特集●ぶどう膜炎の研究最前線2013あたらしい眼科30(3):329.335,2013特集●ぶどう膜炎の研究最前線2013あたらしい眼科30(3):329.335,2013Behcet病Behcet’sDisease蕪城俊克*川島秀俊**はじめにBehcet病は口腔内アフタ,ぶどう膜炎,外陰部潰瘍,皮膚症状を主症状とする原因不明の難治性全身性炎症性疾患である.炎症は急性一過性で,再発を繰り返すことが特徴とされている.Behcet病患者の約70%にぶどう膜炎がみられるが,男性では女性より重症となりやすい.適切な治療を行わないとぶどう膜炎の急性増悪(眼炎症発作)を反復し,徐々に黄斑変性や視神経萎縮となり,不可逆的な視機能障害に至ることが多い.治療としてステロイド薬局所療法に加え,コルヒチン,シクロスポリン内服などが行われてきた.2007年に腫瘍壊死因子(tumornecrosisfactor:TNF)-aに対するモノクローナル抗体製剤であるインフリキシマブ(infliximab:IFX,商品名レミケードR)がわが国で世界に先駆けて認可され,本症に対して著明な効果を示している.IFXの登場でBehcet病の臨床像は大きく変化しつつあるが,本稿ではBehcet病の研究に関する最近の話題について述べる.I病態の免疫学的解析Behcet病の免疫異常については,古くからさまざまな研究がなされており,好中球主体の炎症(前房蓄膿はほとんどが好中球)であること,炎症局所に病原体は検出されないこと,自己抗体が証明されないこと,などがその特徴として知られていた.免疫反応は,大きく抗原非特異的な自然免疫系(マクロファージ,樹状細胞,好中球などが中心となる)と,抗原特異的な獲得免疫系(リンパ球,つまりT細胞やB細胞が中心となる)に分けられる(図1).これまでBehcet病の免疫異常の解析は,リンパ球の分画に関する研究(獲得免疫系の異常の研究)が主流であった.しかし近年,自然免疫系の異常の可能性についても研究がなされている.獲得免疫で特に免疫反応の起点となる重要な細胞はヘルパーT(helperT:Th)細胞である.獲得免疫では,まず抗原に曝露されていないナイーブT細胞が,病原体などを貪食した樹状細胞やマクロファージ(抗原提示細胞)から抗原提示を受け,特定の抗原に特異的に反応する活性化ヘルパーT細胞となる(図1).この活性化ヘルパーT細胞にサブセットとして,以前からinterferon(IFN)-gを産生しぶどう膜炎を増悪させるTh1細胞と,interleukin(IL)-4,IL-10を産生して炎症に抑制的に働くTh2細胞が知られていた.Th1とTh2は互いに抑制しあう関係にあることから,このバランスが炎症反応の方向性を決めていると考えられてきた.実際,活動性のBehcet病ぶどう膜炎患者の末梢血単核球ではTh1細胞が増加している1).しかし,近年IL-17,IL-23を産生し好中球主体の炎症をひき起こすTh17細胞や,IL-10,TGF-bを産生して炎症抑制性に働く免疫抑制性T(regulatoryT:Treg)細胞などの新しいヘルパーT細胞のサブセットが明らかとなり,炎症性疾患の免疫学的機序の解析は複雑になってきている(図1).*ToshikatsuKaburaki:東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚・運動機能講座眼科学**HidetoshiKawashima:自治医科大学眼科学講座〔別刷請求先〕蕪城俊克:〒113-8655東京都文京区本郷7-3-1東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚・運動機能講座眼科学0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(43)329病原体異物樹状細胞マクロファージ病原体を貪食炎症反応炎症性サイトカイン好中球インターフェロンウイルスを攻撃(未熟)T細胞自然免疫獲得免疫抗原を貪食抗原提示Th1細胞Th2細胞IFN-γウイルス,細菌,腫瘍を攻撃,自己免疫反応(細胞性免疫)IL-4,IL-10,IL-13アレルギー反応(液性免疫)Th17細胞IL-17,TNF-α,IL-6,IL-23真菌,細菌を攻撃,自己免疫反応(慢性),好中球主体Cytotoxic/killerT細胞を活性化IL-12IL-4TGF-β(IL-6なし)TGF-β+IL-6Treg細胞IL-10,TGF-βTh1,Th17優位の炎症反応を抑制CD4+CD25+Foxp3+作用B細胞を活性化図1自然免疫と獲得免疫自然免疫では,マクロファージ,樹状細胞,好中球などが中心となり,病原体などの侵入に対して迅速に抗原非特異的な免疫反応を起こす.