特集●ロービジョンケアあたらしい眼科30(4):443.449,2013特集●ロービジョンケアあたらしい眼科30(4):443.449,2013就労期のロービジョンケアLowVisionCareoftheWorkingPeriod鶴岡三惠子*はじめに就労期の視覚障害者が病院を訪れるとき,その入り口は一般外来である.そのとき,視覚障害の患者を眼科医が支援しなければならないのだが,眼科医としての支援とは何であろうか.眼科医として,視覚障害者の職業=「三療」(あん摩・マッサージ・指圧,鍼,灸)しかないと考えるのは間違いである.視覚障害があっても,ロービジョンケアによって,事務の仕事や他にもできることは多く,第一線で仕事をしている患者も少なくない.また,在職中の患者に対して眼科医が「仕事を続けることが重要である」と伝えることが必要なのである.ロービジョンケアは専門家だけが行う,特殊なケアではない.ここに紹介するロービジョンケアは,毎日の診療中ですべての眼科医が認識すべき基本的なものである.働き盛りの患者にとって,仕事を維持・継続できるかどうかは,家族の生活にもかかわる問題だけに大変重要である.視覚障害が原因で仕事を辞めてしまうと,再就職は容易ではない.それ故,退職することなく働き続けられるように眼科医が支援することが大切なのである.I眼科医として一般外来でできるロービジョンケアロービジョンケアには6つの基本がある.すなわち,1.患者のニーズを知る,2.視機能評価,3.必要書類の作成,4.社会資源の紹介,5.ロービジョンエイド,表1一般外来でできるロービジョンケア一般外来でできるロービジョン外来で行う患者のニーズを知る傾聴問診表・ゆっくり傾聴視機能評価視力・視野偏心視域・読書速度必要書類の作成経験者に相談書類の作成社会資源の紹介専門医に紹介パンフレットの用意一般外来のなかで行えるロービジョンケアは多い.6.環境整備,である.これらのすべてが,一般外来でできるわけではない.すべての眼科医が診療のなかで明日から実践できるものは,1.患者のニーズを知る,2.視機能評価,3.必要書類の作成,4.社会資源の紹介である(表1).以下に一般外来でできる4つのケアを含め,6つの基本事項について述べる.1.患者のニーズを知る一般外来の問診のなかで,大切なことは傾聴である.外来で患者の声に耳を傾けることから始める.眼科医の仕事の最終目的は,視機能を良くすることだけでなく,患者の自立を手助けすることである.表2に問診のチェックポイントをまとめる.2.視機能評価矯正視力(遠見・近見),視野検査,読書視力,アムスラー(中心暗点検査)などの一般眼科検査だが,ポイ*MiekoTsuruoka:お茶の水・井上眼科クリニック〔別刷請求先〕鶴岡三惠子:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3新お茶の水ビルディング18F・19F・20Fお茶の水・井上眼科クリニック0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(15)443表2問診のチェックポイント<読み書きについて>.新聞の文字は見えるか:大見出しは?中見出しは?本文は?.自分で書いた文字は読めるか?.書式の決まった書類に記載できるか?<移動について>.通勤時の移動は問題がないか?.信号の色はわかるか?.階段の昇降はできるか?<就労に対して>.いま働いているか?(休職中か?病気療養中か?).経済面も含めて,困っていることはないか?.職場の上司,人事担当と視覚障害について相談できるか?<身体障害者手帳>.持つ気はあるか?.手帳を取得することで,公的支援制度を活用できることを知っているか?.補装具や日常生活用具などへの援助を知っているか?<特定疾患(難病)>.手続きを行っているか?患者の声に耳を傾けることが大切である.ントは矯正視力と視野である.視機能評価をするとき,身体障害者手帳の等級に該当するかをチェック(表3)する.障害年金については,程度等級は身体障害者手帳の等級基準と異なる(表4).視機能評価と同時に,「あなたの見え方は戻らないけれども,あなたと同じような見え方で仕事を続けている人たちがいる」とアドバイスすることが重要である.患者がつぎのリハビリテーション過程へスムーズに移行できるようにするためにも,眼科医からの早期の情報提供が大切である.3.書類作成診断書や意見書の作成は,その後の患者の復職のための対応にも影響を与え,人生の岐路を分けることにもなる.しかし,一方的に患者や障害者に有利に書くべきではなく,一人の判断でなく,経験者に相談をすることが大切である.