———————————————————————- Page 10910-1810/09/\100/頁/JCOPYMS の再発予防薬としてさまざまな病態を想定した治療薬が次々に開発されてきている.I多発性硬化症の疫学1. 遺伝的・環境的要因MS は人種や地域により有病率に大きな差がある.北半球でも南半球でも緯度が高いほど有病率が高い.日本国内でも北海道では九州に比べ 3 4 倍も有病率が高い.環境因子が大きいと考えられる要因として,15 歳までに高頻度地域に居住した場合,その後低頻度地域に移住しても,低頻度地域に出生・居住する住民よりも発症率が高いとされる.典型的な欧米型多発性硬化症(conventional MS:CMS)について,日本を北緯 37°で北と南に分けて比較すると,北で出生しそのまま北に居住する人々では,南で出生しそのまま居住する場合に比べ,MRI(磁気共鳴画像)でも典型的な CMS 画像を呈する場合が多いとされる.また緯度が近い地域でも人種により有病率が異なり,北ヨーロッパに出自をもつ北米・オーストラリアなどの国々に居住するコーカソイド人種では特に有病率が高く,40 100 人 /10 万人とされる.アジア・アフリカ系人種では 7 10 人 /10 万人と少ない.米国在住の日系二世は同世代の白人より MS の頻度が低く,南アフリカ在住の黒人でも同地域在住の白人に比し頻度が低い.このように,CMS の発症には遺伝的要因に加え環境要因が強く関連する.米国の調査では,同胞発症は 3 はじめに多発性硬化症(multipleツꀀ sclerosis:MS)は,中枢神経組織に,自己免疫機序によると考えられる炎症性脱髄性病変を多発性・多巣性に生じる疾患であり,視神経・大脳・脳幹・小脳・脊髄に炎症を生じ,再発と寛解をくり返す.本症は欧米白人に多く日本人には少ないとされてきたが,2004 年に施行された全国臨床疫学的調査では,過去 30 年間で患者数が 4 倍に増加したことが明らかになり,生活環境の欧米化の関与が考えられている.臨床病型についても,最近大きな変遷があった.すなわち,日本やアジア諸国に特徴的な病型と考えられてきた視神経脊髄型(optic-spinal form:OSMS)の多くが欧米で MS とは異なる疾患と考えられている neuromy-elitisツꀀ optica(NMO)と同一疾患である可能性が高くなった.さらに,これまで MS の病態は,中枢神経の白質がおもに CD4 陽性 T 細胞により傷害される機序が考えられてきたが,最近,髄鞘のみではなく早期から軸索にも病変が及ぶこと,白質のみではなく灰白質にも病変が及ぶこと,CD8 陽性 T 細胞も e ector になっていること,抗体が病変を修飾する可能性があること,これまでTh1/Th2 バランス仮説で病態が説明されてきたが,IL-17 を産生する Th17 細胞が重要な e ector であることが明らかになってきた.また,これまで,MS の再発予防にわが国では唯一使用可能であったインターフェロン-bが無効と考えられる病型が明らかになり,一方,(3)ツꀀ 1301ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ a a aツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 学ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 学ツꀀツꀀツꀀツꀀ 学ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 920 0293ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 学 1 1ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 学ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 学ツꀀツꀀツꀀツꀀ 学 特集●多発性硬化症・視神経脊髄炎と抗アクアポリン4抗体 あたらしい眼科 26(10):1301 1306,2009臨床と疫学Clinical Aspects and Epidemiology in Multiple Sclerosis/ Neuromyelitis Optica and Anti-Aquaporin-4 Antibody田中惠子*———————————————————————- Page 21302あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(4)速に増加しており,欧米化した生活習慣,土壌中の微生物環境,日照時間が短いことによるビタミン D の産生など,さまざまな環境要因の変化が考えられている1)(図1).