特集●ロービジョンケアあたらしい眼科30(4):465.470,2013特集●ロービジョンケアあたらしい眼科30(4):465.470,2013眼球運動障害者のロービジョンケアLowVisionCareforOcularMovementDisorders鈴木利根*杉谷邦子*相馬睦*はじめに眼科診療の日常では,特に神経眼科外来を担当していると,視力や視野障害の他,複視を訴えるさまざまな眼球運動障害者に遭遇する.眼球運動障害は眼振などの異常眼球運動と眼筋麻痺に大別でき,原因別には先天性と後天性に分けられる.これらの眼球運動障害者のうち先天性は読み書き障害と関連し,また特に後天性では麻痺性斜視からくる複視のために日常生活や学習,労働作業に支障をきたす.そのため複視のある場合,視覚障害者の等級判定では,片眼の視力を0として優位眼の視力のみで判定する.眼筋麻痺に対しては,通常はまず原因治療,手術や薬物治療などを優先する1)が,これまで斜視手術によりQOL(qualityoflife)の改善が得られたという報告がある2,3).これらの治療と並行してあるいは症状固定後に光学的治療を行うと,障害者のQOLの向上がさらに期待できる4).当院ではロービジョン外来と共同して,これまでの神経眼科では時間の制約などがあり十分治療しきれなかったさまざまな眼球運動障害者の生活上の困難を改善するためにロービジョンケアを行っており,疾患別ロービジョンケアとしての領域が形成されつつある.本稿では,特に先天眼振や眼筋麻痺の患者に対し,筆者らが頻繁に行っているプリズムや“部分遮閉”を中心とし,他に遮光眼鏡も含めた光学的治療をおもに述べる.Iロービジョン外来患者全体における眼球運動障害者の実際当院では平成13年11月に専門外来としてロービジョン外来を開設して11年になる5).一般にロービジョンケアの対象疾患は,疾患の頻度からいっても緑内障や糖尿病網膜症,黄斑疾患,網膜色素変性症で,それらによる視力障害や視野狭窄・中心暗点などの視野障害が多い.しかし,当科では他の医療機関に比べ眼球運動障害をきたす疾患の比率がきわめて高い.平成24年12月までの過去11年のロービジョン外来での受診患者総数は722名で,そのうち神経眼科外来を経て受診した患者は192名であった.さらにそれらから視神経疾患などを除く,眼振や麻痺などの眼球運動障害者は136名であった(表1).これらに対し,プリズムや後述する“部分遮閉”などの光学的治療を行い,さらに眼球運動障害に加え高次脳機能障害を伴う場合に表1当院ロービジョン外来における眼球運動障害者の内訳疾患名人数疾患名人数滑車神経麻痺27垂直注視麻痺4外転神経麻痺27眼窩底骨折3Skewdeviation14網膜.離手術後1動眼神経麻痺8その他の外眼筋麻痺18強度近視性内斜視8眼瞼痙攣5甲状腺眼症7原因不明8重症筋無力症6合計患者数136*ToneSuzuki,KunikoSugitani&MutsumiSouma:獨協医科大学越谷病院眼科〔別刷請求先〕鈴木利根:〒343-8555越谷市南越谷2-1-50獨協医科大学越谷病院眼科0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(37)465はリハビリテーション施設や労働関係機関へ橋渡しをするなどの支援を行った.また,先天眼振や小児患者は27名でこれらのうち頭位異常のある6名には頭位を改善するためのプリズム治療〔versionprism法(用語解説),症例2,3〕を行い,視力が不良の6名に対し教育機関と連携して視覚補助具の選定や就学指導,学習支援を行っている.今後他施設でもロービジョンケアの対象疾患の多様化と広がりにより,眼球運動障害者に対するケアも増えるであろう.IIどのような眼球運動障害者に光学的治療が奏効しやすいか小児の先天眼振や先天性眼筋麻痺では,頭部傾斜などの頭位異常をきたすことが知られている.これを矯正するためには手術以外にプリズム装用が有効である.