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タブレット型PCの眼科領域での応用 3.眼科医としてタブレット型PCを臨床でどう使うか-その2-

2012年8月31日 金曜日

シリーズ③シリーズ③タブレット型PCの眼科領域での応用三宅琢(TakuMiyake)永田眼科クリニック第3章眼科医としてタブレット型PCを臨床でどう使うか─その2─■画像閲覧端末としてのタブレット型PC第3章では実際の臨床業務において,どのようにタブレット型PCを活用するか,またなぜ眼科領域において有用であるかを,私の実践例とGiftHandsの活動を通して得たさまざまな“気づき”を踏まえて紹介していこうと思います.第2章でも書きましたが,タブレット型PCのおもな使い方のポイントはつぎの2点に集約されます.まず,第2章で紹介した必要な情報にきわめて迅速にアクセス可能な情報端末である点,そして患者の視機能に合わせたオーダーメイドな設定を非常に簡単な操作で選択できる点です.今回は,後半の最適な情報や画像閲覧機器としてのタブレット型PCの利点を紹介しようと思います.GiftHandsの活動のなかで,視覚障害者向けのタブレット型PC活用セミナーを実施した結果,目の不自由な方々の生の声を聞き,その思いを知ることができました(図1).それは眼科医として医療のみを行っていた頃には,知ることのできなかった多くの“気づき”です.ここからは私が知ることのできたさまざまな“気づき”を中心に,実際の臨床導入の事例も交えてその利点を紹介していきます.■私の実践活用法「患者説明編」一つめの“気づき”は“見えると見たい”,“読めると読みたい”は違うということです.患者にとって単純に見える大きさで書かれた説明文を見せられても,“見たい”や“読みたい”というレベルまで,意識は向上しません.“見る”ための要素には文字の大きさや書体,太さやコントラスト,色調や明るさなどの複合的な要素が含まれますが,これらをすべて考慮したオールマイティーな患者説明用の資料は存在しないのが現状です.(87)0910-1810/12/\100/頁/JCOPY図1GiftHands主催のタブレット型PC体験セミナーの様子それは患者の最適な視認環境は個々の視機能により多種多様であり,視力や視野などの検査結果から単純に設定することは不可能なためです.たとえば,一般的に視力の低下した患者ではコントラストの高い黒背景で白抜きの文字,書体は明朝体よりもゴシック体がいいと考えがちですが,実際にタブレット型PCで書体や色を変化させて体験してもらうと,色と書体だけに関しても最適条件は個々の患者でさまざまです.当然のことですが情報を提供する側ではなく,提供される側である患者側が最も見やすい書体や背景色を選択することで,初めて“読める”は“読みたい”へと変化するのです.タブレット型PCに取り込まれたデジタルな文字情報は,それらの設定を瞬時に患者の最適な状態に変化させることが可能です.二つ目の“気づき”として,“使える”と“使いたい”は違うということです.タブレット型PC(iPadRの場合)では,たとえばホームボタンをトリプルクリック(3回押し)した際のアクセシビリティ(視覚や聴覚などの補助)機能を,音声読み上げやコントラスト反転などの任意の機能に割り当てることが可能なことがあげられまあたらしい眼科Vol.29,No.8,20121113 す.これまでにもPCの画面の色を反転させる機能は存在していましたが,その設定を変更する操作が煩雑であるが故に,多くの方がずっと反転したままでPCなどデジタルデバイスの操作を行っている姿をよく目にしました.この反転機能が発動した状態では画面上の画像がすべて反転してしまうため,写真はネガの状態となってしまい本来の色調を残すことは不可能でした.しかし,たとえばホームボタンのトリプルクリックを白黒反転の機能を割り当てることで,文章を読んでもらう間は白黒を反転し,その後に解剖図などを説明する際はすぐに反転を解除するというような使い方ができます.瞬時に白黒反転に切り替えられることは,患者にとっても説明する側の医療者にとっても非常に重要なポイントであり,“使いたい”という想いが生まれるきっかけとなるのです.■私の実践活用法「情報を手に取る」その他の活用法の具体例としてタブレット型PCで表示された画像は拡大したい部位を1本の指でダブルタップ(2回叩く)するか,2本の指で広げるように触ることで瞬時に必要とされる拡大率まで画像や文字を拡大することができます.ここで重要なのは操作が非常に容易であるため,患者自身がタブレット型PCを手に取り任意の大きさまで,本人が操作して拡大ができるということです.これまでのあらかじめ文字や図表の拡大された紙ベースの用紙による説明や,医者の机上に置かれたPCの画面を使っての説明などとは,患者はまったく違った印象を受けます.まさに情報を手に取るように,見える大きさや明るさで見ることができて,患者の病態の理解や治療法の選択への自己決定の意思が生まれやすくなるため,アドヒアランスは格段に向上します.私は,眼瞼の状態を説明する際に,あらかじめ代表的な細隙灯顕微鏡所見の画像をタブレット型PCに保存しておき,患者自身に見える大きさまで拡大してもらって,病態生理の理解をしてもらう補助に使ったりしています.また,患者本人の細隙灯顕微鏡所見の画像を次回の診察時に患者とともに供覧することで,多くの患者が自分の眼瞼の状態に興味を示すようになり,治療への積極性が向上します(図2).最後にとっておきの活用法を一つ紹介します.外来でつぎのような台詞を,眼科医のみなさんであれば,よく1114あたらしい眼科Vol.29,No.8,2012図2自身の眼瞼所見を拡大して閲覧している様子耳にするのではないでしょうか.「赤いキャップの目薬が欲しいです….」しかし,視機能の下がった患者が意図する赤色のキャップの点眼薬を同定する作業は,非常に時間と労力を要するうえに非効率的です.ところが,タブレット型PCにあらかじめ処方頻度の高い点眼薬の製剤見本の写真を入れておき,それを拡大して提示すると,患者の言葉はつぎのように変化します.「今日はこの目薬を3本ください.」これまでに費やしてきた無駄な時間を,患者の背景や生き方への質問の時間に置き換えることで,患者との心の距離はぐっと近づくはずです.なお,点眼薬の製剤見本のPDFは日本眼科学会のホームページ(http://www.nichigan.or.jp/index.jsp)にログインすることで入手することができます.必要な画像だけをスクリーンショットで取り込めば,患者とのコミュニケーションの質は格段に向上すると考えられます.タブレット型PCを臨床に導入することで,日々の診療がより快適で患者のアドヒアランスの向上につながると私は信じています.なお,私が現在GiftHandsの活動や実際に外来で扱っている電子タブレットは,“新しいiPadR(AppleInc.)”と“iPhone4SR(AppleInc.)”です(2012年6月30日現在).本文中の内容やセミナー,アプリなどに関する問い合わせはGiftHandsのホームページでお問い合わせいただけると助かります.GiftHands:http://www.gifthands.jp/(88)

硝子体手術のワンポイントアドバイス 111.硝子体手術後晩期に生じる黄斑円孔(中級編)

2012年8月31日 金曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載111111硝子体手術後晩期に生じる黄斑円孔(中級編)池田恒彦大阪医科大学眼科はじめに特発性黄斑円孔は,硝子体皮質前ポケット後壁の硝子体皮質による牽引で生じるとされており,硝子体手術後眼に黄斑円孔が生じることはまれである.近年,トリアムシノロンアセトニド(TA)を用いて硝子体を可視化する手技が用いられるようになってからは,黄斑部の硝子体皮質をより確実に除去できるようになったため,黄斑上膜や黄斑円孔が硝子体手術後に生じることはさらに少なくなっていると考えられる.しかし筆者らは,硝子体手術後晩期に黄斑円孔を生じた症例を2例経験している1).●硝子体手術後に生じる黄斑円孔筆者らが経験した2例は,裂孔原性網膜.離に対する硝子体手術後晩期に黄斑円孔を生じたものである.硝子体手術後に生じた黄斑円孔の報告は過去に散見され,その原因として,中心窩周囲に再増殖が生じ,黄斑部に新たに接線方向の牽引が加わったことが共通して述べられている.以前の硝子体手術ではTAによる硝子体の可視化は行われておらず,初回手術時に黄斑部に残存した硝子体皮質が再増殖の一因となっていた可能性がある.しかし,今回の2例は,初回手術時にTAを使用して確実に黄斑部硝子体皮質を除去したにもかかわらず黄斑円孔が発症した.原因としては,以下のようなことが考えられる.1)2例とも初回手術時すでに網膜.離が黄斑部に及んでおり,術後網膜が復位した後も中心窩網膜が菲薄化していた(図1).2)再手術時に,黄斑円孔周囲の内境界膜が肥厚し,薄い黄斑上膜と一体となっている所見を認め,この膜様組織の接線方向の牽引が黄斑円孔発症の誘因となった(図2).●再手術時の注意点硝子体はすでに切除してあるので,黄斑部の薄い黄斑(85)0910-1810/12/\100/頁/JCOPY図1初回硝子体手術前の眼底写真上方の大きな弁状裂孔を原因とする胞状の網膜.離を認める.黄斑.離も生じている.図2網膜.離術後8カ月のOCT所見黄斑上膜により接線方向の牽引が生じているのがわかる.矯正視力0.2.図3術中所見内境界膜はかなり肥厚しており病的な状態となっている.内境界膜と連続する黄斑上膜を.離している.上膜と肥厚した内境界膜の確実な除去が手術のポイントとなる.今回は2例ともインドシアニングリーン塗布後に黄斑部には染色されない部分が認められ,薄い黄斑上膜が生じているものと考えられた.内境界膜も病的に肥厚しており,内境界膜.離を行いながらそれに連続する薄い黄斑上膜を.離した(図3).今回の2例とも再手術後に黄斑円孔は閉鎖し,矯正視力0.5に改善していることから,このような症例に対しては積極的に手術を考慮してもよいと考えられる.文献1)鈴木浩之,石崎英介,吉田朋代ほか:網膜.離に対する硝子体手術後晩期に発症した黄斑円孔の2例.眼臨紀5:341-345,2012あたらしい眼科Vol.29,No.8,20121111