また,女性の有病率が増加しており,1972 年には男性 1 に対し 1.3 であったものが,2004 年では 3.9 であった.女性 MS の増加は世界的な現象であるとの報告もある2).2. 臨床病型日本を含むアジア諸国の MS は,以前から欧米とは異なる臨床疫学的特徴を有すると考えられてきた.すなわち,わが国の MS は,主たる病変分布から,大脳病変を主体とする通常型(conventional form:CMS),視神経と脊髄に主たる炎症病巣を呈する視神経脊髄型(optic-spinalツꀀ form:OSMS)の 2 病型に大別され,欧米に比しOSMS の比率が高く,これがわが国を含むアジアの MSの特徴とされてきた3,4).最近の疫学調査では,OSMSはわが国の MS の約 20%を占め,CMS のように高緯度地域に多いという地域差がなく,CMS が近年増加の一途を辿るのに比し,OSMS の発症頻度は一定であるなどの特徴が示された(Osoegawaツꀀ Mツꀀ etツꀀ al:Multツꀀ Scler 15:159-173, 2009;Ishizu T et al:J Neurol Sci 280:22-28, 2009).5%とされるが,一卵性双生児の場合は 20%以上と推計されている.近年多数の MS 患者についての疾患感受性遺伝子の解析が進んでおり,HLA(組織適合抗原)その他多数の遺伝子が候補として検討されている.CMS における発症年齢のピークは 25 35 歳であるが,10 歳以前,あるいは 60 歳以降の発症もある.男女比は 1:2 3 とされる.米国での統計によると,CMSによる年間死亡率は 10 万対 0.7 で,平均死亡年齢が58.1 歳と,国民全体の平均死亡年齢 70.5 歳に比べ短縮している(The US Department of Health and Human Service, 1992).デンマークでも,MS の生命予後は国民平均より 10 年短いとの調査がある.近年,わが国でも MS は増加している.これまで,わが国では 1972 年,1982 年,1989 年,2004 年に全国疫学調査が施行されている.2004 年に厚生労働省の研究班が中心となって行った全国疫学調査によれば,10 万対の有病率は,1972 年時で 0.8 3.9,2004 年の調査では 7.7 と増加しており,さらに発症年齢のピークが 30歳代前半から 20 歳代前半へと移行し,若年者の MS が増加していることが明らかになった.特に北での増加が著しく,旭川での調査によれば,1975 年には 2.5 人 /10万人であったものが,2002 年には 8.9 人 /10 万人と急ツꀀ (1958)1.6(1968)1.0 本(1957)1.8(1983)1.3 児 (1973)0.7(1984)2.5 前(1973)3.8(1983)5.7旭川(1973)2.5(2002)8.9a):Northern patients(n=381):Southern patients(n=681)1926~19441945~19541955~19641965~19741975~199802468101214b)図 1 国内でのMS有病率の推移(a)と生年によるCMS/OSMS比の推移(b) (文献 1,2 より改変)———————————————————————- Page 3あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,20091303(5)大脳病変に起因するものとして,半身の運動・感覚障害を呈する場合が多いが,ときにけいれんや失語・失行などの高次脳機能障害を呈する.頻度は低いものの,大脳に径 2 cm 以上の massツꀀ e ect を伴う大きな病変が生じる場合があり,tumefactiveツꀀ MS と呼称される.また近年,記銘力障害や注意集中困難,思考遅延などの認知機能障害が比較的早期から生じているとの報告があ る5).MRI で白質の脱髄プラークが目立たない場合も多く,むしろ大脳皮質の萎縮・脳梁の菲薄化・脳室拡大と関連し,MS ではこれまで考えられたよりも高頻度に,早期から軸索変性・神経細胞脱落が生じていることが推測されている.かつて,MS では euphoric になることが強調されたが,実際は MS の半数程度がうつ状態を呈するとされ,自殺の頻度も高い.このほか,MS に高頻度にみられるものとして,慢性疲労,性機能不全,restlessツꀀ leg 症候群がよく知られており,個々の対策が必要である.MS の症状の多くは,発熱や高温気象,入浴などによる体温上昇により症状が一過性に増悪する(Uhthoツꀀ 現象).MS は,大脳・脳幹・小脳に多数の病変を生じるため,MRI 検査が診断および経過観察に非常に有用である.MS の早期診断を目指して,2001 年に MRI に重点を置いた診断基準(McDonald の診断基準)6)が提唱されたが,その MRI に関する基準は Barkhof の基準7)に基づいている.