●連載210監修=岩田和雄山本哲也210.緑内障インプラント(ロングチューブ)松田彰順天堂大学医学部眼科学講座手術のコツ2012年にバルベルト緑内障インプラント手術が日本でも認可され,施行症例が増えてきた.毎年,緑内障チューブの会の米国手術見学ツアーに参加し,インプラント手術施行時のコツとして学習した中で,筆者が実践している事項をいくつか紹介する.●プレート固定の際のコツプレート固定は通常8-0程度のナイロン糸を用いて強膜に固定するが,プレート上部にある固定用の穴を通して針で強膜に通糸しようとすると,固定用の穴の厚みのために強膜内の通糸の深さを制御することがむずかしい.プレート固定の際は先に強膜に通糸して,針を逆向きに持ち替え,針の根元側から固定用の穴を通すと固定が楽である(図1).●前房内へのチューブ先端の留置に関するコツ角膜内皮障害の可能性を考えて,筆者は可能なかぎり前房内へのチューブ留置を避けている.ただ,発達緑内障の症例などで水晶体を温存したい場合には,前房内へのチューブ留置を選択せざるをえない.前房内へのチューブ先端留置のコツは,米国フロリダ大学でインプラント手術を見学した際にMarkSher-wood教授(後述のSherwood’sSlitで有名)に教えていただいた.まず,チューブを挿入する際の方向は,瞳孔方向に向けるのではなく,できるだけ角膜輪部に対して接線方向に近い方向で挿入するのがコツである1)(図2a).また虹彩面に平行か,やや虹彩にめり込むぐらいの角度で挿入すると,強膜パッチを当てたあとにちょうどよい角度になることが多い(図2c).また,最初に挿入角度や位置を確認するのには粘弾性物質に27ゲージ(G)針を取りつけて前房内に穿刺し,角度および挿入位置に問題がないことを確認してから23G針にて再度穿刺を施行する(図2a,b).とくに発達緑内障などの強膜が薄い症例では穿刺場所の変更には注意が必要で,その場合は30G針で最初の位置確認を施行する(わずかなモレが,術後低眼圧につながる).この2段階穿刺法は虹彩後面かつIOL前面にチューブを留置する際にも有効で,27G針で穿刺しながら,必要に応じて粘弾性物質でチューブ挿入のための空間を確保することができる.●硝子体内へのチューブの留置以前はHo.mannエルボー付きチューブを硝子体内に挿入していたが,エルボーが露出した場合の再被覆がむずかしいことを経験したため,現在はストレートチュー図1プレート固定の際の通糸プレート固定の通糸(8-0ナイロン糸),最初の1糸はすでに通糸後で,プレートは半分固定された状態.まず強膜内を適切な深さで通糸し(a),針の向きを変えて根元部分から固定用の穴を通す(b).(101)あたらしい眼科Vol.34,No.12,201717390910-1810/17/\100/頁/JCOPY図2前房内へのチューブ先端留置のコツ先天白内障術後に発症した無水晶体眼緑内障の症例.27G針を用いて角膜輪部の接線方向に近い方向で前房内に穿刺する.角度は虹彩と平行(a)とし,前房内に低分子量の粘弾性物質を注入する.次に23G針を用いて同一部位を穿刺(b)後,チューブを虹彩面上に留置する(c).ブを硝子体内に留置している.Ho.mannエルボーの再被覆が困難な理由として,エルボー自体が大きさと厚みをもっていることと,また露出時にストレートチューブと異なり,挿入位置の変更が困難であることがあげられる.ストレートチューブの硝子体内への挿入は23G針による穿孔創から可能であり,挿入後はワイドフィールドの硝子体観察システムでチューブ先端の位置を確認している.現在のところ挿入部位でのチューブの折れ曲がりや,水晶体後.への接触などの問題は経験していない.●強膜パッチ米国では強膜,心外膜,角膜がパッチ材料として市販されており,整容的な問題を生じやすい症例(眼瞼裂の広い眼の耳側下方へのチューブ挿入例)には,角膜パッチを用いている症例もある.日本でもパッチ材料の入手経路の整備が必要と考えられる.強膜は順天堂アイバンクで保存強膜を作製し,使用時にイソジン原液に浸漬,BSSプラスで十分洗浄し,強膜内面の色素細胞を除去するため,内層1/3程度を剪刀で削ぎ落している.また,パッチの大きさを調整した後,角膜輪部に向かう側の段差を少なくするために,斜めに強膜の角を落としている.その後4箇所の角を10-0ナイロン糸で固定している.10-0ナイロン糸での固定時に強く圧迫するとチューブが角膜内皮側に近づくので,強い圧迫は避けるべきである.今年,Duke大学でチューブ手術を見学した際に,強膜パッチを固定せず,そのまま結膜下に留置する術式もあることを知った.多くの症例で問題がないとのことだったが,なかには術後強膜パッチが丸まってしまった症例があるとのことで,やはり4カ所の固定はしておいたほうがよさそうである.●術後低眼圧の防止緑内障インプラント手術(とくに調整弁のないバルベルトインプラント)でもっとも注意すべき点は,術後低眼圧の防止である.筆者は7-0バイクリル糸を用いて,チューブを2箇所3-2-1でしっかりと結紮し,通水がないことを確認している.結紮の際はマイクロ持針器を2本用いて,糸の線維をちぎらないように注意してしっかりと結紮している.術者によってはチューブ内腔にステント(あるいはステント+リップコード)を留置したうえでチューブ結紮をしている.ステントを抜去する手間は必要だが,低眼圧の防止という意味ではより確実な方法と考えられる.術後早期の眼圧コントロール目的でチューブにSherwood’sSlitをおくことも多いが,スリット幅を広くしすぎないこと,スリット位置がチューブ固定の際に極端に屈曲した位置にこないように配慮する必要がある(チューブを固定してからスリットを作製したほうが安全).筆者は全例で低分子量の粘弾性物質を前房内に留置し,指で眼圧を確認して手術を終えることにしている.1740あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017(102)