特集●眼鏡の最近の話題あたらしい眼科30(8):1061.1068,2013特集●眼鏡の最近の話題あたらしい眼科30(8):1061.1068,2013屈折検査と眼鏡処方ExaminationofRefractionandSpectaclePrescription佐野研二*はじめに屈折検査は眼科学・眼科診療の玄関口であり,これがきちんとできていないと,その後の学問的思考論理や診察のフローチャートがすべて狂ってしまう.いわば屈折異常とその的確な検出と矯正は,眼科における基本中の基本なのである.それにもかかわらず最近では,日頃の診療の忙しさに追われて屈折検査をしっかりと理解せず,視能訓練士などに丸投げしてしまう研修医もいるという.屈折異常は疾患で,眼鏡はその重要な矯正ツールであり,この検査には公的な医療費が投入されているのである.検査料が費やす時間に見合わないだとか,眼鏡店が眼鏡再処方の際にレンズの無料交換に応じてくれないだとか問題点ばかりを耳にする今日この頃であるが,市民の目の健康を守る眼科を生業とし,視能訓練士や看護師などの国家資格所持者の指導的立場を名乗るならば,研修医のみならず,ベテランの先生方も,今一度,屈折異常と眼鏡処方について復習をしていただきたい.本稿では,屈折検査の基礎と応用,すなわち眼鏡処方法について,できるだけシンプルに,またプラクティカルに解説する.I屈折検査1.問診日常の眼科診療において,眼鏡処方を希望して訪れる患者は,自分が屈折異常のためだけで見えないのだと思い込んでいるケースが多い.このような訴えの背後にも当然ながら重大な疾患が隠れている場合があるので,問診は非常に大切である.まず,これまでに屈折異常と言われたことがあるかどうか,眼鏡をかけたことがあるかどうかという既往歴を聞く.ある場合には,いつ,どこで診断されたのか,眼鏡を処方・作製したのはどこなのかを聞く.つぎに今回来院のきっかけについて,「いつ,どこで,どのように」視力(眼鏡視力)が低下したのかを聞き出す.「どのように視力低下したのか」のなかには,遠くが見えないのか,近くが見えないのか,どういう状況下で見えないのかという意味も含まれる.あとは,通常の眼科診療のときと同じように,糖尿病,高血圧などの疾患の既往を問診する.2.瞳孔間距離測定瞳孔間距離は,遠方を見ているときの両眼の瞳孔中心間の距離である.よく眼鏡処方の直前に測定されることがあるが,屈折検査の検眼レンズ枠を正確に選ぶため,検査の最初に行うクセをつけておくとよい.筆者のおすすめは,オートレフラクトメータに付属した瞳孔間距離計を用いる方法である.通常は他覚的屈折度数を測るときに一緒にプリントアウトされてくる.このときに気をつけることは,患者の頭が,正面視で,かつ,水平に固定されていることである.子供の場合,頭が動いてしまうことが多いが,右眼と左眼の測定の間で*KenjiSano:あすみが丘佐野眼科〔別刷請求先〕佐野研二:〒267-0066千葉市緑区あすみが丘1-1-8ビアブルック2Fあすみが丘佐野眼科0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(17)1061図1斜視のある場合の瞳孔間距離の測定斜視のある場合は,上記の方法にカバーテストを組み合わせ,片眼ずつ遮閉していない眼の瞳孔中心の目盛を読むとよい.斜視の有無にかかわらず,オートレフラクトメータ付属の瞳孔間距離計は便利である.頭が動くと正確な瞳孔間距離が測れなくなる.眼鏡を処方する場合には,最後にもう一度,メジャー法による測定を行い,再確認する.患者の下眼瞼にメジャーをあて,遠方を見てもらい,自分はちょっとしゃがむようにして測定するとよい.患者の右目は自分の左目で,患者の左目は自分の右目で目盛を読む.通常は患者の片眼に目盛のゼロを合わせて,もう片方の瞳孔中心までの距離を測る.