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強度近視の網膜病変

2017年10月31日 火曜日

強度近視の網膜病変MyopicMacularComplications大杉秀治*はじめに近視の人口はわが国を含む東アジアで多く,年々増加傾向にある.近視が進行し,病的とよばれるまでに至るとさまざまな合併症を生じ視力障害をきたす.多治見スタディにおいては近視性黄斑変性がWHO基準による片眼性失明の原因疾患第一位であったことが報告された1).病的近視に視力障害を引き起こす網膜病変として,近視性黄斑合併症や裂孔原性網膜.離がある.近視性黄斑合併症には近視性網脈絡膜萎縮,近視性脈絡膜新生血管(myopicchoroidalneovascularization;近視性CNV),近視性牽引黄斑症(myopictractionmaculopathy:MTM),黄斑円孔,黄斑円孔網膜.離が含まれ,本稿ではこれら近視性黄斑合併症について概説する.I近視性網脈絡膜萎縮病的近視眼では近視の進行とともに眼軸の延長や後部ぶどう腫の形成が生じ,これに伴い脈絡膜が高度に菲薄化し,脈絡膜の循環が障害される.その結果,びまん性や限局性の萎縮が生じる.びまん性萎縮は病的近視眼に高頻度にみられ,眼底検査にて黄斑部や視神経乳頭周囲に黄白色の色調を呈する(図1).その病態は網膜色素上皮や脈絡膜毛細血管板の微細な萎縮とされ,この状態が原因で高度な視力低下をきたすことは少ない.最近,小児の視神経周囲にびまん性萎縮病変がみられた場合,将来的に病的近視による失明リスクが高いことを示唆する報告があり2),注意が必要である.一方,限局性萎縮は脈絡膜血管の完全閉鎖によって生じ,眼底検査にて境界明瞭な白色病変としてみられる(図2).眼底自発蛍光で同部は低蛍光となり,この部位では網膜色素上皮および視細胞が萎縮しているため絶対暗点となるが,病変の拡大は中心窩から離れる方向に進行する傾向にあり,視力が残されることも多い.しかし,境界部に近視性CNVを生じることがあり注意が必要である.また,Bruch膜の断裂により生じる線状の萎縮(lac.quercrack)も近視性CNVが生じる部位として重要である.II近視性脈絡膜新生血管(近視性CNV)近視性CNVはそのほとんどが網膜色素上皮上に存在(type2CNV)し,病的近視の5.10%にみられ,約30%が両眼性とされる.近視性CNVは眼軸長延長に伴い生じるlacquercrackや脈絡膜循環の障害が関与しているとされる.自然経過により,多くは色素沈着を伴うFuchs斑を経て続発性の網脈絡膜萎縮が生じ,不可逆性の視力障害をきたす.それゆえ,できるだけ早期に診断・治療することが望ましい.1.近視性CNVの診断病的近視眼では網脈絡膜萎縮によるコントラスト低下のため,検眼鏡的検査のみでは微細な病変をとらえることは困難であった.しかし,光干渉断層計(optical*HideharuOhsugi:ツカザキ病院眼科〔別刷請求先〕大杉秀治:〒671-1227兵庫県姫路市網干区和久68-1ツカザキ病院眼科0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(67)1405図1びまん性萎縮の眼底写真図2限局性萎縮の眼底写真後極部に黄白色の萎縮病変がみられる.中心窩周囲に境界明瞭な萎縮病変がみられる.図3近視性脈絡膜新生血管(CNV)a:眼底写真では網膜出血とCCNVの灰白色病変を認める.Cb:フルオレセイン蛍光眼底造影にてCCNVよりの蛍光漏出を認める.Cc:インドシアニングリーン蛍光眼底造影初期ではCCNV周囲にCdarkCrimがみられる.Cd:IA後期ではCCNVが過蛍光として,またCBruch膜の断裂(lacquerCcrack)が線状の低蛍光として描出されている.Ce:OCTにて網膜下にCCNVと滲出物が貯留しているのが確認できる.Cf:抗CVEGF治療後のCOCT.網膜色素上皮によるCCNVの囲い込みが完成し滲出を認めない.図4近視性脈絡膜新生血管CNVの蛍光造影と光干渉断層血管撮影(OCTA)a:眼底写真では網膜出血とCCNVの灰白色病変を認める.Cb:フルオレセイン蛍光眼底造影にてCCNVからの蛍光漏出を認める.Cc:インドシアニングリーン蛍光眼底造影初期でCCNVがはっきりと描出されている.Cd:bの白枠の範囲に相当するCOCTAでCCNVが描出されている.Ce,f:OCTにて網膜下にCCNVと滲出物が貯留しているのが確認できる.図5Bruch膜の断裂により生じた単純出血の蛍光造影と光干渉断層血管撮影(OCTA)a:眼底写真では網膜出血を認める.b,c:bのフルオレセイン蛍光眼底造影およびCcのインドシアニングリーン蛍光眼底造影にて蛍光漏出を認めない.Cd:bの白枠の範囲に相当するCOCTAで脈絡膜新生血管(CNV)が描出されない.Ce,f:OCTにて網膜下に比較的均一な貯留物(出血)がみられるがCCNVを認めない.図6近視性牽引黄斑症の進行a:近視性網膜分離を認める.Cb:分離症は進行すると網膜の外層に欠損を生じて黄斑部.離となる.Cc:中心窩の神経網膜が欠損することで円孔を生じ,黄斑円孔網膜.離となる.C図7網膜分離と黄斑円孔網膜.離の硝子体手術による改善a:近視性網膜分離症例のOCT.分離が悪化し矯正視力が低下しはじめたため,硝子体手術施行.矯正視力(0.8).b:aの術後C1年のCOCT.分離が軽快している.矯正視力(1.0).c:黄斑円孔網膜.離症例のCOCT.矯正視力(0.2).硝子体手術施行.d:cの術後C6カ月のOCT..離の治癒と円孔の閉鎖が得られ矯正視力も(0.8)まで改善した.-

近視と緑内障

2017年10月31日 火曜日

近視と緑内障MyopiaandGlaucomaType山下高明*はじめに2000からC2001年に行われた緑内障の疫学調査である多治見スタディでは,近視の頻度も報告されており,C-0.5D未満の近視の割合は,70代で男性C13.5%,女性18.6%に対して,40代では男性C70.3%,女性C67.8%と急激に増加している(図1)1).原稿を書いているC2017年C7月は多治見スタディからC17年ほど経過しているので,当時のC70代は今のC87.96歳であり,当時のC40代は今のC57.66歳ということになる.つまり現在C90歳前後の世代では,日本人は近視の少ない民族であり,現在C60歳前後の世代までの間で近視が急増した結果,世界でも有数の近視の多い民族となったのである.本稿では,この近視の急増が緑内障診療に与える影響について,各種緑内障の有病率の変化という観点から解説する.CI閉塞隅角緑内障の減少閉塞隅角緑内障のリスクファクターは高齢,遠視,女性である2).遠視は近視と比較して眼軸長が短く,女性は男性と比較して眼球が小さいため,遠視眼の女性は元々,前眼部の組織が狭いスペースにひしめいている.このような眼では,加齢により水晶体が厚くなったり,Zinn小帯が脆弱になったりすることで,水晶体前面が前方に張り出し,瞳孔部での房水通過の抵抗が大きくなりやすく,瞳孔ブロックを起こしやすいと考えられている(図2a).多治見スタディでは,遠視(>0.5D)の割合は,70代(現在C90歳前後)で男性C56.5%,女性C63.8%に対して,40代(現在C60歳前後)では男性C2.1%,女性C2.9%と急激に減少している(図1)1).そのため,閉塞隅角緑内障は減少傾向にあり,最近では急性閉塞隅角緑内障による緑内障発作をほとんど診察したことのない若い眼科医が増えてきている.もちろん,レーザー虹彩切開術の普及も緑内障発作減少の一因となっているであろう.一方で日本人の寿命は年々伸びており,高齢者が増加することで,上述した水晶体の加齢変化が大きくなることで,遠視が強くなくても緑内障発作を起こす可能性が出てくる.加えて,高齢者で白内障手術を行っていない眼では,水晶体膨化による核性近視が進行して近視化する1).そのため,高齢者では近視であっても閉塞隅角緑内障を発症する可能性があり,vanCHerick法・隅角検査・前眼部画像検査による閉塞隅角の検出が重要である.CII色素散布症候群,色素緑内障の増加色素散布症候群および色素緑内障のリスクファクターは近視と人種(アジア人と比較して欧米人で多い)で,他のタイプの緑内障と比較して若年者で発症する.欧米人の平均年齢C40歳でスクリーニングした研究では,色素散布(緑内障かどうかは問わない)を認めた眼はC2.5%以上であったと報告されている3).遠視眼の多かった昔の日本人では色素緑内障はまれであった.色素緑内障のリスクファクターは近視であり,近視の増加で現在の*TakehiroYamashita:鹿児島大学大学院医歯学総合研究科感覚器病学眼科学〔別刷請求先〕山下高明:〒890-8520鹿児島市桜ヶ丘C8-35-1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科感覚器病学眼科学0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(61)C1399100806040200男性の年代別屈折女性の年代別屈折100806040200遠視正視軽度近視強度近視遠視正視軽度近視強度近視図1多治見スタディにおける男女の年代別屈折値の割合40.4950.5960.6970.7980+40.4950.5960.6970.7980+日本人ではC60代からC40代(現在のC80歳前後からC60歳前後)にかけて,近視が急増し,遠視が急減しているのがわかる(強度近視<C-5.0D<近視<C-0.5D<正視<0.5D<遠視).(文献C1より改変引用)C図2閉塞隅角緑内障(a)と色素緑内障(b)の前眼部シェーマ閉塞隅角緑内障は,角膜が厚く,前房が浅く(遠視),水晶体が厚く硬い(高齢者)眼に発症しやすく,瞳孔ブロック(後房圧>前房圧)によって虹彩が前湾して隅角が閉塞する.色素緑内障は,角膜が薄く,前房が深く(近視),水晶体が柔らかく,調節で厚みが変化しやすい(若年者)眼に発症しやすく,角膜が瞬目により押されて戻る(.)ことで,前房がスポイトのような役割を果たし,後房から前房に大量に房水が移動することで一時的に,前房圧>後房圧となり,逆瞳孔ブロックをきたす.逆瞳孔ブロックで虹彩が後湾し,水晶体・Zinn小帯と接触したり,急速に虹彩が前後に動いたりすることで虹彩色素が散布される.C表1色素散布症候群,色素緑内障の所見(太字は色素散布症候群の古典的三主徴)角膜:CKrukenbergspindle(角膜後面色素沈着),角膜内皮細胞の多形前房:色素顆粒の浮遊,前房深度の増大虹彩:中間部虹彩菲薄化による線状の徹照,まだらな色素沈着,色素脱出,瞳孔不同水晶体:水晶体前.・後.への色素沈着,Zinn小帯への色素沈着隅角:線維柱帯への過度な色素沈着,Schwalbe線への色素沈着,広い隅角,後方へ湾曲した虹彩(湾曲している時としていない時がある)後極部:周辺網膜変性,格子状変性(文献C3より改変引用)図3色素緑内障(22歳,男性)両眼とも高度の緑内障性視神経萎縮,隅角色素沈着を認め,虹彩は後湾,隅角は広く開大し,中間部虹彩に色素脱(C.)が確認できる.本症例では,レーザー虹彩切開術を両眼に施行し,さらなる色素散布を予防した.-

