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私が思うこと 19.バランス

2009年11月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.26,No.11,20091517私が思うことシリーズ⑲(77)眼科医になってから十数年経ちますが,振り返ってみると,入局3年目に大学院に入学し,海老原伸行先生(現順天堂大学眼科先任准教授)と中尾篤人先生(現山梨大学医学部免疫学教授)に指導を仰ぎ,臨床の視点から基礎医学を考えることを教わりました.それから私自身眼科を学ぶにおいて臨床医学と基礎医学の「バランス」を常に考えるようになりました.医学の進歩には基礎医学と臨床医学が相互に補完することが重要であるということに異論は少ないと思いますが,特にEBM(evidence-basedmedicine)に沿った治療が求められる今,そのEBMを理解するうえで,私は基礎医学も大事であると思っています.私はそれら2つをバランスよく学ぶ機会を与えてもらってきましたが,実際は診療から基礎,基礎から臨床という考えは,臨床中心になるとなかなかできなくなり,バランス性を失いかけていたのが実情でした.そんななかボシュロムの助成金をいただき2007年10月よりMassachusettsEarandEyeInrma-ry(MEEI)のDr.RezaDanaのラボに留学しています.ボストンといってもMLBのRedSoxしか知らず,期待より不安を感じながら異国の地に到着したことを覚えています.MEEIはハーバード大学医学部の附属機関でボストンの中心にあり,隣には同じく教育病院として有名なMassachusettsGeneralHospital(MGH)があります.このボストン一帯はハーバード大学以外に,マサチューセッツ工科大学,ボストン大学,タフツ大学などを有する学術都市でもあり,学者・研究者・学生などが世界各地から集まってきています.さて,眼科においても日本からこれまでも数多くの先生方が留学されており,各分野で専門的に基礎研究されている人もいれば,臨床研究されている人もいて,私もいろいろな先生方と知り合う機会がありました.ただ,先生方と仕事の話をしても漠然としか理解できないことが多く,仕事内容を発表できる場所を設けたらいいのではないかと思うようになりました.そこで,2008年12月に愛媛大学の鈴木崇先生と私とで,ボストン眼科勉強会を立ち上げました.現在行っている研究や日本で行っていた臨床など,テーマはフリーで,それぞれ担当の先生に発表していただいています.分野もそれぞれ異なっているため,議論によって,新しい知識や新鮮な意見に遭遇できることも期待して会を始めました.第1回は,私が「角膜移植と内皮細胞」のテーマで発表いたしました.そして2回目以降は,帰国前の先生方を中心に発表していただき,現在まで7回の勉強会を行うことができました.ボストンでは,数多くの学会が開かれており,第6回では,鈴木先生の計らいにより,山形大学医学部器官病態統御学講座,血液・循環分子病態学分野の一瀬白帯教授をお招きして講演していただきました.0910-1810/09/\100/頁/JCOPY舟木俊成(ToshinariFunaki)順天堂大学医学部眼科学教室1972年湘南生まれ.1998年順天堂大学医学部卒業後,同眼科学教室入局.2004年同大学大学院卒業後,順天堂大学伊豆長岡病院,本院を経て現在ハーバード大学眼科に留学中.専門は角膜内皮細胞で,分子生物学的アプローチを中心に研究しています.趣味はスポーツ観戦で,ボストンに来てからはMLB,NFL,NBA,NHLと趣味の範囲を広げています.1年を通してスポーツが見られ,充実した日々を送っています.バランス▲第1回ボストン眼科勉強会(筆者前列一番右端)———————————————————————-Page21518あたらしい眼科Vol.26,No.11,2009これまでの勉強会でのテーマは,第2回関山英一先生(京都府立医科大学)「Bruch膜の再建の可能性AMD新予防法の確立を目指して」第3回中井慶先生(大阪大学)「樹状細胞と血管新生の関与」第4回萩原章先生(千葉大学)「MEEIにおける小児網膜疾患の現状」第5回鈴木崇先生(愛媛大学)「Nomore眼内炎」第6回「特別講演」一瀬白帯教授(山形大学)第7回喜多岳志先生(九州大学)「増殖糖尿病網膜症における増殖膜収縮のメカニズムの解明および薬剤による制御の可能性」と,どの発表も目を見張る実験成果や,新開発の装置を利用した臨床研究であり,各先生方の研究への思い入れが非常に伝わる内容でした.このように毎月ないしは2カ月に1回,このような勉強会を開くことでさまざまな知識を得ること,違った視点で物事を考えることそして議論することで,先生方と非常に価値のある時間を共有できているのではないかと思っています.また,勉強会の後の飲み会での話しは日々の生活から共同研究まで多岐にわたり,親睦を深めるのに良い機会となっています.留学は研究中心の生活であり,臨床の視点が遠ざかる可能性があると思っていましたが,これまでの勉強会を通してさまざまな先生方と話すことによって,臨床医学の問題点や疑問点を明確に理解することができ,また,よりバランス性を確かにする時間にもなってくれたと思います.そしていかにその重要性を伝えるか,またそこから新しいアイデアが生まれることによって医学の発展に続くと感じています.本稿をお読みの先生方で,これからボストンに学会などでお立ち寄りの際には,ぜひ講演していただけると幸いです.私はもうすぐ帰国しますが,このように振り返ってみますと,留学という限られたなかで勉強会の開催を立ち上げることでさまざまな先生方と親しくできたことを本当に嬉しく思います.最後になりますが,今後もボストン眼科勉強会の益々の発展を祈っております.舟木俊成(ふなき・としなり)1998年順天堂大学医学部附属順天堂医院眼科臨床研修医1999年佐久市立国保浅間総合病院眼科2000年順天堂大学大学院医学研究科外科系眼科学専攻課程入学順天堂大学医学部眼科学講座勤務2004年順天堂大学大学院医学研究科外科系眼科学専攻課程卒業順天堂伊豆長岡病院眼科助手2005年順天堂大学医学部眼科学講座助手2006年順天堂大学医学部眼科学講座臨床講師2007年順天堂大学医学部眼科学講座准教授ハーバード大学眼科留学現在に至る(78)▲一瀬白帯教授を囲んでの親睦会☆☆☆