それに対し,獲得免疫では,マクロファージや樹状細胞から抗原提示を受けて活性化したリンパ球(T細胞やB細胞)が主役となり,抗原特異的な免疫反応を起こす.Chiらは,Behcet病ぶどう膜炎患者の末梢血中で,Th1細胞だけでなくTh17細胞も増加していることを報告した2).さらにBehcet病患者の末梢血では,正常人と比べてTh17/Th1細胞比が有意に上昇していることから,Th1細胞だけではなくTh17細胞もBehcet病の病態形成に重要な役割を担っていると考えられるようになってきている3).これらの結果は,Behcet病が好中球主体の炎症反応であることと辻褄の合うものであり,興味深い(図1).また,免疫抑制性のT細胞分画であるTreg細胞についても報告がなされている.GeriらはBehcet病患者の末梢血ではTh17細胞が増加するのみならず,Treg細胞が減少していること,活動期のBehcet病患者では末梢血中のIL-21濃度やIL-21産生細胞数が非常に増加していることを明らかにした4).同時にinvitroの実験においてIL-21がヒトCD4陽性T細胞をTh1細胞,Th17細胞へと分化誘導すること,Treg細胞への誘導を阻害することも明らかにした4).これらの結果から,Behcet病患者の血清中IL-21はBehcet病の病態形成に重要な役割を担っており,IL-21が新たな治療標的となりうると報告している.また,Sugitaらは,抗TNFa阻害薬であるIFXが,Behcet病患者の末梢血中のTreg細胞数を増加させ5),Th17細胞を減少させる6)ことにより,ぶどう膜炎の再発抑制に働いている可能性を報告している.これら新しいヘルパーT細胞分画の登場で,Behcet病の病態がより詳細に説明できるようになってきているといえる.一方,近年自己免疫,アレルギー,免疫不全などの従来からいわれてきた免疫疾患とは合致しない疾患群として,自己炎症症候群という概念が提唱されている.自己炎症症候群は,原因が明らかではない炎症所見,高力価の自己抗体や自己反応性T細胞が存在しない,先天的な自然免疫の異常,の3項目によって定義付けられる疾患群で,家族性地中海熱(familialmediterraneanfever:FMF)やBlau症候群などが代表疾患とされている.そして,Behcet病が自己炎症症候群のFMFやBlau症候群などと多くの類似点が認められることから,両者の関連性が注目されてきている(表1)7).実際に,Behcet病とFMF,Blau症候群とは,臨床症状,好発地域,発症年齢などで類似点がみられるほか,FMFでは有意にBehcet病の合併率が高いことや,両疾患ともコルヒチンで治療効果が認められることなど類似点が多330あたらしい眼科Vol.30,No.3,2013(44)表1Behcet病と地中海熱の類似性Behcet病家族性地中海熱Blau症候群発症年齢20.40歳小児期(20歳まで)小児期好発地域地中海.シルクロード沿い地中海沿岸─遺伝形式なし常染色体劣性常染色体優性原因遺伝子直接関与する遺伝子はないMEFVNOD2反復性の発熱ありありなし口腔内アフタ98%.70%なし眼症状65%(ぶどう膜炎)まれぶどう膜炎陰部潰瘍73%まれなし皮膚症状結節性紅斑,毛.炎様皮疹丹毒様皮疹丘疹様紅斑関節症状大関節の単関節炎膝・股の単関節炎.腫瘍関節炎漿膜炎なしありなしコルヒチン治療有効有効おそらく無効い.Behcet病の病態に自然免疫系の異常が関与している可能性も考えられ,現在研究が進められている.II疾患感受性遺伝子Behcet病の発症機序は未だ明確ではないが,シルクロード沿いの国々で頻度が高いこと,HLA(ヒト白血球抗原)-B51陽性者が民族の違いを超えて多いこと,その一方で同じ日系人でもハワイやブラジルへ移住した人からは発症がみられないことから,遺伝性素因に加えて何らかの外的環境要因が作用して発症するものと考えられている.ヒトの疾患の原因を明らかにする方法の一つに,正常人と患者の間での遺伝子の相違を検索する方法があり,ゲノム疫学研究とよばれる.