———————————————————————- Page 1(83)ツ黴 830910-1810/10/\100/頁/JCOPYはじめに角膜混濁が強く範囲の広い症例は白内障手術にとって難症例である1 3).しかし,通常の白内障手術に比べて経験する機会は少ないので,手術のコツなどを習得するには時間を要する.角膜混濁の症例を多数経験できれば,混濁の部位や範囲によって各手術操作の難易度がわかり,実際の臨床で有益と考える.現在,眼科領域の手術教育にはウエットラボ用の豚眼が広く利用されている.今回,安全かつ簡単な方法でウエットラボ用の豚眼で角膜混濁モデルを試作したので,その方法について解説する.角膜混濁の作製方法ウエットラボ用の豚眼を用意し,ジアテルミーを用いて角膜混濁を作製した.1. ジアテルミー装置今回使用したジアテルミーは,超音波白内障手術器械の一つである OS3R(Oertli 社,Switzland)に標準装備されている装置である.このジアテルミー(500 kHz)には,結膜止血や前 切開を目的としたエレクトリックカプスロトミーなど用途別に異なる電極がある.それぞれの電極の先端の直径は異なるので,凝固斑の大きさも違ってくる.結膜止血用ジアテルミーの出力は最大 8.0 W,カプスロトミー用のモードは REGULAR:6.5 W と HIGH:9.9 W の 2種類がある.どれを選択しても角膜上皮を凝固することができる.高周波電流による熱凝固なので,他のジアテルミー装置でも代用は可能である.2. 豚眼角膜の混濁作製電極の先端を角膜上皮に軽く圧迫した状態で,フットスイッチを押し凝固した.凝固斑ができたら先端を角膜から離し,適当な間隔をあけ連続して凝固斑をつくり,角膜の混濁を作製した.一つの凝固斑は数秒で作ることができる.電極の先端を角膜上皮に押し付けたまま円を描くように操作しても,横にずらしても凝固による混濁を作ることが可能である.ただし,強く凝固しすぎると,角膜が収縮して透明部にしわができるので注意が必要である.数分で,ジアテルミーを使用することにより,角膜上のさまざまな部位に適当な範囲の混濁を自在に作製することができた.具体的に試作した角膜混濁モデルを写真で示す(図 1,2).*Satoru Joko:武蔵野赤十字病院眼科〔別刷請求先〕上甲覚:〒180-8610 武蔵野市境南町1-26-1武蔵野赤十字病院眼科あたらしい眼科 27(1):83 84,2010わたしの工夫とテク ックツ黴ツ黴ツ黴ツ黴ツ黴ツ黴ツ黴ツ黴ツ黴ツ黴ツ黴ツ黴 白内障手術練習用の豚眼による角膜混濁モデルの試作Trial Manufacture of Corneal Opacity Model in Pig Eyes for Use in Cataract Operation Practice上甲覚*ジアテルミーを用いて,白内障手術練習用の豚眼による角膜混濁モデルを試作した.短時間(数分)で,ジアテルミー凝固斑の集合からなる混濁を,角膜上のどの部位にも適当な範囲の広さで,自在にしかも簡単に作製することができた.この人工的に作った角膜混濁部位では前房中の視認性が悪いので,角膜混濁症例に対する白内障手術手技の習得に有用なモデル眼になると考えた.要約図 1 角膜上皮に凝固斑をつくるため電極の先端を押しあて,約2分で混濁が角膜中央部に出来上がった前眼部写真(カプスロトミー用の電極を使用)———————————————————————- Page 284あたらしい眼科Vol. 27,No. 1,2010(84)通常の照明下にて顕微鏡から前房中をみると,人工的に作った角膜混濁部位下は視認性が悪い.おわりにこれまで,豚眼の白内障モデルとして,硬い水晶体核をつくり手術の練習効果を向上させる報告がある4 7).本法による角膜混濁モデルに水晶体の硬化を併用すると,より実践的なウエットラボを行うことが可能となり,さらに角膜混濁症例に対する白内障手術手技の習得に有用と考えられた.文献 1) 上甲覚:Hansen 病性ぶどう膜炎患者の白内障手術(1)術前の基礎.あたらしい眼科 26:343-344, 2009 2) 上甲覚:Hansen 病性ぶどう膜炎患者の白内障手術(2)実践編.あたらしい眼科 26:491-492, 2009 3) 上甲覚,堀江大介:片眼失明のハンセン病性ぶどう膜炎患者の白内障手術成績.臨眼 63:465-469, 2009 4) 黒坂大次郎:ウエットラボ用の豚眼白内障モデル(1)核処理の練習用.あたらしい眼科 15:1553-1554, 1998 5) 八田史郎,松浦一貴,長田正夫ほか:代用核素材(昆布豆)と摘出豚眼を用いた超音波水晶体乳化吸引術の練習方法.眼科 41:815-821, 1999 6) Mekada A, Nakajima J, Nakamura J et al:Cataract sur-geryツ黴 trainingツ黴 usingツ黴 pigツ黴 eyesツ黴ツ黴 lledツ黴 withツ黴 chestnutツ黴 ofツ黴 vari-ous hardness. J Cataract Refract Surg 25:622-625, 1999 7) 德田芳浩:豚眼実習における模擬核の作り方─カートンNRによる核の作製─.眼科手術 20:85-87, 2007図 2 電極の先端を角膜上皮に押し付けた状態で横にずらして,角膜上部に混濁を作製☆ ☆ ☆