時の人 久保田 敏昭 先生

2009年11月30日 月曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,20091515(75)大分大学医学部の前身は,昭和 53 年に創立された大分医科大学で,眼科学教室は翌昭和 54 年に初代教授・山之内夘一先生により開講された.山之内教授は無からの出発でご苦労も多かったと推察されるが,そうした中で単眼倒像鏡アルゴンレーザー光凝固機を考案された.その後を受けて,平成 3 年に助教授から第 2 代の教授に昇任された中塚和夫先生は,網膜の電気生理学の領域で学会をリードしてこられ,その間,平成 15 年に国公立大学の統合・再編の施策により大分大学医学部眼科学教室と改称された.そして,本年 7 月に久保田敏昭先生が第 3 代の教授に就任された.教室の伝統として,網膜疾患の臨床と研究があげられるが,久保田先生自身も網膜硝子体疾患を専門の一つとされており,当然その伝統を引き継いでいかれることになる.尚,前教授の中塚先生が野球部の顧問であった関係からか,現教室員には野球部出身者が多く,毎年の医局対抗野球大会では優勝争いの常連とのことである.*久保田先生は昭和 57 年に九州大学を卒業.平成 2 年から 4 年までドイツのエルランゲン・ニュルンベルグ大学眼科学教室にフンボルト奨学研究生として留学,ナウマン教授に師事された.平成 4 年に九州大学に戻り,平成 11 年には長崎県大村市の長崎中央病院(現:国立病院機構長崎医療センター)の眼科医長として赴任.平成16 年の産業医科大学眼科助教授(現:准教授)への異動を経て,今回,大分大学眼科学教室教授に迎えられた.エルランゲン・ニュルンベルグ大学留学時代は緑内障の病理学研究で実績をあげられ,ナウマン教授の名著「Pathologie des Auges」の緑内障,視神経の項の翻訳も担当された.帰国後は緑内障と網膜硝子体疾患の診療,研究面で多くの実績をあげられ,さらに特筆すべき点として,乳頭周囲網脈絡膜萎縮,落屑緑内障,ステロイド緑内障,血管新生緑内障の病因に関する研究,および緑内障手術成績の報告,硝子体手術の新しい薬剤の応用に関する臨床研究があげられる.長崎医療センターは長崎県の県中央地区の基幹病院で,その地区の難疾患の多くを診療する関係上,幅広い臨床経験が必要とされることから,その修練の機会を得られたほか,NIC のベッド数が県下一で,未熟児網膜症の治療経験も培われた.この時期には又,緑内障手術,硝子体手術,バックル手術など多種類のクリニカルパスを眼科において早期に導入し,学会や論文にて報告された.今後も眼科臨床は幅広く行い,教室としてもそれぞれの専門医を育てて,大分県,および近隣の紹介を受けるすべての患者さんに対応できる眼科をつくること,さらに専門としている緑内障, 網膜硝子体疾患には特に力を注ぎ,新しい情報発信をしていくことを目指しておられる.*地方においてはオールマイティな臨床能力を求められる.そこで,先生はこれまでご自身が受けてこられた「臨床においては,基本的な疾患は診断,治療ができ,その上で専門を少なくとも一つは作る」という教育方針を継承し,そうした要請に対応できるようにすることを目標とされている.手術に関しては,先生ご自身,最近では緑内障手術,バックル手術,硝子体手術,白内障手術を中心に年間 500 例ほどの手術での執刀,助手に入っておられる.そして,「緑内障手術や硝子体手術ができる手術医をできるだけ多く育て,又,大分大学のスタッフおよび大学以外の基幹病院の医長クラスとなる医師をできるだけ多く育成していきたい」とおっしゃる.*先生は学生時代,卓球.テニス,スキーなどのスポーツに親しんでおられたが,今は,年に 1 回ご家族でスキーに行かれる程度とのこと.ここ数年は仕事が趣味のような生活ながら楽しんで仕事ができており,モットーは“楽しんで仕事をする”とのことである.0910-1810/09/\100/頁/JCOPY人の時大分大学医学部眼科学・教授久く保ぼ田た敏とし昭あき 先生

