あたらしい眼科Vol.32,No.5,20156650910-1810/15/\100/頁/JCOPYはじめに初めてコンタクトレンズ(CL)を使用する患者に対しては,レンズの取り扱い方法,装用時間および装用期間について説明する必要がある.レンズの種類によって内容は異なるが,最初にしっかり指導しておくことが重要である.●レンズ取り扱いの指導①―レンズに触れる前にまず,爪が伸びていてレンズの取り扱いに支障をきたすようなら,用意した爪切りを用いてその場でご自身で切っていただく.その後,レンズケースを開封する.そして,石鹸でしっかり手を洗う.針谷1)は,手洗い方法として,①流水ですすぐ,②石鹸を泡立てる,③手の甲をこすり洗いする,④指先を洗う,⑤指の間を洗う,⑥親指と手のひらをねじり洗いする,⑦手首を洗う,⑧流水ですすぐ,ということを順に示している.この時,CLに触れる指はとくに念入りに洗う.⑧の後で手を拭くとき,CLに触れる指と手のひらの一部は拭かずに自然乾燥のほうが望ましいと考える.ハードコンタクトレンズ(HCL)には水道水が使用可能であるが,ソフトコンタクトレンズ(SCL)には水道水が使用できないことを説明する.SCLでは,レンズの中に水道水が入り込んでしまうことなど,水道水を使用できない理由も説明(55)するとよい.水場は常に清潔に保ち,排水口には図1のような蓋をしておくと便利である.●レンズ取り扱いの指導②―レンズに触れるHCLは,注文すると保存液の中に入れて送られてくるものもあるが,ドライの状態で送られてきたHCLは,すぐに保存液につけて置いておくほうがよい.ドライの状態のままで保存しておき装着すると,レンズ表面の水濡れ性が悪くなっていることがある.ホルダーにはめたまますすぎを行い,前述のように,爪切りと手洗いを行って,レンズを取り出す.SCLの場合は,HCLのときと同様に爪切りと石鹸での手洗いを行ってから,ケースからトライアルレンズを取り出す(手洗いの前にケースの蓋は開けておく).その時,爪を立てずに指の腹で行うことが重要である.手のひらの上に液とともに出してもよい.取り出したレンズを指の腹に載せ,表と裏を確認する.レンズのエッジが図2aのようにお椀状になっていれば正しく,図2bのようにエッジが反り返るようであれば逆である.●レンズ取り扱いの指導③―レンズの装着の仕方指先にレンズを載せ,表裏(SCLの場合)とレンズに問題がないかを確認後,上眼瞼と下眼瞼を大きく開いて角膜にレンズを装着させる.レンズが目の前に近づくと自然に閉瞼してしまう人がいるが,鏡を使ってしっかり自分の目を見て確実にレンズが載るまで閉瞼しないようコンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方はじめの一歩監修/下村嘉一提供12.患者指導1(レンズ取り扱い,装用時間,装用期間)宮本裕子アイアイ眼科医院図1排水口の蓋の例排水口に蓋(→)をして,レンズが流れ出ないようにする.ab図2SCLの表裏の確認a:表裏が正しい状態.b:裏返しの状態.あたらしい眼科Vol.32,No.5,20156650910-1810/15/\100/頁/JCOPYはじめに初めてコンタクトレンズ(CL)を使用する患者に対しては,レンズの取り扱い方法,装用時間および装用期間について説明する必要がある.レンズの種類によって内容は異なるが,最初にしっかり指導しておくことが重要である.●レンズ取り扱いの指導①―レンズに触れる前にまず,爪が伸びていてレンズの取り扱いに支障をきたすようなら,用意した爪切りを用いてその場でご自身で切っていただく.その後,レンズケースを開封する.そして,石鹸でしっかり手を洗う.針谷1)は,手洗い方法として,①流水ですすぐ,②石鹸を泡立てる,③手の甲をこすり洗いする,④指先を洗う,⑤指の間を洗う,⑥親指と手のひらをねじり洗いする,⑦手首を洗う,⑧流水ですすぐ,ということを順に示している.この時,CLに触れる指はとくに念入りに洗う.⑧の後で手を拭くとき,CLに触れる指と手のひらの一部は拭かずに自然乾燥のほうが望ましいと考える.ハードコンタクトレンズ(HCL)には水道水が使用可能であるが,ソフトコンタクトレンズ(SCL)には水道水が使用できないことを説明する.SCLでは,レンズの中に水道水が入り込んでしまうことなど,水道水を使用できない理由も説明(55)するとよい.水場は常に清潔に保ち,排水口には図1のような蓋をしておくと便利である.●レンズ取り扱いの指導②―レンズに触れるHCLは,注文すると保存液の中に入れて送られてくるものもあるが,ドライの状態で送られてきたHCLは,すぐに保存液につけて置いておくほうがよい.ドライの状態のままで保存しておき装着すると,レンズ表面の水濡れ性が悪くなっていることがある.ホルダーにはめたまますすぎを行い,前述のように,爪切りと手洗いを行って,レンズを取り出す.SCLの場合は,HCLのときと同様に爪切りと石鹸での手洗いを行ってから,ケースからトライアルレンズを取り出す(手洗いの前にケースの蓋は開けておく).その時,爪を立てずに指の腹で行うことが重要である.手のひらの上に液とともに出してもよい.取り出したレンズを指の腹に載せ,表と裏を確認する.レンズのエッジが図2aのようにお椀状になっていれば正しく,図2bのようにエッジが反り返るようであれば逆である.