特集●わかりやすい緑内障薬物のお話あたらしい眼科29(4):443.450,2012特集●わかりやすい緑内障薬物のお話あたらしい眼科29(4):443.450,2012プロスタグランジン関連薬ProstaglandinAnalogs相原一*はじめにプロスタグランジン(PG)関連薬のうち,薬品名にプロストと名の付くプロスト系とよばれる系統は,現在第一選択薬の眼圧下降薬となっているが,その歴史は他の薬剤と比べて浅く,1980年代から眼薬理作用が検討されてきた物質である.プロスト系PG関連薬は,病型を選ばず最大の眼圧下降効果が得られること,終日の眼圧下降効果,それに伴う日内変動抑制効果,併用薬を選ばないこと,局所のみで全身的副作用がないこと,1回点眼であること,といった特徴がある.これらの特徴は緑内障治療に重要な,点眼に対する患者のアドヒアランスを向上させる条件を満たしており,点眼眼圧下降治療での第一選択薬となっている.現在,世界的には,ウノプロストン(レスキュラR,参天製薬)を含めると,4種のプロスト系ラタノプロスト(キサラタンR,ファイザー),トラボプロスト(トラバタンズR,日本アルコン),ビマトプロスト(ルミガンR,千寿製薬),タフルプロスト(タプロスR,参天製薬),合計5種類のPG関連薬が存在する.さらに2011年にはキサラタンRのジェネリック製品が23種類も発売されたが,本稿では,先発のキサラタンRに限って,5種類のPG関連薬について解説する.IPG関連薬とは?PGは本来,全身に広く分布し多種多様な生理活性をもつ局所ホルモンの一群をなす脂質の総称である.主と種類生体内機能受容体PGF2a陣痛誘発,黄体退縮,眼圧下降FPEP1PGE2発熱,疼痛,血管透過性亢進EP2EP3EP4PGI2血小板形成抑制,血栓形成阻害IPPGD2睡眠誘発,気管支収縮DPTXA2血小板形成促進,血栓形成促進TPプロスタ眼圧下降プロスタマイド受容体ラタノプロスト酸トラボプロスト酸タフルプロスト酸ビマトプロスト酸ビマトプロストマイドF2a=FP+FPsplicevariant図1プロスタグランジン関連物質の受容体とその生体内機能FP受容体が眼圧下降に重要である.プロスト系PG関連薬は酸型がFP受容体に,ビマトプロストはそのままプロスタマイド受容体に結合する.して生体内機能を有するPGは図1の4群であり,それぞれ特異的な受容体が存在する.そのうち緑内障眼圧下降薬としてのPG関連薬はPGF2aを基本骨格とし,そのカルボキシル基末端にイソプロピル基がエステル結合したPGF2aイソプロピルエステルから開発されたものである.そのためPG関連薬とよぶ.受容体はFP受容体である.現在,開発順にウノプロストン,ラタノプロスト,トラボプロスト,ビマトプロスト,タフルプロストの5種類のPG関連薬が存在する(図2)が,後述のように,ウノプロストンだけがPGF2aイソプロピルエステルの基本骨格はあるものの,代謝された構造をもつためプロストン系とし,一方,他の4種はPGF2aをよ*MakotoAihara:東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚運動機能講座眼科学〔別刷請求先〕相原一:〒113-8655東京都文京区本郷7-3-1東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚運動機能講座眼科学0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(9)443製品名一般名濃度開発国投与回数眼圧下降副作用充血,眼瞼色素沈着,睫毛の伸長・増加防腐剤作用点ルミガンRタプロスRタフルプロスト0.03%0.0015%米国日本1日1回1日1回レスキュラRキサラタンRトラバタンズRウノプロストンラタノプロストトラボプロストビマトプロスト0.12%0.005%0.004%日本米国米国1日2回1日1回1日1回++++++++++++++++++BAKBAKsofZiaR(イオン緩衝系防腐剤)BAKBAKFP受容体Maxi-KチャンネルFP受容体FP受容体FP受容体プロスタマイドFP受容体FP受容体プロストン系プロスト系図2緑内障治療PG関連薬一覧(ジェネリック製品を除く)ウノプロストンはプロストン系,他の4剤はプロスト系として分類すると違いがわかりやすい.り安定化させた構造をしており,名前もプロストがついているため,まとめてプロスト系とよぶと理解しやすい.IIプロドラッグ製剤5種類の薬剤はすべてプロドラッグ製剤である.PGは本来末端のカルボキシル基は酸になっていて受容体に結合するが,図3にあるように点眼製剤はビマトプロストを除きイソプロピルエステル型となっており,角膜を通過する際にエステラーゼにより結合が切れて酸となり,眼内で受容体に作用する.ビマトプロストだけが,エチルアミド型となっておりアミダーゼにより結合が切られ酸となる.