インターネットの眼科応用 10.インターネットがもたらす医師-患者関係

2009年11月30日 月曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,200915130910-1810/09/\100/頁/JCOPY医療界の情報革命インターネットがもたらした社会の変化を情報革命と表現します.この,情報革命を正しく理解しないと,インターネットを用いた遠隔医療は具現化しません.前号で,電話や書物などのメディアを使った遠隔医療に比べて,インターネットを用いた遠隔医療は事業として継続しにくい,と紹介しました.その要因は技術的な問題以外に,大きく分けて 3 つあります.1. アクセスの容易性基本的に日本の医療施設はフリーアクセスであるため,インターネットのフリーアクセスの優位性が相対的に低くなります.また,日本はアメリカほどの国土をもちませんので,医療受益者は,受診行動に移す前の施設検索にインターネットを利用しますが,実際の医療行為をネットで完結させようとは希望しません.2. 医療リテラシーの格差医療に関して,スキルを臨床現場で習得した専門家同士の会話はスムーズです.しかし,一般書やインターネットで医療知識を学習した程度の非専門家との間には,医療リテラシーに差が大きく,会って話す以上の情報をネットで伝えるのは困難です.微妙なニュアンスをインターネットでは伝えることができません.医療を体験としてでなく,情報として学んだ非専門家には「医療の不確実性」はなかなか理解できないのでしょう.3. 事業性保険制度は対面診療を基本にしていますので,対面しない健康指導は保険制度内では課金できません.インターネットによる医療・健康相談は,保険制度の対象外であり,一部の医師が患者サービスの一環として提供するケースが多いようです.インターネット上の医療情報サービスは,単独では課金しにくいのが現状です.例外は「家庭の医学」の携帯サイトです.健康情報を扱うメディアとしては異例の高収益をあげています.医療者と患者をインターネットで繋ぐ遠隔医療には,さまざまなハードルがあります.本稿では,医療情報がインターネット上に氾濫したことが,医師-患者関係にもたらした影響について,産業界全体の潮流からほぐしていきたいと思います.インターネットが登場し,特に Web2.0 とよばれる時代になり,顧客とサービス提供者の関係性が逆転した,と言われています.これを,農業革命,産業革命に続く,第三の革命として,「情報革命」と表現します1).インターネットが登場する前の時代を思い出してください.たとえば,本を購入したい人は本屋に行きます.商品は,本屋や問屋が供給しないと店頭に並びませんので,消費者は,生産者が提供するもののなかから選択するしかありません.ところが,今では,Amazon.comを利用すれば,どんな珍しい書物も探し出し購入することができます.インターネットは「繋ぐ」達人だからです.世界中のどんな点と点をも結ぶことができます.すると,サービスを提供する側が優位だった時代から,サービスを受ける側が優位な時代になりました.あらゆるモノがネットで購入できるようになりました.これは,どの業界においても共通した潮流です.つまり現代は,医療者がネットショッピングで医療機器を購入できる時代です.が,現実化していないのは,生産者(メーカー,卸業者)が消費者(医師・医療機関)よりも優位でいようという,強いアナログな意志があるからでしょう.一部の海外の眼内レンズはインターネット上で購入できます.いずれ,医療機器のネットショッピングが当たり前の時代になるでしょう.情報革命の潮流を臨床の現場に置き換えると,どうなるでしょう.医療を生産・提供する側(病院・医師)が優位だった時代から,医療を受ける側(患者)が優位な時代になります.まさに現代がその真っただ中です.臨床の現場でしばしば経験する状況を紹介します.われわ(73)インターネットの眼科応用第10章インターネットがもたらす医師-患者関係武蔵国弘(Kunihiro Musashi)むさしドリーム眼 科シリーズ⑩———————————————————————- Page 21514あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,2009れは,ステロイドの使用に非常にナーバスになる,患者もしくはその家族にしばしば遭遇します.おそらくはインターネットからの情報でしょう.インターネット上に医療情報が散乱し,整理されておらず,また格付けがされていないため,医療の現場において,治療に何が重要なのかが忘れられ,副作用と向き合うリスクが避けられるようになり,現場と無縁な世界に治療の意思決定が委ねられます.とはいえ,無秩序なインターネットの世界にも一つの方向性が示されました.Google の取り組みを一つ紹介します.Google health とよばれる,健康管理ツールです.健康意識の高い個人が,自らの健康情報を医療機関を通さずに管理できるようになりました2).このような健康情報の取扱い方法を,PHR(Personal Healthcare Record)といい,日本の経済産業省も事業化の支援をしています3).この羅針盤の先には,医療の主体が,医師から医療を受ける患者にシフトする世界があります.これは,ネットがもたらした大きな変化です.情報革命とよばれる,生産者と消費者との間の関係性の変化は,医療サービスに限らずどの分野でも起こっていますので,われわれ医療界も受け入れなければなりません.健康は患者自身で管理する時代になり,医師は患者の健康情報の管理を委託されている立場となり,患者が医師を選びます.われわれ医療者には,カルテは患者のモノ,という謙虚さが求められます.しかしながら,医療情報は医療者が上流となって発信すべきです.21 世紀の医療者は,学会の場で医療界に発信するだけでなく,インターネットを使って生活者に発信しないといけません.では,医療界が情報革命を許容し,この奔流に柔軟にかつ主体的に対応するには,具体的に何をすればよいか.私は二つの方法がある,と考えます.これらを事業として継続できれば,医療界は情報革命に大きな楔を打ち込めます.① 医療者が,インターネットに散乱する医療情報の格付けをします.② 医療プロフェッショナル向けの情報を,インターネット上の閉じた空間で共有し,医療者の医療知識の底上げを図ります.いくら情報革命とはいえ,プロとアマチュアの知識差がインターネットのみで埋まるはずがありません.医療行為はアナログですが,医療情報はデジタルです.医療行為だけではなく医療情報も,医療界が上流となって発信し,ときにはストックして共有し,質を保って世の中(74)に広げましょう.医療者からの情報発信メディペディア「Medipedia」(図1)は,世界最大のフリー百科事典 Wikipedia4)の思想から生まれた,医療者が共同執筆するウェブ医学事典です.Wikipedia と異なり,執筆者を医療者に限定していることが特徴です.NPO 法人 MVC メディカルベンチャー会議が管理・運営しています.医療者がインターネットを通じて発信する医療情報の集合体が,インターネット上に散乱する医療情報に,少しでも方向性を示せれば, と願っています.【追記】NPO 法人 MVC(http://mvc-japan.org)では,医療というアナログな行為と眼科という職人的な業を,インターネットでどう補完するか,さまざまな試みを実践中です.MVC の活動に興味をもっていただきましたら,k.musashi@mvc-japan.org までご連絡ください.MVC-online からの招待メールを送らせていただきます.先生方とシェアされた情報が日本の医療水準の向上に寄与する,と信じています.ウェブ医学事典 Medipedia では,執筆者を募集しております.こちらも併せてご協力いただければ幸いです.文献 1) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%83%85%E5%A0%B1%E9%9D%A9%E5%91%BD 2) http://www.computerworld.jp/topics/google/108389.html 3) http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/iryou/kaisai_h20/dai2/siryou4.pdf 4) http://ja.wikipedia.org/wiki/図 1Medipediaのトップページ

硝子体手術のワンポイントアドバイス 78.硝子体嚢腫に対する硝子体手術(初級編)