近見瞳孔間距離は,患者の眼前30cmで対面し,今度は患者の左右両眼とも「自分の効き目」で目盛を読むようにしていただきたい.近見瞳孔間距離は,通常,遠見瞳孔間距離から3.4mm程度引いた値となる.斜視のある場合は,上記の方法にカバーテストを組み合わせ,片眼ずつ遮閉していない眼の瞳孔中心の目盛を読むとよい(図1).通常の片眼遮閉の視力検査では,検眼レンズ枠は瞳孔間距離そのままのものを選んでよいが,後述する眼鏡処方時においては,両眼開放で行うのが好ましく,調節力が十分残存している若年者から中年では瞳孔間距離.2mmを,高齢者の遠用眼鏡では瞳孔間距離そのものを用いる.当然のことながら検眼レンズ枠はさまざまな瞳1062あたらしい眼科Vol.30,No.8,2013図2検眼レンズ枠瞳孔間距離の可変の枠もあるが,重く距離がずれやすい.筆者は瞳孔間距離が2mmずつ異なるものを複数用意し,最も測定値と近いものを使用するようにしている.孔間距離のものを用意しておく(図2).●ポイント:「オートレフラクトメータ付属の瞳孔間距離計の利用」オートレフラクトメータに付属した瞳孔間距離計をもっと活用するべきである.測定時に気をつけることは,患者の頭が,正面視で,かつ,水平に固定されていることである.頭が動いてしまうと正確な値が測れなくなることは言うまでもない.3.他覚的屈折検査通常,オートレフラクトメータを使用する.患者にはリラックスして視標を固視してもらう.とはいえ,遠方視のときには交感神経が優位に関与すると言われているので1,2),よくある「ボーっと遠くを見てください」のような掛け声は不要で,視標をしっかり固視させて構わない.測定には入射瞳中心直径3mmが必要なので眼瞼が邪魔する場合は,しっかり目をあけてもらい,それでも測れない場合は,検者が瞼をそっと指で支えて測る.睫毛(18)が入ると乱視が強く出ることがあり,注意が必要である.また,涙液層の光学的影響は大きく,角膜がしっかりと濡れていないと正確に測れない.頻繁な瞬きは我慢させるべきであるが,最低限の瞬きは確保させる.最低3回は測定し,ばらつきがみられるときには再測定する.3歳未満の幼児には手持ち式のオートレフラクトメータが有効である.検影法も最近はすっかり行われなくなったが,幼児には効果的な場合がある.一般的なオートレフラクトメータは内部視標型のため,雲霧装置が付属しているとはいえ,測定値には基本的に調節が介入する.いわゆる器械近視である.また,オートレフラクトメータを暗室に設置している場合には,夜間近視による調節が介入する.年齢にもよるが,一般に測定値は0.50.1.50D近視側に出ると考えておくとよい.4.自覚的屈折検査a.球面レンズ度数の調整オートレフラクトメータで得られた他覚的屈折度数に,円柱度数は+0.50D加え,球面度数は成人であれば+0.75D,若年者であれば+1.50D加えたレンズを乱視軸に合わせて検眼レンズ枠に入れる.球面度数を調整して,最高視力が得られる最もプラス側の球面度数を求める.この視力検査を行っているとき,患者の性格によって,答え方に差が出るのはよく経験するところだと思う.直前までスラスラ答えていたのに,視力表のつぎの段に移ったとたんにわからないと答えることを許してはならない.瞬きさせて,生理的な涙液層を保持させながら,「なんとなく見えませんか?」と声掛けしながら検査を進める.b.乱視軸と乱視度数の微調整最高視力が得られる最もプラス側の球面度数を求めたら,つぎに,他覚的屈折検査で得られた上記の円柱レンズの乱視軸をクロスシリンダーの+軸と.軸で挟み,クロスシリンダーを回転させて見えやすいほうへ10°ずつずらし,見え方に差がないところで止めて乱視軸を決定する.乱視軸の微調整を行った後,円柱レンズの軸の方向にクロスシリンダーの軸を合わせて回転させ,見え方を比較し,差がなくなった円柱度数を乱視度数とする.