膜プリズムでversionprism法を行うと両眼に膜を貼るため小児や親に好まれないが,当科では全例5Δの組み込みプリズムによるversionprism法で予想外の頭位の改善が得られている.また,眼瞼痙攣患者はしばしば羞明を訴え,ボトックス注射の他,遮光眼鏡(特に風も防ぐゴーグル型が有効)により症状が軽減することがある.眼筋麻痺による複視では,プリズム矯正に限界があり,正面位が改善しても第2眼位や第3眼位に複視が残存することも多く,結局は片眼帯になることも多かった1,6).しかし筆者らは,プリズムに加えて下記に述べる“部分遮閉法”を加えた方法を使ってこの問題を大幅に解決できた4,7).2004年から2010年の約5年間に当科で光学的治療を行った患者をまとめると(表2),原因疾患は上斜筋麻痺と外転神経麻痺,続いてskewdeviation(用語解説)や甲状腺眼症が多かった4).外転神経麻痺や上斜筋麻痺の場合,高齢者で虚血性の良性の麻痺が多く,経過観察のみでも3カ月程度で回復することが多い.回復期間中の一部患者にも一時的なケアを行ったが,大部分は外傷などが原因で後遺症として麻痺が残存した場合に永続的な治療目的で光学的治療を行った.治療の対象者を選択するとき,近視などで普段眼鏡を常用している障害者は光学的治療を受け入れやすいので積極的に適用している.若年者で車の運転を職業にしていたり,斜視角が大466あたらしい眼科Vol.30,No.4,2013表2光学的治療を行った眼筋麻痺患者の原因とその方法原因疾患光学治療有効例()内は部分遮閉併用無効例上斜筋麻痺16(3)1外転神経麻痺15(6)1Skewdeviation9(2)1甲状腺4(1)1強度近視性内斜視4(1)重症筋無力症3(0)1動眼神経麻痺3(1)外眼筋麻痺2(1)3脳梗塞後麻痺性斜視1(0)上直筋麻痺1(0)間欠性外斜視1(0)網膜.離手術後1(0)開散麻痺1(0)MLF+skewdeviation1(1)垂直注視麻痺1(1)後天性外斜視1(1)原因不明8(1)合計患者数72(19)8MLF:内側縦束症候群.きければ,始めから観血的な斜視手術を勧める.しかし,高齢者や脳梗塞後などの全身合併症のある患者で手術を希望しない者には,たとえ斜視角が大きくても本法を優先して試みたが好評であった.手術を行った後の軽度の残存斜視に,本法を適用できるのも利点である.眼位異常の種類や程度では,水平より垂直斜視では軽度でも複視を強く訴えるが,光学的治療の成功率は水平と比べてあまり変わらない印象である.回旋異常があると従来いわれるとおり水平,垂直の矯正のみで単一視を得られることもあるが,偏位が大きいと装用できないことが多い.III眼筋麻痺患者の光学的治療の方法筆者らは複視を訴える患者に対しまずプリズム処方を行い,それでも不適合の場合はさらにsegmentalocclusionとspotpatchとよぶ“部分遮閉法”を加えて,光学的治療法の適応範囲をこれまで以上に拡大することができた(図1)7).まずプリズムについてであるが,一つには眼鏡レンズの表面に貼って使用する膜プリズムがある.他方は眼鏡レンズ自体に加入する組み込みプリズムである.このようなプリズム処方は光学的治療の主流で(38)〈組み込みプリズム〉〈部分遮閉〉〈追加膜プリズム〉SegmentalocclusionSpotpatch水平の追加垂直の追加水平・垂直を両眼に分配水平・垂直の合成を片眼で図1眼筋麻痺の光学的治療法(文献7より)まずプリズム処方(組み込みあるいは膜プリズム)を行い,それでも複視が残れば,部分遮閉として周辺(segmentalocclusion)あるいは中心部(spotpatch)に遮閉膜を貼る.あるが,筆者らは一時的な治療だけでなく,複視を訴える患者全般に永続的な使用目的で施行してきた.ところが麻痺性斜視では,共同性斜視と違って,正面や下方,側方などで眼位が変化するため,プリズム処方の適応に限界があった.このようにプリズム処方が奏効しない場合これまで,片眼に眼帯をする完全遮閉か,スコッチテープのような半透明膜で片眼全体を覆って霧視状態にして複視をなくす“半遮閉法”が報告されている1,6).