身体障害者手帳の申請のための診断書は,都道府県知事の指定を受けた医師でないと書けない.復職などに際して事業主が診断書などを求めた場合の記載内容について,「就労は可能であること」が読みと444あたらしい眼科Vol.30,No.4,2013表3身体障害者程度等級視力0.60.50.40.30.20.10.090.080.070.060.050.040.030.020.0106級5級4級3級2級1級00.010.020.030.040.050.060.070.080.090.1視野2級両眼の視野がそれぞれ10°以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が95%以上3級両眼の視野がそれぞれ10°以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が90%以上4級両眼の視野がそれぞれ10°以内5級両眼による視野の2分の1以上が欠けている※身体障害者手帳の申請のための診断書は,都道府県知事の指定を受けた医師でないと書けない.れるものとする.また,療養が必要な場合は「療養(歩行,音声パソコンなどのリハビリテーションを含む)を要する」のように,療養の中身がリハビリテーションを含むことを明記する.<休職の際に提出する診断書の例>・復職を不可能にすることがある例:単に,「療養を要する」と記入.→療養の結果,目が見えるようにならなければ,復職は認められないと言われることがある.・復職するときのことを想定して書いた例:「療養(歩行,点字,音声パソコンなどのリハビリテーションを含む)を要する」と記入.→視覚障害からくる日常生活の支障や社会的不利を軽減する措置(文字の読み書きや移動など,(16)表4障害者年金基準1級両眼の矯正視力の和が0.04以下のもの2級両眼の矯正視力の和が0.05以上0.08以下のもの3級両眼の矯正視力が0.1以下のもの障害等級国民年金(障害基礎年金)厚生年金保険(障害厚生年金)1級○○2級○○3級○年金の等級は,身体障害者手帳の等級とは関係なく,年金支給の要件基準で判断される.1級は「日常生活の用をたすことができない程度」(身体障害者手帳の概ね1.2級)2級は「日常生活に著しい制限を受ける程度」(身体障害者手帳の概ね3級)◆国民年金(障害基礎年金)障害認定時:初めて医師の診療を受けたときから,1年6カ月経過したとき(その間に治った場合は治ったとき)に障害の状態にあるか,または65歳に達するまでの間に障害の状態となったとき.◆厚生年金保険(障害厚生年金)障害認定時:障害基礎年金と同じ.障害年金を受給するための4つの条件1初診日時点で年金に加入していること2保険料を一定期間払っていること3障害の等級に該当する程度の状態である465歳までに年金請求すること※例外規定があります◆障害年金は月給をもらっていても支給されることがある.いわゆる視覚リハビリテーション)が必要であることを併記する.4.社会資源の紹介就労期の視覚障害者の場合,就労継続・復職に向けたリハビリテーション実施のタイミングが重要である.このためのロービジョンケアには医療だけでなく,福祉,労働など多くの関係者(社会資源)の連携が不可欠である.眼科医からの早期の情報提供が大切で,生活訓練を行う福祉機関,ハローワーク(用語解説)など労働関係機関へつなぐ必要がある.治療と並行して,リハビリテーションを行うことも効果的である.(17)表5社会福祉サービスの窓口身体障害者手帳市区町村役場の福祉課障害基礎年金・手当金国民年金市区町村役場の年金課厚生年金社会保険事務所特定疾患保健所生命保険の重度障害保険金各生命保険会社社会福祉サービスの窓口を患者に情報提供することが大切である.社会資源のすべてに精通することはむずかしいが,社会福祉サービスの窓口は知っておいて,患者に伝えるべきである(表5).また,困ったときに紹介できる近隣の施設を調べておくと良い.自信をもって紹介するためにも,視覚障害者の就労現場,訓練現場を見学し,音声パソコンなど支援機器を体験することも重要である.社会資源の例を下記にまとめる.1)医療:近隣のロービジョン外来はインターネットで検索できる.日本眼科医会のホームページから検索(http://www.gankaikai.or.jp/lowvision/)日本ロービジョン学会のホームページから検索(http://www.jslrr.org/sisetu1.html)2)福祉:障害者支援施設(自立訓練と就労移行支援)海外たすけあいロービジョンネットワークのホームページから地域の施設検索ができる.