特集●加齢黄斑変性診療ガイドあたらしい眼科30(12):1669.1680,2013特集●加齢黄斑変性診療ガイドあたらしい眼科30(12):1669.1680,2013ポリープ状脈絡膜血管症の管理ManagementofPolypoidalChoroidalVasculopathy森隆三郎*はじめにポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvasculopathy:PCV)は網膜色素上皮レベルの橙赤色隆起病巣を特徴とし,再発性の漿液性,出血性網膜色素上皮.離を生じ,インドシアニングリーン蛍光眼底検査(indocyaninegreenangiography:IA)では,特徴的なポリープ状病巣を認めるYannuzziらが提唱した疾患概念で1),わが国では滲出型加齢黄斑変性の特殊型に分類されている2).PCVの頻度は,日本PCV研究会の診断基準3)が発表された以降のMarukoらの報告では,日本人の加齢黄斑変性の54.7%がPCVである4).Uyamaらの自然経過の報告では,33カ月の経過観察中,視力の維持,改善率は約半数であるが,35%で重篤な視力低下をきたしており5),PCVの自然経過が良好であるとは言えない.PCVの黄斑部の滲出性変化は,不可逆性の視力低下の原因ともなり,大量の網膜下出血や硝子体出血を生じ重篤な視力低下をきたす症例もある.PCVを管理するために必要な診断と治療について述べる.I診断2005年に日本PCV研究会によりポリープ状脈絡膜血管症の診断基準が作成された3)(表1).IAを行わなくても眼底検査で橙赤色隆起病巣を認めた場合には確実例として診断が可能である.PCVの病巣はIAで異常血管網とポリープ状病巣から成るが,異常血管網は判別できない場合もあり,特徴的なポリープ状病巣を認めれば確実例となる.IAで異常血管網のみを認めた場合と眼底検査で再発性の出血性,漿液性網膜色素上皮.離を認めた場合は不確実例となる.また,わが国の加齢黄斑変性の診断基準では,50歳以上と明記されているが,PCVの診断基準では年齢の記載はなく,40歳代のPCVも稀ではない.筆者の施設ではPCVを脈絡膜血管異常である狭義PCVと網膜色素上皮下脈絡膜新生血管(Gass分類Type1CNV)にポリープ状病巣を伴うpolypoidalCNVの2つに分類している6,7).1.眼底検査後極部を超える網膜下出血や漿液性網膜.離を認めることもあり,倒像鏡で眼底全体を観察して,ついで,前置レンズを用いて黄斑部の詳細を観察する.診断基準にある橙赤色隆起病巣は,PCVの病巣の本体であり,網膜色素上皮が限局性に隆起している(図1).網膜下出血を伴う場合や出血性網膜色素上皮.離の辺縁に存在する場合は検出できないこともある.また,橙赤色隆起病巣がフィブリンに覆われると辺縁が不整な灰白色隆起病巣として認められる.辺縁が明瞭で小さい網膜色素上皮の丈の低い白色隆起病巣は,橙赤色隆起病巣が退縮した状態で,さらに,時間が経過し,色素沈着を伴い茶褐色になる場合もある.異常血管網の範囲に一致して網膜色素上皮の萎縮がみられる場合があるが,異常血管網自体による網膜色素上皮の変化によるものか異常血管網の滲出性変化に伴う2次的な変化によるものかは鑑別できな*RyusaburoMori:日本大学医学部視覚科学系眼科学分野〔別刷請求先〕森隆三郎:〒101-8309東京都千代田区神田駿河台1-8-13駿河台日本大学病院眼科0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(21)1669表1PCVの診断基準確実例以下のいずれかの1項目を満たすものとする.1.眼底検査で橙赤色隆起病巣*を認める.2.インドシアニングリーン蛍光造影検査で,特徴的なポリープ状病巣**を認める.不確実例以下のいずれかの1項目を満たすものとする.1.インドシアニングリーン蛍光造影検査で異常血管網***のみを認める.2.再発性の出血性,漿液性網膜色素上皮.離を認める.*:.橙赤色隆起病巣は,網膜色素上皮レベルの境界明瞭な隆起病巣であり,充実性で,漿液性あるいは出血性網膜色素上皮.離とは区別できる.**:.ポリープ状病巣は,インドシアニングリーン蛍光造影で瘤状あるいはぶどうの房状の病巣である..造影時間の経過とともに大きくなり,ある時点から形,大きさは変わらない..早期には,内部に小さな過蛍光を認めることもある..後期に輪状の過蛍光を示すことがある.***:.異常血管網は,インドシアニングリーン蛍光造影で早期に分枝した脈絡膜内層の血管として造影され,血管の走行,口径から正常の脈絡膜血管と区別できる..