眼科医のための先端医療 140.新生血管と遺伝子治療

2012年8月31日 金曜日

監修=坂本泰二◆シリーズ第140回◆眼科医のための先端医療山下英俊新生血管と遺伝子治療加地秀(名古屋大学大学院医学系研究科頭頸部・感覚器外科学)はじめに加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)の本態は脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)であり,現在の治療の中心は抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)療法です.この治療においては蛋白質の眼内への長期にわたる反復投与が必要ですが,これに対しては遺伝子治療がその回答の一つとなりうると考えられます.AMDに対する遺伝子治療とは,異常遺伝子を正常遺伝子に置換するような狭義の遺伝子治療ではなく,遺伝子を眼内の細胞に導入し,持続的に治療蛋白質を発現させるというドラッグデリバリーシステムとしての遺伝子治療(図1)です.現在AMDに対する臨床試験は,Genzyme社によるAAV2-sFLT01(http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01024998)と,OxfordBioMedica社によるRetinoStat(http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01301443)の2つが行われています.AAV2.sFLT01VEGFと結合し,その作用を阻害する働きのある蛋白質は抗VEGF療法に用いることが可能であり,それには抗体と受容体があります.現在,日本で用いられているのは抗VEGF抗体(のFab断片)ですが,VEGF受容体のキメラ蛋白であるVEGFTrap-Eyeについてもすでに臨床試験が行われています.アデノベクターにより抗VEGF抗体の軽鎖,重鎖を発現する遺伝子を導入する,マウスを用いた腫瘍の治療実験も行われ,その有効性が報告されています1)が,現在ヒトのAMDに対して行われているのはVEGF受容体を用いた臨床試験です.AAV2-sFLT01はVEGF受容体であるFlt-1のVEGF結合ドメインとヒト免疫グロブリンG(IgG)のFc断片のキメラ蛋白(sFLT01)の遺伝子をアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに組み込んだものです.(81)正常な遺伝子異常な蛋白質正常な蛋白質………………….治療蛋白質図1ドラッグデリバリーのツールとしての遺伝子治療A:狭義の遺伝子治療.異常な遺伝子を正常な遺伝子と置換することにより,疾患を治療する.B:ドラッグデリバリーのツールとしての遺伝子治療.治療遺伝子を導入し,細胞自らに治療蛋白質を製造させる.AAVは導入遺伝子が染色体に取り込まれない状態で長期間遺伝子の発現が持続するという特徴があり,Leber先天盲に対する遺伝子治療にも用いられています2,3).このAAV2.sFLT01の硝子体注射により,マウスの網膜新生血管,サルのCNVの抑制が可能であったことが報告され4,5),また,サルへのAAV2.sFLT01の硝子体注射後,12カ月の観察期間中,網膜電図,蛍光眼底造影に異常がみられなかった6)ことから,現在AMDに対するAAV2.sFLT01の硝子体注射のPhaseIの臨床試験が行われています.RetinoStatVEGFの阻害はCNVに対して現在のところ最も効果のある治療法です.しかし一方で,VEGFには神経保護作用があるともいわれており,ラットの虚血再灌流モデルを用いた研究でVEGFは神経細胞のアポトーシスを抑制する7)ことが報告されています.その後,ラットにおいて抗VEGF抗体単回投与では神経節細胞は傷害されなかったという報告8),可溶性VEGF受容体を発現するトランスジェニックマウスにおいて長期間VEGFをブロックし続けても網膜の神経細胞,血管に悪影響はなかったという報告9)もなされていますが,臨床的にVEGFを長期間ブロックすることが神経網膜や正常血管に影響を与えないのかどうかは,まだ議論の余地があります.このようなVEGF阻害による神経毒性の可能性を除外するためには,VEGFと結合する分子以外のあたらしい眼科Vol.29,No.8,201211070910-1810/12/\100/頁/JCOPY 血管新生阻害因子の遺伝子を導入するという手法が考えられ,それらの因子のなかで,現在遺伝子治療の臨床試験が行われているのがendostatinとangiostatinです.EndostatinはcollagenXVIIIの断片であり,a5b1インテグリンとの結合,VEGFレセプターからのシグナルの抑制,サイクリンDの阻害を介して血管内皮細胞の機能を阻害します.Angiostatinはfibrinogenの断片で,血管内皮細胞の細胞膜のATP(アデノシン三リン酸)シンターゼと結合し,遊走,増殖を阻害し,また細胞外マトリックスによるプラスミノーゲンの活性化を抑制し,内皮細胞の侵入を阻害します.これらの因子はともに腫瘍に伴う血管新生を阻害する働きがあり10,11),そしてこれらはともに遺伝子治療実験によって,網膜新生血管,CNVの抑制に有効であったことが報告されています12.16).レンチベクターは導入遺伝子がホストの染色体に取り込まれることによって遺伝子発現が長期間持続し,またパッケージできる遺伝子のサイズが大きいという特徴があります.そのため,RetinoStatは,レンチベクターであるequineinfectiousanemiaviralvector(EIAV)にendostatinとangiostatinの2つの遺伝子を組み込んだ構造となっています.このようなEIAVの網膜下注射によりendostatinとangiostatinの2つの遺伝子を発現させることによって,マウスのCNVの抑制が可能であった17)ことから,現在AMDに対するRetinoStatの網膜下投与のPhaseIの臨床試験が行われています.おわりに現在AMDに対する遺伝子治療としては,2つの臨床試験が行われています.これらの治療は,薬剤の反復投与の必要性を解消するものとして期待されます.また,これら2つの臨床試験においては,前房水中の治療蛋白質の定量がプロトコールに組み込まれています.これら2つの試験はベクターはAAVとレンチベクター,投与経路は硝子体注射と網膜下注射と異なるものを採用しており,ベクター,投与経路による遺伝子発現の違いを検討するうえでも興味深いものとなるものと思われます.文献1)WatanabeM,BoyerJL,HackettNRetal:Geneticdeliveryofthemurineequivalentofbevacizumab(avastin),ananti-vascularendothelialgrowthfactormonoclonalanti1108あたらしい眼科Vol.29,No.8,2012body,tosuppressgrowthofhumantumorsinimmunodeficientmice.HumGeneTher19:300-310,20082)MaguireAM,SimonelliF,PierceEAetal:SafetyandefficacyofgenetransferforLeber’scongenitalamaurosis.NEnglJMed358:2240-2248,20083)BainbridgeJW,SmithAJ,BarkerSSetal:EffectofgenetherapyonvisualfunctioninLeber’scongenitalamaurosis.NEnglJMed358:2231-2239,20084)PechanP,RubinH,LukasonMetal:Novelanti-VEGFchimericmoleculesdeliveredbyAAVvectorsforinhibitionofretinalneovascularization.GeneTher16:10-16,20095)LukasonM,DuFresneE,RubinHetal:InhibitionofchoroidalneovascularizationinanonhumanprimatemodelbyintravitrealadministrationofanAAV2vectorexpressinganovelanti-VEGFmolecule.MolTher19:260-265,20116)MaclachlanTK,LukasonM,CollinsMetal:PreclinicalsafetyevaluationofAAV2-sFLT01-agenetherapyforage-relatedmaculardegeneration.MolTher19:326-334,20117)NishijimaK,NgYS,ZhongLetal:Vascularendothelialgrowthfactor-Aisasurvivalfactorforretinalneuronsandacriticalneuroprotectantduringtheadaptiveresponsetoischemicinjury.AmJPathol171:53-67,20078)IriyamaA,ChenYN,TamakiYetal:Effectofanti-VEGFantibodyonretinalganglioncellsinrats.BrJOphthalmol91:1230-1233,20079)UenoS,PeaseME,WersingerDMetal:ProlongedblockadeofVEGFfamilymembersdoesnotcauseidentifiabledamagetoretinalneuronsorvessels.JCellPhysiol217:13-22,200810)O’ReillyMS,HolmgrenL,ShingYetal:Angiostatin:anovelangiogenesisinhibitorthatmediatesthesuppressionofmetastasesbyaLewislungcarcinoma.Cell79:315328,199411)O’ReillyMS,BoehmT,ShingYetal:Endostatin:anendogenousinhibitorofangiogenesisandtumorgrowth.Cell88:277-285,199712)MoriK,AndoA,GehlbachPetal:Inhibitionofchoroidalneovascularizationbyintravenousinjectionofadenoviralvectorsexpressingsecretableendostatin.AmJPathol159:313-320,200113)AuricchioA,BehlingKC,MaguireAMetal:Inhibitionofretinalneovascularizationbyintraocularviral-mediateddeliveryofanti-angiogenicagents.MolTher6:490-494,200214)LaiYK,ShenWY,BrankovMetal:Potentiallong-terminhibitionofocularneovascularizationbyrecombinantadeno-associatedvirus-mediatedsecretiongenetherapy.GeneTher9:804-813,200215)RaislerBJ,BernsKI,GrantMBetal:Adeno-associatedvirustype-2expressionofpigmentedepithelium-derivedfactororKringles1-3ofangiostatinreduceretinalneovascularization.ProcNatlAcadSciUSA99:8909-8914,2002(82) 16)IgarashiT,MiyakeK,KatoKetal:Lentivirus-mediatedmiaviralvector-mediatedcodeliveryofendostatinandexpressionofangiostatinefficientlyinhibitsneovascularangiostatindrivenbyretinalpigmentedepitheliumizationinamurineproliferativeretinopathymodel.GenespecificVMD2promoterinhibitschoroidalneovascularizaTher10:219-226,2003tion.HumGeneTher20:31-39,200917)KachiS,BinleyK,YokoiKetal:Equineinfectiousane■「新生血管と遺伝子治療」を読んで■最初の遺伝子治療の概念は,1960年代のTatumあとは異なり,遺伝子に関する理解や遺伝子操作技術がるいはLederbergの発表にさかのぼります.それは,飛躍的に進んでおり,ゆっくりではありますが,遺伝1つの遺伝子が1つの酵素を規定するのであれば,病子治療は確実に進歩しました.その結果,Leber先天的遺伝子を正常遺伝子に置き換えれば酵素異常を治療性黒内障に関するRPE65遺伝子導入治療が著効を示できるのではないかという単純なものでした.ところし,現在医学界全体から大いに期待されています.まが,病的遺伝子を正常遺伝子に置き換えることは実際た,それ以外でも閉鎖性,易操作性などの点から眼球上きわめて困難なため,病的遺伝子を排除せずとも新はきわめて遺伝子治療に適した臓器であることが理解しい遺伝子を導入すれば治療効果は十分ではないかとされるようになり,今回加地秀先生が説明されていいうアイデアが出され,オークリッジ研究所のるように,血管新生抑制遺伝子治療などの対象にされRogersは,アルギナーゼ欠損症のヒトにアルギナーています.特に驚かされるのは,治療を行う際の治療ゼ遺伝子をもつショウプパピローマウイルスを感染さ蛋白質の選定,その定量法などが具体的に設定されうせる実験を行いました.残念ながら,当時の知識や技るようになっており,すでに夢の治療ではなくなって術では,治療効果を示すだけのアルギナーゼ産生を誘いる点です.今後,眼科領域は他領域に先んじて遺伝導させることができずに結果は失敗に終わり,遺伝子子治療臨床応用の先進領域になることでしょう.治療という概念も長く忘れ去られました.1990年代初期の遺伝子治療研究に関わった者として,その後,20年以上の時を経て,1990年代にようや最初に遺伝子治療の概念を提唱したTatumやLederく今日的意味での遺伝子治療が始まりました.1990bergの先見性に敬意を抱くとともに,そのことを実年当時,遺伝子治療はすべての疾患治療を変えてしま感させてくれた現代科学の進歩に感謝の念を禁じ得まうというセンセーショナルな報道がなされましたが,せん.期待されたほどの治療効果はなく,再び遺伝子治療の鹿児島大学医学部眼科学坂本泰二冬が続くのかと危惧されました.ところが,40年前☆☆☆(83)あたらしい眼科Vol.29,No.8,20121109

抗VEGF治療:典型加齢黄斑変性と抗VEGF薬

2012年8月31日 金曜日

●連載③抗VEGF治療セミナー─病態─監修=安川力髙橋寛二1.典型加齢黄斑変性と抗VEGF薬鈴木三保子五味文大阪大学大学院医学系研究科眼科学典型的な滲出型加齢黄斑変性(AMD)に伴う脈絡膜新生血管に対する治療は,抗VEGF薬硝子体内注射が第一選択にあげられるが,抗VEGF療法は,病変タイプによって治療効果が異なることが知られている.本稿では,典型AMDに対する抗VEGF薬による治療効果について概説する.1型脈絡膜新生血管(CNV)(occultCNV)1型CNV(網膜色素上皮下CNV)は,フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)分類ではoccultCNVの所見を示すことが多く,加齢黄斑変性(AMD)のなかで最も頻度が高い.OccultCNVを伴うAMD患者を対象としたMARINAスタディでは,抗VEGF薬であるranibizumab0.5mgの毎月投与により視力スコアは7.2文字改善し,90%が2年間視力改善・維持したと報告されている1).1型CNVは抗VEGF療法によりその病巣の活動性は抑えられるものの,CNVそのものが消失することは少ない(図1).そのため,後述の2型CNV(classicCNV)と比較し,1型CNVは滲出性変化の再発率は高く,抗VEGF療法の追加治療回数は多い傾向にある.抗VEGF薬に反応するにもかかわらず,漿液性網膜.離などの滲出性変化を繰り返し起こす症例,治療を続けていても網膜色素上皮下の病巣が拡大を続ける症例,漿液性網膜.離は軽減するが持続する症例もみられ,注意深く治療にあたる必要がある.網膜色素上皮.離については,縮小する場合としない場合があり,その背景は不明である.また,1型CNVは治療経過中,ポリープ状脈絡膜血管症を合併することもあり,定期的な蛍光眼底造影検査を施行し,病態を把握する必要がある.色素上皮.離を伴う1型CNVに対する抗VEGF療法については,注意すべき合併症として網膜色素上皮裂孔があげられる.網膜色素上皮裂孔は,CNVの収縮により起こる治療前治療後図11型脈絡膜新生血管Ranibizumab硝子体内注射3回施行後,滲出性変化は消退したが,CNVは残存している.(79)あたらしい眼科Vol.29,No.8,201211050910-1810/12/\100/頁/JCOPY 治療前治療後治療前治療後図22型脈絡膜新生血管Ranibizumab硝子体内注射施行後,CNVは消退したが,中心窩網膜に瘢痕病巣が残存し,視力は術前と同じく0.1のままである.と考えられており,CNVの対側の網膜色素上皮.離辺縁に生じる.中心窩が網膜色素上皮.離の中心にある場合は,裂孔が中心窩に及ぶ可能性があるため,その危険性については治療前に患者に対して十分に説明する必要がある.2型CNV(classicCNV)2型CNV(網膜色素上皮上CNV)は,FA分類ではclassicCNVとよばれる所見をとることが多い.PredominantlyclassicCNVを伴うAMD患者を対象としたANCHORスタディでは,抗VEGF薬であるranibizumab0.5mgの毎月投与により,2年後の平均視力スコアがベースラインと比べて2段階以上の有意な増加を認めた2).視力と光干渉断層計の臨床所見を基本とした必要時投与(PRN投与)でも,同様に2段階以上の視力改善効果を認めている(PrONTO試験)3).PredominantlyclassicCNVに対するranibizumab単独投与は,先のoccultCNVと比較し,効果(CNV収縮,随伴する浮腫や出血・滲出の軽減)が速やかに表れることが多い.ただ長期にみると,病巣の辺縁から再燃することもあり,注意深い経過観察が必要である.中心窩下にCNVの瘢痕病巣が残った場合には,視力の改善が得られないこともある(図2).文献1)RosenfeldPJ,BrownDM,HeierJSetal:MARINAStudyGroup.Ranibizumabforneovascularage-relatedmaculardegeneration.NEnglJMed355:1419-1431,20062)BrownDM,MichelsM,KaiserPKetal:Ranibizumabversusverteporfinphotodynamictherapyforneovascularage-relatedmaculardegeneration:Two-yearresultsoftheANCHORstudy.Ophthalmology116:57-65,20093)FungAE,LalwaniGA,RosenfeldPJetal:Anopticalcoherencetomography-guided,variabledosingregimenwithintravitrealranibizumab(Lucentis)forneovascularage-relatedmaculardegeneration.AmJOphthalmol143:566-583,2007☆☆☆1106あたらしい眼科Vol.29,No.8,2012(80)