筆者らが行っている“部分遮閉”は,周辺部で複視が残存した領域のみを遮閉する独自の方法で,周辺部を遮閉するsegmentalocclusionと片眼の中心部分を遮閉するspotpatchの2通りを使い分けた.実際の方法であるが,まず眼位検査を行って斜視角を測定する.つぎに複像検査として赤ガラス試験やHess赤緑試験,両眼注視野などを行う.これらの結果とプリズム検眼レンズやFresnel膜プリズム検査セットを使って適合する角度を決め,患者にプリズム眼鏡を処方する.あるいは普段常用している眼鏡があればまず調整や変更のしやすい膜プリズムを貼って,1カ月間ほど自宅などで装用練習をした後,何回か調整して複視の消失が安定してから組み込みレンズ処方とすることもできる.組み込みプリズムは片眼で5Δ程度の限界値があるため,それ以上の角度ではその上に膜プリズムを追加して貼ることもある.片眼や両眼に貼る場合もあり,方向も水平や垂直あるいは斜め方向の場合もある(図2).いずれにしても障害者の訴えを聞き取りながら繰り返し調整(39)〈組み込みのみ〉Δ〈組み込み+水平膜〉Δ〈組み込み+垂直膜〉Δ〈組み込み+水平と垂直の合成膜〉Δ図2プリズムの組み合わせ例(文献7より改変)左上段は組み込みプリズムのみで良好な場合,右上段,左下段はさらに水平あるいは垂直に膜プリズムを追加した場合である.水平および垂直斜視の両者が混在する場合は,右下段のようにその合成プリズムを斜めに貼るか,両眼に水平および垂直に分けて貼る場合もある.周辺のみ遮閉瞳孔領も遮閉図3部分遮閉のさまざまな遮閉部位例(文献7より改変)左列は眼鏡の周辺部(segmentalocclusionとよぶ)へ,右列は中心部(spotpatchとよぶ)を遮閉する.前者は周辺の複視の残った部分に合わせて,遮閉膜を下斜め(左上段)や真横(左中断),真下(左下段)に貼る.Spotpatchは,中心部(右上段)あるいは中心部を含んで周辺(右下段)に貼る方法である.し,時間をかけて行う粘り強い作業となる.このようなプリズム処方で,筆者らは65%以上の患者で複視の消失が得られた4).しかし,このようなプリズム治療を行っても,前述したように特定の方向で複視が残る場合,以下の2通りの“部分遮閉”を行った(図3).まず周辺部の複視の残る領域を特定しそれに合わせて,眼鏡レンズの周辺に部分的に遮閉膜を貼る(segmentalocclusion).それでもなお自覚的に複視が消失しない場合は,最終的に片眼の中心視力を放棄し,レンズ上の瞳孔領を含む中心部分に遮閉を行った(spotpatch).これは片眼の中心視力は犠牲にするが,両眼視できる部分が周辺に残るため完全遮閉に比べて姿勢や歩行などに安定性が保持でき,また自覚あたらしい眼科Vol.30,No.4,2013467的な開放感と快適さが残された.このようにプリズムに加え2通りの“部分遮閉”のいずれかを追加することによってさらに対応できる範囲が広がり,85%程度まで自覚的に複視の消失が得られた4).IV症例以下に代表例を紹介する.〔症例1〕7歳,女児.先天性両滑車神経麻痺,下斜筋過動症:プリズム例.両下斜筋減弱術を行ったが,左頭部傾斜などが残った.眼位は10ΔRE/LEで,右眼に5Δ基底下方,左眼に3Δ上方基底のプリズム眼鏡を装用して上下斜視を矯正し,左頭部傾斜が消失した(図4A).〔症例2〕7歳,男児.先天振子様眼振:versionプリズム例.左下方で眼振の中和点があり,常用中の遠視性乱視の眼鏡に,右眼5Δ基底外方,左眼5Δ基底内方を加えると,顎上げの頭位異常の改善や(図4B),右上がりに小さくなる書字の改善などがみられた.AB図4滑車神経麻痺(A)および先天眼振(B)に対するプリズム処方例それぞれ左はプリズム装用前,右は装用後である.Aの症例1の女児は左頭部傾斜および左faceturnが改善している.Bの症例2の男児は顎上げが改善している.468あたらしい眼科Vol.30,No.4,2013〔症例3〕24歳,男性.