2009年11月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.26,No.11,200915110910-1810/09/\100/頁/JCOPYはじめに硝子体胞(vitreouscyst)は,先天性,後天性を含めても比較的まれな疾患である.本疾患は自然消失例も報告されているが,視力障害をきたす症例に対してはレーザーによる破術(photocystotomy)や硝子体手術が適応となる.筆者らは,過去に巨大な硝子体腫の1例に対して硝子体手術を施行した経験がある1).例76歳,男性.約10年前より右眼の視力低下および霧視を自覚するも放置していた.右眼矯正視力は(0.1).右眼の硝子体腔内に可動性のある腫を認めた(図1).腫は硝子体腔内の眼軸領域に存在し,半透明で後方には網膜血管が透見できた.超音波Bモード検査では,腫は直径約7mmで可動性があり,その内部は硝子体と同様の反射率を有していた(図2).眼球運動によって腫は硝子体腔内を移動し,眼球の静止とともに眼軸領域にて停止した.YAGレーザーによる腫破術を考慮したが,腫が巨大なため腫壁が硝子体混濁として残存する可能性を考え,白内障も合併していたため白内障と硝子体の同時手術を施行することにした.水晶体切除術,眼内レンズ挿入術を施行した後,硝子体切除を施行した.腫は無茎性で硝子体腔内で可動性を有しており,その表面には軽い凹凸があり腫壁には一部菲薄化した部分と色素沈着が認められた(図3).硝子体カッターでの切除を試みたが,腫の可動性が大きいため,顕微鏡同軸照明下に硝子体鑷子で腫を固定させ,硝子体カッターを用いた双手法で切除した.破と同時に腫は縮小し,腫壁を硝子体鑷子で強膜創から摘出した.術後,右眼矯正視力は(1.0)に改善した.摘出病理所見から本症例は毛様体上皮由来の先天性巨大硝子体腫と考えられた.子体手術の適応と硝子体腫は著明な飛蚊症,視力障害を有する場合に(71)治療の対象となるが,一般にはアルゴンレーザー,YAGレーザーで破させるphotocystotomyが行われている.過去の報告ではphotocystotomyを行った腫の直径は,5mm程度のものが多い.本症例では,直径7mmと巨大であったため,photocystotomyを施行すると硝子体混濁が残存する可能性があったのと,白内障手術の適応があったため,硝子体手術と白内障の同時手術を選択した.本症例の腫は硝子体腔内で可動性が大きく,腫壁を病理組織として摘出するには,硝子体カッターと硝子体鑷子による双手法が有用であった.文献1)中村貴子,廣辻徳彦,神原裕子ほか:硝子体手術を施行した巨大硝子体腫の1例.眼科手術14:235-237,2001硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載78 硝子体腫に対する 硝子体手術(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図1右眼の術前眼底写真硝子体腔内に可動性のある無茎の腫を認めた.図3硝子体手術の術中所見腫の表面には軽い凹凸があり,一部菲薄化した部分と色素沈着が認められた.2右眼の術前超音波Bモード写真腫は直径約7mmで可動性があり,その内部は硝子体と同様の反射率を有していた.

眼科医のための先端医療 107.網膜にやさしい光線力学的療法

2009年11月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.26,No.11,200915070910-1810/09/\100/頁/JCOPY最近の加齢黄斑変性治療での加齢黄斑変性治療のにでの光線力学的療法のに療法のにししにでででの加齢黄斑変性治療にい力やの性さのし治療さしのをにの的に治療をのにいのし療法の併用療法光をでの併用をしいでの欠点にいのをで薬剤併用にしいのをでしので本でしいいPDTの欠点光性でをし薬剤脈絡膜にしでのを光化学をさをし的にをさいいししに部にしの脈絡膜の的にをしいいの的加さののにさ黄斑部局所網膜電図を用い後の変化の黄斑機能にをしし後に性の黄斑機能の化後でににしいいをし図1).また,PDTによる脈絡膜還流低下が強いほど,この黄斑機能の悪化も強いこともわかりました4).薬剤併用PDT後の黄斑機能にの用にのをでををのにしをに黄斑部局所網膜電図のをいしのので後の黄斑機能の化で治療の黄斑機能さしさにをにしのを併用後の黄斑機能の化さにに黄斑機能の◆シリーズ第107回◆ 眼科医のための先端医療 =坂本泰二山下英俊石川浩平(名古屋大学医学部眼科学教室)網膜にやさしい光線力学的療法2221122療113PDT単独b波a波?V2.72.21.71.20.70.2治療前1週1カ月3カ月**ベバシズマブ併用b波a波?V2.72.21.71.20.70.2治療前1週1カ月3カ月トリアムシノロン併用b波a波?V図1黄斑部局所網膜電図振幅の変化*p<0.05,**p<0.01(Wilcoxonsigned-ranktest).———————————————————————-Page21508あたらしい眼科Vol.26,No.11,2009みられました.薬剤併用PDT後の脈絡膜循環でにでの後に脈絡膜の的変化いしに薬剤を併用に薬剤の脈絡膜循環のにいをいのにやを併用しの部の脈絡膜のでで後の治療加の性しいをし薬剤の役割の薬剤併用のに脈絡膜のでので黄斑機能し治療で治療のしに後のに脈絡膜のにや加しので後変部の加し黄斑機能さ薬剤を併用にや後のの加黄斑機能さのののでいしし後薬剤併用の治療法しささにの治療本に加齢黄斑変性治療いささ文献1)RosenfeldPJ,BrownDM,HeierJSetal:Ranibizumabforneovascularage-relatedmaculardegeneration.NEnglJMed355:1419-1431,20062)BrownDM,KaiserPK,MichelsMetal:Ranibizumabversusvertepornforneovascularage-relatedmaculardegeneration.NEnglJMed355:1432-1444,20063)SlakterJS,DENALIStudyGroup:SUMMIT:combina-tiontherapywithvertepornPDTandranibizumabforsubfovealchoroidalneovascularizationduetoAMD.InvestOphthalmolVisSci48:E-Abstract1817,20074)IshikawaK,KondoM,ItoYetal:Correlationbetweenfocalmacularelectroretinogramsandangiographicnd-ingsafterphotodynamictherapy.InvestOphthalmolVisSci48:2254-2259,20075)IshikawaK,NishiharaH,OzawaSetal:Focalmacularelectroretinogramsafterphotodynamictherapycombinedwithposteriorjuxtascleraltriamcinoloneacetonide.Retina29:803-810,20096)HattaY,IshikawaK,NishiharaHetal:Eectofphotody-namictherapyaloneorcombinedwithposteriorsubtenontriamcinoloneacetonideorintravitrealbevacizumabonchoroidalperfusion.Retina,inpress(68)網膜にやさしい光線力学的療法を読んで学的にししので法のやのにで能にし網膜光のにをでにししし加齢黄斑変性にいいにのででんでしのので加齢黄斑の治療法のさいし加齢黄斑変性の後でののをでんでしにややしい治療法いでしし光線力学的療法に薬治療でで薬治療の力でさいの加齢黄斑変性治療にしさい薬療法でをしで治療のでにいでしの法のをにしの力いでで薬療法の力のい治療いのをに薬療法を治療法い本文に石川浩平いでののい点のを黄斑部局所網膜電図い的法でしいで学の電学的法で網膜機能を———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.11,20091509(69)した.最近,光干渉断層計などの生体観察法が急速に発展したために,網膜機能評価という学問に注目が集まっていますが,最近報告される多くの結果は,実は名古屋大学の研究グループがすでに電気生理学的方法を用いて報告しています.真に目にやさしい治療法の開発には,正確な網膜機能評価を行う必要があります.そのためには,基礎研究に裏付けられた技術が不可欠ですが,石川先生たちの技術は,世界的にも他の追随を許さない優れたものです.今後もこの技術を用いて,新しい治療法の評価開発が進むことが期待されます.鹿児島大学医学部眼科坂本泰二☆☆☆

