あたらしい眼科Vol.27,No.11,201015550910-1810/10/\100/頁/JCOPY時間の共有インターネットがもたらす情報革命のなかで,情報発信源が企業から個人に移行した大きなパラダイムシフトをWeb2.0と表現します.インターネットは繋ぐ達人です.地域を越えて,個人と個人を無限の組み合わせで双方向性に繋ぎます.パソコンや携帯端末からブログや動画,写真などをインターネット上で共有し,コミュニケーションすることが可能になりました.インターネット上で情報が共有され,経験が共有され,時間が共有されます.前章までに,医療知識・医療情報がインターネット上で共有される事例を数多く紹介してきました.「時間の共有」は,インターネットの最も今日的な利用方法です.その,「時間の共有」というインターネットの進化と,医療がどのように関係するのか,実例を交えながら紹介したいと思います.インターネットは人と人を繋ぐツールです.同時性をもつ繋ぎ方には,どんな方法があるでしょうか.チャット,スカイプ,テレビ会議,ツイッター,Ustreamなどがあげられます.チャットは短いメールのやりとりです.一対一が原則です.スカイプはどうでしょう.スカイプはインターネット通信を用いた無料電話です.これも一対一が原則です.テレビ会議はどうでしょう.複数の参加者が,足を運ぶことなく,空間を共にせずに時間を共にすることができます.複数の人間が参加するとはいえ,参加者は顔見知りに限られる閉鎖空間です.ツイッターとUstreamは,対象が不特定になる点で,他のツールとは大きく異なります.Ustreamについては章を改めて紹介します.本章は,ツイッターというツールの特徴と,医療応用の可能性について紹介します.ツイッターは,Obvious社(現Twitter社)が2006年7月から始めたサービスです.ブログ・サービス「Blogger」(2003年にGoogle社が買収)の開発チームのエヴァン・ウィリアムズ,ビズ・ストーン,ジャック・ドーシーらが中心となって2006年に設立されました.ジャック・ドーシーによると,ツイッターの基本構想は自身が2000年6月に思いついたそうです.リアルタイム性が高く,どこにいても自分の状況を知人に知らせたり,逆に知人の状況を把握できたりするサービスの可能性に気づきました.ツイッターは,2007年3月に米国で開催されたイベントSouthbySouthwest(SXSW)でブログ関連の賞を受賞したことで一躍注目を集めるようになりました.2008年4月23日にユーザインターフェースが日本語化された日本語版が利用可能になり,2009年10月15日には携帯電話に対応できるようになりました1).ツイッターの医療応用ツイッターは,ミニブログともいわれますが,短いメッセージを思いのままに発信します.その対象は,「誰か(One)」ではなく,「ネットワーク(Mass)」です.情報だけでなく,感情や感覚を,ネットワークの参加者間で同時に共有できます.その簡便性が支持を受けて利用者が格段に増えました.海外に目を移すと,インドネシアやブラジルのようにメールよりもツイッターが普及している国すらあります.政治家や芸能人のような,実生活において距離のある人物とも,リアルタイムで情報・感情を共有できる,という希少性と同時性がツイッターの革新的な要素です.情報の質は問いません.ツイッターには,コミュニケーションツール以外の利用方法が報告されています.2009年4月から,新型インフルエンザがメキシコから世界中で流行しました.発症初期は,謎の流行性疾患が凄まじい勢いで拡散している,どうやら死者も出ているらしい,致死性の高い,感染力の高い恐ろしいウイルスだ,という内容で新聞やテレビから報道されました.個人が発信するインターネット上の情報はどうだったでしょう.ツイッターには,新型インフルエンザ患者の増加と同時に,「頭が痛い」「のどが痛い」「熱が出た」というつぶやき(ツイート)がメキシコからアメリカにかけて多数みられました.そのツ(73)インターネットの眼科応用第22章インターネットで時間の共有①武蔵国弘(KunihiroMusashi)むさしドリーム眼科シリーズ1556あたらしい眼科Vol.27,No.11,2010イートの発信源を追跡すると,インフルエンザの拡散と一致する,というのです.ロンドンシティ大学(CityUniversityLondon)がツイッターを伝染病などの早期警戒システムに活用しうるという研究結果を2010年4月13日に発表しました.2009年5.12月にかけてツイッターに英語で書き込まれたツイート約300万件を対象に,インフルエンザを意味する「flu」という単語の使われ方を調査した結果,「豚インフルエンザ(新型インフルエンザ)にかかっている(Ihaveswineflu)」という文を含むメッセージが12,954件,また「インフルエンザにかかった(I’vegotflu)」という文を含む書き込みが12,651件あり,それらの単語の発信源の広が(74)りとインフルエンザの拡散状況が一致していました.ツイッターは,疫学調査に利用できる可能性があります2).また,swinefluに関する人々のつぶやきをGoogleMapsに表示するというユニークなサイトも登場しました.人々のツイートを地図の上で視覚化します.2010年10月現在,このサイトのサービスの対象は,アメリカとヨーロッパとインドに限られていますが,近い将来,日本にも登場するのではないでしょうか3).インターネットの進化の方向性に,疫学調査・予防医療の領域が見えてきます(図1,2).ひょっとすると,流行性角結膜炎やアレルギー疾患の流行をリアルタイムで視覚化できるようになるかもしれません.「時間の共有」がインターネットの利用方法の今,起こっている潮流です.【追記】NPO法人MVC(http://mvc-japan.org)では,医療というアナログな行為と眼科という職人的な業を,インターネットでどう補完するか,さまざまな試みを実践中です.MVCの活動に興味をもっていただきましたら,k.musashi@mvcjapan.orgまでご連絡ください.MVC-onlineからの招待メールを送らせていただきます.先生方とシェアされた情報が日本の医療水準の向上に寄与する,と信じています.文献1)http://ja.wikipedia.org/wiki/Twitter2)SzomszorM,KostkovaP,deQuinceyE(2010)#swineflu:TwitterPredictsSwineFluOutbreakin2009acceptedfore-Health20103)http://www.mibazaar.com/swineflu.html図2図1のサイトの拡大図図1TwitterとGoogleMapsを組み合わせたWebサイトの俯瞰図吹き出しは,「flu」を含んだつぶやきの発信源.