(19)図3クロスシリンダー検査用視標クロスシリンダーを用いて見え方を二者択一させる場合には視力検査表によく付属しているこの視標を用いるとよい.クロスシリンダーを用いた乱視矯正は,最小錯乱円の大きさを小さくしていく作業である.最小錯乱円が小さくなると視標も左から右のようにはっきりと認識される.検査中,円柱レンズを,たとえば.0.5D加える際には,球面度数には,半分の+0.25D加えなければならない.最小錯乱円を壊してしまうからである.その後,再び球面度数の調整を行って自覚的屈折度数を決定する.クロスシリンダーを用いた乱視矯正は,最小錯乱円の大きさを小さくしていく作業であるから,ここで円柱度数を,たとえば.0.5D加える際には,球面度数には,半分の+0.25D加えなければならない.最小錯乱円を壊してしまうからである.クロスシリンダーを用いて見え方を二者択一させる場合には視力検査表によく付属している図3の視標を用いるとよい.c.得られた自覚的屈折度数の再確認と球面レンズ度数の再調整最終的に,自覚的屈折度数が上手く測定されていれば乱視表(図4)は均一にクリアに見えているはずである.上手く屈折度数が得られたかどうかを,もう一度クロスシリンダーを用いて確認してみよう.180°,45°,90°,135°においてクロスシリンダーを反転し,どちらが良くみえるか尋ねてみよう.すべての方向でボケ方が同じ場合には残余乱視がないと判断してよい.乱視がしっかりと矯正され,球面レンズ度数も的確に選択されたとき,すなわち,屈折異常が完全矯正されている場合,十字の視標を見せたときにクロスシリンダーのマイナス軸を垂直方向と水平方向にあてると,視標は縦軸も横軸も同様にボケる(図5).クロスシリンダーのあたらしい眼科Vol.30,No.8,20131063図4乱視表最終的に,自覚的屈折度数が上手く測定されていれば乱視表は均一にクリアに見えているはずである.上手く屈折度数が得られたかどうかを,もう一度クロスシリンダーを用いて確認してみよう.180°,45°,90°,135°においてクロスシリンダーを反転し,どちらが良く見えるか尋ねてみよう.すべての方向でボケ方が同じ場合には残余乱視がないと判断してよい.マイナス軸に合わせて視標の軸がはっきりする場合は低矯正,プラス軸に合わせて視標の軸がはっきりする場合には過矯正である.レッドグリーンテストと合わせて行い,球面レンズ度数の再調整を行う.●ポイント:「自覚的屈折検査」自覚的屈折検査を行っているとき,患者の性格によって答え方に差が出るのは,よく経験するところである.直前までスラスラ答えていたのに,視力表のつぎの段に移ったとたんにわからないと答えることを許してはならない.瞬きをさせ,涙液層を保持させ,励ましの声掛けをしながら検査を進める.II眼鏡処方1.両眼同時雲霧法のすすめさて,本稿のメインイベント,眼鏡処方度数の決定方法について述べる.ここでは梶田の両眼同時雲霧法3)を紹介する.前述した自覚的屈折検査は,あくまでも矯正視力がどこまで出るのか,その矯正のために屈折度数は1064あたらしい眼科Vol.30,No.8,2013図5十字視標の利用(図は偏光レンズ用視標)視力表に付属している十字の視標(なければ作る)を利用しよう.乱視がしっかりと矯正され,球面レンズ度数も的確に選択されたとき,すなわち,屈折異常が完全矯正されている場合,十字の視標を見せたときにクロスシリンダーのマイナス軸を垂直方向と水平方向にあてると,視標は縦軸も横軸も同様にボケる(右図).クロスシリンダーのマイナス軸に合わせて視標の軸がはっきりする場合は低矯正,プラス軸に合わせて視標の軸がはっきりする場合は過矯正である.どの程度必要なのかを調べるもので,疾患の発見に関わる重要な眼科学的検査であるが,そこで発見された屈折異常の重要な矯正手段である眼鏡の屈折度数を決めるためには,もう一仕事必要である.