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第10回眼科DNAチップ研究会報告書

2010年1月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.27,No.1,2010650910-1810/10/\100/頁/JCOPYはじめに今年(2009年)で第10回を迎える眼科DNAチップ研究会が第63回日本臨床眼科学会にて2009年10月9日に行われた.一般演題4題,教育講演1題,そして特別講演1題と内容の豊富なプログラムであり,バイオインフォマティクスに関する高度な研究内容を聞くことができた.本研究会は発足当時に眼科DNAチップ研究会と名づけられ,研究会では毎回高度な研究内容が発表されてきた.現在に至るまでにバイオインフォマティクス的研究手法は進化しており,対象は初期には遺伝子が主であったが,現在ではトランスクリプトーム解析,プロテオーム解析,グライコーム解析,メタボローム解析などに拡大発展している.本研究会では「DNAチップ」に限らずに幅広く研究会を発展させたいと考えており,幅広いバイオインフォマティクス分野における演題を募集している.一般講演京都大学の中西秀雄先生は「DNAチップを用いた変性近視感受性遺伝子へのアプローチ」について発表された.強度近視は環境因子とともに遺伝因子の関与が指摘されており,家系を用いた連鎖解析によってこれまで多数の近視感受性領域が報告されているが,現時点では具体的な近視感受性遺伝子は明らかになっていない.近年の科学技術・バイオインフォマティクスの進歩ならびに公的データベースの充実に伴い,一塩基多型(SNP)を用いた大規模な全ゲノム関連解析(GWAS)が可能となり,眼科領域でも加齢黄斑変性症,落屑症候群における遺伝子多型の強い関連が明らかになっている.本講演ではアジア人において特に重要な疾患である強度近視の感受性遺伝子を明らかにすべく,演者らが行ったGWASの具体例を示しながら,今後の方針とともにその理想と現実を概説された.京都府立医科大学の上田真由美先生は「Steavens-Johnson症候群(SJS)とEP3遺伝子多型の相関ならびにEP3機能の解析」について発表された.全遺伝子アプローチによる遺伝子解析(GWAS)にて,SJSにおいてEP3遺伝子領域との相関が確認され,iselectカスタムチップとダイレクトシークエンスにてEP3遺伝子領域の6SNPsとの相関が確認された.遺伝子機能解析においては,結膜上皮にEP3遺伝子の発現が確認され,またEP3アゴニストはpolyIC刺激下の結膜上皮細胞のCXCL11,CCL20,IL6の産生を抑制し,さらに結膜弛緩症や翼状片患者の結膜上皮に発現していたEP3蛋白が慢性期SJS患者の結膜では消失していた.以上よりEP3が眼表面炎症制御に関与している可能性があることを示された.京都府立医科大学の池田陽子先生は「原発性開放隅角緑内障(POAG)の疾患マーカー解析」について発表された.POAG症例と緑内障専門医が判定した正常者を500KAymetrixチップにて解析し,得られた一塩基多型(SNPs)と既報の緑内障遺伝子情報を踏まえて作成したカスタムチップにて別集団POAG,正常者間を解析し,結果をマンテルヘンゼル法で統合解析を行って最終的に6個の有意なSNPsを得た.これらのSNPsはPOAGの発症関連マーカーになる可能性があることを示された.山形大学の柏木佳子先生は「コチレニンA投与した網膜芽細胞腫細胞株における網羅的遺伝子発現解析」について発表された.分化誘導および増殖抑制効果をもつ新しい抗腫瘍薬として考えられているコチレニンAを網膜芽細胞腫細胞株WERI-Rb-1に投与したのちにマイクロアレイ解析を行った結果,TNF(腫瘍壊死因子)シグナル関連因子,細胞周期を抑制するp21・Cip1遺伝子,および視細胞特異的発現遺伝子であるphospho-deesterase6AのmRNAの発現が上昇した.一方で,(65)第10回眼科DNAチップ研究会報告西塚弘一*1山下英俊*1木下茂*2*1山形大学医学部眼科学講座*2京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学第63回日本臨床眼科学会専門別研究会2009年10月9日(金)福岡国際会議場———————————————————————-Page266あたらしい眼科Vol.27,No.1,2010神経芽腫マーカーであるN-myc遺伝子のmRNAの発現は減少した.また,WERI-Rb-1にコチレニンAを投与することにより細胞増殖抑制およびアポトーシス誘導,細胞形態変化が観察された.これらの結果より,コチレニンAが網膜芽細胞腫細胞株において細胞周期を抑制しアポトーシスを誘導することが確認され,抗腫瘍薬への応用の可能性があることを示された.教育講演山形大学の田宮元先生は「ヒト疾患感受性遺伝子同定のためのバイオインフォマティクス手法」について講演された.現在,最も広く行われている一定の統計尺度を閾値としてゲノム全体をカバーする高密度一塩基多型(SNP)を用いたケース・コントロール関連解析(SNP-GWAS)において,解析に必要な遺伝統計処理・情報処理を解説された.つぎにSNP-GWASデータは直ちに集団ベース連鎖解析に適用可能であることを示され,最終的にはSNP間の相互作用モデルや環境との相互作用モデルに基づく解析をゲノムワイドに行うための新しい遺伝統計手法である罰則付回帰解析について紹介していただいた.一方で,最近明らかにされつつあるSNP-GWASの前提とされていたCDCV(CommonDisease/CommonVariant)仮説がなかなか成立し得ないことを集団遺伝学的な側面からわかりやすく解説され,また新しい遺伝モデルとしてCDRVs(CommonDisease/RareVariant)仮説とそこから導かれる研究戦略といった最(66)新のバイオインフォマティクス手法について概説していただいた.特別講演九州大学の秦淳先生は「久山町研究を基盤とした脳梗塞のゲノムワイド関連遺伝子研究」について講演された.脳梗塞関連遺伝子の探索のために,九州大学病院を含む7つの医療機関を受診した脳梗塞患者群と久山町住民検診から選択した対照群を用いて大規模な患者対照研究を行った.ゲノムワイド関連解析および連鎖不均衡解析の結果2つの脳梗塞関連遺伝子が同定された.一つ目はプロテインキナーゼCエータ(PKCh)をコードするPRKCH遺伝子で,PKChのアミノ酸置換をもたらすSNP(Val374Ile)は脳梗塞のうちラクナ梗塞との有意な関連が示され,機能解析においてもPKChはヒト冠動脈の動脈硬化巣に発現し,アミノ酸置換によりその酵素活性が変化した.二つ目はアペリン受容体(APJ)をコードするAGTRL1遺伝子で,プロモーター領域に位置するSNP(-154/A)は脳梗塞と関連し,invitro実験により塩基の違いによりプロモーター活性が変化した.さらに1988年の循環器健診を受診した久山町住民を14年間追跡した成績においてもPRKCHのIle/Ile型,AGTRL1のGG型では他の型と比べて脳梗塞の発症リスクが有意に高いことが示された.以上のような久山町研究における疫学データを基盤としたゲノムワイド関連遺伝子研究について講演された.☆☆☆