異常血管網の範囲は後期に面状の過蛍光を示すことが多い.〔日本ポリープ状脈絡膜血管症研究会:ポリープ状脈絡膜血管症の診断基準.文献4)より〕い.2.インドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)PCVは,網膜色素上皮下の病変であるのでIA所見が重要となる.ポリープ状病巣はIAでみられる瘤状病巣であり,造影の始まりは脈絡膜動脈と同時であったり,やや遅れて脈絡膜静脈と同時であったりとさまざまであるが,いずれも造影時間の経過とともに大きくなり,ある時点から形,大きさは変わらない.早期には,細血管の形態を示すもの(図1)や内部に小さな過蛍光点を認めることもある.後期にポリープ状病巣は均一な過蛍光を示すものが多いが(図2),輪状の過蛍光を示すものもある.異常血管網のIA早期所見は,PCVを狭義PCVとpolypoidalCNVに分類する際に重要である.狭義PCVでは栄養血管がなく,血管の数は少なく,拡張,蛇行などの走行異常を示すが(図1),polypoidalCNVでは,栄養血管が検出され,起始部から放射状に血管が広がり血管の数が多い(図2).いずれも造影後期像は面状の過蛍光を示すものが多い(図1,2).3.光干渉断層検査(opticalcoherencetomograph:OCT)ポリープ状病巣や異常血管網の特徴的な3次元的構造と網膜.離,網膜色素上皮.離,黄斑浮腫の有無と範囲や高さが確認できるが,PCVの診断基準にはOCT所見は含まれていない.ポリープ状病巣はポリープ状病巣が網膜色素上皮を押し上げることによって,網膜色素上皮が急峻な立ち上がりを示す隆起性高反射として認められる8,9)(図1).網膜色素上皮.離の辺縁に連なる不正な網膜色素上皮の隆起として認める場合もあり10)tomographicnotchsignとよばれる11)(図3).ポリープ内の瘤状の血管も確認できることがある(図1).ポリープ状病巣がフィブリンに覆われる場合には網膜色素上皮の隆起性高反射の上に厚い高反射の所見がみられる.また,網膜下出血によりIAでポリープ状病巣が検出できない場合でも,出血下の網膜色素上皮の急峻な立ち上がりを示すポリープ状病巣を捉えることができることもある.異常血管網の範囲は網膜色素上皮を示す高反射帯とそれより外層にみられる高反射帯の間に間隙が認められる場合があり,その所見はdouble-layersignとよばれる(図1670あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(22)abcdabcd図1狭義PCVa:カラー眼底写真.黄斑部に橙赤色隆起病巣(矢印)を認める.耳側の病巣は白色化している.b:OCT.ポリープ状病巣は,網膜色素上皮が急峻な立ち上がりを示す隆起性高反射として認められる(矢印).鼻側の病巣は内部の血管構造が確認できる.異常血管網の範囲は網膜色素上皮を示す高反射帯とそれより外層にみられる高反射帯の間に間隙(double-layersign)が認められる(矢頭).c:インドシアニングリーン蛍光造影(IA)早期.ポリープ状病巣は細血管の形態を示し(矢印),異常血管網は拡張,蛇行などの走行異常が認められる(矢頭).d:IA後期.ポリープ状病巣は瘤状の過蛍光を示し(矢印),異常血管網は面状の過蛍光を示す(矢頭).ab図2PolypoidalCNVa:IA早期.ポリープ状病巣は異常血管網の辺縁血管の拡張蛇行部に認め(矢印),異常血管網は起始部から放射状に血管が出て血管の数が多い(矢頭).b:IA後期.ポリープ状病巣は瘤状の過蛍光を示し(矢印),異常血管網は面状の過蛍光を示す(矢頭).(23)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131671abab図3PCVのOCT(tomographicnotchsignとdouble.layersign)a:IA5分.ポリープ状病巣の矢印と異常血管網の2点の矢頭を結ぶラインはOCTと一致した部位.b:OCT.ポリープ状病巣は,網膜色素上皮.離の辺縁に連なる不正な網膜色素上皮の隆起として認めtomographicnotchsignとよばれる(矢頭).異常血管網の範囲は網膜色素上皮を示す高反射帯とそれより外層にみられる高反射帯の間に間隙が認められ,その所見はdouble-layersignとよばれる(2点の矢印を結ぶライン).→図4再発と緊急治療:レーザー光凝固(大出血の原因となるポリープ状病巣が中心窩外に検出)(54歳,女性)初診時.