———————————————————————-Page10910-1810/10/\100/頁/JCOPYとは“身体的あるいは精神的負荷を連続して与えられたときにみられる一時的な身体的および精神的パフォーマンスの質的あるいは量的な低下現象”と定義できる.一般的な物理的・肉体的な運動後の疲労では,生化学的には血液中に乳酸やピルビン酸などの物質が上昇することがよく知られている.しかし,日常生活のなかで感じている疲労感については客観的に評価する適切な方法はこれまで確立されていない.瞳孔反応,輻湊反応をアコモドメータやTri-IRIS,AA-1といった眼科機器で検査を実施することは可能で,これまでも多くの眼科的知見が得られている.ヒトは疲れてくると①刺激に対する反応が遅くなる,②思考力が低下して注意力が散漫になる,③動作が緩慢で行動量が低下するなどの変化がみられる.大阪大学医学部発のバイオベンチャーの梶本修身先生や疲労学会は疲労測定方法としてATMT(AdvancedTrailMakingTest)を開発して定量化を試みている.同検査にはいろいろな検査パターンがあるが,一例をあげて簡単に要約すると,コンピュータのスクリーン上に表示された25個の数字を1から順に番号を指で押す検査で,1を押すと1が消えて26が新たに出現.その際に,ほかのすべての番号の位置がランダムに変化するものがある(図1).この検査では,一つひとつの番号を押すまでの時間を計測して,脳の反応時間の変化で疲労を判定している.加えて,これは脳年齢測定つまり加齢性の変化もみている.単独の機械としては100万円近い価格のするI疲れについて前章の先生方による説明と重なる部分もあるが,「疲れ(疲労)」というのは非常に自覚的な所見であるので「同じ負担を加えても」疲れを非常に感じやすい人とそうでない人がいる.加えて,同一個人に同じ負荷を加えても疲れを感じやすい日とそうでない日がある.そもそも「疲れ(疲労)」というのは何なのだろうか?エネルギー切れの状態を指すのか?しかしそれだけなら食事をしっかり摂ることによって回復するはずだが,エネルギーをバランスよく摂取しても疲れが回復しないときもある.疲れというのはさまざまな負担がかかった結果だといってもよいであろう.「疲労感」というのは心地よい感覚ではないが,これがないと多分休むことなく働き続けて,過労死を迎えるような事態に陥ることになるであろう.一般に「疲労」と「疲労感」はほぼ同義に使われていることが多いが,実は“疲労”と“疲労感”とはまったく異なるものである.仕事上で同じ負荷の作業をしたときでも,やりがいを感じているときや楽しい作業では誰もが経験しているように総じて疲労感が少ない.このように“疲労感”は“意欲”や“達成感”にも大きく影響される.やりがいのある仕事は達成感を生むが,この達成感が疲労感をマスクしてしまい,その結果,“疲労感なき疲労”が蓄積し身体を壊すことになりかねない.では,疲労感とは異なる“疲労”とは何か.“疲労”(31)309TI17133114特集●眼の疲れあたらしい眼科27(3):309315,2010老視と眼の疲れPresbyopia-RelatedEyeFatigue井手武*———————————————————————-Page2310あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(32)III老視と眼の疲れについて今回は老視と眼の疲れという題目,2つともcut-o値がはっきりしない,つまり,連続的な変化をするものについての話であるので,すこしfocusの甘くなる話になることをご了承いただきたい.なぜ,最近になり老視や眼の疲れということが頻繁に議論されるようになったのだろうか.昔と異なり,最近は仕事のなかで端末作業をする時間が非常に増え,輝度,解像度コントラストの良い(良過ぎる)モニターの使用,そして何より超高齢化社会になり昔だと引退している年齢でも現役で仕事を続ける方が増えてきた.加えてwebアクセスが容易になったために一般の方の医療知識レベルの向上という要因もあり老視に関連した眼の訴えを聞く場面はさらに増えてきた.本稿では,老眼研究会で定義するところの老視(つまりは調節力の低下)に加えて,もう少し広義に加齢による眼の変化に伴う眼精疲労をメインに話を展開していくことにする.