眼科医のための先端医療 109.眼表面疾患と上皮間葉系移行の関与

2010年1月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.27,No.1,2010630910-1810/10/\100/頁/JCOPY上皮間葉系移行(EMT)とはとのでをとはとのは葉葉と葉と上ののでで上皮系(葉)の間葉系「」とはのので上皮間葉系移行()とのではででは病関与と表のの移で上皮系と間葉系のをとののをと疾患関与とのとでのはんでととのでは上皮を間とでで眼では上皮下)()と)は眼表面の疾患で関与とをはb(transforminggrowthfactor-b)などのサイトカインが関与しているといわれ,今後は新たな治療法の開発につながることが期待されています.翼状片とEMTとののの眼とのとののとと眼表面のと上皮上皮のととの行上皮EMTと眼とととの移との上皮のb-カテニンやa平滑筋アクチンなどの発現が認められました.翼状片の先端部が角膜に癒着しているのは,こうしたEMTを起こした上皮細胞が実質に浸潤することが関与していると言えます.移植片宿主病(GVHD)とEMT移移の眼表面とのととととののGVHDのEMT関与と本の4眼表面の上皮EMTとの関与EMTTGbなどのサイトカインが関与していますが,発症機序についてはまだ不明なことが多いです.EMTを防ぐ方法が開発されれば,すべての骨髄移植患者に対して,あらかじめGVHDの発症を予防することができるかもしれません.EMTの意義疾患の行関与とはと()◆シリーズ第109回◆ツ黴€ツ黴€ ツ黴€眼科医のための先端医療ツ黴€ツ黴€ ツ黴€=坂本泰二山下英俊榛村重人(慶應義塾大学医学部眼科)眼表面疾患と上皮間葉系移行の関与———————————————————————-Page264あたらしい眼科Vol.27,No.1,2010利益なことばかりかはわかりません.たとえば,角膜上皮の前駆細胞も一部ビメンチンのような間葉系マーカーを発現していたり,間葉系細胞にみられるN-cadherinも発現していることがわかっています5).上皮細胞と間葉系細胞には一定の期間だけでも相互方向に行き来することができるのかもしれません.また,このことが恒常性を維持するうえで重要である可能性もあります.EMTが成体において果たす役割が明らかになるまで,今後の研究が期待されます.文献1)SaikaS,MiyamotoT,IshidaIetal:TGFbeta-Smadsig-nallinginpostoperativehumanlensepithelialcells.BrJOphthalmol86:1428-1433,20022)Casaroli-MaranoRP,PaganR,VilaroS:Epithelial-mesen-chymaltransitioninproliferativevitreoretinopathy:inter-mediatelamentproteinexpressioninretinalpigmentepithelialcells.InvestOphthalmolVisSci40:2062-2072,19993)KatoN,ShimmuraS,KawakitaTetal:Beta-cateninacti-vationandepithelial-mesenchymaltransitioninthepatho-genesisofpterygium.InvestOphthalmolVisSci48:1511-1517,20074)OgawaY,ShimmuraS,KawakitaKetal:Epithelialmes-enchymaltransitioninhumanocularchronicgraft-ver-sus-hostdisease.AmJPathol175:2372-2381,20095)HigaK,ShimmuraS,MiyashitaHetal:N-cadherininthemaintenanceofhumancorneallimbalepithelialpro-genitorcellsinvitro.InvestOphthalmolVisSci50:4640-4645,2009(64)「眼表面疾患と上皮間葉系移行の関与」を読んでは榛村重人上皮と間葉系の移行()と眼のと関とを翼状片移植片宿主病()をはののではをのはでのでとのををとはでののをのをのはでのとん榛村はとでを上皮と間葉ではをののので移行をでとでのののの意ののをのでははでをでんでのは翼状片と眼とのの病関与とはでとの疾患の面とで榛村「のを上皮と間葉系行」とはのとのののと眼でのので読山眼山下英俊☆☆☆

新しい治療と検査 194.走査式周辺前房深度計:SPAC

2010年1月31日 日曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010610910-1810/10/\100/頁/JCOPY新しい治療と検査シリーズ(61) バックグラウンド原発閉塞隅角症・緑内障は有痛性の急激な眼圧上昇(急性発作)という発症形態をとる点において特異である.急性発作は著しい眼圧の上昇のため早期に適切な外科的治療を施さなければ視機能の重篤な障害を生じうる.発症前の急性発作眼の眼球形態の詳細はよくは知られていないが,発症時および発症他眼のデータから正常眼,慢性の原発閉塞隅角眼と比べても前房が浅く,隅角が狭いことが知られている.また,慢性原発閉塞隅角緑内障においても眼圧変動が大きいことが知られており,外来受診時に必ずしも眼圧が高いとは限らない.中心前房深度がそれほど浅くない慢性原発閉塞隅角緑内障は,原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障と診断されてしまう可能性がある.急性発作の予防,慢性原発閉塞隅角緑内障の正しい診断のためには隅角鏡検査,超音波生体顕微鏡検査(UBM)などを用いた隅角診断が欠かせない.しかしながら,隅角鏡や UBM は熟練した医師による診断が不可欠であり,接触検査であるために点眼麻酔の使用も必要であり時間もかかる.そのためスクリーニングや短時間で大勢の患者を診察するような外来においては施行が困難な場合がある.前眼部 OCT(光干渉断層計)は毛様体が描出されない,光学補正の正確さが不明であるといった欠点はあるものの,短時間で,非接触かつ熟練を要することなく隅角の検査が可能である点で優れているが,機器が高価である.周辺前房深度の測定は隅角自体の評価ではないが,細隙灯顕微鏡のみで施行可能な簡便な検査であり非常に有用である.具体的には,周辺角膜厚と周辺前房深度を比較する Vanツ黴€ Herick 法で 2 度以下(周辺前房が角膜厚の1/4 以下)であれば狭隅角,機能的隅角閉塞である可能性が高く臨床において非常に有用な方法である.しかし194.走査式周辺前房深度計:SPACプレゼンテーション:新垣淑邦酒井寛琉球大学医学部高次機能医科学講座視覚機能制御学分野コメント:栗本康夫神戸市立医療センター中央市民病院眼科表 1SPACのまとめ名称測定原理測定方法測定時間測定結果の判定走査式周辺前房深度計(SPAC)光学測定Scheimp ugの原理による補正内蔵細隙灯による自動走査式撮影および周辺前房深度測定数分自動判定Grade 判定:1 121(非常に狭い),12(非常に広い)P:閉塞の可能性S:閉塞の疑い距離0.02.83.23.64.04.44.85.25.6深さ2.91.701.401.080.940.850.770.460.35厚さ0.56半径8.3LGrade=6Flash=off距離0.00.81.21.62.02.42.83.23.64.04.44.85.25.6△△△△△△△△△××××深さ2.21.571.481.381.301.120.990.920.800.650.490.400.230.07厚さ0.59半径7.8LGrade=4SFlash=off図 1正常眼図 2原発閉塞隅角眼———————————————————————- Page 262あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010ながら,Vanツ黴€ Herick 法は主観的な分類であり評価者により判定が異なる可能性がある.経時的変化の観察にも向かない. SPAC走 査 式 周 辺 前 房 深 度 計(SPAC)は, 山 梨 大 学 のKashiwagi らが開発した自動式の周辺前房深度測定機である1,2).CCD カメラを用いて細隙光による撮影を行い,Scheimp ug の原理を用いた光学補正により周辺前房深度を計測する.また,閉塞隅角患者のデータベースに基づいたアルゴリズムを使用した内蔵ソフトウェアにより隅角の広狭をグレード分類する.さらに,グレード分類の組み合わせにより隅角閉塞の可能性が診断され出力される. SPACの使い方SPAC の使用方法はきわめて簡便である.スリット光が自動に角膜全面を走査して角膜中心部を推定しそこを基点として自動で耳側周辺前房を撮影,計測する.撮影は右眼→左眼の順に両眼同時に行われ 1 分以内で終了する.表示された結果のプリントアウトの正常眼(図1)および原発閉塞隅角眼(図2)を示す.正常眼では 8 点,閉塞隅角眼では 13 点で,周辺前房が測定されているが基準を下回った測定点には狭い(△),非常に狭い(×)の表示がある.Grade は正常眼が 6,原発閉塞隅角眼は4 である.原発閉塞隅角眼の判定は「S」であり,4S と表示され,SPAC 上隅角の閉塞が疑われることがわかる.中心前房深度, 角膜厚, 角膜曲率半径も表示される. 本方法の良い点非接触,全自動で検査が行われるため,検査を医師が行う必要がない点が優れる.客観的な数字データが示される点,周辺前房を何カ所にもわたって測定し判断してくれる点も医師が行う Van Herick 法と比べ有利である.隅角鏡検査,UBM などを行う前に臨床現場でのスクリーニングに使用するのに適した検査ではないかと考えられる3).ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ 1) Kashiwagi K, Abe K, Tsukahara S:Quantitative evalua-tion of changes in anterior segment biometry by peri-pheral laser iridotomy using newly developed scanning peripheral anterior chamber depth analyser. Br J Ophthal-mol 88:1036-1041, 2004 2) Kashiwagi K, Tsumura T, Tsukahara S:Comparison between newly developed scanning peripheral anterior chamber depth analyzer and conventional methods of evaluating anterior chamber con guration. J Glaucoma 15:380-387, 2006 3) Wong HT, Chua JL, Sakata LM et al:Comparison of slitlamp optical coherence tomography and scanning peripheral anterior chamber depth analyzer to evaluate angleツ黴€ closureツ黴€ inツ黴€ Asianツ黴€ eyes.ツ黴€ Archツ黴€ Ophthalmol 127:599-603, 2009(62)周辺部の前房深度が同程度であっても症例により隅角の形状は異なっており,中間周辺部の前房が浅くても隅角は開放している症例もあれば,その逆もある.本機器では,肝心の隅角閉塞の有無がわからない.もう一点は,本機器では虹彩の厚さおよび裏面,毛様体の様子がわからないことである.これは,本機器は隅角閉塞メカニズムの判定に使えないことを意味する.SPAC は,あくまでも一次スクリーニングのための検査機器であって,UBM の代わりにはならない.原発閉塞隅角症・緑内障の診療において,前眼部画像診断機器は二つの目的で使用される.第一に隅角閉塞とそのリスクの判定,第二は隅角閉塞の原因となるメカニズムの判定である.SPAC は隅角閉塞のスクリーニングにおいて威力を発揮する検査機器ではあるが,本欄は批判的なコメントをという趣旨なので,本機器が有する二つの問題点をあげる.一つは,SPACでは,前房の最周辺部,すなわち隅角そのものを計測できないことである.本機器で測定できる中心 中間 本方法に対するコメント ☆ ☆ ☆

