特集●黄斑疾患診療トピックスあたらしい眼科30(2):165.176,2013特集●黄斑疾患診療トピックスあたらしい眼科30(2):165.176,2013強度近視の眼底イメージングImagingofPosteriorFundusinEyeswithPathologicMyopia大野京子*島田典明*はじめに光干渉断層計(OCT)を用いて群馬大学の岸教授らが,病的近視眼では黄斑円孔網膜.離になる前にすでに網膜分離がみられることを報告1)したのが,ついこの間のような気がするが,実はもう今から10年以上前になる.この,病的近視の網膜分離はOCTがその病態解明や治療法の確立に最も寄与した病態の一つであると言っても過言ではないほどである.その後,この網膜分離は,後部強膜ぶどう腫を伴う強度近視眼の約9%にみられること2),検眼鏡的所見から視力障害の原因を同定できない症例の多くがこの網膜分離によるものであることなどが明らかになった.これらの発見を機に,網膜分離に対する硝子体手術が行われるようになり,多数の患者に福音をもたらした.その後,OCTの画像解像度の向上により,分離網膜内の,より微細な所見を捉えることができるようになり,本病態に対する理解がますます進んできた.さらに最近のenhanceddepthimaging(EDI)-OCTやsweptsourceOCTを用いると,網脈絡膜の菲薄化した強度近視眼では,強膜の全層を観察することが可能である.これらを用いて,dome-shapedmaculaという特殊な強膜形状と,それにより生じる黄斑部病変が明らかになるとともに,病的近視眼の強膜内および強膜後方の構造までをも生体眼で観察可能となった.以上により,今や眼底イメージングにより,強度近視眼ではこれまでわれわれがまったく観察できなかった眼球後方にまで及ぶ深部構造の観察が可能となった.本稿ではおもにOCTを主体に,強度近視眼に対する眼底イメージングの進歩によりもたらされた知見を解説する.I近視性牽引黄斑症(myopictractionmaculopathy:MTM)MTMは,強度近視眼での牽引に伴った黄斑部網膜障害を示す総称である.Panozzoらによれば,近視性牽引黄斑症の診断は病的近視眼底に加えて,表1に示した網膜前の牽引か牽引に伴う網膜の障害の計6つのうち,いずれかを認めることによる3).網膜分離だけではなく,黄斑前膜や硝子体黄斑牽引,分層黄斑円孔,網膜.離も範疇に入れることで,黄斑円孔や黄斑円孔網膜.離の前駆病変として位置づけされ,黄斑円孔や黄斑円孔網膜.離への進行予防の治療にスムーズにつなげることができる(図1).なお,全層黄斑円孔や黄斑円孔網膜.離は全表1近視性牽引黄斑症(MTM)の診断基準1.網膜前の牽引1.黄斑前膜2.硝子体黄斑牽引2.牽引に伴う黄斑部網膜の障害1.網膜の肥厚(中心窩厚>200μm)2.網膜分離3.網膜.離4.分層黄斑円孔診断は病的近視眼底に加えて,上記の計6項目のうち,いずれかを認めることによる.*KyokoOhno-Matsui&NoriakiShimada:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野〔別刷請求先〕大野京子:〒113-8519東京都文京区湯島1-5-45東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(31)165図1近視性牽引黄斑症(MTM)のOCT像これらすべてが全層黄斑円孔や黄斑円孔網膜.離の前駆病変と考えられる.左上:網膜分離が中心窩とその周囲に薄くみられる症例.左下:中心窩に内層分層黄斑円孔を伴う症例.右上:網膜前膜による中心窩癒着牽引を認める症例.右下:内層分層黄斑円孔に網膜.離を合併した症例.網膜分離(retinoschisis)の範囲による分類S0分離なしS1分離が中心窩外のみS2分離が中心窩内のみS3分離が中心窩含むが黄斑全体を含まないS4分離が黄斑全体に広がっている合併病変網膜前膜硝子体黄斑牽引黄斑内層分層円孔網膜.