5.ルミガンR一戸唱中元兼二日本医科大学眼科学教室ルミガンRの長所は,1日1回の点眼で24時間にわたって強力な眼圧下降効果を有し,かつ,全身的副作用がない点である.特に,ほかのプロスタグランジン(prostaglandin:PG)関連薬あるいは配合剤で眼圧下降効果が少ないときに処方することをお勧めする.ただし,眼局所副作用は比較的強く,処方時には十分説明する必要がある.優れた眼圧下降効果を有するルミガンRわが国において2009年10月に発売されたルミガンRは,現在,使用されているプロスト系PG関連薬のうち,最後に発売されたものである(図1).従来のPG関連薬はPGF2a誘導体で,角膜などに存在するエステラーゼで代謝されて活性型となるプロドラッグであるのに対して,ルミガンR(ビマトプロスト)はプロスタマイド誘導体であり,未変化体で薬理活性を示す1).その(図2)眼圧下降効果は強力でラタノプロストと同等あるいはそれ以上の可能性があり2),特に,ラタノプロスト・ノンレスポンダー症例におけるルミガンRへの変更治療の有効性に関しては,読者の先生方も臨床の場においてしばしば経験するところであろう.そのほか,ラタノプロストを上回る長期眼圧変動抑制効果,ラタノプロストとチモロール0.5%併用治療あるいはラタノプロスト/チモロール0.5%配合点眼薬と同等の眼圧下降効果を示したとする報告まである.また,筆者らの検討では,ルミガンRは正常眼圧緑内障患者においても眼圧を24時間有意に下降させ(図3),眼圧日内変動幅も有意に縮小させたが,このルミガンの24時間眼圧下降効果は,同様の手法で行ったラタノプロストやゲル基剤チモロール0.5%単独治療より大きかった3).以上からわかるように,ルミガンRは,眼圧下降効果に関しては良いことずくめであるといえる.ほかのPG関連薬より強い眼局所副作用一方,結膜充血や上眼瞼溝深化(deepeningoftheuppereyelidsulcus:DUES)などの眼局所副作用は,ほかのPG関連薬より強い.結膜充血は,PG関連薬にとって治療継続上最初の障(57)0910-1810/13/\100/頁/JCOPY壁となる重大な副作用であるが,多数例を評価したわが国での報告では,充血により7%程度が中止に至っている4).また,DUESに関しては.Sakataらは,ラタノプロストをルミガンRに変更すると,6カ月で60%の症例にDUESがみられたが,ラタノプロストに戻して2カ月後には,85%の症例で改善がみられたと報告している5).ルミガンRの新規処方のコツ筆者らは,ルミガンRを新規で処方する際,主に以下の3点を患者に説明している.①ルミガンRは,緑内障薬として最も必要な眼圧下降効果がきわめて良好であること.②緑内障は超慢性疾患であるので,長期にわたり使本欄の記載内容は,執筆者の個人的見解であり,関連する企業とは一切関係ありません(編集部).あたらしい眼科Vol.30,No.10,20131401図2ビマトプロスト(ルミガンR)およびプロスタグランジンF2a誘導体の化学構造(文献1より引用)用する必要があり,そのために全身副作用の有無は重要であるが,b遮断薬などとは異なりルミガンRには全身副作用がないこと.③ルミガンRの眼局所副作用には,結膜充血,眼瞼多毛,睫毛伸長,DUESなどがあるが,個人差があり,もし気になるようであれば,点眼の中止または他剤への変更により副作用は改善または消失すること.眼圧(mmHg)*:p<0.01Mean±S.E.18161412108101316192213測定時刻(時)図3ルミガンR点眼前後の眼圧日内変動眼圧日内変動をルミガンR治療前後で比較すると,眼圧はすべての時刻で有意に下降していた.正常眼圧緑内障患者(14例14眼)(文献3より改変)ルミガンRの処方をお勧めしたい症例ルミガンRは全身的に安全で優れた眼圧下降効果を有している一方,その強力な眼局所副作用から,第一選択薬としては使用しにくい.しかし,特に,ほかのPG関連薬あるいは配合剤では有効な眼圧下降効果が得られない場合でも,ルミガンR1剤で十分眼圧が下降することも少なくない.特に,このような症例では,患者の生涯にわたるQOV(qualityofvision)およびQOL(qualityoflife)の維持のために,ぜひルミガンRを処方していただきたい.文献1)和田智之,WheelerLA,WoodwardDF:ビマトプロストの作用機序の特徴プロスタグランジン誘導体との比較.医学と薬学62:525-534,20092)AptelF,CucheratM,DenisP:Efficacyandtolerabilityofprostaglandinanalogs:ameta-analysisofrandomizedcontrolledclinicaltrials.JGlaucoma17:667-673,20083)中元兼二,里誠,小川俊平ほか:正常眼圧緑内障におけるビマトプロストの眼圧日内変動に及ぼす効果.あたらしい眼科29:1693-1696,20124)井上賢治,長島佐知子,塩川美菜子ほか:ビマトプロスト点眼薬の球結膜充血.眼紀4:1159-1163,20115)SakataR,ShiratoS,MiyataKetal:Recoveryfromdeep-eningoftheuppereyelidsulcusafterswitchingfrombimatoprosttolatanoprost.JpnJOphthalmol57:179-184,2013●1402あたらしい眼科Vol.30,No.10,2013(58)