眼感染アレルギー:急性後極部多発性斑状色素上皮症(APMPPE)

2010年1月31日 日曜日

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あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,201059
0910-1810/10/\100/頁/JCOPY

性後極部多発性斑状色素上皮症(acuteツ黴€ posterior
multifocal placoid pigment epitheliopathy:APMPPE)は,後極部に多発する境界不鮮明なクリーム色の斑状病変を呈する疾患として 1968 年に Gass らにより最初に報告された
1).若年成人(8 66 歳,平均
26.5 歳)にみられ,性差はない
2).急性もしくは亜急性
に発症し,霧視,暗点,変視症を自覚症状とする.両眼
同時にまたは片眼発症後,2,3 日遅れてもう片眼に発症し,75%以上の患者が両眼性である.再発はまれであるが,初発後 6 カ月以内に起こることがある.典型的
な APMPPE では,後極部の網膜深層に多発するクリー
ム色の斑状滲出斑を生じる.滲出斑は境界不鮮明で,大きさは 1/2 1/4乳頭径大でほぼ均一なのが特徴である(図1).眼炎症所見は多くの場合は軽度であり,前房内および前部硝子体内にわずかな細胞浸潤を認める程度で
ある.初発病巣は後極部付近に多発し,後発病巣は後極から周辺に拡散して生じる傾向がある.しかし,赤道部
より周辺に生じることはない.ときに,滲出斑に一致し
てわずかな限局性の漿液性網膜 離をきたすことがある
が,漿液性網膜 離および網膜色素上皮 離は色素上皮
(59)
眼感染アレルギーセミナー
─感染症と生体防御─
●連載
監修=ツ黴€ツ黴€ ツ黴€木下茂
大橋裕一
25.ツ黴€ツ黴€ ツ黴€ツ黴€ツ黴€ ツ黴€ツ黴€ツ黴€ ツ黴€
急性後極部多発性斑状色素上皮症ツ黴€ツ黴€ ツ黴€(APMPPE)
竹内大
東京医科大学眼科
急性後極部多発性斑状色素上皮症(APMPPE)は,後極部に 1/2 1/4乳頭径大でほぼ均一なクリーム色の斑状滲出斑を多発性に生じる両眼性の疾患である.滲出斑は境界不鮮明で,後極部付近から周辺に拡散してみられる.眼炎症所見は軽度であり,滲出斑は色素性瘢痕を残して数週で自然消失する.黄斑部に病巣が及ばなければ視力予後は良好である.図ツ黴€ツ黴€ ツ黴€1後極部に多発するクリーム色の斑状滲出斑滲出斑は境界不鮮明で,大きさは 1/2 1/4 乳頭径大でほぼ均一なのが特徴.図ツ黴€ツ黴€ ツ黴€2フルオレセイン蛍光眼底造影写真造影初期は滲出斑に一致して低蛍光がみられ,後期には過蛍光となる逆転現象を示す.———————————————————————- Page 260あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010症であればいかなる疾患でもその病態から起こりうると考えられる.滲出斑はさまざまな程度の色素性瘢痕を残して数週で自然治癒し,視力予後はおおむね良好であるが,瘢痕病巣が黄斑部に及ぶと重篤な視力障害をきたす.黄斑部病変もしくはその予防を目的とした副腎ステロイド薬の全身投与が行われることもあるが,その有効性は示されていない.瘢痕病巣は治癒後も経年変化により徐々に拡大する. 断特徴的な眼所見のほか,フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)およびインドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)が補助診断として有用である.FA では,造影初期は滲出斑に一致して低蛍光がみられ,造影後期には過蛍光となる,いわゆる“逆転現象”を示す(図2).しかし,色素沈着を伴った非活動性の瘢痕病巣は,低蛍光のままである.一方,IA では造影初期,後期とも低蛍光を示す. 因および病態 カニ ムAPMPPE 患者の約 3 割で頭痛,発熱,倦怠感などの感冒様症状の先行がみられることからウイルス感染3)や,全身性エリテマトーデス4)や腎炎,脳血管炎や髄膜脳炎などの全身性炎症性疾患5)との関連が示唆されているが,正確な病因は不明である.本症の病態は,IA 所見から,脈絡膜毛細血管板における流入血管の閉塞性血管炎が原因で,滲出斑部位では脈絡膜毛細血管板の小葉単位での循環障害が生じていると考えられている.閉塞部位の網膜色素上皮は二次的に障害される. 別診断1.ツ黴€ツ黴€ ツ黴€汎ぶどう膜炎を伴う多発性脈絡膜炎(multifocal choroiditis with panuveitis:MCP)MCP は若年女性の両眼にみられ,後極部から周辺部にかけて多発性の白色滲出斑をきたす.APMPPE よりも硝子体炎などのぶどう膜炎症状が強く,滲出斑は小型で病巣に一致した限局性の漿液性網膜 離を伴っていることが多い.また,瘢痕病巣は同様に色素を伴っているがより深く,強膜に達している.2.ツ黴€ツ黴€ ツ黴€多発性一過性白点症候群(multiple evanescent white dot syndrome:MEWDS)若年女性の片眼性にみられ,網膜色素上皮レベルの散(60)在性の白斑を呈する.APMPPE よりも病巣は小さく,蛍光眼底造影では初期から過蛍光となる.瘢痕病巣を残さず,数週で自然消失する.3.ツ黴€ツ黴€ ツ黴€急性網膜色素上皮炎(acute retinal pigment epithelitis)急性網膜色素上皮炎は APMPPE と同様に,若年成人に多く,急激な視力低下,変視にて発症する.片眼,もしくは両眼に発症し,病巣は APMPPE よりも小さく,中心に色素沈着を伴った白色病変を呈する.4.ツ黴€ツ黴€ ツ黴€地図状網脈絡膜症(geographic choroidopathy)地図状網脈絡膜症は,中壮年の男性に多くみられ,黄白色斑状の病巣が視神経乳頭近傍から生じ,視神経乳頭を取り巻くように新しい病巣が古い病巣の辺縁からつぎつぎに出現し,虫食い状に拡大する.地図状網脈絡膜症も脈絡膜血管の閉塞に伴う脈絡膜毛細血管板の循環障害であるため,APMPPE と同様の FA 所見を呈する.臨床所見の相違は閉塞性血管炎の程度と部位と推定される.しかし,地図状網脈絡膜症にみられる虫食い状の連続した脈絡膜萎縮巣や脈絡膜新生血管は APMPPE ではみられない.5.Vogt 小柳 原田病著明な漿液性網膜 離を呈する APMPPE の非典型例では,Vogt-小柳-原田病との鑑別が困難である.FA で造影初期に低蛍光,後期に過蛍光となる所見からも,Vogt-小柳-原田病と APMPPE は異なる疾患ではなく,同じスペクトル上の疾患であるという考えがある6).感音性難聴や髄膜炎症状を呈する APMPPE の報告もある.文献 1) Gassツ黴€ JD:Acuteツ黴€ posteriorツ黴€ multifocalツ黴€ placoidツ黴€ pigmentツ黴€ epi-theliopathy. Arch Ophthalmol 80:177-185, 1968 2) Jones NP:Acute posterior multifocal placoid pigment epi-theliopathy. Br J Ophthalmol 79:384-389, 1995 3) Fitzpatrick PJ, Robertson DM:Acute posterior multifocal placoid pigment epitheliopathy. Arch Ophthalmol 89:373-376, 1973 4) Van Buskirk EM, Lessell S, Friedman E:Pigmentary epi-theliopathy and erythema nodosum. Arch Ophthalmol 85:369-372, 1971 5) Weinstein JM, Bresnick GH, Bell CL et al:Acute posteri-or multifocal placoid pigment epitheliopathy associated with cerebral vasculitis. J Clin Neuroophthalmol 8:195-201, 1988 6) Wright BE, Bird AC, Hamilton AM:Placoid pigment epi-theliopathy and Harada’s disease. Br J Ophthalmol 62:609-621, 1978

