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角膜錆輪を覆う上皮にみられる細胞死の組織学的研究

2009年3月31日 火曜日

———————————————————————-Page1(97)3790910-1810/09/\100/頁/JCLS45回日本眼感染症学会原著》あたらしい眼科26(3):379385,2009cはじめに1972年Kerrら1)が発表したアポトーシスは,生理的に生じる不要細胞や病理的に生成される傷害細胞を積極的に排除する機構で,細胞の形態変化を伴う現象である.しかしこの形態変化は数分間で終了するためヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)を施した組織切片にアポトーシスがみつかることはまれである.アポトーシスの検索には,その本質がDNAのヌクレオソーム単位での断片化であることを踏まえて,当初から組織切片に特殊な染色を施して検鏡するのが一般的である2,3).今回角膜鉄粉異物のHE染色切片を検鏡していて,錆を貪食した上皮細胞にアポトーシスが多発する現象を発見する機会に恵まれたので報告する.I方法外傷後72時間以上を経過した角膜鉄粉異物症例(45歳,男性)から摘出した上皮層錆輪と,外傷後約30時間経過の角膜鉄粉異物症例(46歳,男性)で初回の角膜鉄粉異物摘出術で実質層錆輪を取り残し2週後に再摘出した残存錆輪を覆う増殖上皮を試料にした.2症例とも摘出した錆輪を研究材料とすることの了解を得た.切片作製の手順は既報で詳述した4).切片はHE染色と錆を特異的に染色するPerls染色を施した.上皮層錆輪は連続切片のうち錆輪の中央部分の1枚を示した.〔別刷請求先〕松原稔:〒675-1332小野市中町275-1松原眼科医院Reprintrequests:MinoruMatsubara,M.D.,MatsubaraEyeClinic,275-1Naka-cho,Ono-shi,Hyogo-ken675-1332,JAPAN角膜錆輪を覆う上皮にみられる細胞死の組織学的研究松原稔松原眼科医院HistologicalStudyofEpitheliumCellDeathwithCornealRustRingMinoruMatsubaraMatsubaraEyeClinic角膜鉄粉異物が起こす細胞死を研究した.鉄粉異物周囲の上皮と取り残した錆輪を覆う増殖上皮から連続切片を作製,ヘマトキシリン・エオジン染色とPerls染色を施し,錆に接触した細胞に起こる変化を光学顕微鏡で調べた.錆輪を覆う増殖上皮では錆を貪食した細胞はネクローシスを起こさなかったが,核クロマチンの凝縮と断片化が起こり細胞質が縮小して隣接細胞との間に大きな間隙をつくった好酸性円形のアポトーシス細胞と,細胞質がくびれちぎれたアポトーシス小体が全細胞の4.1%にみられた.これらの細胞では核断片化数と細胞質細分化数が3以上の細胞が55%を占めた.アポトーシスを起こした細胞は細胞内にPerls染色に染まる顆粒を含み,細胞分裂の多い場所に一致して発生し,対をなすことから錆を貪食した細胞が分裂を始めるとアポトーシスを起こすと推測した.Weexaminedtheepitheliumsurroundingacornealironforeignbodyandtheepitheliumcoveringthecornealrustringremainingafterextraction.Specimenswereexaminedbylightmicroscopyafterstainingbyhematoxylin-eosinandPerlsstain.Intheepitheliumcoveringtherustring,cellssurroundthelamellawhichrustdeposited,anddidphagocytosis,butdidnotdevelopnecrosis.Nuclearchromatinandcytoplasmcondenseshowingtheacidophil,andcreatedalargegapbetweenthecells.Inthesecellsthenucleifragmented;membrane-boundcellsandapop-toticbodieswereobserved.Nuclearandcytoplasmiccondensationandapoptoticbodiesareobservedin4.1%ofcells;55%ofthesecellshad3ormoreofthenuclearorcytoplasmicfragmentation.Thecellwhichcausedapopto-sisincludedaparticledyedintracellularlywithPerls’stain,andweagreedinmanyplacesofmuchmitosis,andapairisbecome.Presumably,apoptosisresultedwhenthecellsthatphagocytizedrustbegantodivied.