施行し,その後徐々に下眼瞼外反症を生じた.術後10カ月の時点で下眼瞼にZ形成術を施行し外反している部位の前葉皮膚を延長することで外反症は改善した.-術前術後6カ月graftedskin挿入した.ap図3眼瞼熱傷後の瘢痕性外反症本症例では下眼瞼前葉のボリュームを追加するために眉毛下から下眼瞼に局所皮弁術を行い,外反の改善を得た.術前術後5カ月図4顔面神経麻痺による下眼瞼外反症外反症に対するの耳介軟骨移植術は,下眼瞼を水平方向だけでなく垂直方向へ支持する効果も得られる.サンテゾーン眼軟膏開始前開始後2週間図5眼瞼周囲皮膚炎に伴う下眼瞼外反症炎症から生じる外反症では,抗炎症を図ることで外反症も改善することがあるため,手術を急がずにまず原疾患の治療を行う.術前術後1年図6下眼瞼腫瘤切開後の外反症垂直方向の弛緩による外反症や外眼角靱帯短縮術では対応しにくい鼻側の外反症に対しては,本症例のように瞼板下縁よりLERを切離し瞼板後面(結膜側)に縫着する方法が有効である2).

再発を最小限にする内反症手術

2021年1月31日 日曜日

再発を最小限にする内反症手術TheBestTreatmentsforEpiblepharonandInvolutionalEntropion尾山徳秀*はじめに今回は小児に多い下眼瞼の睫毛内反症,および高齢者に多い下眼瞼の退行性眼瞼内反症に対する手術方法を説明する.睫毛内反症と類似しているmarginalentropionや睫毛乱生などは省略する.患者はすべて顔が千差万別であり,中顔面の作りや眼周囲の形も異なる.同じようにみえて症例によって内反症の状態は必ず異なるはずである.そのような状態であるのに画一的な方法で手術に臨めば再発することは容易に想像できる.そこで小児に多い睫毛内反症では,以前より皮膚切開法(いわゆるHotz変法)が行われているが1~3),それのみでは再発しやすい症例を提示し,そのような症例に対しての手術アプローチを紹介する.また,退行性下眼瞼内反症では,下眼瞼牽引筋腱膜(lowereyelidretractors:LERs)の後層の再建および前層の皮膚穿通枝の再建というJones変法(Kakizaki法)が一般的に行われている4).しかし,これだけでは再発する症例もあり,その防止法を紹介する.I睫毛内反症1.睫毛内反症の術前検査のポイント睫毛内反症の病因は,下直筋から連続するLERsの前層の皮膚穿通枝が未発達もしくは欠損しているため,睫毛が外反しないことである(図1).さらに皮膚および眼輪筋(眼瞼前葉)が上方へ乗り上げることで睫毛を圧排し,さらに角膜障害を悪化させる.この病因を理解すれば通常の睫毛内反は,いわゆる一般的に行われているHotz変法で治癒すると思われる.しかし,内眼角ひだ(epicanthalfold)の発達した症例(図2)や下眼瞼後退がある症例(図3)では再発率が高くなるので注意が必要である.内眼角贅皮の発達した症例は,上眼瞼挙上による下眼瞼の動きを診察する(rolluptest).上眼瞼とともに下眼瞼がつられて挙上し,睫毛が眼瞼前葉の皮膚や眼輪筋に押され,睫毛内反が高度に悪化すれば陽性である(図4).下眼瞼後退のある症例では,眼瞼後葉が過剰に後退していることにより,眼瞼前葉の乗り上げがさらに過剰になり睫毛内反の程度が高度になる.これらの場合はHotz変法だけで処理すると,内反症の低矯正もしくは再発の原因となる.6カ月程度の短い術後経過では再発しないことも多く,治癒したと思っても2年程度経過をみないと再発することがあるので注意が必要である.2.手術手技と手術のポイント切開法(Hotz変法)と通糸法を比較すると,過去の報告では,通糸法では約20~30%の再発率であるが切開法のほうが約4~9%と再発率は少ない1~3).また,Hotz変法だけでは睫毛の内反矯正が悪い症例に対して,手術時にlidmarginalsplittingを加えることで睫毛が外反しやすくなり再発しにくくなる4).また,下眼瞼後退のある症例では,LERsの瞼板および結膜からの切離を追加することで眼瞼後葉の後退が改善し,眼瞼前葉とのバラ*TokuhideOyama:うおぬま眼科,長岡赤十字病院眼科,新潟大学医歯学総合病院眼科〔別刷請求先〕尾山徳秀:〒946-0001新潟県魚沼市日渡新田字ヒワタリ84-1うおぬま眼科0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(13)13ab下眼瞼牽引筋腱膜の後層瞼板Lookwood靱帯睫毛下眼瞼牽引筋腱膜下斜筋の前層下直筋眼輪筋図1下眼瞼の解剖模式図(a)と下眼瞼睫毛内反症の病態模式図(b)a:下眼瞼牽引筋腱膜の前層が瞼板前方を走行し,皮膚穿通枝により睫毛を外反させている(文献14より改変引用).b:下眼瞼牽引筋腱膜の前層から連続する皮膚穿通枝が,正常と比較すると未発達もしくは欠損している.また,余剰皮膚の存在や瞼板前眼輪筋の乗り上げも悪化させる要因と考えられている().図2内眼角贅皮(epicanthalfold)の発達した症例a:術前.内眼角贅皮が発達し,下眼瞼前葉が睫毛を眼球に押し付けているように見える.b:Hotz変法にredraping法を組み合わせた症例.