緑内障:前眼部OCTとレーザー虹彩切開術

2012年8月31日 金曜日

●連載146緑内障セミナー監修=岩田和雄山本哲也146.前眼部OCTとレーザー虹彩切開術川名啓介かわな眼科前眼部OCT(光干渉断層計)を用いることで,原発閉塞隅角緑内障眼にレーザー虹彩切開術を施行すると線維柱帯虹彩接触長,虹彩凸度が減少していることが明示された.術前に前眼部OCTを施行することで,前房と後房の圧格差を推測することが可能であり,治療法の決定と効果判定に有用である.前眼部OCT(opticalcoherencetomography;光干渉断層計)が開発されたことにより,前眼部の画像解析は容易で簡便になった.特に,従来の光学式機器では計測がむずかしい虹彩の断面や隅角付近の情報が手軽に得られるようになった.今回,前眼部OCTによるレーザー虹彩切開術(laseriridotomy:LI)における有用性について考えてみたい.原発閉塞隅角緑内障(primaryangleclosureglaucoma:PACG)は日本人において0.6%程度存在し1),沖縄などの南方ではそれよりも多い潜在的患者がいるとされている2).いったん緑内障発作が発症すると,視機能に大きな障害を残す場合があるために,早期発見と予防的治療が重要である.PACGの治療においては,初回にLIを選択するかあるいは白内障手術をするかは議論の分かれるところではあるが,今回はLIに絞って考察したい.Shaffer分類grade2以下のPACGに対してLIを施行した眼で検討すると,術前に比べ術後で線維柱帯虹彩接触長(trabeculaririscontactlength:TICL)(図1)と虹彩凸度(図2)が有意に減少し,その一方,前房容積(図3)は有意に増加していた.虹彩凸度は虹彩・毛様体の境界と虹彩・水晶体の境界をつないだ直線と虹彩裏面の最大距離と定義した.特に前房容積は術前後で約2倍弱程度の変化を示した.これらの結果より,LIを施行すると前房と後房の圧格差が解消されていることがわかる.圧格差が解消されているのにもかかわらず,TICLが0とならない症例も存在し,器質的接着の可能性かあるいは圧格差が十分に解消されていない場合,あ線維柱帯虹彩接触長(mm)p=0.0010.90.80.7LI前0.60.50.40.30.20.1LI後0pairedt-testLI前LI後図1原発閉塞隅角緑内障に対するLI施行前・後の変化左:TICLのLI施行前・後での比較.LI前に比べてLI後は有意にTICLが減少している.右:前眼部OCT画像.LI施行前・後においてTICLが減少していることがわかる.(77)あたらしい眼科Vol.29,No.8,201211030910-1810/12/\100/頁/JCOPY p<0.00010.450.4LI前0.350.30.250.20.150.10.05LI後0LI前LI後pairedt-test図2原発閉塞隅角緑内障に対するLI施行前・後の虹彩凸度の変化虹彩凸度(mm)左:虹彩凸度はLI前に比べLI後では有意に減少している.右:前眼部OCT画像.LI前は虹彩が前方に凸なのに対して,LI後では平坦となっている.その結果,隅角の開大がみられる.p=0.0001LI後に隅角角度が変化しないことが比較的多いと報告140されており,この場合にはplateauirisの関与などが考えられている3).虹彩根部の厚さや形態などからplat120前房容積(mm3)100806040200pairedt-testeauirisの要素がどの程度かを推測する必要がある.LIによって隅角形態が変化しない場合には白内障手術が適応になると考えられる.欧米人の報告であるが,LIの不成功例では術前の虹彩前彎が少ない,すなわち虹彩凸度が小さいと報告されている4).前房と後房の圧格差が少ないためにLIの不成功につながりうると考えられる.前眼部OCTを用いることで術前に虹彩や隅角の状態を評価することが可能となる.前房と後房の圧格差を推LI前LI後図3原発閉塞隅角緑内障に対するLI施行前・後の前房容積の変化前房容積はLI前とLI後では有意に増加し,2倍弱程度になる.るいはplateauirisの関与が考えられる.そのためLI後にTICLがあまり減少しない症例に対しては,白内障手術や隅角癒着解離術が必要となる可能性がある.前眼部OCTを使用することで他の光学式検査機器ではわかりにくい隅角閉塞の程度を知ることができた.特にTICLは線維柱帯の閉塞を表し,虹彩凸度は前房と後房の圧格差に関係するために,診断価値が高いと思われる.前房容積も著明に変化し,診断的価値が高い.ただし,TICLは器質的閉塞でも機能的閉塞においても,同様の値として計算されてしまうため,症例によっては前眼部OCTの検査だけでは不十分と考えられる.その場合には隅角鏡による圧迫隅角検査や超音波生体顕微鏡による検査が必要と考えられる.アジア系人種においては1104あたらしい眼科Vol.29,No.8,2012定することができるため,PACGに対して,LIの適応判定に役立つ.また,LI後にどの程度改善したか,そして追加治療の必要性を客観的に評価することができる.文献1)YamamotoT,IwaseA,AraieMetal:TheTajimiStudyreport2:prevalenceofprimaryangleclosureandsecondaryglaucomainaJapanesepopulation.Ophthalmology112:1661-1669,20052)澤口昭一:[緑内障診療グレーゾーンを超えて]診断編6疫学調査と遺伝久米島スタディの意義と主要知見.臨眼63(増刊):189-193,20093)LeeKS,SungKR,KangSYetal:Residualanteriorchamberangleclosureinnarrow-angleeyesfollowinglaserperipheraliridotomy:anteriorsegmentopticalcoherencetomographyquantitativestudy.JpnJOphthalmol55:213-219,20114)AngGS,WellsAP:Factorsinfluencinglaserperipheraliridotomyoutcomesinwhiteeyes:ananteriorsegmentopticalcoherencetomographystudy.JGlaucoma20:577-583,2011(78)

屈折矯正手術:フェムトセカンドレーザーによるAstigmatic Keratotomy

2012年8月31日 金曜日

屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─監修=木下茂●連載147大橋裕一坪田一男147.フェムトセカンドレーザーによる宮田和典宮田眼科病院AstigmaticKeratotomyフェムトセカンドレーザー(FSL)によるastigmatickeratotomy(AK)は,用手的な乱視矯正角膜切開に比較して正確に角膜切開が行えるため,矯正精度の向上が期待できる.一方,切開における機序と形態が用手法と異なるため,ノモグラムを新しく作成することが必要である.FSLによる白内障手術との併用を含め,今後の展開に注目したい.白内障手術後に求められる視力は,多焦点眼内レンズ(IOL)や屈折矯正手術の普及により,術後裸眼視力1.0以上を目指す時代になりつつある.良好な裸眼視力を得るには,術後の屈折誤差と乱視が小さいことが必要となる.良好な裸眼視力を得るための乱視に求められる条件は,倒乱視で1.0D,直乱視で1.5D以内と考えられている.一方,白内障手術症例における乱視1.0D超の症例は約3分の1あり1),白内障術後に良い裸眼視力を得るためには乱視矯正が重要である.乱視矯正術は,エキシマレーザーによる屈折矯正手術と,角膜輪部を切開するlimbalrelaxingincision(LRI),astigmatickeratotomy(AK)に二分される.角膜切開による乱視矯正は,用手的のため高価な器具を要せず,ある程度の乱視低減が期待できるため,白内障術中,術後に行われることが多い.光学径6.7mmに用手的に切開するAKに比べて,LRIは,軸ずれが少なく,光学部を温存できるため,多焦点IOL挿入症例の乱視低減法としても用いられる.角膜切開による乱視矯正術は,角膜の強主経線方向に作製した切開により,角膜形状を平坦化し,乱視を低減する手術である.正確な切開(深さ,長さ,均一性など)と,角膜乱視の強主経線と切開位置とを一致させることが必要であるが,用手的であるために実現するのはむずかしい.また,個人差,年齢による角膜の物理特性のばらつきにより矯正効果は変動するなどの問題を有している.切開位置については,axisregistration法2)などの工夫で改善できるが,一般的に,矯正精度はあまり望めず,角膜乱視をある程度小さくすることを目指した手術といえる.最近,LASIK(laserinsitukeratomileusis)や角膜移植術において,フェムトセカンドレーザー(FSL)が使(75)0910-1810/12/\100/頁/JCOPY用されている.フェムト秒のごく超短時間のパルスレーザーを集光し,photodisruptionにより角膜組織の切除を行う技術である.集光スポットを走査することで,任意形状の切開面を,正確に,少ないダメージで作製する.このFSLを角膜切開による乱視矯正術に応用すると,正確な乱視矯正が可能になると期待される.実際に角膜移植後の強度乱視眼にFSLによるAKを行った報告では,用手法に比べ,正確な切開深度と切開長が得られている3).白内障術後眼の乱視矯正に対しても,同様に有用と示唆される.そこで,FSLを使用した乱視矯正術を数例自験したので,知見した効果と問題点を紹介する.〔症例〕61歳,女性.両眼にIOL挿入後で右眼に高度な倒乱視(角膜乱視:3.75DAx36°)を有していたため,FSLによる乱視矯正を実施した.術前視力はVD=0.2×IOL(0.9×2.5D(cyl.4.5DAx130°)で,中心角膜厚(CCT)は535μmであった.角膜形状は図1に示す.手術は,用手的なLRIに準じて,8.5mm径,80°の一対の切開とした.切開深度は,用手法では浅くなり,FSLでは設定どおりとなる点を考慮し,用手法時の550μmより浅い350μmとした.角膜の強主経線に正確に切開するため,axisregistration法2)でマーキングを行い,IntraLaseiFSTM(AMO社)を用いて,エネルギー1.5μJ,スポット間隔2.0μmで切開を作製した.術後1カ月の角膜乱視は2.5DAx45°と低矯正であったが,視力はVD=0.7×IOL(1.0×1.0D(cyl.1.75DAx130°)と裸眼視力は良好に改善した.角膜形状のDifferenceMap(図2)では,術前の角膜乱視の強主経線方向に約2.6Dの円柱度数変化が確認された.術後の角膜形状をFourier解析すると,切開端に対応する位置に高次成分が増加していた(図3).これは,AK後の角あたらしい眼科Vol.29,No.8,20121101 図1術前の角膜形状図2角膜形状のDifferenceMap膜にみられる特徴である4).使用したFSLは,LASIKフラップや角膜移植向けに設計されているため切開径は9.5mm以下である.白内障術後は高齢者が多く,日本人ではその角膜径と眼瞼が小さい.そのため,FSLのサクションリングを角膜中心に固定するのは容易ではない.また,9.0mmの切開径を確保するのはむずかしく,切開径は8.5mm以下となる.よって,術後の角膜形状解析でみられるように,自験症例は,従来のLRIよりAKに近い矯正になっていると考えられる.また,切開の精度だけでなく,用手的な切開とは異なる切除機序であることを考慮し,新しくノモグラムを作成することが必須である.FSLによるAKは,高価な機器を必要とするため,臨床使用には適するとは考えにくいが,FSLによる白1102あたらしい眼科Vol.29,No.8,2012図3角膜形状のFourier解析内障手術が開発されている現在,白内障手術+乱視矯正への展開を期待したい.文献1)宅俊之,神谷和孝,天野理恵ほか:白内障手術前の角膜乱視.日眼会誌115:447-453,20112)MiyataK,MiyaiT,MinamiKetal:Limbalrelaxingincisionusingareferencepointandcornealtopographyforintraoperativeidentificationofthesteepestmeridian.JRefractSurg27:339-344,20113)NubileM,CarpinetoP,LanziniMetal:Femtosecondlaserarcuatekeratotomyforthecorrectionofhighastigmatismafterkeratoplasty.Ophthalmology116:10831092,20094)石井清,宮田和典:白内障術後の乱視矯正角膜切開術と角膜形状変化.臨眼47:1817-1822,1993(76)

眼内レンズ:眼内レンズ二次挿入後のループ脱出

2012年8月31日 金曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎312.眼内レンズ二次挿入後のループ脱出薄木佳子兵庫県立加古川医療センター眼科超音波白内障手術が一般的になった近年,虹彩切除を併施した白内障手術後症例に遭遇することはまれである.今回,水晶体.外摘出術後に眼内レンズ二次挿入術を受け,その後眼内レンズが回旋偏位し,虹彩切除部からループが脱出して視力低下や眼圧上昇などの合併症を生じた2症例を経験したので紹介する.近年,眼内レンズについて偏位や脱臼などの位置異常が注目されている.今回,二次挿入され.外固定となっている眼内レンズが長期間を経て回旋偏位し,ループが虹彩切除部より前房に脱出し合併症を生じた2症例を経験した.●症例〔症例1〕75歳,男性.図1症例1の前眼部所見虹彩切除部からのループの脱出がみられる.図2症例2のOCT所見漿液性.離を伴った.胞様黄斑浮腫を認めた.1986年水晶体.外摘出術,2000年眼内レンズ二次挿入術を受け,2010年右眼視力障害を自覚し,虹彩切除部よりループの脱出を指摘された(図1).初診時視力VD=0.1(0.7×sph.3.0D(cyl.1.0DAx50°)で,眼底には右眼黄斑浮腫が認められた.治療として眼内レンズの回転整復を行ったが,ループはレンズフックにて容易に回転した.眼内レンズの整復後,黄斑浮腫は軽快した.〔症例2〕64歳,男性.約20年前水晶体.外摘出術,2000年眼内レンズ二次挿入術を受け,2011年左眼視力障害を自覚した.初診時視力VS=0.05(0.1×sph.2.0D(cyl.3.0DAx70°)で,左眼眼底に.胞様黄斑浮腫を認めた(図2).左眼角膜内皮細胞密度も1,361/mm2に減少していた.その後徐々に眼圧上昇をきたし30mmHgを超えるようになった.老人環に隠れて不明であったが,隅角鏡検査にてはじめて虹彩切除部からの眼内レンズループの脱出が明らかとなり(図3),.胞様黄斑浮腫や眼圧上昇の原因と判明し図3症例2の隅角鏡所見隅角鏡検査にてはじめて虹彩切除部からのループの脱出が明らかとなった.(73)あたらしい眼科Vol.29,No.8,201210990910-1810/12/\100/頁/JCOPY 図4症例2の蛍光眼底所見た.治療として眼内レンズの回転整復を行った.術後は速やかに眼圧・黄斑浮腫ともに軽快し,視力も改善した.●考察白内障手術の術式は現在一般的である超音波乳化吸引術が行われるまでは,古くは水晶体.内摘出術(intracapsularcataractextraction:ICCE)が施行され,その後,水晶体.外摘出術(extracapsularcataractextraction:ECCE)に発展移行した.ECCE施行当初は水晶体摘出のみが行われ,眼内レンズは挿入されず術後は眼鏡や連続装用ソフトコンタクトレンズによって視力矯正を行っていた.眼内レンズを挿入しない白内障手術(ICCE・ECCE)では瞳孔ブロックによる眼圧上昇を防ぐため,一般的に周辺虹彩切除を併施していた.眼内レンズの普及に伴い,水晶体.外摘出術のみを受けた無水晶体眼に対して眼内レンズの二次挿入が行われる症例もあった.眼内レンズの.外固定は.内固定に比べて明らかに偏位量が大きいが,特に二次的に眼内レンズを.外移植した場合,移植までの期間が長いと水晶体前.と後.が癒着肥厚してSoemmerring’sringが形成され眼内レンズを圧排し,さらに固定が悪くなることがあるといわれている.眼内レンズループが虹彩切除部より脱出することはまれであるが,合併症として,①虹彩刺激から持続性プロスタグランジン産生による.胞様黄斑浮腫の発症,②虹彩への機械的刺激による虹彩炎,ループの隅角圧迫,虹彩接触で散布した色素が線維柱帯に沈着するpigmentdispersionsyndromeなど種々の原因による眼圧上昇,③ループの角膜への直接接触による内皮障害,などが報告されている.本2症例に対しては,レンズフックを用いた眼内レンズの回転整復のみで合併症を治癒しえたが,虹彩癒着などがある場合は眼内レンズの摘出・縫着が必要な場合もある.まとめ患者の高齢化に伴い,水晶体.内・.外摘出術後や今回の2症例のような眼内レンズ二次挿入術後の症例に遭遇することも念頭に置き,晩期合併症に注意して診療を行うことが重要である.2012年4月作成