(http://ganenstudy.web.fc2.com/jp/reference/institution.html)自立訓練(機能訓練)の目標:日常生活動作における機能回復就労移行支援の目標:就労に必要な知識および能力の向上3)雇用・障害者雇用に関する各種相談,職業紹介→地域ハローワーク・職場定着支援,事業主への助言→地域障害者職業センター,障害者就業・生活支援センター・各種助成金→地域ハローワーク,高齢・障害・求職者雇用支あたらしい眼科Vol.30,No.4,2013445援機構例)日本盲人職能開発センター(http://www.os.rim.or.jp/.moushoku/)4)情報源・用具販売:点字図書館日本点字図書館(http://www.nittento.or.jp/)5)関連団体日本網膜色素変性症協会(http://www.jrps.org/)日本盲人会連合(http://www.normanet.ne.jp/~nichimo/)緑内障フレンド・ネットワーク(http://www.gfnet.gr.jp/)中途視覚障害者の復職を考える会(NPO法人タートル)(http://www.turtle.gr.jp/)5.ロービジョンエイドロービジョンエイドは5つの基本からなる.1)拡大:補助具(ハイパワー眼鏡,拡大鏡,拡大読書器など)を使用することで視力を補う.2)遮光:遮光眼鏡,帽子などで羞明を予防する.3)照明:コントラスト改善・夜盲の対策を行う.4)眼球運動訓練:視界を拡大する.5)便利グッズ:白杖,音声時計などの使用で日常生活動作を支援する.一般外来のなかでロービジョンエイドがすべてできるわけではない.ここでは明日からの外来のなかで実践できるものとして,基本的な知識を紹介する.拡大について:近用の眼鏡を処方ロービジョンの患者にとって,読書・筆記は見えづらいためにむずかしい作業である.「新聞を読みたい」「手紙を書きたい」などのニーズに対し,拡大鏡・拡大(,)読書器の選定が必要となるが,しっかりと近用の眼鏡を処方することが大切である.ここで,新標準近距離視力表1)を紹介する.この視力表はロービジョンの患者の近見視力を測定するのに優れており,1項に本の種類別に必要とされる視力が近距離視力表(表6)にある.この表から拡大倍率を推定することができる.→必要倍率は以下の式から求めることができる.◇必要倍率M=必要とされる視力/実際の近見視力例)患者の近見視力=0.05(矯正0.1)の場合患者のニーズ「本を読みたい」表6より→一般446あたらしい眼科Vol.30,No.4,2013表6印刷物を読みうる近距離視力の表ひらがな漢字教科書0.10.20.20.3新聞一般書籍0.30.40.40.4.0.5辞書0.50.6近見視力を矯正して,必要とされる視力からおおよその倍率を推定する.(湖崎克:新標準近距離視力表より)書籍=0.5処方1)矯正した近見視力=0.1ここでしっかり矯正近見視力を出すことが大切!→近用眼鏡を装用して拡大鏡を処方→必要倍率は0.5/0.1=5拡大鏡は5倍となる処方2)矯正なしの近見視力=0.05→裸眼で拡大鏡のみ使用する場合→必要倍率は0.5/0.05=10拡大鏡は10倍となる倍率が上がると視野に入る文字数が少なくなる(図1).患者から「字は見えるが文章が読めない」と,ニーズと合わない結果になってしまうことがある.遮光について:つばの大きい帽子やサンバイザーの利用を助言ロービジョン患者の見えにくさは,視力・視野だけではない.患者の訴える「見えにくさ」の改善に遮光眼鏡が有用な場合がある.「見えにくさ」の感じ方は状況や屋外,屋内など環境や個人によって異なるため,遮光眼鏡の処方には貸出が重要である.このために選定に時間がかかり,一般外来のなかでの処方はむずかしい.しかし,正面からの光だけでなく,上方からの光が「見えにくさ」の原因になることもあり,つばの大きい帽子やサンバイザーの利用を助言することで,「見えにくさ」の軽減に役立つ.補装具における遮光眼鏡の取扱指針改正について(平成22年3月31日)これまで,遮光眼鏡が身体障害者(視覚障害)の補装具として適用される際の支給対象者は原因疾患が限られていたが,平成22年3月の改正で対象者が原因疾患によらないと明確化された(表7).遮光眼鏡の支給対象者(18)5倍10倍図15倍・10倍の拡大鏡の見え方拡大倍率が上がると視野に入る文字数が少なくなる.は,視覚障害による身体障害者手帳を取得している患者とされ,補装具費支給事務取扱指針に定める眼科医(用語解説)により,治療法として遮光眼鏡の装用が必要と診断され,選定・処方となった場合と改正になった.