緑内障:緑内障手術と高次収差

2010年1月31日 日曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010570910-1810/10/\100/頁/JCOPYツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ 一般的にトラベクレクトミー術後には,角膜の曲率が変化し,直乱視が発生することが多い.トラベクレクトミー術後の屈折,角膜曲率,角膜トポグラフィーについての解析もいくつか報告されている1).従来,眼球光学系の乱視は球面と円柱面で解析され,それ以外の不正乱視成分を客観的に評価できなかった.しかし,近年波面収差を用いた解析で不正乱視成分の定性的,定量的解析が行われてきている. 膜トポグラフィーのFourier解析角膜トポグラフィーの Fourier 解析が,正乱視,不正乱視の評価に用いられている2).高次収差測定には波面センサーが用いられることが多い.波面センサーは角膜および眼球全体の不正乱視を波面収差により解析し,空間周波数特性(modulationツ黴€ transferツ黴€ function:MTF),点像強度分布(pointツ黴€ spreadツ黴€ function:PSF)から網膜像をシミュレーションする機器である.角膜トポグラフ ィーの Fourier 解析は, 円錐角膜, 翼状片, 白内障手術,トラベクレクトミー,強膜バックリング,PRK(photo-refractive keratectomy),全層角膜移植,LASIK(leaer inツ黴€ situツ黴€ keratomileusis)などで解析されている.近年では,ドライアイにおける涙液層破綻による高次収差の増大が報告されてきている3). ラベクレクトミー術後の高次収差の測定 1に症例を提示する.症例:68 歳,男性.視力:VS=(0.8),眼圧:左眼 16 mmHg,点眼 3 剤(57)●連載115緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄ツ黴€ツ黴€ ツ黴€ 山本哲也115.ツ黴€ツ黴€ ツ黴€ツ黴€ツ黴€ ツ黴€ツ黴€ツ黴€ ツ黴€緑内障手術と高次収差布施昇男東北大学大学院医学系研究科神経感覚器 病態学講座・眼科視覚学分野現在行われている緑内障外科治療の,最も代表的で眼圧下降幅が一番大きな術式はマイトマイシン C 併用線維柱帯切除術(以下,トラベクレクトミー)である.トラベクレクトミーを行うことによって視機能温存の可能性が高められるが,その判定基準はおもに視野が用いられてきた.しかし,近年 qualityツ黴€ ofツ黴€ vision(QOV)の重要性が認識されてきており,これからは視野のみならず,従来の視力検査では捉えられなかった視機能にも考慮することが重要である.図ツ黴€ツ黴€ ツ黴€2左眼Humphrey視野図ツ黴€ツ黴€ ツ黴€1左眼視神経乳頭———————————————————————- Page 258あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010投与.眼底:左眼 C/D(cup/disc)比 0.9(図1).Humphrey 視野計による MD(mean deviaiton)値は, 18.64 dB(図2)で,後期の開放隅角緑内障であった.トラベクレクトミー施行後視力:VS=(0.15),白内障進行は認めない.眼圧:左眼7 mmHg.角膜形状解析装置(TMS)を用いた術前後の高次収差のマップを図3に,波面センサーを用いた術前後のLandolt 環のシミュレーションを図4に示す.トラベクレクトミーにより,眼圧は 16 mmHgから7 mmHgと低下させることができたが,術後高次収差の増大を認め,視力は矯正 0.8 から 0.15 と低下した. ラベクレクトミーと視力の質トラベクレクトミーと視力の質の変化に関しては,視野の温存という劇的な効果に比べれば,あまり留意されなかった分野であり,波面収差の定量的解析の報告はほとんどない.しかし,術後に「何となくかすむ」と時に患者に訴えられることがあり,視力の質を多角的データに基づき解析する必要性も出てきている.波面収差を測定することにより,濾過胞形成などが視機能に及ぼす影響を定量的に評価することが可能となる.これからは,qualityツ黴€ ofツ黴€ vision(QOV)の観点から,従来の視力検査では捉えられなかった視機能にも考慮す(58)ることが重要になってくるであろう.文献 1) Claridgeツ黴€ KG,ツ黴€ Galbraithツ黴€ JK,ツ黴€ Karmelツ黴€ Vツ黴€ etツ黴€ al:Theツ黴€ e ectツ黴€ of trabeculectomy on refraction, keratometry and corneal topography. Eye 9:292-298, 1995 2) Oshika T, Tomidokoro A, Maruo K et al:Quantitative evaluation of irregular astigmatism by Fourier series har-monicツ黴€ analysisツ黴€ ofツ黴€ videokeratographyツ黴€ data.ツ黴€ Investツ黴€ Ophthal-mol Vis Sci 39:705-709, 1998 3) Kohツ黴€ S,ツ黴€ Maedaツ黴€ N,ツ黴€ Hiroharaツ黴€ Yツ黴€ etツ黴€ al:Serialツ黴€ measurements of higher-order aberrations after blinking in patients with dry eye. Invest Ophthalmol Vis Sci 49:133-138, 2008☆ ☆ ☆図ツ黴€ツ黴€ ツ黴€4ツ黴€ツ黴€ ツ黴€波面センサーを用いた術前後のLandolt環のシミュレーション術前術後VA 20/100VA 20/40VA 20/20図ツ黴€ツ黴€ ツ黴€3TMSを用いた術前後の高次収差のマップ術前術後