近視による内斜視

2017年10月31日 火曜日

近視による内斜視EsotropiaAssociatedwithMyopia鎌田さや花*稗田牧*はじめにVonGraefeやBielschowskyによると,近視眼に生じる内斜視には二つある.一つは若年者に生じる共同性内斜視で,はじめは遠見での複視で発症し,次第に近見でも複視を生じるもの(これを近視性後天性内斜視と称する),もう一つは強度近視に伴い,徐々に進行するもの(これを強度近視性内斜視と称する)である1).本稿では,近視眼に生じる内斜視のうち,近視性後天性内斜視,強度近視性内斜視について述べ,症例を提示する.近視性後天性内斜視の項では,近見作業過多によると考えられる内斜視について考察する.また,強度近視性内斜視の項では,長眼軸長の強度近視眼に伴う固定内斜視だけではなく,近視の程度が軽くても眼球脱臼と伴う内斜視になる病態についても触れる.I近視性後天性内斜視最近,比較的若年者の近視眼に後天性に発症した共同性内斜視が増加している2.5).このような近視を伴う後天性共同性内斜視は,急性内斜視とは異なる病像を呈する.近視性後天性内斜視は,未矯正や低矯正の近視眼で近見作業が多い場合に生じるという説もあり,スマートフォンの過度な使用に伴う内斜視と同様の病態である可能性がある.典型的な近視性後天性内斜視は,複視を伴って発症する共同性内斜視で眼球運動制限はなく,調節性の要因は少ない.遠見での複視を伴う開散不全で始まり,近見は融像可能であるが,一時的な複視を自覚する間欠性内斜位の時期を経て,近方でも内斜視となり,恒常性に至る.発症年齢は10.30代が中心で,幼少期に斜視や眼疾患の既往はなく,両眼視機能は良好である.急に恒常性の複視を自覚して受診するため急性内斜視として扱われる症例もあるが,よく問診すると,それまでにも一時的に複視になることがあったなど,間欠性内斜位の時期があったと推察される例も少なくない.原因や発症機序は明らかではないが,近見作業の増加や精神的・全身的なストレスを契機に発症したと思われる例もある.鑑別として,後述する強度近視性内斜視や中枢性病変を伴う開散麻痺,外転神経麻痺,輻湊けいれんなどがあげられる.MRIによって,筋円錐からの眼球後部の脱臼を伴う強度近視性内斜視や中枢性病変を除外する.また,外転神経麻痺では外ひきの制限を認め,近見反応が異常に亢進して生じる輻湊けいれんでは縮瞳を伴い,単眼性のひき運動時では外転制限がないが,両眼性のとも向き運動時の外転制限が顕著である6)とされるが,近視性後天性内斜視ではこのような調節過緊張の所見や眼球運動制限は伴わない.近視性後天性内斜視の治療には,屈折矯正のみで改善する例もあり,まず適切な屈折矯正を要する.プリズム眼鏡装用のみで眼位が改善したという報告もあり,眼位の変動がある場合はプリズム眼鏡装用で経過をみるが,半年ほど改善がない場合には手術を行う.手術の他にボツリヌストキシン注射の報告もある.手術は一般的な水*SayakaKamada&*OsamuHieda:京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕鎌田さや花:〒602-0841京都市上京区河原町広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院医学研究科視機能再生外科学0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(55)1393図1近視性後天性内斜視(術前のHESS赤緑チャート)近視性後天性内斜視は共同性内斜視であり,眼球運動障害を認めない.==SRSMRGGlobeLLRIR図2脱臼角上直筋(S),眼球(G),外直筋(L)のそれぞれの面重心を求め,∠SGLが耳上側の眼窩壁に対してなす角度を脱臼角とする.この角度が大きいほど,眼球の筋円錐外への脱臼は大きい.SR:上直筋,IR:下直筋,LR:外直筋,MR:内直筋,Globe:眼球.れている.SESでは,近視眼ではなくてもCLR-SRbandが破綻することによって眼球脱臼を生じる可能性がある.このようにCMRIを用いた眼窩画像解析によって斜視の病態解明研究が多く報告され,SR-LRCbandの菲薄化,外直筋の下方偏位と上直筋の内方偏位,眼球後部の筋円錐外への脱臼という発症機序が明らかになってくるにつれ,強度近視眼ではなくても眼球脱臼を生じる内斜視の病態についても多くのことがわかってきた.今後さらにさまざまな斜視の病態が明らかにされることが期待されている.C2.強度近視性内斜視の手術強度近視性内斜視の治療法として知られる横山らによる上外直筋縫着術10)(本稿では上外直筋連合術とよぶ)は,上直筋と外直筋の筋腹を接着させて,筋円錐外に脱臼した眼球を整復することを目的としており,切腱や強膜通糸が必要なく安全で,病態から考えても理にかなった術式として定着しつつある.斜視角が小さく眼球運動制限がほとんどない場合でも眼球脱臼を伴う内斜視については,常の前後転あるいは内直筋後転を行ってもほとんど改善しないため,上外直筋連合術を施行する.また,強度近視性内斜視は両眼性であることが多く,両眼同時に手術することが望ましい.もし片眼のみに上外直筋連合術を行う場合は,術後に医原性上下斜視を生じるため,十分な説明を要する.とくに比較的視力のよい症例では術後複視を強く訴えることがある.実際の術式と手術施行における注意点を以下に示す22).・全身麻酔下に外直筋と上直筋を露出.・それぞれの筋付着部からC15Cmm後方の筋腹(外直筋筋腹の上縁と上直筋筋腹の耳側縁)に,筋縁から異なる距離でC1本の糸(5-0ポリエステル糸)をC2回ずつ通糸する.・両直筋間に隙間ができないようにしっかりと引き寄せ,結紮する.外直筋と内直筋の筋腹の結合部が眼球を抑え込むことにより,脱臼した眼球後部が筋円錐内に整復される.≪注意点≫・最初からC15Cmmを露出することがむずかしい場合に,いったんC10Cmmの位置に制御糸を置いて筋腹をたぐり寄せてからC15Cmmの位置を出す方法や,まずC12Cmmの位置で通糸し両筋腹を通糸した後に15Cmmの位置にも通糸するという方法もある.とくに上直筋が出しにくいときは開瞼器をはずして操作すると術野を確保しやすい.・通糸では,各直筋筋腹の少なくとも半分は糸をかけずに残して,糸の結紮による虚血やうっ血を防ぐ.・通糸の前に各直筋を十分に周囲組織から分離しておかないと,結紮の際に直筋が縦に裂けたり筋と腱の移行部で断裂したりすることがある.・術野に下斜筋や上斜筋の付着部が存在するため,誤って一緒に通糸することがないよう,それら斜筋の解剖学的な位置も確認しながら行う必要がある・上外直筋連合術で脱臼を解除した後も,ひっぱり試験で内直筋の拘縮が示唆される場合に,連合術単独では効果不十分である可能性がある.強度近視眼では視力不良例や中心固視困難な例も多く,術量定量が不十分になりやすいこと,上外直筋連合術の術後眼位は予測がむずかしいことなどから,上外直筋連合術を単独で行うか内直筋後転を併用するかは施設により意見が分かれる.筆者らは,上外直筋連合術を施行後数カ月は経過をみてから局所麻酔下に内直筋後転を追加施行することとしている.症例:強度近視性内斜視37歳,男性.5年前から内斜視が増えてきたとの主訴で来院.90・の内斜視に対して両眼上外直筋連合術を施行したが,30・の内斜視が残存し,TST:Fly(C-)であったため,右眼内直筋後転と左眼内直筋後転を追加し,最終眼位は遠見正位,近見2・内斜視でCTSTcircle9/9の立体視機能を回復した.《術前検査》CRV=(1.2C×S-9.75D)CLV=(1.2C×S-9.75D)CRT=15,LT=13CmmHgPAT前:遠見右内斜視63・,近見右内斜視63・PAT後:遠見右内斜視90・,近見右内斜視90・1396あたらしい眼科Vol.34,No.10,2017(58)図3強度近視性内斜視(9方向眼位)耳側左眼右眼図5強度近視性内斜視(術前後のHESS赤緑チャート)上段:術前,下段:3回目の術後.図4強度近視性内斜視上外直筋連合術後CMRI,冠状断,T2強調画像.連続した3スライス:上段,中段,下段の順に,眼球接合部よりから眼球中央へ向かう.上外直筋連合術後,上段中段では上直筋と外直筋の位置が改善し,下段では上直筋と外直筋が接して,眼球の位置が筋円錐内に整復されていることがわかる..

LASIKと再近視化―眼軸長変化の観点から―

2017年10月31日 火曜日

LASIKと再近視化─眼軸長変化の観点から─RegressionandChangeinAxialLengthafterLASIK山村陽*はじめにエキシマレーザーを用いた角膜屈折矯正手術としてlaserCinCsituCkeratomileusis(LASIK)(図1)がC2006年にわが国で認可されてから約C10年が経過した.日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)のワーキンググループによると,2015年に国内で施行された屈折矯正手術のうち約C80%がLASIK,約C10%が後房型有水晶体眼内レンズのCICL(implantablecollamerlens)挿入術であったと報告1)している.QOV(qualityCofCvision)やCQOL(qualityCofClife)を向上させる手術として現在でも主流に施行されているCLASIKだが,ここ数年は消費者庁の注意喚起の影響などによりその取り巻く環境は激変し,有効性や安全性に対する懸念の広まりによって施行件数はピーク時のC1/10程度にまで減少したとされる.LASIKの目的は近視や乱視などの屈折異常を矯正し,良好な裸眼視力を獲得することにあるが,今回,LASIK術後の再近視化(近視進行)とその要因の一つとして考えられる「眼軸長変化」について解説する.CILASIK術後の再近視化(近視進行)一般に近視はC20代以降も進行することが知られており,たとえば,約C-3Dの近視はC10年間でC20代では約C-0.6D,30代では約C-0.4D,40代では約C-0.3D近視化することが報告2)されている.また,20代前半のコンタクトレンズユーザーではC5年間でC-1.0D以上の近視化が約C35%生じたという報告3)もある.図1LASIKフラップ作製後にエキシマレーザーを照射する.C筆者らが以前に行った屈折度数C-7.20±2.35D,年齢C35±8歳の症例(23眼)に対しCLASIKを施行した検討では,術後C6カ月.7年ではC-0.18±0.33Dの近視化が生じ,また屈折度数C-6.31±2.55D,年齢C37.1C±9.1歳の症例(54眼)に対しCLASIKを施行した別の検討では,術後C1.10年ではC-0.26±0.59Dの近視化が生じたとそれぞれ報告した4,5).また,Ali.らは屈折度数C-7.27±1.94D,年齢C33.2C±9.9歳の症例(97眼)に対しCLASIKを施行した検討では,術後C3カ月.10年ではC-1.04±1.73Dの近視化が生じたと報告6)している.強度近視眼に対するCLASIK術後の再近視化は,10年で約C-0.3.C-1.0Dぐらいであると考えられる.*KiyoshiYamamura:バプテスト眼科クリニック〔別刷請求先〕山村陽:〒606京都市左京区北白川上池田町C12バプテスト眼科クリニック0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(49)C1387**2928.52827.52726.52625.52524.524****LASIK(>.6D)LASIK(≦.6D)ICLLASIK(>.6D)LASIK(≦.6D)ICL図2術前眼軸長眼軸長変化量(mm)眼軸長(mm)LASIK(>.6D)LASIK(≦.6D)ICL******2928.5術前眼軸長はC3群間に有意な差があった.**:p<0.01.C28**27.52726.5眼軸長(mm)0.3n.s.**0.250.20.152625.52524.50.1240.05期間(年)図3眼軸長変化術後眼軸長はCLASIK(>C-6D)群では変化がなく,LASIK図4術後5年の眼軸長変化量(≦-6D)群では術後C3年以降は変化がなかったが,ICLLASIK(>.6D)LASIK(≦.6D)ICLICL群はCLASIK群よりも有意に眼軸長が延長していた.群では術後C1年以降毎年延長していた.*:p<0.05,**:**:p<0.01.Cp<0.01.図6両眼開放オートレフラクトメータ図5遠視性軸外屈折水平方向の視野角がC10°間隔になるよう固視指標(C-30°,C近視進行には周辺網膜における遠視性軸外屈折が関与して-20°,C-10°,0°,10°,20°,30°)を眼前C50Ccmの位置に作製設置し,散瞳条件下に指標を順に注視させ屈折度いると考えられている.数(レフ値)を測定した.5等価球面度数:ー5.81±1.67D4)術前術後1カ月3(D数1.3420.81折度0.63屈外1.0.090.25.0.19**軸****相対的0.30度.20度.10度0度10度20度30度.1.0.10.0.25.0.60.0.51.2.1.10.0.84.3視野角(度)n=11図7LASIK術前後における軸外屈折術前の周辺網膜における遠視性軸外屈折は術後C1カ月では近視性軸外屈折に変化し,視野角C-30°,20°,30°では有意な差があった(**:p<0.01).図8近視性軸外屈折近視進行抑制には周辺網膜における近視性軸外屈折が関与していると考えられている.