そのなかで近年最もよく用いられている手法に,一塩基多型(singlenucleotidepolymorphism:SNP)の解析用のDNAチップを用いたゲノムワイド関連解析(genome-wideassociationstudy:GWAS)がある.2006年にGWAS用のDNAチップが商品化されてからは,GWAS研究は急速に進展した.2010年にMizukiら8),Remmersら9)によってBehcet病患者のGWAS解析の結果が報告された.Mizukiらの報告では,まず日本人Behcet病患者612人と健常人740人を対象としてGWASが行われ8),その結果の再現性を確認するために,トルコ人Behcet病患者1,215人と健常人1,278人でGWASが行われた9).(45)(文献7より改訂)その結果,既知のとおりまずHLA-B領域(特にHLAB51)にp=1.8×10.26と非常に高いBehcet病との関連性がみられた.一方,HLA領域以外では1番染色体の長腕(1p31.33)と短腕(1q32.1)領域でBehcet病と高い関連性がみられた.前者の領域で最も相関性の高いSNPは,炎症性サイトカインの受容体であるIL-23RとIL-12RB2の間のイントロン領域であった(p=2.7×10.8).後者の領域では炎症抑制性サイトカインであるIL-10遺伝子のプロモーター領域であった(p=8.0×10.8).トルコ人による再現性試験でもまったく同じ結果が得られ,HLA領域,IL-23RまたはIL-12RB2遺伝子,IL-10遺伝子が民族を超えてBehcet病の疾患感受性遺伝子であることが明らかとなった.血液中のヘルパーT細胞(Th)は,免疫反応の司令塔の役割を担い,そのサイトカイン産生パターンよりTh1細胞,Th2細胞,Th17細胞などに分けられる.このうちTh1細胞,Th17細胞は自己免疫疾患の発症・増悪に関与し,Th2細胞はその抑制の役割を担う.今回,Behcet病との関連が明らかとなったIL-12受容体はTh1細胞,IL-23受容体はTh17細胞に発現する遺伝子である.Mizukiらは,これらの受容体の遺伝子変異により,易刺激性が亢進してBehcet病の炎症反応に促進的に働いている可能性を推測している(図2).実際,IL-23R/IL-12RB2遺伝子領域は,炎症性腸疾患,尋常性乾癬,乾癬性関節炎,強直性脊椎炎などとも関連が報告されている.一方,IL-10はおもにTh2細胞があたらしい眼科Vol.30,No.3,2013331産生する炎症抑制性のサイトカインで,マクロファージター領域のSNP(rs1518111)がAA型の人がBehcetの活性化やナイーブT細胞のTh1細胞への分化増殖を病に多く,このタイプではAG型,GG型の人と比べ有抑制する.Remmersらの報告9)では,IL-10プロモー意に末梢血単核球におけるIL-10産生能が低いことも推定される誘因・レンサ球菌(Streptococcussanguinis)・ウイルス(ヘルペスウイルス)・熱ショック蛋白遺伝学的素因・HLA-B5101・HLA-A26・SNPIL-10・SNPIL-12R-IL23R樹状細胞(未熟)T細胞抗原提示Th1細胞↑Th2細胞IFN-γウイルス,細菌,腫瘍を攻撃,自己免疫反応(細胞性免疫)↑IL-4,IL-10,IL-13アレルギー反応(液性免疫)Th17細胞↑IL-17,TNF-α,IL-6,IL-23真菌,細菌を攻撃,自己免疫反応(慢性),好中球主体の炎症↑Cytotoxic/killerT細胞を活性化↑IL-12IL-4TGF-β(IL-6なし)TGF-β+IL-6Treg細胞IL-10,TGF-βTh1,Th17優位の炎症反応を抑制CD4+CD25+Foxp3+作用B細胞を活性化貪食,抗原提示××IL-12RIL-23R図2現在推定されているBehcet病の病態Behcet病の発症には,HLA-B51などの遺伝性素因に加えて,何らかの外的環境要因(レンサ球菌,熱ショック蛋白など)が作用して発症すると推定されている.近年明らかになったBehcet病の感受性遺伝子であるIL-23R/IL-12RB2遺伝子のうち,IL-12受容体遺伝子はTh1細胞,IL-23受容体遺伝子はTh17細胞に発現している.Behcet病に多い遺伝子変異が,これらの受容体の刺激性を亢進させてTh1,Th17細胞の活性化に働いている可能性がある.また,Behcet病に多いIL-10の遺伝子多型は,IL-10の発現量を低下させるために炎症反応の抑制が働きにくくなり,炎症の増悪に関与すると推測される.