離(M)(V)(L)(D)網膜分離の範囲のシェーマS0S1S2S3S4黄斑部(直径6mm)中心窩(直径1.5mm)網膜分離層網膜裂孔を伴った病態であり,MTMという名称は通常用いない.筆者らは,網膜分離の有無または範囲と合併病変の有無によりMTMを分類している(図2)4).まず,網膜分離の有無または範囲によって,S0(網膜分離なし),S1(中心窩以外の網膜分離),S2(中心窩内の網膜分離),S3(S2+S3でS4に至ってないもの),S4(黄斑全域の網膜分離)に分類し,黄斑前膜,硝子体黄斑牽引,黄斑部網膜.離,黄斑内層分層円孔の有無によりさらに細かく分類している.黄斑部網膜.離についてはさらに,166あたらしい眼科Vol.30,No.2,2013図2近視性牽引黄斑症(MTM)の分類網膜分離の有無または範囲によって,S0(網膜分離なし),S1(中心窩以外の網膜分離),S2(中心窩内の網膜分離),S3(S2+S3でS4に至っていないもの),S4(黄斑全域の網膜分離)に分類し,黄斑前膜,硝子体黄斑牽引,黄斑部網膜.離,黄斑内層分層円孔の有無によりさらに細かく分類する.(文献4より)網膜分離のみの状態から,黄斑外層分層円孔を伴って黄斑部網膜.離に進行する4つのステージに分類している(図3)5).まず,黄斑部網膜分離のみの状態では網膜分離層の外側の網膜外層に異常はなく,つぎに,黄斑部の網膜外層の乱れあるいはわずかな上昇が認められる(stage1).つぎに,同部位に網膜外層の分層円孔が生じ(stage2),その後,この分層円孔が上昇したように見え,網膜分離と.離は共存する(stage3).最後に,分層円孔の端の網膜外層が網膜内層にくっついて見える状態となる(stage4).これらの分類により,多彩な(32)図3近視性牽引黄斑症(MTM)における網膜.離の進行過程(すべて非同一症例)左上:ステージ0.網膜分離のみの段階.視細胞内節外節接合部(IS/OS)の障害も明らかでない.左下:ステージ1.中心窩のIS/OSに不整があり,反射が上昇している.中上:同じくステージ1.IS/OSが牽引により網膜内方へやや上昇している.同様にIS/OSの反射が上昇している.中下:ステージ2.IS/OSに亀裂が生じ(外層分層黄斑円孔)ている.右上:ステージ2.この分層円孔が上昇し,網膜分離と.離は共存する.右下:ステージ4.分層円孔の端の網膜外層が網膜内層にくっついて見える状態となり,元の分層円孔の部位はよくわからなくなる.MTMの病変の程度や予後がなんとなく理解できるようになる.治療は現時点では硝子体切除に加えて,内境界膜.離が広く行われ,おおむね良好な成績が報告されているが,術後の合併症の黄斑円孔や黄斑円孔網膜.離を予防する目的で,網膜.離により中心窩の残存網膜が菲薄化したものに対しては,中心窩の内境界膜は残して内境界膜.離と硝子体切除を行い良好な経過を得ている6).さらに,オクリプラスミン7)をはじめとする酵素的硝子体融解薬の登場により,今後はMTMへのさらに安全で効果的な治療への期待ができる.将来的にはOCTのさらなる普及やこのような治療の進歩により,黄斑円孔網膜.離の根絶を実現することができるかもしれない.IIDome.shapedmacula(DSM)DSMはGaucherら8)により初めて報告された病態で,強度近視眼の黄斑部がドーム状に前方に突出した状態であり,OCTを用いて140眼中15眼に認めたとしている(図4).彼らの報告ではフルオレセイン蛍光眼底造影図4Dome.shapedmacula(DSM)のOCT所見中心窩下の強膜が局所的に肥厚し,前方に盛り上がっている.中心窩下には脈絡膜新生血管も認められる.(FA)で全例に網膜色素上皮(RPE)の萎縮性変化を認め,うち半数に色素漏出,さらに15眼中10眼ではDSMの部位に一致して漿液性網膜.離を認めたとした.