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)26(3):379385,2009〕Keywords:細胞分裂,アポトーシス,ネクローシス,角膜鉄粉異物,角膜錆輪.celldivision,apoptosis,necrosis,cornealironforeignbody,cornealrustring.———————————————————————-Page2380あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009(98)残存錆輪を覆う増殖上皮は連続切片1020枚を載せたプレパラート15枚を作製し,各々から傷や皺のない切片を1枚選び,15枚の顕微鏡写真を印画紙に焼き付けた.写真からアポトーシスを起こした細胞(以下,アポトーシス細胞と略す)と上皮細胞を数え,切片の面積,切片の長さと厚さの最大値,実質層錆輪(錆の沈殿したラメラ)の面積と増殖上皮に接触する長さを計測し,Pearson積率相関係数を計算して表1に示した.アポトーシス細胞の定義は,核クロマチンが凝縮して核が小さくなること,核が3個以上になること,細胞質が縮小して丸くなり隣の細胞との間に間隙ができること,くびれて細分化した細胞数が3個以上になることのうち2つ以上の条件を満たす細胞とした(図1).HE染色の光学表1錆輪を覆う増殖上皮の様相切片番号ア細胞数総細胞数切片面積切片の長さ切片の厚さ錆輪面積錆輪の長さ111291774047936368252703034721133034031137350063412412737141956185069418843281545767967771200734376307041,10083821344422735691929839226744068256749258552652751993365580071021644248102764683673622521197111954869769420041322121751860066717061227132546757561316112540614163714674611245428215622930040311116140平均2150766865317454331Pearson積率相関係数対ア細胞数0.930.880.810.800.190.34対総細胞数0.970.940.930.060.33ア細胞=アポトーシス細胞.面積:100μm2.長さと厚さ:μm.図2アポトーシス細胞と隣接細胞との関係(HE染色,バー:10μm)a:a型.アポトーシス細胞が液胞の中央に配置.b:b型.液胞の壁の一部が隣接細胞と接触.c:c型.アポトーシス細胞が隣接する.abcab図1アポトーシスの条件(HE染色,バー:10μm)a:核クロマチン凝縮,偏在,断裂.b:細胞縮小で隣接細胞間に間隙発生,細胞質がくびれて細分化.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009381(99)顕微鏡切片では細胞分裂像と鑑別がむずかしいため,核と細胞質の数を3個で区切った.総細胞数は核の数で代用した.15枚のプレパラートから傷や皺のない切片86枚を選び,その顕微鏡写真を印画紙に焼き付けてアポトーシス細胞の核の断片化数と細胞質の細分化数を数えた.さらにアポトーシス細胞と隣接細胞との関係を3つに分類して核数と細胞数との関連を調べた.縮小した細胞が単一液胞の中央にあるのをa型(図2a),形態的に異なる隣の細胞と壁の一部で密着しているのをb型(図2b),2個のアポトーシス細胞が密着しているのをc型(図2c)とした.アポトーシス細胞の核の数を縦に細胞質の数を横に取り表2に示し,さらにa型,b型,c型の数を示した.アポトーシス細胞の顕微鏡写真を同じ様式で示した.II結果1.角膜上皮層錆輪の上皮細胞にみられる細胞死(ネクローシス)(図3)長径120μmの大きな水疱を1020μm幅の錆が囲む.水疱内壁に腐蝕して直径が数μmの球になった鉄が虫食状に残り,水疱内部には周辺では密に中央では粗に錆が広がる.水疱内径は細隙灯および実体顕微鏡写真の鉄粉の大きさに一致するので,最初は水疱全体が鉄であったことが推測できる.水疱の下方には錆で縁取られた大小不同の水疱が並び,水疱には細胞の残滓と錆が含まれる.形の残っている細胞では細胞膜に錆が数珠状に並び,形の崩れた細胞は核が崩壊,表2錆輪を覆う増殖上皮にみられるアポトーシス細胞の核断片化数と細胞質のくびれ細分化数細胞質のくびれ細分化数123456以上計核断片化数0a10a6a7a3a3a6a3579b6199b89125b11474b6728b2323b14428b3686.4%c88.1%c410.2%c46.0%c42.3%c21.9%c334.9%c251a45a13a16a10a4a1a89207b15189b73149b13187b7433b298b7573b46516.9%c117.3%c312.2%c27.1%c32.7%c0.7%c46.7%c192a14a17a5a2a2aa4036b2146b2724b1714b128b57b5135b872.9%c13.8%c22.0%c21.1%c0.7%c10.6%c211.0%c