屈折矯正手術:フェムトセカンドレーザーを用いたLASIKフラップ作製時の眼圧変動

2010年1月31日 日曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010550910-1810/10/\100/頁/JCOPY近年,LASIK(laserツ黴€ inツ黴€ situツ黴€ keratomileusis)における角膜フラップ作製は,マイクロケラトームのみでなく,フェムトセカンド(FS)レーザーも用いられるようになった.FS レーザーは必要があれば薄いフラップを安全に作製することができ,フラップ厚が全体に均等で,フラップ縁がシャープなためフラップを戻した際,元の位置にぴったり合う利点がある.これらの利点に加え,マイクロケラトームのような吸引リングによる急激な眼圧変動がなく,網膜硝子体疾患および視神経への影響が少ないことが期待されている.マイクロケラトームによるフラップ作製時の眼圧上昇が報告されている1 3)が,FS レーザーを用いても眼圧は上昇することが実験的に検証されている4).本セミナーでは,筆者らが行った FS レーザーを用いたフラップ作製時の眼圧測定の結果を紹介する.測定方法は,すでに報告した豚眼による眼圧測定システムを用い1),硝子体腔に挿入した血管内圧測定用圧力センサー(カテーテルf1.2 m m)で,経時的にフラップ作製時の圧力変化を測定した(図1).今回用いた Abbott 社のFS レーザー(IntraLase)では,FS レーザー側のコーンと吸引リングを合体させ(図2),照射面となる角膜を十分に圧平する必要がある.FS レーザーでは,眼球の固定なしに,そのまま照射すると思っている眼科医が多いと思うが,実際には吸引リングによる固定が必要で,ある程度の眼圧上昇は免れない.つぎに眼圧上昇の程度であるが,FS レーザー側のコーンと吸引リングを合体させ,さらにコーンを下げて角膜を圧平するため,この下げる程度によって眼圧上昇の度合が異なる.合体後,できるだけコーンを下げれば,圧平が十分に得られるため,圧平が十分でないためレーザー照射されずにフラップが一部切れない状態となる危険性は低い.しかし,眼圧の面からすると,コーンを下げれば下げるほど眼圧が上昇することになる.この合体については,ソフトドッ(55)屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─●連載116監修=木下茂大橋裕一坪田一男116.ツ黴€ツ黴€ フェムトセカンドレーザーを用いたLASIK フラップ作製時の眼圧変動ビッセン宮島弘子東京歯科大学水道橋病院眼科フェムトセカンドレーザーを用いた LASIK のフラップ作製では,マイクロケラトームより眼圧変動が少ないことが期待されている.実験的に圧センサーで眼圧を経時的に観察すると,フェムトセカンドレーザーでも眼球固定が必要で,フラップを作製している間,マイクロケラトームほどではないが眼圧が上昇していた.図 1豚眼の眼圧測定16 ゲージカテーテルを硝子体内に通し,その中に血管内圧測定用圧力センサーを入れ,眼圧を 40ミリ秒間隔でデジタル記録.レーザー側コーン吸引リング図 2レーザー側コーンと吸引リングレーザー側のコーンを下げ,眼球に固定してある吸引リングと合体させ,角膜を圧平する.この際,どこまでコーンを下げるかで眼圧上昇の程度が変わる.———————————————————————- Page 256あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010キングとよばれる,吸引がはずれない安全な状態で,かつ眼球を強く押し付けない最小限の圧平が推奨されている.圧平した状態のもとレーザー照射でフラップを作製するが,この間,眼圧は上昇したままの状態である.したがって,FS レーザー照射の時間が短ければ短いほど,眼圧が上昇している時間が短いことになる.実際に人眼に行うのとまったく同じ方法で,豚眼を用いて FS レーザーによる角膜フラップ作製を行い,その際の眼圧変動を経時的に記録した.硝子体内にある圧センサーから得られた経時変化の典型例を図3に示す.吸引リングを眼球上にのせ,吸引を開始すると同時に眼圧上昇する.つぎにレーザー専用コーンを下げて,眼球に固定した吸引リングと合体させると眼圧が変動する.この際,コーンを下がるところまで下げ,最大限まで角膜を圧平すると眼圧は 150 mmHgまで上昇する.ソフトドッキングでは,吸引開始時以上の眼圧には至らなかった.眼圧は FS レーザーでフラップを作製している間,上昇したままの状態である.今回使用した FS レーザーはフラップ作製に約 20 秒必要で,その間,眼圧は一定であった.Abbott 社の FS レーザー IntraLase の新機種では,より短時間でフラップを完成できるので,これにより眼圧上昇時間が短縮され,眼球に侵襲の少ない手術になることが期待できる.LASIK 後の裂孔原性網膜 離,黄斑円孔,視神経障害の報告があり,その原因としてこの眼圧変動が示唆されている.FS レーザーでも眼圧変動があるが,マイクロケラトームより眼圧上昇が少なく,今後,レーザーの改良で照射時間が短縮することで,さらに安全な手術になるであろう.文献 1) Bissen-Miyajima H, Suzuki S, Ohashi Y et al:Experimen-tal observation of intraocular pressure changes during microkeratome suctioning in laser in situ keratomileusis. J Cataract Refract Surg 31:590-594, 2005 2) Bradley JC, McCartney DL, Craenen GA:Continuous intraocuar pressure recordings during lamellar microkera-totomy of enucleated human eyes. J Cataract Refract Surg 33:869-872, 2007 3) Kasetsuwan N, Pangilinan RT, Moreira LL et al:Real timeツ黴€ intraocularツ黴€ pressureツ黴€ andツ黴€ lamellarツ黴€ cornealツ黴€ツ黴€ apツ黴€ thick-ness in keratomileusis. Cornea 20:41-44, 2001 4) Hernandez-Verdejoツ黴€ JL,ツ黴€ Teusツ黴€ MA,ツ黴€ Romanツ黴€ JMツ黴€ etツ黴€ al:ツ黴€ Por-cine model to conpare real-time intraocular pressure dur-ing LASIK with a mechanical microkeratome and femto-second laser. Invest Ophthalmol Vis Sci 48:68-72, 2007(56)☆ ☆ ☆図 3 フェムトセカンドレーザーによるフラップ作製時の典型的な眼圧変化吸引固定で眼圧は上がり,その後,レーザーによるフラップ切開が終了するまで眼圧は上がったままである.コーンのドッキングおよび吸引リングの吸引を解除すると眼圧は元に戻る.0 50 100 150 200 250 051015202530354045505560時間(秒)吸引固定開始コーンドッキングレーザーによるフラップ切開ドッキング解除硝子体圧(mmHg)