なぜ黄斑部がドーム状に突出するかは不明であったが,Imamuraら9)は,EDI-OCTを用いてDSMの症例を観察し,DSMを有する強度近視眼では中心窩下強膜厚が平均570±221μmと,DSMのない強度近視眼の平均281±85μmに比較し有意に肥厚していることから,DSMは黄斑部の強膜の局所的肥厚であり,従来のCurtinのぶどう腫分類のいずれにも属さない,より複雑な眼球形状であると述べた.ごく最近Ellabbanら10)(33)あたらしい眼科Vol.30,No.2,2013167図5Dome.shapedmacula(DSM)の三次元OCT画像眼底写真で示されたスキャン範囲(緑の四角)では,DSMによる強膜の突出は黄斑を通る垂直スキャン(左下)で,水平スキャン(右下)よりも著明である.OCT画像を三次元化構築したマップでも,突出は黄斑を通って水平のridge状の様相を呈している.(文献10より)ABCDE図7Dome.shapedmacula(DSM)の症例のOCT所見網膜分離がDSM周囲で止まっている.中心窩下には脈絡膜新生血管もみられる.図6Dome.shapedmacula(DSM)の症例の3DMRI所見A:眼底では黄斑の上下に限局性萎縮病巣が多数散在している.B:同症例の3DMRI画像を眼球後方からみた図.眼球後部に鼻側,および黄斑上方,黄斑下方の3つのprotrusionが存在している.C:眼球3DMRI画像を下から見た図.D:眼球3DMRI画像を鼻側から見た図.黄斑の上下に2つの突出があるのがわかる.E:同症例のOCT画像はDSMを示す.(文献11より)168あたらしい眼科Vol.30,No.2,2013(34)は,DSMを有する51眼の強度近視眼をsweptsourceOCTで詳細に解析を行ったところ,垂直および水平の両方のスキャンでドーム状に黄斑が突出しているDSMは9眼のみであったが,残り42眼では中心窩を含む垂直方向のスキャンのみで突出しているridge状の突出であった.Ridge状の突出の上下に2つの後部強膜ぶどう腫があり,ridgeは2つのぶどう腫の境界に位置していた(図5).これは筆者ら11)が3DMRI(magneticresonanceimaging)を用いて報告した,DSM症例の眼球形状(図6)を支持する所見であると述べている.Ellabbanら10)は,51眼のDSM症例の黄斑合併症についても調べ,黄斑分離症はあっても中心窩付近で分離が止まっていることが多く,DSMが自然の黄斑バックルのように網膜分離症の進行に対してprotectiveに働いているのではないかとしている(図7).さらに特筆すべきはDSMの41%に脈絡膜血管新生(CNV)を合併していたことであ図8黄斑部intrachoroidalcavitation(ICC)のOCT画像左上の眼底写真では,黄斑の上下に2カ所の小型の限局性萎縮病変を認める(矢印).下方の限局性萎縮の水平スキャンを右上(A),中左(B),中右(C)に示す.OCTでは限局性病変の周囲にchoroidalcavitation(矢頭)がみられ,網膜が嵌頓している(白矢印).ICCに近接して強膜内を走行する血管の陰影がみられる(黒矢印).左下の眼底写真では,黄斑の上下,耳側に3カ所の限局性萎縮病変がみられる(矢印).萎縮部位のOCTスキャン(右下)では,ICC部位(矢頭間)では強膜がやや後方に偏位しており,そこに向かって網膜が嵌頓している(矢印).(文献17より)る.筆者らの症例でもDSMにCNVを合併することがしばしばあり,漿液性網膜.離に加え,注意すべき黄斑合併症と思われる.CNVが続発する機序については検討を要するが,傾斜乳頭症候群のぶどう腫縁にも同様にCNVが生じることがあり,ドーム状に突出した強膜により中心窩網膜が圧迫され,慢性的な網膜色素上皮障害が生じることが要因かもしれない.