眼感染アレルギー:角膜縫合糸浸潤

2009年11月30日 月曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,200915050910-1810/09/\100/頁/JCOPY角膜縫合糸浸潤とは,角膜上の縫合糸に認められる白色の浸潤巣を指し,角膜移植術後におもに認められる.角膜移植術の場合,発症機序として術直後の縫合糸に細胞浸潤が起こる場合と,手術後の長期経過において縫合糸から病原体が侵入して感染症が成立する場合がある.術直後の縫合糸に浸潤を生ずる場合,これが感染症の原因になるのか,菌量と関係するのかはいまだ結論が出ておらず,縫合糸に対する宿主側の免疫反応も関与していると推測される.実際,抗菌点眼薬の追加で改善することも多いが,改善しない場合にはステロイド結膜下注射で消退することもある.術後の長期経過において発症する場合は,まず縫合糸に弛緩や断裂が生じ,縫合糸が直接角膜表面に出るため,それを足場として細菌や真菌が付着して感染を起こすと考えられている.角膜移植後では弛緩した縫合糸の根元を中心に白色の浸潤巣が形成され,これを母体として,組織融解が起こり,角膜潰瘍が生じる(図1).縫合糸が緩んで,その部から細菌や真菌が侵入するが,特に真菌では,緩んだ糸が抜糸されると上皮欠損はなくなり,移植角膜片の中央や深層へと菌が移動する(逃げてい く )(図2).縫合糸に沿って広がり,宿主側の角膜中央,角膜深層に向かって感染が拡大しやすく,重症例では前房蓄膿を生じる.眼内へ移行すれば眼内炎を生じることがある1).発症時期は角膜移植後数カ月から数年であり,1 年以内は細菌,1 年以降は真菌感染が多く,また高齢者では真菌感染が多いとされる2). 膜縫合糸浸潤の起炎菌角膜移植後の縫合糸感染の起炎菌はグラム陽性球菌が多く,近年は MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が多いとされている2).緑膿菌,クレブシエラ,セラチア,モラキセラ,大腸菌といったグラム陰性桿菌,真菌との混合感染の場合もある3).真菌感染はほとんどの場合,酵母型真菌である2).起炎菌によっては縫合糸を中心にバイオフィルムを形成することがあり,これにより好中球による菌の貪食が妨げられ,また抗菌薬の病巣へ(65)眼感染アレルギーセミナー─感染症と生体防御─●連載監修= 木下茂 大橋裕一23. 角膜縫合糸浸潤奥島健太郎井出眼科病院角膜移植術後などの角膜上の縫合糸に白色の浸潤巣を認めることがある.このような浸潤巣は縫合糸浸潤あるいは縫合糸感染 suture abscess などとよばれる.特に術後数カ月以上を経て生じるものは細菌や真菌による感染であり,感染性角膜炎や眼内炎に発展する.このためわずかな浸潤巣を見落とさないよう,注意深い経過観察が必要である.図 1全層角膜移植後3カ月に生じた縫合糸浸潤縫合糸浸潤を認め,除去した縫合糸から MRSA を検出した.グラフト内に浅い潰瘍を認める(矢印).図 2全層角膜移植後6カ月に生じた縫合糸浸潤と真菌感染———————————————————————- Page 21506あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,2009の移行が不良となり,難治性になる. 膜縫合糸浸潤の治療前述したように手術後早期(1 2 週以内)の角膜縫合糸に浸潤巣を発見した場合,塩酸セフメノキシムなどの抗菌点眼薬の追加を行い経過をみる.改善しなければステロイドの結膜下注射で消退することが多い.長期の経過観察においては,定期の診察時に縫合糸の緩みや縫合糸上に浸潤巣がないか注意する.角膜縫合糸の緩みと浸潤を発見したら,縫合糸に付着した細菌を実質内にもちこまないように注意し病変部の縫合糸を除去する.除去した縫合糸に浸潤を認める場合,必ずそれを培養して病原体の有無を確認する.また角膜浸潤や潰瘍を認める場合には,擦過を行って培養と塗抹標本の検鏡を行い,グラム染色を行って起炎菌を推定する.起炎菌のうちグラム陽性球菌に対しては塩酸セフメノキシムが有効であり,陰性菌を含む広範囲にカバーするものとしてはキノロン系抗菌薬が有効である3).実際には,第 3世代キノロン系抗菌薬に塩酸セフメノキシムを併用するか,あるいは第 4 世代のキノロン系抗菌薬を用いる.真菌感染ではピマリシン点眼あるいは軟膏を用い,適宜自家調整した抗真菌薬の点眼を併用する.薬剤感受性試験の結果に応じて,治療薬を修正する.MRSA に対しては塩酸バンコマイシンの自家調整薬などを使用する1).縫合糸浸潤から感染となり重症化すると,治癒しても移植片の瘢痕化や不正乱視を生じ視力が低下する.縫合糸浸潤のうちに対処し,重症の移植後感染症に至らせないことが重要である. 内 術後の結膜輪部縫合糸浸潤近年多く行われているマイトマイシン C 併用円蓋部基底線維柱帯切除術では,房水流出を防ぐ結膜輪部縫合や濾過胞の拡大を防ぐ blocking suture が行われるが,術後早期に結膜輪部に同様の縫合糸浸潤を認めることがある.自験例では同手術を受けた 42 眼中 21 眼(50%)に術後 11 日以内に縫合糸浸潤を認めた(図3).前述のとおり術後早期のこの浸潤巣が何であるかは不明であるが,抗菌点眼薬(塩酸セフメノキシム)の追加を行い消(66)失することが多い.線維柱帯切除術後の眼内炎は約 2%に生じるとされ,短期間に眼内炎に至る.一般的には術後の長期経過のなかで生じるが,早期の縫合糸浸潤が原因となる可能性も考えられ,角膜移植後以上に注意深い観察が必要である.角膜移植後とやや異なり,濾過胞感染は表皮ブドウ球菌,黄色ブドウ球菌,レンサ球菌,インフルエンザ桿菌が原因となることが多い.まとめ角膜縫合糸浸潤は角膜移植術をはじめとする前眼部手術に生じる重要な合併症である.受診時に弛緩したり,断裂した縫合糸がないか,縫合糸に浸潤巣がないかをよく確認し,あればすぐに除去することが重要である.稿を終えるに際し,ご校閲ならびに図 1,2 の写真をご提供いただいた京都府立医科大学眼科・外園千恵先生に深謝いたします.文献 1) 松本光希:縫合糸感染.眼科診療プラクティス 101,前眼部疾患のトラブルシューティング(下村嘉一編),p113,文光堂, 2003 2) 脇舛耕一,外園千恵,清水有紀子ほか:角膜移植術後の角膜感染症に関する検討.日眼会誌 108:354-358, 2004 3) Leahey AB, Avery RL, Gottsch JD et al:Suture abscesses after penetrating keratoplasty. Cornea 12:489-492, 1993☆ ☆ ☆図 3円蓋部基底線維柱帯切除術後結膜輪部の blocking suture に縫合糸浸潤を認める(矢印).