両眼同時雲霧法のメリットと効果ヒトは毛様体筋を使って調節することによってピントを合わせて物を見ている.毛様体筋は常に緊張状態にあり,ボーッとしているときには正視眼では眼前1mくらいにピントを合わせていると言われている(図6).この調節安静位を基点に遠方や近方にフォーカスを合わせていると考えられているが,この程度にはかなりの個人差がある(図7)4).自覚的屈折検査では片眼で検査を行っていたので,両眼視による遠近感が得られなくなる.そこで,立体視ができる両眼で検査をすれば,遠方の視力検査表にぴったりピントを合わせた,片眼で検査したときより調節を取り除いたプラス側の球面度数を探すことができるわけである.図8,9は,近視眼34眼に対して,年齢別,屈折度数別の自覚的屈折検査の球面度数から両眼同時雲霧法で,どれだけ球面度数がプラス側へ戻ったかを表したグラフである.個人差もあるが,年齢に相関は認められず,自覚的屈折度数とは弱い相関をみせながら0.45±0.24Dの戻りがみられた.所によれば,近視眼81眼において調節麻痺剤の1%サイプレジンRによって0.34±0.37Dの戻りがあるとしており5),両眼(20)図6調節安静位ヒトは毛様体筋を使って調節することによってピントを合わせて物を見ている.毛様体筋は常に緊張状態にあり,ボーッとしているときには正視眼では眼前1mくらい(実線)にピントを合わせていると言われている.この調節安静位を基点に遠方(点線)や近方にフォーカスを合わせていると考えられている.私たちは,調節安静位の屈折状態を測定し,それを無限遠に合うように矯正してはいないだろうか?硝子体黄斑視神経視神経乳頭網膜毛様体虹彩角膜水晶体瞳孔前房Zinn小帯強膜脈絡膜2.01.251.751.511.25相関係数=0.0683相関なし(p=0.70095)年間屈折度変化率(D/年)戻り度数(D)1.00.750.750.50.2500.50.25-0.25-0.50-0.75+10-1-2-3-4-5-6-7-80102030405060Darkfocus(D)年齢(歳)図7遠視眼における屈折度変化率とDarkfocus図8両眼同時雲霧法における年齢別球面度数の戻り三輪隆:調節安静位の意義.眼科38:45-52,1996から転年齢別に別の自覚的屈折検査の球面度数から両眼同時雲霧法載.三輪は無調節刺激時(暗黒状態)におけるマイナス方向へで,どれだけ球面度数がプラス側へ戻ったかを表したグラフでの屈折度数の変化(darkfocus)を調節安静位とした.グラフある.個人差もあるが,年齢に相関はなく,0.45±0.24D戻りの横軸がdarkfocusであるが,かなり個人差があるのがわかがみられた.る.1.25相関係数=0.383相関あり(p=0.0253)同時雲霧法の効果はこれに匹敵する.1戻り度数(D)0.750.52.所持眼鏡の検査すでに眼鏡を所持している患者の場合は,レンズメータを使って度数を調べておく.合わせて,その眼鏡を装用していたときの遠方および近方の見え方についてインタビューしておくと眼鏡処方時に役立つ.レンズメータでは,屈折度数の他,光学中心間距離も測定する.通常はその眼鏡の処方時に指定された瞳孔間距離に相当するが,前処方者が意図的にずらしてある場合もある.光学中心間距離は,眼鏡をレンズメータに映し出されたターゲットが中心に来るようにセットして,印点レバーでマーキングして測る.マーキングした眼鏡(21)0.2500-1-2-3-4-5自覚的球面屈折度数(D)図9両眼同時雲霧法における自覚的屈折度数別球面度数の戻り自覚的屈折度数別に自覚的屈折検査の球面度数から両眼同時雲霧法で,どれだけ球面度数がプラス側へ戻ったかを表したグラフである.自覚的屈折度数には軽い相関を認め,0.45±0.24D戻りがみられた.