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My boom 8.

2012年9月30日 日曜日

監修=大橋裕一連載⑧MyboomMyboom第8回「後藤恭孝」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す連載⑧MyboomMyboom第8回「後藤恭孝」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す自己紹介後藤恭孝(ごとう・やすたか)岩手医科大学眼科岩手医科大学眼科学教室に平成10年に入局し,同時に大学院に進学,その後は網膜電気生理で学位取得後,現在までおもに緑内障の臨床や研究を行ってきました.平成19年から2年間,奈良の永田眼科に国内留学し,永田誠先生はじめ,黒田真一郎先生,松村美代先生,今回このmyboomに推薦していただいた木村英也先生といった先生方に,緑内障手術のみならず眼科医としての姿勢を再構築していただきました.大学時代はフェンシング部に所属していたため,医科学生体育大会などとは縁がなく,他の大学の方との交流はほとんどありませんでしたが,永田眼科所属時には,木村先生とビリーズ・ブートキャンプ部を創設し,日々トレーニングに没頭し,留学前から最高15kgの減量にも成功しました.しかしながら,岩手医大に戻った現在は,医局長だからと多忙のせいにしてトレーニングをさぼった結果,当然のごとくリバウンドし見る影もありません….臨床のmyboom大学院卒業後は一貫して緑内障の患者さんを診て来ているので,基本的には緑内障がmyboomですが,あえて言うならば手術が最もmyboomなのかもしれません.もともと手術そのものは治療として最後の手段と思っていて,しないに越したことはないものとらえているので,myboomと表現するのはすこし「ズレ」を感じま(79)0910-1810/12/\100/頁/JCOPY〔写真1〕心の師永田誠先生と(永田眼科にて)すが,逆にそういうものだからこそできるだけ完璧に仕上げたいと思っているのでどうしてもこだわってしまう部分はあるのだと思います.基本的には「眼に逆らわない」「元あった場所に戻す」という理念で手術に向き合っています.とはいえ緑内障手術,特に濾過手術は本来ある状態を破綻させる手術ですので,前述の理念とはまったく正反対のように思えますが,細かな点,たとえばフラップ作製,結膜縫合などは前述の理念が反映される部分のようです.フラップ作製では,フラップを切っていくというより,フラップが.がれたいようにに.がれるのを手助けしてあげる感じでしょうか.逆に気持ちがうわずったままフラップを切っていこうとするとフラップがギザギザになってしまったり,厚さが最初と最後で違ったりしてくるようです.実際はこういう感覚的なものではなくて別の言葉で言えば「強膜の構造に沿ったフラップ作製」ということなのでしょうが….また,結膜縫合では「元あった場所に戻す」ことを念頭に縫合しています.そのことと術後成績の関連性は不あたらしい眼科Vol.29,No.9,20121255 明ですが,少なくともそういう理念で縫合すると,どこかの縫合部に無理な力がかかることはなく,縫合部のleakは少なくなるのではないかと信じています.緑内障手術全体でのこだわりは,やはり手術の使い分けでしょうか.永田眼科での研修を経て以前のレクトミー一辺倒からロトミー,隅角癒着解離術といった武器を手に入れたわけで,ゴルフに例えれば,まるで新たなクラブを手に入れ,ドライバー1本で勝負するような状態から脱却したような感じです.これからチューブシャント手術も保険適用となり,さらに新たな武器を手に緑内障と戦っていけることになるわけですが,ロングホールをパターで始めたり,はたまた,グリーン上でドライバーを使うような選択ミスをしないようにするための運用方法を検証していくのが,一番のカギであろうかとは思っています.研究のmyboom国内留学などもありここのところ直接手を出していなかったので,boomと言ってはおこがましい感じはしますが,現在研究のmyboomはERG(網膜電図)を用いた緑内障の機能的と形態的喪失との関連性についてです.大学院時代はFullfieldERGと2世代目くらいの光干渉断層計(OCT)で機能と形態との関連について調べ何とか結果を出しましたが,網膜全体のERGと視神経乳頭周囲の神経線維層の厚さとの関連だったので,ほんとうに関連があると言っていいのか若干疑問にも思って〔写真2〕研究のmyboomいました.その後,緑内障の道に進み,関連病院への出張,国内留学と進むうちにERGから遠ざかってしまい,その疑問は引き出しの奥のほうに追いやられていましたが,留学から帰ってきたところ,岩手医大ではfocalERGが本格運用されており,最近になってGCC(ganglioncellcomplex)が測定できるOCTを使用できることになり,とうとう引き出しの奥底にしまいこんでいた疑問を解決する機会を得ることになりました.とはいえ,あまりにも長くERGから遠ざかってしまったので,研究の立案とデザインには関与しましたが,実動部隊は若い先生に任せている状況です….私生活のmyboom基本的に私生活のmyboomは,子どもと接する時間が少ない分,なるべく話題を共有したいという名目で,息子に関連するものが多いです.今年で12歳になる一人息子ですが,実はバイオリン歴10年であり,そこそこの腕はもっているようです(現在はチャイコフスキーバイオリンコンチェルト第3楽章を練習中).クラシックとはまったく縁のなかった僕も子供の弾く曲だけは聴くようになり,バイオリンに手術に通じるものを感じる今日この頃です.その息子はこのところ「ガンダム」にはまっているようで,ことに「ガンプラ」は,昔は単色でほとんど動きもなかったのですが,最近のものは素組みでほぼ完璧な状態であり,その出来の良さに元々ガンダム世代であった僕も昔の熱い思いがぶり返してきています.最近は,子供と話題を共有するというより僕のほうが話題を提供している感じですが….次回のプレゼンターは静岡県,石川眼科医院の石川浩平先生です.石川先生は大学時代からの非常に親しい友人で,名古屋大学時代はmedicalretinaの最先端を走っていました.かなりのこだわり派ですのでmyboomを2ページで書き切れるかが心配です.注)「Myboom」は和製英語であり,正しくは「Myobsession」と表現します.ただ,国内で広く使われているため,本誌ではこの言葉を採用しています.☆☆☆1256あたらしい眼科Vol.29,No.9,2012(80)