コンタクトレンズ:コンタクトレンズ基礎講座【ハードコンタクトレンズ編】 ハードコンタクトレンズのデザインについて考える(1)

2012年8月31日 金曜日

コンタクトレンズセミナー監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純コンタクトレンズ基礎講座【ハードコンタクトレンズ編】338.ハードコンタクトレンズのデザイン植田喜一について考える(1)角膜の形状は単一な曲率ではなく,周辺部にいくにつれてしだいにフラットになっているため,ハードコンタクトレンズ(HCL)の周辺部にもゆるやかなカーブをもたせる必要があり,レンズによってそれぞれ特有の周辺部デザインが設計されている.HCLの内面はベースカーブ(BC),ブレンド,ベベルからなる.角膜全面からの浮き上がりをエッジリフトという(図1).このベベルの幅とエッジリフトの高さはHCLのセンタリング,動き,涙液交換,装用感などのフィッティングに関与するだけでなく,HCLのくもりにも影響を与える.患者が装用するHCLの断面を直接観察することはできないが,HCLを45°傾けてスリット光をあてると,ベベルの形状が誇張されてみえる.サンコンタクトレンベベルICエッジブレンドベースカーブフロントカーブフロントベベルエッジリフトPC図1HCLの周辺部デザインIC:intermediatecurve,PC:peripheralcurve.ウエダ眼科/山口大学大学院医学系研究科眼科学ズ㈱のベベルアナライザーRを使用すると容易に観察することができる.図2に数種類のHCLのベベルアナライザーRによる写真を示すが,製品によって内面周辺部の形状が大きく異なっている.同じサイズやBCであっても,異なるメーカーのHCLあるいは同じメーカーでも異なるタイプのHCLを装用すると,フィッティングに違いがあることを経験するが,そのおもな原因としてエッジリフトこの内面周辺部デザインの違いが考えられる.レンズ素材,サイズ,BC,度数を同じにして,ベベベベル幅(mm)0.40.60.8(mm)0.1310.1610.191図3ベベル幅,エッジリフトの異なる9種類の周辺部デザイン図2周辺部デザインの比較(ベベルアナライザーRによる形状解析)メーカーによって,同一メーカーでもレンズによって周辺部の形状は大きく異なっている.メニコンアイストメニコンZニチコンEX-UVサンコンマイルドⅡ(71)あたらしい眼科Vol.29,No.8,201210970910-1810/12/\100/頁/JCOPY a:0.4mm(狭)b:0.6mm(適)c:0.8mm(広)図4ベベル幅の比較(矢印:ベベル幅)a:0.131mm(低)b:0.161mm(適)c:0.191mm(高)図5エッジリフトの比較ル幅とエッジリフトを変えた9種類のHCLのベベルアナライザーRによる写真を図3に示す.エッジリフトを一定にしてベベル幅を変えたHCLと,ベベル幅を一定にしてエッジリフトを変えたHCLを,同一眼に装用した状態を図4,5に示す.●ベベル幅がフィッティングに及ぼす影響ベベル幅が狭いとHCLの静止位置は中央に安定しやすいが,ベベル幅が広いとHCLは下方に安定しやすい.ベベル幅が狭いHCLの動きは少なく,ときに固着することがある.ベベル幅の広いHCLの動きは大きく,瞬目によって引き上げられたHCLは耳側に蛇行しながらゆっくり下方に向かって動く.ベベル幅の狭いHCLは涙液交換が少ない.ベベル幅の広いHCLはベベル下に十分な量の涙液がプールしており,しっかりと涙液交換が行われているように思えるが,必ずしも効率の良いものではない.●エッジリフトのフィッティングに及ぼす影響エッジリフトが低いとベベル下の陰圧は強くなるため,レンズの接着力は強くなり,動きが少なくなる.エッジリフトが低すぎるとエッジが角膜周辺部や球結膜に強く接着し,ときに固着することがある.逆に,エッジリフトが高すぎると,上眼瞼の影響を受けやすくなり,動きが大きく不安定になり,HCLははずれやすくなる.涙液交換に関しては,エッジリフトが低いとレンズ下の涙液流入・流出が起こりにくい.一方,エッジリフトが高すぎると涙液層が破壊してしまい,効率の良い涙液交換が得られなくなる.1098あたらしい眼科Vol.29,No.8,2012(72)

写真:角膜上皮内癌

2012年8月31日 金曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦339.角膜上皮内癌細谷友雅兵庫医科大学眼科学①②③図2図1のシェーマ①:染色性の異なる異常上皮.②:正常角膜上皮.③:瞼縁.図1初診時の左眼前眼部フルオレセイン染色写真(84歳,女性)角膜外上方2/3の範囲にフルオレセイン染色性の異なる異常上皮を認める.PalisadesofVogt(POV)は明瞭でなく,輪部に隆起性病変は認めない.図3図1の生体共焦点顕微鏡写真(HeidelbergRetina図41%5.フルオロウラシル点眼治療2週間後の前眼部フルオレTomographII-RostockCorneaModuleR)セイン染色写真輝度の高い異型上皮細胞が観察される.核の大小不同広範囲の角膜上皮欠損を認める.感染巣は認めない.が目立つ.(表層から12μm)(69)あたらしい眼科Vol.29,No.8,201210950910-1810/12/\100/頁/JCOPY 角結膜に生じる上皮性の腫瘍は,基底膜が保たれたconjunctivalandcornealintraepithelialneoplasia(CIN)と,基底膜を越えて腫瘍が増大した扁平上皮癌(invasivesquamouscellcarcinoma;SCC)に分類される1).いずれも眼裂部,特に角膜輪部に好発し,角膜表層に侵入し,視力低下,慢性の不快感などの症状を示すこともある.発症要因には紫外線,炎症,ヒトパピローマウイルス(HPV)16型と18型の関与などが指摘されている.治療法として腫瘍切除,冷凍凝固,放射線治療のほか5-フルオロウラシル(5-FU),マイトマイシンC(MMC)などの代謝拮抗薬の点眼が有効である2,3).5-FU点眼が有効であった再発性角膜上皮内癌の症例を紹介する.〔症例〕84歳,女性.主訴:左眼視力低下.現病歴:平成13年,左眼視力低下を自覚し前医受診.角膜上皮下に淡い混濁を伴った異常上皮を認めたため,角膜表層切除術を施行され,病理検査にてCINと診断された.以降,平成16,17,21年に再発し,計4回の角膜表層切除術を受けた.平成23年9月兵庫医科大学病院眼科を受診した.全身疾患:特記すべき異常なし.初診時所見:左眼視力は0.2(0.5)で,角膜外上方2/3の範囲に淡い上皮下混濁を伴うフルオレセイン染色性の異なる異常上皮を認めた(図1).PalisadesofVogt(POV)は明瞭でなかった.輪部に隆起性病変はなく,眼球結膜には異常を認めず,耳前リンパ節は触知しなかった.生体共焦点顕微鏡(HeidelbergRetinaTomographII-RostockCorneaModuleR)では,輝度の高い異型上皮細胞が観察された(図3).最表層では核の大小不同が目立ったが,基底細胞は正常に近かった.経過:CINの再発と考え,5回目の切除術は輪部機能不全から術後の上皮化が困難となることも予測されたため,院内調整1%5-FU点眼1日3回による治療を開始した.点眼開始2週間後に眼痛を訴え,広範囲の角膜上皮欠損を認めた(図4).感染巣は認めなかった.5-FU点眼を中止し,ガチフロキサシン点眼1日3回のみとしたところ,5-FU点眼中止2週間後には上皮化が完了し,さらに点眼中止6週間後には角膜上皮は平滑透明となり,異常上皮を認めなくなった.白内障のため,視力は0.2(0.4)であった.腫瘍細胞が基底膜を越え,扁平上皮癌の状態まで進行した場合の治療は完全切除が基本であるが,上皮内癌にとどまっている場合は初回より代謝拮抗薬点眼による治療を行うこともある.これら代謝拮抗薬点眼の使用方法に確立されたプロトコールはない.当院では1%5-FU点眼1日3回,2週間継続を1クールとし,間に2.4週間の点眼中止期間をおき,1.3クール施行する方法を基本としている.5-FUは正常上皮の増殖も抑制するため,本症例のように突然の角膜上皮欠損を生じ,眼痛を訴えることがある.この場合,5-FUの投与を中止すると回復する.一方,MMC点眼は晩発性に強膜融解のリスクがあり,慎重に使用しなければならない.生体共焦点顕微鏡は,細隙灯顕微鏡では把握できない細胞レベルでの観察を非侵襲的に行うことができる.上皮内癌の症例では核の大小不同や癌真珠様所見が観察される3).厚みの薄い腫瘍はセンタリングをずらすことで断層像を観察することも可能であり,基底膜を越えての浸潤があるか否かを推察することもできる.確定診断は切除標本による病理診断を待たねばならないが,侵襲の少ない生体共焦点顕微鏡検査はCINの補助診断として有用である.文献1)細谷友雅,外園千恵:【角膜疾患Q&A】臨床編眼表面の腫瘍性疾患の診断と治療のポイントを教えてください.あたらしい眼科23(臨増):68-70,20072)辻英貴:眼表面悪性腫瘍に対する局所化学療法.あたらしい眼科28:1371-1376,20113)近間泰一郎:生体共焦点顕微鏡検査.日本の眼科82:908914,20111096あたらしい眼科Vol.29,No.8,2012(00)