顔貌の変化も少なく睫毛内反も改善している.c:術前.この症例も内眼角贅皮が発達している.d:Hotz変法にZ形成術を組み合わせた症例.睫毛内反は改善しているが,顔貌の変化は比較的大きい.図3下眼瞼後退が顕著な症例左下眼瞼後退が著明で下方球結膜が露出している.このような症例にHotz変法だけでは対応できない.図4上下眼瞼の動きとrolluptest(surgeon'sview)a:上眼瞼を軽く挙上した状態では睫毛内反は軽度である.b:上眼瞼を通常の開瞼まで引き上げると,下眼瞼前葉がつられて挙上する(:rolluptest陽性).c:この上下の連絡()を絶つような手術手技を選択する.図5LERsの切離を加えたHotz変法a:瞼縁から3~4mm程度のところに睫毛下切開ラインを引く.b:睫毛下切開から眼輪筋を.離し瞼板下縁に到達する.c:LERsを下眼瞼瞼板下縁および結膜から.離する.d:下眼瞼瞼板下縁と睫毛側皮下を7-0モノフィラメント糸で縫合する.LERsは.離したままである.e:余剰皮膚を切除する.f:皮膚を7-0モノフィラメント糸で縫合して終了である.図6Turn.overseptum.ap法によるLERs延長術を加えたHotz変法a:睫毛下切開から眼輪筋を.離し,瞼板と眼窩隔膜表面を露出する.b:LERsを下眼瞼瞼板下縁および結膜から.離する.c:LERsの伸展したい量より多めに眼窩隔膜の切離幅(眼瞼後退量の2倍+2mm程度)を決める.d:横方向に眼窩隔膜を切開すると眼窩脂肪が見える.e:翻転した眼窩隔膜を鑷子で把持している.f:翻転した眼窩隔膜と下眼瞼瞼板下縁および睫毛側皮下を7-0モノフィラメント糸で埋没縫合する.g:縫合終了した状態.これを4針程度行う.図7結膜自体の伸展が悪い症例LERsを下眼瞼瞼板下縁および結膜から.離したあとに,結膜横切開を加えてさらに減張している.図8Lidmarginalsplitting法a:Hotz変法を行った後に内反矯正が不十分な症例は,graylineを11番メスなど先が鋭利なもので切開する.b:瞼縁は切離した状態のまま,皮膚縫合して終了である.瞼縁の切開部は数週間で目立たなくなる.図9Z形成術のデザインa:内眼角贅皮を正中に引っ張り,涙丘鼻側にあたる位置にマーカーを置く.b:皮膚を戻し固定しておいたマーカーで付けた内眼角贅皮表側の点をA点とする.c:A点から,上眼瞼の重瞼ラインもしくは開瞼した際の瞼縁に沿ってラインを延ばしてD点とする.d:内眼角贅皮の最尾側下端をB点とする.e:B点から内眼角贅皮裏側の点をC点とする.f:A-B-Cで形成された皮弁の頂点BをD点に移動させる.g:Hotz変法と組み合わせることで睫毛内反と内眼角贅皮が解消される.h:睫毛下の皮膚切除も同時に行う場合は,切除幅が含まれるようにデザインする.図10内眼角贅皮の上下の連絡を絶つ重要な操作内眼角贅皮下のCsubcutaneous.brousband()を切離し,さらに眼輪筋を内眥腱直上まで.離し,必要に応じて眼輪筋も切離する.図11Redraping法を加えたHotz変法a:皮膚切開もしくは皮膚切除分の皮弁を作製する.b:下眼瞼瞼板下縁まで眼輪筋を.離し,subcutaneous.brousbandの切離や眼輪筋の処理を行う.Cc:Hotz変法を行う.Cd:不要な皮膚切除を行い,Z形成術のデザインのCA点とCC点を縫合する.e:睫毛下切開部も縫合して終了である.内眼角贅皮は解除されている.図12Jones変法の手術手技a:眼輪筋を.離し下眼瞼の瞼板下縁に到達した後,LERsを瞼板下縁から結膜と.離する.Cb:眼窩隔膜を切開し,LERsの前層を剖出する.Cc:剖出後はC7-0モノフィラメント糸でCLERsの前後層と瞼板下縁,睫毛側皮下の埋没縫合をC4針程度行う.Cd:Jones変法が終了した状態.これから水平方向の弛緩矯正を行う.図13Lateraltarsalstripprocedureを併用した症例a:外眼角部のCcanthotomyを行い骨膜に達する.Cb:今度はその切開部からCcanthol-ysisを下眼瞼瞼板下縁に沿って行う.Cc:下眼瞼皮膚切開ラインから瞼縁側の皮膚および眼輪筋,睫毛を横幅数Cmm分すべて切除する.Cd:瞼結膜上皮をバイポーラで焼灼して除去する.e:この段階で文字通りCtarsalstripとなる().f:Canthlysis部から眼窩内側骨膜上の周囲を.離する.g:Whitnall結節にC5-0モノフィラメント糸を通糸する.通糸できていればピンと糸が張る.Ch:Tarsalstripに同糸をかけて縫合する.Ci:しっかりと縫合できた状態では下眼瞼のテンションが変化し,ピンと張る.j:皮膚縫合を行い終了である.通常皮膚切除は必要ない.図14Lateralcanthopexyを加えた症例a:外眥部へ眼輪筋下の.離行い,lateralcanthalbandの下脚を一部切除する.Cb:眼窩内側のCWhitnall結節を剖出する.Cc:Whitnall結節の骨膜をC5-0モノフィラメント糸で通糸する.Cd:瞼板外側端に通糸し縫合する.Ce:縫合できた状態だと下眼瞼のテンションが変化する.f:皮膚縫合を行い終了である.この場合も通常皮膚切除は必要ない.–

