あたらしい眼科Vol.27,No.5,20106570910-1810/10/\100/頁/JCOPYによりフィードバックを受けることができます.自分の診察室と上の先生の診察室を行ったり来たり,文字どおり走り回っています.診察,手術の予約,レーザーの予約などをしているうちに,あっという間に午後の専門外来の時間に突入します.・専門外来(午後)専門外来は午後毎日あります.ドライアイ外来,神経外来,未熟児外来,角膜外来,色覚外来,網膜硝子体外来,ぶどう膜外来,斜視弱視外来,緑内障外来など,多岐にわたります.私達医療練士研修生は,このなかの2つの専門外来に配属され,6カ月ごとにローテーションします.この期間に,専門外来の多数の患者さんを診察し,外来後の勉強会を通してその分野を集中して学びます.オペオペは週3日あり,火曜班,水曜班,木曜班の3班体制を取っています.必ず全員がいずれかのオペ班に属します.(85)東京女子医科大学眼科学教室には毎年後期臨床研修生(当院では医療練士研修生)として5人前後の入局があります.3年前に入局してから,各専門分野の先生方の御指導の下,4人の同期と一緒に勉強し,悩み,助け合いながら過ごしてきました.今回は私達の入局から現在までの研修の様子を御紹介します.独立までの3カ月2年間の初期臨床研修を終えたものの,眼科の知識を学ぶ機会は少ないものです.眼科は細隙灯顕微鏡や眼底検査など,初期臨床研修では教わらない手技を一から覚えないといけません.当科では,入局してから最初の3カ月間は,それぞれ決まったオーベンの先生に1日中つかせてもらいます.外来業務,病棟業務,手術業務,当直のすべてを,1対1でオーベンから教わりながらこなします.目標は7月からの「独り立ち」です.独り立ちとはいっても3カ月ですべて完璧にできるわけではありません.独りで診察し病態を考えてから上申できるようになる,という意味で「独り立ち」なのです.入局当初は毎日が新しいことの連続で,この3カ月で今後の眼科医としての道筋がつくられるといっても過言ではありません.外来・一般外来(午前)午前の一般外来は,教授や准教授の外来が2本柱で進んでいきます.待合室はその外来予約患者さんで一杯になります.教授や准教授が診察する前に,専門医試験前の若い医師3.4人で予診をとります(1診目).患者さんのその日の状態を聞いて診察をし,必要な検査を追加して,上申をします(2診目).医療練士研修生は,一人で診察をして患者さんを帰すことはなく,専門医の診察●シリーズ⑬後期臨床研修医日記東京女子医科大学眼科学教室能谷紘子▲教授回診の様子658あたらしい眼科Vol.27,No.5,2010(86)す.オーベンの先生から独立して自分の外来ブースを持つようになります.今まではオーベンの先生が隣りにいたけれど,自分で診察して上申しなければいけません.最初はオーベンの先生のように,所見も取れず,そのあとに必要な検査も思い浮かびませんでしたが,毎日走り回っていると,どの所見が大事で,どんな検査が必要なのかがだんだん見えてきます.おわりに眼科医として3年が過ぎようとしています.大学病院だけでなく,出張病院に出る学年になりました.いつまでも未熟者のつもりでも,後輩もでき,頼る学年から頼られる学年に変わりつつあります.そんななかで,後期研修の時期にいろいろな症例を経験しておくことは,とても大事なことだと痛感しています.そのときはたくさん悩み,大変な思いをしても,きっと今後の眼科医人生に大いに役に立つと思います.これから難しい症例にあたったときも,初心を忘れずに成長していきたいと思います.能谷紘子(のたにひろこ)平成17年3月東京女子医科大学医学部卒業平成17年4月東京女子医科大学病院にて初期臨床研修平成19年4月東京女子医科大学眼科学教室医療練士研修生〈プロフィール〉白内障,硝子体手術,緑内障手術,斜視手術など,いろいろな術式を勉強します.まずは白内障手術の助手,つぎは硝子体手術の助手,というように少しずつレベルアップしていきます.