多焦点眼内レンズ: 日本における多焦点眼内レンズの現状

2010年1月31日 日曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010530910-1810/10/\100/頁/JCOPY白内障手術の進歩と多焦点眼内レンズ多焦点眼内レンズが 20 年前から存在するのに,普及しなかった理由を理解しないと,当時と同じように最初だけ注目され,期待はずれの結果で自然消滅してしまうであろう.単焦点眼内レンズに比べ,多焦点眼内レンズ挿入では,いかに良好な裸眼遠方視力をだせるかが非常に重要で,遠方視力が良好であれば,当然のことながら近方視力も良好で,患者の満足度は高い.良好な裸眼視力を得るためには,角膜乱視,眼内レンズ度数ずれをできるだけ少なくする必要がある.20 年前の PMMA(ポリメチルメタクリレート)製眼内レンズ挿入では6 m m切開で縫合するのが一般的で乱視のコントロールは困難,眼内レンズ度数は測定法,計算法が未熟であった.さらに,コントラスト感度に代表される視機能が検討されず,不十分な術前説明が原因と思われる術後不満例がでた.小切開,無縫合,角膜形状解析,レーザー干渉法による眼内レンズ測定と,白内障手術の進歩により多焦点眼内レンズの利点を十分発揮できる時代に入った.多焦点眼内レンズ導入施設と症例数日本でどのくらいの施設が多焦点眼内レンズを導入し,何例ぐらい挿入されているのだろうか? 多焦点眼内レンズ承認後の導入施設数の推移を図1に,挿入件数の推移を図2に示す.症例数は先進医療と完全な自費手術の両者があり,詳細な数値を知ることは困難なため,参考程度にしてもらいたいが,だいたいの状況が把握できる.2007 年に屈折型および回折型多焦点眼内レンズが承認されたが,保険適用でないので,自費診療,自費手術となり,一般の白内障手術施設における導入は困難であった.そのため,2007 年に導入施設は 5 施設に満たなかったが,2008 年 7 月に先進医療として認められ,医療機関として承認されれば術前,術後検査,投薬など,通常の白内障例と同様に保険診療ができるため,導(53)<連載にあたって>今回から,多焦点眼内レンズセミナーが新しく加わることになった.眼内レンズセミナーでも何回か取り上げられてきた多焦点眼内レンズであるが,先進医療として承認され 2 年目に入り,近い将来,保険適用になることが予想される.本セミナーは多焦点眼内レンズに関する多方面にわたる情報をわかりやすく 2 頁にまとめる企画である.予定として,術前検査から適応,説明のポイント,眼内レンズ度数決定,術後の視力測定法,オートレフの有用性,コントラスト感度,立体視,アンケート調査,高次収差,色収差,さらに長期成績から度数ずれ,後発白内障,レンズの毛様溝縫着,不満例への対応,ピギーバックについて,基礎的なことから学会や論文で得られない新しい情報も取り入れていきたい.●連載①多焦点眼内レンズセミナー監修=ビッセン宮島弘子1. 日本における多焦点眼内レンズの現状ビッセン宮島弘子東京歯科大学水道橋病院眼科多焦点眼内レンズが,近年,再び注目されている.2007 年に屈折型,回折型多焦点眼内レンズが承認され,2008 年に先進医療となり,2009 年末までに 200 施設以上で挿入が始まっている.しかし,保険適用でなく,術前説明に時間がかかるなどの問題から,症例数の伸び方はゆっくりで,白内障手術件数全体の 1%にも満たないのが現状である.図 1多焦点眼内レンズ導入施設の推移2007 年に承認を受けたが,自費診療,自費手術のため導入施設は限られていた.2008 年 7 月に先進医療として認められ,検査,投薬が保険適用となり,施設数は 50 100,その後,毎月 10 施設ぐらい増えている.2009 年 11 月以降は予測値のため点線とした.0501001502002502007年2008年2009年(数)10月12月2月4月6月8月10月12月2月4月6月8月12月10月———————————————————————- Page 254あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010入を考える施設が増えたと思われる.2008 年末までに100 施設以上が導入し,その後も毎月 10 施設ぐらいのペースで増え,2009 年末までに 200 施設以上になると予想される.しかし,今後,挿入後 1 年の経験をもって先進医療機関として認定されるため,同じように伸びていくとしても,1,000 施設に達するのはだいぶ先になりそうである.また,承認された多焦点眼内レンズ以外を輸入して挿入している施設がここには含まれていないが,10 施設に満たないと思われる.多焦点眼内レンズの挿入件数は,月 100 件ペースから 200 件,2008 年 7 月に先進医療として承認されてから,月 300 400 件に増えた.2009 年 3 月まで毎月 100件ぐらいずつ増えてきていたが,その後,多少停滞気味である.2009 年に 6,000 7,000 件挿入されたとすると,年間の白内障手術件数の 1%にも満たない.実際に導入(54)した施設では,白内障手術全体の 5 10%,それ以上のところもあるが,全体として多焦点眼内レンズの使用頻度が少ないのは,多焦点眼内レンズを導入したいが準備ができていない,あるいは多焦点眼内レンズには興味なく導入する予定がない施設が大半を占めているからである.今後,多焦点眼内レンズ挿入術が保険適用となれば,診療および手術を単焦点眼内レンズ挿入のようなシステムで行え,保険適用で患者負担が軽減することで希望者も増えるであろう.それに伴い,対応する施設数が増え,白内障手術全体における多焦点眼内レンズの割合が増えることが予想される.現状の把握と今後多焦点眼内レンズへの注目度が高い割に症例数が伸びていないのが現状である.理由は患者側と眼科医側の両者にある.前者は費用の問題で,いくら老眼鏡が必要なくなるといっても手術に何十万円もかけるのは高いと感じる.歯の治療であれば 1 本数十万円かかっても仕方ないと思えるが,眼の手術では受け入れにくい.後者は,保険診療施設で自費手術を取り入れるシステム作り,術前の説明,術後不満例への不安であろう.しかし,急激に症例数が伸びると外来は大混乱になるし,現段階で保険適用になると患者の要望が増えても眼科医側の受け入れ体制や,術前検査や説明の労力に見合った評価がなされるか疑問である.結論として,現状は理想的な状態で,確実に保険適用として受け入れる準備が進んでいると思う.先進医療機関数,症例数から保険適用への検討が始まっている多焦点眼内レンズ,ぜひ今のうちにその本質を理解し,受け入れ準備は整えておくべきと考える.☆ ☆ ☆図 2多焦点眼内レンズ挿入件数の推移2008 年から 2009 年の予想挿入件数を 3 カ月ごとに示す.正確な数値を得ることが困難だが,2008 年 7 月に先進医療として認められ,挿入件数が伸びた.しかし,2009 年から挿入件数は伸び悩んでいる.2009 年 10 12 月の数値はまだ出ていないので予測値として点線で示した.2008年2009年1~3月4~6月7~9月10~12月1~3月4~6月7~9月10~12月02004006008001,0001,2001,400(件)