ものだが,コンピュータ用や任天堂DS用のソフトウェア(図2)は利用しやすい数千円で入手可能である1,2).II老眼について「老眼」というのはドライアイのような統一された定義や診断基準がこれまでなく,“共通言語”のないままに研究や診断が行われてきた.最近になってこれらの共通言語を策定して将来の臨床や研究を加速しようという機運が世界で高まってきたため,わが国でも老眼研究会(http://www.rougan.jp/)が設立され,まずは2009年度版の老視の定義が決定したという状況である(現在投稿中).その研究会のなかで老視を「加齢により調節力が減退した状態(Age-RelatedLossofAccommoda-tion)」と定義した.一般向けの定義としては,「見える範囲(明視域)が狭くなった状態」とした.この定義のポイントは静的な視力だけではなく,動的な視力が維持されていることが必要なことを明確にした点である.そして,介入が必要な状態であるので老視を疾患であると定義した.図1疲労測定法ATMT:脳年齢計ATMT(写真は株式会社エルクコーポレーションの御厚意による)図2疲労測定法ATMT:DS用ソフトアタマスキャン(写真は株式会社セガの御厚意による)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010311(33)ラに喩えることにより理解を得やすくしたいと思う.端的にいうとagingの進んだ眼というのは古いデジタルカメラに喩えることができるであろう.レンズであるがドライアイなどのocularsurfaceの異常がagingにより起こっており,これは古い世代の収差の大きい,コーティングのげたレンズに喩えることができるであろう.さらに白内障による水晶体の硬化・混濁や収差の増加や光学系の倒乱視化はレンズ性能が落ちていることに喩えることができるであろう.虹彩については,瞳孔運動の低下や反応時間の延長もあり,このせいでクリアに見えるのに時間がかかる.つまりカメラでいう絞り機能の低下に喩えられる.毛様体筋については,筋力が低下しており,これはピント調節のためのモーターの俊敏性やパワーが落ちていることになろうか.よく聞かれる眼精疲労の症状としては眼が熱くなる,複視,頭痛,調節力の低下,輻湊の低減,コントラスト変化や知覚対象物の動きに対して容易に視力低下を自覚するなどの代表的な症状があるが,これは個人によってバリエーションが異なるもであり,背後に基礎疾患が隠れていることもある.しかしそのような基礎疾患ベースの眼の疲れについては他書に譲ることとする.疲れということを眼科領域だけで語りつくすことは不可能であるので,今回は日常臨床で眼の疲れを訴える,特に基礎疾患などのない患者を眼の前にしたときにどのような説明や対応指示をすればいいのかというあくまで一つの指針を示すことにする.IV眼とデジタルカメラ(図4)今回の話を展開するにあたり,視覚系をデジタルカメ正常眼のFVABUT短縮型ドライアイ視標表示システム図3実用視力計(写真は海道美奈子先生の御厚意による)———————————————————————-Page4312あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(34)ラでは,テクニックを使うことなく簡単にきれいな画像を連続して撮影し続けることは困難であることは想像に難くない.つまり,老眼年齢の眼は加齢性の変化により長時間の視活動には耐えにくい眼になっている.Vピント調節機能と眼精疲労脳は絶えず送られてくる視覚情報を知覚しようと努力している.その情報が質の低い視覚情報の場合には運動器(眼)にfeedback信号を送り返して(つまり虹彩や毛様体や輻湊筋を動かして),網膜の明暗順応を通じて,もっと質の高い視覚情報を送るように努力せよと中枢から末梢に指令を出し続ける.つまり,視覚情報が悪いままだとfeedbackと眼の反応努力が絶えず行われるようになり中枢性にも末梢性にも疲労が蓄積する.そもそも,視対象というのは同じ位置,コントラスト,照度の条件下にあるわけではなく,絶えず微妙に変化している硝子体については飛蚊症の原因になる硝子体混濁が出てきているが,これはカメラのミラーやCCDに埃がたまっているのになぞらえられる.網膜については,加齢により網膜感度が低下しており,神経の数自体も減っており,暗・明順応に時間がかかるようになっている.