視機能を考慮した眼瞼下垂手術

2021年1月31日 日曜日

視機能を考慮した眼瞼下垂手術BlepharoptosisSurgeryandVisualFunction鄭暁東*はじめに眼瞼下垂とは,まぶたが下がって上方の視野が狭くなり,見えにくくなるなど視機能にも異常をきたす病態である.先天性,神経原性も含めさまざまな原因があるが,超高齢化に伴い,加齢による退行性眼瞼下垂が急増している.また,20年,30年前に若年だったハードコンタクトレンズユーザーたちは現在中高年となり,まぶたが下がることに起因するコンタクトレンズの諸症状に悩まされている.したがって,外来ではすでに多くの患者を経験しているのが現状であり,もはや眼瞼下垂は日常診療で避けて通れない眼科の“commondisease”となっているといっても過言ではない.眼瞼下垂の問題点は,まぶたが下がるという外見上の問題だけではなく,上方視野の狭窄や下垂によって代償的に前頭筋や肩および背中の筋の過緊張が生じ,頭痛や肩こりなどのさまざまな疲労症状が現れることである.こういった症例への眼瞼下垂手術は,まぶたを上げることによって視野が広がり,見え方も体の姿勢までも改善し,まさに姿かたちが若返ることによって,患者の表情が明るくなり,QOV(qualityofvision),さらにquali-tyoflife(QOL)までも改善することにつながる.本稿では,筆者が近年,退行性眼瞼下垂における挙筋短縮術前後の視機能の変化について検討した内容や眼精疲労など自覚症状についてのアンケート調査結果,さらに新しい知見について述べる.I眼瞼下垂と角膜形状および高次収差加齢による角膜形状の変化として,直乱視から倒乱視化することは以前より知られている.その成因については諸説あるが,加齢による輻湊力の低下,内直筋力の低下,上眼瞼の圧力の低下,または眼瞼挙筋の緊張低下などによると考えられている.角膜の倒乱視化により不整乱視が持ちこまれ,これも加齢による視機能低下の一因となっていると考えられる.眼瞼下垂がもたらす角膜形状変化についての報告は以前から散見される.多数にわたる症例検討の初期の報告は先天性下垂について行われている.Caderaらは,先天性下垂の術後36%症例で,角膜乱視量は0.75D以上の変化がみられ,吊り上げ術と挙筋短縮術に有意差はないと報告した1).Brownらは18例の退行性下垂をビデオケラトスコープにて検討し,術後に直乱視化傾向を認めたとしている2).さらに,Zinkernagelらは術式についても検討し,挙筋短縮,大量脂肪切除併用術は角膜乱視変化量がより大きく,眼瞼皮膚切除術のみより角膜曲率,乱視の変化に大きく影響を与えるという結果を報告している3).近年の角膜解析では屈折率,乱視量のほか,より視機能に関連した項目である高次収差(highorderaberra-tion:HOA)の測定も眼瞼下垂術の評価に応用されるようになった.Kimらは16例の眼瞼皮膚切除および挙筋短縮症例を検討し,術後totalHOA,三次および四次収*XiaodongZheng:愛媛大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕鄭暁東:〒791-0295愛媛県東温市志津川愛媛大学医学部眼科学教室0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(3)3図1角膜形状解析装置OPDIII(ニデック)による全高次収差およびコマ収差の解析①角膜乱視量,②明所視,③薄暮視.a0.01b0.010.02術前術後0.02術前術後ContrastThreshold0.64ContrastThreshold0.040.080.160.326.34.02.51.61.00.66.34.02.51.61.00.6DegDeg図2CGT2000(タカギセイコー)による自覚コントラスト感度検査縦軸はコントラスト感度の閾値でコントラスト感度の逆数である.横軸は視標の角度(deg)で数字が小さいほうが空間周波数が高い.明所視(a)および薄暮視(b)のグレアo.状態では,高周波領域において術後の感度は術前より有意に改善した(*p<0.05).図3OPDIIIによる他覚コントラスト検査コントラスト感度を波面収差から他覚的にシミュレーションした解析グラフ(MTF)より,自動的に症例のTotal高次収差(青線下面積)値を正常眼の値(緑線下面積)で割ってarearatioを算出する.右眼左眼術前術後3日目図4眼瞼下垂術前後の前眼部写真小切開挙筋短縮術後C3日目,MRD1の向上およびClashptosisの改善を認めた.術前の写真は眼底検査のため散瞳している.C-afailpass1分間連続で視力を測定⇒日常生活での視機能を評価図5実用視力計測装置FVA.100(ニデック)の検査アルゴリズムa:1分間の連続視力計測を行う.視標は自動的に変化し,被検者が認識しない,もしくは誤読した場合は自動に拡大(一段下げ)し,正解の場合は自動的に縮小(一段上げ)する.Cb:視力変動曲線より実用視力(FVA),視力維持率(VMR),最高視力,最低視力および平均反応時間などを評価する.b□ミエタ100/120■ミエナカッタ20/120△モウテンエスターマンキノウスコア:83図6Esterman両眼開放視野検査a:Humphrey自動視野計(HumphreyCFieldCAnalyzerIICi-series,Zeiss)による術前および術後の検査風景.Cb:視野結果の左下にCEstermanスコアが自動に表記され,120個視標を全部見ることができたら,EstermanスコアはC100点となる.この症例のスコアは(100/120)C×100=83点となる.(mm)図7眼瞼下垂術前後の自覚症状についてのアンケート調査「焦点が合わない」「二重に見える」など視機能に関連するC10項目について眼瞼下垂の術前後のVAS(visualanalogscore)を示す.術前よりすべての項目は改善傾向を示した(*p<0.05).==術前CEstermanスコアの平均C85.3C±12.1に対して,術後はC92.5C±8.4まで有意に改善した.また,術前シミュレーションのスコアと,術後のスコアを比較しても有意差は認めなかった.これにより,Esterman両眼視野検査およびテーピング開瞼方法は,定量的に術後の視野の予測ができることが明らかになった.さらに,術前のCEstermanスコアは年齢と負の相関,MRD1と正の相関を示した.これは,加齢のためCMRD1が低下し,結果として上方の視野感度の低下によるものと考える.実際,術後にCMRD1が改善したことで,上方の視標が視認できようになり,Estermanスコアに反映されたものであり,手術による眼瞼位置の変化によるものと考える.Estermanスコアの改善率は,術前のスコアと挙筋機能のそれぞれと有意な負の相関を認めた.術前下垂が重度なほどCMRD1はもちろん低く,また挙筋機能が弱いほど開瞼困難であるため,術後有意な視野改善が期待できる.Esterman両眼開放視野検査は,術前後視機能評価にも,手術の適応の判断にも応用できると考える.CV眼瞼下垂と眼精疲労の自覚症状Battuらは眼瞼下垂術後の自覚視機能およびCQOLの改善を報告した17).筆者らは,眼瞼下垂の術後眼精疲労に関するアンケート調査を行った.「眼が疲れる」「眼の奥が痛い」「眼が乾く」「焦点が合いづらい」「物が二重に見える」「頭痛がする」「肩がこる」「物がちらついて見える」「いらいらする」「寝つきが悪い」などC10項目について視覚的評価尺度(visualCanalogscore:VAS)で評価した.各項目について,「症状がまったくない」を0Cmm基点とし,「一番強い」をC100mmとした直線上に,自覚症状に該当する箇所を被験者にマークさせ,基点からマーク位置までの長さを計測した5).結果は,10項目すべてで術前より術後のほうが減少傾向にあり,とくに「焦点が合いずらい」「物が二重に見える」など見え方の関連項目,また「肩がこる」「いらいらする」という項目では有意差を認めた(図7).これは,前述のように,術後乱視や高次収差の軽減やコントラスト感度の改善によって見え方が改善したためと考える.さらに,眼瞼下垂には代償的に眉毛挙上,過度な前頭筋収縮やCchinup頭位を取るため背頭筋の緊張も続くため,頭痛や肩こりなどを合併することが多い.また,眼瞼挙筋による開瞼不全のため交感神経の支配するMuller筋の緊張度も高まり,自律神経のバランスが崩れやすいと考える.術後,開瞼しやすくなるためMuller筋の緊張も前頭筋の緊張も下がり,交感神経の興奮状態も静まり術後の肩こりやいらいらする症状の改善につながると考えられる18,19).おわりに眼瞼下垂は,単に加齢によって徐々に進行するだけではなく,コンタクトレンズの使用や緑内障など内眼手術後に発症することが多い20).また,眼瞼下垂は,単に外見上の問題だけでもなく,乱視や高次収差の増加,コントラスト感度や実用視力の低下による視機能の低下をきたすことが明らかとなっている.われわれ眼科医としては,眼瞼下垂を美容的な問題としてだけではなく,視機能に与える影響について十分理解し,今後さらに進む高齢社会のなかで,急速に増加するであろう患者のCQOVとCQOLの改善のために,正しい診断および適切な治療が求められる.文献1)CaderaW,OrtonR.B,HakimO:ChangesinastigmatismafterCsurgeryCforCcongenitalCptosis.CJCPediatircCOphthalCStrabismusC29:85-88,C19922)BrownMS,SiegelIM,LismanRD:Prospectiveanalysisofchangesincornealtopographyafteruppereyelidsurgery.COphthalPlastReconstrSurg15:378-383,C19993)ZinkernagelMS,EbneterA,Ammann-RauchD:E.ectofupperCeyelidCsurgeryConCcornealCtopography.CArchCOph-thalmolC125:1610-1612,C20074)KimCJW,CLeeCH,CChangCMCetal:WhatCcausesCincreasedCcontrastCsensitivityCandCimprovedCfunctionalCvisualCacuityCafterCupperCeyelidCblepharoplasty?CJCCraniofacCSurgC24:C1582-1585,C20135)鄭暁東,五藤智子,鎌尾知行ほか:眼瞼下垂術後における角膜形状,自覚及び他覚視機能の変化.臨眼C72:245-251,C20186)檀之上和彦,宮田信之,平澤一法:加齢性眼瞼下垂手術による視機能についての評価.臨眼C68:1335-1339,C20147)三戸秀哲,山崎太三,畑中宏樹ほか:Lashptosisは視機能に影響する.眼臨医報C100:363,C20068)GotoCE,CYagiCY,CMatsumotoCYCetal:ImpairedCfunctionalC10あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021(10)’C-’C

序説:眼形成手術の適応と選択─考える術者をめざそう!