現場発,病院と患者のためのシステム 8.スタッフ満足度,待ち時間

2012年9月30日 日曜日

連載⑧現場発,病院と患者のためのシステム連載⑧現場発,病院と患者のためのシステム杉浦和史*スタッフ満足度,待ち時間.スタッフ満足度が患者満足度につながる“風が吹けば桶屋が儲かる”の連鎖ではありませんが,患者満足度(customersatisfaction)という言葉は知られていますが,スタッフ(従業員)満足度(employeesatisfaction)という言葉はあまり聞いたことがないかも知れません.疲れたスタッフは患者さんに笑顔で接する余裕がありません.余分な負荷をなくし,本来のサービスに向けられる精神的,肉体的,時間的な余裕が生まれるスタッフ満足度が患者満足度につながる展開は,つぎのとおりです.スタッフの負担・ストレス軽減→スタッフ満足度向上→患者さんに優しく接する精神的,時間的余裕が生まれる→患者満足度向上.患者満足度を下げるもっとも大きな要因は待ち時間ですが,仮に待ち時間が減っても,ストレスが溜まり,疲れたスタッフが仏頂面で対応していては患者満足度の向上は期待できません.スタッフの負担を減らし,ストレスを溜めない環境の整備には何があるのでしょう.休憩室をより居心地のいいものに改装するなどという物理的な施策はすぐに思いつきますが,時間の経過とともに効果が薄れることは自明です.当院では業務を分析し,現場を観察し,それに基づき,重複作業や無理,無駄を省くという作業を地道に行いました.つぎに,残った作業の中からスタッフに負荷やストレスをかける要因をみつけ,それをITや作業の標準化でカバーできる部分,負荷はかかるものの人間にしかでき《システム稼働前》《システム稼働後》14時台にならないと昼食(昼休み休憩)に行けなかった外来看護師の数が,明らかに減少している.業務の改革,改善とそれをサポートするシステムの提供する機能により,効率よく捌けるようになったこと,および予約効果で,午前中の診察が効率よく捌けていることを示している.図1スタッフ満足度向上の一指標(77)0910-1810/12/\100/頁/JCOPYようにするためには何をすればよいのでしょう?ない部分に分けました.前者についてIT化を図り,それと並行して臨機応変という耳障りのよい言葉で処理されていた曖昧な部分を明確にし,作業の標準化を図りました.その結果,スタッフの負荷とストレスが軽減され,本質的な業務に時間と気持ちを使うことができるようになり,待ち時間の減少を含め,患者満足度を向上させることができました.患者満足度が向上したことは,スタッフが聞く患者さんからの評判,1カ月当たりのクレームが数十件あったものが,数件に減少したことを根拠としています..待ち時間積み木を箱に入れる際,大きさ,形を考えずにバラバラに入れると箱に入りきらずに溢れてしまいます.一方,キチンとしまえば収まります(図2).これは来院患者を捌く際にもいえることです.無理,無駄を排除し,前例にとらわれずに業務を整理整頓し,作業順を見直す○積み木…来院する患者さん○積み木の箱…過負荷なく診察可能な数キチンとしまえば収納可能なのに,いい加減にしまうと溢れてしまう.この溢れが待ち時間!図2積み木と待ち時間の関係*KazushiSugiura:宮田眼科病院CIO/技術士(情報工学部門)あたらしい眼科Vol.29,No.9,20121253 ■稼働前■稼働後午前1午前2午後1午後23:302:472:471:441:551:531:311:161:053:002:302:001:301:000:300:00※平均値図3待ち時間の減少ことで無駄な隙間が埋まり,処理(作業)時間を短くすることができるようになります.この時間が短くなる=待ち時間が短くなるということです.BPR(業務改革,作業の標準化,ルール)を行い,適宜ITの適用を行えば,待ち時間は確実に減少します(図3)..待ち時間削減の限界待ち時間を少なくする施策にはいろいろありますが,ある程度減らせていくと,それ以上の削減は無理という限界がみえてきます.これ以上削減できないとした場合,つぎに考えるべきは,待っている時間を退屈にさせないための施策,あるいは,逆手にとって利用する施策です.当院では,つぎの2つを考え,実施しました.1.患者さんが知りたがっている情報を提供する.どのくらい待てばいいのかの目安.どんな状態で待っているのか.全体の進捗状況2.患者さんに知って欲しい情報を流す.学会出張などで休診になる医師.保険負担の変更など,制度の改訂.新たな病院施策の紹介と協力のお願いこれらは,日頃患者さんと接している第一線のスタッフの意見を反映したものです.図4のように,診察室の前に薄型の大型テレビを置き,自分が何番目でどんなステータスで待っているのかが一目でわかるようにしました.字は視力の弱い患者さ図4情報提供図5患者さんからの礼状んでも椅子に腰掛けたまま読める大きさにしてあります.これにより,今までわからなかった状況がわかり,何時まで待てばいいのかの目安がつくことで安心してもらうことができました.また,不在時に呼ばれてしまい,後回しにされてしまうのではないかと不安になり,トイレを我慢していたという患者さんがいたことから,表示,呼び出しルールを工夫し,これを解消しました.患者さんからは,漢詩の礼状が届きました(図5).これらの施策をとおしていえるのは,スタッフ満足度向上,待ち時間削減は,識者に意見を求めるほど難しいことではなく,大上段に振りかぶるほど大仰なことでもなく,現場の声を聞き,その背景を調べれば誰でも効果的な策を考えることができるということです.1254あたらしい眼科Vol.29,No.9,2012(78)