欧米ではこの基準を満たせば,初回の発症時点から clinically isolated syndrome(CIS)として,再発予防の治療導入が開始される傾向があるが,OSMS の診断には有用とはいえず,その早期診断には別の基準が必要である.III視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO)ツꀀ わが国では,CMS は頻度が低いため,かつてはその存在に疑問がもたれた時期もあった.一方で視神経と脊髄に炎症性脱髄性病変を反復する病型が注目され,視神経脊髄型(optic spinal)MS と呼称されて,わが国のMS を特徴付けるものと考えられてきた.OSMS と診断された例,特に脊髄に 3 椎体長以上に及ぶ縦長の病変II多発性硬化症の臨床MS は中枢神経の諸処に炎症性脱髄性病変を生じ,増悪と寛解,再燃をくり返すことが特徴とされ,「時間的・空間的多発性を呈する脱髄疾患」として知られている.病型の分類として,多くの場合は再発寛解型(relaps-ing-remitting form:RRMS)を呈し,長期経過の後,既存の脱髄斑の周囲に小病巣が重畳したり,軸索変性から神経細胞の脱落が進み,徐々に症状が進行性の経過をとるようにみえる二次性進行型(secondary progressive MS:SPMS)を呈するようになる.その他わが国ではまれとされるが,明らかな再発・寛解の経過をとらず,当初から緩徐に進行する経過を呈する一次性進行型(pri-mary progressive MS:PPMS)の病型も知られている.これらの病型の頻度は地域差があり,わが国ではRRMS が 90%以上を占め,PPMS は 5%程度とされる.一方,欧米では進行性経過を呈する例が多く,85 90%が RRMS で発症し,その約半数が 10 年以上の経過の後 SPMS に移行する.わが国ではまれである PPMS の頻度は 10 15%と高い.症候としては,脱髄巣を生じた部位によりさまざまであるが,15 20%の患者では視神経炎で発症する.通常は眼痛を伴う片眼の視力低下を呈するが,両眼同時あるいは数日の間隔で反対側にも症状が及ぶ.CMS では数週間の経過で良好な視力改善が得られるが,後述の抗アクアポリン 4 抗体陽性群では早期に高度の視力低下を生じ失明に至る場合がある.脳幹病変による複視や小脳脚病変による失調症状がみられる.小脳病変による失調の場合もある.脊髄に病変を生じる場合は,数時間から数日の経過で横断性脊髄症を呈することが多い.この場合,対麻痺や四肢麻痺,膀胱直腸障害,病変部以下の感覚障害を生じる.ときに,脊髄半側症状として障害側の運動麻痺・深部感覚障害と反対側の温痛覚障害を呈するBrown-Sequard 症候群を呈する.脊髄病変が生じると,頸部を急に前屈させた場合,背部を上から下に走る電撃痛(Lhermitte 徴候)がみられる.また,脊髄病変の回復期に多い症候として,手足を急に伸展するなどの際に上肢や下肢に発作的に強い疼痛を伴う,有痛性強直性攣縮がみられ,抗けいれん薬の投与を要する場合がある.———————————————————————- Page 41304あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(6)して発現させ,患者血清や髄液を反応させ,蛍光色素をラベルした抗ヒト IgG を二次抗体として検出するもので,同じ検体を用いて免疫組織化学で検出する NMO-IgG との比較でも両者の判定結果がほぼ一致することを確認している11).AQP4-Ab 陽性連続 20 例での検討では,AQP4-Abは IgG1 サブクラスに属した.IgG1 サブクラスは補体結合能を有する.NMO の病理所見の特徴として,血管壁への免疫複合体の沈着を伴う血管壁の肥厚がみられ,活性化補体が沈着していることは,本抗体の関与を支持する所見と考えられる.抗体価を同一患者の血清と髄液とで比較すると,血清のほうが 400 500 倍力価が高い.この関係は各検体でほぼ一定であることから,髄液中の抗体は血液からの流入によると考えられ,抗体産生の場は末梢リンパ系であると考えられている.2. 抗AQP4抗体陽性群の特徴全国諸施設から OSMS または MS の臨床診断のもとに NMO-IgG/AQP4-Ab 検査を目的に筆者のもとに寄せられた約 2,800 検体について解析が終了し,わが国での本抗体陽性例の臨床的特徴が明らかになってきている.