こうしたプロドラッグ製剤は,眼外での不必要な薬理活性を減らすことで副作用を軽減する役割をもっているため,製剤として好ましいと考えられる.IIIプロストン系とプロスト系の相違図3にあるように,プロストン系であるウノプロストンだけが15位の水酸基が酸化されているため代謝型PG関連薬ともよばれている.この15位の水酸基は基本骨格であるPGF2aの受容体FPへの結合に重要であ444あたらしい眼科Vol.29,No.4,2012る.そのため,invitroの結合実験ではウノプロストンはFP受容体への結合親和性が低い.プロスト系薬剤は炭素鎖15位の水酸基を保存したまま,修飾が施された薬剤であるが,国産のタフルプロストは水酸基をフッ素で置換することにより薬剤の安定性を高めた構造になっている.IVPG関連薬のプロスタノイド受容体結合能PG関連薬は酸になると受容体結合能が向上し,プロスタノイド受容体に結合するが,図4にあるようにウノプロストンはどの受容体にも結合能が劣る.プロスト系はいずれもFP受容体に最も結合するが,EP3受容体にも結合能を有する.もっともFP選択性が高いのはタフルプロストである.エチルアミド型のビマトプロストは酸型では他のイソプロピルエステル型プロスト系と同様なプロスタノイド受容体結合パターンを示すが,酸にならない状態でもFP受容体とFPのスプライスバリアントの複合体に直接結合することが最近報告されており1),他のプロスト系PG関連薬と異なる結合活性をもつプロスタマイド(プロスト系のアミド型という意味)と位置づける研究者もいる.(10)PGF2aイソプピルエステルHOHOOHOOラタノプロストHOHOOHOOesteraseイソプロピルウノプロストンHOHOOOOesteraseesteraseCF3HOHOOOHOOトラボプロストタフルプロストesteraseHOHOOFOOFamidaseHOHOOHONHビマトプロストPGF2aイソプピルエステルHOHOOHOOラタノプロストHOHOOHOOesteraseイソプロピルウノプロストンHOHOOOOesteraseesteraseCF3HOHOOOHOOトラボプロストタフルプロストesteraseHOHOOFOOFamidaseHOHOOHONHビマトプロストプロストン系プロスト系図3PG関連薬の構造式LatanoprostacidTravoprostacidFPFPReferences10-110-410-710-10EP1EP3DPTPEP2IPEP2IP(1)JOculPharmacolTher.2001,17(5):433(2)SurvOphthalmol.2001,45:S337(3)JPET.2003,305(2):72(4)JOculPharmacolTher.2003,19(6):501(5)NipponYakurigakuZasshi.2000,115(5):28010-110-410-710-10EP1EP3DPTPから改変EP4EP4UnoprostoneacidBimatoprostacidTafluprostacidFPFP10-110-410-710-10EP1EP3DPTPFPIPEP2IPEP2IPEP210-110-410-710-10EP1EP3DPTP10-110-410-710-10EP1EP3DPTPEP4EP4EP4図4PG関連薬のプロスタノイド受容体親和性プロスト系は基本的にFP受容体に対する特異性が高いが,他のEP受容体にも親和性がある.これは論文の組み合わせでの概略図であり,直接5剤を比較したデータではないので注意.(11)あたらしい眼科Vol.29,No.4,2012445VPG関連薬の眼圧下降作用機序FP受容体欠損マウスを用いた点眼試験では,5種類のPG関連薬の眼圧下降効果がまったく消失したことにより,これらの眼圧下降作用にはFP受容体が必須であることが判明した2)(図5).ビマトプロストはそれ自身がプロスタマイド受容体に結合するということが示唆されていたが,プロスタマイド受容体は実はFP受容体蛋Wildtype&FPKOmouse夜間点眼3時間後*:p<0.01WTFPKOWTFPKOWTFPKOWTFPKOWTFPKO-100102030眼圧下降率(%)*****ラタノトラボビマトタフルウノプロストプロストプロストプロストプロストン図5FP受容体欠損マウスにおけるPG系薬剤の眼圧下降作用野生型マウスとFP受容体欠損マウスにPG関連薬を点眼3時間後の眼圧下降率をみるとFP受容体欠損マウスではまったく眼圧が下がらないことが判明した.……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………図6PG関連薬のFP受容体を介した眼圧下降作用毛様体のFP受容体からのシグナルでぶどう膜強膜路の房水流出抵抗が減少することが知られているが詳細は不明である.線維柱帯での作用も否定できない.