いずれにしても,高い発生率を考えると,DSMの症例には常にCNVの発生に注意して経過をみる必要があると考えられる.IIIMacularICCICCは従来,病的近視眼の視神経乳頭下方にみられる黄色.オレンジ色の三日月状病変であり,OCTを用いてFreundら12)が当初,網膜色素上皮.離として報告した病態である.その後,本病変が脈絡膜内のcavityであることが,舘野ら13),Toranzoら14)の研究から明ら(35)あたらしい眼科Vol.30,No.2,2013169かとなり,intrachoroidalcavitation(ICC)と名称が変わった.Spaideら15)は,ICCの部位では強膜のカーブが後方に偏位しており,それに伴いICCができていること,ICCのエッジにはしばしば網膜欠損を伴い,欠損部位を通じて硝子体腔とICCが交通していることを明らかにした.またごく最近,台湾のYehら16)は122眼のICCを対象に詳細な解析を行い,ICCが強度近視だけでなく弱度近視や,まれに正視,遠視にもみられ,強度近視に限定的な病変ではなく,加齢に伴う変性所見であるかもしれないと述べている.病理組織学的には,コーヌスと限局性病変は類似した病態である.筆者らは,病的近視患者の黄斑部をswept図9黄斑ICC周囲に網膜分離がみられる症例左上:眼底写真では黄斑耳側と黄斑耳下側に複数の限局性萎縮病変がみられる.中上:限局性病変の周囲に比較して,乳頭周囲のICC様にオレンジ色色調を有する病変が観察される(矢頭).右上:フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)では限局性病変周囲にみられたオレンジ色の範囲が造影早期には低蛍光を,造影後期(2段目左)には過蛍光を示す.OCT所見では,ICCの範囲(矢頭間)では強膜が後方に偏位しており,そこに網膜が嵌頓している(白矢印).嵌頓網膜の周囲に網膜分離がみられる.ICCの近傍には強膜内を走行する血管が観察される(黄矢印).下段:3D化したOCT画像では,ICCは中心窩様の陥凹としてみられ(矢印),偽中心窩様所見を示す.(文献17より)170あたらしい眼科Vol.30,No.2,2013(36)sourceOCTを用いてスキャンした結果,限局性萎縮病変の周囲に,乳頭周囲のICCと同様の所見がみられることを報告した(図8)17).限局性萎縮病変を有する強度近視眼56眼において萎縮周囲のOCTを施行したところ,31眼(55.4%)に強膜が後方に突出するICC特有の所見がみられた.うち3眼では硝子体腔とICCとの間に直接交通がみられた.また,ICC部位に網膜が嵌頓することにより,ICC周囲の網膜に分離症が高頻度にみられた(図9).以前筆者らは,網膜分離症は萎縮が高度な眼に多いことを報告した2)が,その理由の一つとして,このmacularICC部位への網膜の嵌頓があるのかもしれない.さらに,macularICCのすぐ近傍を強膜内の太い血管が走行していることが多かった.以上から,macularICCのできる原因として,限局性萎縮病変に加えて,その周囲の強膜内を太い血管が走行しており,ただでさえ薄い強膜がさらに構造的に脆弱化していると思われる部位に内圧がかかって後方に強膜が突出してしまうのではないかと考えられる.IV強膜全層の観察網脈絡膜の菲薄化した強度近視眼では,sweptsourceOCTを用いると強膜の全層を観察することが可能である(図10).さらに強膜の全層に加え,強膜外側にある上強膜またはTenon.,さらに眼窩脂肪まで観察可能である.Marukoら18)は,58眼の強度近視眼(平均眼軸長29.0mm)をsweptsourceOCTで精査し,全例で強膜全層を観察できたとした.彼らの報告では,中心窩下強膜厚は平均335±130μmであった.筆者らは,強度近視眼488眼(平均年齢57.1歳,平均屈折度.13.3D,平均眼軸長29.9mm)をsweptsourceOCTでスキャンしたところ,278眼(57.0%)で強膜の全層を観察できた19).