高次収差と近視進行

2017年10月31日 火曜日

バイオレットライトと近視進行抑制VioletLightandSuppressionofMyopiaProgression鳥居秀成*はじめに世界の近視人口は増加の一途をたどっており,C-0.50D以下を近視,C-5.00D以下を強度近視と定義した場合,全世界の近視人口はC2050年には全世界人口のC49.8%のC47億C5800万人,失明リスクのある強度近視の人口はC9.8%のC9億C3800万人になると報告1)されている.日本国内でも,文部科学省平成C28年度学校保健統計調査結果によると,裸眼視力C1.0未満の割合が小学校・中学校・高校において昭和C54年以来過去最高を記録した.裸眼視力C1.0未満の原因疾患のすべてが近視というわけではないが,近視児童の増加が反映された結果であると思われる.この近視人口の世界的な急増は約C60年前からの変化であり2),人類の長い歴史から考えると,遺伝因子よりも環境因子の変化が主因であると考えられる.近視と関連する環境因子のうち,屋外活動が近視進行を抑制することがこれまで多くの疫学研究・介入研究から指摘されており3.11),近年,屋外活動の効果が注目されている.その屋外活動を構成する因子には,ビタミンCD12.14)・光環境15,16)などの因子が考えられており,そのうち何が効いているのか,またそのメカニズムはわかっていなかった.また,屋外活動というと身体活動量や運動量も想起されるが,運動量と近視には明確な関係性がない可能性が指摘されてきており7,17),さらに最近の研究により,ビタミンCDよりも光環境自体が重要である可能性が示唆されてきている18,19).以上より,近視進行を抑制する屋外活動を構成する因子のうち,屋外の光環境が注目されている.CIバイオレットライトとは?波長C360.400Cnmの光がバイオレットライトである(図1).JISCZC8120:2001は可視光下限をC360.nmと定義している.実際に人間はバイオレットライトの色を認識することは可能である(図2).CIIバイオレットライトと近視進行抑制近視の屈折矯正手術の一つである有水晶体眼内レンズ挿入術後の近視の戻りを調べる臨床研究を行っていたところ,筆者らはある一つのことに気がついた.成人を対象としたC5年間の後向き研究であるが,2種類の有水晶体眼内レンズ(ARTISANとCARTIFLEX,共にCOphtecBV社製)間で術前術後の眼軸長伸長程度に有意差を認めた20).そのレンズの違いは高次収差など21)いくつかあるが,眼軸長伸長の差はレンズがC360.400Cnmのバイオレットライトを透過させるか否かに依存している可能性に着目し,動物実験・臨床研究・環境調査を行い,バイオレットライトが近視進行を抑制する可能性を研究した22).C1.動物実験1978年にCWallmanら23)がヒヨコにゴーグルを装着することで近視になることを報告して以来,近視の動物実験ではヒヨコを用いることが一般的24.34)になっている.*HidemasaTorii:慶應義塾大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕鳥居秀成:〒160-8582東京都新宿区信濃町C35慶應義塾大学医学部眼科学教室0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(33)C1371図1バイオレットライトとは?波長C360.400Cnmの光がバイオレットライトである.JISCZ8120:2001は可視光の短波長限界をC360.400Cnmと定義している.バイオレットライトは可視光に属する.太陽光にバイオレットライトが含まれている.図2可視光バイオレットライトの色左はカメラレンズのみで撮影した写真.中央はC400Cnm以下の波長をカットするレンズを通して撮影した写真(赤矢頭がレンズの縁),右はC400Cnm以上の波長をカットするフィルターを通して撮影した写真.右の写真がバイオレットライトのみでみた風景である.(文献C22より引用)abVL1009080706050403020100波長(nm)図3バイオレットライトとヒヨコ実験適過率(%)250300350400450500550600650700750800近視誘導には,バイオレットライトを透過する(Ca)ことを確認した凹レンズ効果をもつクリアレンズ(b)を使用し,片眼装用を行った.VL:バイオレットライト.(文献C22より引用)C43abEGR1の相対発現量*****3.0屈折値の変化(Diopter).5.10.15.2000.0VL.VL+VL.VL+ControlCoveredVL.VL+VL.VL+ControlCovered眼軸長の変化(mm)2.522.01.511.00.5VL.VL+VL.VL+ControlCovered図4ヒヨコ実験近視モデルにおけるバイオレットライトの近視進行抑制効果a:縦軸はC1週間の近視進行程度.Cb:縦軸はC1週間の眼軸長伸長程度を示す.レンズ装用をしていないコントロール眼(control),凹レンズ装用を行った遮蔽眼(Covered)ともに,バイオレットライト(VL)に暴露されたヒヨコ(VL+)は,暴露されていないヒヨコ(VLC-)に比べ,近視進行程度・眼軸長伸長程度が有意に抑制されていることがわかる.(文献C22より引用)図5近視進行抑制遺伝子EGR1の発現とバイオレットライト縦軸はヒヨコ網膜・脈絡膜組織におけるCEGR1CmRNA相対発現量を表す.レンズ装用をしていないコントロール眼(control),凹レンズ装用を行った遮蔽眼(Covered)ともに,バイオレットライト(VL)に暴露されたヒヨコ(VL+)は,暴露されていないヒヨコ(VLC-)に比べ,EGR1の発現が有意に上昇していることがわかる.(文献C22より引用)ab100808070適過率(%)10090適過率(%)60605040403020201000350400450500550600650350400450500550600650波長(nm)波長(nm)図6今回の臨床研究で用いたコンタクトレンズの波長透過特性バイオレットライトの透過率がC80%以上のコンタクトレンズ(Ca)を装用している群と,バイオレットライトの透過率がC80%未満のコンタクトレンズ(Cb)を装用している群にわけ,眼軸長伸長量を比較した.VL:バイオレットライト.(文献C22より引用)表1コンタクトレンズ装用開始時データ症例数人種年齢(歳)C他覚屈折値(ジオプター)C眼軸長(mm)C経過観察期間(日)C31例31眼日本人14.7±1.3(13.18)C-2.59±1.71(-1.00.C-6.38)C25.63±0.70(24.22.26.88)C892±374(372.1645)C116例C116眼C─15.1±1.4(13.18)C-2.47±1.72(-1.00.C-9.38)C25.76±0.99(C23.40.C28.10)C872±361(C380.C1814)C0.1050.7210.5510.833バイオレットライトをC80%以上透過するコンタクトレンズを装用している群をCVL+群,バイオレットライトの透過率がC80%未満のコンタクトレンズを装用している群をCVLC-群とし,両群間のコンタクトレンズ装用開始時のデータを比較した.年齢や屈折値,眼軸長,経過観察期間においてC2群間に有意差を認めず,ほぼ同じ背景の学生である.(文献C22より引用)C*眼軸長の変化量(mm/年)0.300.250.200.150.100.050.00VL.VL+図7図6の異なるバイオレットライト透過率のコンタクトレンズ装用による眼軸長変化量の比較バイオレットライトをC80%以上透過するコンタクトレンズを装用している群(VCL+群,1C16例C116眼)の眼軸長伸長量はC0.14.mm/年,バイオレットライトの透過率がC80%未満のコンタクトレンズを装用している群(CVLC-群,C31例31眼)の眼軸長伸長量はC0.19Cmm/年であり,CVL+群のほうが,有意に眼軸長伸長量が少なかった.(文献C22より引用)C2.001.80VL6:0010:0014:008:0012:0016:001.6018:001.401.201.000.800.600.400.200.00300350400450500550600650700750800波長(nm)図8屋外環境におけるバイオレットライト分光放射照度(W/m2/nm)真夏の東京における光環境を6.18時まで計測した.18時の日没に近い時間以外は,どの時間帯もバイオレットライトCVLが一定量存在することがわかる.(文献C22より引用)分光放射照度(W/m2/nm)1.60VLオフィス内車内1.40病院内1.201.000.800.600.400.200.00図9屋内環境におけるバイオレットライト300350400450500550600650700750800波長(nm)真夏の東京における日中の光環境を室内(オフィス内,車内,病院内)で計測した.最近のガラスは,400Cnm以下の光をカットするものが多く,バイオレットライト(VL)までカットされていることがわかる.そのため屋内環境ではCVLがほとんどない.(文献C22より引用)C0.200.180.160.140.120.100.080.060.040.020.00図10窓がない室内におけるバイオレットライト300350400450500550600650700750800波長(nm)窓がないため蛍光灯のみの波形であることがわかり,そのため時間による差を認めない.窓がない屋内環境ではどの時間帯でもバイオレットライト(VL)がほとんどない.(文献C22より引用)分光放射照度(W/m2/nm)TUNEL/DAPI角膜網膜ControlVL(365nm)UVB(305nm)図11ヒヨコ角膜・網膜におけるTUNEL染色陽性細胞の有無バイオレットライト(VL)による角膜・網膜障害の評価のため,アポトーシスによる細胞死の有無をCTUNEL染色を用いて評価した.昼行性動物であるヒヨコの実験系を用い,バイオレットライト(400C.W/cmC2)を1日12時間・7日間連続の照射を行った.その結果,UVB照射により角膜に認められたようなCTUNEL染色陽性細胞(赤色部分)は,バイオレットライト照射では認めず,アポトーシスによる細胞死を認めなかった.(文献C22より引用)