全検体における AQP4-Ab 陽性率は 27%であったが,大脳・小脳病変を主とする CMS ではすべて陰性で(longitudinary extensive spinal cord lesion:LESCL)を生じる一群(LESCL-OSMS)は,欧米で疾患概念が提唱された NMO ときわめて類似点が多く,その異同については長い間議論があった.2004 年,米国 Mayo Clinic の Dr. Lennon のグループが,NMO に特異的に出現するとされる血清中の抗体:NMO-IgG を発見し8),さらに NMO-IgG が認識する抗原は神経系に発現する水チャネル分子,aquaporin-4(AQP4)であることを同定した9).この発見により,筆者を含めわが国の複数の施設で抗 AQP4 抗体の検出がなされるようになり,これまで OSMS と呼称してきた例の多くが,本抗体を有する NMO と同様の病態に基づく疾患であることが明らかとなり,MS の疾患概念および治療の選択に大きな変化をもたらした.1. NMO IgG/抗アクアポリン4抗体(anti-aqua-porin-4 antibody:AQP4-Ab)NMO-IgG は,NMO 患者血清・髄液で免疫組織化学染色を行った場合,マウスやラットの中枢神経組織の軟膜,Virchow-Robin 腔,小血管壁に沿う染色パターンを呈する IgG 抗体であり,NMO に特異的に認められる.遠位尿細管や胃壁細胞・筋線維も染色されるが,抗原の発現は神経系に優位なパターンを呈することから,水チャネル分子,AQP4 である可能性が考えられ,実際AQP4 との反応が確認された9).AQP4 は,脳表の軟膜直下の gliaツꀀ limitans,中小血管の外膜に接する部位,脳室壁上衣細胞に接する部位などでアストロサイトの endfeet に発現し,血液脳関門の機能を担い,脳浮腫に関連することが知られている(図 2)10).哺乳類のアクアポリンは現在 13 個の分子種が同定されており,そのうち中枢神経系で発現の多いサブタイプは 1 と 4 である.特に 4 は最も発現が多く,その構造は6 回の膜貫通領域をもち,四量体の形で存在し,水分子が通過しうるサイズのポアが水分子の出入りをコントロールしている.筆者の確立した AQP4-Ab の検出系は,ヒト AQP4の全長 cDNA を作製し,発現ベクターに組み込んで,human embryonic kidney(HEK)293 細胞に transfect図 2 水チャネルの機能に関連が深いと思われるAQP4発現部位(文献 10 より)———————————————————————- Page 5あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,20091305(7)定化により抗体が検出感度以下になっている可能性も考えられ,ある時点で AQP4-Ab が陰性でも NMO と同様の病態を有する例であることもある.ちなみに眼科領域からの症例で集計が可能であった266 例をみてみると,抗体陽性例は 36/266(13.5%),うち初発例 18(視神経症状のみ 9 例)で,視神経炎のみを 16 年で 5 回反復した例,12 年で 4 回反復した例があった.欧米の統計では,本抗体陽性例の 50%は 5 6 年の経過で脊髄炎を呈するとする報告もある12).最近,視神経軸索や網膜神経細胞の変性を非侵襲的に評価し,症状経過を追跡する目的で,opticalツꀀ coherence tomography(OCT)が施行され,有用であることが報告されている.すなわち,nearツꀀ infraredツꀀ light を利用して retinal nerveツꀀ ber layer(RNFL)の厚さおよび mac-ularツꀀ volume(retinalツꀀ ganglionツꀀ cells)を測定し,明らかな再燃がない例でもこれらのパラメータが経過とともに増悪し,症状とも相関するとの報告がある13).なお,抗 AQP4 抗体関連 NMO の多くの例で,急性期にはメチルプレドニゾロンパルス療法が行われており,パルス療法に反応が不良な例では血漿交換療法が加えられて,症状の改善が得られた例がみられる.再発予防には少量のプレドニゾロン継続投与に加え,アザチオプリンなどの免疫抑制薬,ミトキサントロン,リツキシマブの投与の試みがあり,良好な経過をとる例の報告があった.対照として検討した,神経症状を認めないSjogren 症候群や全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病,その他の神経変性疾患,健康人を加えた 50例では陽性例はみられなかった.AQP4-Ab 陽性例で詳細な臨床情報が得られた 569 例では,陽性例の 79.1%が女性であり,発症年齢の平均が 47.2±16.3 歳,EDSS(Expandedツꀀ Disabilityツꀀ Statusツꀀ Scale)の平均は 6.2±2.1と高く,初発部位としては視神経と脊髄が多く,MRIでは脊髄に 3 椎体以上にわたる長大な病変を有する例が74.1%と多数を占めた.