先天性外眼筋ミオパチー:versionプリズムから就労支援例.矯正視力は右眼0.5,左眼0.4,60Δの外斜視,両眼瞼下垂と全外眼筋麻痺があり,顎上げの異常頭位をとっている(図5A).生来の症状のため日常生活に支障はないが,頭位異常のため就労に差し支えがあると感じていた.外眼筋麻痺のため下垂の手術も困難であった.両眼視ができないことから,非優位眼の視力を0とし,他眼の矯正視力が0.6以下のため,まず視覚障害6級を申請し手帳交付となった.また,両眼に7Δの基底上方versionプリズムを処方し(図5A),頭位が改善した.今後眼瞼下垂に対してはクラッチ眼鏡を検討する一方,ハローワークへの働きかけなど就労支援を行っている.〔症例4〕75歳,男性.両滑車神経麻痺:versionプリズム例.両眼への基底下方5Δの加入により,顎下げの頭位異常が消失した(図5B).〔症例5〕50歳,男性.脳腫瘍による垂直注視麻痺とskewdeviation:プリズム例.AB図5外眼筋ミオパチーと両滑車神経麻痺に対するversionプリズム処方例症例3:Aの左図のごとく,外眼筋ミオパチーによる眼瞼下垂のため顎上げの頭位をとっていたが,両眼に7Δ基底上方のプリズムを挿入することで,右図のように頭位の改善が得られた.併せて視覚障害6級を取得,就労支援の橋渡しを行った.症例4:Bのごとく,プリズム処方により顎下げが改善している.(40)図6松果体部腫瘍による垂直注視麻痺とskewdeviationに対するプリズム処方例症例5:放射線治療後も左上の5方向写真のように上下方向への注視麻痺と,軽度の右眼/左眼の上下斜視(skewdeviation)がみられる.図右下のように10Δ・80°でのFresnel膜プリズムを右レンズに貼ることで複視の自覚が消失した.脳神経外科にて松果体部腫瘍と診断された.当科神経眼科外来初診時の所見は垂直注視麻痺,特に下方注視麻痺が著明で,その他に瞳孔の対光-近見反応の解離現象などのParinaud症候群(用語解説)を示した(図6).放射線治療後も複視と垂直注視障害を訴えたため,ロービジョン外来の受診となった.Skewdeviationによる上下斜視で,8Δ基底内方,10Δの基底下方で正面の複視は消失した.右レンズへの斜め方向の合成プリズム(20Δ・80°)が自覚的に最善であったが,初回診察では本人の希望もあり処方は保留となった.1カ月後の再診では合成プリズム換算は10Δ・17°であったが,10.15Δで試した結果は10Δ・80°が自覚的に最善であった.Fresnel膜プリズムを貼り経過をみることとした.さらに処方1カ月後の3回目の診察では,患者の複視消失が確認でき,膜プリズムは15Δに調整変更となった.今後は下方の部分遮閉と近方眼鏡の調整も検討している.〔症例6〕60歳,男性.右外転神経麻痺:プリズムと部分遮閉(segmentalocclusion).腎透析中で初診日の8日前から複視を突然自覚した.神経眼科外来の診察所見は30Δの内斜視があり,右外転がまったく不可能であった(図7).頭部MRI(磁気共鳴画像)で脳幹部その他に異常信号を認めず,3カ月程度で回復の見込める虚血性の神経麻痺と診断した.複視を強く訴えて歩行などに支障が大きく,ロービジョン外来の受診となった.まず普段装用している眼鏡の右レンズに30ΔのFresnel膜プリズムを基底外方で貼った.それでも右外転不能のため右側方視で複視が残り,これに対して左鼻側に半透明3MTMテープで部分遮閉(seg(41)図7虚血による右外転神経麻痺のプリズムと部分遮閉(segmentalocclusion)の併用例症例6:上段のHess赤緑試験のように麻痺性内斜視と右外転制限がある.常用している眼鏡右レンズに30ΔのFresnel膜プリズムを基底外方で貼った.それでも右側方視で複視が残るため,左鼻側に半透明3MTMテープで部分遮閉(segmentalocclusion)を追加した.mentalocclusion)を追加した.