バイオレットライトと近視進行抑制

2017年10月31日 火曜日

バイオレットライトと近視進行抑制VioletLightandSuppressionofMyopiaProgression鳥居秀成*はじめに世界の近視人口は増加の一途をたどっており,C-0.50D以下を近視,C-5.00D以下を強度近視と定義した場合,全世界の近視人口はC2050年には全世界人口のC49.8%のC47億C5800万人,失明リスクのある強度近視の人口はC9.8%のC9億C3800万人になると報告1)されている.日本国内でも,文部科学省平成C28年度学校保健統計調査結果によると,裸眼視力C1.0未満の割合が小学校・中学校・高校において昭和C54年以来過去最高を記録した.裸眼視力C1.0未満の原因疾患のすべてが近視というわけではないが,近視児童の増加が反映された結果であると思われる.この近視人口の世界的な急増は約C60年前からの変化であり2),人類の長い歴史から考えると,遺伝因子よりも環境因子の変化が主因であると考えられる.近視と関連する環境因子のうち,屋外活動が近視進行を抑制することがこれまで多くの疫学研究・介入研究から指摘されており3.11),近年,屋外活動の効果が注目されている.その屋外活動を構成する因子には,ビタミンCD12.14)・光環境15,16)などの因子が考えられており,そのうち何が効いているのか,またそのメカニズムはわかっていなかった.また,屋外活動というと身体活動量や運動量も想起されるが,運動量と近視には明確な関係性がない可能性が指摘されてきており7,17),さらに最近の研究により,ビタミンCDよりも光環境自体が重要である可能性が示唆されてきている18,19).以上より,近視進行を抑制する屋外活動を構成する因子のうち,屋外の光環境が注目されている.CIバイオレットライトとは?波長C360.400Cnmの光がバイオレットライトである(図1).JISCZC8120:2001は可視光下限をC360.nmと定義している.実際に人間はバイオレットライトの色を認識することは可能である(図2).CIIバイオレットライトと近視進行抑制近視の屈折矯正手術の一つである有水晶体眼内レンズ挿入術後の近視の戻りを調べる臨床研究を行っていたところ,筆者らはある一つのことに気がついた.成人を対象としたC5年間の後向き研究であるが,2種類の有水晶体眼内レンズ(ARTISANとCARTIFLEX,共にCOphtecBV社製)間で術前術後の眼軸長伸長程度に有意差を認めた20).そのレンズの違いは高次収差など21)いくつかあるが,眼軸長伸長の差はレンズがC360.400Cnmのバイオレットライトを透過させるか否かに依存している可能性に着目し,動物実験・臨床研究・環境調査を行い,バイオレットライトが近視進行を抑制する可能性を研究した22).C1.動物実験1978年にCWallmanら23)がヒヨコにゴーグルを装着することで近視になることを報告して以来,近視の動物実験ではヒヨコを用いることが一般的24.34)になっている.*HidemasaTorii:慶應義塾大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕鳥居秀成:〒160-8582東京都新宿区信濃町C35慶應義塾大学医学部眼科学教室0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(33)C1371図1バイオレットライトとは?波長C360.400Cnmの光がバイオレットライトである.JISCZ8120:2001は可視光の短波長限界をC360.400Cnmと定義している.バイオレットライトは可視光に属する.太陽光にバイオレットライトが含まれている.図2可視光バイオレットライトの色左はカメラレンズのみで撮影した写真.中央はC400Cnm以下の波長をカットするレンズを通して撮影した写真(赤矢頭がレンズの縁),右はC400Cnm以上の波長をカットするフィルターを通して撮影した写真.右の写真がバイオレットライトのみでみた風景である.(文献C22より引用)abVL1009080706050403020100波長(nm)図3バイオレットライトとヒヨコ実験適過率(%)250300350400450500550600650700750800近視誘導には,バイオレットライトを透過する(Ca)ことを確認した凹レンズ効果をもつクリアレンズ(b)を使用し,片眼装用を行った.VL:バイオレットライト.(文献C22より引用)C43abEGR1の相対発現量*****3.0屈折値の変化(Diopter).5.10.15.2000.0VL.VL+VL.VL+ControlCoveredVL.VL+VL.VL+ControlCovered眼軸長の変化(mm)2.522.01.511.00.5VL.VL+VL.VL+ControlCovered図4ヒヨコ実験近視モデルにおけるバイオレットライトの近視進行抑制効果a:縦軸はC1週間の近視進行程度.Cb:縦軸はC1週間の眼軸長伸長程度を示す.レンズ装用をしていないコントロール眼(control),凹レンズ装用を行った遮蔽眼(Covered)ともに,バイオレットライト(VL)に暴露されたヒヨコ(VL+)は,暴露されていないヒヨコ(VLC-)に比べ,近視進行程度・眼軸長伸長程度が有意に抑制されていることがわかる.(文献C22より引用)図5近視進行抑制遺伝子EGR1の発現とバイオレットライト縦軸はヒヨコ網膜・脈絡膜組織におけるCEGR1CmRNA相対発現量を表す.レンズ装用をしていないコントロール眼(control),凹レンズ装用を行った遮蔽眼(Covered)ともに,バイオレットライト(VL)に暴露されたヒヨコ(VL+)は,暴露されていないヒヨコ(VLC-)に比べ,EGR1の発現が有意に上昇していることがわかる.(文献C22より引用)ab100808070適過率(%)10090適過率(%)60605040403020201000350400450500550600650350400450500550600650波長(nm)波長(nm)図6今回の臨床研究で用いたコンタクトレンズの波長透過特性バイオレットライトの透過率がC80%以上のコンタクトレンズ(Ca)を装用している群と,バイオレットライトの透過率がC80%未満のコンタクトレンズ(Cb)を装用している群にわけ,眼軸長伸長量を比較した.VL:バイオレットライト.(文献C22より引用)表1コンタクトレンズ装用開始時データ症例数人種年齢(歳)C他覚屈折値(ジオプター)C眼軸長(mm)C経過観察期間(日)C31例31眼日本人14.7±1.3(13.18)C-2.59±1.71(-1.00.C-6.38)C25.63±0.70(24.22.26.88)C892±374(372.1645)C116例C116眼C─15.1±1.4(13.18)C-2.47±1.72(-1.00.C-9.38)C25.76±0.99(C23.40.C28.10)C872±361(C380.C1814)C0.1050.7210.5510.833バイオレットライトをC80%以上透過するコンタクトレンズを装用している群をCVL+群,バイオレットライトの透過率がC80%未満のコンタクトレンズを装用している群をCVLC-群とし,両群間のコンタクトレンズ装用開始時のデータを比較した.年齢や屈折値,眼軸長,経過観察期間においてC2群間に有意差を認めず,ほぼ同じ背景の学生である.(文献C22より引用)C*眼軸長の変化量(mm/年)0.300.250.200.150.100.050.00VL.VL+図7図6の異なるバイオレットライト透過率のコンタクトレンズ装用による眼軸長変化量の比較バイオレットライトをC80%以上透過するコンタクトレンズを装用している群(VCL+群,1C16例C116眼)の眼軸長伸長量はC0.14.mm/年,バイオレットライトの透過率がC80%未満のコンタクトレンズを装用している群(CVLC-群,C31例31眼)の眼軸長伸長量はC0.19Cmm/年であり,CVL+群のほうが,有意に眼軸長伸長量が少なかった.(文献C22より引用)C2.001.80VL6:0010:0014:008:0012:0016:001.6018:001.401.201.000.800.600.400.200.00300350400450500550600650700750800波長(nm)図8屋外環境におけるバイオレットライト分光放射照度(W/m2/nm)真夏の東京における光環境を6.18時まで計測した.18時の日没に近い時間以外は,どの時間帯もバイオレットライトCVLが一定量存在することがわかる.(文献C22より引用)分光放射照度(W/m2/nm)1.60VLオフィス内車内1.40病院内1.201.000.800.600.400.200.00図9屋内環境におけるバイオレットライト300350400450500550600650700750800波長(nm)真夏の東京における日中の光環境を室内(オフィス内,車内,病院内)で計測した.最近のガラスは,400Cnm以下の光をカットするものが多く,バイオレットライト(VL)までカットされていることがわかる.そのため屋内環境ではCVLがほとんどない.(文献C22より引用)C0.200.180.160.140.120.100.080.060.040.020.00図10窓がない室内におけるバイオレットライト300350400450500550600650700750800波長(nm)窓がないため蛍光灯のみの波形であることがわかり,そのため時間による差を認めない.窓がない屋内環境ではどの時間帯でもバイオレットライト(VL)がほとんどない.(文献C22より引用)分光放射照度(W/m2/nm)TUNEL/DAPI角膜網膜ControlVL(365nm)UVB(305nm)図11ヒヨコ角膜・網膜におけるTUNEL染色陽性細胞の有無バイオレットライト(VL)による角膜・網膜障害の評価のため,アポトーシスによる細胞死の有無をCTUNEL染色を用いて評価した.昼行性動物であるヒヨコの実験系を用い,バイオレットライト(400C.W/cmC2)を1日12時間・7日間連続の照射を行った.その結果,UVB照射により角膜に認められたようなCTUNEL染色陽性細胞(赤色部分)は,バイオレットライト照射では認めず,アポトーシスによる細胞死を認めなかった.(文献C22より引用)