大脳・小脳・脳幹病変も 63%に認めた.高度の視力障害を有する例は約半数あり,年間再発回数も 3.6 回と,再発頻度も高い例が多くみられた.オリゴクローナルバンド陽性率は 10.4%と低かった(表 1).抗体陽性例の脊髄 MRI の代表的所見は,胸髄を中心として上下に長い病変を認め,横断面でみると脊髄中心部に病変の主座があった.経過の長い一部の例では脊髄が長い範囲にわたり高度に萎縮していた(図3).大脳病変はさまざまであり,視床下部病変があり過眠症が目立った例,大脳白質に空洞を伴う大きな病変を有する例もあった.なお,LESCLツꀀ を認めるものの,抗体陰性例も存在する.抗体陰性という場合,治療により抗体価が低下して検出できなくなる例があること,また寛解期で症状の安図 3NMOの脊髄MRI脊髄中心管を中心とした 3 椎体以上に及ぶ長大病変.表 1抗AQP4抗体陽性例の特徴AQP4-Ab 陽性例総数(男性/女性)569(119/450)(女性:79.1%)初発年齢(歳)47.2±16.3病型(再発寛解型)(%)75.8EDSS スコア6.2±2.1車いす/寝たきり85/138(38.1%)高度視力障害(視力喪失)99/116(46.0%)初発部位(ON/SP/BS/Cbr)(%)43.9/41.0/8.1/7.0MRI(cbr/cbll/BS)(%)35.9/4.8/22.3MRI LCL(+/ )(%)74.1/7.6OCB(+)/MBP(+)(%)10.4/57.4 RR:再発寛解型,SP:二次進行型,PP:一次進行型,ON:視神経,SP:脊髄,BS:脳幹,cbr:大脳,cbll:小脳,LCL:脊髄長大病変,OCB:オリゴクローナルバンド,MBP:ミエリン塩基性蛋白.———————————————————————- Page 61306あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(8)─.日本臨牀 61:1300-1310, 2003 2) 小副川学,吉良潤一:多発性硬化症の疫学─最近の全国臨床疫学調査からみえてくるもの─.医学のあゆみ 219:129-134, 2006 3) Kira J:Multiple sclerosis in the Japanese population. Lan-cet Neurol 2:117-127, 2003 4) Saidaツꀀ T,ツꀀ Tashiroツꀀ K,ツꀀ Itoyamaツꀀ Yツꀀ etツꀀ al:Interferonツꀀ beta-1b is e ective in Japanese RRMS patients:A randomized, multicenter study. Neurology 64:621-630, 2005 5) Chiaravalloti ND, DeLuca J:Cognitive impairment in multiple sclerosis. Lancet Neurol 7:1139-1151, 2008 6) McDonald WI, Compston A, Edan G et al:Recommended diagnostic criteria for multiple sclerosis:guidelines from the International Panel on the diagnosis of multiple sclero-sis. Ann Neurol 50:121-127, 2001 7) Barkhof F, Filippi M, Miller DH et al:Comparison of MRI criteria atツꀀ rst presentation to predict conversion to clini-cally de nite multiple sclerosis. Brain 120:2059-2069, 1997 8) Lennonツꀀ VA,ツꀀ Wingerchukツꀀ DM,ツꀀ Kryzerツꀀ TJツꀀ etツꀀ al:Aツꀀ serum autoantibody marker of neuromyelitis optica:distinction from multiple sclerosis. Lancet 364:2106-2112, 2004 9) Lennon VA, Kryzer TJ, Pittock SJ et al:IgG marker of optic-spinal multiple sclerosis binds to the aquaporin-4 water channel. J Exp Med 202:473-477, 2005 10) Verkman AS:More than just water