タブレット型PCの眼科領域での応用 4.タブレット型PCのロービジョンエイドとしての活用-その1-

2012年9月30日 日曜日

シリーズ④シリーズ④タブレット型PCの眼科領域での応用三宅琢(TakuMiyake)永田眼科クリニック第4章タブレット型PCのロービジョンエイドとしての活用─その1─■ロービジョンエイドとしてのタブレット型PC今回の第4章では,私が代表を務める“GiftHands”が提案するタブレット型PCのロービジョンエイドとしての活用法について紹介していきたいと思います.GiftHandsは視覚障害者の生活をより快適なものにすることを理念として,視覚障害者向けの情報サイトの運営やグッズ開発,ユニバーサルデザインを考慮した施設導入に関するコンサルト業などを行っています.また,視覚障害者や児童,盲学校職員や視能訓練士などを対象にタブレット型PCの活用法を紹介する啓発セミナーも行っています.本章ではロービジョンエイドとしてのタブレット型PCの活用法のうち,おもに携帯可能なデジタル拡大器としての活用法について,実際にロービジョンエイドとして使われている方の生の声とともに紹介していこうと思います.なお,原則的に私が現在,GiftHandsの活動や実際に外来で扱っている電子タブレットは“新しいiPadR(米国AppleInc.)”と“iPhone4SR(米国AppleInc.)”です(2012年7月30日現在).■私のロービジョンエイド活用法「デジタルテレスコープ編」まず,タブレット型PCのカメラ機能を利用して,撮影や閲覧が非常に快適なデジタルテレスコープとしての活用の可能性について紹介します.近年,デジタルカメラの性能の向上によりロービジョンの方がデジタルカメラで駅の電光掲示板などを撮影して,その後デジタルカメラの液晶画面で拡大して確認している姿を見ることがあります.しかし,デジタルカメラの液晶画面は小さく,また,任意の部位を拡大して見るには非常に操作が煩雑でありました.しかし,タブレット型PCでは撮影(75)0910-1810/12/\100/頁/JCOPY時に大きな液晶画面全体に被写体が表示されることと被写体に画面上でタッチするだけでピントが合うため,被写体を捉えやすく扱いやすいと言います.また,撮影した後,瞬時にタブレットの大画面で撮影画像を拡大して閲覧ができるため,屋外での標識や地図の確認などをはじめ,撮影および閲覧がスムーズに行えるデジタルテレスコープとして活用することが可能です.■私のロービジョンエイド活用法「デジタルルーペ編」つぎに,同様にタブレット型PCのカメラ機能を利用して,携帯性に優れたデジタルルーペとして活用できないかという試みについて紹介していきます.具体的には,タブレット型PCの背面カメラ機能とGiftHandsで開発したMiYAKEスタンド(メディカル・エージェント)(図1)とを組み合わせることによって,さまざまな場面でデジタルルーペとして活用することが可能となります.たとえば,私の患者からの声で多いのは「爪切りをする時や針の糸通しなどの作業がすご図1MiYAKEスタンド(メディカル・エージェント)を利用して,デジタルルーペとして爪切りに使用しているところあたらしい眼科Vol.29,No.9,20121251 図2拡大鏡ルーペ虫眼鏡R(ESCORPORATION)で書籍を拡大し,白黒反転機能を用いて拡大読書器として利用く楽.」,「マニキュアをつけるときに両手が使えるし便利.」など,細かい作業をする際に任意の拡大率で拡大でき,またコントラストや明るさも最適な状態に設定できることが長所として聞くことができました.一番印象に残った患者のコメントは「私はもう何年も夫の作る食事の味を感じたことがなかった.数年ぶりに味を感じることができて,人生の楽しみが戻ってきて本当に嬉しい.」と言うものでした.驚くべきことに彼女はスタンドを利用して食事を拡大して見ることで,箸の先にある物が何かを見えるようになり食事の味覚が戻ってきたそうです.私は彼女の言葉を聞いて,“人は記憶を食べている”ことに初めて気づかされました.食事は人が生きていくうえで非常に大切な楽しみであるのはいうまでもなく,見えない物を食べることがいかに味気ない食事であるかを知ったのです.私は初期研修医時代の指導医の言葉を思い出しました.「患者さんは生きた教科書だよ.彼らの言葉やちょっとした表情の変化のなかに,本当に大切な治療効果を教えてくれるものがある.検査データしか読めない医者には絶対になるな.」多忙な臨床業務のなかで,患者の眼所見や視機能ばかりを気にして,患者の言葉を聞く大切さを忘れかけていた自分の危うさを痛感させられました.拡大鏡ルーペ虫眼鏡R(ESCORPORATION)というアプリでは拡大読書器さながらの白黒反転やコントラスト強調などの機能がついており,簡易式の拡大読書器のように使用することも可能です(図2).携帯性の優れたタブレット型PCとMiYAKEスタンドを組み合わせることで,公的機関の窓口での書類記載時などをはじめ,外出時にデジタルルーペとして活用できる場面は多く存在すると思います.これまで一般的に視覚に障害をもつ患者が凹凸の存在しないタッチパネル操作のタブレット型PCを使用することは,困難ではないかと考えられてきました.しかし,タブレット型PCには視覚や聴覚をはじめ身体に障害をもつ方でも快適に操作するために配慮された“アクセシビリティ機能”が充実している機種が存在しています.携帯性や連続駆動時間の長さを考慮しても,今後重要なロービジョンエイドとしての活用の可能性を私は強く感じています.「タブレット型PCは誰でも使えるデバイスであり,視覚障害者専用の補助具ではない.だから外出時に人前でも使いたくなる.」という患者の言葉と,その活用法を知ったことで人生が変わったと教えてくれる多くの声が,今の私がGiftHandsでの活動を続けていける最大の支えとなっています.本文中に紹介しているアプリなどはすべてGiftHandsのホームページ内の「新・活用法のページ」に掲載されていますので,ご活用いただけたら幸いです.http://www.gifthands.jp/service/appli/また,本文の内容に関する質問などはGiftHandsのホームページ「問い合わせのページ」にていつでも受けつけていますので,お気軽にご連絡ください.GiftHands:http://www.gifthands.jp/☆☆☆1252あたらしい眼科Vol.29,No.9,2012(76)

硝子体手術のワンポイントアドバイス 112.裂孔原性網膜剥離に対するMIVS後の再剥離(中級編)

2012年9月30日 日曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載112112裂孔原性網膜.離に対するMIVS後の再.離(中級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●小切開硝子体手術の落とし穴本シリーズの「109裂孔原性網膜.離に対する硝子体手術時のバックル併用の是非(初級編)」(Vol.29,No.6)にも関連することであるが,最近,裂孔原性網膜.離に対する小切開硝子体手術(MIVS)術後の再.離例をときどき経験するようになってきた.もちろん,従来の20ゲージ硝子体手術後の再.離にも共通する原因が多いのだが,MIVSの初心者が陥りやすい問題点を筆者なりに述べてみたい.●裂孔原性網膜.離に対する硝子体手術後再.離の原因今までの筆者の経験から,再.離の原因としては以下の2つが大半を占める.1.薄い硝子体皮質の残存裂孔原性網膜.離では一見後部硝子体.離が生じているようにみえても,トリアムシノロンで可視化すると網膜全面に薄い硝子体皮質が残存していることがある.特に若年者の網膜.離ではこの傾向が強い.この膜状の残存硝子体皮質の術後の牽引により,既存の裂孔が再開し,再.離をきたすことがある.また,残存硝子体皮質の量が多いと,しばしば増殖硝子体網膜症に進行する.初回硝子体手術時に,ダイアモンドダストイレーサーなどで確実にこの膜状硝子体皮質を除去する必要があるが,MIVSに慣れていない術者ではしばしばこの処置が不十分となりがちである.2.周辺部残存硝子体牽引これは筆者自身,非常に気になっている点である.本シリーズ(109)の内容と重複するが,網膜格子状変性巣縁の弁状裂孔が原因で発症する胞状の網膜.離に対して硝子体手術を施行した場合,網膜格子状変性巣の後縁までは容易に硝子体を切除できるが,変性巣の周辺側の硝子体を十分に切除するのは結構むずかしい.MIVSが普及してから,黄斑上膜や黄斑円孔のような感覚で周辺(73)0910-1810/12/\100/頁/JCOPY図1後極部の残存硝子体皮質の牽引により再.離をきたした症例トリアムシノロン塗布後に網膜全面に薄い硝子体皮質が残存しており,この牽引により周辺部の裂孔が再開していた.図2周辺部の残存硝子体網膜格子状変性巣よりも周辺部に多量の硝子体が残存しており,その牽引により裂孔の周辺側が再開していた.硝子体切除が不十分なまま気圧伸展網膜復位を行う術者が増加しているように思われる.ワイドビューイングシステムも上手く使いこなさないと周辺硝子体を結構残存させてしまっている.バックルを併用しなくても復位させうる網膜.離症例はかなり多いと思われるが,網膜格子状変性巣が広範囲に認められる症例では,十分な周辺硝子体切除を施行するか,バックルにより周辺残存硝子体による牽引を軽減しておく必要がある.●疾患ごとで理に適った硝子体手術を!今回述べたことは,別にMIVSに限ったことではなく,従来の20ゲージ硝子体手術でも生じうることである.逆にいうと,MIVSでも上記のような問題点を克服できる技量があればまったく問題はない.しかし,現実はMIVSがより身近なものとなり,多くの若い先生方がMIVSから硝子体手術を始める時代になっているため,上記の理解が不十分な術者が増加しているように思われる.硝子体手術の本質は機器の違いではなく,疾患によってどのような手術を行えば確実な手術成績が得られるかである.初回で理に適った確実な手術を行い,再手術にならないようにすることが,なにより重要であることを再度強調したい.文献1)池田恒彦:網膜硝子体疾患治療のDON’T─硝子体手術.眼臨紀2:820-823,2009あたらしい眼科Vol.29,No.9,20121249