2021年1月31日 日曜日

眼形成手術の適応と選択─考える術者をめざそう!IndicationsandOptionsforOculoplasticSurgery─AimBeathoughtfulSurgeon鎌尾知行*渡辺彰英**大橋裕一***形成外科は紀元前600~700年にインドで誕生したと考えられている.当時は刑罰の一つとして「鼻切り」や「耳切り」が行われており,刑罰後の欠損した鼻や耳の再建の必要性から,鼻や耳を作ることが行われるようになり,形成外科が誕生した.近代の形成外科は戦争とともに発展したといっても過言ではない.ソードやスピア,銃,大砲などさまざまな武器が開発されるとともに,さまざまな外傷が生じた.形成外科学はそれらの身体各部の損傷や欠損を治療するために発展し,外科学の一つとして確立したのである.そして第一次世界大戦以降,戦車と戦闘機が出現し,武器の性能が飛躍的に向上することで,死傷者数が著しく増加し,多数の戦傷者の治療を通して形成外科もまた大きく進歩した.それまで創傷は縫合するだけだったのが,治癒過程で瘢痕形成することが問題となり,元の形に復元すべく皮膚移植法などさまざまな方法が開発されたことで,再建外科的な治療としての形成外科が発展したのである.一方,わが国でも西洋の近代医学が流入し,形成外科学が誕生した.そして眼形成分野は形成外科学の一つとして派生した.当初の眼形成外科は眼科医だけでなく整形外科医,皮膚科医も担っていた.1897年に発刊された『日本眼科学会雑誌』の第1巻第1号には,当時の東京大学医学部眼科学教室教授である河本重次郎が先天眼瞼下垂症に対する手術の論文を投稿しており,切除した残余眼瞼皮膚を用いた前頭筋吊り上げ術が報告されている.現在では筋膜や縫合糸,人工材料を用いるようになり,美しく機能的な治療を行うことが可能となっているが,100年以上前の当時でも素晴らしい眼形成手術がわが国の眼科医により行われていたことがわかる(図1).この第1巻第1号には合計88題の論文が寄せられているが,そのうち11題(12.5%)が眼形成関連の演題であり,眼形成外科学が眼科において重要な位置を占めていたことがわかる.しかし,その後は医療技術の進歩とともに内眼手術が脚光を浴びるようになり,眼形成分野に興味をもつ眼科医が徐々に減少してしまい,わが国では眼形成外科が下火となってしまった.そのため眼形成分野が着実に進歩しているにもかかわらず,その成果がわかりにくく,一般眼科医にとってとっつきにくい分野になってしまっていることは否定できない.2011年に日本涙道涙液学会が,2013年に日本眼形成再建外科学会が発足し,着実に学会員数を増やす中で,眼形成外科分野が徐々に裾野を広げている.それに伴い,多くの手術テキストが刊行され,*TomoyukiKamao:愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻器官・形態領域眼科学**AkihideWatanabe:京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学***YuichiOhashi:愛媛大学0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(1)1図1切除した眼瞼皮膚を用いた先天眼瞼下垂症に対する前頭筋吊り上げ術左写真2枚が左側の先天眼瞼下垂術前後,右写真2枚が右側の先天眼瞼下垂術前後写真である.(河本重次郎:眼瞼下垂症手術.日眼会誌1:61-64,1897,図2より引用)講演会なども各地で開催され,眼形成手術について学ぶ機会が増えてきた.しかし,たとえば眼瞼下垂手術についても,挙筋腱膜短縮術や挙筋群短縮術,前頭筋吊り上げ術,経皮的・経結膜的Muller筋タッキングなどさまざまな手術術式が報告されており,治療法の選択に苦慮することがある.各手術にはそれぞれ特色があり,病態に応じた手術の選択が望ましいが,すべての術式に精通して治療を選択するのは至難の業であり,この術式の多さが眼形成手術が敬遠される一つの要因になっている.そこで本特集のテーマを「眼形成手術の適応と選択―考える術者をめざそう!」と定め,一般的な眼形成疾患を中心に,さまざまな術式がどのような病態に対する手術なのか,どのような時期にすればもっとも効果があるのか,どのようにすれば再発・合併症を低く抑えることができるか,美的再建のみならず機能再建にどの程度寄与するか,などについて深く掘り下げ,明日からの臨床の術式選択の一助となるよう企画した.エキスパートの先生方の眼形成の考え方のエッセンスに触れることで,読者の先生方が一歩先に進んだ眼形成手術が行える特集になれば幸いである.2あたらしい眼科Vol.38,No.1,2021(2)