総説:緑内障と超音波検査

2012年8月31日 金曜日

あたらしい眼科29(8):1075.1094,2012c総説第22回日本緑内障学会須田記念講演緑内障と超音波検査GlaucomaandUltrasonography宇治幸隆*はじめに須田記念講演のテーマを決めるにあたり,今日まで筆者と共同研究者が緑内障診療の発展にどのように関われたか,どのような貢献ができたかを検討した.その結果,超音波生体顕微鏡(ultrasoundbiomicroscopy:UBM)や超音波カラードプラ(colorDopplerimaging:CDI)などの超音波診断が急速に発展する時期に,超音波検査を積極的に緑内障診療に導入してきたことに気づき,このテーマについてまとめた.わが国では,1970年代から太根節直先生が前房隅角の定量計測をはじめさまざまな超音波診断の研究を進められ,また,UBMが登場して間がない1995年に澤田惇先生が,そして2006年に近藤武久先生が須田記念講演のなかで超音波診断に触れておられ,今回,講演内容をまとめるにあたり,諸先生の業績は大いに参考となった.I緑内障診療への超音波検査の関与図1は,緑内障の本態である網膜神経節細胞のapoptosisを起こす原因として高眼圧,虚血,遺伝,免疫などが考えられるが,それらに対する現状の検査,治療の関与を示している.緑内障診断のなかでも隅角検査は緑内障の病型を決め,治療方針を立てるうえできわめて重要であるが,それに関して超音波検査はUBMの登場以来,隅角観察の強力な補助となってきた.一方,緑内障図1緑内障診療の発展にどのように関われたか超音波検査UBMによる精度の高い隅角検査,球後血流検査CDIによる点眼薬の効果測定と,それら薬物の摘出灌流眼球における眼灌流量と電気生理学的反応への影響の研究などが,緑内障の本態である視神経障害を阻止するための診療にどのように関わるかを考察.NOapoptosis①②(UBM)CDIERG*YukitakaUji:東京医療センター感覚器センター/三重大学〔別刷請求先〕宇治幸隆:〒152-8902東京都目黒区東が丘2-5-1東京医療センター感覚器センター0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(49)1075 の原因の一つと考えられる慢性的な虚血に関しては,CDIによる眼血流測定が,さらには治療薬の眼血流への効果検証に有用な検査法として貢献してきた.筆者は緑内障治療薬の視神経保護効果の観点から,ネコ摘出灌流眼球を用いた実験系で緑内障治療点眼薬の眼灌流量への効果と電気生理学的な検討を行い,CDIの結果と対比させた.緑内障眼の超音波検査による隅角や眼血流の研究については,他の多くの施設からも優れた報告があり,それらを凌駕する内容を得られなかったが,筆者らは超音波検査技術や画像解析の質を向上させることに貢献できたのではないかと思う.II眼科超音波検査超音波の医学的利用は1950年代から始まり,2MHz以上の周波数が使われ,眼科では5.20MHzが一般的である.超音波には動的利用と通信利用があり,前者はエネルギーとして治療に応用されるが,検査に使われる超音波は通信利用と同じ出力をもつものでなければならず,Aslowasreasonablyachievable(ALARA)の精神に則り,最大出力係数を小さくして熱的および力学的バイオエフェクトを抑制することが重要である.そうでなければ繰り返し人体の検査に使うことができない.前眼部用のUBM機器は出力係数が0.4以下に低く抑えられているが,CDIに使われる機器は眼球以外の臓器を対象としたプローブを使うので,画面の出力係数が1.0を超える機種は避けるべきであり,さらに照射時間をできるかぎり短縮することが必要である.超音波検査の特徴については,以下のようなものがあげられる.1)断面像を得ることができる,2)観察光によって修飾を受けない(暗所における観察可能),3)角膜や中間透光体の異常や,解剖学的な理由で透見できない部分の観察が可能である,4)動的な変化も記録できる,5)無侵襲で繰り返し検査できる,である.上記の3)については,病的な状態として角膜混濁,白内障,硝子体出血混濁などがあげられ,解剖学的に眼窩,球後,視神経内,強膜内,虹彩内部,毛様体内部,脈絡膜内部などが観察困難な部位である.図2にその有用性が如実に示されたUBM画像の典型を示すが,このように,「断面像」と「暗所における観察」は超音波検査の大きな特徴である.光によって変化する虹彩と隅角を有する眼球においては,暗所の断面像は緑内障診療にきわめて有用な情報である.1076あたらしい眼科Vol.29,No.8,2012図2UBM像相対的瞳孔ブロックとプラトー虹彩のUBM像.明所から暗所へのUBM像の変化.III超音波生体顕微鏡(ultrasoundbiomicroscopy:UBM)かつてBarkanは,Koeppeレンズを用いて高倍率の詳細な隅角観察を行い,緑内障を隅角所見から2型に分類したが,彼の論文のなかで図3のような三次元的な隅角図を発表している1).このように隅角を断面的に捉えようとした最初の報告ではないかと思う.この流れがその後の虹彩と角膜のなす角度で隅角の広狭を分類したShaffer分類2)や,周辺虹彩の形状や虹彩根部の付着部を詳細に分類したSpaethの分類3)に受け継がれることになる.Spaethの分類はShafferの分類に比べて眼科医に浸透していないが,前眼部隅角を断面像として捉えたいという思いがUBMに発展したのではなかろうか4).そして,1990年UBMがPavlinら5,6)によって発表され,かつてBarkanが想像して描いた前眼部の高解像度断面像が得られるようになった.1.UBM画像計測前房隅角を二次元的に断面として描出できることは,計測が行いやすく,隅角の広狭の判断に有用である.最初Pavlinら6,7)がscleralspurを基準点にした隅角計測法を報告したが,隅角の広狭を表す指標angleopeningdistance(AOD)250,その後AOD500とtrabecular(50) UBM図3UBM像とBarkanの論文における隅角図(右図は文献1から許可を得て転載)Schwalbe’slineScleralspurARA750μm図4UBM像における新しい隅角計測法Scleralspurから750μm離れた角膜内面の点を求める.その点とscleralspurとを結ぶ直線に垂直な線を虹彩に向かって下す.この線と角膜内面,隅角底,虹彩表面によって作られる面積をanglerecessarea(ARA)とした.(文献8から許可を得て転載)irisangle(q1)が広く採用されるところとなった.しかし,Ishikawaら8)が虹彩が膨隆して隅角底が狭い症例でも,隅角底から離れたAOD500が同じであることを指摘し,その矛盾を改良する目的で,scleralspurから750μm離れた角膜内面の点を求め,その点とscleralspurを結ぶ直線に垂直な線を虹彩に向かって下し,この線と角膜内面,隅角底,虹彩表面によって作られる面積(anglerecessarea:ARA)を指標にすることを提案した(図4).そして,このARAを使えば,複数のパラメータを使わずとも,隅角の広狭を表現できることを証明した.またscleralspurを基準点とすることで,自動的にARAやAODが算出される解析ソフトUBMpro2000も考案した.その後このソフトは他のUBM機器や,最近では前眼部光干渉断層計(OCT)の画像解析にも採用され,ARAを指標とした解析結果が報告されるようになっている9).2.日本人正常眼の隅角計測筆者らはARAの応用として,眼科的異常を有さない日本人65例(男性30例,女性35例)のUBM像の解析を行った10).今までさまざまな年齢層の隅角の解析結果は報告されてきたが,本研究のように正常人を対象としたUBMによる解析は少ない.まず年齢層を若年(20.39歳),中年(40.59歳),高年(60歳以上)の3群に分け,隅角の加齢による変化をARAを指標に検討した.他の全身的因子や眼球計測値との相関も検討した.その結果ARAは前房深度,眼軸長,年齢,身長,屈折値と正または負の相関があることがわかった(表1).さらに4象限ごとのARAを計測し,加齢との変化を検討した.上側,下側,鼻側,耳側とも年齢が高くなるにつれARAが減少するが,特に,若年から中年になる段階で有意にARAが狭くなることが判明した.特に上側隅角は高年で他の象限よりもさらに狭くなる傾向がわかった(図5).このことは閉塞隅角緑内障では周辺虹彩前癒着が上側から生じるという報告11)や,狭隅角眼の上側(51)あたらしい眼科Vol.29,No.8,20121077 表1ARAと他のパラメータとの関係(Pairwiseanalysis)パラメータ相関係数p値前房深度0.68<0.001眼軸長0.58<0.001年齢.0.49<0.001身長0.370.003屈折異常.0.360.003性別.0.230.06水晶体厚.0.230.07体重0.210.09(文献10から許可を得て転載のうえ改変)隅角が有意に狭いというその後のKunimatsuら12)の報告とも相応すると思われる.そして,現在の日本社会の生活環境,日本人の身長や屈折値の動向から考えて,将来は高年者の隅角は現在よりは広く保たれ,日本人の閉塞隅角緑内障は減少するのではないかと推測された.3.体位による隅角変化のUBMによる解析狭隅角眼において,腹臥位による水晶体の前方移動によって誘発される瞳孔ブロックが,眼圧上昇メカニズムとの観点から,従来から多くの研究が続けられてきたが,腹臥位での前眼部の観察は困難なことから結果は統一されたものではなかった.しかし,UBMの登場とプローブの工夫により,体位変換による前房隅角全般の変化を捉えることができるようになった13).筆者らは,Zinn小帯の脆弱性から水晶体偏位が生じやすい落屑症候群において,腹臥位の及ぼす影響を検討した.表2に示すように,仰臥位から腹臥位への体位変換によって,前房深度と耳側および上側のARA,AOD500の有意の変化がみられた14).これは,耳側と上側から落屑物質に*0.400.350.300.250.200.150.100.050.00図5年齢で3群に分けられたグループの4象限ごとのARAの相違I(20.39歳),II(40.59歳),III(60歳以上).*p<0.01,#p<0.05,エラーバー=標準偏差,▲:上側象限,▼:下側象限,●:鼻側象限,◆:耳側象限.(文献10から許可を得て転載のうえ改変)よる変化が生じやすいという報告と一致した15,16).4.圧迫隅角UBMUBMの特徴は,超音波検査の特徴として既述したものと同じであるが,なかでも1)暗所での検査ができること,2)高解像度隅角断面像が得られることは,房水の流出部位の診断に重要である.ただ隅角鏡検査で重要な診断法である圧迫隅角検査がUBMでできない欠点があった.そこで,アイカップに角膜を圧迫する圧迫部を付けて,観察したい隅角の対側の角膜を圧迫部で押すことで圧迫隅角UBM検査が可能になった.同様のことは,ARA(mm2)年齢層ⅠⅡⅢ*****###表2体位変換によるUBM像の隅角変化仰臥位腹臥位p値変化量変化率(%)ACD(mm)2.91±0.342.84±0.35<0.00010.07±0.032.6±1.1上側0.18±0.090.14±0.070.0270.04±0.0519.0±27.4ARA下側0.19±0.090.16±0.080.080.02±0.0410.5±23.5(mm2)耳側0.23±0.080.17±0.07<0.00010.06±0.0226.6±8.9鼻側0.20±0.080.17±0.070.080.02±0.046.1±24.6上側0.25±0.110.21±0.100.0430.04±0.0615.4±25.9AOD500下側0.26±0.120.23±0.110.20.03±0.075.7±33.7(mm)耳側0.34±0.120.24±0.09<0.00010.10±0.0628.7±13.7鼻側0.30±0.120.26±0.090.110.04±0.070.40±37.5平均値±標準偏差.ACD:anteriorchamberdepth,AOD500:angleopeningdistance500,ARA:anglerecessarea.(文献14から許可を得て転載)1078あたらしい眼科Vol.29,No.8,2012(52) 5mm17mm30mm5mm17mm30mm12mm22mm29mmA12mm16mm27mm9mmBC通常のアイカップ小型のアイカップ圧迫部付きアイカップ図6通常のアイカップ,小型のアイカップ,圧迫部付きアイカップによる圧迫隅角UBM像Cの写真中,黒矢印は隅角閉塞を,白矢印は虹彩の形状を示す.C:角膜,CB:毛様体,S:強膜.(文献17から許可を得て転載)圧迫前圧迫中小型のアイカップを用いても可能であるが,圧迫部付きアイカップのほうが,有意に隅角を開大させることができた(図6)17).図7にrelativepupillaryblock(RPB),peripheralRPBanteriorsynechia(PAS),plateauirisconfiguration(PIC)の圧迫隅角UBM像を示す.多数例での圧迫隅角UBM像におけるAOD500とARAの変化を表3に示す18).圧迫前は3グループ間に差はないが,圧迫後ではすべてのグループで隅角は有意に開大する.しかし,RPBは他2グループに比べその変化は有意に大きいことがわかる.PASにおいては隅角癒着のために変化はPAS少ないが,癒着のないPICにおいてもdoublehumpsignとよばれる虹彩形状を反映してPAS同様大きな変化がみられないことが示されたことは興味深い.PIC図7Relativepupillaryblock(RPB),peripheralanteriorsynechia(PAS),plateauirisconfiguration(PIC)の圧迫前後の隅角UBM像(53)あたらしい眼科Vol.29,No.8,20121079 表3Relativepupillaryblock(RPB),peripheralanteriorsynechia(PAS),plateauirisconfiguration(PIC)の圧迫前後のUBM像における平均angleopeningdistance500(AOD500)と平均anglerecessarea(ARA)の変化圧迫前と圧迫中の平均AOD500(mm)圧迫前圧迫中p値*AOD500変化量RPB(mean±SD)0.04±0.05†0.35±0.18<0.0010.31±0.16‡PAS(mean±SD)0.02±0.04†0.12±0.130.00050.11±0.12‡PIC(mean±SD)0.04±0.05†0.16±0.11<0.00010.12±0.10†圧迫前と圧迫中の平均ARA(mm2)圧迫前圧迫中p値*ARA変化量RPB(mean±SD)0.03±0.03†0.21±0.11<0.0010.18±0.10‡PAS(mean±SD)0.02±0.02†0.07±0.060.00030.06±0.06‡PIC(mean±SD)0.03±0.03†0.12±0.10<0.00010.09±0.10†*Pairedt-test:beforevs.withindentaion,†Mann-Whitneytest:p>0.05,‡Mann-Whitneytest:p<0.01.