病的近視の診断基準

2017年10月31日 火曜日

病的近視の診断基準De.nitionofPathologicMyopia横井多恵*大野京子*はじめに病的近視は近視の中の特異な病態であり,網膜や視神経の合併病変により矯正視力の低下をきたす.病的近視に伴うさまざまな眼合併症は,おもに東アジア諸国を中心とした世界の失明の主要な原因疾患である1).しかし,その重要性にもかかわらず,病的近視を示す用語や定義は,長らく国際的な統一見解が得られていなかった.用語に関しては,「強度近視」,「変性近視」,「悪性近視」「高度近視」が研究・調査報告で使用されてきた2).しかし,,「強度近視」という用語は,近視が単に強度に至った病態を示すもので,近視に伴う眼合併症から視覚障害に至る疾患概念を正確に反映していない.また,近視に伴う眼合併症が常に網脈絡膜の「変性」というわけではない.さらに「悪性近視」は,悪性の腫瘍性疾患を想起させるものであるし,強い近視を「高度近視」と定義すると,弱い近視は「低度近視」なるが,そのような用語はない.このため近年は,「病的近視」という用語が,もっとも適切な用語として普及するようになった.病的近視の定義に関しては,Duke-ElderやCurtinらによれば,「眼底後極部に変性を起こす,あるいは後部ぶどう腫がある近視」とされていた3).しかし実際には,眼底所見から病的近視を定義した研究・調査は近年まであまりなく,疫学調査や研究報告の多くが病的近視を屈折値に基づき定義してきた.さらに眼軸長測定が容易な時代になると,屈折値および眼軸長の両者を含めて病的近視を定義する報告が多くなった.しかし,屈折値や眼軸長による定義は,単に近視が強度に至った状態を示すものである.強度の近視のすべてが近視に伴うさまざまな眼合併症から視覚障害に至る病的近視とは限らず,屈折値や眼軸長のみのでは病的近視を定義するには不十分である.統一された基準を定めることで,国内外での調査研究間の比較を可能とするために,2015年の病的近視の国際メタ解析スタディ(theMeta-AnalysisforPathologicMyopiastudy:META-PM)では4),病的近視を「びまん性萎縮以上の萎縮性変化を眼底に有する,もしくは後部ぶどう腫を有する」眼であると定義した.しかし,一見このような眼底所見による病的近視の定義は理想的と考えられるが,問題は人種によっては網脈絡膜の萎縮性病変の観察が困難であったり,近視性眼底病変が後部ぶどう腫も含めて,加齢とともに出現することである.少なくともアジア人においては,眼底変化が生じる以前の若年者や小児の病的近視を見過ごす危険がある.このような若年例を適切に鑑別し,近視性眼底病変発症のリスクを管理することは,病的近視による失明防止にとって重要であり,現状の診断基準もまた不十分と考えられる.以上を踏まえたうえで,本稿では今日まで議論されている,病的近視の診断に関する最新の知見をまとめる.*TaeYokoi&*KyokoOhno-Matsui:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野〔別刷請求先〕横井多恵:〒113-8519東京都文京区湯島1-5-45東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(25)1363I病的近視の定義1.病的近視の二つの病期病的近視の病期には,・病的近視に特徴的な眼合併症が生じ,すでに視覚障害に至った状態,・病的近視に特徴的な眼合併症はないが,将来,病的近視よる眼合併症から視覚障害に至るリスクがある状態,の二つの病期がある2,5).強度の近視は,病的近視に特徴的な視覚障害をきたす眼合併症の要因であり,病的近視における眼合併症の代表的な所見には,後部ぶどう腫の形成やさまざまな種類の近視性黄斑症がある.META-PMスタディは,病的近視を「びまん性萎縮以上の萎縮性変化を眼底に有する,もしくは後部ぶどう腫を有する」眼であると定義したが4),本来は・・の病期にある病的近視を含む基準が理想と考えられる.しかし,現状ではMETA.PMスタディの定義に基づき,眼合併症の有無により病的近視の診断を行うことが妥当と考えられる.以下に後部ぶどう腫とさまざまな種類の近視性黄斑症の定義と診断についての知見をまとめる.2.後部ぶどう腫の定義と診断病的近視の病態の最大の特徴は,眼軸延長による後部ぶどう腫の形成である.これまで後部ぶどう腫は,研究報告においてさまざまに定義されてきた.たとえば,ある報告では近視性黄斑症の一部として評価され,また別の報告では,限局した眼球壁の突出が後極部に観察されない場合でも,近視性黄斑症を認める場合は後部ぶどう腫があるものとして評価されてきた.混乱をさけるため2013年にSpadeは,「周囲の眼球壁の曲率半径よりも明らかに小さい曲率半径を有する後極部眼球壁の突出」を,後部ぶどう腫を示す用語として図1のように定義した6).これによると図1bに示すような,赤道部の眼球壁の伸展によって生じた軸性近視において,後極部眼底曲率半径(r1)に変化を認めない場合は,後部ぶどう腫がない軸性近視と定義される.一方で図1cに示すように,本来の後極部眼底曲率半径(r1)以外に,より小さな曲率半径(r2)を示す眼球壁の突出を認める場合は,後部ぶどう腫がある軸性近視と定義される.また,長らく後部ぶどう腫の分類は,1977年にCurtinが世界で初めて提唱した,双眼倒像鏡を用いたCurtin分類が用いられてきた(図2)7).Curtin分類では後部ぶどう腫は,I~Vの基本タイプと,I~Vの基本タイプの複合型であるVI~Xのタイプに分類される.一方で,Curtin分類から約40年を経た近年の画像解析技術の進歩はめざましく,後部ぶどう腫の形状は新技術を用いてより詳細に評価されるようになった.Ohno-Mat.suiらは,2012年に3D-MRIを用いた病的近視眼の全眼球形状解析を行い,3D-MRIを用いた後部ぶどう腫のシンプルな形態分類を示した8).さらに2014年には,通常のパノラマ写真ではとらえられない最周辺部200°の変化を撮像できるオプトス画像と3D-MRIによる画像解析を組み合わせ,後部ぶどう腫の新しい分類方法を提唱した(図3)9).Ohno-Matsuiらは,近年の画像解析技術によって詳細に観察されるようになったさまざまな形態の後部ぶどう腫をより適切に分類するために,Curtin分類を以下のように修正した.まず後部ぶどう腫を後部ぶどう腫の最外周縁の範囲と位置のみで大まかに分類した.このためCurtin分類において,後部ぶどう腫内での強膜形状の違いで後部ぶどう腫を細分したVI~Xの複合型後部ぶどう腫は,Ohno-Matsuiらの分類においては,すべてCurtin分類I型に含まれる.Ohno-Matsuiらの分類では,Curtin分類のI型が黄斑広域型,II型が黄斑限局型,III型が乳頭周囲型,IV型が鼻側型,V型が下方型,それ以外がその他に分類される.さらに2017年にOhno-Matsuiらは,日常診療でより簡便かつ詳細に後部ぶどう腫の形状解析ができる最大撮影幅16×14mm,深さ5mmの範囲が撮像可能なswept-sourceOCT(SS-OCT)であるプロトタイプ広角OCTを,3D-MRIに変わる手法として,世界で初めて使用し,広角OCTの病的近視診療における有用性を報告した10).広角OCTは簡便に,3D-MRIと同等もしくはそれ以上の精度で後部ぶどう腫の形状を三次元的に解析可能であり(図4),3D-MRIでは見逃される後部ぶどう腫の診断も可能であった(図5).3.近視性黄斑症の定義と診断2014年にOhno-Matsuiらによって報告されたオプト1364あたらしい眼科Vol.34,No.10,2017(26)図1Spadeらによる後部ぶどう腫の診断a:正常の眼球形態.b:赤道部眼球壁が伸展した後部ぶどう腫のない軸性近視.c:後部ぶどう腫のある軸性近視.周囲の眼球壁の曲率半径(r1)よりも小さい曲率半径(r2)を有する後極部眼球壁の突出が後部ぶどう腫である.(文献6より引用)タイプ・タイプ・タイプ・タイプ・タイプ・図2Curtinによる後部ぶどう腫の分類Curtin分類では後部ぶどう腫は,I~Vの基本タイプと,I~Vの基本タイプの複合型であるVI~Xのタイプに分類される.(文献7より引用)タイプ・タイプ・タイプ・タイプ・タイプ・黄斑広域型黄斑限局型乳頭周囲型鼻側型下方型その他図3Ohno.Matsuiらによる後部ぶどう腫の新分類後部ぶどう腫を後部ぶどう腫の最外周縁の範囲と位置で再分類し,理解しやすい名称に変更した.Curtin分類において,VI~Xの複合型後部ぶどう腫はすべて黄斑広域型に分類される.(文献9より引用)図4近視性黄斑症の眼底病変a:びまん性萎縮.b:限局性萎縮.c:Lacquercracksと単純型黄斑部出血.Cd:近視性脈絡膜新性血管退縮後のCFuchs斑と近視性脈絡膜新性血管関連黄斑萎縮.図53D.MRIで黄斑広域型と診断されたが,広角OCTでは黄斑限局型と乳頭周囲型の複合型と診断された症例a:オプトス画像.b:3D-MRIの下方画像.Cc:3D-MRIの後方画像.Cd:水平断の広角OCT.Ce:垂直断の広角OCT.Cf:三次元広角COCTの前方画像.Cg:三次元広角COCTの耳側画像.Ch:三次元広角COCTの下方画像.表1META.PMstudyで提唱された近視性黄斑症の分類と定義カテゴリーC0変化なしカテゴリーC1豹紋状眼底変化のみ中心窩およびアーケード血管内に明瞭な脈絡膜血管が観察できるカテゴリーC2びまん性網脈絡膜萎縮後極部が黄白色調を呈する網脈絡膜萎縮(範囲はさまざま)カテゴリーC3限局性網脈絡膜萎縮境界明瞭な黄色斑状の萎縮巣として発生する網脈絡膜萎縮(C1~数個の脈絡膜小葉大とサイズはさまざま)カテゴリーC4黄斑萎縮退縮した線維血管膜の周囲に経過とともに拡大する境界明瞭な円形の灰白色もしくは白色の網脈絡膜萎縮病変+LcCLacquercracks眼底後極部の黄色線状病変+CNV脈絡膜新生血管活動期脈絡膜新生血管(CNV)は滲出および出血性変化を伴う+FsFuchs斑Fuchs斑とよばれる色素沈着を伴った近視性CCNVの瘢痕病巣C─後部ぶどう腫周囲の眼球壁の曲率半径よりも明らかに小さい曲率半径を有する後極部眼球壁の局所的な突出META-PMstudy:theMeta-AnalysisforPathologicMyopiastudyC図63D.MRIで後部ぶどう腫なしと診断されたが,広角OCTでは黄斑限局型と診断された症例a:オプトス画像.b:3D-MRIの鼻側画像.Cc:3D-MRIの下方画像.Cd:水平断の広角OCT.Ce:垂直断の広角OCT.Cf:三次元広角COCTの前方画像.Cg:三次元広角COCTの前方画像をやや傾斜させた画像.3D-MRIの下方画像で,乳頭耳側のCridgeが観察されるが明らかなぶどう腫は認めない.図7病的近視眼における学童期の乳頭周囲の脈絡膜のOCT視神経乳頭耳側の脈絡膜厚は著明かつ急峻に菲薄化している.-