眼窩蜂窩織炎に併発した孤立性線維性腫瘍の1例

2020年12月31日 木曜日

《原著》あたらしい眼科37(12):1568.1571,2020c眼窩蜂窩織炎に併発した孤立性線維性腫瘍の1例大森友理恵*1橋本雅人*2井田洋輔*1日景史人*1大黒浩*1*1札幌医科大学眼科学講座*2中村記念病院CARareCaseofSolitaryFibrousTumorAssociatedwithOrbitalCellulitisYurieOmori1),MasatoHashimoto2),YosukeIda1),FumihitoHikage1)andHiroshiOhguro1)1)DepartmentofOphthalmology,SapporoMedicalUniversity,2)NakamuraMemorialHospitalC目的:眼窩蜂窩織炎に併発した孤立性線維性腫瘍を報告する.症例:患者はC77歳,女性.左眼の上眼瞼腫脹を主訴に近医眼科を受診し,左眼窩蜂窩織炎および左眼窩内腫瘍を指摘され精査加療目的で札幌医科大学病院を紹介受診となった.当院初診時,左上眼瞼腫脹,開瞼困難,眼球運動痛を認めた.CT,MRI検査では眼球後面に隣接する不整形の異常陰影がみられ,眼窩蜂窩織炎を第一に考え,抗菌薬の全身投与を行った.抗菌薬投与により眼瞼腫脹は改善したが,結膜下にサーモンピンク状の腫瘍を認めた.さらに,結膜下腫瘍部の生検を行ったところCpatternlesspatternな細胞増殖を認め,免疫染色でCCD34,vimentin,STAT6が陽性,S-100が陰性であり,孤立性線維性腫瘍(SFT)と診断した.結論:SFTに眼窩蜂窩織炎が合併した症例を経験した.合併の原因は不明であるが,SFTに蜂窩織炎が合併した報告は筆者らが調べた限り過去になく,貴重な症例と思われた.CPurpose:Toreportararecaseofsolitary.broustumorassociatedwithorbitalcellulitis.Casereport:ThisstudyCinvolvedCaC77-year-oldCwomanCwhoCinitiallyCvisitedCanotherCinstitutionCafterCbecomingCawareCofCswellingCinCherleftuppereyelid,andwassubsequentlyreferredtoourhospitalduetotheobservedleftorbitalcellulitisandatumorintheleftorbit.Initialexaminationrevealedswellinginherleftuppereyelid,di.cultyopeningtheeyelids,andeye-movementpain.Computedtomographyandmagneticresonanceimagingoftheorbitshowedaheteroge-neousmasslesionsurroundingtheposterioreyeball,thussuggestinganorbitalin.ammationsuchasorbitalcelluli-tis.Systemicantibioticswereadministeredandtheeyelidswellingimproved,yetslit-lampexaminationrevealedasalmon-pinksubconjunctivaltumor.Abiopsyofthetumorwasperformed,andapatternlesscellproliferationwasobserved.ImmunostainingwaspositiveforCD34,vimentin,andSTAT6,andnegativeforS-100.Duetothepatho-logical.ndings,thediagnosiswasasolitary.broustumor(SFT).Conclusion:Tothebestofourknowledge,thisisthe.rstreportedcaseofasubconjunctivalSFTassociatedwithorbitalcellulitis,andthereasonfortheassocia-tionremainsunknown.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)37(12):1568.1571,C2020〕Keywords:孤立性線維性腫瘍,眼窩蜂窩織炎.solitary.broustumor(SFT),orbitalcellulitis.Cはじめに孤立性線維性腫瘍(solitaryC.broustumor:SFT)は,おもに胸膜から発生する間葉系細胞由来の腫瘍である.悪性度では良悪性の中間性に分類される.頻度はC10万人当たりC2.8人のまれな腫瘍であり1.3),胸膜以外にも頭頸部や四肢・体幹などあらゆる部位に発生することが知られている.また,外科的治療のみで治療成績は比較的良好であるが,ときに再発や転移をきたすこともある.SFTは線維性血管組織に富むCpatternlessな増殖様式を基本像とし,多彩な組織像を示し,眼窩内発生は非常にまれである1,2).SFTは術前診断が困難な腫瘍の一つである.今回筆者らは,眼窩蜂窩織炎を発症し,結膜下腫瘍生検で確定診断に至った,眼窩内に発生したCSFTのC1例を経験したので報告する.CI症例患者:77歳,女性.〔別刷請求先〕大森友理恵:〒060-8556北海道札幌市中央区南C1条西C17丁目札幌医科大学眼科学講座Reprintrequests:YurieOmori,M.D.,DepartmentofOphthalmology,SapporoMedicalUniversity,S1W17,Chuo-ku,SapporoCity,Hokkaido060-8556,JAPANC1568(104)冠状断水平断図1初診時眼窩部単純CT左眼窩内の上鼻側から眼球後方にかけて,最大径C38Cmmの境界不明瞭な異常陰影を認めた.周囲の骨破壊像は認めなかった.T1強調画像(冠状断)T2強調画像(水平断)造影T1脂肪抑制併用画像(水平断)図2眼窩部MRIT1,T2強調画像ともに低信号の分葉状の異常陰影を認めた(.).異常陰影の辺縁は不整で,左眼球後壁に沿うように前方に伸展していた.造影CMRIでは造影効果を伴っていた(.).主訴:左上眼瞼腫脹.現病歴:2019年C4月の起床時に左眼瞼の発赤,腫脹を自覚した.近医眼科を受診し,眼窩蜂窩織炎が疑われた.さらにコンピューター断層撮影(CT)で左眼窩内に異常陰影を認めたため,翌日に精査加療目的で札幌医科大学病院眼科(以下,当科)受診となった.既往歴:糖尿病,高血圧症,高脂血症,気管支喘息あり.副鼻腔疾患の既往はなし.初診時所見:視力は右眼C0.2(1.0C×sph.1.00D(cyl.1.75CDAx80°),左眼0.3(0.7C×sph.1.50D(cyl.1.50DAx90°),眼圧は右眼C13CmmHg,左眼C11CmmHg,両眼とも水晶体再建術後の眼内レンズ挿入眼であった.前眼部所見は左上眼瞼の腫脹が強く,開瞼,眼瞼の翻転が困難であり,結膜充血を認めた.眼底は正常であった.また,左眼の軽度内上転障害,および眼球運動痛を認めた.前医で撮影した眼窩部単純CT画像検査では,左眼窩内の上鼻側から眼球後方にかけて,最大径C38Cmmの境界不明瞭な異常陰影を認めた(図1).また,軽度の副鼻腔炎を認めたが,周囲の骨破壊像は認めなかった.血液検査では,白血球の軽度の上昇を認めるほかは,特記所見を認めなかった(WBC9,800/μl,CRP<0.10Cmg/dl,sIL-2R576CU/ml,IgG412.2Cmg/dl).経過:精査加療目的で紹介当日に当科入院となった.磁気共鳴画像(MRI)検査では,T1,T2強調画像ともに低信号の分葉状の異常陰影を認めた.辺縁は不整で,左眼球後壁に沿うように進展しており,造影効果を伴った(図2).また,全身造影CCT画像検査では,眼窩部の他に特記所見を認めなかった.眼窩蜂窩織炎を疑い,入院日からC3日間セファゾリンナトリウム(セファゾリン)1Cg/日の点滴静注を行い,その後C2週間セファクロル(ケフラール)750Cmg/日の内服投与を行った.