白とFP受容体の産生過程でのスプライスバリアントであることが判明したため,結局はPG関連薬の結合には,すべて遺伝子としてFP遺伝子が必須であるということで決着している(図1).ウノプロストンはFP受容体以外にもMaxi-Kチャンネルを活性化させるという報告があるが,これが眼圧下降効果と関係があるかは不明である.房水動態からみたPG関連薬のおもな眼圧下降作用はぶどう膜強膜路の流出改善作用である.生化学的にはFP受容体を刺激すると,細胞内カルシウムが上昇しさまざまな細胞内シグナルが伝達されることがわかっているが,残念ながら眼圧下降につながる詳細な機序は不明である.唯一PG関連薬により細胞外マトリックスを分解するマトリックスメタロプロテアーゼの活性が上昇し,細胞外マトリックスを分解させる方向に傾き組織内の房水流出抵抗が低下するという説があるが,明確なinvivoでの証明はされていない.このような生化学的組織変化は少なくとも数日を要するため,PG関連薬による長期的に持続する眼圧下降効果を説明するには良い仮説であるが,投与後数時間でも眼圧下降することは説明できず,長年の課題である.ちなみにFP受容体は毛様体以外に線維柱帯にも発現しているため,房水流出抵抗を下げる短期的な機序が存在する可能性がある(図6).VIプロスト系とプロストン系の眼圧下降効果の特徴と相違プロスト系薬剤はプロストン系より眼圧下降効果が強い.理由としては,ウノプロストンは上記のようにプロスタノイド受容体結合能が弱いためと考えられる.薬剤の浸透率,受容体結合活性にもよるが,プロストン系はいずれもかなり濃度が低い.ただし,製剤濃度と眼圧下降効果や副作用の出現率は直接濃度とは関係ない.プロスト系の眼圧下降効果は,海外の原発開放隅角緑内障(POAG),高眼圧症(OH)で約25%であり,日本の正常眼圧緑内障(NTG)でも約20%の眼圧下降効果が得られ,最も眼圧下降効果が強い.ウノプロストンは2回点眼で濃度も高いが眼圧下降効果は劣る.国産のタフルプロスト以外は,すでに海外で長年使用されており,表1446あたらしい眼科Vol.29,No.4,2012(12)表1メタアナリシスによるPG関連薬眼圧下降効果比較文献著者誌名年ラタノプロスト=トラボプロスト=ビマトプロスト27vanderValkOphthalmology2005ラタノプロスト=トラボプロスト<ビマトプロスト42HolmstromSCurrMedResOpin2005ラタノプロスト=トラボプロスト=ビマトプロスト12LiNRClinExpOphthalmol2006ラタノプロスト<トラボプロスト=ビマトプロスト9DenisPCurrMedResOpin2007ラタノプロスト=トラボプロスト<ビマトプロスト8AptelFJGlaucoma2008ラタノプロスト=トラボプロスト=ビマトプロスト24BeanGWSurvOphthalmol2008過去の眼圧下降論文からのメタアナリシスの結果ではややビマトプロストの眼圧下降傾向が強いがほぼ同等であると考えられる.:ベースライン:チモロールPOAG,OHn=20:ドルゾラミド眼圧(mmHg)25232119171513:ラタノプロストに示すような多くのメタアナリシスではラタノプロスト,トラボプロスト,ビマトプロストがほぼ同様な眼圧下降効果を示すが,若干ビマトプロストの眼圧下降効果が強いようである3,4).ただ日本のNTGでの眼圧下降効果に差があるかは不明である.タフルプロストは海外データが少ないが,少なくともキサラタンRに非劣勢である.国内でのプロスト系薬剤の眼圧下降効果の比較も,15182124030609これまでの海外のデータを合わせて考えても,プロスト系4種の平均眼圧下降効果はほぼ同等であることが予想される.プロスト系薬剤は1日1回点眼にもかかわらず眼圧下降効果が持続し,昼夜を問わず眼圧下降効果に優れる薬剤である.たとえば,図7のb遮断薬のように日中の:ベースライン:ラタノプロスト:トラボプロスト:ビマトプロスト24時間図7PG関連薬の眼圧日内変動抑制効果ドルゾラミド,チモロール,ラタノプロスト点眼時の眼圧日内変動をベースライン眼圧変動とともに示す.ラタノプロスト・ドルゾラミドは1日を通して眼圧下降効果があるが,チモロールは日中に強く下降,夜間の下降は弱いことがわかる.(文献5より)45POAG&OH>21mmHg(n=44)4035平均眼圧下降率(%)3025202220眼圧(mmHg)181514105126912時間151821030ラタノプロストトラボプロストビマトプロスト眼圧下降と日内変動(座位)平均眼圧下降率の比較図8プロスト系薬剤の眼圧日内変動抑制効果と眼圧下降率の個人差プロスト系薬剤3剤とも十分日内変動抑制効果があることがわかる.また,平均的には25%前後の眼圧下降効果を各薬剤で示すが個体差がある.(文献6より)16(13)あたらしい眼科Vol.29,No.4,2012447眼圧下降効果が強く夜間の眼圧下降効果に劣る薬剤と比べ,昼夜間とも均等に眼圧を下げることが示されている5).