———————————————————————- Page 10910-1810/09/\100/頁/JCOPYII視力検査に必要な基礎知識1. 視力(visual acuity)とは物体の形や存在を認識する眼の解像力を示し,眼球から視覚中枢に至るまでの視機能全体の指標である.通常は,眼がかろうじて判別できる 2 点が眼に対してなす角(最小可視角)の逆数で表現する.よって,その値は検査距離に依存しない(図 1).2. 視標標準視標には,ランドルト環(Landolt ring)が用いられる.環の太さと切れ目の幅がともに外径の 1/5 で,視力 1.0 のときのランドルト環の切れ目は視角 1¢(1 分)である.検査距離5 mのときの 1.0 のランドルト環の大きさは,外径 7.5 m m・太さと切れ目の幅 1.5 m mである(図 2).ランドルト環以外にも, 文字や数字などの視はじめに視力検査は眼科診療において最も基本となる検査の一つである.医師自身が視力の原理や測定方法を理解し,検査時における細やかな指示や検査結果の正しい評価をすることが求められる.本稿では,日常臨床における視力検査の重要性を述べた後,視力検査時に必要な基礎知識,基本的な検査の手順,そして最後に検査結果を評価する際の注意点を紹介させていただく.I日常臨床における視力検査の重要性 (どうして視力検査が大切なのか?)診療を行っているとほぼ毎日「よく見えません」と受診される方を経験する.しかし同じ「よく見えない」のなかにもさまざまな程度や原因が含まれていることは言うまでもない.“見え”の感じ方は千差万別であり,かつ本人にしか体験できない.そのため患者自身も表現に苦労し医師やスタッフに正確に伝わっているかが心配になる.一方で,診療側も「よく見えない」と言われるだけでは,さまざまな疾患が頭をよぎり診断にも時間を要してしまう.このような場合でも視力検査は,あいまいな見え方の表現や質を共通の形で表現することができる.それにより,診断の大きな助けにもなる.たとえば屈折異常は,視力検査だけで診断と治療方法がおおよそ決定される.(3) 1443 a a a 視 062 0841 465 視 特集●視力検査のすべて あたらしい眼科 26(11):1443 1450,2009日常臨床における視力検査Daily Assessment of Visual Acuity稗田朋子*稗田牧* 視 q(分)視力=1/θ図 1視力の表示方法最小可視角の逆数が視力である(1/最小可視角).———————————————————————- Page 21444あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,2009(4)ズで矯正できる正乱視と矯正できない不正乱視がある.正乱視では,最も強い屈折力をもつ強主経線と最も弱い屈折力をもつ弱主経線が互いに直交している.各々の経標が使われることがある.それらは,ランドルト環との比較実験で作製されている.3. 視力の表示法国際的な標準視力表示方式は小数視力であり,わが国でも一般的に使用されている.小数視力=1/最小可視角(分)である.一方,欧米では分数視力(スネレン方式:Snellen method)を用いるところが多い.分数視力を小数に換算した値は,小数視力と同じ値である.小数視力や分数視力は視覚に反比例する数値であるため視力表の視標の各段と視力の実質的な差が一致しない.そこで,最小可視角の対数で表す logMAR(logarithmic minimum angle of resolution)が使われることもある1).4. 視力の種類裸眼・矯正視力,遠見・近見視力,字ひとつ・字づまり視力が普段よく使われる.上記以外に両眼視力,中心外視力,動体視力,対比視力,縞視力などがあり,必要に応じて測定する.5. 屈折矯正視力測定時には屈折検査が必要である.平行光線が無調節状態で網膜面に結像する眼を正視(emmetro-pia),結像しない眼を屈折異常という.屈折異常には,網膜面より後方に結像する遠視(hyperopia),前方に結像する近視(myopia),経線方向により結像位置の違う乱視(astigmatism)がある(図 3).