眼内レンズ: 眼内レンズ嚢内二次挿入

2010年1月31日 日曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010510910-1810/10/\100/頁/JCOPYツ黴€ツ黴€ツ黴€ツ黴€ (IOL)二次挿入IOL を二次挿入では,固定法として前房固定,毛様溝固定, 内固定,毛様溝縫着の 4 つの選択肢がある.水晶体 と毛様小帯に損傷がない場合には,毛様溝固定を選択することが一般的であるが,なるべくなら 内固定する1). 晶体 内固定の 位性水晶体は,①血管やリンパ管,神経が存在しないといった,生体内における特有の隔離性をもった器官であるため,水晶体 内は異物である IOL を挿入するには最適な環境であるということ,② 内固定された IOL は偏位が少ないということから,水晶体 内は IOL の理想的な固定位置とされている.このことから,水晶体摘出術と同時に IOL を挿入する場合には, 内固定が第一選択となっている.しかし,無水晶体眼に対して IOLを二次挿入する場合では,毛様溝固定あるいは毛様溝縫着が選択されることが多い.なぜ,二次挿入では IOLの固定に有利な 内固定が選択されていないのであろうか.水晶体 がない場合や Zinn 小帯断裂がある場合では毛様溝縫着を選択せざるをえない.しかし,前 と後 が癒着している症例では,癒着を解除することができれば IOL を 内に固定できるはずである.前 と後 の癒着を解除することが困難であるという理由から 内固定が選択されていないように思われる. 術方法前 と後 の癒着の程度は,前 切開断端部が最も強い.前 切開断端部の癒着を解除できれば,周辺部の癒着は粘弾性物質にて容易に外すことができる.ここで,当科での IOLツ黴€ 内二次挿入の手術方法を紹介する.(1)サイドポートを作製し,粘弾性物質にて前房形成(51)する.(2)プッシュプル鈎を用いて前 と後 の癒着を解除する.このとき,前 切開断端部の癒着の程度は均一ではないため,線維化の弱い場所から癒着を外し始め,そこを取っ掛かりとして癒着を解除していくとよい.これは,瞳孔縁に沿って全周に虹彩後癒着のある症例に対する白内障手術のときの癒着を解除していく要領と同じである.(3)すべての癒着を解除した後に,強角膜創を作製し,粘弾性物質を水晶体 内に注入する.(4)IOL を 内に挿入する.(5)I/A(灌流/吸引)チップにて粘弾性物質を吸引する.(6)眼圧を調整し,手術終了.前 切開断端部の癒着の程度は症例により異なる.粘弾性物質を前房内に注入するだけで容易に癒着を解除できる症例もあれば,まったく歯が立たない症例もあればとさまざまである.無理に癒着を解除すると後 破損を起こす可能性があるため,癒着の強い症例では,無理をせず毛様溝固定に変更する.二次手術時の散瞳状態によっては,前 切開断端部が虹彩の下に隠れてしまい見えない場合がある.このような症例では,イリスリトラクターを用いて瞳孔を拡張することにより,前 切開断端部を直視下にて確認することができる. 験例筆者らは,水晶体 に損傷のない無水晶体眼に対してIOL 二次挿入を行う場合には, 内固定を第一選択としている.2004 年 8 月から 2009 年 3 月の間に筆者が IOL 二次挿入を行った連続症例 192 例 198 眼のうち,術前より水晶体 が損傷していたため,計画的 IOL 縫着術を施行した 99 例 103 眼と計画的毛様溝固定術を施行した 16安宅伸介大阪市立大学大学院医学研究科視覚病態学眼内レンズセミナー 監修/大鹿哲郎281.ツ黴€ツ黴€ ツ黴€ツ黴€ツ黴€ ツ黴€眼内レンズ 内二次挿入無水晶体眼に対する眼内レンズ二次挿入では前房固定,毛様溝固定, 内固定,毛様溝縫着の 4 つの固定法がある.このなかで, 内固定が最も理想的な位置であるが,一次手術から期間の経った症例では,前 と後 が癒着しているために 内固定を選択されないことが多い.しかし, 前 と後 の癒着を外せる症例は意外と多い.———————————————————————- Page 2例 17 眼を除外した 78 例 78 眼,水晶体摘出術(一次手術)から IOL 二次挿入術までの期間(5 日から 17 年,中央値 21 日)を対象とし,計画的 IOLツ黴€ 内二次挿入術を試みた結果,78 眼中 74 眼(94.9%)は 内に IOL を挿入できた.一次手術から二次手術までの期間は,前 と後 との癒着の程度に影響を及ぼす要因として重要である.しかし,一次手術から 10 年経過しているにもかかわらず,前 と後 の癒着を解除することができた症例(図1)がある一方,一次手術から 51 日目であってもまったく癒着を解除できない症例(図2)もあるため,一次手術からの期間以外の要因もあると思われる.Can opener法で前 切開が行われていた症例では,前 切開断端部が不連続であり,癒着を解除できなかったことを経験している.この症例は canツ黴€ opener 法で前 切開が行われていた時代に白内障手術が施行されていたため,一次手術から長期間経過していたことも要因であったかもしれない.しかし,鋸歯状の前 切開部は癒着を解除する取っ掛かりすら見つけることができなかった.また,シリコーンオイルを注入されていた症例(図2)も前 と後 との癒着が強い.これは,シリコーンオイルによる影響なのか,シリコーンオイルを注入しなければならないような症例では術後炎症が強いためなのかは不明であるが,いずれにしても術後炎症が強い場合や炎症が持続していた場合では癒着の程度が強くなる.以上の経験から現時点では,前 と後 との癒着に影響を及ぼす要因として,一次手術からの期間,一次手術時の術式,一次手術後の炎症の程度があげられると考えている.文献 1) Steinert RF, Arkin MS:Secondary Intraocular Lenses, Cataract Surgery Techniques, Complications, and Manage-ment(Steinert RF ed), p429 441, Saunders, Philadelphia, 2004図 1 10年前に超音波乳化吸引術(PEA)が施行されていた症例(23 歳,男性)a : 周辺部に Soemmering 輪がみられる.前 切開断端部に沿って癒着を解除.b : 周辺部に増殖した水晶体上皮細胞を灌流吸引にて除去.c : IOL を 内固定した後に前 切開断端部を切除.d : 手術終了時写真.図 2癒着を解除できなかった症例(25 歳,男性)受傷後 2 週間目に当科を受診した両眼外傷性網膜 離症例.右眼は 300°の鋸状縁裂孔を認め,PEA 併用 23 ゲージ硝子体手術を施行し,シリコーンオイルを硝子体内に注入した.一次手術後 51 日目に IOLツ黴€ 内二次挿入を試みるも前 と後 の癒着が強く解除できなかった.abcd

コンタクトレンズ: 私のコンタクトレンズ選択法(アキュビューRオアシス邃「乱視用)

2010年1月31日 日曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010490910-1810/10/\100/頁/JCOPYツ黴€ 乱視用ソフトコンタクトレンズ(SCL)の選択乱視用 SCL は各社から多くのブランドが販売されているが,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社,チバビジョン株式会社,ボシュロム・ジャパン株式会社の3 社の使い捨ての乱視用 SCL を表1に示す.それらのなかでもワタナベ眼科で最も処方が多いのが,アキュビューRオアシスTM乱視用である(図1).2008 年 7 月に 2 ウィークアキュビューRトーリックが販売中止になったが,それに比べると,アキュビューRオアシスTM乱視用はアクセラレイテッド・スタビライゼ ー シ ョ ン・ デ ザ イ ン(Accelerated Stabilization Design:ASD)で軸の安定性が格段に良くなり,シリコーンハイドロゲルの素材で Dk/L 値が約 4 倍も増えた(表2).処方しやすくなったうえに,乾燥感なども減り,移行しても装用者のほとんどは不満がなかった.ただ,(49)欠点がないわけではない.滑りやすいために,外すときにゆっくり外さないと取れにくい.また,化粧品がつきやすいという訴えはある.ツ黴€ ASDという新しいデザインアキュビューRオアシスTM乱視用の ASD というデザインは,ダブルスラブオフのデザインを基本に,軸の安定性を向上させたうえにスピーディな安定をさせるためにアクセラレイト・スロープをつけている(図2~4).開瞼時は上眼瞼はレンズのスラブオフをした薄い部分に渡邉潔ワタナベ眼科コンタクトレンズセミナー 監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純 私のコンタクトレンズ選択法307.ツ黴€ツ黴€ ツ黴€ツ黴€ツ黴€ ツ黴€アキュビューRオアシスTM乱視用表 1おもなメーカーの使い捨ての乱視用SCLの特徴会社名注1ブランド名分類レンズデザインデザインの特殊性注2Dk/L1.シリコーンハイドロゲル CL頻回交換(最長 2 週間で交換)J&JアキュビューRオアシスTM乱視用ダブルスラブオフASD注3129CIBAエアオプティクス乱視用プリズムバラストPB注4108B&Lメダリストプレミア乱視用プリズムバラスト912.含水性 SCL1)頻回交換(最長 2 週間で交換)B&Lメダリスト 66 トーリックグループ 2プリズムバラスト16.42)ディスポーザブル(毎日使い捨て)J&JワンデーアキュビューR乱視用グループ 4ダブルスラブオフASD注331.1CIBAデイリーズ トーリックグループ 2ダブルスラブオフダブルシンゾーン26B&Lメダリストワンデープラス乱視用グループ 2プリズムバラスト19.2 注1:会社名は,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社(J&J),チバビジョン株式会社(CIBA),ボシュロム・ジャパン株式会社(B&L)と略した.注2:レンズのデザイン名は,各社が独自の名前をつけている.注3:Accelerated Stabilization Design.注4:プレシジョンバランス 8/4 デザイン.図 1 アキュビューRオアシスTM乱視用①②③④⑤図 2アキュビューRオアシスTM乱視用のデザイン①:レンズ光学部,②:スピーディなレンズの安定を実現する「アクセラレイト・スロープ」,③:容易な回転評価を可能にする上下の「スクライブ・マーク」,④:薄くなめらかな上下部分,⑤:適度に厚みをもたせたゾーン.(ASD,イメージ図)———————————————————————- Page 250あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010(00)あり,瞬目時にアクセラレイト・スロープの部分でより効果的な圧力の伝達が可能となり,眼瞼幅の狭い眼にも対応できる. リコーンハイドロゲル の 化アキュビューRオアシスTM乱視用以外にも,他社からも 2007 2009 年にシリコーンハイドロゲルの素材の乱視用 SCL が出てきた.今までの含水性 SCL に比べて,酸素透過率が 3 4 倍以上良くなった.しかも,乾燥感は軽減され,素材の世代交代である.将来は,毎日使い捨てディスポーザブル SCL も,シリコーンハイドロゲルの素材に移行するであろうが,経済的な乱視用 SCL を望む装用者はアキュビューRオアシスTM乱視用のような頻回交換を希望するであろう.2009 年 12 月に,消毒液はアカントアメーバの cystに対して消毒効果が弱いというマスコミ報道があったが,眼科専門医にとっては周知の事実であった.煮沸消毒を行わないと完全には消毒できないが,現在のほとんどの SCL は煮沸により変形してしまうというジレンマがある.消毒液による擦り洗いと十分なすすぎ,レンズケースの洗浄・乾燥,1 カ月以内に新しいレンズケースに交換するなどの正しい使用方法を行えば,アカントアメーバの感染は防げると考えている.文献 1) 渡邉潔:改訂増補ディスポーザブルコンタクトレンズ,p38-41, メジカルビュー社, 1998ツ黴€ 2アキュビューRオアシスTM乱視用の性状材質: seno lcon AFDA 分類: グループⅠ製法: Stabilized Soft Molding 製法ベースカーブ:8.6 mm製作範囲:球面度数円柱度数円柱軸±0.00 Dツ黴€ 6.00 D(0.25 D ステップ) 0.75 D 1.25 D 1.75 D10°,20°,60°,90°,120°,160°,170°,180° 2.25 D10°,20°,90°,160°,170°,180°±6.50 Dツ黴€ 9.00 D(0.50 D ステップ) 0.75 D 1.25 D 1.75 D10°,20°,60°,90°,120°,160°,170°,180° 2.25 D10°,20°,90°,160°,170°,180°直径: 14.5 mm中心厚: 0.08 mm( 3.00 D の場合)含水率: 38%酸素透過係数*(Dk 値)103酸素透過率**(Dk/L 値)129( 3.00 D の場合)紫外線対策: 紫外線カット(A 波を約 96%,B 波を約 99%カット)スクライブ・マーク:12 時と 6 時の方向に 1 本ずつのライン着色: あり*:×10 11(cm2/sec)・(ml O2/ml・mmHg),測定条件 35℃.**:×10 9(cm・ml O2/sec・ml・mmHg),測定条件 35℃.医療用具承認番号 21800BZY10252000図 4 アキュビューRオアシスTM乱視用のスピーディで確実な回転制御のメカニズム(拡大イメージ図)アクセラレイト・スロープアクセラレイト・スロープ(急な傾斜)眼上眼瞼レンズ眼瞼下のレンズの厚みは薄く,一定より効果的な圧力の伝達が可能図 3 アキュビューRオアシスTM乱視用のデザイン(イメージ図)