これはデジタルカメラがCCD画素数が少なく,CCDの性能の低い〔S/N(signal/noise)比が低く画素数の少ないなど〕のと同じである.脳については,入力された情報を処理したりfeed-back信号を眼に返す機能が落ちており,これはデジタルカメラの心臓部であるイメージプロセシングのチップ(映像エンジン)の性能が低いことになぞらえられる.持続力については,加齢による眼のスタミナも低下しており,これはバッテリーの持ち時間が短くなっていることに喩えられる.このような各パーツの機能低下を有するデジタルカメ図4眼とデジタルカメラ視覚系はデジタルカメラに喩えることができる.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010313(35)ん,若年者のように何も工夫することなく楽に見えるというわけにはいかないが,それなりの工夫をすれば改善することは可能であろう.VI易疲労性が出現することへの対応策現在のデジタルカメラは顔認識などを含めて非常に多くのカンタン撮影機能が満載でほぼ希望通りの写真を撮影可能である.これは若者の健康な眼と同じで,どんな状況でも適切な矯正をしていれば遠くも近くも長時間仕事しても疲労感を感じることなく見ることができる(実際に疲労しているかどうかは前述のとおり不明).しかし,最新のデジタルカメラでもマクロ撮影(非常に近距離の撮影)や極端に明るい・暗い場面での撮影ではなかなかピントを合わせてきれいな写真を撮影できないことを体験済みだと思う.端的に言えば世代の古いデジタルカメラ(老眼年齢の眼)では同様のことが頻繁に起こっているのだ.つまり,まずデジタルカメラの性能が低いことは認めたうえで現実的な対応を練る必要がある.まず視対象を適切な状態に整える必要があるが,不適切な視対象とはどのようなものであろうか?①視対象が焦点や輻湊を適切に調整するには小さすぎたり,②視対象のコントラストが低すぎる,③視対象の表面が見にくい,④視対象が動く,⑤視対象のパターンが見にくい,⑥視対象の置き方が適切でない,などが考えられる.①に対しては,フォントを大きくしてピントが合いやすいようにする.②,③に対しては,発色のよい紙やモニターを用いる.④に対しては,動きを止めると仕事にならない方も大勢いるので性能の良い液晶モニターを用いること(このために,まだブラウン管モニターを好む人もいる).⑤に対しては一例として,紙と画面を交互に見る場合は,用紙上とモニター上のパターンを同じにするためにモニターの表示形式を「白地に黒」という配置にしたほうが良い.モニター画面を見続けるようなときには白地だと明るく眼の疲れを訴える人も多いので,黒地に白が良いとも言われている.⑥に対しては,液晶モニターなどは垂直近くに立ってので中枢と出力系で絶えず情報のやり取りをしなくてはならないので,眼や脳は静的な状態に落ち着く暇はない.上記で眼をデジタルカメラに喩えたが,静的でない,つまり動的である眼や脳でも無駄な動きをできるだけ少なくすれば,デジタルカメラで撮影対象に素早くピントを合わせればバッテリー消費も少なくなるように,眼精疲労は少なくなるであろうことは容易に想像できる.たとえば一輪車に乗るとする.これは身体のバランスの状況を絶えず脳に伝えてその結果を身体の筋肉にfeedbackするという情報のやり取りをくり返し行わないと上手く一輪車を乗りこなすことはできない.素面(しらふ)の状況とアルコールで酔った状況を考えてもらえば,明らかに後者のほうが情報のinputとoutputの連携スピードが遅くなり無駄に大きな動きが大きくなることが容易に想像できるであろう.眼に関しても同様で情報の入力が正確で脳(ここでは脳を広義の意味で使用)での情報処理が速いほど無駄な筋肉や脳の「動き」を少なくできるので良いと思われる.つまり脳に正確で素早く情報がinputされoutputされればされるほど眼精疲労は少なくなるといえるであろう.ではなぜ加齢とともに眼精疲労が出やすいのあろうか?先ほどのデジタルカメラの例を使って説明すると「動き」「素早さ」という面であるが,カメラのモーターのパワーと俊敏性が悪くなっておりかつバッテリーのスタミナが落ちており,モーター以外にも絞りやCCDの機能も落ちておりピントをすぐに合わせることができない状況になっている.当然outputに対する反応が遅いのと同時にinputする情報の精度が落ちている.