眼科医のための先端医療 141.Girdinの生理的および病的網膜血管新生における役割 -VEGFシグナリング下流の探索-

2012年9月30日 日曜日

監修=坂本泰二◆シリーズ第141回◆眼科医のための先端医療山下英俊Girdinの生理的および病的網膜血管新生における役割―VEGFシグナリング下流の探索―米今敬一(名古屋大学大学院医学系研究科頭頸部・感覚器外科学)血管新生におけるAktの役割セリン・スレオニンキナーゼAktはPKB(proteinkinaseB)ともよばれ,細胞の増殖および分化において重要な役割を担っています.血管内皮細胞もその例外ではなく,Aktによってその遊走および血管新生が制御されています.実際,Aktの主要アイソフォームであるAkt1のノックアウトマウスでは,血管内皮増殖因子(VEGF)の刺激あるいは虚血誘導による血管新生が阻害されることが報告されています1).しかしながら,このAktが血管内皮細胞の遊走および血管新生を制御する分子メカニズムは近年までまったくわかっていませんでした(図1).アクチン結合蛋白Girdinの同定2005年に名古屋大学の榎本らは,酵母ツーハイブリッド法を用いてAkt関連蛋白であるGirdin(girdersofactinfilament)を同定しました.この蛋白質は,別名Ccdc88a(coiled-coildomaincontaining88a)ともいい,分子量約250kDaの大きな分子で,図2に示すような一次構造を有しています.GirdinはN末端ドメインとそれに続く長いコイルドコイル領域によって二量体を形成し,C末端ドメインを介してアクチンに直接結合します.また,GirdinはAktによって1416番目のセリンがリン酸化されます.Vero細胞をEGF(上皮細胞増殖因子)で刺激すると,PI3K/Akt経由でGirdinがリン酸化されることで細胞運動が促進されることもわかりました2).さらに,2008年には同グループによって,GirdinがVEGFの下流に存在し,HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)をVEGFで刺激すると,細胞内でAktがGirdinをリン酸化することで血管内皮細胞が遊走し,血管新生が促進されることが明らかにされました3).さらに,こ(69)0910-1810/12/\100/頁/JCOPY図1Aktシグナル伝達系と血管新生レセプター(growthfactorなど)PI3KAktその他基質細胞増殖,生存GSK-3b細胞極性?細胞遊走,血管新生12531375AktP(1416-Ser)1870NNTCoiled-coilCT1CT2CMembraneActinDimerizationbindingbinding図2Akt.relatedproteinGirdinの一次構造の蛋白質は神経系でも多く発現しており,海馬の神経細胞層形成に重要な役割を果たしていることが報告されています4).新生児期における網膜の生理的網膜血管新生とGirdin上記の報告のなかで,彼らはGirdinのノックアウトマウス(Girdin./.マウス)を作製しています.このGirdin./.マウスは,一見したところ野生型マウスと肉眼的な差異はありませんが,生後6日目くらいから発育が悪くなり,体重減少をきたして生後28日目までには死亡してしまうことがわかりました.また,彼らは生後3日目と7日目の発達段階におけるGirdin./.マウスでは,Girdin+/.マウスに比べて生理的網膜血管新生が障害されていることを発見しました3).そこで筆者らは,この結果がマウスの発達遅延に付随する合併症でないことを証明するために,生後5日,7日,10日のGirdin+/.マウスと野生型マウスの生理的網膜血管新生を比べることにしました.なぜなら,Girdin+/.マウスはGirdin./.マウスと違って生後に野生型マウスと同じように成長し,体重減少を示さなかったからです.このGirdin+/.マウスの網膜におけるGirdinの発現量は野生型マウスの約半分であることを,ウェスタンブロット法あたらしい眼科Vol.29,No.9,20121245 で確認しました.その結果,すべてのタイムポイントで野生型に比べてGirdin+/.マウスの血管新生が遅延していることがわかりました.すなわち,Girdinの発現量が半分減るだけで,網膜血管新生が遅延することがわかったわけです.さらに筆者らは,Girdinのリン酸化部位である1416番目のセリンをアラニンに変換したマウス(GirdinSA/SAマウス)を同じ実験系を用いて調べたところ,こちらも野生型に比べて発達段階の網膜血管新生が遅延していることを見つけました.この結果,Girdinのリン酸化が血管新生に促進的に作用することがわかりました.網膜の病的血管新生とGirdinつぎに,筆者らはこのGirdinの発現とリン酸化が,糖尿病網膜症や未熟児網膜症などの虚血性網膜疾患における新生血管の伸展にどのような影響を及ぼすのかに興味を抱き,実験を進めることにしました.この実験では,一般によくマウスの実験で用いられているOIR(酸素誘発網膜症)モデルを使用しました.その結果,Girdin+/.マウスおよびGirdinSA/SAマウスのOIRモデルでは,野生型のそれに比べて,網膜の病的新生血管が少ないことを突き止めました.虚血性網膜疾患における新生血管に対しても,Girdinの発現とリン酸化は促進的に働いている可能性が示されたのです.さらに,加齢黄斑変性における脈絡膜新生血管(CNV)の実験的モデルであるレーザー誘発CNVモデルを用いて上記と同じ遺伝子改変マウスのCNVを測定したところ,やはりGirdin+/.マウスおよびGirdinSA/SAマウスのCNVは野生型マウスのCNVに比べて有意に小さいことがわかりました.この結果,加齢黄斑変性のCNVに対してもGirdinの発現とリン酸化は促進的に働いている可能性が示されました.以上から,Girdinは網膜の主要な病的血管新生に深くかかわっている分子であることが推察されました.近年,ベバシズマブやラニビズマブを用いた抗VEGF療法が定着してきましたが,今後Girdinを含めたVEGFシグナリングの下流に存在する分子機能が明らかになるにつれ,それらをターゲットにした治療法の開発が進むかもしれません.以上の筆者らの実験は,名古屋大学医学部腫瘍病理学教室の高橋雅英教授との共同実験です.この実験結果を含んだ論文は,現在英文雑誌に投稿中ですが,この記事が出るころには発行されていると思いますので,皆さんご興味がございましたら読んでみてください.文献1)AckahE,YuJ,ZoellnerSetal:Akt1/proteinkinaseBaiscriticalforischemicandVEGF-mediatedangiogenesis.JClinInvest115:2119-2127,20052)EnomotoA,MurakamiH,AsaiNetal:Akt/PKBregulatesactinorganizationandcellmotilityviaGirdin/APE.DevCell9:389-402,20053)KitamuraT,AsaiN,EnomotoAetal:RegulationofVEGF-mediatedangiogenesisbytheAkt/PKBsubstrateGirdin.NatCellBiol10:329-337,20084)EnomotoA,AsaiN,NambaTetal:Rolesofdisruptedin-schizophrenia1-interactingproteingirdininpostnataldevelopmentofthedentategyrus.Neuron63:774-787,2009■「Girdinの生理的および病的網膜血管新生における役割」を読んで■―VEGFシグナリング下流の探索―今回は名古屋大学眼科の米今敬一先生による血管内として大変大きな進歩と考えます.そして,VEGF皮増殖因子(VEGF)の作用の分子メカニズムについは多様な作用をもっていますが,それを明らかにするての解説です.VEGFが眼内の血管新生についてのことで,疾患の治療の有効性(血管新生を抑制するこキー・モレキュールであることは周知の事実です.そと)と安全性(血管の生理的な作用を阻害しないこと)れは基礎実験と臨床的な実績(抗VEGF薬が加齢黄の両立を目指した治療法開発のスタートラインになる斑変性や未熟児網膜症,糖尿病黄斑浮腫に治療効果をかもしれないとても大切な発見であると考えます.もつこと)によって証明されてきました.今回はその米今先生の研究の方向性は,今後ほかの分子の作用分子メカニズムとして細胞内へ影響を及ぼす分子としについても大きな影響を与える素晴らしい研究と考えてGirdinが新しく解明されたことを紹介していただます.VEGFはそれ自体が多様であると同時にいろきました.今後,新しい治療薬を開発するターゲットいろなサイトカインと相互に作用を及ぼしあいます1246あたらしい眼科Vol.29,No.9,2012(70) (クロストーク).それにより抗VEGF薬により思わすることになると考えます.今回の研究がますます発ぬ副作用が出ることを予想したり対策を考える基礎と展し,眼科医療に大きな貢献をされることを期待してなるかもしれません.また,VEGFに限らず多くのおります.サイトカインが治療薬開発のターゲットとして研究を山形大学医学部眼科学山下英俊進める際の方法としてきわめて重要な研究戦略を提供☆☆☆(71)あたらしい眼科Vol.29,No.9,20121247