矯正視力0.7.a:カラー眼底写真.黄斑部橙赤色隆起病巣(矢印)と出血性色素上皮.離を認める(矢頭).b:IA後期.ポリープ状病巣(矢印)を認める.c:OCT.網膜色素上皮.離を認める(※).Ranibizumab硝子体注射(IVR)単独療法7回後にIVRと光線力学的療法(PDT)併用療法の変更3カ月後.矯正視力0.7.d:カラー眼底写真.e:OCT.黄斑部に認めた橙赤色隆起病巣と網膜色素上皮.離は消失している.併用療法1年後に突然の大出血が生じる.矯正視力0.2.f:カラー眼底写真.黄斑部に橙赤色隆起病巣(矢印)と出血性網膜色素上皮.離(大矢頭),網膜下出血(小矢頭)を認める.g:IA後期.中心窩外のポリープ状病巣からの蛍光色素の漏出を強く認める(矢印).ポリープ状病巣に対する直接レーザー光凝固直後.翌日IVRを行う.h:カラー眼底写真.凝固部位は灰白色となっている(矢印).2カ月後.i:カラー眼底写真.出血の拡大は防止でき,出血は器質化し,吸収傾向にある.1年後.矯正視力0.5.j:カラー眼底写真.出血の再発はない.凝固瘢痕病巣を認める(矢印).1672あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(24)abcdefghij※abcdefghij※図4(図説明は前ページ)(25)あたらしい眼科Vol.30,No.12,201316731,3)12).II治療1.治療の適応PCVと診断したら,治療するのか経過観察とするのかを判断する.治療の適応となるのは,出血,漿液性網膜.離,網膜色素上皮.離,網膜浮腫などの滲出性所見を認める活動性のあるPCVである.活動性の所見がなければその時点では適応とならないが,視力にかかわらず,また加療後に活動性がなくなり安定した場合も含め,後に活動性の所見が出現することがあるため(図4),定期的な経過観察は必要となる.黄斑部がすでに線維性瘢痕病巣になり高度の視力低下を生じていても,視野の残存により,患者は読み書き以外のことができ,安定している患者も多い.しかし,病巣の再発により,周辺の視機能に影響を及ぼすこともある.定期的な診察で黄斑部とその周辺部を確認することで患者の失明への不安を軽減することができる.さらに自覚的な変化が生じた場合にすぐに迅速な診察ができるような受診態勢にしておくことが,治療の遅れを防ぐのに必要である.2.治療指針活動性のあるPCVは,上記のわが国の加齢黄斑変性の治療指針に沿って13),図5のアルゴリスムで示す治療を行う.抗血管内皮増殖因子(anti-vascularendothelialgrowthfacter:VEGF)硝子体注射で使用する薬剤は,ranibizumabあるいは,afriberceptである(afriberceptは,わが国で保険収載されたのは2012年11月であり,未治療のPCVに対する効果については,現時点では明らかになっていない).光線力学的療法(photodynamictherapy:PDT)は,通常の設定で行う.〔図5のアルゴニズムは,筆者の施設で行われているものである.図,本文の治療内容は文献14)から引用〕3.緊急治療PCVは,突然の出血を生じることがある.その出血により視機能のさらなる低下を早急に防ぐ必要がある場合が緊急治療の適応となる.つぎの2つのケースがある.1674あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013PCVの治療適応;滲出性所見を伴う活動性のあるPCV病巣の位置(異常血管網とポリープ状病巣)緊急治療の必要(出血に伴う視機能の低下を早急に防ぐ必要)有り無し光凝固大出血をきたす可能性が高い黄斑下血腫0.6以上視力良好0.5以下視力不良出血原因病巣光凝固中心窩外中心窩中心窩外中心窩抗VEGF注射※抗VEGF注射※ガス硝子体注入抗VEGF注射※黄斑下血腫移動術あるいは(抗VEGF注射※併用)PDT併用※※図5ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)の治療アルゴリズム(文献14図1と同一)※抗VEGF注射:抗血管内皮増殖因子(VEGF)硝子体注射.※※PDT:光線力学的療法.a.大出血を生じる可能性が高い緊急に治療しないと広範囲に網膜下出血が拡大あるいは硝子体出血となる可能性が高い場合は,ただちにIAを行い,IAで出血の原因となるポリープ状病巣を検出する.