乱視には,円柱レン1.5mm7.5mm1.5mm図 2標準視標=ランドルト環(Landolt ring)円環全体の直径:円弧の幅:輪の開いている幅=5:1:1 の比率.5 mでの測定時における 1.0(視角 1 分)のランドルト環は外径 7.5 mm・太さと切れ目の幅 1.5 mmである.正視(emmetropia)遠視(hyperopia)近視(myopia)乱視(astigmatism)図 3正視と屈折異常上から順に正視(emmetropia),遠視(hyperopia),近視(myopia),乱視(astigmatism)を表している.遠視は凸レンズ,近視は凹レンズ,正乱視は円柱レンズで矯正される.Sturmの間隔前焦線後焦線最小錯乱円図 4正乱視眼のシェーマ前焦線〔 rst(anterior)focal line〕=強主経線の焦線.後焦線〔second(posterior)focal line〕=弱主経線の焦線.焦 域(focal interval)(スタームの間隔:interval of Sturm)=乱視度の強さ.最 小錯乱円(circle of least confusion)=全光束が最も接近する位置.———————————————————————- Page 3あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,20091445(5)1. 測定条件普遍的な視力検査結果を得るために一定の測定条件が必要である.室内照度は 50 lux 以上で視標輝度を上回らない値とする.視力表の照度は 500±125 ラドルックス(rlx)(rlx=反射率×ルックス)であり,視標のコントラスト比は 85%以上必要である(図 5)1).原則的に,右眼の裸眼視力→左眼の裸眼視力→右眼の矯正視力→左眼の矯正視力の順に測定する.まず,視力は閾値であるので,被検者にはあらかじめぼんやりとでも判別できれば答えてくれるように説明しておく.目を細めると,焦点深度が深くなり視力が実際の値より良く測定される可能性があるので,目は細めないよう注意を促す.散瞳時に視力測定をする場合には3 m mの円孔板を用い,カルテにその旨を記載する.2. 被検者の状態を参考にする視力検査は正確でかつ迅速に行う必要がある.長時間の検査は疲労をきたし,検査の精度を落とすからである.そのためには,問診や年齢(再診の場合は疾患)などを参考に個々の症例に対して必要最低限の検査が求め線のピント(焦線)は,強主経線の焦線が前焦線〔 rst(anterior)focal line〕,弱主経線の焦線が後焦線〔second(posterior)focal line〕とよばれる.そして,焦線間距離を焦域(focal interval)(スタームの間隔:interval of Sturm)といい,乱視度の強さを示している.焦域の中央からやや前方の全光速が最も接近する位置を最小錯乱円(circle of least confusion)という(図 4).乱視眼は通常ここで見ていることが多い.強主経線と弱主経線の屈折度の平均値は等価球面屈折度(spherical equiva-lent)(球面レンズ度+1/2 の円柱レンズ度)という1,2).III視力検査の基本的手順つぎに,実際の検査手順を述べる.視力検査は,自覚的視力検査法と他覚的視力検査法に分けられる.他覚的検査法は,幼児や詐盲など自覚的検査法で信頼のおける結果が得られない場合に使用する.視運動性眼振(opto-kinetic nystagmus:OKN)・ 視 覚 誘 発 電 位(脳 波)〔visual evoked potential(response):VEP〕などがある.ここでは,日常診療時に最も多い成人の自覚的視力検査法を中心に説明する.1.0の視標0.1の視標字づまり視力表字づまり視力表5m5mAB図 5視力検査環境と遠見視力測定の準備室内照度 50 lux 以上で視標輝度を上回らない.視力表の照度は 500±125 rlx.視標のコントラスト比は 85%以上.A: 検査距離は5 m.字づまり視力表の 1.0 の視標を目線の高さに設定.B: 5 mで 0.1 の視標が見えない場合,検者が 0.1 の視標をもって近づく.この場合,視標輝度=室内照度となり,字づまり視力表と若干条件が異なる. 