監修=大橋裕一連載MyboomMyboom第30回「宮腰晃央」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す(●は複数回)連載MyboomMyboom第30回「宮腰晃央」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す(●は複数回)自己紹介宮腰晃央(みやこし・あきお)富山大学医学薬学研究部眼科学講座私は2007年3月に富山大学医学部卒業後,2年間の初期臨床研修を経て,2009年4月に現講座に入局しました.入局3年目に早々と専門分野を角膜に決めました.林篤志教授の「一流に触れてくるんや」の号令のもと,京都府立医科大学で木下茂教授の外来で前眼部診療の修業を積ませていただき,何とか富山大学角膜外来を切り盛りしている現状です.臨床のMyboom富山大学角膜外来を一人で切り盛りしていることもあり,感染症,円錐角膜,ジストロフィ,ドライアイ,Mooren潰瘍,Stevens-Johnson症候群,角膜移植後…など何でもござれの状態です.といえば聞こえは良いですが,実情は不安とプレッシャーに圧しつぶされそうになることもあります.そんななか,京都府立医科大学に研修に行かせていただいているのは非常に助かっています.悩ましい症例について相談・議論できたり,最先端の臨床・研究を見学できたり,そして何よりも交友の輪が広がりました.研修では,「木下教授ならどの所見に注目して診察し,カルテをどのように記載するか?」「木下教授なら患者にどういうふうに説明するか?」と,木下教授だったらどうするか,というイメージを常に頭の中で先行させながら外来に参加させていただいています.患者さんの病状や僚眼の状態,住所や年齢,職業,家族構成など,さま(91)0910-1810/14/\100/頁/JCOPYざまなファクターを考慮し,患者にとってベストもしくはベターな治療法を説明・相談していくムンテラは,人としての深さが感じられます.かなり頭を使いヘトヘトになるので,帰りのサンダーバード(電車です,念のため)ではいつも熟睡で,途中の福井県や石川県の景色の記憶がまったくありません….また,最近気をつけていることは,眼類天疱瘡やアカントアメーバ感染など,比較的稀な疾患を疑わせる患者さんを診たときに,すぐにその診断に飛びついてしまい,鑑別を怠ってしまう癖があることです.注意していてもテンションが上がってしまい,周りが見えなくなるのです.治療を開始する前に「深呼吸をしてもう一度鑑別を!ヘルペスは大丈夫?」を常に心がけて診療をしています.研究のMyboom「学問的業績のない医師は駄馬に等しい」.ある有名小説からの抜粋です.耳の痛い話です,ヒヒーン.「大学勤務している身として,業績を残す」.当たり前のことですが,日々の臨床にかまけて,ついつい遠ざけているのが現状です.現在は林教授の計らいで,当院検査部で社会人大学院生としてPCRを用いた研究を進めています.まだまだ始めたばかりですが,富山大学オリジナルの細菌感染症の迅速診断法および迅速薬剤感受性試験の確立を目標にしています.プライベートのMyboomもともとスポーツが好きで,小学校では野球,中学校から大学まではテニスをやっていました.学生時代は部活一筋だったのですが,働き始めてからはまったくスポーツをしなくなってしまいました.最初の頃は「手術のときに筋肉痛では患者さんに失礼にあたる!」と崇高あたらしい眼科Vol.31,No.7,20141017写真1自宅で家族とな意思でスポーツを遠ざけていたのですが,最近は単に面倒くさいというオヤジ的な発想でスポーツから遠ざかっています.そんななか,2013年夏から2014年の年明けにかけて画期的なでき事がありました.夏の甲子園で富山第一高校が富山県勢40年ぶりのベスト8に,そして全国高校サッカー選手権で同じく富山第一高校が初優勝に輝いたのです(残念ながら母校ではありませんが…).都会の方には理解しにくいかもしれませんが,例年1,2回戦突破がやっとの地元の田舎の高校が勝ち上がっていく喜びと興奮は,筆舌に尽くしがたいものがあります.野球は甲子園まで応援に行き,サッカーは当直だったので医局で絶叫を繰り返し,同点ゴールのシーンではひとり頬を濡らしました.ふとわが身を翻って考えてみると,地方大学でひとり角膜を専門に臨床・研究にもがいている自分も「やればできるのでは?!」と勇気づけられたものです.また,私は物心ついたときからプロ野球の広島東洋カープのファンです.専門医試験前には,「甲状腺眼症はDalrymple徴候,Gifford徴候,Graefe徴候,Stellwag徴候,Mobius徴候…(泣).ルイス,チェコ,ミンチー,ベイルの勝ち星やセーブ数はいつの間にかに覚えていたのに…」.「眼瞼下垂の手術はBlaskovics,Berke,Friedenwald-Guyton,Fasanella-Servaat…(涙).ホプキンス,ロードン,アレン,ディアスの出身や年俸は覚えられたのに…」と人間の記憶のもどかしさと奥深さを嘆きつつも不思議な気持ちで見つめていたものです.最近は「カープ芸人」やら「カープ女子」などと知名度や人気が上がってきているようですが,一昔前までは貧乏・不人気・弱小球団の代表格であり,FAでも東のあ写真2カープ応援中の球団や西のあの球団に主力選手を引き抜かれるだけの球団でした.それが2013年シーズンでは初のクライマックスシリーズに進出したのです.1991年の最後の優勝から早や22年(大野が古屋から三振を奪い,優勝を決めた瞬間は昨日のことのように思い出されます)….金銭的に恵まれない地方球団の快進撃に,こちらもわが身を重ね,一層の精進と飛躍を心に誓いました.ちなみに,これまでの私の観戦成績は9勝8敗です(富山からはなかなか応援に行けないのです).私が観戦していないカープの通算成績が3,888勝4,299敗なので,有意差が出るように早くnを増やさないといけません.最近,『統計学が最強の学問である』(西内啓著,ダイヤモンド社)という本を読みました.興味深かったので,こういった他愛もない検定をこっそりやっては,独り悦に入っています(論文でやれと教授に尻を叩かれそうです).(余談ですが,この原稿を書き上げた5月19日現在,カープが首位で交流戦を迎えます.この原稿が掲載されている時期に順位がどうなっているのか,楽しみでもあり恐怖でもあります.)次のプレゼンターは兵庫県の後藤聡先生(理化学研究所)です.ある勉強会でご一緒させていただき,意気投合した(と私が思っている)仲間です.よろしくお願いします.注)「Myboom」は和製英語であり,正しくは「Myobsession」と表現します.ただ,国内で広く使われているため,本誌ではこの言葉を採用しています.1018あたらしい眼科Vol.31,No.7,2014(92)