●連載監修=安川力髙橋寛二69.加齢黄斑変性に対する変則大中誠之関西医科大学医学部眼科学教室CTreatandExtend滲出型加齢黄斑変性は慢性疾患であり,大多数の症例において継続した治療が必要である.Treatandextend(TAE)法はCproactive治療を組み入れた個別化医療であり,長期にわたって視機能を維持することが可能である.理想的な治療法であるが,問題点がないわけではない.本稿では,その問題点と解決策として当院で行っているCmodi.edTAE法について解説する.はじめに現在,滲出型加齢黄斑変性(age-relatedCmaculardegeneration:AMD)の治療として,おもに抗CVEGF療法や光線力学的療法(photodynamicCtherapy:PDT)が用いられているが,発症後早期に治療を開始することにより,多くの患者において視機能の改善が得られるようになった.しかし,滲出型CAMDは慢性疾患であり,改善した視機能を維持するためには継続した治療が必要となるため,いかに少ない治療回数で視機能を維持させるかが重要なポイントとなる.長期にわたる維持期治療一般的に滲出型CAMDの治療は,視機能の改善をめざす導入期と,改善した視機能を保つための維持期に分けて考えられる.導入期の治療はその後の経過に大きく影響するため,徹底して行うことが望ましい.しかし,導入期に徹底した治療を行っても再発する症例は多く,滲出型CAMDの全治療期間を通して考えると圧倒的に維持期のほうが長い.維持期の治療は抗CVEGF単独療法を選択する施設が多いが,投与法はCreactive投与である必要時(proCrenata:PRN)投与と,proactive投与を含む固定投与あるいはCTAE法に分けられる.PRN投与を厳密に行うことができれば,他の投与方法と比較してもっとも少ない治療回数で長期にわたって視機能を維持することが可能と考えるが,10年以上CPRN投与で治療を行うことは現実的にむずかしい.TAE法は個々の病状に合わせて投与間隔を調整する方法で,維持期の治療法としては理想的であり,長期成績も良好であることから多くの施設で用いられている.CTreatandextend法の問題点一般的なCTAE法は,導入期として滲出性所見の消失(69)(ドライ)まで毎月投与を行い,その後は維持期として,病態に合わせて投与間隔を調整しながら,可能なかぎりproactiveに投与を続けていく方法である.PRN投与より治療回数は多くなるが,長期視力予後が良好であることに加えて,受診日と投与日が同日であるため,多くの患者において毎月通院する必要がなくなることもメリットの一つである.現状では,維持期にCTAE法によるproactive治療を継続することは理想的と考えるが,問題点がないわけではない.問題点の一つめは,proactive治療であるために過剰投与となっている可能性があることである.再燃させないことがCproactive治療であるため,個々に合った投与間隔をみつける早期の段階では投与間隔の延長は慎重に行うべきであり,治療回数がある程度多くなることはしかたがないことかもしれないが,投与間隔を調整する以前に,一定の割合で導入期治療後長期にわたって再燃なく追加治療を必要としない症例が存在することに気をつけなければならない.当院において導入期にアフリベルセプトを用いて治療を行ったところ,治療開始後半年以内に約半数が再発し,1年では約C7割の患者で少なくともC1回は再発を認めたが,残りのC3割はC1年間再発なく経過した.これらの患者に対して導入期治療後,継続的に治療を行うことは過剰投与となっている可能性が高い.問題点の二つ目は,proactive治療を終えるタイミングが定まっていないことである.これまでにさまざまな報告がなされているが,治療後の経過が良好で順調に投与間隔を延長できた症例では,12週間あるいはC16週間の投与間隔で2~3回病状が落ち着いていた場合にCTAE法を中断している報告が多いようである.当院ではC16週間の投与間隔でC3回,つまりC1年間病態の悪化を認めなかった場合に一度治療を中断している.また,治療を継続しても視力や自覚症状の改善が望めない場合には,僚眼の状態を考慮し,患者と相談のうえ,治療を中断すあたらしい眼科Vol.36,No.10,2019C12910910-1810/19/\100/頁/JCOPYることも必要である.変則Treatandextend法治療早期の過剰投与を避けるための一つの方法として,導入期後すぐにCproactive治療を始めずに,経過観察を行うことがあげられる.多くの症例で再発するため,追加治療がいつかは必要となるが,長期間再発しない症例に対して過剰投与を避けるための有効な方法である.いわゆるCPRN投与であり,reactive治療となるために再発による視力低下が懸念されるが,当院で調べたところ,導入期で改善した視力が再発時に有意に低下した患者の割合はC5%程度であったことから,一度の再発は許容できるものと考える.