あたらしい眼科Vol.30,No.8,20131065.新しいレンズを正しい.スタート.前のレンズを拭き取る位置にセットする前のレンズ・自覚的屈折度数に+2.50D加える.・視力0.5が見えるまで両眼に.0.50Dずつ加える.・左右のバランスを0.25Dきざみで整える.・両眼に.0.25Dずつ加えて最高矯正視力が得られる度数を決定する.図10両眼同時雲霧法の実際(梶田の方法・改)を患者にかけてもらうと,眼鏡のフィッティング状態も確認することができる.3.眼鏡処方度数の決定両眼同時霧雲法(梶田の方法3)・改)の実際①自覚的屈折検査で得られた球面度数と円柱度数に,球面度数+2.50Dを加えたレンズを検眼レンズ枠にセットする(梶田の方法では+3.00D加えるとしている3)が,結果に大きな差が出ないため,筆者は+2.50Dから始めている)(図10).②霧雲時間は設けず,両眼解放の状態でレンズ交換法(図11,12)を用いて,両眼視力が0.5に達するまで.0.50Dずつ加える(後述するフリッパーを用いれば,検査時間を短縮できる).③ここで,左右のバランスをとる.見にくいほうの眼に.0.25D加え,同じように見えるようになったら,再び両眼に.0.25Dずつ加えて両眼最高視力を示す屈折度1066あたらしい眼科Vol.30,No.8,2013新しいレンズ図11レンズ交換法(マイナスレンズの場合).スタート.前のレンズを設置する前のレンズ前のレンズ新しいレンズ.新しいレンズを正しい.新しいレンズ前置位置にセットする新しい新しいレンズ前のレンズレンズ前のレンズ.前のレンズを抜き取る.前のレンズを抜き取る新しいレンズ新しいレンズ図12レンズ交換法(プラスレンズの場合)数を探す.④両眼解放のレッドグリーンテストを行い,緑のほうが勝っていないことを確認する.●ポイント:「両眼解放状態での屈折検査」眼鏡度数を決定するときには,両眼同時雲霧法に代表されるような両眼解放状態での屈折検査を行う.両眼解放して検査をすれば,片眼で検査したときよりも不必要な調節を除いた,よりプラス側の球面度数を探すことができる.●ポイント:「フリッパーの利用」フリッパー(図13)は,両眼解放状態での視力検査に重宝である.両眼同時雲霧法では,視力0.5の視標が見(22)図13フリッパー(±0.50D)両眼に±0.50Dの球面度数が入っていて,球面レンズの両眼同時の調整が可能である.両眼同時雲霧法では検査時間の短縮にとても有効である.しかし,現在は市販されていないとのこと.鯖江の眼鏡製作所に特注したら6,000円くらいで作ってくれた.VD=(0.1×-1.50D)VS=(0.1×-2.00D)VD=(0.2×-2.00D)VS=(0.3×-2.50D)VD=(0.5×-2.50D)VS=(0.5×-3.00D)図14両眼同時雲霧法におけるフリッパーの利用両眼同時雲霧法では,視力0.5の視標が見えるまで左右の検眼枠に.0.50Dずつ球面レンズ度数を加えていく.フリッパーで.0.50D加えて,まだ0.5が見えなければ,球面レンズは一気に.1.00D加えたものに交換する.えるまで左右の検眼枠に.0.50Dずつ球面レンズ度数を加えていくが,フリッパーで.0.50D加えて,まだ0.5が見えなければ,検眼枠の球面レンズは一気に.1.00D加えたものに交換できる(図14).4.装用テスト両眼解放状態で行ったレッドグリーンテストで緑のほうが勝っていなかったからといって過矯正でないとは言い切れず,人によっては,見え過ぎて疲れるという患者もいる.また,処方せんを持って眼鏡店で作製してもらうためには,時間もお金もかかる.通常,眼鏡店は1回はレンズ変更してくれるが,最近流行の激安店ではそうもいかない.患者からのクレームを減らすためにも装用テストは必須である.a.装用テストの実際最低10分はしてもらう.