この際,院内を歩行したり階段昇降も試した.1カ月間試用後の再診時に再調整を行った.複視が消失し自覚的にも満足されていたが,膜プリズムを25Δに弱め,逆に左鼻側の部分遮閉の範囲を中心方向へ拡大調整した.今後回復に合わせてプリズム度数の軽減と部分遮閉の中止を予定している.あたらしい眼科Vol.30,No.4,2013469AB図8両側部分遮閉(segmentalocclusion)とspotpatch例A症例7:両MLF症候群.両内転障害のため両側方での見にくさがあり,両眼の鼻側にそれぞれ部分遮閉(segmentalocclusion)を行った.B症例8:脳幹部出血による眼瞼下垂と複合神経麻痺の左spotpatch例.左spotpatchにより複視が消失し,クラッチ眼鏡で下垂も改善している.〔症例7〕68歳,男性.両MLF(内側縦束)症候群(用語解説):両側部分遮閉(segmentalocclusion).両側方での見にくさがあり,両側レンズの鼻側に遮閉膜を貼った(図8A).〔症例8〕64歳,男性.脳幹部出血による両眼瞼下垂,上方注視麻痺,動眼神経麻痺:部分遮閉(spotpatch).眼筋麻痺が複合しており,プリズムや周辺の遮閉では複視が消失しなかった.クラッチ装置で下垂を矯正し,左眼鏡レンズ中央の瞳孔領に遮閉膜を貼り(spotpatch),さらに複視の残った右鼻側にも追加(segmentalocclusionを併用)した(図8B).おわりに視力や視野障害などの視覚障害に比べて,複視などの眼球運動障害に対するロービジョンケアはまだ十分とはいえない.筆者らは先天性眼振などの異常眼球運動の他,特に後天性眼筋麻痺患者の複視に対し手術以外の方法として,プリズムと独自にはじめた“部分遮閉”を合わせた光学的手法を駆使した.この方法により複視の消失が高率に得られて非観血的なケアの可能性が広がった.その結果,眼球運動障害者の就学支援や就労支援の向上,高齢者のQOLの改善につなげられた.■用語解説■Versionprism法:両眼に装用させるプリズムの基底を同方向にする方法.先天眼振で中和点があれば,それが正面になるように加入する.それに対し,基底を両眼とも外方にし,輻湊眼位をとらせて眼振を抑制しようとする方法がvergenceprism法である.Skewdeviation:斜偏位.脳幹部などの中枢障害による後天性の上下斜視.Parinaud症候群:脳幹部上方の後交連付近の病巣により起こり,垂直注視(特に上方注視)麻痺や輻湊障害,瞳孔障害,眼振など多彩な症状をきたす.若年者では松果体部腫瘍が多く,高齢者では脳梗塞などの血管障害でもみられる.MLF症候群:病巣側眼の内転障害(ただし輻湊は可能)と,健側眼の眼振がみられ,脳幹部の内側縦束の障害で起こる.内側縦束症候群ともいわれ,核間麻痺も同義語である.文献1)村木早苗:麻痺性斜視の治療方針.あたらしい眼科27:1671-1675,20102)FujiikeK,MizunoY,HiratsukaYetal:Qualityoflifeandcost-utilityassessmentafterstrabismussurgeryinadults.JpnJOphthalmol55:268-276,20113)木村亜紀子:麻痺性斜視の手術治療.神経眼科29:286293,20124)木村理恵,杉谷邦子,坂上敏枝ほか:複視に対するプリズム治療と多様な部分遮蔽との組み合わせ.臨眼66:16771681,20125)杉谷邦子,江口万佑子,鈴木利根ほか:ロービジョン外来においてニーズへの対応に限界があった事例の検討と今後の課題.日本ロービジョン学会誌11:64-68,20116)KhanS,LeungE,JayWM:Strokeandvisualrehabilitation.TopStrokeRehabil15:27-36,20087)鈴木利根,杉谷邦子,相馬睦ほか:種々の部分遮蔽を併用した眼筋麻痺の光学的治療.神経眼科29:270-275,2012470あたらしい眼科Vol.30,No.4,2013(42)