また,図8左のような日内変動を示すPOAGの患者の眼圧は,PG関連薬により著明に抑制され日内変動が減少することが示されており6),外来受診時の日中しか眼圧測定するすべがないわれわれには安心して点眼を勧められる.また,4種の薬剤の眼圧下降効果は,お互いきわめて似た骨格であるにもかかわらず,同一眼でも眼圧下降効果が変わることが知られている.すべての薬剤と同様,薬理作用には個人差があることを知っておくことが重要である.VIIPG関連薬の副作用PG関連薬の副作用は,全身的副作用はないが,局所では結膜充血,メラニン色素の増加に関係する,すなわち虹彩色素沈着,睫毛の伸張・増加,眼瞼色素沈着が顕著である.また最近,上眼瞼溝深化(deepeningofuppereyelidsulcus:DUES)も報告が目立ってきている.PG関連薬のなかでウノプロストンの副作用は,プロスト系4種と比べて少ないことは間違いない.プロスト系4種のなかでは,ラタノプロストよりトラボプロスト,さらにビマトプロストのほうがより副作用が強いと海外で報100告されている.これらの副作用は,局所的に把握できる点で,b遮断薬などの全身的副作用を有する薬剤より処方しやすい.VIIIPG関連薬による充血充血は,特に点眼開始時に強く,継続投与で徐々に減少することは間違いないので,早期にPG関連薬に対しての治療から脱落させないためにも初回処方時に,必ず充血することと,点眼しているうちに目立たなくなる旨の患者指導が重要である.メタアナリシスの報告では,ラタノプロストよりトラボプロスト,ビマトプロストのほうが充血が強いことが知られている7)(図9).IXPG関連薬による色素関連副作用個人差が強いが睫毛の伸長・増加は特異的副作用である.睫毛についての副作用は逆に受け入れが良い場合もある.この副作用が強いビマトプロストは,睫毛増強剤として美容外科で使用されている.眼瞼色素沈着の副作用は,患者指導が重要であり,夜点眼といっても風呂や化粧落としの前に点眼させ,洗顔することでかなり防ぐことができる.夜点眼という指導のもと,就寝直前にさしてそのまま寝る場合や,点眼後よく拭くことで逆にすり込んでいる場合もしばしば遭遇するので,高度な色素100充血の発生頻度(%):ビマトプロスト:ラタノプロスト75755050252500123456789210111261.Netland2001,2.Parrish2003,3.Parmaksiz2006,4.Chen2006,5.Garcia-Feijoo2006,6.Konstas2007,7.Dubiner2001,8.Gandorfi2001,9.Noecker2003,10.Walters2004,11.Konstas2005,12.Dirks2006図9PG関連薬による充血の発生頻度:メタアナリシスラタノプロストより,トラボプロストさらにビマトプロストのほうが充血の発生頻度が高い.(文献7より):トラボプロスト:トラボプロスト:トラボプロスト:ラタノプロスト:ラタノプロスト:ラタノプロスト448あたらしい眼科Vol.29,No.4,2012(14)切り替え前1カ月後3カ月後6カ月後図10ラタノプロストからビマトプロストに切り替え後発生したDUESの症例キサラタンRを1年以上点眼している女性で,ルミガンRに切り替えたところDUESが発生した.しかし,この患者はDUESを自覚しているが,中止は希望していない.沈着がみられる場合には十分な点眼指導のもとコミュニケーションを取る必要がある.日本人での虹彩色素沈着は目立たないため問題とされない場合が多い.XPG関連薬と炎症ラタノプロスト導入のころ,黄斑浮腫の発生や増強という副作用が報告されていたが,白内障術中破.などの血液房水柵が破綻した例であり,現在ではあまり危惧されていないが,可能性はあるため特に侵襲の強い手術後の使用では留意したい.高眼圧眼で長年使用されているが,明らかなPG関連薬による炎症増強の報告はまったくなく,血液房水柵の破綻は認められない.ぶどう膜炎などがある場合でも積極的に使用されているのが現状である.XIPG関連薬とDUESDUESは2004年頃よりビマトプロスト点眼患者での症例報告が相次ぎ,いまやPG関連薬の共通副作用として知られるようになった.元来PGF2aは脂肪産生抑制効果があると報告があり,FP受容体刺激が強いPG関連薬としても同様な効果を有するために起こる副作用と考えられ,眼窩脂肪組織量が減少することが報告されている8,9).筆者らの報告ではラタノプロスト投与患者に対して,プロスペクティブに無作為にラタノプロスト継続群とビマトプロスト切り替え群に分けて半年経過を追い,DUES発症を写真で評価したところ,6割の患者にDUESがみられたが,実際に軽症例も多く特に患者が気にしなければあえて中止やラタノプロストに変更する必要はないと考える10).