写真: アカントアメーバ角膜炎における臨床所見の亜型

2010年1月31日 日曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010470910-1810/10/\100/頁/JCOPY(47)写真セミナー 監修/島﨑潤横井則彦308.ツ黴€ツ黴€ ツ黴€ツ黴€ツ黴€ ツ黴€アカントアメーバ角膜炎におけるツ黴€ツ黴€ ツ黴€臨床所見の亜型図 2 アメーバ角膜炎移行期に認められた不整形上皮欠損ぼろぼろと上皮欠損が生じ,創傷治癒と欠損をくり返し形状が変化する.佐々木香る出田眼科病院ツ黴€ツ黴€ツ黴€ 1コンタクトレンズ装用者に生じた上皮欠損a:不整形上皮欠損部の角膜擦過物よりアメーバが検出された.b:コンタクトレンズの長時間装用による上皮欠損であり,アメーバは検出されない.図 3アメーバ角膜炎移行期に認められた輪状上皮欠損深彫れはしていない.上皮欠損の内側縁は,その後輪状混濁を呈した.———————————————————————- Page 248あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010(00)アカントアメーバ角膜炎の典型的臨床所見については,一般的に認知されつつある.典型的なものとしては,初期では偽樹枝状角膜炎,神経炎,輪部炎,さらに不均一な上皮下浸潤がよく知られている.また,進行期から完成期にかけては,輪状混濁から不均一な円板状角膜炎がよく知られている.しかし,それ以外にも不整形上皮欠損あるいは輪状上皮欠損など,アカントアメーバを疑う臨床所見が存在する.今回はこれらの,アカントアメーバ角膜炎の亜型ともいうべき臨床所見について解説する.アカントアメーバは細胞にアポトーシスを惹起すると報告されている1).アメーバを感染させた腫瘍細胞では,DNA ladder が確認され,形態学的な観察でも,アポトーシスによる細胞融解が観察される.アメーバ角膜炎の初期には,上述の典型的所見を伴わずに,不整形の上皮欠損が生じることがある(図1a)が ,この上皮欠損には,アポトーシスが関与している可能性も考えられる.その欠損底および周囲は透明度を保っており,周辺部浸潤も軽度であり,コンタクトレンズの過剰装用による上皮欠損(図1b)との鑑別が非常にむずかしい.よく観察すると周辺の浸潤が不均一であることなどから,差異は認められるが,実際には鑑別困難と考えられる.またアメーバ角膜炎は,細菌や真菌などの感染症と違い,組織破壊が軽度であるので,上皮欠損と治癒をくり返す傾向にある.移行期以降でも,遷延性上皮欠損ではなく,「治癒しては,またぼろぼろと がれる」をくり返し,形状を変化させながら何度も上皮欠損が生じ る(図2).アメーバ角膜炎が急増している今日では,コンタクトレンズ装用者に認められた不整形の上皮欠損では,ともかくアメーバ角膜炎を疑ってみることが大切である.アカントアメーバ角膜炎では,すべての病期を通じて,高度の輪部炎を認める.この輪部炎が高度になると,輪状の周辺部角膜上皮欠損を生じる(図3)2,3).ちょうど重症強膜炎における周辺部角膜潰瘍と同じような機序で,免疫反応の一種であると推測される.病期としては移行期の時期に認められ,進行するとこの輪状上皮欠損の内側縁は典型的所見である輪状混濁へと進行する4).輪状上皮欠損は,自己免疫疾患と違ってあまり深彫れしない上皮欠損であるが,その程度によって輪状に認めることも,局所的に円弧状に存在する場合もある.これらの上皮欠損も,前述のように遷延化せず,周辺からの創傷治癒によって形状を変化させる.輪部炎や毛様充血が高度であるアメーバ角膜炎では,正しい診断がなされる前にステロイドが投与されがちであるが,ステロイド投与はアメーバのシストから栄養体への変化を助長したり,栄養体の増殖を促進することが報告されている5).すなわち,ステロイドを投与することによって,臨床的には抑えているようにみえて,その実,アメーバを強化していることになる.ステロイド投与により,文頭であげたアメーバに典型的な臨床所見をすべてマスクしてしまったとき,今回提示した亜型の臨床所見がアメーバの診断に非常に重要になってくると考える.文献 1) Alizadehツ黴€ H,ツ黴€ Pidherneyツ黴€ MS,ツ黴€ McCulleyツ黴€ JPツ黴€ etツ黴€ al:Apoptosis as a mechanism of cytolysis of tumor cells by a pathogen-ic free-living amoeba. Infect Immun 62:1298-1303, 1994 2) 椎橋美予,宮井尊史,子島良平ほか:角膜周辺部に輪状上皮欠損を呈したアカントアメーバ角膜炎の一例.眼紀 58:425-429, 2007 3) 塩田洋:アカントアメーバ角膜炎.あたらしい眼科 13:15-20, 1996 4) Theodore FH, Jakobiec FA, Juechter KB et al:The diag-nostic value of a ring in ltrate in acanthamoebic keratitis. Ophthalmology 92:1471-1479, 1985 5) McClellan K, Howard K, Niederdorn JY et al:E ect of steroids on Acanthamoeba cysts and trophozoites. Invest Ophthalmol Vis Sci 42:2885-2893, 2001