抗VEGF治療:未熟児網膜症と抗VEGF薬

2012年9月30日 日曜日

●連載④抗VEGF治療セミナー─病態─監修=安川力髙橋寛二2.未熟児網膜症と抗VEGF薬福島慶美直井信久宮崎大学医学部感覚運動医学講座眼科学分野未熟児網膜症(ROP)に対する治療の第一選択は,光凝固であることはいうまでもないが,適切と思われる時期に光凝固を行っても予後不良な症例がある.2011年に米国から発表されたBEAT-ROPstudyの結果では,zoneI網膜症に対するbevacizumabの有効性が示された.本稿ではROPに対する抗VEGF薬による治療効果について概説する.未熟児網膜症(retinopathyofprematurity:ROP)の発症には,網膜無血管領域からの血管内皮増殖因子(VEGF)を始めとする血管増殖因子が強く関与していると考えられており,近年,抗VEGF薬の硝子体内投与による治療が試みられている.抗VEGF薬治療として最もよく行われているのは,bevacizumabを1眼あたり0.625mg,上方の角膜輪部より0.75.1.5mm程度離れた位置より水晶体を避けて硝子体内に注入する方法である.抗VEGF薬の使用法は治療目的によりSalvagetherapy,Combinationtherapy,Monotherapyの3つに大別され,Salvagetherapyでは光凝固後に黄斑部を含む部分網膜.離や全網膜.離に進行した例に対し追加治療として,Combinationtherapyではそれより前の段階で光凝固と同時か後に投与される.Monotherapyは光凝固の代替治療として光凝固を行わずに本治療を行うもの投与前である.筆者らの施設ではETROPstudy1)の治療基準をもとに2009年11月から全身麻酔下でMonotherapyを行っている.2012年7月までに67眼に治療を行い,全例でROPの鎮静化が得られている.治療後に共通する眼底所見としては,光凝固後にみられるような炎症反応が起こらないため治療翌日から眼底が明瞭に観察でき,かつ網膜血管の拡張・蛇行といったplusdiseaseの所見が著明に改善する(図1).StageIIIでみられる血管外増殖組織は数日のうちに消失していき,治療3,4週後より網膜血管が周辺へと伸展していく様子(図2)が観察されるが,その後数カ月たつとまだ無血管網膜を残す症例でも血管の伸展はみられなくなる.合併症としては,治療前の血管最先端部付近やその後伸展した部分の網膜血管が横走して,治療2カ月後頃より静脈蛇行が出現し,その後半年ほど蛇行が増強すると投与翌日図1Plusdisease所見の改善Bevacizumab投与翌日には静脈拡張(黒矢印)・動脈蛇行(白矢印)の明らかな改善傾向を認める.(67)あたらしい眼科Vol.29,No.9,201212430910-1810/12/\100/頁/JCOPY 投与前投与25日目図2網膜血管の伸展黒矢印は同部位を示す.投与25日後には白矢印分の血管の伸展を認める.いった血管の走行異常を認めている.治療前の血管外増殖組織が輪状にうっすらと残ったり,伸展した網膜血管の先端付近に治療から1年以上経過して網膜滲出物を認める例が数例ある.いずれの症例もROPのくすぶり所見と思われるが,蛍光眼底造影検査で血管外漏出など高い活動性を認めた症例はなく,今までのところROPの再治療例は経験していない.一方,BEAT-ROPstudy2)などでは一旦鎮静化したROPがしばらくした後に再燃し,網膜.離に至った症例も報告されており,治療後も密な経過観察が必要である.元来VEGFには神経保護効果があることや,硝子体内に投与したbevacizumabが血行性に全身へ移行する3)ことも知られており,成長段階にある児への影響が懸念される.今後症例を重ねて視機能や全身への影響,投与量について検討する必要がある.なお,ROPに対する抗VEGF薬治療は適用外使用となるため,各施設の倫理委員会の承認と保護者への文章によるインフォームド・コンセントの取得が必須である.文献1)EarlyTreatmentforRetinopathyofPrematurityCooperativeGroup.Revisedindicationsforthetreatmentofretinopathyofprematurity:resultsoftheearlytreatmentforretinopathyofprematurityrandomizedtrial.ArchOphthalmol121:1684-1694,20032)Mintz-HittnerHA,KennedyKA,ChuangAZ;BEATROPCooperativeGroup:Efficacyofintraviteralbevacizumabforstage3+retinopathyofprematurity.NEnglJMed364:603-615,20113)SatoT,WadaK,ArahoriHetal:Serumconcentrationsofbevacizumab(avastin)andvascularendothelialgrowthfactorininfantswithretinopathyofprematurity.AmJOphthalmol153:327-333,2012☆☆☆1244あたらしい眼科Vol.29,No.9,2012(68)