顔の印象の好みが人それぞれであるのと同様に,DUESを気に入る患者もいれば否定(15)的な患者も存在する.おそらくラタノプロストでも存在する副作用であるが,長期間かけて起こる現象であり,少なくともきちんとした報告はない.トラボプロストでもタフルプロストでも起こることは知られているが,きちんとした前向き試験での頻度は不明である.おわりに以上のようにPG関連薬はその眼圧下降効果から緑内障薬物治療のうえで欠くべからざる薬剤となっているが,局所副作用も多いので,外来では十分に点眼指導あるいは副作用についての指導が重要である.常にリスク,ベネフィットのバランスを考えながら処方することが重要である.■用語解説■スプライスバリアント:遺伝子が蛋白質に翻訳される過程でRNA前駆体中のイントロンを除去し,前後のエキソンを再結合する反応がスプライシングである.最終的に,残るエキソンには多様性があり,さまざまな成熟mRNAが生産される.その多様なmRNAをスプライシングバリアントとよぶ.それぞれ活性の異なる蛋白質を生産することもある.文献1)LiangY,WoodwardDF,GuzmanVMetal:IdentificationandpharmacologicalcharacterizationoftheprostaglandinFPreceptorandFPreceptorvariantcomplexes.BrJPharmacol154:1079-1093,20082)OtaT,AiharaM,NarumiyaSetal:TheeffectsofprostaglandinanaloguesonIOPinprostanoidFP-receptordeficientmice.InvestOphthalmolVisSci46:4159-4163,20053)AptelF,CucheratM,DenisP:Efficacyandtolerabilityofあたらしい眼科Vol.29,No.4,2012449prostaglandinanalogs:ameta-analysisofrandomizedcontrolledclinicaltrials.JGlaucoma17:667-673,20084)BeanGW,CamrasCB:Commerciallyavailableprostaglandinanalogsforthereductionofintraocularpressure:similaritiesanddifferences.SurvOphthalmol53(Suppl1):S69-S84,20085)OrzalesiN,RossettiL,InvernizziTetal:Effectoftimolol,latanoprost,anddorzolamideoncircadianIOPinglaucomaorocularhypertension.InvestOphthalmolVisSci41:2566-2573,20006)OrzalesiN,RossettiL,BottoliAetal:Comparisonoftheeffectsoflatanoprost,travoprost,andbimatoprostoncircadianintraocularpressureinpatientswithglaucomaorocularhypertension.Ophthalmology113:239-246,20067)HonrubiaF,Garcia-SanchezJ,PoloVetal:Conjunctivalhyperaemiawiththeuseoflatanoprostversusotherprostaglandinanaloguesinpatientswithocularhypertensionorglaucoma:ameta-analysisofrandomisedclinicaltrials.BrJOphthalmol93:316-321,20098)ParkJ,ChoHK,MoonJI:Changestouppereyelidorbitalfatfromuseoftopicalbimatoprost,travoprost,andlatanoprost.JpnJOphthalmol55:22-27,20119)JayaprakasamA,Ghazi-NouriS:Periorbitalfatatrophy─anunfamiliarsideeffectofprostaglandinanalogues.Orbit29:357-359,201010)AiharaM,ShiratoS,SakataR:Incidenceofdeepeningoftheuppereyelidsulcusafterswitchingfromlatanoprosttobimatoprost.JpnJOphthalmol55:600-604,2012450あたらしい眼科Vol.29,No.4,2012(16)