便利グッズについて:白杖を申請するときの助言補装具の白杖は,身体障害者手帳の取得時に市区町村の福祉課から給付される場合と,補装具として患者自身が申請して給付をうける場合がある.給付時の問題として,給付をうけた患者へ白杖の使い方の指導がない.また,白杖には材質・型・長さなどさまざまなものがあるが,患者にあったものが渡されるとは限らない.患者が白杖を市区町村の福祉課へ申請するときには,歩行訓練サービスも合わせて希望し,白杖の種類と利用時のアドバイスが欲しいことを患者が自分から窓口担当者へ申し出るよう助言する.ロービジョンエイドが視覚障害に対して万能なわけではない.患者によりエイドも異なり,エイドを使いこなすためにトレーニングが必要なこともある.患者がロービジョンエイドを必要とした場合は,近隣のロービジョン外来を紹介してほしい.6.環境整備環境整備は家庭(家族)と会社(上司)に視覚障害について理解を深めてもらうことからはじまる.ロービジョン外来ではシミュレーションゴーグルなどで疑似体験を通して関係者の視覚障害への理解を深めてもらう場合もある.患者本人や周囲の人の意識改革を最も効果的に行えるのは,普段から患者の診療を行っている眼科医なのかもしれない.家庭内での環境整備について:家族の理解を深める家族に患者のコントラスト感度の低下を理解してもらうことが重要である.たとえば,患者に階段の段差がわかるようにテープを張る,患者がお菓子(あられなど)を食べるとき,花柄模様の皿からお菓子をとるのは難しいので白い皿を利用するなど,家のなかにコントラストを増やす工夫が必要である.患者の記憶が視覚障害を代償することを理解してもらうことも重要である.たとえば,冷蔵庫の牛乳は置く位置をきめて,家族全員が牛乳を飲んだあとは必ず定位置に戻す.床にないはずの物が置いてあると障害物になる.オープンスペースをつくり,ものは溜めない,散らかさないなど,家庭内でルールを作り守っていく必要性を助言する.表7補装具における遮光眼鏡の取扱指針改正(平成22年3月31日)旧新補装具の対象者について(種目:眼鏡,名称:遮光眼鏡)・網膜色素変性症・白子症・先天無虹彩・錐体杆体ジストロフィーであって羞明をやわらげる必要のあるもの・視覚障害により身体障害者手帳を取得していること・羞明を来していること・羞明の軽減に,遮光眼鏡の装用より優先される治療法がないこと・補装具費支給事務取扱指針に定める眼科医による選定,処方であること疾患の縛りがなくなった.(19)あたらしい眼科Vol.30,No.4,2013447会社での環境整備について:会社(上司)の理解を深める会社からの仕事効率の期待と患者自身の作業能率との差が,職場で問題になることがある.また,会社の期待あるいは患者自身の期待感と現実の作業能率の悪さが原因で退職になることがある.職場での問題から,患者が退職に追い込まれないようにするために,患者の作業内容など職場環境の調整が必要になる.会社(上司)や産業医から問い合わせがあった場合には一人の判断でせず,経験のある眼科医,視覚障害者の職業訓練施設などの専門機関の意見を参考にしながら判断をする必要がある.具体的な復職事例の問い合わせの場合は,中途視覚障害者の復職を考える会(NPO法人タートル)が多数の事例を把握していると情報提供をするとよい.環境整備について眼科医だけで問題を抱え込まず,支援団体や関係機関などと連携・協力して,チームによる支援を行うことが重要である.〔症例〕ぶどう膜炎による続発緑内障(両眼).50代,男性.元タクシー運転手.⇒緑内障は,2004年の身体障害者届出件数の第1位(20.7%)である.病歴:5年前,ぶどう膜炎による続発緑内障と診断,点眼・内服による治療,その後,両眼の線維柱帯切除術を行う.転居のため当院を紹介,再手術を検討中である.患者のニーズ:視野狭窄を自覚し,自分からタクシー会社を退職した.仕事を辞めたことが原因で離婚となり,独り暮らしをしている.現在はマンションの管理人をしているが,いつか視覚障害が原因で仕事を辞めなければならないのではと先行きが不安である.視機能評価:視力:右眼=(0.7×.1.75D(cyl.2.0DAx105°).左眼=(0.1×.2.0D(cyl.0.5DAx170°).眼圧:右眼=18mmHg,左眼=19mmHg.視野:湖崎分類右眼=IIIa,左眼=Vb(図2).ケアの実際:必要書類の作成(身体障害者手帳):ロービジョン外来の初診時,視野障害で手帳の取得資格に該当すること,手帳を取得することで公的支援制度を活用できることを説明し,身体障害者手帳の申請となる.社会資源の紹介:病院より中途視覚障害者の復職を考える会(NPO法人タートル)を紹介(支援を依頼),同じように就労継続に不安を感じ,問題を克服している患者の話を参考に,今後の対応を考えることになる.