ポリープ状病巣を中心窩外に認めれば,レーザー光凝固を行い(図4),中心窩に認めた場合や出血によるブロックでポリープ状病巣が検出できない場合には抗VEGF硝子体注射を行う(図6).b.黄斑下血腫(中心窩下網膜下出血)中心窩の網膜下出血は,早期に視細胞に不可逆性変化を生じさせるため,緊急性が高い.発症から2週間以内,2乳頭径以上,脈絡膜中大血管が透見できない程度の厚い出血の場合は,ガス硝子体注入による黄斑下血腫移動術を行う15,16).ガス注入後は,うつ伏せ姿勢が必須となるため,うつ伏せ姿勢ができることも治療条件となる.ガス注入と同時にあるいは前・後数日以内に抗VEGF硝子体注射を行うことも多い(図7).発症から2週間以上経過して,出血の器質化が生じ始めている場合は,血腫が移動しにくく,またすでに視細胞の障害が不可逆性となっている場合もあり,中心視力の低下を防ぐことができないため適応とならない.(26)abc※abc※defg図6緊急治療:抗VEGF硝子体注射(大出血の原因となるポリープ状病巣が検出されない)(66歳,女性:文献14図3と同一症例).経過観察中に突然の網膜下出血と出血性網膜色素上皮.離が生じた.即日ranibizumab硝子体注射を行う.矯正視力1.2.a:カラー眼底写真.黄斑部耳側に網膜下出血と出血性網膜色素上皮.離を認める.b:IA後期,異常血管網は中心窩を含めて検出されるが(矢頭),ポリープ状病巣は確認できない.c:OCT.中心窩に網膜下出血は及んでいない(※).3週間後.矯正視力1.2.d:カラー眼底写真.e:OCT.軽度の硝子体出血は生じたが,出血の拡大は防止でき,出血は器質化している.6カ月後.矯正視力1.2.f:カラー眼底写真.g:OCT.出血は吸収している.III緊急治療とならない通常の治療治療方針が異なる.IAで認める病巣(異常血管網とポリープ状病巣)が中1.病巣が中心窩を含まない場合心窩を含まない場合(中心窩外)と中心窩を含む場合で病巣全体へのレーザー光凝固の適応となる.異常血管(27)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131675abcde※abcde※図7緊急治療:ガス硝子体注入による黄斑下血腫移動術(中心窩下網膜下出血)(68歳,女性:文献14図3と同一症例).初診日即日にranibizumab硝子体注射(IVR)を行い,翌日SF6ガス硝子体注入を行う.矯正視力0.4.a:カラー眼底写真.黄斑部鼻側に橙赤色隆起病巣(小矢頭)と出血性網膜色素上皮.離(大矢頭),2乳頭系以上の大きさの脈絡膜の中大血管が透見できない程度の網膜下出血(矢印)を認める.b:OCT.中心窩を含む網膜下出血と出血性網膜色素上皮.離(※)を認める.SF6ガス硝子体注入1日後.c:カラー眼底写真.中心窩の血腫は下方にシフトしている.上方に硝子体内のガスが確認できる(矢頭).3カ月後.IVRは計3回行っている.矯正視力1.0.d:カラー眼底写真.e:OCT.出血は吸収している.網が中心窩に存在する中心窩外のポリープ状病巣のみの本版眼科PDTガイドライン」18)ではPCVはPDTの良レーザー光凝固は,ポリープ状病巣の再発も多いため推い適応にされている.それは,PCVが治療前と比較し奨されない17).治療後は,レーザー光凝固部位に一致して1年後視力が有意に改善し,PCVなし(通常の滲出た暗点が生じるため,特にレーザー光凝固部位が中心窩型加齢黄斑変性)の群に比べ,PDT後3カ月の時点でに近い場合は,術後の暗点についてのインフォームド・有意に平均視力が良く,12カ月後まで継続していたたコンセントが必須となる(図8).めである.他の報告でも同様に,初回PDT後1年の成績は80.95%の症例で視力の維持・改善が得られてい2.病巣が中心窩に存在した場合る.しかし,視力良好例のPCVは,視力が低下するこ抗VEGF硝子体注射単独療法,PDT単独療法,PDTともあり推奨されていない.そこで,0.6以上と0.5以と抗VEGF硝子体注射併用療法の治療方法がある.「日下に分けてから治療方法を決定する.1676あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(28)abcdefabcdef図8病巣が中心窩外に存在した場合(病巣全体へのレーザー光凝固)(68歳,男性)治療前.矯正視力0.4.病巣(異常血管網とポリープ状病巣)を中心窩外に認めたため,レーザー光凝固を行う.a:カラー眼底写真.黄斑部に橙赤色隆起病巣(矢印)と網膜色素上皮.離(矢頭)を認める.b:OCT.