近視の遺伝因子

2017年10月31日 火曜日

近視の遺伝因子GeneticFactorsofMyopia目黒明*水木信久*はじめに近視は複数の遺伝因子と環境因子が複合的に関与して発症する多因子遺伝性疾患と考えられている.単一遺伝子疾患は一つの遺伝子における変異が原因で発症するのに対し,多因子遺伝性疾患では,遺伝因子は疾患に対する「かかりやすさ(感受性)」を規定しているだけであり,複数の遺伝因子(疾患感受性遺伝子)の関与のもとに,環境因子が合わさって疾患の発症に至ると考えられている.近視を対象とした遺伝子解析は以前から盛んに実施されている.当初の遺伝子解析は家系を対象とした連鎖解析(linkageanalysis)や候補遺伝子を対象とした関連解析が主であったが,近年ではゲノム全域を対象とした遺伝子解析(ゲノムワイド関連解析,genome-wideasso-ciationstudy:GWAS)が精力的に実施され,近視の疾患感受性遺伝子が次々と報告されている.本稿では,最新の知見を交えて,近視の遺伝因子について概説する.I近視の遺伝率遺伝率(heritability)は,疾患の表現型が遺伝因子にどの程度影響を受けるかを示す尺度である.近視を対象とした遺伝率の評価は以前より多く実施されている1).双生児間および同胞間を対象とした研究では,一部の研究を除き,多くの研究において近視の高い遺伝率(0.58.0.98)を報告しており,近視の発症には遺伝因子が強く関与することが示唆される.一方,親子間を対象とした研究では,双生児間および同胞間に比べて近視の遺伝率が低値(0.10.0.49)を示しており,世代間の生活環境の違いが遺伝率に影響を与えていることが推察され,近視の発症には環境因子も重要であることが示唆されている.II近視の罹患同胞相対危険率罹患同胞相対危険率(ls)とは,特定の疾患の患者の同胞における疾患の罹患率と一般集団における疾患の罹患率の比であり,疾患の発症に対する遺伝因子の寄与度を測る指標の一つとして用いられる.表1にこれまでに報告されている近視のlsを示す.Guggenheimら2)は,1968年および1996年に実施された近視の疫学研究3,4)から強度近視(-6.00D以上)および弱度近視のlsをそれぞれ20および1.5と算出している.また,Farbroth.erら5)は,9.1歳までに眼鏡を装用することを強度近視の診断基準として代用したとき,強度近視のlsが4.9となることを報告している.さらに,Peetら6)は,近視の程度に応じてlsが上昇する傾向を報告している.このように近視の程度が強くなるほどlsの値が大きくなることは,遺伝因子が近視の発症において非常に重要な役割を担っていることを示している.*AkiraMeguro&*NobuhisaMizuki:横浜市立大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕目黒明:〒横浜市金沢区福浦3-9横浜市立大学医学部眼科学教室0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(17)1355表1近視の罹患同胞相対危険率(ls)表2近視の候補遺伝子領域(MYPローカス)強度近視:-6.00D以上C20C2弱度近視C1.5強度近視:9.1歳までに眼鏡装用C4.9C5近視(平均C64.2歳):C-0.50D以下C2.36C6C-1.00D以下C2.59C-1.50D以下C3.27C-2.00D以下C5.61C-2.50D以下C4.52MYP1CMYP2CMYP3CMYP5CMYP6CMYP7CMYP8CMYP9CMYP10CMYP11CMYP12CMYP13CMYP14CMYP15CMYP16CMYP17/MYP4CMYP18CMYP19CMYP20*CMYP21CMYP22CMYP23CMYP24CMYP25CXq28C18p11.31C12q21-q23C17q21-q22C22q12C11p13C3q26C4q12C8p23C4q22-q27C2q37.1CXq23-q27.2C1p36C10q21.1C5p15.33-p15.2C7p15C14q22.1-q24.2C5p15.1-p13.3C13q12.12C1p22.2C4q35.1C4p16.3C12q13.3C5q31.1C310460C160700C603221C608474CSCO2C608908C609256C609257C609258C609259C609994C609995C300613C610320C612717C612554C608367C255500C613969C614166CZNF644C614167CCCDC111C615420CLRPAP1C615431CSLC39A5C615946CP4HA2C617238*MYP20はCGWAS(ShiY,etal.AmJHumGenet(2011):表3参照)により同定された.表3近視に関するGWAS研究NakanishiHPLoSGenet(2C009)日本人C1,231人C/日本人C1,510人病的近視C1CSoloukiAMNatGenet(2C010)ヨーロッパ系人種C5,328人/ヨーロッパ系人種C10,280人屈折異常C1CHysiPGNatGenet(2C010)ヨーロッパ系人種C4,270人/ヨーロッパ系人種C13,414人屈折異常C1CLiYJOphthalmology(2C011)中国系シンガポール人C980人/日本人C3,087人強度近視C1CLiZHumMolGenet(2C011)中国人C437人C/中国人C12,962人強度近視C1CShiYAmJHumGenet(2C011)中国人C1,088人/東アジア人C8,445人強度近視C1C中国系およびマレー系シンガポール人C4,944人/日本人FanQPLoSGenet(2C012)強度近視2,731人1CMengWInvestOphthalmolVisSci(2C012)フランス人C1,251人/なし強度近視C2CKieferAKPLoSGenet(2C013)ヨーロッパ系人種C45,771人/ヨーロッパ系人種C8,323人近視C20CVerhoevenVJNatGenet(2C013)ヨーロッパ系人種C37,382人,アジア人C8,376人/なし屈折異常C24CShiYHumMolGenet(2C013)中国人C1,625人C/中国人C5,811人強度近視C2CStambolianDHumMolGenet(2C013)ヨーロッパ系人種C7,280人/ヨーロッパ系人種C19,763人屈折異常C1CChengCYAmJHumGenet(2C013)ヨーロッパ系人種C12,531人/アジア人C8,216人眼軸長C7CKhorCCHumMolGenet(2C013)東アジア人C5,030人/東アジア人C4,800人強度近視C2C日本人C3,248人C/日本人C3,460人,中国系人種C2,674人,MiyakeMNatCommun(2C015)眼軸長ヨーロッパ系人種C2,690人1*患者と健常対照者の総数.**2013年に発表された論文では複数の遺伝子領域が重複して報告されている.新規のC24個の近視感受性遺伝子が同定され,24個の遺伝子のうち,10個の遺伝子がC23andMeのCGWAS研究結果と一致していた.また,本研究では,ヨーロッパ系人種とアジア系人種の間で近視の発生率が異なるにもかかわらず,両人種間で共通の近視感受性遺伝子を多く共有していることがわかった.CREAMおよびC23andMeにより同定された遺伝子の多くはネットワークを形成しており,「MAPK」や「TGF-b/SMAD」などの細胞増殖や細胞分化に関するパスウェイが近視の発症・進行に深く関与していることが示唆されている28).Cd.「長浜スタディ」を用いたGWAS研究長浜スタディとは,滋賀県長浜市と京都大学が連携して実施した健康診断ベースの大規模疫学コホート研究であり,2015年に,京都大学を中心としたグループ(三宅ら)が長浜スタディのデータを用いたCGWAS研究を報告した29).長浜スタディに参加した日本人C3,248人を対象に,屈折・眼軸長・角膜曲率半径の近視に関連する三つの表現型についてCGWASを実行したのち,新たな日本人集団C3,460人,中国系人種集団C2,674人およびヨーロッパ系人種集団C2,690人を用いてCGWASで得られた結果の追認試験を行い,新規の近視感受性遺伝子として,染色体C22q13.31領域内のCWNT7B遺伝子を同定した.本研究では,2010年に報告された染色体C15q14領域内のCGJD2遺伝子も屈折・眼軸長と相関することを認め,アジア人集団において,WNT7B遺伝子とGJD2遺伝子の相互作用が近視化作用を増強させることを見出している.Ce.Missingheritability(失われた遺伝率)近視を対象としたCGWASが精力的に行われているが,これまでに同定されている遺伝子は近視の遺伝因子全体の一部でしかないことが推測されている.2013年に23andMeとCCREAMにより同定されたC30以上の遺伝子をすべて合わせても近視の表現型分散全体のC12%に満たないことが見積もられており30),GWASにおいて同定できなかった遺伝因子,すなわちCmissingheritabil.ityが依然として多く存在することが示唆される.したがって,近視の遺伝因子の全容を解明するうえで,missingheritabilityの解決が今後の課題である.IV近視の遺伝因子と環境因子の相互作用近視の発症・進行には遺伝因子と環境因子が複合的に関与していると考えられており,近視における遺伝因子・環境因子間の相互作用を対象とした研究が実施されている.近年では,教育水準が高いほど,遺伝因子が近視化に影響を与えることが報告されており31,32),近視の発症・進行において,教育(幼少期からC20代前半における読み書きなどの近業)が近視の遺伝因子の効果に影響を与えることが示唆される.2016年には,ゲノム全域を対象に遺伝因子・環境因子間の相互作用を検討する研究(gene-environment-wideCinteractionCstudy:GEWIS)がCCREAMにより発表された30).ヨーロッパ系人種C25集団(計C40,036人)およびアジア系人種C9集団(計C10,315人)を対象に,環境因子として「教育」を用いてCGEWISを実行した結果,ヨーロッパ系人種およびアジア系人種において「教育」と相互作用を示す遺伝子領域が複数同定され,ヨーロッパ系人種とアジア系人種間で異なる遺伝子が「教育」と相互作用を示すことが見出された.また,近視に対する「遺伝因子」C×「教育」間の相互作用がヨーロッパ系人種に比べてアジア系人種の方で強いことがわかった.CREAMは遺伝因子に対する「年齢」の影響も調査しており33),子供の時期における近視の早期発症と既知39遺伝子の関連を評価した結果,10遺伝子がC7.5歳までの早期発症(early-onset)に,11遺伝子がC7.5.15歳までの発症(later-onset)に,5遺伝子がCEarly-onsetとClater-onsetの両方に関与することが示された.また,39遺伝子全体の遺伝的効果は,7歳時およびC15歳時における近視化要因のC0.6%およびC2.3%であり,年齢の上昇とともに,遺伝的効果が上昇することが示唆された.さらに,39遺伝子のうち,5遺伝子が子供の時期の「近業」と相互作用するのに対し,「屋外活動の時間」と相互作用を示す遺伝子は認められないことが報告された.以上のことから,近視の発症・進行において,遺伝因子と環境因子間の相互作用が重要であることが考えられる.(21)Cあたらしい眼科Vol.34,No.10,2017C1359おわりに以上,近視の遺伝因子について概説した.近年の精力的な研究により,近視の発症に関与する遺伝子が次々と同定されており,近視の発症および進行メカニズムが解明されつつある.しかしながら,依然として未知な遺伝因子が多く存在していることが考えられるため,近視を対象とした遺伝学的研究調査を今後さらに発展させる必要がある.文献1)水木信久:近視の分子遺伝学.眼科47:717-752,C20052)GuggenheimJA,KirovG,HodsonSA:TheheritabilityofhighCmyopia:aCreanalysisCofCGoldschmidtC’sCdata.CJMedCGenet37:227-231,C20073)GoldschmidtCE:OnCtheCetiologyCofCmyopia.CAnCepidemio.logicalstudy.ActaOphthalmol(Copenh)Suppl98:1,C19684)SperdutoRD,HillerR,PodgorMJetal:Familialaggrega.tionCandCprevalenceCofCmyopiaCinCtheCFraminghamCO.springCEyeCStudy.CArchCOphthalmolC114:326-332,C19965)FarbrotherJE,KirovG,OwenMJetal:Familyaggrega.tionCofChighCmyopia:estimationCofCtheCsiblingCrecurrenceCriskratio.InvestOphthalmolVisSciC45:2873-2878,C20046)PeetCJA,CCotchCMF,CWojciechowskiCRCetCal:HeritabilityCandCfamilialCaggregationCofCrefractiveCerrorCinCtheCOldCOrderCAmish.CInvestCOphthalmolCVisCSciC48:4002-4006,C20077)SchwartzCM,CHaimCM,CSkarsholmCD:X-linkedCmyopia:CBornholmCeyeCdisease.CLinkageCtoCDNACmarkersConCtheCdistalpartofXq.ClinGenetC38:281-286,C19908)ShiCY,CLiCY,CZhangCDCetCal:ExomeCsequencingCidenti.esCZNF644CmutationsCinChighCmyopia.CPLoSCGenetC7:Ce1002084,C20119)ZhaoCF,CWuCJ,CXueCACetCal:ExomeCsequencingCrevealsCCCDC111CmutationCassociatedCwithChighCmyopia.CHumCGenetC132:913-921,C201310)AldahmeshCMA,CKhanCAO,CAlkurayaCHCetCal:MutationsCinLRPAP1areassociatedwithseveremyopiainhumans.AmJHumGenetC93:313-320,C201311)GuoCH,CJinCX,CZhuCTCetCal:SLC39A5CmutationsCinterferC-ingCwithCtheCBMP/TGF-bpathwayCinCnon-syndromicChighmyopia.JMedGenetC51:518-525,C201412)GuoCH,CTongCP,CLiuCYCetCal:MutationsCofCP4HA2Cencod.ingCprolylC4-hydroxylaseC2CareCassociatedCwithCnonsyn.dromichighmyopia.GenetMedC17:300-306,C201513)KleinCRJ,CZeissCC,CChewCEYCetCal:ComplementCfactorCHCpolymorphismCinCage-relatedCmacularCdegeneration.CSci.enceC308:385-389,C200514)MacArthurCJ,CBowlerCE,CCerezoCMCetCal:TheCnewCNHGRI.EBICatalogofpublishedgenome-wideassociationstudies(GWASCCatalog)C.CNucleicCAcidsCResC45:D896-D901,C201715)NakanishiCH,CYamadaCR,CGotohCNCetCal:ACgenome-wideCassociationanalysisidenti.edanovelsusceptiblelocusforpathologicalmyopiaat11q24.1.PLoSGenetC5:e1000660,C200916)SoloukiCAM,CVerhoevenCVJ,CvanCDuijnCCMCetCal:ACgenome-wideCassociationCstudyCidenti.esCaCsusceptibilityClocusCforCrefractiveCerrorsCandCmyopiaCatC15q14.CNatCGenetC42:897-901,C201017)HysiCPG,CYoungCTL,CMackeyCDACetCal:ACgenome-wideCassociationstudyformyopiaandrefractiveerroridenti.esCaCsusceptibilityClocusCatC15q25.CNatCGenetC42:902-905,C201018)HayashiCH,CYamashiroCK,CNakanishiCHCetCal:AssociationCof15q14and15q25withhighmyopiainJapanese.InvestOphthalmolVisSciC52:4853-4858,C201119)VerhoevenVJ,HysiPG,SawSMetal:Largescaleinter.nationalCreplicationCandCmeta-analysisCstudyCcon.rmsCassociationCofCtheC15q14ClocusCwithCmyopia.CTheCCREAMCconsortium.CHumGenetC131:1467-1480,C201220)JiaoCX,CWangCP,CLiCSCetCal:AssociationCofCmarkersCatCchromosomeC15q14CinCChineseCpatientsCwithCmoderateCtoChighmyopia.MolVisC18:2633-2646,C201221)KieferAK,TungJY,DoCBetal:Genome-wideanalysispointsCtoCrolesCforCextracellularCmatrixCremodeling,CtheCvisualCcycle,CandCneuronalCdevelopmentCinCmyopia.CPLoSCGenetC9:e1003299,C201322)VerhoevenVJ,HysiPG,WojciechowskiRetal:Genome-widemeta-analysesofmultiancestrycohortsidentifymul.tipleCnewCsusceptibilityClociCforCrefractiveCerrorCandCmyo.pia.NatGenetC45:314-318,C201323)QiangY,LiW,WangQetal:Associationstudyof15q14andC15q25CwithChighCmyopiaCinCtheCHanCChineseCpopula.tion.BMCGenetC15:51,C201424)ChenCT,CShanCG,CMaCJCetCal:PolymorphismCinCtheCRAS.GRF1CgeneCwithChighCmyopia:ACmeta-analysis.CMolCVisC21:1272-1280,C201525)FanQ,BarathiVA,ChengCYetal:GeneticvariantsonchromosomeC1q41Cin.uenceCocularCaxialClengthCandChighCmyopia.PLoSGenetC8:e1002753,C201226)KieferAK,TungJY,DoCBetal:Genome-wideanalysispointsCtoCrolesCforCextracellularCmatrixCremodeling,CtheCvisualCcycle,CandCneuronalCdevelopmentCinCmyopia.CPLoSCGenetC9:e1003299,C201327)VerhoevenVJ,HysiPG,WojciechowskiRetal:Genome-widemeta-analysesofmultiancestrycohortsidentifymul.tipleCnewCsusceptibilityClociCforCrefractiveCerrorCandCmyo.pia.NatGenetC45:314-318,C201328)HysiCPG,CWojciechowskiCR,CRahiCJSCetCal:Genome-wideCassociationstudiesofrefractiveerrorandmyopia,lessonslearned,andimplicationsforthefuture.InvestCOphthalmol1360あたらしい眼科Vol.34,No.10,2017(22)C