ロービジョンエイド:携帯型拡大読書器を紹介.目的は拡大ではなく,白黒強調の画面を使用することである.コントラストがはっきりして,書類仕事の不自由さが軽減することがわかり,手帳取得後に購入となる.その後,NPO法人タートルの相談会で就労継続の不安を訴え,障害者支援施設・ハローワークへ支援依頼となる.また,仕事を継続しながら障害者年金の支給を受けるための助言があった.診断書の希望にてロービジョン外来を再診.障害者年金の申請と症状進行のため障害者手帳2級の再申請となる.この結果,障害者年金の2級を受給することになり,経済的な不安は軽減した.患者は就労継続を希望しており,ハローワークより病院へ就労可能証明書の依頼があるなど,現在,職場での環境RLI/4V/4I/4I/4V/4図2Goldmann視野右眼の中心視野は孤立している.448あたらしい眼科Vol.30,No.4,2013(20)整備を行っている.患者は歩行訓練を検討中で,治療とロービジョンケアを並行して継続している.II眼科医が知っておきたいロービジョンケア知識障害者の法定雇用率の引き上げ(平成25年4月1日から)すべての事業主は,法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務がある(障害者雇用率制度:用語解説).この法定雇用率が,平成25年4月1日から表8のように変わる.おわりに視覚障害になると,患者にとって今までできていたことができなくなる事柄が数多くなる.そんななかで,予測ができず,ばかばかしく,胸がはりさけるように感じることも多いであろう.しかし,ロービジョン訓練,生活訓練や職業訓練などの訓練によってできるようになることも多い.今も,視覚障害のある患者が安全に通勤し,パソコンを活用して文字処理業務などを行うなど,いろいろな職域で働いており,「見えない者は働けない」というのは間違いである.このことをしっかり患者に伝える必要がある.患者に対して,本人が保有している視機能の活用と必要な視覚補助具などについて眼科医から助言・指導を行い,就労(継続)の可能性があることを理解させることが重要である.文献1)湖崎克:新標準近距離視力表.1項,半田屋商店,20132)東京都心身障害者センター:視覚障害.身体障害者手帳診断作成の手引き,p15-25,東京都心身障害者センター,20113)李俊哉:身体障害者手帳.疾患への対応ロービジョンケア(新井三樹編),p30-33,メジカルビュー社,20034)守本典子:福祉への橋渡し.疾患への対応ロービジョン表8障害者の法定雇用率の引き上げ事業主区分法定雇用率現行平成25年4月1日以降民間企業1.8%2.0%国,地方公共団体等2.1%2.3%都道府県等の教育委員会2.0%2.2%事業主は,法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務がある.■用語解説■ハローワーク:視覚障害者の雇用の促進と安定を支援の二つの柱として,在職中の中途視覚障害者の雇用継続支援も行っている.患者が在職中に受障などにより雇用上の課題が生じた場合,雇用継続を図るためにも,眼科医ができるだけ早くハローワークに相談するよう助言することが大切.障害者雇用率制度とは:「障害者の雇用の促進等に関する法律」では,事業主に対して,その雇用する労働者に占める身体障害者・知的障害者の割合が一定率(法定雇用率)以上になるよう義務づけている.補装具費支給事務取扱指針に定める眼科医とは:・身体障害者福祉法第15条第1項に基づく指定医=身体障害者診断書の記載ができる指定医師+眼科専門医aまたは・障害者自立支援法に基づく指定自立支援医療機関の眼科を主に担当する医師+眼科専門医・国立リハビリテーションセンター学院においてb実施している視覚障害者用補装具適合判定医師研修会の修了者ケア(新井三樹編),p36-41,メジカルビュー社,20035)石田みさ子:光学的補助具,ロービジョンケアマニュアル(簗島謙次,石田みさ子編),p79-91,南江堂,20006)下堂園保:訪問調査.視覚障害者の就労の基盤となる事務処理技術及び医療・福祉・就労機関の連携による相談支援の在り方に関する研究報告書(下堂園保編),p9-122,特定非営利活動法人タートル,20097)厚生労働省通知「視覚障害者に対する的確な雇用支援の実施について」の本文及び関係資料http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha02/(21)あたらしい眼科Vol.30,No.4,2013449