抗菌薬投与後,左上眼瞼腫脹は改善し,左眼球結膜下にサーモンピンク色の扁平な腫瘍を確認できるようになった(図3).MRI画像や前眼部所見より悪性リンパ腫が疑われたため,診断確定のために初診からC3週間後に結膜下の扁平な腫図3抗菌薬投与後の前眼部写真図4腫瘍のHE染色抗菌薬投与開始後,左上眼瞼腫脹は改善を認めたが,左眼球結膜膠原線維を背景に,腫大した楕円形核を有する紡錘形細胞(.)下にサーモンピンク色の扁平な腫瘍が認められた.や多核細胞(.)がCpatternlesspatternに増殖していた.Scalebar:100Cμm.CD34陽性vimentin陽性STAT6陽性S-100陰性図5腫瘍の免疫染色CD34,vimentin,STAT6が陽性,S-100が陰性であった.Scalebar:100Cμm.瘍部位の生検を施行した.病理学的所見では,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色で,膠原線維を背景に腫大した楕円形核を有する紡錘形細胞や多核細胞がCpatternlessCpatternに増殖していた(図4).また,得られた検体では,複数のリンパ濾胞を認めたほか,正常の結膜と浮腫状の結膜組織が混在しており,古い炎症と浮腫の改善過程を示していた.免疫染色でCCD34,vimentin,STAT6が陽性,S-100が陰性であることより,SFTと診断された(図5).生検後は眼瞼腫脹が完全に消失し,結膜下の腫瘍が確認できなくなった.眼窩内残存腫瘍の外科的切除目的に当院形成外科に入院予定となったが,形成外科紹介後もCMRIで異常陰影は縮小傾向が持続し,最終的には確認できなくなった(2020年C1月)ため,外科的切除はせず経過観察となった.CII考按本症例では臨床経過や前医からのCCT検査から眼窩蜂窩織炎を疑い,抗菌薬の全身投与を行った.その結果,眼周囲の腫脹は改善し,結膜下にサーモンピンク色の結膜下腫瘍が確認されたため,診断目的で部分生検を行い,免疫染色などからCSFTと診断された.SFTは比較的まれな間葉系細胞由来の腫瘍であり,おもに胸膜での発生例が多く報告されている.その他,肺,心膜,腹膜,肝,腎,縦隔,上気道,副腎,膀胱,前立腺,甲状腺,皮膚,鼻腔,副鼻腔などからの発生例も報告されているが,眼窩内発生例はまれである.わが国における眼窩内発生のCSFTはこれまでにC17例報告されている4).SFTは病理組織学的検査(免疫染色)でCCD34,STAT6およびCvimentinで陽性,その他抗体で陰性を示すことから3)診断され,治療のためにおもに外科的切除が行われる.眼窩内に発生したCSFTは典型的には無症状で経過し,平均C2年間かけて緩徐に進行する片側性の無痛性眼球突出,視力低下,眼球運動障害,眼瞼(眼窩)の腫瘤触知などをきたす場合が多い1,2).本症例では結膜下にサーモンピンク色の腫瘍を認めたことから,当初は悪性リンパ腫を疑った.確定診断のために行った病理学的検査の結果,紡錘形細胞がCpat-ternlesspatternに増殖していたこと,CD34,STAT6,vimentinが陽性であったことからCSFTと診断された.なお,悪性リンパ腫などのCB細胞リンパ腫でみられるCIgH遺伝子の再構成も本症例では認められなかった.従来の報告では,SFTは緩徐に進行する眼球突出で発見され,画像所見では境界明瞭な楕円形腫瘍として描出されることが多い1,5).MRI所見についてはCT1強調画像で等信号3,4)または低信号1)とされており,T2強調画像で低信号1,3),または腫瘍中心部は等信号または低信号で,辺縁部は高信号5)と多様である.Gigantelliら3)は,MRIで腫瘍内が不均一な信号を示すことが特徴であると報告している.高信号部分は出血や比較的新しい線維増殖などのCvariouscellularcompo-nentとされている6).造影CMRIに関しても腫瘍全体が均一に造影される症例5)と腫瘍辺縁部が強く造影される症例1,7)などさまざまである.腫瘍の細胞間質が豊富な部分は早期濃染およびCwashoutパターンを示すとされている8).本症例は急激な眼瞼腫脹で発見されたという臨床経過,MRIでは造影効果のある充実性腫瘍の信号変化を示したが,眼球後面に沿うように浸潤する不整形陰影であることからSFTの既報とは異なった臨床所見であった.また,本症例では抗菌薬投与後に眼瞼腫脹の改善を認め,その後CMRIでみられた異常陰影も縮小し,最終的には消失したことから,SFTと眼窩蜂窩織炎の合併が疑われた.初診よりC3週間後に行われた組織生検の病理所見でも,古い炎症と浮腫の改善過程を示す所見を認めており,SFT単独ではなくなんらかの炎症の合併を裏付けていた.また,眼窩内異常陰影が抗菌薬投与によって縮小,消失したことから,眼窩内病変は蜂窩織炎が主であり,結膜下に従来からあったCSFTに炎症が波及したものと考えられた.これまでにCSFTに蜂窩織炎を合併した報告例はなく,本症例のようになぜ両者が合併したのかは不明である.従来の報告されているCSFTの症例では,全例で外科的切除を施行されており,経過観察を行っている症例の報告は見つからなかった.外科的切除が選択される理由は,SFTは比較的良性の腫瘍とされているが,なかには再発や転移といった悪性の性格を有する症例も散見するためである9).悪性度については未だ統一した見解はないが,形態学的にはC10cm以上のもの,浸潤性発育をするもの,広基性のものが,Englandらが報告した組織学的悪性度の指標では,①高い細胞密度,②強拡大C10視野にC4個以上の核分裂像,③核の多型性,④出血および壊死巣の存在を認める場合は悪性度が高いとされている10).本症例では上述のいずれの所見も認めず,悪性のCSFTである可能性は低いと考えられるが,SFTを切除せず経過観察している報告はなく,また切除した場合でも再発,転移を示した症例の報告があるため,長期的な経過観察が必要と考えられる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)中村靖,大塚賢二,橋本雅人ほか:眼窩内に発生したCsol-itary.broustumorのC1例.臨眼C53:1381-1384,C19992)宮城尚久,杉田保雄,寺崎瑞彦ほか:眼窩内Csolitary.broustumorのC1例.脳神経外科ジャーナル7:243-247,C19983)GigantelliCJW,CKincaidCMC,CSoparkarCCNCetal:OrbitalCsolitaryC.broustumor:radiographicCandChistopathologicCcorrelations.COphthalmicCPlastCReconstrCSurgC17:207-214,C20014)笠井健一郎:眼窩腫瘍の鑑別診断のコツ.臨眼C72:170-181,C20185)TakamuraH,KannoM,YamashitaHetal:Acaseoforbit-alCsolitaryC.brousCtumor.CJpnCJCOphthalmolC45:412-419,C20016)YangCBT,CWangCYZ,CDongCJYCetal:MRICstudyCofCsoli-taryC.brousCtumorCinCtheCorbit.CAmCJCRoentgenolC199:C506-511,C20127)FukunagaM,UshigomeS,NomuraKetal:Solitary.broustumorCofCtheCnasalCcavityCandCorbit.CPatholCIntC45:952-957,C19958)ZhangZ,ShiJ,GuoJetal:ValueofMRimagingindif-ferentiationCbetweenCsolitaryC.brousCtumorCandCschwan-nomaintheorbit.AmJNeuroradiolC34:1067-1071,C20139)HayashiS,KuriharaH,HiratoJetal:Solitary.broustumoroftheorbitwithextraorbitalextension:casereport.Neu-rosurgeryC49:1241-1245,C200110)EnglandCDM,CHochholzerCL,CMcCarthyCMJCetal:Local-izedbenignandmalignant.broustumorsofthepleura.AclinicopathologicCreviewCofC223Ccases.CAmCJCSurgCPatholC13:640-658,C1989***