しかし,reactive治療を繰り返すことは長期的には視力低下につながる可能性が高く,やはりCproactive治療を行うことが理想的である.過剰投与と視力低下の両方を回避する方法として,observe-and-plan(OAP)法1)や当院で行っているCmodi.edTAE法2)があげられる.両者とも導入期治療後に一度再発するまで経過観察を行い,再発後は再発までの期間を参考に計画的に投与を行う方法である.一般的なCTAE法と比較すると,治療成績は同等であり,OAP法では通院が少なく,modi.edTAE法では治療回数が少ないことが特徴である.以下,modi.edCTAE法について導入期,経過観察期,TAE期に分けて概説する.導入期は,少なくともC4週毎にC1回,連続C3回は投与を行い,それでもドライにならなければ,ノンレスポンダー症例でないかぎりはドライになるまでC4週ごとに投与を行う.導入期治療として少なくとも連続C3回行う理由としては,大規模臨床試験の結果からわかるように,視力改善の大部分がこのC3回の治療で得られることと,3回の治療のなかでドライになるまでの治療回数が多い症例のほうが早期に再発する傾向にあるなど,治療による反応性の違いからその後の経過をある程度予測できるためである.経過観察期はドライになってから再発するまでの期間であるが,この再発期間を参考にCTAE期の最初の投与間隔を決定するため,modi.edTAE法のなかでもっとも重要な期間となる.再発間隔は症例ごとにある程度決まっている3)ことから,ここで再発期間を正確に把握することにより,TAE期における投与間隔の調整が少なくてすむため,調整中に認める再発による視力低下のリスクの軽減と結果的には治療回数の減少につながる.したがって,再発するまでは基本的に毎月診察が望ましい.C1292あたらしい眼科Vol.36,No.10,2019TAE期は,経過観察期で得た再発間隔から1~2週間短縮した期間を最初のCTAE法の投与間隔とし,それ以降は通常のCTAE法と同様に投与を続けていく.ここで大事なことは,最初と途中で滲出性所見の再発を認めて投与を行った場合には,1カ月後に診察を行うことである.たとえばC10週間隔で再発した場合,次の投与はC8週後になるが,4週後の診察でドライであればそのまま8週後でよいが,ドライになっていない場合はその時点で追加投与を行うべきであり,8週間隔でCTAE法を再開するのはドライになってからとしている.また,繰り返しの再発を避けるために,投与間隔を短縮した場合,ドライになってもすぐに投与間隔を延長せずに,基本的にはC1年間同じ投与間隔で行うようにしている.このように厳密に管理を行うことで,長期にわたって視機能を維持することが可能となるが,当院のデータでは大多数の症例において,最初の投与間隔から大幅な延長・短縮なく経過しており,この結果は再発間隔が症例ごとにある程度決まっているとする既報3)と一致し,modi.edTAE法における最初の投与間隔の決定法が妥当であることを示している.CModi.edTAEの中断はC16週間隔でC1年間病態が安定していた場合に行っているが,これまでの結果では約2割の症例が中断基準に合致し,一度治療を中断している.幸い,その後再発する症例はC15%程度と少ないことから,基準としては妥当と考える.おわりに滲出型CAMDは慢性疾患であり,現状の治療法では完治は望めないが,超高齢社会を迎えているわが国においては,少ない治療回数で長期間視機能を維持するために,今後もよりよい治療法の開発に努める必要がある.文献1)MantelCI,CNiderprimCSA,CGianniouCCCetal:ReducingCtheCclinicalCburdenCofCranibizumabCtreatmentCforCneovascularCage-relatedCmacularCdegenerationCusingCanCindividuallyCplannedregimen.BrCJOphthalmolC98:1192-1196,C20142)OhnakaCM,CNagaiCY,CShoCKCetal:ACmodi.edCtreat-and-extendregimenofa.iberceptfortreatment-naivepatientsCwithCneovascularage-relatedCmacularCdegeneration.CGrae-fesArchClinExpOphthalmolC255:657-664,C20173)MantelI,DeliA,IglesiasKetal:Prospectivestudyeval-uatingCtheCpredictabilityCofCneedCforCretreatmentCwithCintravitrealranibizumabforage-relatedmaculardegener-ation.CGraefesCArchCClinCExpCOphthalmolC251:697-704,C2013(70)