(文献18から許可を得て転載のうえ改変)PMMAMirrorHalfmirrorIndexPMMAⅠⅡⅢ図8インデックス付きゴニオレンズ隅角鏡の内部にハーフミラーとインデックスを内蔵.15°角でスリット光を入射した場合の線維柱帯表面と根部付近虹彩面とのなす角度10°(I),20°(II),45°(III)別に描いたインデックス.(文献20から許可を得て転載)5.UBM画像計測による隅角鏡所見の検証緑内障診療における隅角観察は基本的には隅角鏡によるものであるので,日ごろから隅角鏡検査に習熟することは重要である.ただ,得られた隅角鏡所見の正確さを検証することは必要であり,どのようなベテランにも常に要求される.以前,vanHerick法で2°以下の狭隅角を隅角鏡検査に習熟した眼科医によるShaffer分類と,UBMのAOD500とARA計測結果を比較したことがある.その結果はShaffer分類1と2に分類された隅角で,上側と鼻側でUBM計測値において有意な差が検出されたが,他の部位は熟練した眼科医でも明瞭な分類が困難なことを示す結果であった19).おそらく対象にShaffer分類1と2の境界のような隅角が含まれていて,明瞭な差が出なかった可能性があるが,狭隅角で角度10°以下かそれより広くて20°以下かの判定がいかにむずかしいかが示された.筆者らは隅角鏡の内部に種々のインデックスを内蔵させ,それをハーフミラーで隅角に投影して計測を行うインデックス付きゴニオレンズを開発している20)が,ゴニオレンズの一つに,15°角でスリット光を入射した場合の線維柱帯表面と虹彩面とのなす角度が10°(I),20°(II),45°(III)のときのスリット光の状態を示したインデックス内蔵がある(図8).それを使って,同一眼でインデックス付き隅角鏡による隅角広狭の判定とUBM測定値の関係を検討した.その結果,細隙灯顕微鏡ではスリット光が横方向からの入射のみなので隅角上側と下側の観察に限られるが,表4に示すように,Shaffer分類1080あたらしい眼科Vol.29,No.8,2012(54) 表4インデックス付きゴニオレンズによる隅角広狭の判定とUBM測定値の関係象限ゴンオレンズによる分類ARA(mm2)AOD500(mm)上側1以下0.02±0.03*0.03±0.06*上側20.08±0.040.11±0.06下側1以下0.05±0.03*0.08±0.05*下側20.08±0.040.12±0.04*:p<0.01unpairedt-test.がUBM計測結果で有意な差として検証された.インデックス内蔵隅角鏡を使えば,隅角の狭さの分類が行いやすいことを示す結果である.6.暗所における隅角観察の必要性ArchivesOphthalmologyに掲載されたPambeg21)のeditorialcommentをはじめ,狭隅角を見逃す理由について種々指摘されているが,なかでも暗所で検査せずに,瞳孔にスリット光を入れないように注意しないのが問題と指摘されている.たとえば,Barkanaら22)は暗所での隅角鏡検査では94%のappositionalangleclosureは明所では56%の診断率に低下することを,佐久間ら23)は暗所でのUBM検査が機能的隅角閉塞の診断に必要であることを,そしてIshikawaら8)も明所でのUBMで開放隅角と判断されたものが,暗所では55.6%がiridotrabecularappositionであったと報告している.すなわち,隅角鏡で隅角の広狭を判断するには,瞳孔にスリット光を入れないように,暗所で行うことが必要でUBM隅角鏡明所暗所白色光赤色光図9白色光と赤外光による隅角鏡所見の比較上段に明所,暗所のUBM像を,下段に暗所で白色光と赤外光による隅角鏡所見を示す.(文献24から許可を得て転載)ある.そこで,暗所で,スリット光に赤外光を使った隅角観察を行い,それを赤外線撮影用カメラで隅角を捉える方法を考案した24).完全な暗所下の隅角鏡検査である.この方法により図9のように暗所下の赤外光観察と同一眼のUBM像を比較することは,隅角所見の理解に大きな助けとなる.また以前,白色LED(発光ダイオード)を内蔵させた隅角鏡を開発したが,これを赤外LEDにすることによって,さらに簡単に赤外光隅角鏡検査ができることがわかり,実用化をめざしている.つぎに,赤外光隅角鏡検査の有用性を検討した.vanHerick法で2°以下浅前房症例5例10眼において,明所と,暗所で1mm以下にスリット光源を絞って瞳孔に光表5浅前房眼の隅角鏡検査における照明条件による相違明所1mm光源下暗所完全な暗所上側下側鼻側耳側上側下側鼻側耳側上側下側鼻側耳側症例1R++++.+……L++++.++…..症例2R.++..++…..L.++..++…..症例3R…………L…………症例4R.+……….L++.+……..症例5R.++..+……L.+……….明所,暗所で1mm以下のスリット光源使用,完全な暗所(赤外光スリットランプ)を使用したときのtrabecularmeshworkの観察状態.+:Trabecularmeshworkが観察できる..:Trabecularmeshworkが観察できない.(55)あたらしい眼科Vol.29,No.8,20121081 表6UD.6010とModel840のシステムの比較UD-6010Model840(トーメー)(Zeiss-Humphrey)振動子周波数40MHz50MHz走査方式電磁式・リニアスキャンメカニカル・リニアスキャン観察範囲幅9mm×深さ6mm幅5mm×深さ5mm表示分解能50×50μm50×50μmフレームレート10枚/秒8枚/秒プローブ保護キャップ+─アイカップの大きさ>定量解析ソフト標準装備画像保存コンパクトメモリーフラッシュを入れないように観察した場合と,完全な暗所で赤外光スリットランプを使った方法の比較を行った.表5に示すように,Scheie分類grade3以上に相当するtrabecularmeshworkが観察できない部位は,明所で21/40箇所(53%),暗所下1mm幅スリット光で32/40箇所(80%),完全な暗所で40/40箇所(100%)となった.しかも1mmスリット光では隅角の観察は困難であるが,赤外光では広い範囲の隅角を見ることができることも再確認された.以上の結果から,機能的隅角閉塞の診断率向上に,赤外光スリットランプシステムが有用であることが示された.また,これらの研究を進めるうえで,UBM像が大きな助けになると思われた.7.国産UBMUBM検査は日本でも広く採用され,緑内障診療にいわゆる一つの革命をもたらしたと思う.しかし,UBM検査に大きな転機が訪れた.一つはHumphrey社の市場撤退とParadigm社への技術移転がなされたことで,日本でUBM機器が手に入りにくくなった.もう一つは前眼部OCTの登場である.そこで,国産でModel840と同等のUBM機器が必要になった.筆者らはトーメー社が新しいUBM機器を製作する機会に参画でき,期待に沿うUD-6010が誕生した.もう一つのOCTの登場については,非接触のOCTは術後の観察に適し,高解像度など多くの優れた点をもつ25)が,現時点では圧迫隅角OCTや伏臥位OCTはなく,UBMのように毛様体は完全に描出できず,UBMの価値が下がったとは思われない.国産UBM機器は眼球後部の観察が主であった従来からあるUD-1000に前眼部用に高周波数のUD-6010を1082あたらしい眼科Vol.29,No.8,2012(文献26から許可を得て転載のうえ改変)装備したものである.表6にModel840との比較を示す26).特徴はアイカップは大きいがプローブは保護キャップで包まれ安全性が増したこと,コンパクトメモリーフラッシュによる画像保存であること,そして幅9mm×深さ6mmの広い画像が得られ,図10のように瞳孔縁から毛様体まで一度に観察できる点である.さらに最近,60MHzの高周波UBMプローブUD-8060が市場に出たが,これはアイカップ不要でプローブ先端が柔らかい保護キャップで覆われているので,どのような体位でも検査ができることから,伏臥位UBMの研究の進展を期待したい.今後はUD-6010による結果が蓄積することになるが,従来からModel840で得られたデータも膨大で貴重であり,両者による画像の計測値の関係を検討した.同一眼,同一条件でAOD250,AOD500,ARAを比較したとUD-6010Model840明所暗所図10UBMプローブUD.6010によるUBM像と,Model840によるUBM像(56) ころ,AOD500はほぼ同等であるが,AOD250とARAはUD-6010のほうがModel840より小さい傾向がみられた.特に狭隅角眼でその傾向がみられることから,隅角底付近の画像の違いが関係していると考えられた.隅角底から離れた箇所の垂直の計測であるAOD500で差が出ないことの説明になるかもしれない.この結果から,経時的な変化をみるには同一機器で解析をしたほうがよいと思われた.8.毛様体観察の有用性UBMの特徴の一つに毛様体観察に適していることがある.通常では透見できない部分が観察できるという超音波の特徴が発揮できる領域である.たとえば,原田病をはじめ毛様体脈絡膜に異常をきたす疾患において,UBMによる毛様体.離の観察が治療経過を判断する有力な所見となることが報告されている27).緑内障濾過手術後の低眼圧と脈絡膜.離は知られている所見であるが,筆者らは眼底鏡で明瞭な脈絡膜.離が観察されない症例においても,そのような所見が認められるかをUBMで観察した.図11は濾過手術後の毛様体のUBMでの経過観察である.トラベクレクトミー術後濾過胞が形成され,術前にはなかったsupraciliochoroidalfluid(SCF)が観察されるが,術後16日目には消失したことを示している.そして術後,眼底検査で脈絡膜.離を観察できないが,UBMでSCFが40%にみられることを報告した28).SCFは1象限から全周に及ぶものもあり,SCFが観察される間は低眼圧で,消失すると眼圧が上昇し,消失する時期は4週間以内が多かった.また,濾過胞がなくても眼圧コントロールが良好の症例にもしばしば遭遇する.筆者らは,濾過胞形成がなく術後眼圧15mmHg未満(5.14mmHg)の症例8眼(術後6.53週)中5眼(63%)において,UBMで90.360°にわたりSCFを認めている29).濾過手術後の眼圧下降機序としては,1)結膜濾過胞への房水流出,2)毛様体.離(毛様体上腔液貯留),3)強膜内への房水吸収,4)Schlemm管断端からSchlemm管内への房水流出,5)増殖抑制薬による房水産生低下などが考えられるが,2)による低眼圧発生機序として,つぎのような原因が考えられる.手術侵襲によって毛様体筋束の流出抵抗低下が生じ,毛様体強膜間隙に房水が流出して低眼圧が生じる.眼圧が毛様体静脈圧より低いため,この毛様体上腔液はそのまま貯留し,さらに房水産生低下を起こし低眼圧になるという悪循環である.しかし,もしUBMで観察されたような毛様体への適度の房水流出であれば,適度な低眼圧にできるのではないかと考えられる.そして80年以上前から今日まで永続的に房水を毛様体上腔に流す目的で,さまざまな材質のシャントが試されてきた.最近では前房と毛様体上腔をつなぐ金材質のgoldmicroshuntが報告され30),長期の結果報告が待たれるところである.このような毛様体に関係する治療が広がれば,その効果の検証および経過観察にUBMは必須ではないかと考えられる.それでは,もう一つの超音波検査CDIに話を移す.SCF図11UBMで観察されたトラベクレクトミー後の毛様体上腔液の経過A:術前.B:術後8日目,SCFの貯留.C:術後16日目,SCFは消失.(文献28から許可を得て転載)(57)あたらしい眼科Vol.29,No.8,20121083 IV超音波カラードプラ(colorDopplerimaging:CDI)1.緑内障における血流測定の意義1970年にDranceら31)は,慢性の緑内障において,視神経乳頭の局所虚血を示すsectorhemorrhageと弓状暗点を伴った症例を報告し,乳頭の血流状態と緑内障の進行に深い関係があることを報告した.これは眼科医の眼を眼圧以外の血流というものに向けさせた一つの大きな発見であった.その後のGlasterをはじめとした数々の報告32.34)から,乳頭出血は緑内障の進行因子であり,高眼圧より低眼圧緑内障に多くみられることがわかり,高眼圧が主たる原因とする機械的障害説に対峙する血管障害説の登場となり,その後,normaltensionglaucoma(NTG)の循環動態を主とする全身因子の検討や,血流の研究に動きだすことになった.NTGの危険因子として,眼圧,近視,遺伝,自己免疫因子や,血流に関するものとして乳頭出血,乳頭周囲脈絡膜萎縮,夜間血圧低下など全身血圧の異常,片頭痛,血液凝固亢進,冷水負荷試験陽性などがあげられ,眼血流に関する論文も多数にのぼる.しかし,常に指摘される問題として,血管障害説の根拠はいずれも間接的なものであり,ヒトの緑内障のような長期にわたって進行する動物モデルがないことが弱点である.それを補うにはさらに多くの検討を重ねるしかないと思われる.また,緑内障眼の眼血流の課題としては,1)緑内障点眼によって血流改善があるのか,2)測定結果は視神経障害を反映するのか,3)血流パラメータを改善することができれば神経保護につながるのか,これらも今後検討を重ねるしかない.2.眼血流測定眼血流研究の実験方法に,以下のような3つの方法がある.1)摘出された血管を直接調べる方法,2)摘出された眼球全体で調べる方法,3)臨床的に多くの人が取り組んでいる生体で測定する方法,である.1)の摘出血管の動態をみる方法には,Yuら35),吉冨らが行っているような,血管自体の薬物への反応をみる方法がある.2)の摘出眼球を用いた実験は温血動物と冷血動物で方法は違うが,温血動物の眼球においては,灌流によって機能を維持しながら行う方法である.そして3)の生体での方法は,球後血流を測定するCDIと眼底カメ1084あたらしい眼科Vol.29,No.8,2012ラで眼底の血管をみながら測定する方法に分類される.前者は網膜全体や脈絡膜を含めた後眼部全体の血流を観察できるが,眼底の血流はその結果から類推することになり,後者は眼底局所の血流測定で,太い眼動脈や眼球全体の血流は推測することになる.すなわち,眼血流に関するあらゆる血管を一度に検査できる方法は今のところない.ここでは,筆者らが行っているCDIを紹介し,得られた結果について述べる.3.CDIの特徴CDIは基本的には仰臥位で,閉瞼し,低周波のプローブを眼瞼の上からそっと当てて検査を行う.測定対象は眼動脈(ophthalmicartery:OA),網膜中心動脈(centralretinalartery:CRA),短後毛様動脈(shortposteriorciliaryartery:PCA)で,PCAに関しては,鼻側のPCA(NPCA)と耳側のPCA(TPCA)に分けて測定することが多い.CDIの特徴を列挙すると,1)眼窩の血管の血流測定ができる,2)眼球に向かってくる血管の血流測定に適している,3)血流方向と拍動が一目で把握できる,4)眼球との位置関係から血管を同定できる,5)理学的な侵襲がなく,比較的短時間で検査できる,6)ドプラシフト周波数を高速Fourier変換(FFT)し,血流速度をリアルタイム表示する.測定はカラーフロー画面で血管を同定し,拍動にカーソルを合わせ,その部分の血流速度はFFTドプラ画像に表示される,である.