片眼小眼球症に胎生血管系遺残と水晶体形状・位置異常を合併した2症例

2020年12月31日 木曜日

《原著》あたらしい眼科37(12):1564.1567,2020c片眼小眼球症に胎生血管系遺残と水晶体形状・位置異常を合併した2症例岡本美里*1,2松下五佳*1渡部晃久*1園田康平*2近藤寛之*1*1産業医科大学病院眼科*2九州大学大学院医学研究院眼科学分野CTwoCasesofUnilateralMicrophthalmia,PersistentFetalVasculature,AnteriorSegmentDysgenesis,Spherophakia,andCrystallineLensSubluxationMisatoOkamoto1,2),ItsukaMatsushita1),AkihisaWatanabe1),Koh-HeiSonoda2)andHiroyukiKondo1)1)DepartmentofOphthalmology,UniversityofOccupationalandEnvironmentalHealth,2)DepartmentofOphthalmology,KyushuUniversityC片眼小眼球症に胎生血管系遺残(PFV)と水晶体形状・位置異常を合併したC2症例を報告する.2症例とも正期産で全身異常や家族歴を認めず,右眼には特記すべき所見はなかった.症例C1はC2カ月の男児.左眼に小眼球,小角膜を認めた.左眼の角膜は透明で,虹彩の低形成,一部無形成を認めた.眼底はCPFV様の白色組織を認め,網膜には広範囲の無血管を認めた.頭部CMRIでは球状水晶体の鼻側偏位を認め,視神経は狭小化し無形成の所見であった.症例C2はC3カ月の男児.左眼に小眼球と小角膜を認め,虹彩は低形成で眼内は透見が不良であった.超音波CBモードエコーでCPFV組織と水晶体の異形成を認め,頭部CMRIでは.胞状を呈して後方に偏位した水晶体を認めた.2症例とも網膜電図では左眼の反応を認めなかった.PFVを伴う小眼球症では,水晶体の形成異常などの前眼部異常だけでなく,後眼部や視神経の異常などの多彩な組織異常を併発する症例がある.CPurpose:Microphthalmiaisamajorcongenitalanomalyoftheeyethathasdi.erentetiologies,andisassoci-atedCwithCvariousCcongenitalCabnormalities,CsuchCasCpersistentCfetalvasculature(PFV)andCanteriorCsegmentCdys-genesis(ASD).Here,wereporttwocasesofunilateralmicrophthalmiawithPFV,ASD,spherophakia,andcrystal-lineClensCsubluxation.CCasereports:CaseC1CinvolvedCaC2-month-oldCboyCwithCaCsmallCeyeballCandCsmallCcorneaCobservedinhislefteye.Thereweregeneticabnormalitiesandnofamilialhistory,andnoremarkable.ndingswereobservedCinChisCrightCeye.CTheCleft-eyeCcorneaCwasCtransparent,CwithChypoplasiaCandCpartialCaplasiaCofCtheCiris.CACwhitetissueresemblingaPFVremnantwasobservedinthefundus,andawide-rangeavascularretinallesionwasobserved.CHeadCmagneticCresonanceimaging(MRI)revealedCaCnasalCdeviationCofCtheCglobularClensCandCthatCtheCopticCnerveCwasCnarrowedCandCaplastic,CandCanelectroretinogram(ERG)revealedCnoCresponse.CCaseC2CinvolvedCaC3-month-oldboywithasmalleyeballandasmallcorneaobservedinhislefteye.Theiriswashypoplastic,thusobstructingviewintotheinsideoftheeye.UltrasoundB-modeimagingrevealeddysplasiaofthePFVtissueandlens,aheadMRIrevealedaposteriorly-deviatedcyst-likelens,andanERGrevealednoresponse.Conclusions:IncasesCofCmicrophthalmiaCassociatedCwithCPFV,CbothCanterior-segmentCabnormalitiesCandCposterior-segmentCandCoptic-nerveCtissueCabnormalitiesCcanCsimultaneouslyCoccur,CandCMRICcanCbeCusefulCforCdetectingClensCshapeCandCpositionabnormalities.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)37(12):1564.1567,C2020〕Keywords:小眼球症,球状水晶体,水晶体偏位,胎生血管系遺残,視神経無形成,虹彩低形成.microphthalmia,Cspherophakia,crystallinelenssubluxation,persistentfetalvasculature,irishypoplasia.C〔別刷請求先〕岡本美里:〒812-8582福岡市馬出C3-1-1九州大学大学院医学研究院眼科学分野Reprintrequests:MisatoOkamoto,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KyushuUniversity,3-1-1Maidashi,Fukuokacity,Fukuoka812-8582,JAPANC1564(100)ce図1症例1の検査所見a:左小眼球の前眼部写真.Cb:左眼の超音波生体細隙灯顕微鏡所見.虹彩低形成と角膜との癒着(矢印)を認める.水晶体は鼻側後方に牽引され偏位し,前房が深い.Cc:T2強調CMRI所見矢状断.左眼の水晶体は球状で鼻側後方へ偏位している.Cd:超音波CBモード所見.胎生血管系遺残を示唆する索状物様の高エコー像を認める.Ce:左眼の眼底写真.視神経乳頭の形成はなく,胎生血管系遺残を認める.Cf:左眼の蛍光造影所見.胎生血管系遺残に一致して未熟な血管網を認めるが,網膜は無血管である.はじめにの形状異常・後方偏位,虹彩形成不全,網膜血管形成不全,小眼球症は発生頻度がC0.01.0.019%とまれな疾患であり,視神経低形成など多彩な眼所見を伴ったC2例を経験したので前眼部形成異常,網膜硝子体形成異常,視神経形成異常などその臨床像を提示する.多様な合併異常を呈する1).胎生血管系遺残(persistentCfetalvasculature:PFV)は第C1次硝子体の遺残により眼内増殖CI症例性変化を生じ,網膜.離を合併するおもに片眼性の非遺伝性症例C1はC2カ月男児.正期産,正常体重で出生した.妊娠疾患である2,3).PFVでは小角膜・小眼球,白内障など多彩歴や家族歴に問題なく.生後C4日で左眼を開けないことを母な眼形成異常を合併するが,虹彩や網膜血管,視神経の異常親が心配して近医眼科を受診し,小眼球症のため産業医科大を合併する症例は比較的まれである4).学病院眼科を紹介受診した.生後C2カ月時に全身麻酔下検査今回筆者らは片眼性の小眼球症で胎生血管系遺残,水晶体を施行した(図1).眼軸長は右眼C17Cmm,左眼C14Cmm,角図2症例2の検査所見a:前眼部写真で左眼の小眼球を認める.Cb:左眼の超音波生体細隙灯顕微鏡所見.前房が深く,水晶体と思われる.