ポリープ状病巣を示唆するtomographicnotchsignを認め,中心窩に病巣は及んでいないのが確認できる(矢頭).c:IA後期:異常血管網(矢印)とポリープ状病巣(矢頭)を認める.3カ月後.矯正視力0.8.d:カラー眼底写真.病巣の再発はなく,凝固瘢痕病巣(矢頭)が確認できる.e:OCT.網膜色素上皮.離は消失し,中心窩の陥凹を認める.凝固部位(2点の矢印を結ぶライン)の視細胞内節外節接合部のラインは消失している(矢頭).f:Humphrey視野検査10-2凝固部位に一致した暗点を認める.a.矯正視力が0.6以上の視力良好例なる.筆者らのIVRの検討では,IVRの単独療法は,抗VEGF硝子体注射単独療法の適応となる(図9).中心窩網膜厚は有意に減少し,視力は改善されるが,経視力不良例も含め,Hikichiらは,PCVに対する過観察中に再発やIVRに対して無反応となる症例もあranibizumabの硝子体注射(intravitrealinjectionofり,afriberceptへの変更や0.5以下になった時点でranibizumab:IVR)単独療法の2年の効果は良好であPDTとの併用も検討する必要があると考える(図10).ると報告しているが19),視力良好なPCVに限定したb.矯正視力が0.5以下の視力不良例IVRの単独療法の1年の効果について,Saitoらの18抗VEGF硝子体注射単独療法あるいはPDTと抗眼20),筆者らの50眼21)の検討では,いずれも視力は有VEGF硝子体注射併用療法の適応となる.PDTは,ポ意に改善している.導入期以後の維持期は,毎月診察リープ状病巣が閉塞しても長期経過となると治療前よりし,再治療の適応があれば,IVRを行うprorenata:も視力が悪化する症例が増えることから,PDT単独療(PRN)で行うことが原則必要である.Afriberceptを選法の選択がされなくなっている.併用療法の利点とし択した場合は,導入期以後は2カ月ごとの計画的投与とて,血栓形成によるCNVに対する選択的血管閉塞作用(29)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131677※abcd※abcd図9病巣が中心窩に存在した場合〔afribercept硝子体注射(IVA)単独療法〕(67歳,男性)治療前.矯正視力0.9であったためIVA単独療法を開始する.a:IA後期.異常血管網とポリープ状病巣(矢頭)を認める.b:OCT.ポリープ状病巣を示唆する内部に血管構造を伴う網膜色素上皮の急峻な隆起(矢印)と漿液性網膜.離を認める(※).3カ月後.計3回のIVAを行う.矯正視力1.5.c:IA後期.異常血管網は残存するが(小矢頭),ポリープ状病巣は確認できない(大矢頭).d:OCT.ポリープ状病巣を示唆する網膜色素上皮の急峻な隆起は縮小し(矢印),漿液性網膜.離は消失している.であるPDTと新生血管の血管内皮増殖阻害作用,血管上述したHikichiらの報告ではIVRの単独療法も,ポ透過性の抑制作用である抗VEGF薬の異なる奏効機序リープ状病巣の消失は25%,異常血管網は残存・拡大により治療効果を高められることと,抗VEGF薬によするが,2年間の長期期間で視力の観点からは有効でありPDTによるVEGFの増加,PDT後早期の血管外漏ることから19)IVRの単独療法も適応となる.出などの副反応を抑制できることが挙げられ,さらに治今後,afriberceptがranibizumabと異なる治療成績療回数の減少が期待できる.治療回数が減ることによりが報告される可能性もあり,抗VEGF硝子体注射に対患者の経済的負担を減らすこととなる.わが国の加齢黄してPDTの併用の可否は,現時点で結論はだせない.斑変性の治療指針では,PDTと抗VEGF薬併用療法は,しかし,抗VEGF硝子体注射単独療法で,無効例や薬PDT単独療法よりも視力成績が良好で,PDTの合併症剤耐性例に関しては,上述した理由でPDTを併用するとしての出血の頻度を低下させるという報告があることことにより,治療効果が期待できる可能性もある.から22.25),併用療法も適応になるとしている13).併用療法の方法としてIVRをPDTの7日前に行うよりも2おわりに日前に行ったほうが有意に視力の改善が得られるとの報PCVにはさまざまな所見があり,さまざまな経過を告もある23).たどるので,完全に予後をコントロールできる管理方法1678あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(30)abcdabcd図10病巣が中心窩に存在した場合〔ranibizumab硝子体注射(IVR)単独療法から光線力学的療法(PDT)併用に変更〕(63歳,男性)計8回のIVRを行うも漿液性網膜.