オペレーターとしてデビューするには,ウェットラボで行う白内障手術のテストに合格しないといけません.そのテストは,「独り立ち」と同時期の入局3カ月目にあるので,オーベンの先生とウェットラボに通い練習します.白内障手術の手順や機器の名称,操作方法を学びます.はじめは顕微鏡の操作に慣れるだけで一苦労あり,ピントを合わせるうちに,「顕微鏡酔い」してしまうこともありました.それを乗り越えて,テストに合格すると,ようやく指導医のもと,オペレーターの椅子に座らせてもらえるのです.当直まずはオーベンの先生と一緒に当直します.初めは電話が鳴るたびに,患者さんが訴える症状を聞くたびにドキドキの連続でした.まずは一人で診察をしてからオーベンの先生のチェックを受けます.独立して一人ですべてを判断しないといけないかと思うと,不安が募ってしまいます.日々の外来での鍛錬が,当直の不安を払拭し,助けになることを痛感します.いよいよ「独り立ち」入局から3カ月経つと,いよいよ独り立ちを迎えま▲教授回診前の診療(1)▲教授回診前の診療(2)(87)あたらしい眼科Vol.27,No.5,2010659☆☆☆教授からのメッセージ女子医大の後期臨床研修過程は5年間と規定されています.各診療科に入局して5年間専門領域の臨床研修をすることになります.この研修期間を終了すると臨床医として,教育者として,そして研究者としての資格が認められ,助教に就任する権利を得ることができるという仕組みになっています.眼科の場合は専門医試験が入局後5年目にありますので,専門医試験に合格すればその翌年には助教に就任することになります.女子医大眼科では臨床医の育成を第1目標にしています.どこに行っても,どんな患者を目の前にしても対応できる知識と技術を習得してもらうと同時に,医師としての心構え,礼儀,態度を適切に表現できるように指導しています.教育する立場に立つと,知識や技術の教育よりも後者の精神教育がはるかにむずかしいことを実感します.文字や数字で書き表せない,また手術のように眼や耳で確かめて客観的に判断できない部分が多いからだと思います.しかし,5年間の後期臨床研修を終了するまで頑張ってくれた医局員が専門医そして助教になる頃にじっと見てみると,間違いなく全員が精神的な面で立派な眼科医として成長しています.この成長を見るのが教育者として最も大きな楽しみです.(東京女子医科大学眼科学・教授堀貞夫)新糖尿病眼科学一日一課初版から7年,糖尿病の治療,眼合併症の診断,治療の進歩に伴い,待望の改訂版刊行!【編集】堀貞夫(東京女子医科大学教授)・山下英俊(山形大学教授)・加藤聡(東京大学講師)本書の初版が出版されて7年余がたった.この間に糖尿病自体の治療や合併症の診断と治療が大きく変遷し進歩した.ことに糖尿病網膜症と糖尿病黄斑浮腫の発症と進展に関与するサイトカインの研究が進展し,病態の解明が大きく前進した.これを踏まえて,発症と進展に関与する薬物療法の可能性を追求する臨床試験が進んでいる.一方で,視機能,ことに視力低下に直接つながる糖尿病黄斑浮腫の治療は,現時点で最も論議が活発な病態となっている.硝子体手術やステロイド薬の投与の適応と効果について,初版が出版された頃に比べると大きく見解が変化している.そして,糖尿病黄斑浮腫の診断に大きな効果を発揮する画像診断装置が普及した.(序文より)〒113-0033東京都文京区本郷2-39-5片岡ビル5F振替00100-5-69315電話(03)3811-0544株式メディカル葵出版会社Ⅰ糖尿病の病態と疫学Ⅱ糖尿病網膜症の病態と診断Ⅲ網膜症の補助診断法Ⅳ糖尿病網膜症の病期分類Ⅴ糖尿病網膜症の治療Ⅵ糖尿病黄斑症Ⅶ糖尿病と白内障Ⅷその他の糖尿病眼合併症Ⅸ網膜症と関連疾患Ⅹ糖尿病網膜症による中途失明糖尿病眼科における看護Ⅸ■内容目次■B5型総224頁写真・図・表多数収載定価9,660円(本体9,200円+税460円)