シリーズ⑳シリーズ⑳タブレット型PCの眼科領域での応用三宅琢(TakuMiyake)永田眼科クリニック第20章教育分野でのタブレット型PC活用の現状■見る喜びを育てる,弱視者教育分野での導入の意義第20章で取り上げる端末は,私が代表を務めるGiftHandsの活動や臨床業務で活用しているタブレット型PC“iPadAir(米国AppleInc)”と,iPhone5s(米国AppleInc)のiOSバージョン7.0.4です.この章ではタブレット型PCやスマートフォンの弱視者を含む教育分野での活用の現状と意義を紹介していきます.■教育とICTの関わり経済協力開発機構(OECD)が,世界65カ国・地域の15歳51万人以上が参加した2012年の学習到達度調査(PISA)の結果を発表しました.日本は数学的応用力7位(前回9位),読解力4位(前回8位),科学的応用力4位(前回5位)と順位を回復させました.これらの学力の向上の背景には,一部にゆとり教育から応用力を育てる教育への変換があるといわれています.応用力の育成に焦点を当てた教育の特徴は,これまでの国語や算数といった科による縦割りの教育ではなく,数理(算数と理科の知識を組み合わせて問題を解決する授業)やことば(コミュケーション能力の育成を行う授業)など科の枠を超えた問題解決能力とコミュケーション能力の育成を行う授業の導入にあります.また,教師と生徒が双方向性の高い授業の確立が重要と考えられるため,生徒が授業で自発的に意見を発信するツールの一つとして,近年iPadに代表される情報通信技術ICT(informationandcommunicationtechnology)の教育分野への導入が試みられています.小学校・中学校・高校・大学・専門スクール・学習塾などの指導者で結成された“iTeachers”は,各施設におけるICT導入・活用事例を共有するために,イベン(79)0910-1810/14/\100/頁/JCOPYトやメディアを通して多方面にICTの教育現場での導入の重要性についての情報発信を行っている団体です(http://www.iteachers.jp).iTeachersによる外国語学授業での活用事例では,生徒が考えたシナリオを外国語の台詞で演技して,スマートフォンで撮影した作品をタブレット型PCで編集し各自がプレゼンするなど新しい形での授業スタイルを報告しています.これまでのテキストによる教育とは異なり,これらの授業スタイルは極めて創造性と自由度が高く生徒は自発性や応用力を発揮しやすく,自ら考え表現することが可能になるといえます.タブレット型PCやスマートフォンといったICT機器の一般社会での普及に伴い,教育分野のみならず他分野において,今後このような変化は一層活性化すると考えられます.また,以前にも紹介しましたが,弱視教育の分野におけるICTの活用の可能性はとても大きく,さまざまな施設での検討が始まっています.■弱視者教育分野の活用事例広島大学大学院教育学研究科の氏間らは,国内の複数の協力施設(小学校,中学校,視覚支援特別学校など)においてタブレット型PC活用の指導を行い,理科の授業をはじめとしたさまざまなICT導入事例を報告しています(図1).また,大阪府立視覚支援学校ではタブレット型PCやスマートフォンを用いた,弱視者や全盲の児童・生徒での実習への導入事例を報告しています(図2).これらの事例報告に共通していえることは,タブレット型PCを導入したことで,視覚障害をもつ児童・生徒が視覚障害をもたない児童・生徒と同じ空間で,同時に実習を体験することができるということです.タブレット型PCやスマートフォンのアプリを通して障害による実習内容の認知の差を少しでも埋めることあたらしい眼科Vol.31,No.1,201479図1氏間研究室のウェブサイト導入事例の報告や手引きが紹介されている.(http://home.hiroshima-u.ac.jp/ujima/src/index_j.html)が可能となります.また,視覚障害をもつ児童・生徒が一般的に普及した汎用性の高いデバイスであるがゆえに,楽しみながら自発的に使えるツールであるということが重要です.今後,弱視者や全盲者の活用事例が蓄積されることで,多くの施設が導入の際に事例を模倣することが容易となり,視覚障害児童・生徒の教育分野においてもICTの導入はより一層の活性化することが予想されます.■教育分野におけるデジタルデバイス導入の意義と課題これまで紹介してきたようにタブレット型PCやスマートフォンを用いたロービジョンケアの目的は,視覚障害者を情報障害者にすることを回避することにあります.社会で生きていくための手段を学ぶ時期,教育の現場でそれらを用いることは,障害を不便と感じることなく情報の入手や発信が行えるようになるために,とても重要な機会だと感じます.また,教育現場が視覚障害者専用のロービジョンエイドとしてのタブレット型PCやスマートフォンを導入するのではなく,すべての児童・図2大阪府立視覚支援学校のホームページiPadやiPhoneを用いた弱視児童や全盲生徒の授業事例が報告されている.(http://www.osaka-c.ed.jp/mou/)生徒が応用力を高める授業スタイルの一部として利用することで,視覚障害をもつ児童・生徒と視覚障害をもたない児童・生徒との距離を近づけることが可能だと思います.今後,諸外国で導入事例があるように,わが国においても教科書が電子書籍として配布され,生徒が教育を受けるための一つのツールとしてタブレット型PCを持参する時代は遠くないと私は考えています.そのような時代の到来に向けて,眼科医としてGiftHandsの活動を通して,タブレット型PCやスマートフォンを利用して生活の不便さを解消している視覚障害者の存在を社会に認識させ,教育の現場に導入されることの意義を伝えることが何よりも重要だと私は信じています.本文の内容や各種セミナーの詳細に関する質問などはGiftHandsのホームページ「問い合わせのページ」よりいつでも受けつけていますので,お気軽に連絡ください.GiftHands:http://www.gifthands.jp/☆☆☆80あたらしい眼科Vol.31,No.1,2014(80)