緑内障:緑内障におけるGenome-Wide Association Study

2009年11月30日 月曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,200915030910-1810/09/\100/頁/JCOPY C と一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)近年,ヒトゲノムプロジェクトの成果としてヒトゲノム配列が明らかにされ,遺伝子もしくは蛋白質といった人体を構成する要素が明らかとされた.それ以降,ゲノム情報とその解析技術の革新は臨床医学のパラダイムを変えつつある.たとえば,「一般的な病気(common dis-ease)」である 2 型糖尿病は,ケース・コントロール相関解析から,カリウムチャンネル遺伝子の一つであるKCNQ1 遺伝子内の一塩基多型(SNP)が関係していることが明らかにされている.2 型糖尿病以外にも,心筋梗塞,慢性関節リウマチ,気管支喘息,全身性エリテマトーデス(SLE)などが,多因子疾患感受性遺伝子と環境因子が関与すると考えられている(図1).緑内障,特に原発開放隅角緑内障(POAG)に関しても,環境因子の関与や浸透率の低さなどから一般的な病気(common disease)と考えられる.イノベーションによりさらに今後新たな知見が得られることが期待されている. 内障原因遺伝子の遺伝子座1990 年代からマッピングされている緑内障原因遺伝子座 GLC1A GLC1N は,家系とマイクロサテライトマーカーという数塩基対の反復配列である,遺伝子多型マーカーを用いた連鎖解析によって見つかっている.わが国では,核家族の増加や少子化の影響で,緑内障を発症している大きい家系はなかなかみられない.症例収集がむずかしいため,日本では緑内障家系の連鎖解析はほとんど行われてきていないが,2008 年には,マイクロサテライトマーカーを用いて,常染色体 2 番の GLC1B領域に正常眼圧緑内障の候補遺伝子 NCK2 が報告された1)(図2).しかし,緑内障はその原因は多様であり,原因となる候補遺伝子は多岐にわたると考えられていることから,候補遺伝子解析は数多く行われていない. 内障とGenome Wide Association Studyヒト疾患のゲノム研究は,従来のメンデル遺伝性疾患を対象とした罹患家系の遺伝的連鎖解析から,多因子疾患を対象にした罹患集団の SNP などの多型マーカーによる関連性解析へと,近年では Genome-Wide Associa-tion Study(ゲノムワイドに SNP 多型を DNA チップで解析する関連解析)へと発展してきた.ゲノム上に最も高頻度に存在するのが,「SNP」とよばれる多型であり,最も一般的な多型である.ゲノム関連研究は,一般的な疫学研究でみられる,過去に遡ることによって起こる収集のバイアスが少ない.この手法を用いて,2005 年から 2006 年にかけて補体 H 遺伝子(CFH)の Y402H 多型とセリンプロテアーゼである HTRA1 のプロモーターの SNP が加齢黄斑変性の発症と大きく相関していることが発表された.これ(63)●連載113緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄 山本哲也113. 緑内障におけるGenome Wide Association Study布施昇男東北大学大学院医学系研究科神経感覚器 病態学講座・眼科視覚学分野ヒト疾患のゲノム研究は,近年では Genome-Wide Association Study(全ゲノムで一塩基多型を DNA チップで解析する関連解析)へと発展してきた.この手法を用いて,2007 年に LOXL1 遺伝子の一塩基多型(SNP)と落屑緑内障が関連することが報告された.治療の標準化の一方で,Genome-Wide Association Study を用いた緑内障遺伝子解析は,テーラーメイド治療への架け橋となるであろう.糖尿病心筋梗塞緑内障落屑緑内障黄斑変性図 1遺伝因子と環境因子糖尿病,心筋梗塞などが,多因子疾患感受性遺伝子と環境因子が関与すると考えられている.緑内障,特に原発開放隅角緑内障(POAG)に関しても,環境因子の関与から common diseaseと考えられる.———————————————————————- Page 21504あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,2009は全ゲノムの解析が眼科疾患の解析に大変有効であること,内科疾患に比べて SNP の変異が示すオッズ比が高いことから注目された.翌 2007 年に LOXL1 遺伝子のSNP により落屑緑内障の疾患感受性が高まることが報告された2)が,これは約 30 万カ所の SNP マーカーを測定するチップを用いた全ゲノムのタイピングであった.2009 年には,POAG 数百検体以上を用いた Genome-Wide Association Study により POAG に相関する 3 遺伝子座が発表され,これからの解析の発展が期待され る3)(図 2).緑内障に関しては,候補遺伝子検索よりは,このGenome-Wide Association Study の手法による解析が有用であると考えられる.近年,眼科領域においてはこの手法によって大きな恩恵を受けている.このスタディからわかったことは,病態(病因)が近似している疾患を集めて解析すれば,統計学的に非常に有意な差が得られるということである.ステロイド緑内障などの原因が一元的な疾患は,これからの解析のターゲットとなりうる. れからの緑内障遺伝子解析緑内障遺伝子診断を行う大きな目的の一つは,緑内障(64)発症前診断である.将来に緑内障を発症する可能性がどのくらいか,遺伝子診断が効果を発揮することになる場合もあると考えられる.緑内障の進行速度,眼圧依存度などの診断の一助になる可能性も考えられる.現在,緑内障の治療はすぐれた薬物療法,手術療法はあるが,それでもすべての緑内障の進行を食い止めることは不可能である.治療の標準化の一方で,Genome-Wide Association Study を用いた緑内障遺伝子解析は,テーラーメイド治療への架け橋となるであろう.文献 1) Akiyama M, Yatsu K, Ota M et al:Microsatellite analysis of the GLC1B locus on chromosome 2 points to NCK2 as a new candidate gene for normal tension glaucoma. Br J Ophthalmol 92:1293-1296, 2008 2) Thorleifsson G, Magnusson KP, Sulem P et al:Common sequence variants in the LOXL1 gene confer susceptibility to exfoliation glaucoma. Science 317:1397-1400, 2007 3) Nakano M, Ikeda Y, Taniguchi T et al:Three susceptible loci associated with primary open-angle glaucoma identi ed by genome-wide association study in a Japanese population. Proc Natl Acad Sci USA 106:12838-12842, 2009図 2原発開放隅角緑内障の遺伝子座おもに家系を用いた連鎖解析によって GLC1A GLC1N の遺伝子座が見つかっている.Genome-Wide Association Study による新たな遺伝子座3)を赤で,マイクロサテライトマーカーを使った解析を青で記した2).

