屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─監修=木下茂●連載160大橋裕一坪田一男160.隅角支持型有水晶体眼内レンズ根岸一乃慶應義塾大学医学部眼科学有水晶体眼内レンズは,中等度.強度の近視の手術矯正法として有効性と安全性が確立しつつあり,(1)隅角支持型,(2)虹彩支持型,(3)後房型の3種類がある.近年,おもにヨーロッパで使用されている前房隅角支持型のレンズ(AcrySofRCachetR)の術後3年までの成績は良好であるが,安全性については長期経過を待つべきである.はじめに近年,有水晶体眼内レンズは,角膜屈折矯正手術の適応外である中等度.強度の近視の手術矯正法として有効性と安全性が確立しつつある.有水晶体眼内レンズは大きく分けて(1)隅角支持型,(2)虹彩支持型,(3)後房型の3種類があり,それぞれに利点と欠点がある.ここでは,隅角支持型有水晶体眼内レンズについて述べる.●歴史有水晶体眼内レンズの第一世代は1954年にStrampelliによって導入され前房隅角支持型のレンズである1).これらは角膜浮腫,慢性虹彩炎,Uveitis-Glaucoma-Hyphema症候群などのさまざまな合併症のために使用が中止された.隅角支持型のレンズは,その後もデザインが改良され,Baikofflens(ZB,ZB5M,NuVita),ZSAL-4andZSAL4-Pluslenses(MorcherGmbH,Stuttgart,Germany)が使用されたが,ポリメチルメタクリレート(PMMA)製で切開幅が大きくなるため,現在は使用されていない1).現在使用されているのは,3mm以下の切開創から挿入可能なフォルダブルレンズで,CEマークを取得しているのはKelmanDuetlens(TekiaInc.,Irvine,Calif)とAcrySofR(AlconInc.)のみである.そのほか,ヨーロッパとロシアでThinPhAc(ThinOpt-X)とVisionMembrane(VisionMembraneTechnology)の臨床試験が行われた1)が,その成績についてはPubMedで検索した限りは見つからなかった.KelmanDuetlensはシリコーン製の光学部と,PMMA製の支持部の独立した2つの部品からなるレン(59)0910-1810/13/\100/頁/JCOPYズで2.5mm幅の切開から挿入し,眼内でフックを使用して組み立てる.術後1年の角膜内皮細胞密度減少率は5.43%と報告されている2)が,それ以降の長期経過の報告はない.最も新しい隅角支持型有水晶体眼内レンズはAcrySofRCachetRである.AcrySofRCachetRは日本では治験中である.以下,AcrySofRCachetRについて解説する.●AcrySofRCachetRAcrySofRCachetRは疎水性アクリル製のシングルピースレンズで,屈折率1.55,直径6.0mmのメニスカス形状の光学部をもつ(図1).レンズ度数は.6.00..16.50D,全長は12.0.14.0mmまであり,解剖学的計測値によってどのレンズを選択するか決定する.1.術前検査術前検査は他の屈折矯正手術と同様,自覚屈折,調節麻痺下屈折,裸眼および矯正視力,瞳孔径,眼圧,前房深度,角膜形状,角膜厚,角膜内皮細胞密度,眼底検査などを行う.現状での適応と除外基準は原則として他の有水図1術後の前眼部写真(AcrySofRCachetR)あたらしい眼科Vol.30,No.9,20131259a.眼内にインジェクターで挿入b.後方支持部はフックで挿入図2手術手技晶体眼内レンズと同様であるが,AcrySofRCachetRの場合は前房深度が角膜内皮から測定して2.7mmを超えないものは適応外となる.眼内レンズ度数の計算はVanderHeijdeやFechnerらによる既存式を元に,メーカーがノモグラムを加えた推奨の計算法を提供しているので,それに従う.眼内レンズのサイズはwhiteto-white計測値より0.5.1.0mmほど大きいものを使用する2).2.手術術前に縮瞳させたのち(術者により灌流液にアセチルコリンを使用することもある),点眼麻酔下で2.6.3.2mm切開(使用カートリッジにより異なる)3)を行い粘弾性物質で前房を保ちつつインジェクターで眼内レンズの後方支持部以外の部分を挿入する(図2a).眼外に残った後方支持部はフックで挿入する(図2b).支持部は4点すべてが隅角にはいるようにする.その後サイドポートから粘弾性物質を除去する.虹彩切除の必要はない.3.手術成績・合併症3年以上経過観察した104例の患者(360例の患者に挿入)に対する国際多施設研究の結果4)では,裸眼視力は101例(97.1%)で0.5以上,48例(46.2%)で1.0以上であった.矯正視力は103例(99%)で0.625以上,84例(80.8%)で1.0以上であった.術後6カ月から3年における中央および周辺の年間角膜内皮細胞密度減少率はそれぞれ0.41%と1.11%で,瞳孔の変形,瞳孔ブロックおよび網膜.離の合併症はなし,と非常に良好な成績が報告されている.しかしながら,安全性の評価については,さらに長期の成績を待たなければならない.文献1)AlioJL,ToffahaBT:Refractivesurgerywithphakicintraocularlens:anupdate.IntOphthalmolClin53:91-110,20132)AlioJL,PineroD,BernabeuGetal:TheKelmanDuetphakicintraocularlens:1-yearresults.JRefractSurg23:868-879,20073)GuellJL,MorralM,KookDetal:Phakicintraocularlenspart1:historicaloverview,currentmodels,selectioncriteria,andsurgicaltechniques.JCataractRefractSurg36:1976-1993,20104)KnorzMC,LaneSS,HollandSP:Angle-supportedphakicintraocularlensforcorrectionofmoderatetohighmyopia:three-yearinterimresultsininternationalmulticenterstudies.JCataractRefractSurg37:469-480,2011☆☆☆1260あたらしい眼科Vol.30,No.9,2013(60)