病的近視眼の眼球後部の強膜の形状は,乳頭傾斜型,対称型,非対称型,不規則型の4つの形状に分けられ(図11),不規則型を有する症例では他の強膜形状に比べて有意に年齢が高く,眼軸長が長く,また強膜厚が有意に薄かった.中心窩下強膜厚は全症例の平均227.9±82.0μmであったが,不規則型では平均189.1±60.9μmで図10SweptsourceOCTを用いた病的近視眼における強膜全層の観察BはAの,DはCのシェーマを示す.シェーマではオレンジ色は強膜,茶色は上強膜もしくはTenon.,黄色は眼窩脂肪を示す.E,Fでは強膜と上強膜の間を走行する血管の断面(赤矢頭)も観察される.Tenon.は,いくつかの細かい線維の束に分かれて眼窩脂肪の中に混じっていく(矢印).(文献19より)ACEBDF(37)あたらしい眼科Vol.30,No.2,2013171ABCDEFHGABCDEFHG図11正視眼(A~D)と病的近視眼(E~H)における強膜のカーブ正視眼の網膜色素上皮(RPE)のカーブには2つのタイプがある.黄斑を通る垂直スキャンでRPEがほぼ一直線であり,水平スキャンでは乳頭が最も底にあるタイプ(A,B)と,水平・垂直スキャンとも中心窩を底にしたお椀状のカーブをとるタイプ(C,D)である.ただ,いずれの場合にも正視眼では中心窩下脈絡膜厚が厚いために強膜内面のカーブは中心窩を底にしたお椀状になる.強度近視眼の強膜形状の4つのタイプ(E~H).E:乳頭に向かって直線状に傾斜する乳頭傾斜型,F:中心窩が底にある対称型,G:中心窩が眼球突出の底からずれてしまっている非対称型,H:まったく不規則な強膜形状をとる不規則型.ON:視神経,SAS:くも膜下腔.(文献19より)あり,他の強膜形状を有する眼に比較して有意に菲薄化V強膜内および球後血管の観察していた.このことから,おそらく強膜はある程度以上に菲薄化するともはや正常の円弧を維持できず,最終的強度近視眼では強膜内の血管および球後の血管をもにまったく不規則な形状に至るのではないかと考えられOCTで観察することが可能である20).強膜内を走行すた.また,不規則型の症例では,他の強膜形状を有するる長後毛様動脈は,強膜の外層2/3くらいのあたりを症例に比較し,近視性眼底病変を有意に高頻度に合併し強膜カーブに沿って走る低反射像として観察できる(図ていた.12).また,短後毛様動脈の血管断面も円形の低反射として観察される(図13).さらに強膜後方の眼窩血管も観察できる(図14).病的近視眼では後部強膜の伸展に172あたらしい眼科Vol.30,No.2,2013(38)ABCDEABCDE図12OCTによる長後毛様動脈の観察A:眼底はびまん性萎縮を呈する.B:ICG赤外蛍光眼底造影では乳頭耳側に球後の血管がループ状にみられ(矢印間),そこから引き続き直線状の長後毛様動脈(LPCA)が描出される.耳側末端部で血管陰影が描出されなくなり,脈絡膜血管への連続性がないことからも,短後毛様動脈でないと考えられる.C:OCTスキャンの方向を示す.D:LPCAは強膜の後方から刺入し,強膜のやや外層を強膜カーブに沿って走行する低反射像としてみられる(矢頭).E:球後の血管の断面(矢印)と,強膜内を走行するLPCAがみられる(矢頭).(文献20より)ABCDEFG図13短後毛様動脈(SPCA)のOCT所見A:眼底では黄斑萎縮がみられる.萎縮内を透かして走行するSPCAが部分的に観察できる(矢頭).B:ICG赤外蛍光眼底造影(IA)では,球後の血管の描出(矢印)にひきつづき,黄斑下方を水平に走行し,正常眼より耳側周辺で脈絡膜血管に移行するSPCAがみられる(矢頭).強度近視ではこのようにSPCAが脈絡膜に入る位置がぶどう腫縁に偏位していることが多い.C:OCTスキャン位置を示す.D~G:SPCAの血管断面が円形の低反射像としてみられる(矢頭).