緑内障:Humphrey視野検査C10-2の有用性

2012年9月30日 日曜日

●連載147緑内障セミナー監修=岩田和雄山本哲也147.Humphrey視野検査C10.2の内藤知子岡山大学大学院医歯薬学総合研究科眼科学有用性緑内障性視野障害の重症度評価には一般的にHumphrey視野計の中心30°(C30-2)が用いられるが,中心視野障害の詳細な評価には測定ポイントがより密に配置されている中心10°(C10-2)を用いることが望ましい.●グレースケールの成り立ちC30-2の実測値とそれに対応したグレースケールを示す(図1).測定ポイントごとにマス目をかぶせてみると,一つの実測値にそのままグレースケールのマス目が対応しているわけではない.ある部分のグレースケール部分を拡大してみると,1マスと思われる中には実は9マス存在している.実際,この部位の実測値は0dBであるが,それに対応しているのは,この中央の1箇所だけであり,他は推測値で埋めて作成されている.C30-2のグレースケールはイメージの把握にとどめることが大切である.●実際の中心10°に相当する視野日常生活において,上下10°以内の視野とはどのくらいの範囲であろうか.たとえば,喫茶店で誰かと向き合っていると仮定する(図2).その際,相手との距離が85cmとした場合,中心10°の範囲に相当するのは30cm,ちょうど相手の顔がすっぽり入るくらいの部分に相当する.10°以内,すなわち中心視野領域はQOV(qualityofvision)にかかわる非常に大切な領域であることが理解できる.●C10.2はどのような場合に有用か①中心視野障害の疑われる症例②後期緑内障症例①正常眼圧緑内障症例(図3)視神経乳頭には4時にnotchと,黄斑線維束に近い部10°10°85cm図2中心10°以内の視野15cmtan10°(=0.17633)≒15cm/85cm15cmシンボル表示dB>40>35>30>25>20>15>10>5>0.0C30-2C10-2図1グレースケール実測値以外は推測値で埋めて作成されている.図349歳,女性:正常眼圧緑内障眼圧11mmHg,点眼1剤で加療中.(65)あたらしい眼科Vol.29,No.9,201212410910-1810/12/\100/頁/JCOPY C10-22008.6.22.2009.1.22.2009.7.16.2009.2.25.C30-2C10-22008.6.22.2009.1.22.2009.7.16.2009.2.25.C30-2分まで明瞭な網膜神経線維層欠損(NFLD)がみられる.この症例をC30-2で測定した際には,中心10°以内に暗点は認めないが,C10-2では暗点が検出された.C30-2の測定点は6°間隔で76点,一方C10-2の測定点は2°間隔で68点,両者がかぶっているのはC30-2の中心4点のみである.C30-2で測定したポイントには,たまたま暗点がなかったため,その間に存在していた暗点は測られないまま,正常に白く塗り込められてしまっているのである.乳頭耳側にNFLDのある症例や中心視野障害を生じやすい近視眼1)などでは,C30-2で暗点が検出されなくても,C10-2で確認する意識をもつことが大切である.②原発開放隅角緑内障症例(図4)治療経過中,C30-2で中心4点のうちの鼻下側のグレースケールが濃くなった.グレースケールだけで判断すると進行?と疑いたくなるが,C10-2を検査すると,悪化が疑わしかった部分には感度が残っていることがわ図453歳,女性:原発開放隅角緑内障眼圧13mmHg,点眼3剤で加療中.かる.この症例,この後にもう一度C30-2を検査すると,中心鼻下側部分はグレースケールでは白くなり,感度も戻っていた.後期緑内障症例はC10-2でもfollowすることが必要である.おわりにC30-2では,中心視野障害を見逃したり,後期緑内障においては評価が困難であったりする.C10-2は固視点近傍に及ぶ視野障害の程度を正確に把握することができるので,症例に応じて積極的にC10-2を取り入れることが望ましいと考える.文献1)AraieM,AraiM,KosekiNetal:Influenceofmyopicrefractiononvisualfielddefectsinnormaltensionandprimaryopenangleglaucoma.JpnJOphthalmol39:60-64,1995☆☆☆1242あたらしい眼科Vol.29,No.9,2012(66)