表2Behcet病の疾患感受性遺伝子遺伝子HLA-B51HLA-A26IL-23R/IL-12RB2IL-10CPLX1IL1R2STAT4CCR1CCR3IL12AMICA蛋白質HumanleukocyteantigenB51HumanleukocyteantigenA26Interleukin23receptor/interleukin12receptorbeta2Interleukin10Complexin-1Interleukin1receptortype2Signaltransducerandactivatoroftranscription4Chemokine(C-Cmotif)receptor1Chemokine(C-Cmotif)receptor3Interleukin12alphaMHCclassIchain-relatedAオッズ比(信頼区間)3.49(95%CI2.95.4.12)2.50(95%CI1.73.3.62)1.28(95%CI1.18.1.39)1.45(95%CI1.34.1.58)1.16(95%CI1.07.1.27)1.28(95%CI1.14.1.44)1.27(95%CI1.13.1.42)1.40(95%CI1.18.1.66)1.29(95%CI1.15.1.46)1.63(95%CI1.30.2.03)1.69(95%CI1.43.1.99)(文献10より一部改訂)332あたらしい眼科Vol.30,No.3,2013(46)示された.したがって,このSNPは炎症抑制性サイトカインであるIL-10の発現量を低下させることでBehcet病発症のリスクファクターとなっていると考えられている(図2).Behcet病の疾患感受性遺伝子の研究は現在も継続して行われており,これまでにさまざまな遺伝子が報告されている(表2)10).これらの結果はBehcet病の病態を推測するうえで意義深いものであり,今後さらなる研究の進展に期待したい.IIIインフリキシマブ(IFX)治療Behcet病ぶどう膜炎に対するIFXの臨床試験は,2000年から世界に先駆けてわが国で行われ,眼炎症発作を著明に抑制することが明らかとなった11).その結果を受けて2007年から難治性のBehcet病による網膜ぶどう膜炎に対して保険適用が認められている.現在,わが国のBehcet病患者約16,000人のうち,1,000人程度の患者がIFX治療を受けていると推定されている.Behcet病ぶどう膜炎に対するIFX治療の成績について幾つかの報告がなされている.Yamadaらは,Behcet病ぶどう膜炎患者に対してシクロスポリン治療(20例)またはIFX治療(17例)を半年間以上行った症例について,治療成績を後ろ向きに解析した12).その結果,シクロスポリンでは半年間の眼発作回数が3.3±2.4回から1.2±1.2回に減少したのに対し,IFXでは3.1±2.7回から0.4±1.0回に減少した.この結果は,IFX治療のほうがシクロスポリン治療よりも眼発作抑制効果が高いことを示唆している.Okadaらは,わが国でBehcet病ぶどう膜炎のIFX治療を多く行っている8大学病院での治療成績を報告した13).臨床効果については50症例を対象として検討が行われ,半年間における眼発作回数はIFX導入前には平均2.66回であったのに対し,導入後には0.44回に減少していた(表3).眼発作の重症度についても,IFX導入前には72%の眼発作が中等度から高度であったのに対し,導入後には68%が軽度となり,眼発作の軽症化がみられた.さらに,IFX治療の有効性を規定する因子についての研究もなされている.Sugitaらは,IFXの血液中濃度と臨床効果の関連性を報告した14).IFXを8週ごとに投与している患者20例について,IFX投与直前と投与直後に血液を採取し,IFXの濃度を測定した.その結果,投与直前の血清中IFX濃度が1.0μg/ml以上の症例では,16例中14例で経過中に眼発作は起こらなかったのに対し,IFX濃度が1.0μg/ml未満の症例では,4例中3例で眼発作が起きていた.この結果から,次回のIFX投与直前における血液中IFX濃度(トラフレベル)が1.0μg/ml以上に保たれているかどうかが,ぶどう膜表3インフリキシマブ開始前後の眼発作回数の変化インフリキシマブインフリキシマブインフリキシマブ開始前6カ月間開始後1.6カ月開始後7.12カ月症例数50例50例48例眼発作回数133回(2.66回)22回(0.44回)***38回(0.79回)***眼発作の部位前部16回(0.32回)2回(0.04回)**10回(0.21回)中間部50回(1.00回)7回(0.14回)***14回(0.29回)***後部65回(1.30回)12回(0.24回)***14回(0.29回)***不明2回(0.04回)1回(0.02回)0回(0.00回)眼発作の重症度軽度35回(0.70回)15回(0.30回)*24回(0.50回)中等度56回(1.12回)3回(0.06回)***5回(0.10回)***高度40回(0.80回)4回(0.08回)***9回(0.19回)***不明2回(0.04回)0回(0.00回)0回(0.00回)()内は1例当たりの平均値.