離の消失と再発を繰り返し,矯正視力0.5となったため,PDTとの併用療法を行う.a:IA後期.異常血管網(矢頭)とポリープ状病巣(矢印)を認める.b:OCT.ポリープ状病巣を示唆するtomographicnotchsignを認める(矢頭).12カ月後.PDTとの併用療法後再発は認めず追加治療は行っていない.矯正視力1.0.c:IA後期.異常血管網は残存するが(矢頭),ポリープ状病巣の過蛍光は減弱している(矢印).d:OCT.網膜色素上皮.離は平坦化している(矢頭).はない.PCVと診断したら,生涯にわたり治療を含めた定期診察と自覚的な変化が生じた場合の迅速な診察,迅速な治療がPCVの管理の基本となる.文献1)YannuzziLA,CiardellaA,SpaideRFetal:Theexpandingclinicalspectrumofidiopathicpolypoidalchoroidalvasculopathy.ArchOphthalmol115:478-485,19972)髙橋寛二,石橋達朗,小椋祐一郎ほか(厚生労働省網膜脈絡膜・視神経萎縮症調査研究班加齢黄斑変性診断基準作成ワーキンググループ):加齢黄斑変性の分類と診断基準.日眼会誌112:1076-1084,20083)日本ポリープ状脈絡膜血管症研究会:ポリープ状脈絡膜血管症の診断基準.日眼会誌109:417-427,20054)MarukoI,IidaT,SaitoMetal:Clinicalcharacteristicsofexudativeage-relatedmaculardegenerationinJapanesepatients.AmJOphthalmol144:15-22,20075)UyamaM,WadaM,NagaiYetal:Polypoidalchoroidal(31)vasculopathy.Naturalhistory.AmJOphthalmol133:639-648,20026)湯澤美都子:ポリープ状脈絡膜血管症.日眼会誌116:200-232,20127)KawamuraA,YuzawaM,MoriRetal:Indocyaninegreenangiographicandopticalcoherencetomographicfindingssupportclassificationofpolypoidalchoroidalvasculopathyintotwotypes.ActaOphthalmol91:e474e481,20138)IijimaH,ImaiM,GohdoTetal:Opticalcoherencetomographyofidiopathicpolypoidalchoroidalvasculopathy.AmJOphthalmol127:301-305,19999)IijimaH,IidaT,ImaiMetal:Opticalcoherencetomographyoforange-redsubretinallesionineyeswithidiopathicpolypoidalchoroidalvasculopathy.AmJOphthalmol129:21-26,200010)TsujikawaA,SasaharaM,OtaniAetal:Pigmentepithelialdetachmentinpolypoidalchoroidalvasculopathy.AmJOphthalmol143:102-111,200711)Sato,KishiS,WatanabeGetal:Tomographicfeaturesofあたらしい眼科Vol.30,No.12,20131679branchingvascularnetworksinpolypoidalchoroidalvasculopathy.Retina27:589-594,200712)SatoT,IidaT,HagimuraNetal:Correlationofopticalcoherencetomographywithangiographyinretinalpigmentepithelialdetachmentassociatedwithage-relatedmaculardegeneration.Retina24:910-914,200413)髙橋寛二,石橋達朗,小椋祐一郎ほか(厚生労働省網膜脈絡膜・視神経萎縮症調査研究班加齢黄斑変性診断基準作成ワーキンググループ):加齢黄斑変性の治療指針.