加えてこの情報の精度が落ちているとそれに対して中枢にも迷いが生じ,ただでさえ加齢のせいで性能の落ちて遅いイメージプロセシングのチップが迷うことにより,時間もかかり不正確な情報を眼に伝えるという悪循環で,易疲労性が出るという考えももっともであろう.加えて加齢とは関係なく疲労によって調節時に瞳孔反応も遅くなり潜時も長くなるので,疲れれば疲れるほどさらに素早さが落ちるという悪循環に陥る3).このように,若年者よりも眼精疲労が出やすい状況にあるが,患者に前向きに対応させることもわれわれの仕事の一つである.もちろ———————————————————————-Page6314あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010(36)どの進行に伴う度数変化,レンズコーティングの離などで低qualityの眼鏡になっている可能性もあるので,定期的にレンズチェックを行う必要がある.④に関しては眼科というよりも患者自身のセルフコントロールが必要になるので他書に譲る.⑤に関しては①でも述べたが,モニターを上方に置けば置くほど眼球の露出面積が大きくなりドライアイ傾向が加速される.モニターの性能については電器店に行っても同じサイズの液晶モニターでもかなり値段が異なる.“性能が良い”といわれるモニターは何がよいのであろうか?詳細は割愛するが,現在多用されている液晶モニターの性能をみるパラメータとしては視野角の広さ,画素数・解像度,応答速度,輝度,コントラスト比などの代表的なファクターがある.液晶の方式はTN(TwistedNematic),VA(VerticalAlignment),IPS(In-Place-Switching)方式が主流となっており.大まかな性質として,TN方式は応答速度がある程度速く,値段も安いが視野角が狭く,同じ方式内でも機種間の性能差が大きい.VA方式はコストは中間で,反応速度も遅いが画質も悪くなくオーバードライブ搭載しているものでは応答速度も速く動画も十分楽しめる.IPS方式は値段は高いが画質もよく何でもそつなくこなす.それぞれ技術的な限界が存在するが,仕事の内容に応じたモニターを選ぶ必要があると思われる.画素数・解像度:液晶モニターはフルスクリーン表示や拡大表示などで推奨解像度以外の解像度を表示させると,たとえば1つのドットで表示すべき情報を2つの画素で表示する部分も必要になるため,当然のことながら,シャープさは失われ,画質の劣化は否めないので,やはり液晶モニターにおいては「推奨解像度」どおりの解像度で表示するのが推奨される4).応答速度:液晶の弱点でもある,スピードあふれる場面をいかに再現できるかといった性能を表している数値で,動画を楽しむためにはできるだけ小さい応答速度のものが望ましい.輝度・コントラスト:液晶モニターのコントラストや輝度は,現在では実用的にはまったく問題ないレベルを実現されているので,輝度やコントラストが低すぎることによる見にくさというのは,今ではほとんどないと考えて差し支えない.最後に,ブラウン管モニターの使用時には焼けつき防止のたいるので眼からの距離はある程度一定に保たれているが,本や書類などは机の上において読むことが多く,これではページの上とページの下では眼からの距離が異なり,絶えずピントを合わせ続ける必要があるため疲労の原因になりかねない.書見台を用いて視距離を一定に保つのも解決策の一つであろう.つぎに視対象そのものでなくて視環境に関わることであるが,①瞬目不全によるドライアイ,②長時間の近見作業による調節や輻湊維持努力,③合っていない眼鏡,④年齢に応じた社会的責任からのストレスや睡眠不足,⑤モニター位置やモニター性能が良くない,⑥照明条件が不適切,蛍光灯のフリッカーなどが考えられる.①に関してはこれまで言われているように点眼,加湿器,そしてモニター位置を少し低い位置にして開瞼面積を小さくする,そして深い瞬きの回数を増やすなどの基本的な対策が考えられる.②に対しては,就業中に長時間休憩するというのは現実的ではないので,書類のページをめくったりパソコン作業でファイルの保存作業などの際に,数秒だけでも視線を遠くに向けたり,睡眠時に調節麻痺剤を使用して毛様体を弛緩させて過緊張状態を改善するようにする.その他,積極的に毛様体筋に働きかけるWOC(ワック),通電治療(図5),新しい3Dヘッドマウントモニターを用いたトレーニングなどが考案されている.