*p<0.05,**p<0.01,***p<0.001,Wilcoxon’ssigndranktest.(文献13より要約)(47)あたらしい眼科Vol.30,No.3,2013333炎のコントロールと関連すると結論付けている.Iwataらは,Behcet病ぶどう膜炎に対しIFX治療と血液中の抗核抗体の関連性を報告した15).17例の患者のうちIFX治療開始前には抗核抗体陽性は1例(6%)のみであったが,治療開始後6カ月で新たに11例(65%)が抗核抗体陽性となり,徐々に抗体価の上昇がみられた.さらにIFX治療開始後に眼発作がみられた5例は全例が抗核抗体陽性患者であった.このことから,血清中の抗核抗体価がIFX治療開始後の眼発作の予測マーカーとなりうる可能性を指摘している.Yoshidaらは,Behcet病ぶどう膜炎に対しIFX治療を開始した後に,眼発作が消失した群と眼発作が残存した群に分けて患者背景の違いを比較検討した16).その結果,IFX治療開始後に眼発作が消失する症例は,ぶどう膜炎発症からIFX開始までの期間が長い症例が多く,開始前の眼発作回数(特に眼底型の眼発作回数)も少ない症例に多かった.このことから,IFX治療により眼発作が完全に消失する症例は,治療開始前から活動性の低いことが原因ではないかと推測している.おわりにBehcet病は,免疫学的な病態解析,疾患感受性遺伝子,および新しい治療法の開発など近年著しく研究が進んだ疾患である.本稿ではその一部を要約して紹介した.長年,失明率の高い難治性疾患であったBehcet病も,IFXの登場でかなりコントロール可能な疾患となってきている.今後さらなる研究の進展や新しい治療の開発に期待したい.文献1)FrassanitoMA,DammaccoR,CafforioPetal:Th1polarizationoftheimmuneresponseinBehcet’sdisease:aputativepathogeneticroleofinterleukin-12.ArthritisRheum42:1967-1974,19992)ChiW,ZhuX,YangPetal:UpregulatedIL-23andIL-17inBehcetpatientswithactiveuveitis.InvestOphthalmolVisSci49:3058-3064,20083)KimJ,ParkJA,LeeEYetal:ImbalanceofTh17toTh1cellsinBehcet’sdisease.ClinExpRheumatol28(4Suppl60):S16-19,20104)GeriG,TerrierB,RosenzwajgMetal:CriticalroleofIL-21inmodulatingTH17andregulatoryTcellsin■用語解説■インフリキシマブ:腫瘍壊死因子(tumornecrosisfac-tor:TNF)-aに対するモノクローナル抗体製剤で,点滴静注で投与する薬剤である.初回投与の後,2週目,6週目,それ以降は8週間隔で投与する.従来の治療に抵抗する難治性のBehcet病ぶどう膜炎に対して2007年に保険適用を受けた.ヘルパーT細胞:T細胞受容体をもつリンパ球(T細胞)のうち,細胞表面にCD4を発現したリンパ球の亜集団.抗原提示細胞から抗原情報を受け取って活性化し,サイトカインを産生して獲得免疫の司令塔的な役割を担う.産生するサイトカインによってTh1,Th2,Th17などのサブグループに細分化される.一塩基多型:同じ民族集団のなかで,ある遺伝子のゲノム塩基配列中に一塩基だけが変異した多様性がみられ,その変異が集団内で1%以上の頻度でみられるとき,これを一塩基多型(singlenucleotidepolymorphism:SNP)とよぶ(1%未満の場合は突然変異とよばれる).SNPはDNAチップなどを用いて一度に大量に判定することができるため,SNPをマーカーとして利用することで,疾患関連遺伝子の染色体上の位置の絞り込みが可能となる.イントロン:DNA配列のうち,転写(DNAからメッセンジャーRNAを合成する段階)はされるが,最終的に機能する転写産物からは除去される塩基配列を指す.つまり,イントロンはアミノ酸配列には翻訳(メッセンジャーRNAの情報に基づいてアミノ酸を合成すること)されない.