屈折矯正手術:フェムトセカンドレーザーによるフラップ作製の術中合併症

2012年9月30日 日曜日

屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─監修=木下茂●連載148大橋裕一坪田一男148.フェムトセカンドレーザーによる北澤世志博神戸神奈川アイクリニックフラップ作製の術中合併症フェムトセカンドレーザーによるLASIK(laserinsitukeratomileusis)のフラップ作製はきわめて安全であるが,サクションリングを吸着させアプラネーションレンズで角膜を圧平しながらレーザーを照射するという方式のため,サクションが外れたり,レーザーにまつわる術中合併症がときとして起こる.しかし,いずれの合併症もマイクロケラトームでの術中合併症に比べると軽微であり,術後視機能に影響することはない.LASIK(laserinsitukeratomileusis)のフラップ作製は,その正確性と安全性からマイクロケラトームからフェムトセカンドレーザー(FSレーザー)に移行してきた.実際FSレーザーになってマイクロケラトームでときとして術中に起きていたフリーフラップや,ボタンホールのような手術を中止しないといけない重篤な合併症はなくなったが,FSレーザー特有の術中合併症がある.また,近年FSレーザーもさまざまなメーカーから出ており合併症の頻度も機種ごとに若干異なるが,一般的には下記の合併症が起こる.1.サクションブレイク(図1a,b)瞼裂が狭かったり結膜がゆるく吸引が不完全である場合や,レーザー照射中に閉瞼しようとするなど強い眼球運動が起こるとサクションが外れることがある.レーザーがラスター(フラップ面作製)中ならば再度最初からレーザーを施行し,ラスター終了後のサイドカット(フラップのエッジ作製)中ならばサイドカットのレーザー照射のみを行えばよい.その際,同一のアプラネーションレンズを使用すれば初回とほぼ同じ深さにレーザーがあたるが,まれに段差になることもある.ただし,そのような場合もごくわずかの段差であり視力には影響しない.2.OBL(opaquebubblelayer)(図2)レーザーの設定状況(スポットの大きさと間隔やエネルギー)によって起こるほか,アプラネーションレンズによる圧平が強い場合,フラップ作製中のガスが上手く抜けないときに起こる.強いOBLができた場合には,フラップリフト時に抵抗があったり,エキシマレーザー鈍的なもので擦るとOBLは薄くなる.またはフラップ照射時にアイトラッキングやIR(irisregistration:虹を開けずに10分程度待てばOBLの白濁は自然に消失彩紋理認証機能)がかかりにくいことがある.その場合し角膜は透明となるので,アイトラッキングやIRも通は,フラップ翻転後にベッドをフラップリフターなどの常に作動する.(63)あたらしい眼科Vol.29,No.9,201212390910-1810/12/\100/頁/JCOPY図1aサクションブレイクの瞬間サクションが外れたところ.直ちにレーザーを中止する.図1bサクションブレイク後の再レーザー再度レーザーをし直すと問題なくフラップができる. 図2OBL(opaquebubblelayer)強いOBLが生じている.フラップリフトに抵抗がありアイトラッキングがかかりにくい可能性がある.図3前房内ガス迷入前房内に迷入したガスがみられる.この程度の大きさのガスならば照明を少し暗くする程度でアイトラッキングは問題なく入る.3.前房内へのガス迷入(図3)明らかな原因と前房への迷入経路は依然として不明であるが,角膜径が小さい場合やフラップが角膜輪部寄りにずれた場合に生じやすい.迷入したガスバブルが多いとエキシマレーザー照射時にアイトラッキングやIRがかかりにくいことがある.その場合はレーザー照射時に照明を暗くして散瞳させるとアイトラッキングをかけることができる.または直ぐにフラップを翻転せずに20~30分待つとバブルが小さくなるので,アイトラッキングやIRも通常に作動する.4.VGB(verticalgassbreakthrough)とcoldspot(図4)作製したフラップが薄く,角膜に混濁がある場合やエ1240あたらしい眼科Vol.29,No.9,2012図4VGB(verticalgassbreakthrough)によるcoldspotヒンジ近くに比較的大きいcoldspotが生じている.直ちにレーザーを中止して角膜厚に余裕があれば30μmほど深いところにフラップを作り直せばよい.ネルギーが強すぎる場合に起きる.FSレーザーで生じたガスがフラップの薄い部分から角膜上皮を突き抜けて上に出てくる状態をVGBといい,このガスが広がりラスターのレーザーが当たらない部分(切開ができていない部分)をcoldspotという.VGBでは薄いフラップを開けるときに注意しないと亀裂ができる可能性があり,またcoldspot部分はレーザーが当たっていないので,そのサイズが大きい場合や瞳孔領にかかる場合は手術の中止が必要になってしまう.そこでcoldspot発生時には直ちにレーザーを中止して30μmほど深い位置に再度フラップを作製すれば手術を中止しなくて済む.5.角膜上皮スリップと上皮.離40歳以降の年齢が高い症例やコンタクトレンズ未経験者に多く,フラップ作製時の乾燥や過度の圧平が原因となる.このような症例では,フラップ翻転にストレスをかけないようにそっとフラップを開ける必要があるが,万一角膜上皮のスリップや.離が起きた場合もコンタクトレンズを装用すればよい.参考文献1)北澤世志博:IntraLASIK─LASIKの新しい手技─.眼科手術19:332-334,20062)北澤世志博:フェムトセカンドレーザー.IOL&RS21:426-429,20073)中村友昭:LASIK導入の注意点.IOL&RS25:27-31,20114)福岡佐知子:フェムトセカンドレーザーフラップの特徴.あたらしい眼科28:509-510,2011(64)

眼内レンズ:水晶体嚢真性落屑のOCT所見

2012年9月30日 日曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎313.水晶体.真性落屑のOCT所見湧田真紀子宇部興産株式会社中央病院眼科水晶体.真性落屑は,水晶体.から前房内に立ち上がる膜状組織である.組織像では水晶体.の層間分離がみられ,これまでは術中に採取された前.の病理組織による検討がなされてきた.今回は,前眼部光干渉断層計を用いることで生体内における真性落屑の形態が詳細に観察でき,さらに病理所見と比較検討した.●疾患概説水晶体.真性落屑は,細隙灯顕微鏡で水晶体.から前房側に立ち上がる薄いセロファン様の膜状組織として認められる.組織像では水晶体.の層間分離がみられ,1922年にElschnigが前.に.離を認める症例として報告し1),1932年にVogtが前.表層の.離であることを明らかにした2)..の分離する程度や部位には個人差があり,瞳孔領に明らかな膜状物がみられる場合もあれば,散瞳下にて部分的に膜の立ち上がりを認める場合もあり,注意深く観察しなければ判別が困難であったり,白内障術中に初めて判明することも多い.当初は長期にわたる赤外線や熱線への曝露が発症原因とされ,疫学的にガラス工などの作業者にみられる比較的まれな疾患とされてきたが,近年では明らかな曝露歴のない特発性の症例も報告されており,発症機転はいまだ不明である.鑑別すべき疾患として偽落屑があるが,1954年にTheobaldが両者は病態の異なる別の疾患であると提唱しており3),真性落屑は緑内障の発症には関与しない.真性落屑では視力低下は生じないとされるが,.の分離が水晶体赤道部まで及んでいる症例ではZinn小帯の脆弱化が起こり,白内障術中のZinn小帯断裂や術後の眼内レンズ偏位を生じるとの報告がある4).白内障手術に際してその他に注意すべき点としては,連続円形切.(continuouscurvilinearcapsulorhexis:CCC)の際,分離した前.の各層がずれて切開されるために切開縁が二重円を呈する,doubleringsignとよばれる所見がある.このため真の切開線を見誤り,CCCが完成していないのにhydrodissectionや核処理を行ってしまい,Zinn小帯断裂や.破損をきたすことがある.真性落屑における組織構造の検討には,これまで術中に採取された前.組織の病理組織が用いられてきた.しかし今日では,前眼部光干渉断層計(opticalcoherence(61)0910-1810/12/\100/頁/JCOPYtomography:OCT)を用いることで生体内での形態を観察することが可能となった.●症例両眼白内障手術目的で紹介された右真性落屑の81歳男性.眼外傷や眼内炎症,熱線曝露の既往はない.術前,細隙灯顕微鏡にて右眼の水晶体前.から前房側へ挙上する高さ約0.5mm,直径約5mmの円形・透明なフリル状の膜状組織が全周性に観察された(図1).術前に前眼部OCTを用いて生体内での形態評価を行ったのち,術中に採取した前.の病理組織との比較検討を行った.白内障手術は合併症なく施行可能であった.●水晶体.真性落屑の前眼部OCT像前眼部OCT(CirrusOCT,カールツァイス社)を用いて右眼水晶体前.の断層像を観察した結果を図2に示す.水晶体前.が表層4分の1で分離し,水晶体の周辺側から中央側に向けて前房内に.離・挙上して,膜状組織を形成していた.前.の厚さは分離部の中央側よりも周辺側のほうが菲薄化していた.虹彩に近い部位には表層が不連続な部位(図2中矢印)がみられ,表層が.離した辺縁であると考えられた.また,前.内のより深層には連続した低輝度の層(図2中矢頭)が認められ,分図1水晶体.真性落屑の前眼部写真水晶体前.から前房側へ挙上する高さ約0.5mm,直径約5mmの円形・透明なフリル状の膜状組織が全周性に観察された.あたらしい眼科Vol.29,No.9,20121237 離部から周辺側にはこの層の付近に高輝度の点状構造物が散在してみられた.●水晶体.真性落屑の組織構造採取した前.組織のヘマトキシリン・エオジン染色像を図3に示す.水晶体前.に層間分離に連続した染色性の低い硝子膜様組織がみられ,挙上していた膜状組織と考えられた.一方,前.の内部は均質・無構造で,前眼部OCTでみられた低輝度層や点状構造物に合致する所見は確認できなかった.水晶体.真性落屑の組織学的特徴は.の層間分離である.病理組織を検討した過去の報告では.離部位の深さ20μm図3水晶体.真性落屑のヘマトキシリン・エオジン染色所見水晶体前.には層間分離に連続した染色性の低い硝子膜様組織がみられ,挙上していた膜状組織と考えられた.前.の内部は均質・無構造であった.図2水晶体.真性落屑の前眼部OCT所見水晶体前.が表層で分離し,膜状組織を形成.周辺側の前.は菲薄化し,表層に断裂部(矢印)がみられた.深層の低輝度層(矢頭)の周辺側には高輝度の点状構造物が散在.画面上:前房,下:水晶体,左:水晶体中央,右:鼻側.は症例によって異なり,数層の分離が同時に認められるとの報告や,分離した真性落屑組織に線維芽細胞様細胞がみられたという報告もあり5),前眼部OCTで前.の深層にみられた低輝度層や高輝度構造物がこれらの組織変化を示唆しているのかもしれない.また,病理組織を用いた検討では標本の作製時にアーチファクトを生じる可能性があるが,今回は前眼部OCTを用いることで生体内での組織形態を詳細に観察することができた.前眼部OCTで捉えられた形態の変化は病理組織像と類似していたが,前眼部OCTのみで確認された所見もあり,今後の病態解明の一助になると考えられる.文献1)ElschnigA:AblosungderZonulalamellebeiGlasblasern.KlinMonatsblAugenheilkd69:732-734,19222)VogtA:WeiterehistologischeBefundebeisenilerVlrderkapselabscilferung.KlinMonatsblAugenheilkd89:581-586,19323)TheobaldGD:Pseud-exfoliationofthelenscapsule.Relationto“true”exfoliationofthelenscapsuleasreportedintheliteratureandroleintheproductionofglaucomacapsulocuticulare.AmJOphthalmol37:1-12,19544)YamamotoY,NakakukiT,NishinoKetal:Histologicalandclinicalstudyofeyeswithtrueexfoliationandadouble-ringsignontheanteriorlenscapsule.CanJOphthalmol44:657-662,20095)朝蔭博司,伊地知洋,石綿丈嗣ほか:特発性水晶体.真性落屑の2例─病理組織学的検討─.日眼会誌98:664671,1994