図12のように,緑内障に深く関わる篩板前部および乳頭循環乳頭表層篩板前部篩板短後毛様動脈篩板後部網膜中心動脈図12視神経乳頭の血流支配(58) 篩板はPCAから直接に,またPCAによって血液供給を受けている乳頭周囲脈絡膜からの分枝によって養われる.視神経乳頭表層や篩板後部はCRAの分枝によって血液供給を受けている.眼血流は血管が細く,速度が遅いことから,超音波による測定は困難であるが,最近のテクノロジーの進歩はそれを可能にした.使用される超音波の波長は100.700μmであり,赤血球一つの直径は8.9μmであるので,血球一つひとつを捉えることは不可能であるが,500万/mm2個が不規則に分布して塊のように流れるためにドプラシフトを捉えられる.また,発信周波数の10万分の1の変化を捉えられることから,眼血流も高い精度で検査できるようになっている.まず全身の血圧,眼圧,脈拍を測定する.従来から血圧,眼圧から眼灌流圧(ocularperfusionpressure:OPP)を以下の式,図13短後毛様動脈のCDI上段はRIの高いFFTドプラ.下段はRIの低いFFTドプラ.(59)2/3{最低血圧+1/3(最高血圧.最低血圧)}.眼圧によって求め,眼循環動態の指標とすることが行われてきた.CDIでは,前述した血管の最高流速(peaksystolicvelocity:PSV),最低流速(enddiastolicvelocity:EDV),平均流速(meanenvelopedflowvelocity:MFV)を測定する.循環動態を正確に捉えるためには血流量,血管径の測定が必要であるが,CDIでは不可能か不正確である.そこで,血流速度から,以下の式で末梢血管抵抗を計算し,眼循環動態の指標とする.抵抗指数(resistanceindex:RI)=(PSV.EDV)/PSVあるいは,抵抗指数(pulsatilityresistiveindex:PI)=(PSV.EDV)/MFVRIの高い例と低い例を示す(図13).末梢血管抵抗が高い例では,最高流速から急峻に血流速度が落ちて低い最低流速になり,血管に弾力性がないことが示される.一方,RIが低い例では,最低流速の低下は緩やかで,最低流速は比較的高く,すなわち眼循環動態は良く,したがって血流量も多いという推測ができる.4.緑内障眼のCDICDIによる緑内障眼の血流異常の報告は多い.その内容は,眼血流速度がprimaryopenangleglaucoma(POAG)進行例やNTGで遅いということを示したものがほとんどで,多くの報告の結果をまとめると以下のごとくになる.1)報告によって,対照となる血管がさまざま,2)全般的に緑内障では眼血流は悪い,3)緑内障視神経障害が強いほど異常,4)一般にNTGのほうが血流異常が大きい,5)負荷テストをするとより顕著になる,である.さらにチモロール点眼薬全盛の時代に,Harrisら36)がCDIで点眼による眼血流への影響を比較し,ベタキソロールはNTGにおいてチモロールと異なり眼圧の有意な低下を起こさなかったが,4血管の平均EDVを30%増加させ,平均RIを低下させることを報告した.その結果,緑内障治療点眼薬の選択には,全身副作用だけでなく,眼血流に良い点眼を,特に血流の悪い緑内障眼に対しては血流改善を念頭において治療することが勧められるようになった.あたらしい眼科Vol.29,No.8,20121085 5.緑内障治療点眼薬の眼血流への影響筆者らが緑内障治療点眼薬の眼血流への影響をCDIで測定した結果を報告する.誌面の関係で,結果のみを示す.a.プロスタグランジン関連薬ラタノプロスト(商品名:キサラタン)NTG患者10例(平均年齢58.6±4.8歳)への点眼2時間後と4週間連続点眼後のCDIの結果は,PCA,CRAの血流速度は点眼2時間後で有意に増加したが,4週間後では有意な変化は消失した.両測定時のRIの変化はなかった.また,両測定時とも血圧,脈拍の変化はなく,眼圧の有意の低下があったことから,OPPの有意の増加がみられた.この結果の解釈として,RIが変化しなかったことから,ラタノプロストには末梢血管抵抗を下げる効果はないと考えられる.しかし,強力な眼圧下降効果により,OPPは増加する.一方,代謝型プロスタグランジン系治療薬ウノプロストンはラタノプロストと異なり,最低流速を増加させ,RIを低下させることから37,38),多くの研究が報告しているようにNO(一酸化窒素)によって,血流増加が期待できる.OACRA6050403020100201510500.90.80.70.60.50.40.3Wilcoxonsigned-ranksumtest,*:p<0.05ResistanceindexEDV(cm/sec)PSV(cm/sec)b.ab.adrenergicantagonistニプラジロール(商品名:ハイパジール)NTG患者10例(平均年齢58.9±9.3歳)への点眼2時間後と4週間連続点眼後のCDIの結果は,CRAでは,2時間後も4週間後もEDVの増加,PCAは2時間後にEDVが増加,RIはCRA,PCAとも両測定時に有意の低下がみられた.また,眼圧の有意の低下と点眼2時間後にはOPPの増加がみられた39).特にRIの低下がみられたことから,点眼薬が球後に到達し,NOによる血管拡張によって末梢血管抵抗が低下したと考えられる40,41)(図14).c.b1.selectiveadrenergicantagonist塩酸ベタキソロール(商品名:ベトプティック)POAG患者21例,ocularhypertension(OH)患者12例(平均年齢61.7±13.2歳)への点眼2時間後と12カ月間連続点眼後のCDIの結果は,両測定時とも,CRA,PCAにおいてEDVの有意の増加があり,PIの有意の低下がみられた.また眼圧の有意の低下はあるが,血圧などには変化はみられなかった42).この結果はHarrisら36)の報告と一致し,塩酸ベタキソロールのもつカルNPCATPCANipradilol**************0510152002468100.30.40.50.60.70.80.90246810051015200.30.40.50.60.70.80.9051015200246810Before2hrs4weeksBefore2hrs4weeksBefore2hrs4weeksBefore2hrs4weeksBefore2hrs4weeksBefore2hrs4weeksBefore2hrs4weeksBefore2hrs4weeksBefore2hrs4weeksBefore2hrs4weeksBefore2hrs4weeksBefore2hrs4weeks0.30.40.50.60.70.80.9図14NTGにおけるニプラジロール点眼2時間後,4週間連続点眼後のCDI1086あたらしい眼科Vol.29,No.8,2012(60) シウム拮抗作用によるものと推察された.d.b1b2.adrenergicantagonist塩酸カルテオロール(商品名:ミケラン)NTG患者10例(平均年齢63.5±4.8歳)への点眼2時間後と4週間連続点眼後のCDIの結果は,点眼2時間後においてPCAのRIの有意の低下はあったが,4週間後にはその変化は消失していた.また,眼圧は有意の低下を示したが,血圧の低下が同時にあり,その結果,OPPの減少を認めた.e.a1.adrenergicantagonist塩酸ブナゾシン(商品名:デタントール)NTG患者10例(平均年齢60.3±7.2歳)への点眼2時間後と,4週間連続点眼後のCDIの結果は球後の眼血流には有意の変化はなかった.また,有意の眼圧低下と血圧低下があったが,OPPに変化はなかった.V摘出灌流眼球における研究1.摘出灌流眼球実験の特徴さて,CDIの結果と比較するために,緑内障治療点眼薬のネコ摘出灌流眼球の灌流状態と電気生理学的反応への影響を検討した.哺乳類の眼球を用いた実験で薬理学的な作用の研究に適していると考えられる摘出灌流眼球を用いる方法の特徴は以下のようになる.1)灌流液の組成や生物物理学的性質の正確なコントロールができる,2)実験動物の血圧,ホルモン,電解質の変動や中枢神経系からの影響が排除できる,3)灌流システムの物理的および化学的条件を変動させたり,薬物を投与したとき,それに対応した結果を把握しやすく,投与された薬物は短時間にwashoutできる,4)心臓の拍動や呼吸による体動などがなく,細胞内誘導による電気生理学的実験に適している,である.つまりinvivoとinvitroの両方の特徴をもった実験系といえる.実験系の詳細は他の論文で発表されている43.45)ので,簡略に述べる(図15).全身麻酔下でネコの眼球を摘出後速やかにophthalmociliaryarteryにカニューレを入れ,酸素を飽和させた灌流液で眼球を灌流する.通常,温血動物では眼球は摘出後,機能は急速に消失し回復は不可能であるが,10数分以内に灌流を開始できれば,その後10時間以上にわたって電気生理学的な機能は維持でき,電子顕微鏡的にも細胞形態の維持が証明されている.灌流状態が安定したら,正確な濃度,注入速度のコントロール下に,一定時間薬物を灌流液に投与し,灌FlowmeterPerfusateDrugONRERGVortexveinLightOphthalmociliaryartery図15摘出灌流眼球における灌流量測定とERGおよびONRの測定システム流量への影響と,網膜電図(ERG),視神経電位(opticnerveresponse:ONR)への効果を測定記録する.灌流液の酸素(O2)分圧,温度,pH,酸塩基平衡,glucose濃度などによって電気生理学的反応は影響されるが,それらが一定に調整されれば,灌流量に比例して反応は増減する.灌流液中に薬物が投与されたにもかかわらず,灌流量の変化なしにERGなどの変化が生じれば,その薬物が電気生理学的反応の発生部位に作用した結果であると解釈できる.つまり薬物に対する受容体の存在を意味する.それでは,以下に筆者らが緑内障治療点眼薬で検討した結果について紹介する.2.緑内障治療点眼薬の灌流量と電気生理学的反応への影響a.b1.selectiveadrenergicantagonist塩酸ベタキソロール(商品名:ベトプティック)ネコ摘出灌流眼球にb1-selectiveadrenergicantagonist塩酸ベタキソロールを10分間投与すると,図16のようにERG反応は増大し,投与を終了すると徐々に元の電位に減弱する.ベタキソロールによって灌流量は増加するが,特に50μM以上で顕著であった(図17).ERGb波,a波とも増加したが,いずれも濃度依存性であった46)(図18).これはベタキソロールのもつCa拮抗作用による網膜血管の拡張によって灌流量が増加し47.49),ERGの増大が生じたと解釈された.この結果はCDIの結果と合致している.(61)あたらしい眼科Vol.29,No.8,20121087 2402202001800min48200ms10080010203040506011.5濃度(μM)220ERGb波振幅(%)ERGa波振幅(%)160140120132001801601401850120100μV1000102030405060図16摘出灌流眼球におけるベタキソロール30μM10分間濃度(μM)投与による暗順応ERGの経過図18ベタキソール濃度別の暗順応ERGa波振幅,ERG左側の数字はベタキソロール投与開始からの時間.b波振幅の投与前(100%とする)からの最大変化(文献46から許可を得て転載)(文献46から許可を得て転載のうえ改変)16テオロールのもつendotheliumderivedrelaxingfactor14121086420-2(EDRF)やintrinsicsympathomimeticactivity(ISA)の働きで網膜の灌流量が増加してERGを増大させた可能性や,ISAによって網膜内のb受容体が刺激されて52),ERGが増大した可能性が考えられる.ところで,オートラジオグラフィを使って点眼されたカルテオロールの血行を介する後眼部への移行が報告されていて53),灌流量変化率(%)-4010203040506070濃度(μM)図17ベタキソロール濃度別の灌流量最大変化率(文献46から許可を得て転載のうえ改変)b.b1b2.adrenergicantagonist塩酸カルテオロール(商品名:ミケラン)同様の実験系でb1b2-adrenergicantagonist塩酸カルテオロールについて検討した.カルテオロールは有意な灌流量増加をきたさなかったが,濃度依存性に杆体系および錐体系ERGb波を増大させた50,51).この結果からつぎの二つのことが推測できる.一つは網膜血流は元来少ないので,網膜レベルでは灌流量が増加していても全体の灌流増加には反映されていないこと.しかし,カル1088あたらしい眼科Vol.29,No.8,2012本実験のような灌流液への投与による効果は点眼による網膜への影響を示唆するものである.なお,データの提示は省略するが,b-adrenergicantagonistのプロプラノロールについては,少し灌流量を増加させる傾向はあるが,チモロールは灌流量を増加させず,ERGやONRも変化を起こさなかった.これは灌流量に変化をきたさないのか,網膜には到達しにくいのか,あるいは網膜内のb受容体に作用するような因子をもっていないのか,などが考えられた.網膜内のb受容体については以前から研究が続けられ,受容体の部位の同定がなされ54),最近ではbantagonistの作用に関して,ERGの減弱により有害性の報告55)や,逆に神経保護効果の報告もなされ,研究の継続が必要であるが,そのb受容体に作用するb(62) agonistはかつては網膜色素変性症の治療に考えられたこともあった.さらに網膜の電気生理学的反応を増加させる56,57)ことから,今後ドラッグデリバリーの進歩によって,b-agonistを網膜に作用させて,治療薬として使うような時代がくるかもしれない.c.a1.adrenergicantagonist塩酸ブナゾシン(商品名:デタントール)a1-adrenergicantagonistの塩酸ブナゾシンや塩酸プラゾシンの摘出灌流眼球における作用を検討した.毛様20:ブナゾシン:プラゾシン1510動脈をはじめ眼血流に関わる血管でのa1受容体の存在58,59)や,レーザードプラ血流計など他の方法によるブナゾシンの眼血流増加作用60,61),さらに神経保護効果の報告がある62,63).しかし,摘出灌流眼球ではブナゾシンもプラゾシンも5%程度の灌流量の変化を起こすだけで,灌流量への影響は小さかった(図19).一方,ERGとONRを濃度依存性に減弱させた(図20,21).網膜,脈絡膜,色素上皮,Muller細胞などにa1受容体の存在が報告されている64.66)ので,それらに作用し電気生理学的活動を低下させたのではないかと思われる.したがって,ブナゾシン点眼においては,血流改善効果と神経保護効果を発揮させる投与方法を検討していく必要がある.灌流量変化率(%)y=0.2613x-3.40655R2=0.32760-5y=-0.2663x+0.4773R2=0.5104-10-15-200510152025濃度(μM)3.CDI結果と摘出灌流眼球実験結果との比較筆者らが行った緑内障治療点眼薬のCDIで測定した眼血流への影響と,摘出灌流眼球における直接的な薬剤の投与による灌流量や,電気生理学的活動への効果をまとめると表7のようになる.