屈折矯正手術:LASIK術後眼への多焦点眼内レンズ

2009年11月30日 月曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,200915010910-1810/09/\100/頁/JCOPY2000 年にエキシマレーザー屈折矯正手術が承認されてからほぼ 10 年がたち,国内でも屈折矯正手術の認知度は高まっている.特にここ数年は急速に laser in situ keratomileusis(LASIK)の手術件数が増加している.一方,新しいタイプの多焦点眼内レンズ(IOL)が2007 年に認可され,2008 年より先進医療として認められ,徐々に普及している.このような流れのなかで,最近,LASIK 術後の白内障患者で多焦点 IOL を希望する例にしばしば遭遇する.代表例をつぎに示す.〔症例〕47 歳,男性で,平成 15 年 1 月 8 日に他医で高度近視に対し LASIK を受けた.平成 20 年ごろより右眼視力低下を自覚し,近医にて右眼白内障と診断され,手術目的にて当科を紹介された.初診時視力は VD=0.16(0.8× 4.50 D),VS=1.0(1.2× 0.50 D)で,右眼に NS2 の白内障を認めた.瞳孔径は 2.64 mm であった.前医へ照会したところ,LASIK 術前視力は VD=0.04(1.5× 11.0 D(cyl 0.50 D Ax140°),VS=0.04(1.5× 10.5 D(cyl 0.75 D Ax160°),LASIK 術後 3カ月の視力は VD=1.5(n.c.),VS=1.5(n.c.)であった.平成 21 年 2 月 3 日に右眼白内障手術を施行し,多焦点IOL ZM900(AMO 社)+17.5 D を挿入した.術前検査にてオートケラトメータによる K 値は 37.00 D,眼軸長(A モード)28.44 mm,前房深度 3.33 mm,水晶体厚3.58 mm で,角膜形状解析の結果は図1のごとくであった.IOL度数は Camelline-Calossi 式で計算した.術後6 カ月において,右眼遠方視力は 1.0(1.5×+0.75 D(cyl 0.75 D Ax5°),右眼近方視力は 0.9(1.0×+0.75 D(cyl 0.75 D Ax5°)と良好であるが,高周波数領域においてコントラスト感度は低下し(図2),特に薄暮視においては低下が顕著であった.自覚的には「水の中にいるようにぼやけた感じ」があり,術後 6 カ月においても改善(61)屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─●連載114監修=木下茂大橋裕一坪田一男114. LASIK術後眼への多焦点眼内レンズ根岸一乃慶應義塾大学医学部眼科LASIK 術後眼に対する多焦点眼内レンズ挿入は有効ではあるが,①屈折度数誤差による眼内レンズ入れ替えや追加 LASIK の可能性,②術後視機能低下などの問題点がある.術前にはこれらの点について厳重にインフォームド・コンセントをとるべきである.特に高度近視に対する LASIK 術後眼の場合には注意を要する.図 1LASIK術後,白内障手術前の角膜形状解析結果図 2 術後3カ月のコントラスト感度検査結果(明所視,グレアなし)全体的にコントラスト感度が低下し,特に高周波数において著明に低下している.(1.5)30020010050201052B(3)C(6)D(12)E(18)空間周波数(cycles/degree)コントラスト感度———————————————————————- Page 21502あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,2009はない.LASIK 術後眼に対する多焦点 IOL 挿入に関する問題点としては,①屈折度数誤差,②視機能低下があげられる.多焦点 IOL を使用する際には,術後残余屈折異常があると眼鏡装用が必要となるため,術後の正視化が重要である.LASIK 術後眼に対しては,さまざまな計算式が報告されている1)が,いまだに決定的に精度の高いIOL 度数計算方法がない.したがって,IOL 入れ替えやLASIK 追加などの可能性について術前に十分にインフォームド・コンセントをとるべきである.LASIK 術後眼でも多焦点 IOL 挿入眼でも一般にコントラスト感度低下などの視機能低下が起こることが知られている.Alfonso らは LASIK 術後に回折型多焦点 IOL を挿入した症例の術後成績について報告し,多焦点 IOL 挿入眼では遠近の二峰性の焦点深度曲線が得られるものの,遠方コントラスト視力は,LASIK 術後有水晶体眼と比較して有意に低下することを報告している2).このような視機能低下は,光学特性上避けられないものであり,術前の説明が重要である.呈示した症例は,高度近視に対する LASIK 術後眼で,白内障手術前から高次収差の増加が顕著であったため,多焦点 IOL 挿入後のコントラスト感度低下の可能性については厳重にインフォームド・コンセントを行った.その結果として,コントラスト感度低下については「受容」され,患者満足を得ている.文献 1) Ho er KJ:Intraocular lens power calculation after previous laser refractive surgery. J Cataract Refract Surg 35:759-765, 2009 2) Alfonso JF, Madrid-Costa D, Poo-Lopez A et al:Visual quality after di ractive intraocular lens implantation in eyes with previous myopic laser in situ keratomileusis. J Cataract Refract Surg 34:1848-1854, 2008(62)☆ ☆ ☆