眼軸長の疫学調査

2017年10月31日 火曜日

眼軸長の疫学調査AxialLengthDistributioninMajorCohortStudies三宅正裕*中西秀雄*はじめに近視は世界的にも公衆衛生上の問題となっており,近視の疫学調査はこれまでも多数報告されている.これらのうちの多くは屈折値と,屈折値によって定義された近視の頻度に関する調査であり,ここ20年でとくにアジア地域において近視が増加していることが報告されている.強度の近視に関連した網脈絡膜萎縮が失明につながることは知られているが,近視による失明には,屈折値よりもむしろ眼球形状が関連することが指摘されている.長眼軸のような眼球形状異常は通常,近視性屈折異常を伴うため,近視性屈折異常と失明が相関しているというこれまでの知見は正しいが,屈折値は眼球形状以外にも水晶体や角膜の屈折などさまざまなパラメータの影響を受けてある程度代償されることから,屈折値が強くなくとも眼球形状に異常があることもある.逆に,たとえば核白内障の影響により屈折値が強くても眼球形状に異常がないこともある.その観点から,近視による病的状態を考えるうえでは,屈折値もさることながら,眼軸長について検討することが重要である.I成人の眼軸長これまでのおもなpopulation-basedstudyのうち,眼軸長について報告されているものを一覧にした(表1).BlueMountainEyeStudyやBeaverdamEyeStudyなど伝統的なコホートスタディも含まれるが,眼軸長について報告された年は比較的最近であることがわかる.また,現在多数の眼科コホートを擁して積極的に疫学研究を進めているシンガポールは,年齢・性別で層別化した眼軸長を2001年に報告しており(TanjongPagarSurvey),先見性の高さがうかがわれる(なお,当該論文の筆頭著者は若かりし頃のTienYinWong教授である).これまでの報告では,眼軸長は眼球生体特徴(ocularbiometry)の一つとして前房深度,水晶体厚,角膜曲率などのパラメータとセットで報告されることが一般的であるが,その先鞭をつけたのが,この報告であった.どのようなパラメータが眼軸長と同時に報告されているかを表2にまとめた.前房深度と角膜曲率(または角膜屈折力)は,ほとんどのコホートで眼軸長と同時に報告されていることがわかる.これらのパラメータは,眼軸長と同様に眼球の大きさの影響を受けやすいパラメータであることから,眼軸長と同時に報告することで眼球の特徴を表現しようとしているものと思われる.一方で,水晶体厚や硝子体腔厚は,初期の研究では同時に報告されているものの,最近の研究ではあまり報告されていない.初期の研究では水晶体の核硬化度や屈折値も合わせて報告されていることが多いことも勘案すると,研究対象としての眼軸長は,屈折異常を引き起こす要因としての位置づけから,眼球の大きさと関連するパラメータとしての位置づけに変遷していったことが推察される.また,多変量回帰のみを実施した報告を除けば,ほぼすべての報告において年齢・性別による層別化解析が*MasahiroMiyake&*HideoNakanishi:京都大学大学院医学研究科眼科学〔別刷請求先〕三宅正裕:〒606-8507京都市左京区聖護院川原町54第2臨床研究棟8階京都大学大学院医学研究科眼科学0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(11)1349表1眼軸長について報告されているおもなPopulation.basedstudy1CTanjongPagarSurveyシンガポールC2001InvestOphthalmolVisSci42:7C3-80,2001C2CMongolianStudyモンゴルC2004InvestOphthalmolVisSci45:7C76-783,2004C3CLosAngelesLatinoEyeStudy米国C2005InvestOphthalmolVisSci46:C4450-4460,2005C4CReykjavikStudyアイスランドC2005ActaOphthalmolScand83:7C34-738,2005C5CMeiktilaEyeStudyミャンマーC2008BrJOphthalmol92:1C591-1594,2008C6CBeaverdamEyeStudy米国C2009CArchOphthalmol127(1):8C8-93,2009C7CLiwanEyeStudy中国C2009InvestOphthalmolVisSci50:C5130-5136,2009C8CEPIC-NorfolkEyeStudy欧州全域C2010BrJOphthalmol94:8C27-830,2010C9CCentralIndiaEyeandMedicalStudyインドC2010Ophthalmology117:1C360-1366,2010C10CBlueMountainsEyeStudyオーストラリアC2010Ophthalmology117:4C17-423,2010C11CSingaporeMalayEyeStudyシンガポールC2010InvestOphthalmolVisSci51:1C03-109,2010C12CSingaporeIndianEyeStudyシンガポールC2011InvestOphthalmolVisSci52:C6636-6642,2011C13CBeijingEyeStudy中国C2012PLoSOne7:eC43172,2012C14CShahroudEyeCohortStudyイランC2012BMCOphthalmology12:5C0,2012表2各コホートで眼軸長と同時に報告されている眼球生体特徴(No.1~14は表C1に対応)C1○○○C○/─C○C○C─年齢・性別C2C○C○C○C─/○C─C○眼軸長左右差年齢・性別C3○○○C─/○C○C○C─年齢・性別C視神経乳頭径・4C○C○C─C○/─C─C─面積年齢・性別身長との単変量回帰C5○○○C○/─C○C○C─年齢・性別C年齢・性別,6○──C○/─C─C─C─身長,教育歴C7○○─C─/○C─C○C─年齢・性別C年齢・性別・身長・体重・教育歴8○─C─C─/─C─C○C─年齢・性別で多変量回帰C各種眼球生体特徴,年齢,性別,9C─C─C─C─/─C─C─C──身長,体重,教育歴,収入等との単変量/多変量回帰C10C○C─C─C─/○C─C○角膜径(WTW)年齢・性別C年齢・性別,年齢・性別・身長・体重・教育11C○C─C─C○/─C─C─C─身長・体重・BMI,歴・近見作業時間・喫煙歴・糖尿教育歴,他多数病の有無で多変量回帰C眼軸長/角膜年齢・性別,12○C─C─C○/─C─C─曲率半径比水晶体硬化度C各種眼球生体特徴,年齢,性別,13C─C─C─C─/─C─C─C──身長,体重,教育歴等との単変量/多変量回帰C年齢・性別・身長・体重・教育歴14C○C○C○C─/─C─C─C─年齢,性別との単変量/多変量回帰表3年齢および性別で層別化した眼軸長分布(No.1~14は表C1に対応)CNo男性女性40~45~50~55~60~65~70~75~80~85~40~45~50~55~60~65~70~75~80~85~C1C23.80±1.20C23.54±1.19C23.37±1.13C23.38±0.85C23.40±1.37C23.01±1.16C22.73±1.03C22.66±0.75C2C23.4±1.3C23.3±0.8C23.5±1.0C23.6±0.9C23.0±1.3C23.1±1.1C23.2±1.1C23.1±1.2C3C23.7±1.0C23.6±0.8C23.6±0.9C23.5±0.9C23.7±0.9C23.2±1.1C23.2±0.9C23.1±1.0C23.1±0.9C22.9±0.9C4C23.89±1.09C23.61±0.96C23.60±1.09C23.26±0.99C23.25±1.03C23.04±0.98C5C23.17±0.79C23.14±1.11C23.06±1.00C23.00±1.01C22.57±0.85C22.51±0.74C22.54±0.88C22.52±0.79C6C24.06±1.06C23.88±1.14C23.83±1.08C23.69±1.25C23.49±1.21C23.37±1.02C7C23.37C23.41C23.31C23.65C22.83C22.87C22.79C22.98C8C23.94±1.14C23.84±1.18C23.72±1.16C23.64±1.11C23.47±1.18C23.34±1.21C23.10±1.05C23.19±1.03C910*C23.88±0.09C23.68±0.05C23.81±0.08C23.63±0.28C23.37±0.12C23.25±0.06C23.08±0.06C23.03±0.1511*C23.88±0.05C23.83±0.05C23.69±0.06C23.58±0.05C23.66±0.06C23.36±0.05C23.12±0.05C23.36±0.03C12C23.71±1.01C23.72±1.07C23.68±1.19C23.36±0.70C23.36±1.12C23.28±1.18C22.99±0.96C23.09±1.2513†C23.25±1.1414†C23.24C23.16C23.16C23.16C23.04眼軸長の単位はmm,平均C±標準偏差で表記.*については平均±標準誤差で表記†については男女合わせた値を男性欄に表記.眼球全体の拡大眼球の縦方向の拡大図1眼軸長伸長がみられる場合の2つのパターン新生児C1,163人のうち,生後C5~17日にCMRIを撮像し,T2強調画像が良好に描出できた正期産児C173人を対象とし,出生児のC3D眼球形状や眼軸長とC3年後の屈折・眼軸長との相関を調べた1).新生児の眼軸長は右眼C17.06±0.78Cmm,左眼C17.48C±0.87Cmmで,3年後には右眼C21.73C±0.69mm,左眼C21.74C±0.68mmになったと報告されている.また,もともと眼軸長が長い,眼球が大きい,眼球形状が長軸方向に楕円形といった眼球ほど,3年間での眼軸長伸長が有意に少ないことが報告されている.3年間での眼軸伸長はC4.47C±0.97Cmmで,3年後の等価球面度数はC0.91C±0.80Dだったという.C2.3.6歳の眼軸長に関する研究2012年に中国の八つの幼稚園を対象に実施された横断研究CShenzhenKindergartenEyeStudy2)では,対象となったC3~6歳の幼稚園児C1,764人のうち,71.1%であるC1,133人が同意し,調節麻痺下屈折検査が施行できたC1,127人が研究に参加した.平均眼軸長は,3歳児C22.19C±0.65Cmm,4歳児C22.27C±0.68Cmm,5歳児C22.51C±0.68Cmm,6歳児C22.63C±0.63mmであったが,角膜曲率半径の平均値はC3~6歳児に統計学的な有意差はみられなかった.前房深度はC3歳児のC3.26C±0.25mmからC6歳児のC3.37C±0.24mmまで年齢が上がるごとに増加し,同様に,等価球面度数はC3歳児のC1.49C±0.64DからC6歳児のC1.23C±0.85Dまで,年齢が上がるごとに減少した.C3.6.12歳の眼軸長に関する研究CorrectionofMyopiaEvaluationTrial(COMET)は,四つのセンターの合計C469人の近視(C-1.25D~C-4.5D)の小児をリクルートして単焦点眼鏡と累進焦点眼鏡の近視抑制効果を比較した前向きランダム化比較試験である3).当該コホートではベースラインからC14年間の追跡がなされており,本論文ではそのデータが報告されている.ベースラインでは平均C9.3C±1.3歳で眼軸長C24.14C±0.72Cmm(等価球面度数C-2.38±0.81D)であったものが,平均C24.1C±1.3歳時点でC25.4C±1.01Cmm(等価球面度数-5.17±2.02D)となっている.4.6.14歳の眼軸長に関する研究CollaborativeCLongitudinalCEvaluationCofCEthnicityandCRefractiveCError(CLEERE)Study4)は,小児の近視発症に影響を与える因子を解明するために,OrindaLongitudinalStudyofMyopia(OLSM)の拡張として新たにリクルート施設を増やして行われた研究である.1995年からC2003年の間に,6~14歳の子供C4,292人が登録され,フォローされた.このうち,フォロー期間中に遠視から近視に変わったC605人(近視化群)と,期間中ずっと正視であったC374人(正視群)が本論文の解析対象となっている.これによると,いずれの群も初期の眼軸長はC22.7Cmm程度であったところ,正視群では年間C0.10Cmm程度のほぼ一律の眼軸長伸長であったのに対して,近視化群ではC0.23Cmm程度の眼軸長伸長を認めていた.C5.11.15歳の眼軸長に関する研究SydneyMyopiaStudy5)では,ランダムに選ばれたシドニーのC21の中学校で調査を行い,75.3%にあたる2,353人をリクルートした研究である.年齢幅はC11.1~14.4歳(平均C12.7歳)で,平均眼軸長は全体でC23.38C±0.85Cmmであった.また,人種別にみた場合,白人系はC23.23±0.75Cmm,東アジア系はC23.86C±1.07Cmm,南アジア系はC23.65C±0.94mm,中東系はC23.39C±0.70と,白人に比してその他の人種は眼軸長が有意に長かった.体格については記載がないが,白人のC4.6%に対してアジア人ではC30%以上に近視がみられており,これが眼軸長の長さと関係していると考えられる.おわりに眼軸長について種々の報告をまとめた.単なる眼軸長の数値だけでは眼球そのものが大きいのかそれとも近視が強いのかを判別することはできず,十分でない.とくに人種を越えての議論をするのであれば,眼軸長のみならず,他の眼球生体特徴とのバランスを適切に評価することが重要であろう.手法としては,身長で補正するという方法もあれば,近年は眼軸長/角膜曲率半径比というパラメータも用いられている.いずれにせよ異常長眼軸眼は異常屈折眼よりも失明に至る近視性黄斑症を有す(15)Cあたらしい眼科Vol.34,No.10,2017C1353-