おおむね合理的な結果が得られていると思う.これらの結果を参考にしながらNTGにおける点眼治療を考えていく必要がある.ただCDIについては,筆者らと他の施設からの報告が異なる点があるが,これはつぎに述べるような問題が解決されていないことと関係があると考えている.図19摘出灌流眼球におけるプラゾシンおよびブナゾシンの濃度別の灌流量最大変化率min0図20摘出灌流眼球におけるプラ200ms30y=-1.0148x+92.359R2=0.6567100959085807570656001020100μV濃度(μM)(63)あたらしい眼科Vol.29,No.8,20121089ゾシン投与によるERGの変化ERGb波振幅(%)左:プラゾシン5.3μM10分間投与による暗順応ERGの経過.左側の数字はプラゾシン投与開始12からの時間.右:プラゾシン濃度別の暗順応ERGb波振幅の投与前(100%とする)からの最大変化. min400ms100ONRon振幅(%)y=-1.0412x+99.582R2=0.822395図21摘出灌流眼球におけるプラゾシン投90与によるONRの変化85左:プラゾシン10μM10分間投与による暗順応ONRの経過.左側の数字はプラゾ80シン投与開始からの時間.75右:プラゾシン濃度別の暗順応ONRon振幅の投与前(100%とする)からの最大変化.706560100μV濃度(μM)01020表7点眼薬別の,CDIにおける球後血流変化と,摘出灌流眼球CDIの場合,レーザードプラやレーザースペックルの実験における灌流量,ERGの変化の対比ように,眼底カメラで測定部位を見ながらの測定ではなCDI摘出灌流眼球実験いので,連続した測定でない場合,確実に同じ部位にカ血流灌流量ERGーソルを合わせる技術が必要となる.ベタキソロール↑↑検者がCDIの熟練者と初心者でどれだけの差が生じ↑るかを検証した.熟練者と初心者で,正常被検者を対象→チモロール→→→にした10分間隔のCDI測定結果を比較検討した.各被ブナゾシン→→↓プラゾシン検者におけるOA,CRA,PCAのPSV,EDVを測定し,RIを算出した.再現性の検討にはつぎの2係数による検討を行った.VICDIの精度1)Kappa係数(k):級内相関係数(intraclasscorre緑内障における眼血流の研究は国内外を問わず,さまlationcoefficient)による検討.これはN名i番目の人ざまな施設で行われてきたが,共通する問題として,以の1回目測定値をXi1,2回目の測定値をXi2とし,Ti下のようなことがあると考える.1)個々の研究で変化=Xi1+Xi2,Di=Xi1.Xi2,差の平均をDav,Ti,Diのなしの結果は報告されない傾向がある,2)対象とする標準偏差をsT,sDとするときk=sT2.sD2/{sT2+sD2血管は乳頭上血管,網膜血管,球後血管とさまざまで,+2/N(NDav2.sD2)}で求められる.結果として,0.75統一的な見解が得られにくい,3)大規模(多施設)で長≦kは卓越した一致,0.4≦k<0.75はかなり良い一致,期にわたる研究がない,4)血流測定には高度な技術がk<0.4はあまり一致していないと考えられる.必要であるが技術の統一化が十分されていない,などで2)再現性係数(coefficientsofreproducibility)によるある.検討.これは最初の測定値をV1,第2測定点での測定CDI測定においては被検者が常に精神的な理由も含値をV2とすると,|V1.V2|/{(V1+V2)/2}として算め安静状態である保証はなく,生体であるがゆえの周期出されるもの.要するに級内相関係数は高い値ほど再現的な変動もある.前者には検査側ができる限りの配慮を性が良いと判断され,再現性係数はその数値が低いほど行って被検者の安静に努めるしかない.後者には,同一再現性が良いと判断される.測定ポイントで6.7波形の平均をとることで対処する.表8に示したように,熟練者のkは,ほとんどの項カルテオロール1090あたらしい眼科Vol.29,No.8,2012(64) 表8熟練者と初心者のCDIにおける測定値の再現性10分間隔の再現性:熟練者10分間隔の再現性:初心者CoefficientsofCoefficientsofkkreproducibilityreproducibilityCRACRAPSV0.900.07±0.06PSV0.620.11±0.11EDV0.840.12±0.11EDV0.060.34±0.30RI0.750.04±0.03RI0.040.12±0.08OAOAPSV0.890.11±0.05PSV0.770.17±0.12EDV0.910.18±0.10EDV0.790.22±0.26RI0.780.04±0.02RI0.530.04±0.02TPCATPCAPSV0.820.12±0.08PSV0.220.19±0.16EDV0.780.16±0.13EDV0.190.28±0.22RI0.780.05±0.04RI0.140.10±0.09NPCANPCAPSV0.890.09±0.08PSV0.800.16±0.10EDV0.760.12±0.10EDV0.710.24±0.13RI0.560.04±0.02RI0.240.13±0.0816熟練者16初心者p=0.002目で0.75以上であるのに対し,初心者の成績は悪い.また,再現性係数は,0.1以下が再現性が良いといわれるが,初心者は特に流速が低い最低流速の測定がむずかしく再現性が悪く,そのため,RIが0.1以上となっているが,熟練者はすべての項目で再現性が良く,RIは0.05以下で,再現性が良いといえる.この相違はどのような理由によるかを考えると,測定位置のずれも無視眼圧(mmHg)121213.012.011.78811.344できないが,初心者は血管の描出に集中するがあまり,0測定前測定後0測定前測定後眼球を圧迫するのが主たる原因と考えられる.熟練者と図22熟練者と初心者のCDI測定前後の眼圧変化初心者で被検眼の眼圧をCDIの前後で測定すると図22のように有意に眼圧低下がみられる.意図的に眼球に圧cm/seccm/seccm/sec迫をかけCDIを行うと,図23のように血流速度の低下が生じ,したがってRIの上昇も有意にみられる.この解決方法は,CDIに熟練するしかない.さらに,緑内障の眼血流について信頼に足る結果を導くには,多施設で二重盲検比較試験のようなことを行う必要があり,そのためには,CDIだけに限らず血流測定技術の統一が必要で,検者がトレーニングセンターのようなところに2017.51512.5107.552.50p=0.028PSV2017.51512.5107.552.50p=0.005EDV2017.51512.5107.552.50p=0.005RI圧迫前圧迫中圧迫前圧迫中圧迫前圧迫中一堂に会し,技術を磨き,一定の誤差内に収まるような技術の養成が必要である.もう一つの方法は,検者の技量を要しないほとんど自動化した機器の開発であるが,これは今後の課題である.そして,眼血流測定の目標の一つの点眼治療によって眼血流改善がなされるかについては,一定の成果を出せる状態になったが,以下の二つ,(65)図23CDI測定時における眼球圧迫前後でのCRAの血流パラメータの変化1)測定結果は緑内障の神経障害の原因を反映するか,2)血流パラメータを改善すれば,緑内障の神経保護につながるか,は血流測定の精度を上げて,長期にわたっあたらしい眼科Vol.29,No.8,20121091 て大規模な研究が必要と考えられる67).おわりに超音波検査の眼科診療への貢献はきわめて高い.微細な構造をもち,光学的検査が不可能な部分をもつ眼球を無侵襲で検査できることの意義は大きい.ただ,まだ技術的に検査がむずかしいという点は残る.しかし,テクノロジーの発展はそれを乗り越えていくと信じる.vonGraefeが虹彩切除を発表したのは検眼鏡,視野計などの発明がなされた約150年前,その後さらに50年近く経過して,眼圧計,隅角鏡の発明があり,1970年前後からやっと,今日の緑内障診療に使われるレーザー治療,チモロール点眼,トラベクレクトミー術などが登場することとなった.しかし,この150年間の緑内障治療は眼圧下降に心血が注がれてきた.つぎの150年は何に向かって進むのか.おそらく,視神経保護,視神経再生,緑内障発症予防など眼圧下降以外の治療になると愚考する.その際,眼血流測定は重要な意味をもち,緑内障診断に必須の隅角検査もその重要性は失われていないと考えられる.そして本稿で述べた超音波検査技術はさらに進歩し,汎用される検査となっていくと思われる.精巧な検査法の発展が緑内障診療を支えることは間違いないと信じる.謝辞:名誉ある講演の機会をお与えくださいました第22回日本緑内障学会会長吉冨健志先生ならびに日本緑内障学会理事長新家眞先生をはじめ日本緑内障学会理事,評議員,会員の皆様に厚くお礼申しあげます.また,長年にわたりご指導を賜りました三重大学名誉教授横山實先生,三重大学眼科学教室の諸先輩ならびに三重県眼科医会の諸先生,摘出灌流眼球実験のご指導を賜りましたチューリッヒ大学名誉教授GunterNiemeyer先生,日本臨床視覚電気生理学会の諸先生に厚くお礼を申しあげます.最後に,本稿で紹介した研究成果は,診療の合間を縫って研究を続けてくれた三重大学眼科学教室員の努力の賜物であることを明記し,心より感謝を致します.文献1)BarkanO,BoyleSF,MaislerS:Onthegenesisofglaucoma:animprovedmethodbasedonslitlampmicroscopyoftheangleoftheanteriorchamber.AmJOphthalmol19:209-215,19362)ShafferRN:Primaryglaucoma.Gonioscopy,ophthalmoscopyandperimetry.TransAmAcadOphthalmolOtolaryngol64:112-127,19603)SpaethGL:Thenormaldevelopmentofthehumananteriorchamberangle:anewsystemofdescriptivegrading.TransOphthalmolSocUK91:709-739,19714)SpaethGL,AruajoS,AzuaraA:Comparisonoftheconfigurationofthehumananteriorchamberangle,asdeterminedbytheSpaethgonioscopicgradingsystemandultrasoundbiomicroscopy.TransAmOphthalmolSoc93:337-347,19955)PavlinCJ,SherarMD,FosterFSetal:Subsurfaceultrasoundmicroscopicimagingoftheintacteye.Ophthalmology97:244-250,19906)PavlinCJ,HarasiewiczK,SherarMDetal:Clinicaluseofultrasoundbiomicroscopy.Ophthalmology98:287-295,19917)PavlinCJ,HarasiewiczK,EngPetal:Ultrasoundbiomicroscopyofanteriorsegmentstructuresinnormalandglaucomatouseyes.AmJOphthalmol113:381-389,19928)IshikawaH,EsakiK,LiebmannJMetal:Ultrasoundbiomicroscopydarkroomprovocativetesting:Aquantitativemethodforestimatinganteriorchamberanglewidth.JpnJOphthalmol43:526-534,19999)ZarbinM,ChuD:Diagnosticandsurgicaltechniques.SurvOphthalmol53:250-272,200810)EsakiK,IshikawaH,LiebmannJMetal:AnglerecessareadecreaseswithageinnormalJapanese.JpnJOphthalmol44:46-51,200011)InoueT,YamamotoT,KitazawaYetal:DistributionandmorphologyofPASinprimaryangle-closureglaucoma.JGlaucoma2:171-176,199312)KunimatsuS,TomidokoroA,MishimaKetal:Prevalenceofappositionalangleclosuredeterminedbyultrasonicbiomicroscopyineyeswithshallowanteriorchambers.Ophthalmology112:407-412,200513)EsakiK,IshikawaH,LiebmannJMetal:Atechniqueforperformingultrasoundbiomicroscopyinthesittingandpronepositions.OphthalmicSurgLasers31:166-169,200014)江崎弘治,伊藤邦生,松永功一ほか:偽落屑症候群における体位の前眼部構造に及ぼす影響.日眼会誌105:524529,200115)BartholomewRS:Lensdisplacementassociatedwithpseudocapsularexfoliation.BrJOphthalmol54:744-750,198016)RitchR:Exfoliationsyndromeandoccludableangles.TransAmOphthalmolSoc92:845-942,199417)MatsunagaK,ItoK,EsakiKetal:Evaluationofeyeswithrelativepupillaryblockbyindentationultrasoundbiomicroscopygonioscopy.AmJOphthalmol137:552554,200418)MatsunagaK,ItoK,EsakiKetal:Evaluationandcomparisonofindentationultrasoundbiomicroscopygonioscopyinrelativepupillaryblock,peripheralanteriorsynechia,andplateauirisconfiguration.JGlaucoma13:516-519,200419)大川親宏,松永功一,宇治幸隆:狭隅角眼の隅角鏡と超音波生体顕微鏡所見の比較.あたらしい眼科25:725-728,200820)宇治幸隆,和田泉,杉本充ほか:インデックス付きゴニオレンズの試作.眼紀44:260-262,199321)PambegP:Sheddinglightongonioscopy(Editorial).ArchOphthalmol125:1417-1418,200722)BarkanaY,DorairajSK,GerberYetal:Agreement1092あたらしい眼科Vol.29,No.8,2012(66) 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