日眼会誌116:1150-1155,201214)森隆三郎:ポリープ状脈絡膜血管症.特集:加齢黄斑変性に対する治療の選択.眼科手術26:358-365,201315)HattenbachLO,KlaisC,KochFHJetal:Intravitreousinjectionoftissueplasminogenactivatorandgasinthetreatmentofsubmacularhemorrhageundervariousconditions.Ophthalmology108:1485-1492,200116)OhjiM,SaitoY,HayashiAetal:Pneumaticdisplacementofsubretinalhemorrhagewithouttissueplasminogenactivator.ArchOphthalmol116:1326-1332,199817)YuzawaM,MoriR,HaruyamaM:Astudyoflaserphotocoagulationforpolypoidalchoroidalvasculopathy.JpnJOphthalmol47:379-384,200318)TanoY:GuidelinesforPDTinJapan.Ophthalmology115:585-585.e6,200819)HikichiT,HiguchiM,MatsushitaTetal:Resultsof2yearsoftreatmentwithas-neededranibizumabreinjectionforpolypoidalchoroidalvasculopathy.BrJOphthalmol97:617-621,201320)SaitoM,IidaT,KanoM:Intravitrealranibizumabforexudativeage-relatedmaculardegenerationwithgoodbaselinevisualacuity.Retina32:1250-1259,201221)MoriR,YuzawaM,AkazaEetal:Treatmentresultsat1yearofranibizumabtherapyforpolypoidalchoroidalvasculopathyineyeswithgoodvisualacuity.JpnJOphthalmol57:365-371,201322)GomiF,SawaM,WakabayashiTetal:Efficacyofintravitrealbevacizumabcombinedwithphotodynamictherapyforpolypoidalchoroidalvasculopathy.AmJOphthalmol150:48-54,201023)SatoT,KishiS,MatsumotoHetal:Combinedphotodynamictherapywithverteporfinandintravitrealbevacizumabforpolypoidalchoroidalvasculopathy.AmJOphthalmol149:947-954,201024)TomitaK,TsujikawaA,YamashiroKetal:Treatmentofpolypoidalchoroidalvasculopathywithphotodynamictherapycombinedwithintravitrealinjectionsofranibizumab.AmJOphthalmol153:68-80,201225)SaitoM,IidaT,KanoMetal:Two-yearresultsofcombinedintravitrealranibizumabandphotodynamictherapyforpolypoidalchoroidalvasculopathy.GraefesArchClinExpOphthalmol251:2099-2110,201326)SatoT,KishiS,MatsumotoHetal:Comparisonsofoutcomeswithdifferentintervalsbetweenadjunctiveranibizumabandphotodynamictherapyforpolypoidalchoroidalvasculopathy.AmJOphthalmol156:95-105,20131680あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(32)