channels:unexpect-ed cellular roles of aquaporins. J Cell Sci 118:3225-3232, 2005 11) Tanaka K, Tani T, Tanaka M et al:Anti-aquaporin 4 antibody in Japanese multiple sclerosis with long spinal cord lesions. Multiple Sclerosis 13:850-855, 2007 12) Matiello M, Lennon VA, Jacob A et al:NMO-IgG pre-dicts the outcome of recurrent optic neuritis. Neurology 70:2197-2200, 2008 13) Seze J, Blanc F, Jeanjean L et al:Optical coherence tomo-graphy in neuromyelitis optica. Arch Neurol 65:920-923, 2008 14) Mandlerツꀀ RN,ツꀀ Ahmedツꀀ W,ツꀀ Dencoツꀀツꀀ JE:Devic’sツꀀ neuromyeli-tis optica:a prospective study of seven patients treated with prednisone and azathioprine. Neurology 51:1219-1220, 1998 15) Creeツꀀ BA,ツꀀ Lambツꀀ S,ツꀀ Morganツꀀ Kツꀀ etツꀀ al:Anツꀀ openツꀀ labelツꀀ study of the e ects of rituximab in neuromyelitis optica. Neurol-ogy 64:1270-1272, 2005 16) Weinstock-Guttman B, Ramanathan M, Lincoツꀀ N et al:Study of mitoxantrone for the treatment of recurrent neu-romyelitis optica(Devic disease). Arch Neurol 63:957-963, 2006 17) Misuツꀀ T,ツꀀ Fujiharaツꀀ K,ツꀀ Kakitaツꀀ Aツꀀ etツꀀ al:Lossツꀀ ofツꀀ aquaporinツꀀ 4 inツꀀ lesionsツꀀ ofツꀀ neuromyelitisツꀀ optica:distinctionツꀀ fromツꀀ multi-ple sclerosis. Brain 130:1224-1234, 2007 18) Hinson SR, Pittock SJ, Lucchinetti CF et al:Pathogenic potential of IgG binding to water channel extracellular domain in neuromyelitis optica. Neurology 69:2221-2231, 2007なされている14 16).3. 抗AQP4抗体関連NMO/OSMSにおけるAQP4抗体の病因的意義これまで,AQP4 抗体の病因的意義を支持する知見と考えられている点は, a ) AQP4-Ab は,NMO/OSMS の病型で特異的かつ高頻度に検出される b ) 抗体価と病勢(活動性)が並行して推移する場合が多い c ) 抗体を除去する血漿交換療法や B 細胞を除去する治療が有効とされる d ) 病理学的に,本症の早期病変で,髄鞘がまだ残存する段階でも AQP4 が広範に消失している17) e ) AQP4 の発現が多い部位と病変好発部位が一致する f ) AQP4-Ab の免疫グロブリンサブタイプは,IgG1が主体であり,病理学的に本症病変で観察される,免疫グロブリンおよび活性化補体の沈着する所見を説明できる g ) 抗体は AQP4 の細胞外ドメインに結合すると考えられ,血液・髄液中の抗体が到達しやすいと考えられる h ) 培養系で AQP4 発現細胞に AQP4-Ab と補体を反応させると,AQP4 が degradation を受け,細胞が傷害される18) i ) ラットに実験的脳脊髄炎(experimental allergic encephalopathy:EAE)を作製し,AQP4 抗体陽性 NMO 患者より採取した血清 IgG を投与すると,NMO と同様の病理学的・免疫組織化学的所見が得られるなどの知見が集積されている.上述の多くの知見は本抗体が病態に深く関わっていることを示唆するものであり,今後の治療法の確立にも理論的根拠を与える知見となると考えられる.文献 1) 吉良潤一:多発性硬化症の臨床疫学─環境要因と遺伝要因