③では年齢に応じた加入度数が必要であり,白内障な図5通電治療本治療は薬事未承認であり,眼科専門医のみの会員制による治療プログラムである.———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.27,No.3,2010315めに電源をこまめに切ったり,スクリーンセーバーを機能させる必要があったが,液晶モニターにも長時間同じ画面を表示すると,その画面が残像となる特性がある.これは焼けつきではなく液晶内部のイオン性不純物が堆積しているだけなので,電圧の掛け方を変える,つまりは表示する画面を別の画面にしたり,電源を切ったりすることで,この不純物が液晶層内に拡散され,残像がなくなっていく5,6).⑥蛍光灯は,ちかちかとちらつくフリッカー現象を起こす.通常,蛍光灯は電源の2倍,すなわち50Hzの電源地域ならば100Hz,60Hzの電源地域ならば120Hzで点滅をくり返している.この頻度は,人間の眼で感知できないほど大きなものだが,蛍光灯の寿命が近づき,一度の点滅の残光時間が短くなると,点滅の間隔が目立つようになってフリッカーとして認識されるようになるため適切な間隔で蛍光灯を変える必要がある.照明条件であるが,パソコン作業では眼の疲れ方が通常の読み書きと違うこともあり,特にVDT作業する際の注意点を以下に記す.全体照明としては天井からの照明で明るさを確保するが,その際,拡散・プリズムパネルやルーパーなどで反射を抑えたものが望ましく,部屋中の照度は,ディスプレイ,机上,周囲とできるだけ均一にするように努める.ディスプレイは,ディスプレイに光が映りこむと,反射で眼が疲れるので作業者の眼に照明や窓の直射光が入らず,かつ,作業者の背後からも光が反射しない位置に置く.光沢液晶は美しく見えるが長時間作業には向かないので非光沢液晶ディスプレイで,輝度・コントラストを控えめに設定するべきである.眼は明るいところを見るときには毛様体筋を緊張させてピント合わせを行う.明るいところでは瞳が小さいのでピンホール効果が手伝って調節ラグが大きくなっているが,暗いところでは瞳が大きくなっているためピンホール効果が得にくく,しっかりとピント合わせをしなくてはならず,調節を維持するための毛様体筋により大きく負担がかかる.そのため明るいところで見るよりも調節疲労が起こりやすい.しかし明るければ明るいほど良いかというとそうではない.明るいところでは瞳が小さくなり,ピンホール効果が得られるのだが,明るすぎるところではさらに瞳が小さくなり,光の回折という現象が起こり,にじんで見えるようになる.そのにじみを消そうとさらに調節が誘発されてやはり毛様体筋に過剰な緊張を強いることになる.まとめ以上,老眼研究会の定義した老視「加齢により調節力が減退した状態(Age-RelatedLossofAccommoda-tion)」を有する眼だけでなく,老眼年齢に達した一般の眼という広義の老視ということでデジタルカメラになぞらえて話を展開してきた.もちろん,これだけで説明できるわけではなく,もっと深いメカニズムが働いているが,あくまで臨床で患者に伝える対応策の一つを例示しただけにすぎないということに留意していただきたい.ここで述べたことは決して老眼年齢人口のみに当てはまるわけでなく,若年者にも,疲労感という自覚症状は出てきていないが,若さを過信して無理をすると眼精疲労は確実にたまり眼症状以外の全身症状などで症状発現してくることもあるので,若くても仕事の負担の程度によっては老眼鏡の装用や度数を落とした仕事用のコンタクトレンズなどの装用も望ましいと考える.文献1)http://www.hirou.jp/P04/01-1.html2)http://www.soiken.com/3)松井利一:眼の画像観測機構の応答特性を利用した視覚疲労の評価.ヒューマン情報処理研究会2002/7/194)http://www.eizo.co.jp/products/eizolibrary/resolution/index.html5)http://www.eizo.co.jp/products/eizolibrary/contrast/index.html6)http://www.xn--ddk0a0ew45ynvf21c772g.com/02.html>(37)