眼内レンズ:Malyugin ring(瞳孔拡張リング)

2009年11月30日 月曜日

コンタクトレンズ:私のコンタクトレンズ選択法(メニコン2WEEKプレミオ)

2009年11月30日 月曜日

———————————————————————- Page 1あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,200914970910-1810/09/\100/頁/JCOPY シリコーンハイドロゲルレンズ(silicone hydrogel contact lens:SHCL)は従来のソフトコンタクトレンズ(SCL)と異なり,シリコーンポリマー含量が多いほど,すなわち含水率が低いほど酸素透過係数が高くなる.含水率が低くなると乾燥しにくくなるため,従来 SCL の弱点であった,乾燥しやすさと酸素透過係数の低さが,同時に克服されることにもなる.しかし,シリコーンポリマーは親油性が高く,そのままではレンズ表面への脂質の沈着,撥水を起こす.このため,SHCL には表面加工や親水成分の添加が行われているが,それでも脂質汚れによるトラブルが起きることがある.また,低い含水率は硬さの原因にもなり,異物感や上方角膜上皮の弧状障害(SEAL),眼瞼結膜の乳頭結膜炎(CLPC)をひき起こすこともある.現在,わが国では 7 系統の SHCLが販売されているが,処方の際には,乾燥感の低減や酸素透過係数とともに,硬さ,脂質汚れの付きやすさも考慮に入れたバランスの取れた選択を行う必要がある. 例19 歳,男性.両眼とも 9.0 D の強度近視.従来素材の 2 週間交換 SCL を使用していたが,パソコン作業を行うと乾燥して頻繁に点眼が必要になる,使用期間の後半になるとくもりやすくなるという訴えのため,処方を変更することにした.強度近視のため,長時間使用することが多いことも考慮して,最も含水率が低く,酸素透過率が高く,強固なプラズマコーティング処理によって汚れに強い SHCL「A」を処方した.乾燥感は減少し,球結膜充血も軽減したが,本人は装用感が気になるため,やはり点眼回数が多いということであった.慣れを待って経過観察を行っていたが,レンズの交換時期近くになると軽度の SEAL が右眼に発現した.自覚症状はなく,矯正視力も良好であったが,異物感の訴えも改善しなかったため,SHCL のなかで最も含水率が高く,柔(57)軟な 2 週間交換 SHCL「B」(親水成分含有,表面処理なし)に処方を変更した.異物感の訴えは即座に解消し,点眼回数も著明に減ったが,装用 2 週目,特に 10 日目から乾きやすくなるという訴えで再来した.両眼ともレンズ前面に汚れ(図1)が認められ,汚れによる異物感とくもりが「乾燥感」の原因であると考えられた.残っているレンズを 1 週間ごとに交換して使用させたところ,その間は乾燥感の訴えもなく,好調であった.そこで,含水率が SHCL「A」「B」の中間であり,プラズマ表面処理を施されている「メニコン 2WEEK プレミオ(以下,プレミオ)」の試験装用を行った.異物感の訴えはなく,12 日目の再診時にもレンズ表面に汚れ,くもりは認められなかった.本格的な処方に移り,6 カ月経過した現在でも乾燥感の訴えはわずかであり,2 週間使用後のレンズと新品レンズの装用感の差もほとんど感じないとのことであった.SEAL,CLPC の発生は認めていない. 察 2に示したように,SHCL は含水率が低いほど硬く稲葉昌丸稲葉眼科コンタクトレンズセミナー 監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純 私のコンタクトレンズ選択法305. メニコン 2WEEK プレミオ 1脂質沈着と考えられる汚れSHCL「B」の装用 10 日目.前面中央部の塊状,膜状の汚れとともに,光学部の境界と推測される周辺部にも輪状の汚れが沈着している.———————————————————————- Page 21498あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,2009(00)なる傾向がある.含水率の低さは高い酸素透過係数,乾燥しにくさをもたらすが,硬さによる問題にもつながる.今回の症例では SHCL「A」では硬さによる異物感が改善せず,硬さの関連も考えられる軽度の SEAL がみられたため,含水率の高い SHCL「B」に変更したが,表面処理がないこともあって脂質汚れによる問題が生じてしまった.多目的用剤を用いて毎回丁寧にこすり洗いし,十分なすすぎをさせるという選択もあるが,それでも脂質汚れが付着するケースが,若年男子に多い印象がある.また,レンズケアが不確実な使用者の場合には,消毒力がこすり洗いに依存しない,過酸化水素剤やポビドンヨード剤を選ばざるを得ない.このように,柔軟だが汚れにくい SHCL を処方したい場合,中庸の含水率を有し,表面に高度なプラズマ処理を施しているプレミオ(図3,表1)は好適な選択肢となる.乱視用バージョンも年内には登場すると聞いている.ところで,SCL の汚れをチェックするためには,なるべく長期間使用した状態,たとえば 2 週間交換 SCLであれば 2 週間目に入ってから,できれば 10 日目以降に来院させる習慣をつけるとよい.同時に使用期間終了時の SCL と,新品 SCL で装用感に違いがないかも確認しておきたい.順調に使用されている SCL であれば,両者の間に大きな差はないはずである.表 1メニコン2WEEKプレミオの仕様装用方法含水率ベースカーブ直径中心厚( 3.00D 時)球面度数Dk*1Dk/t*2( 3.00 D 時)2 週間交換 終日装用40%8.3 mm, 8.6 mm14.0 mm0.08 mm 0.25 D 10.00 D129161*1 酸素透過係数: ×10 11(cm2/sec)・(ml O2/ml×mmHg).*2 酸素透過率: ×10 9(cm/sec)・(ml O2/ml×mmHg).1.61.41.21.00.80.60.40.2↑硬い2030405060含水率(%)メニコン2WEEKプレミオ従来素材SCL図 2 シリコーンハイドロゲルレンズの含水率と硬さの関係含水率が低いほど,酸素透過性は高く,乾燥しにくくなるが,レンズが硬くなる傾向がある.図 3メニコン 2WEEK プレミオの表面従来の表面プラズマ処理 SHCL(左)と比較すると,プレミオ(右)の表面のほうがより緻密で滑らかなことがわかる.