状物がみられる.Cc:T2強調CMRI画像.左眼の球状水晶体が鼻側後方へ偏位している.Cd:超音波Bモード画像.胎生血管系遺残を示唆する索状物様のエコー像がみられる.膜径は右眼C11Cmm,左眼C5Cmmであり,左眼の極度の小眼球,小角膜を認めた.前眼部と眼底には右眼には異常はみられなかったが,左眼角膜は透明であるものの,虹彩の形成は不良で部分無虹彩もしくはコロボーマを疑う所見を呈していた.虹彩と角膜に癒着がみられ,水晶体は検眼的には確認できなかった.左眼眼底は視神経乳頭を認めず,PFVと思われる白色組織を認めた.蛍光造影検査ではCPFVに一致して蛇行や吻合を示す未熟な血管網を認めたが,網膜は無血管であった.T2強調CMRI画像では,眼球内鼻側寄りに低信号の球状構造物が描出され,球状水晶体と水晶体偏位と診断した.視神経は狭小化が著しく,視神経無形成と思われた.未熟児用の電極を用いて行った網膜電図では左眼のみ反応を認めなかった.症例C2はC3カ月男児.正期産,正常体重で出生した.妊娠歴や家族歴には問題はなかった.生後C2日で小眼球症を疑われ近医眼科を受診し,精査目的に当科を紹介受診した.生後3カ月時に全身麻酔下に検査を施行した(図2).眼軸長は右眼C18Cmm,左眼C14Cmm,角膜径は右眼C11Cmm,左眼C7Cmmと左小眼球,小角膜であった.右眼に異常を認めず,左眼は角膜透明,虹彩は低形成で,水晶体は検眼鏡的には確認できず,眼底は透見が不良であった.超音波CBモード検査でPFV様の索状組織と,それにつながる.胞状の高エコー組織を認めた..胞状組織は頭部CMRIのCT2強調画像で低信号の球状構造物として描出され,水晶体の形成異常と偏位と診断した.左視神経の狭小化は認めなかった.症例C1と同様に施行した網膜電図で左眼の反応を認めなかった.2症例ともに左眼の視機能獲得は期待できないと判断し,眼窩腔拡張目的に義眼を挿入した.CII考按今回経験したC2症例とも片眼性の小眼球症でCPFV所見を認め,水晶体は球状水晶体で後方へ偏位し,虹彩の低形成や部分的無虹彩を認めた.また,患眼では網膜電図で反応を認めず機能的にも網膜の異常を合併していることが示唆された.さらに症例C1では眼底所見とCMRI所見から視神経無形成を疑う視神経乳頭の欠損,網膜血管の形成不全を認めた.症例C2では眼底の透見が困難であったがCMRIでは視神経異常はみられなかった.本症例のCPFVとしての特徴は,小眼球症の程度が著しく,水晶体の形態・位置異常や虹彩低形成を合併していたことである.PFVではその遺残組織がCZinn小帯の形成不全を起こす,あるいは硝子体動脈が水晶体を牽引するために,先天性の水晶体偏位が生じうると考えられる4).しかし,Haddadら4)によるとCPFVに水晶体偏位を合併した症例はC62症例中3例であり,PFVが水晶体偏位を引き起こすことは比較的まれであると考えられる.また,PFVと水晶体偏位に加えて,コロボーマを合併する症例をCTakkarら5)やCLeeら6)が報告している.さらにCRanchodら7)は両眼性のCPFVに小角膜,水晶体後方偏位,脈絡膜コロボーマを合併したC6症例を報告している.今回の症例はC2例とも片眼性であり,発症機序が異なるものと考えられる.一方で仁科らによる日本における小眼球症の全国調査では,後眼部の眼合併症が多いことも報告されており,PFVを含む網膜硝子体異常がC18.1%,視神経異常はC6.8%であった8).症例C1では視神経異形成を認め,MRIでも視神経は痕跡程度に狭小化しており視神経無形成の所見であると考えられる.これまでもCPFVと視神経無形成の合併症例が報告されており,視神経の形成と網膜血管や硝子体血管の発生には関連性があることが示唆されている9,10).片眼性の小眼球症の孤発例では遺伝性は明らかではないが,常染色体劣性遺伝を示した症例の報告がある11).前眼部形成異常に関連する遺伝子としてはCCPAMD8,CYP1B1,FOXC1,FOXE3,PAX6,PITX3,PXDNなどが知られている(athttps://www.omim.org/).筆者らは両症例に対して,産業医科大学倫理委員会が承認したプロトコールに従い,家族の同意を得て全エクソーム解析を行ったが,これらの遺伝子には異常は検出されなかった.小眼球症とCPFV,球状水晶体とその偏位などの前眼部異常に加え,1眼では視神経無形成を合併するなど,多彩な眼異常所見を示した症例をC2例報告した.眼球の形成には前眼部や後眼部,視神経などの各組織の発達が密接に関連しており,PFVに合併して広範囲な眼形成異常をきたしうるものと思われた.極度の小眼球症は眼内の精査が困難であり詳細な所見が見逃されることがあるが,全身麻酔下での検査は病態の確認に有用である.また,MRI検査は水晶体形態,位置異常の描出に優れ,網膜電図は網膜機能の評価に有用であった.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)BusbyA,DolkH,CollinR:Compilinganationalregisterofbabiesbornwithanophthalmia/microphthalmiainEng-landC1988-94.CArchDisChildFetalNeonatalEdC79:F168-F173,C19982)GoldbergMF:PersistentCfetalvasculature(PFV):anCintegratedinterpretationofsignsandsymptomsassociat-edwithpersistenthyperplasticprimaryvitreous(PHPV)C.LIVEdwardJacksonMemorialLecture.AmJOphthalmolC124:587-626,C19973)ReeseAB:PersistentChyperplasticCprimaryCvitreous.CAmJOphthalmolC40:317-331,C19554)HaddadCR,CFontCRL,CReeserF:PersistentChyperplasticCprimaryCvitreous.CACclinicopathologicCstudyCofC62CcasesCandCreviewCofCtheCliterature.CSurvCOphthalmolC23:123-134,C19785)TakkarB,ChandraP,KumarVetal:Acaseofiridofun-dalCcolobomaCwithCpersistentCfetalCvasculatureCandClensCsubluxation.JAAPOSC20:180-182,C20166)LeeCJS,CLeeCJE,CShinYG:FiveCcasesCofCmicrophthalmiaCwithotherocularmalformations.KoreanJOphthalmolC15:C41-47,C20017)RanchodTM,QuiramPA,HathawayN:Microcornea,pos-teriorCmegalolenticonus,CpersistentCfetalCvasculature,Candcoloboma:aCnewCsyndrome.COphthalmologyC117:1843-1847,C20108)NishinaS,KurosakaD,NishidaYetal:Surveyofmicroph-thalmiaCinJapan.JpnJOphthalmolC56:198-202,C20129)WeiterCJJ,CMcLeanCIW,CZimmermanLE:AplasiaCofCtheCopticnerveanddisk.AmJOphthalmolC83:569,C197710)HotchkissML,GreenWR:Opticnerveaplasiaandhypo-plasia.JPediatrOphthalmolStrabismusC16:225-240,C197911)FleckensteinM,MaumeneeIH:Unilateralisolatedmicroph-thalmiaCinheritedasanautosomalrecessivetrait.Ophthal-micGenetC26:163-168,C2005***