視力=0.1×x/5(x m:視標と被検者間の距離)———————————————————————- Page 41446あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,2009(6)( )・視力 0 と記載する1).b. 矯正視力矯正視力は屈折検査の値を参考にしながら測定する.できるだけ調節の影響を受けないように心がけることが重要である.屈折検査は,自覚的屈折検査と他覚的屈折検査に分けられるが,最終的には自覚的屈折検査で決定することが原則である(図 6).1)他覚的屈折検査臨床でおもに使用されている他覚的屈折検査には,オートレフラクトメータと検影法の 2 種類がある.・オートレフラクトメータ(auto refractometer):赤外線光を被検眼に入れ,返ってくる赤外線光のピントの位置を調べることで他覚的屈折度が自動的に得られる.操作は簡単で,短時間に測定ができ,熟練を要さない.屈折度と同時に角膜曲率半径の測定もできる.加えて測定時に表示されるマイヤーリングで角膜前面の大まかな状態を把握することも可能である.欠点には,機械近視の影響が完全には除去できないことや強い前眼部・中間透光体混濁,測定可能範囲を超える強い屈折異常,小瞳孔で測定不可能なことがあげられる3).・検影法(skiascopy/retinoscopy):検影器と板付きレンズを用い,検者と被検者の網膜共役点を探す検査法である.検影器から瞳孔内に光を入れ,瞳孔内の光影の動きと一致する場合を「同行」・逆方向の場合を「逆行」・動きがない場合を「中和」と言う.屈折度は,中和に要した検査レンズ度数(D) 1/ 検査距離(m)で表されるられる.加えて,検査中も反応により臨機応変に検査方法を変えていき,被検者の気になった様子はカルテに記載する.3. 遠見視力の測定a. 裸眼視力通常5 mの距離でランドルト環字づまり視力表を用いて行う.1.0 の視標が被検者の視線の高さになるように設置する(図 5).遮眼子もしくは,眼鏡検眼枠と遮閉板を用いて片眼ずつ測定する.測定中は非検査眼で覗いていないかの観察が必要である.・まず,視標を上から順にさし(点灯させ)被検者に読ませる.半数以上視標が判別できた限界の段を視力とする.すなわち視標が 5 列の場合は 3/5 以上判別する必要がある.半数以下しか判別できないときに p(partial)をつけて記載する場合があるが,正式な視力は p をつけている前の段の視力である.・検査距離5 mで 0.1 の視標が判別できない場合,被検者に 0.1 の視標が見える位置まで近づいてもらうか,検者が 0.1 の視標を持ち視標を判別できるまで被検者に近づく(図 5).0.1 mの視標が判別できたときの視標と被検者間の距離(x m)を求め,x m での視力は 0.1×x/5である.たとえば2 mで判別できた視力は 0.1×2/5=0.04 となる.中心で見えない場合は視標をずらし中心外でも測定する.・指数弁:50 c mまで近づいても 0.1 の視標が見えないときは,指の数を答えさせる.30 c mの距離で判別ができた場合の記載法は,30 cm指数・30 cm/n.d.(numerous digitorum)・30 c m/c.f.(counting nger)・30 c m/F.Z.(Finger Zahl)である1).・眼前手動弁:指数が判別できないときは,被検者の眼前で手を動かしその方向を判別できるかを聞く.手動弁・m.m.(motus manus)・h.m.(hand motion)・H.B.(Hand Bewegung)と記載する1).・光覚:手の動きがわからないときは,瞳孔に光を入れて明暗が判別できるかを尋ねる.明室で光覚がない場合には暗室で再検査を行う.記載は,光覚・s.l.(sensus luminis)・l.s.(light sense)・L.S.(Licht Sinn)である.