近視研究の方向性

2017年10月31日 火曜日

近視研究の方向性StrategyforMyopiaResearch不二門尚*はじめに近視は日本を含む東南アジア人に発症頻度が高く,進行すると視機能障害が生じ,わが国では失明原因の5番目に位置している1).早期発症の強度近視には,遺伝的な要因が働く可能性があるが,網膜.離の頻度は近視度数に応じて増加するという報告2),緑内障による視野障害も近視度数に応じて頻度が増加するという報告3)があり,成長期の近視の進行を抑制することは,将来的な視機能障害を減少させるうえで重要と考えられる.近視化の機構に関しては,実験近視の研究から網膜像のボケがトリガーになり,網膜内情報伝達系が修飾され,脈絡膜を介して強膜のリモデリングが起きるという流れはコンセンサスが得られているが,細かい分子メカニズムは十分には明らかになっていない.また,臨床研究では,累進コンタクトレンズやオルソケラトロジーの近視進行抑制の有用性が示されているが,その機構は十分には解明されていない.本稿では,近視研究の方向性として,近視化の機構について動物実験で解明されたこと,今後の課題に触れた後,累進コンタクトレンズの臨床研究で示された結果などについて考察を加える.I近視化の機構:実験近視の研究でわかったこと近視には環境要因が大きいことは,過去20年の間に全世界的に近視の頻度が増加していることからも推察される(遺伝的には20年でそれほど大きな変化は起きないと考えられる)4).環境要因に関しては,視環境をコントロールできる近視の動物モデル(ヒヨコ,サル,マウスなど)で研究が進んでいる.1.網膜像のボケと近視化成長期のヒヨコに凹レンズを付加して飼育すると,付加した度数に応じて近視化することから,網膜より後ろに焦点を結ぶような網膜像のボケ(遠視性のボケ)が近視化を進める要因になると考えられている(図1).近視眼では必要とされる調節より実際の調節量が少ないので,軸上に遠視性のボケが生じることにより近視化が促進するという仮説が,調節ラグ理論である5).遠視性のボケは軸上だけでなく,周辺部網膜においても近視化を促進することが示され,近年では軸外収差理論として注目されている6)(図2).また,半透明のゴーグルを負荷し,網膜像をぼかした場合でも近視化することが示されている(図3).2.網膜像のボケと網膜内情報伝達系網膜像の遠視性のボケ(網膜より後方に焦点を結ぶボケ)が網膜内でどのように検知されるかについて,十分な結論は出ていない.短波長光と長波長光では焦点を結ぶ位置が異なるので,色収差は遠視性のボケと近視性のボケの差を検知する手がかりになり得る.しかしながら,長波長光の近視化への影響がヒヨコとサルで異なる*TakashiFujikado:大阪大学大学院医学系研究科医用工学講座感覚機能形成学〔別刷請求先〕不二門尚:〒565-0871大阪府吹田市山田丘2-2大阪大学大学院医学系研究科医用工学講座感覚機能形成学0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(3)1341ab対照.16D負荷図1実験近視a:ヒヨコに凹レンズを付加した図.b:-16Dの凹レンズを負荷した眼(右)は,対照眼(左)と比較して眼軸長が長いことがわかる.c:近視進行のメカニズムのシェーマ.凹レンズ負荷により,網膜より後ろに焦点を結ぶことで網膜像に遠視性のボケが生じる.この遠視性のボケをトリガーにして眼軸長が伸びる.図3局所網膜のボケによる眼軸延長a:側方視野を半透明のゴーグルで遮閉.Cb:Aのシェーマ.Cc:遮閉部位に一致した網膜部位の眼軸が伸長する.停止性夜盲ON型双極細胞の障害DAアマクリン細胞への入力の低下実験近視低コントラスト刺激DAアマクリン細胞への入力低下屋外活動DAアマクリン細胞の賦活化Sclera図4網膜内情報伝達系と近視化停止性夜盲および実験近視における近視化には,ドーパミン(DA)含有アマクリン細胞への入力低下が,屋外活動による近視化抑制には,DA含有アマクリン細胞の賦活化が関係するという仮説が提唱されている.ONCCBC:ON型錐体双極細胞,ONCRBC:ON型杆体双極細胞,DACAC:ドーパミン含有アマクリン細胞,GlucCAC:グルカゴン含有アマクリン細胞,AIIAC:AIIアマクリン細胞.等価球面値(D)a.早期発症型b.通常型c.後期発症型10.1.2.3.4.5.6.7.8.9.100246810121416182022242468101214161820222424681012141618202224年齢(年)図5近視進行の3タイプa:早期発症型.小学校入学前に発症する早期発症型は強度近視に到る可能性が高い.発症を遅らせることができれば最終的な近視度数は軽減する.Cb:通常型.正視化現象が収束するC8歳ごろ発症し,18歳頃まで進行する.進行速度を抑制する介入ができれば,最終的な近視度数は軽減する.Cc:後期発症型.中学校高学年移行に発症するタイプ.(文献C11を改変)a.眼軸長b.屈折値Changeinaverageaxiallength(mm)0.350.300.250.200.150.100.050.00.0.05NewCLsControlCLsP=0.011,repeated-measuresANOVAP=0.03960.1700P=0.01360.03‡00.060.03P=0.01610.11‡0.04‡0.09136912図6低加入度累進コンタクトレンズによる近視抑制a:眼軸長の延長(装用後C1カ月を起点としてC11カ月間のフォロー).低加入度群(◇)では単焦点群(□)と比較して有意(47%)に眼軸長が抑制された.Cb:屈折度の近視化(装用後C1カ月を起点としてC11カ月間のフォロー).屈折度は,有意差はなかったが,低加入度群(◇)では単焦点群(□)と比較して近視化が抑制される傾向がみられた.CbTemporalEccentricityNasal図7軸外収差の測定a:低加入度群(◇)では単焦点群(□)と比較して軸外の相対的屈折度(等価球面値)に有意差はなかった.Cb:軸外収差の測定法.固視標を注視させ,視線をずらした状態で屈折値を測定する.a.低加入度累進SCL装用時b.単焦点SCL装用時調節L調節R11Accommodation[D]/Vergence[MA]0.1.2.3.4Accommodation[D]/Vergence[MA]0.1.2.3.4.501,0002,0003,0004,000.501,0002,0003,0004,000TIME[msec]TIME[msec]図89歳,男児(正視)SCL装用時の調節応答両眼波面センサーを用いてCSCLを装用したときの調節応答(近方視時:50Ccm)を測定した.低加入度累進SCL装用時(Ca)のほうが,単焦点CSCL装用時(Cb)より近見時の調節の変動が少ない傾向がみられた.れた.低加入度累進CSCLを小児に長期装用することで得られる近視進行抑制効果の光学的機序には,調節の影響がかかわっており,調節反応量が小さい分だけ眼にかかる機械的緊張が緩和され,長期的な作用として眼軸長の伸張が抑制されることが推察された.CVまとめ近視進行の抑制は,まだ研究段階で確立したガイドラインはない.しかしながら,屋外活動の増加などの環境要因の改善,低濃度CAT点眼などの薬理学的方法,遠視性のボケを改善するなどの光学的な方法が,可能性の高い介入法として注目されている.低加入度のCSCLでも近視進行抑制が可能であるのは,調節ラグ理論や軸外収差理論では説明できず,調節軽減の機構が働いている可能性が示された.実験近視の研究では,近視化の機構に調節の関与は否定されているので,臨床研究での結果を説明する機構について,今後の研究が期待される.CLは眼鏡と比較して,眼球運動の影響を受けないため,網膜像を理論通りにコントロールしやすい利点がある反面,感染症などのリスクに関して少ないとはいえ気をつける必要がある.(9)文献1)中江公裕,増田寛治郎,石橋達郎:日本人の視覚障害の原因.15年前との比較.医学のあゆみ225:691-693,C20082)OgawaCA,CTanakaCM:TheCrelationshipCbetweenCrefrac.tiveerrorsandretinaldetachment–analysisof1,166reti.nalCdetachmentCcases.CJpnCJCOphthalmolC32:310-315,C19883)QiuCM,CWangCSY,CSinghCKCetCal:AssociationCbetweenCmyopiaCandCglaucomaCinCtheCUnitedCStatesCpopulation.CInvestOphthalmolCVisSciC54:830-835,C20134)VitaleCS,CSperdutoCRD,CFerrisCFLC3rd:IncreasedCpreva.lenceCofCmyopiaCinCtheCUnitedCStatesCbetweenC1971-1972CandC1999-2004.CArchOphthalmol127:1632-1639,C20095)GwiazdaJ,ThronF,BauerJetal:Myopicchildrenshowinsu.cientaccommodativeresonsetoblur.InvestOphthal.molVisScC34:690-694,C19936)SmithCELC3rd,CHungCLF,CHuangCJ:RelativeCperipheralChyperopicdefocusalterscentralrefractivedevelopmentininfantmonkeys.VisionResC49:2386-2392,C20097)MorganCIG,CRoseCKA,CAshbyCRS:AnimalCmodelsCofexperimentalCmyopia:limitationsCandCsynergiesCwithCstudiesConChumanCmyopia,CInCPathologicCMyopia,CSpaideCRF,COhno-MatsuiCK,CYanuzziCLACEds.Cp39-58,CSpringer,NewYork;20148)WildsoetCC:NeuralCpathwaysCsubservingCnegativeClens-inducedCemmetropizationCinCchicks–insightsCfromCselec.tivelesionsoftheopticnerveandciliarynerve.CCurrEyeReC27:371-385,C2003あたらしい眼科Vol.34,No.10,2017C1347—