一方,除去されることなくアミノ酸配列に翻訳される部位をエクソンとよぶ.プロモーター:DNA配列のうち,転写の開始に関与する遺伝子の上流領域を指す.遺伝子の上流のプロモーター領域に転写因子(転写を促進する物質)が結合することによって転写が始まる.Behcetdisease.JAllergyClinImmunol128:655-664,20115)SugitaS,YamadaY,KanekoSetal:InductionofregulatoryTcellsbyinfliximabinBehcet’sdisease.InvestOphthalmolVisSci52:476-484,20116)SugitaS,KawazoeY,ImaiAetal:InhibitionofTh17differentiationbyanti-TNF-alphatherapyinuveitispatientswithBehcet’sdisease.ArthritisResTher14:R99,20127)石ヶ坪良明,寒川整:自己炎症疾患の新しい知見.自己炎症疾患としてのBehcet病.日本臨床免疫学会雑誌34:408-419,20118)MizukiN,MeguroA,OtaMetal:Genome-wideassociationstudiesidentifyIL23R-IL12RB2andIL10asBehcet’sdiseasesusceptibilityloci.NatGenet42:703-706,2010334あたらしい眼科Vol.30,No.3,2013(48)9)RemmersEF,CosanF,KirinoYetal:Genome-wideassociationstudyidentifiesvariantsintheMHCclassI,IL10,andIL23R-IL12RB2regionsassociatedwithBehcet’sdisease.NatGenet42:698-702,201010)PinetondeChambrunM,WechslerB,GenGetal:NewinsightsintothepathogenesisofBehcet’sdisease.AutoimmunRev11:687-698,201211)OhnoS,NakamuraS,HoriSetal:Efficacy,safety,andpharmacokineticsofmultipleadministrationofinfliximabinBehcet’sdiseasewithrefractoryuveoretinitis.JRheumatol31:1362-1368,200412)YamadaY,SugitaS,TanakaHetal:Comparisonofinfliximabversusciclosporinduringtheinitial6-monthtreatmentperiodinBehcetdisease.BrJOphthalmol94:284-288,201013)OkadaAA,GotoH,OhnoSetal:MulticenterstudyofinfliximabforrefractoryuveoretinitisinBehcetdisease.ArchOphthalmol130:592-598,201214)SugitaS,YamadaY,MochizukiM:RelationshipbetweenseruminfliximablevelsandacuteuveitisattacksinpatientswithBehcetdisease.BrJOphthalmol95:549552,201115)IwataD,NambaK,MizuuchiKetal:CorrelationbetweenelevationofserumantinuclearantibodytiteranddecreasedtherapeuticefficacyinthetreatmentofBehcet’sdiseasewithinfliximab.GraefesArchClinExpOphthalmol250:1081-1087,201216)YoshidaA,KaburakiT,OkinagaKetal:Clinicalbackgroundcomparisonofpatientswithandwithoutocularinflammatoryattacksafterinitiationofinfliximabtherapy.JpnJOphthalmol56:536-543,2012(49)あたらしい眼科Vol.30,No.3,2013335