コンタクトレンズ:コンタクトレンズ基礎講座【ハードコンタクトレンズ編】 ハードコンタクトレンズのデザインについて考える(2)

2012年9月30日 日曜日

コンタクトレンズセミナー監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純コンタクトレンズ基礎講座【ハードコンタクトレンズ編】339.ハードコンタクトレンズのデザインについて考える(2)ハードコンタクトレンズ(HCL)の外面の光学領にはレンズの度数によって決まった曲率半径のカーブを有しているが,その周辺部にはレンズ固有のデザインが設計されている(図1).そこで,レンズ外面の周辺部形状,特にフロントベベルの厚さ(図2)が,上眼瞼との関係でHCLのフィッティングにどのような影響を及ぼすかについて述べる.比較的大きなサイズのHCLでは,フロントベベルのエッジリフトエッジベベルPCICPCブレンドICブレンドベースカーブフロントカーブフロントベベルIC:intermediatecurvePC:peripheralcurve植田喜一ウエダ眼科/山口大学大学院医学系研究科眼科学厚いレンズのほうが上眼瞼による保持を強く受け,瞬目後もレンズは過度に下がることなく角膜中央付近に静止するが,比較的小さなサイズのHCLでは,フロントベベルの厚みが増すと瞬目でレンズはいったん下方に押し下げられた後に,上眼瞼によって上方に引き上げられる動きになると考えられる.一方,フロントベベルの薄いHCLは,上眼瞼の下にスムーズに滑り込んだ後に上方に引き上げられる(図3).特に,上眼瞼の張り出している症例や下三白眼の症例,眼瞼圧の強い症例では,フロントベベルの影響はより顕著であると予想される.したがって,眼瞼の形状,眼瞼圧,瞬目の状態により,フロ薄い標準厚い図1HCLの周辺部デザイン図2フロントベベルの厚さ図3外面周辺カーブとレンズサイズA:厚い外面周辺カーブa:大きなレンズサイズではレンズは上眼瞼による保持を強く受け,瞬目後もレンズが角膜中央に静止する.b:小さなレンズサイズではレンズは上眼瞼によって押し下げられてそのまま角膜下方に安定することが多い.B:薄い外面周辺カーブa:大きなレンズサイズではレンズは上眼瞼による保持を受けるが,周辺部が厚いレンズほどではないため,時間の経過とともにレンズが下がることがある.b:小さなレンズサイズではレンズは上眼瞼の下にすべり込む.周辺部が薄い小さなレンズでは重心が後方に位置するため,角膜中央に安定しやすい.ABabab(59)あたらしい眼科Vol.29,No.9,201212350910-1810/12/\100/頁/JCOPY 図4HCLの周辺部に施したMZ加工ントベベルの厚みを考慮したフィッティングが重要になる.HCLの下方固着,下方安定の症例に対する手段として,フロントベベルに溝を作る修正(MZ加工)を行うことがある(図4)が,ときにレンズが破損しやすい,溝に汚れが付着しやすい,異物感を生じるということがある.●HCLのデザインがくもりに及ぼす影響レンズ内面のベベル幅とエッジリフトはHCLのくもりにも影響を及ぼす.具体的な例を以下に記す.エッジリフトが高いと涙液層が破綻しやすくなる.ベベル幅が広いとエッジ下に涙液がプールしやすくなる.このため,鏡に息を吹きかけたときに生じるドライなくもりが,HCLの表面に生じる(図5).エッジリフトの高さとベベル幅の修正をするとドライなくもりは改善する.エッジリフトが低く,ベベル幅が狭いHCLは,角膜中央の曲率とHCLのBCとの関係がパラレルであっても,タイトフィッティングになりやすい.また,エッジやベベルが角膜の周辺部を刺激するため,結膜からの分泌物が増えて,HCL表面にウェットなくもりが生じやすくなる(図6).エッジリフトの高さとベベル幅の修正をするとウェットなくもりは改善する.一方,レンズ外面は眼瞼結膜に接するが,厚いフロントベベルのHCLでは結膜に対して刺激を与えて,結膜からの分泌物が増し,HCL表面にオイリーなくもりが生じやすくなる.こうした場合には,フロントベベルを薄くカットするとウェットなくもりは改善する.図5高いエッジリフト,広いベベル幅のHCLの装用によるドライなくもり図6低いエッジリフト,狭いベベル幅のHCLの装用によるウェットなくもり1236あたらしい眼科Vol.29,No.9,2012(60)