職業柄,見え方に過敏な人もいる.各々のケースによって時間と誠意を提供しなくては満足は得られず,眼科を生業とする者として,ここは割り切らなくてはならない.装用テストでは,決定度数のレンズをセットした検眼レンズ枠を掛けさせて,通常,近方,中間距離,遠方と見てもらう.筆者は,近方視のテストとしては新聞を,中間距離には壁に貼ったポスターを,遠方視の確認のためには窓の外の看板を見てもらうようにしている.患者には実際の眼鏡より,検眼レンズ枠のほうが重く,掛け心地が良くないことを,あらかじめ説明しておくとよい.見え方に満足できなかった場合には,患者の訴えに耳を傾け,再びレンズ度数の調整を行う.図15はVistech社のvisioncontrasttestsystemである.空間周波数は上の列から,徐々に高く変化し,横列は左から右の視標へ徐々に縞のコントラストが低くなっている.白内障など眼疾患があって,視力表はよく見えるが見え方が悪いと訴える患者の最終的眼鏡度数決定に利用できる.(23)あたらしい眼科Vol.30,No.8,20131067図15コントラスト感度評価用視標図はVistech社のvisioncontrasttestsystem.空間周波数は上の列から,徐々に高く変化し,横列は左から右の視標へ徐々に縞のコントラストが低くなっている.眼疾患がある場合の眼鏡度数決定に利用できる.b.装用テストでわかる不等像視の存在検査中にあまり問題のなかった不同視の患者が,装用テストを行うと不等像視を訴えることがある.若年者では許容範囲が広く,3.5D程度までいけることがあるが,一般的には快適に装用できる屈折度数差はご承知のとおり2Dくらいまでといわれている.患者が見え方を許容できない場合には,左右の度数差を減らす.●ポイント:「円柱レンズによる不等像視」不等像視は円柱レンズによっても起きる.左右で乱視軸がほぼ同じであれば問題はないが,ずれているときには円柱度数を弱めながら,ときには左右の軸を近づけるといった工夫が必要となる.おわりに眼鏡処方せんには,よく「眼鏡が出来上がったら眼科へお持ちください」といった文言が書かれていることがある.出来上がった眼鏡のフィッティングに問題がある場合,自分で調整できれば良いが,大抵の場合は眼鏡店に調整をお願いしなければならない.その際に「角膜レンズ頂点間距離が長すぎるので」とか「右のレンズの光学中心が上にずれている」など,具体的に指摘するのがよい.眼鏡が出来上がってから,再びレンズ度数を変えなければいけない場合もある.こうした屈折検査・眼鏡処方は眼科医にとって重要ではあるが,つらい作業でもあり,おまけに保険点数も低い.レンズ交換にかかる費用は眼鏡店にお願いすれば一度くらいは換えてもらえることが多いが,この不況の折,競争にさらされている眼鏡店側もまた経営上苦しいものがある.眼鏡店に対して,取り換えてもらって当然といった態度は慎むべきであろう.特に最近登場した激安チェーン店では換えてもらえないこともあり,患者の負担となる場合もある.いざというときのために,患者と眼鏡店とのコミュニケーションをきちんととることが重要である.文献1)MosesRA:Accomodation.Adler’sPhysiologyoftheEye.Clinicalapplication.6thEdition.p298-319,Ed.MosesRA,TheCVMosbyCo,StLouis,19752)所敬:調節.屈折異常とその矯正(改定第5版),p211232,金原出版,20093)梶田雅義:処方度数決定のための視力の測り方(2).あたらしい眼科26:785-786,20094)三輪隆:調節安静位の意義.眼科38:45-52,19965)所敬:屈折と調節の境界.眼紀40:90-96,19891068あたらしい眼科Vol.30,No.8,2013(24)