耳側に行くに従い,徐々に球後から強膜内へと深さが変化してくるのがわかる.(文献20より)(39)あたらしい眼科Vol.30,No.2,2013173ABCDEFHIGABCDEFHIG図14球後の血管の描出A:眼底では黄斑下方に限局性萎縮がみられる.矢頭はICG赤外蛍光眼底造影(IA)の位置の指標として用いた網膜血管を示す.B:IAでは強い過蛍光を示す球後の血管がみられる(矢頭).C:GでのOCTスキャン部位を示す.D:眼底では黄斑萎縮がみられる.矢頭,矢印はIAでも同じ部位を示す.E:IAでは黄斑部に強い過蛍光の球後血管がみられる.F:H,IでのOCTスキャン部位を示す.G:球後血管の断面が円形の低反射として強膜の外側にみられる(矢頭).H,I:強膜の後方に多数の球後血管の断面が認められる(矢頭,矢印).Iの赤矢印の部位ではやや長い断面が描出されている.(文献20より)ABCDEF図15黄斑渦静脈のOCTでの描出A:眼底では黄斑部に渦静脈がみられる.B:ICG赤外蛍光眼底造影(IA)では渦静脈が黄斑部で膨大部を形成して眼外に流出する様子がみられる(矢印).C,D:渦静脈の分枝は強膜内を走行したのち(矢印),黄斑部付近で強膜を貫いて眼外に流出する(矢頭).E:眼底で黄斑渦静脈がみられ,中心窩付近で膨大部を形成する(矢印).F:黄斑渦静脈の枝(矢印)が,黄斑付近で強膜を貫いて眼外に流出する(矢頭).(文献20より)174あたらしい眼科Vol.30,No.2,2013(40)伴い,これらの強膜内血管の走行が変化していることが考えられ,今後の解明が期待される.以前に筆者らは,強度近視眼の1/4に黄斑部に渦静脈がみられることを報告した21)が,sweptsourceOCTで観察すると,黄斑部に存在する渦静脈が眼底後極部で強膜を貫いて眼外に流出する様子を明瞭に観察することができる(図15).また,視神経乳頭周囲に存在する血管吻合であるZinn-Haller動脈輪は,強膜内もしくは強膜後方に位置する血管構造であり,従来生体眼では観察不可能であった.筆者らは以前に病的近視眼ではコーヌスを通してこの動脈輪がインドシアニングリーン(ICG)赤外蛍光眼底造影(IA)で観察できることを報告した22)が,IAだけでは観察された血管が本当に強膜内に存在するのかは断定できなかった.Spectralisを用いてIAとOCTの同時撮影を行うと,IAで描出されたZinn-Haller動脈輪が確かに強膜内に位置することがわかる.さらに動脈輪から視神経に向かう分枝も観察可能である.ZinnHaller動脈輪は,強度近視眼では特に水平方向で視神経乳頭から遠ざかっており23),形状も円形ではなく三角状または菱形としてみられることがある.乳頭周囲の伸展に伴う,このような血管構築の変化が,病的近視の視野障害に関与する可能性があるのか,今後の検討が期待される.おわりに以上,最新の画像診断の進歩により,明らかにされてきた病的近視の新知見を紹介した.OCTの進歩は,より深部の構造の観察を可能にしたが,病的近視は,網膜脈絡膜の菲薄化やコーヌスなどにより,深部がより観察しやすい状態である.そして観察される深部構造の変化が,視覚障害に結びつくさまざまな眼底病変の発生,進行につながると考えられる.今後のさらなる新知見の解明に期待したい.文献1)TakanoM,KishiS:Fovealretinoschisisandretinaldetachmentinseverelymyopiceyeswithposteriorstaphyloma.AmJOphthalmol128:472-476,1999(41)2)BabaT,Ohno-MatsuiK,FutagamiSetal:Prevalenceandcharacteristicsoffovealretinaldetachmentwithout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