光をまったく感じないときは医学的失明を意味し,光覚自覚的屈折検査他覚的屈折検査レフラクトメータ検影法オフサルモメータ球面レンズによる矯正円柱レンズによる乱視矯正球面レンズによる補正球面レンズの再調整二色テスト(赤緑テスト)雲霧法両眼開放での確認図 6屈折検査の流れ———————————————————————- Page 5あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,20091447(7)かも簡便に確認できる4).2)自覚的屈折検査自覚的屈折検査は,レンズ交換法が基本である.・検眼枠の調節:レンズの光学中心が瞳孔中心に位置するよう設置し(光学中心の調節),検眼枠に挿入されたレンズ後面から角膜頂点までの距離が 12 m mになるよう調節する(頂点間距離の調節).その後,一方のレンズホルダに遮眼板を入れ片眼ずつ測定する(図 8).・球面レンズ度の決定:他覚的検査結果や手持ち眼鏡の度数を参考にして行われることが多い.不明な場合には弱い凸レンズを入れ,矯正視力が低下すれば近視を考え,最高視力が得られる一番弱い凹レンズ度を,低下しなければ遠視を考え,最高視力の得られる一番強い凸レンズ度を求める.凸レンズは,交換レンズを入れた後に装用レンズを除去すると,調節の影響を受けにくい.2枚以上のレンズを検眼枠に入れる場合は,度が強いレンズが頂点間距離 12 m m寄りになるように(眼に近い位置に)配置する.・円柱レンズの決定:おもに乱視表を用いる方法とクロスシリンダーを用いる方法がある.乱視表を用いる場合は,網膜面上に後焦線をおき,前焦線のみを網膜面に近づけていく要領で行う(図 9).球(図 7).すなわち,一般的な検査距離 50 c mでは,中和レンズ 2 D となる.用いる器具により,鏡面法,点状法,線状法とがあるが,以下線状検影器で開散光を用いた測定方法を述べる.検者は被検者の視線を遮らないよう対座し,被検者を遠方視させる.まず,裸眼で光を瞳孔に入れ,主経線(乱視軸)を決定する.その後,主経線方向に検影器を回転させ,同行なら凸レンズを,逆行なら凹レンズを付加していき中和点を探す.主経線ごとに屈折度を求め,眼屈折度を換算する.検影法は熟練を要するが,精度が比較的高く,小児や寝たきりの方などでも測定が可能である.さらに眼鏡が合っているかどう同行逆行中和図 7検影法による影の動き検査距離 50 cmの場合,同行:2.0 D 未満の近視・正視・遠視,逆行:2.0 D を超える近視,中和:2.0 D の近視である.12mm頂点間距離瞳孔間距離遮眼板を挿入し測定BAC図 8自覚的屈折検査の準備A: 光学中心の調節(瞳孔間距離を測定し,レンズの光学中心が瞳孔中心に位置するよう設置).B: 頂点間距離(検眼枠に挿入されたレンズ後面から角膜頂点までの距離)は12 mm.C: 一方のレンズホルダに遮眼板を入れ片眼ずつ測定.———————————————————————- Page 61448あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,2009(8)クロスシリンダー(cross cylinder)とは,同じ度数の凹と凸の円柱レンズを直交させて組み合わせたレンズであり,各々の円柱レンズの軸が刻まれている.最小錯乱円を網膜面上においたままクロスシリンダーを回転させ,前焦線と後焦線の位置を網膜面上に近づけながら(最小錯乱円を小さく)円柱レンズ度を決定する(図1 0 ).・二色テスト(赤緑テスト:red-green test):色収差を利用した検査法である.最終的な球面レンズ度の微調整に使う(図 11).赤地と緑地を背景に各々黒字の図形が描かれている.はっきりと図形が見えるのが赤地と答えた場合は,遠視の過矯正か近視の低矯正であるため凹レンズを追加し,反対に緑地と答えた場合には,遠視の低矯正か近視の過矯正なので,凸レンズを追加する.この操作を,両方の図形が一様にみえるまでくり返す.4. 近見視力の測定老視や調節障害などで近くが見えづらいときに近見視面レンズ度数を決定したのちに,他覚的屈折値乱視度数の 1/2 程度の凸球面レンズを加えて雲霧した後,乱視表を見てもらい線に濃淡がある場合,濃く見える線と直交する角度を乱視軸とし凹円柱レンズで矯正する.