●レンズ取り扱いの指導③―レンズの装着の仕方指先にレンズを載せ,表裏(SCLの場合)とレンズに問題がないかを確認後,上眼瞼と下眼瞼を大きく開いて角膜にレンズを装着させる.レンズが目の前に近づくと自然に閉瞼してしまう人がいるが,鏡を使ってしっかり自分の目を見て確実にレンズが載るまで閉瞼しないようコンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方はじめの一歩監修/下村嘉一提供12.患者指導1(レンズ取り扱い,装用時間,装用期間)宮本裕子アイアイ眼科医院図1排水口の蓋の例排水口に蓋(→)をして,レンズが流れ出ないようにする.ab図2SCLの表裏の確認a:表裏が正しい状態.b:裏返しの状態.666あたらしい眼科Vol.32,No.5,2015(00)にして行う.図3のように片手で上眼瞼を上げ,レンズを載せたほうの手の他の指で下眼瞼を下げながら装着してもよいし,反対の手で上下の眼瞼を開いてもよい.●レンズ取り扱いの指導④―レンズのはずし方HCLの場合は図4aのようにして,目尻側を外方向に引っ張って上下の眼瞼でレンズを挟み込んではずす.両手で各上下の眼瞼を押して,レンズの一方を浮かしてはずす方法もある.レンズが飛び出てなくさないように,手のひらで受け止めるようにする.SCLの場合は,図4bのようにレンズの下方をつまんではずす.最近は表面が滑りやすいSCLもあるので,はずしにくい場合はレンズを下方にずらしてはずすとよい.●装用時間の指導装用時間は,最初は4~6時間くらいから開始し,毎日1~2時間ずつ延長して必要な時間だけ装用するように指導する.必要以上に装用時間を延ばすことはしない.●装用(使用)期間の指導現在処方可能なHCLの装用期間は製品の寿命が来るまでであるが,その期間は使用者によって多少の差がある.通常,2年くらいでキズや汚れが付きやすくなってくるので,新しいレンズに変更する必要性が出てくる.レンズによっては研磨などの処置によってそれ以上の期間使用可能な場合もあるので,定期検査を受け,指示に従うように伝える.また,オルソケラトロジーレンズの場合はデザインが複雑で汚れが付きやすいので,1年に1回くらいの割合で新しいレンズに変更するほうが望ましいと考える.使い捨てSCLは一度はずしたら二度と装着できないものであることや,従来型のSCLは寿命が1~2年であるが,頻回交換あるいは定期交換レンズは,最高その期間まで再使用可能という意味であることを説明する.定期検査のときに,装用中のレンズが何日目かを確認し,汚れの強い場合はその期間より早く交換する必要があることも説明する.おわりにレンズの取り扱いについては,写真や図を見せながら説明したほうがわかりやすいので,各メーカーが作成した図などを活用するとよい.文献1)針谷明美:装用指導とレンズケアソフトコンタクトレンズ.眼科プラクティス27標準コンタクトレンズ診療(坪田一男編),p91-94,文光堂,2009ZS942図3SCLの装着の仕方ab図4CLのはずし方a:HCLの例.b:SCLの例.あたらしい眼科Vol.32,No.5,2015(00)にして行う.図3のように片手で上眼瞼を上げ,レンズを載せたほうの手の他の指で下眼瞼を下げながら装着してもよいし,反対の手で上下の眼瞼を開いてもよい.●レンズ取り扱いの指導④―レンズのはずし方HCLの場合は図4aのようにして,目尻側を外方向に引っ張って上下の眼瞼でレンズを挟み込んではずす.両手で各上下の眼瞼を押して,レンズの一方を浮かしてはずす方法もある.レンズが飛び出てなくさないように,手のひらで受け止めるようにする.SCLの場合は,図4bのようにレンズの下方をつまんではずす.最近は表面が滑りやすいSCLもあるので,はずしにくい場合はレンズを下方にずらしてはずすとよい.●装用時間の指導装用時間は,最初は4~6時間くらいから開始し,毎日1~2時間ずつ延長して必要な時間だけ装用するように指導する.必要以上に装用時間を延ばすことはしない.●装用(使用)期間の指導現在処方可能なHCLの装用期間は製品の寿命が来るまでであるが,その期間は使用者によって多少の差がある.通常,2年くらいでキズや汚れが付きやすくなってくるので,新しいレンズに変更する必要性が出てくる.レンズによっては研磨などの処置によってそれ以上の期間使用可能な場合もあるので,定期検査を受け,指示に従うように伝える.また,オルソケラトロジーレンズの場合はデザインが複雑で汚れが付きやすいので,1年に1回くらいの割合で新しいレンズに変更するほうが望ましいと考える.使い捨てSCLは一度はずしたら二度と装着できないものであることや,従来型のSCLは寿命が1~2年であるが,頻回交換あるいは定期交換レンズは,最高その期間まで再使用可能という意味であることを説明する.定期検査のときに,装用中のレンズが何日目かを確認し,汚れの強い場合はその期間より早く交換する必要があることも説明する.おわりにレンズの取り扱いについては,写真や図を見せながら説明したほうがわかりやすいので,各メーカーが作成した図などを活用するとよい.文献1)針谷明美:装用指導とレンズケアソフトコンタクトレンズ.眼科プラクティス27標準コンタクトレンズ診療(坪田一男編),p91-94,文光堂,2009ZS942図3SCLの装着の仕方ab図4CLのはずし方a:HCLの例.b:SCLの例.