監修=大橋裕一連載MyboomMyboom第26回「福田憲」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す(●は複数回)連載MyboomMyboom第26回「福田憲」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す(●は複数回)自己紹介福田憲(ふくだ・けん)高知大学医学部眼科学講座私は産業医科大学医学部(というかラグビー部?)を卒業後,平成8年に山口大学眼科学教室に入局しました.大学院修了後にちょうど日本で初めて眼科の寄附講座(山口大学医学部眼病態学講座)ができ,その講座でさらに4年間基礎研究を続けました.その後,眼科学教室に戻り,平成19年から2年間,米国ジョージア州アトランタにあるエモリー大学眼科に留学しました.帰国後半年して,平成22年4月から高知大学医学部眼科学講座で働いています.研究のMyboom:薬を使わずに,お金も使わずに,眼疾患を治す山口大学では,春季カタルや感染で生じる角膜潰瘍の病態解明,治療薬の開発を目標に,角膜上皮・実質細胞を用いた細胞生物学的研究を行ってきました.エモリー大学留学中はSantaOno教授の下で,マウスの骨髄からマスト細胞を培養して,マスト細胞欠損マウスの結膜に移入することで再構築して,アレルギー性結膜疾患におけるマスト細胞あるいはマスト細胞の単一の因子(ケモカインやケモカイン受容体など)の役割を調べました.高知大学に移った現在は,より臨床応用が可能な研究をめざして,おもに動物を用いてアレルギー性結膜疾患や感染性角膜潰瘍の研究を続けています.その中で2つの研究を紹介したいと思います.一つは農業生物資源研究所の高岩先生との共同研究で,花粉症の治療薬としての遺伝子組み換え“米”を用いた治療の研究です.スギ花粉の主要なアレルゲンであるCryj1とCryj2を,遺伝子改変により分断化や(93)0910-1810/14/\100/頁/JCOPYシャッフリングすることで立体構造を変え,それを米に発現させた「スギ花粉症治療米」を食べることで,経口免疫寛容を誘導して花粉症の予防・根治をしようという考えです.スギ花粉性結膜炎モデルのマウスにこの花粉症治療米をあらかじめ食べさせておくと,スギ花粉症が発症しないことがわかりました.この「スギ花粉症治療米」の優れた点は,アレルゲンの立体構造を変えて発現しているので,抗原特異的IgEには結合せず,免疫療法(減感作療法)のもっとも重篤な副反応であるアナフィラキシーを生じにくいという点です.アナフィラキシーを生じにくいので一度に大量に摂取でき,それゆえ短期間で免疫寛容を誘導できる可能性があります.また通常のお米と同様の方法で栽培できるため,安価で大量に生産可能で,病原性や毒性がなく,加工の必要もない,室温での長期保存や輸送も可能なことも実際の臨床応用では非常に優れた点といえます.もちろんこの米の抗原性は熱にも耐えうるので,通常のお米のように炊いて食べることができます.日本人の主食である白飯を食べることでスギ花粉症の予防や根治ができるのは,負担が少ない治療法といえます.小学校の給食で一定期間このお米を食べれば,数十年後にはスギ花粉症患者はいなくなるのではと夢見ています.今は,白樺やブタクサ花粉抗原を発現した米の効果の検討をしています.欧米ではブタクサ花粉症がもっとも多いので,この米で作ったカリフォルニアロールや米粉パンを食べることで全世界から花粉症を根絶したいと思っています.もう一つは,バクテリオファージによる眼感染症の治療の研究です.バクテリオファージとは,特定の細菌に感染し菌体を溶かして増殖するウイルスです.ファージは1915年に発見され,その溶菌活性を利用して抗菌薬として用いるファージ療法の研究が始まりました.ところが,その後最初の抗生物質であるペニシリンが発見されたために,西欧諸国では抗菌薬としての主役は完全に抗生物質に奪われることとなった残念なウイルスです.あたらしい眼科Vol.31,No.3,2014397写真1娘とシュノーケリングしたときの1枚ところが時代はめぐって,抗生物質の濫用により薬剤耐性菌が出現してからは西欧諸国でもファージ療法の研究が再開され,すでに米国では食品添加物として認可され,薬剤耐性緑膿菌に対する臨床研究も行われています(詳細は「あたらしい眼科」30巻,p1267-1269参照).高知大学微生物学講座と共同で,ファージ療法の眼感染症への臨床応用の研究をしており,マウスの緑膿菌性角膜潰瘍に対してファージを1回点眼するだけで治療効果があることを報告しました.この研究に用いたファージは高知大学の近くの河川水から分離したもので,非常に安価に大量に調整でき,また病原菌が存在すればファージはその中で自己複製を繰り返して増殖して次々と病原菌を死滅させますし,ファージはヒトの細胞には感染しないので病原菌が死滅すればファージも死滅するという手間のかからない画期的な治療です.起炎菌はわかっているのに,薬剤耐性で抗菌薬が効かないという症例には極めて有効な治療になるのではと期待しています.私たちは現在MRSAや腸球菌特異的ファージなどが感染性眼内炎の治療に応用できないか,またファージそのものではなく,ファージが産生する溶菌酵素の眼感染症の治療への応用をめざして研究しています.趣味のMyboom:ウェアラブルカメラ趣味で今はまっているのが,ウェアラブルコンピュータのアイテムです.数年前にウェアラブルカメラを買ったのが最初ですが,これは文字通り身につけることにより,ハンズフリーの状態で迫力ある映像を撮影できるカメラで,アクションカムとかスポーツカムとも呼ばれます.このカメラはゴーグルやヘルメット,自転車やスノーボードやサーフボードなどに取りつけて撮影できる写真2水中から撮った沖縄の青の洞窟という面白さがあります.色々なメーカーから発売されていますが,私の持っている国内メーカーのカメラは,今では1万数千円で買えます.手のひらサイズととても小型ですが,防水・耐衝撃・防塵・耐低温などのタフな作りなので,私は家族で海やプールに遊びに行ったときに撮影しています.子供と一緒にウォタースライダーで滑ったとき,海でバナナボートに乗ったときや,シュノーケリングやダイビングなどで水中でも撮影できるので,今までとは違った迫力のある写真や動画を手軽に記録できるのでおすすめです.また最近,NikeFUELBANDという腕にはめただけで勝手に活動量を測定して,iPhoneやパソコンでデータを同期して管理できるアイテムを買って,運動不足解消のために役立てています.この次に狙っているのはスキーのゴーグルです.ゴーグルにヘッドアップディスプレイが内蔵されていて,GPSで自分や仲間の居る場所を追跡できたり,滑っている速度や傾斜度などが出たり,iPhoneなどとワイヤレスで接続が可能で音楽やメールにもアクセスできるというすごいゴーグルがあるので,それを使いたいがために,久しぶりにスキーに行こうかと思っています.次回のプレゼンターは広島の近間泰一郎先生(広島大学)です.山口大学のときに角膜の臨床・研究についてご指導いただいたとてもパワフルな先生です.注)「Myboom」は和製英語であり,正しくは「Myobsession」と表現します.ただ,国内で広く使われているため,本誌ではこの言葉を採用しています.398あたらしい眼科Vol.31,No.3,2014(94)