乱視表軸方向AB(雲霧レンズ)球面レンズ円柱レンズ図 9乱視表を用いた円柱度数決定方法A:球面レンズを用い,網膜面に後焦線を置く.B: 乱視表が均一になるように円柱レンズを足し,前焦線を網膜面に近づけていく.ABクロスシリンダー球面レンズ球面レンズ図 10クロスシリンダーを用いた円柱度数決定方法同じ度数の凹と凸の円柱レンズを直交させて組み合わせたレンズである.A:最小錯乱円を網膜面上に置く.B: クロスシリンダーを回転させ,前焦線と後焦線の位置を網膜面上に近づける.正視の状態赤=緑のとき赤黄緑赤がよく見えるとき近視の状態→凹レンズを追加赤黄緑赤黄緑遠視の状態→凸レンズを追加緑がよく見えるとき図 11二色テスト(赤緑テスト:red-green test)赤地に書いてある記号がよりはっきり見えると答えた場合は凹レンズを追加,緑地と答えた場合には凸レンズを追加する.———————————————————————- Page 7あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,20091449力を測定する.わが国では通常 30 c mの距離で近距離視力表を用いて測定する. ひらがな万国式近点検査表を使用することが多い.一方,欧米では 40 c mで測定することが多く,記載法は分数視力のほかに Jaeger やPoint がある.わが国でも,体格の変化・パーソナルコンピュータ作業時の距離を考慮して老視の評価時に 25 cmから 50 c mの距離で測定可能な魚里式 LogMAR 近距離視力表などを用いる場合がある.原則的には遠見視力と同様に,球面矯正→円柱矯正→球面補正の順に矯正するが,臨床では遠見時の矯正度数と調節力の加齢変化の平均値を参考にしながら矯正度数を決定することが多い(図 12).IV診察時における視力評価のポイント(1)まず,矯正視力を確認矯正視力が良好なことを確認できればひとまず安心である.屈折異常以外の器質的な疾患はほぼ除外されるからである.矯正視力が不良なときは,視力低下の程度,他の眼症状,診察,検査所見を総合して原因を解明していく必要がある.一方,矯正視力が良好でも視力低下の訴えがある場合には,視野障害が存在したり,一般的な測定条件下では検出されなかったコントラスト感度の低下などが隠れているため必要に応じて検査の追加が必要となる.(2)裸眼視力を軽視しない最も訴えと直結しているのが裸眼視力(もしくは手持ち眼鏡視力)である.眼科医になりいろいろな疾患を覚えてきたときに陥りやすいことのなかに,矯正視力にばかり目がいきがちになることがあげられる.世間一般的には「目が悪い」≒屈折異常(特に近視・老視)をさす場合が多い.よって,矯正視力ばかりを重視していると患者との間に温度差が生じ,不満が解決しない場合がある.緑内障や網膜疾患など器質的な基礎疾患を有する場合でも裸眼視力の低下のみで不満を訴えることもある.ことさら QOV(quality of vision)が求められるこの時代では,屈折矯正手術・多焦点眼内レンズ挿入時だけではなく白内障手術・眼内レンズ挿入術前後などでも裸眼視力の把握が必須である.おわりに日常臨床における視力検査は,正確に行われることが大前提である.しかし一方で,必ずしも研究用にデータを取るときほど完璧な検査結果が必要なわけではない.一番の目的は視力検査を通して見え方を患者と診療側が共有することである.すなわち訴えによく耳を傾け,何が求められているかを考えながら,視力検査時に一番必要な情報を迅速に得ることが大切である.そのために医師は,視力検査の基本を理解したうえで,日々,愁訴や所見と視力を対比させ考える必要がある.そのうちに,視力検査の結果を見ただけでもある程度患者の状態が頭に浮かんでくるようになる.(9) 図 12近見視力の測定30 c mの距離で測定する.下の写真は,ひらがな万国式近点検査表である.———————————————————————- Page 81450あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,2009文献 1) 所敬:屈折異常とその矯正 第 3 版,p25-84,金原出版, 1997 2) 平井宏明:幾何光学の基礎.眼光学の基礎(西信元嗣編),p1-41,金原出版, 1990 3) 魚里博,川守田拓志:オートレフラクトメーター.眼科 49:1521-1526, 2007 4) 八子恵子:検影法のコツと意義.眼科 28:707-714, 1986(10)