83a3a4a1a2aaa109b614b109b87b51b11b141b310.7%c1.1%c0.7%c0.6%c0.1%c0.1%c3.3%c04a3a2a1a1a1aa813b93b14b32b11b2b225b161.1%c10.2%c0.3%c0.2%c0.1%c0.2%c2.0%c15以上a7a3aaaa5a1512b57b4bbb5b24b91.0%c0.5%cccc0.4%c2.0%c0計a82a45a30a18a10a12a197356b253258b204311b273184b15971b5846b291226b97629.0%c2121.0%c925.4%c815.0%c75.8%c33.8%c5100.0%c53枠内の数値とa,b,cの数値はアポトーシス細胞数.%はアポトーシス細胞総数に対する百分率.図3上皮層錆輪周囲の上皮細胞に起こるネクローシス(HE染色,バー:50μm)———————————————————————-Page4382あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009(100)細胞質は溶解して残滓を残し,細胞膜に沈殿した錆がわずかに残る.2.残存錆輪を覆う増殖上皮に起こる細胞死(アポトーシス)(図4)図4の写真は残存錆輪を覆う増殖上皮のほぼ中央の切片である.左に向かって上皮が伸び先端は折り返している.左半分には不規則に破断した実質層錆輪が残る.右半分では3重になった増殖上皮の間にわずかに錆輪が残る.錆輪に接した一部の細胞は核クロマチンが凝縮,細胞質が濃縮して好酸性を示す(f).ほとんどの細胞は貪食した錆を細胞質内に含みながら形態的な変化を起こさない(g).これらの細胞は増殖する細胞に押されて錆輪から離れ,78細胞列離れた位置で,核クロマチン凝縮と細胞質縮小で円形になり強い好酸性を示し,隣の細胞との間に間隙をつくる(a).核の断片化と細胞質のくびれを起こし(b),アポトーシス小体に至る(c).これらのアポトーシス細胞は増殖上皮表面から排出される(d).アポトーシス細胞は錆を含むが,その隣で錆を含まない細胞の分裂像がみられる(h,i).錆輪の貪食が終了したあとに進入した上皮細胞は活発に分裂するが,アポトーシスは起こさない(e,j).3.残存錆輪を覆う増殖上皮の様相(表1)アポトーシス細胞数は全細胞数の4.1%を占める.アポトーシス細胞数は総細胞数に強い相関を示し,残存錆輪を覆う増殖上皮にみられるアポトーシスが細胞自体に起因する現象であることを示唆する.総細胞数は面積に強い相関を示す.図4錆輪を覆う上皮細胞に起こるアポトーシス染色法無記載はHE染色.バー:弱拡大(×40)100μm.強拡大(×100)10μm.強拡大写真aeの出所は□で示す.fjの出所は隣接切片のため該当部位を○で示す.a:核クロマチン凝縮・偏在.b:細胞質がくびれて細分化.c:アポトーシス小体.d:アポトーシス細胞の排出.e:錆を含まない細胞の分裂.f:錆輪に接触した細胞のアポトーシス.g:錆を貪食したした細胞.矢印は錆.Perls染色.hi:錆を含む細胞のアポトーシス,隣に錆を含まない細胞の分裂.矢印は錆.h:Perls染色.j:錆の貪食終了跡に進入した細胞の分裂.fgbahidejcafghijbcde———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009383(101)4.残存錆輪を覆う増殖上皮にみられるアポトーシスの形と数(表2,図5)核1個と細胞1個のアポトーシス細胞が最も多く全体の16.9%を占め,核1個と細胞3個が12.2%,核0個と細胞3個が10.2%で,残りは10%以下である.細胞分裂の可能性のある核が1個か2個,好酸性の細胞質が1個か2個の細胞は全アポトーシス細胞の45%で,核と細胞質が3個以上の細胞が全アポトーシス細胞の55%を占める.a型は核2個図5a核断片化数0,細胞質のくびれ細分化数:上段1~5,下段6以上(HE染色,バー:10μm)図5b核断片化数1,細胞質のくびれ細分化数:上段1~5,下段6以上(HE染色,バー:10μm)図5c核断片化数2,細胞質のくびれ細分化数:1~5(HE染色,バー:10μm)———————————————————————-Page6384あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009(102)と細胞1個のアポトーシス細胞では39%を占め,核2個と細胞2個のアポトーシス細胞では37%を占めた.全体でみるとa型は16%,b型は80%,c型は4%で,84%のアポトーシス細胞が隣の細胞と対をなしている.III考按錆に触れた細胞にみられる細胞死にはネクローシスとアポトーシスがある.ネクローシスは細胞膜の破壊から始まる細胞死で突然の事故死にたとえられる.ある範囲の細胞が集団で侵され,細胞膜の破綻が起こるため細胞内外の浸透圧の均衡が破れ細胞は膨化し,細胞内容物があふれ出し自己融解が起こり,炎症細胞が集まり周囲を傷害する.上皮層錆輪周囲にみられるネクローシスは,涙に包まれた鉄の表面に発生する通気差電池のカソードにNaOHが生成され,この水酸基が細胞膜の脂肪酸を鹸化して細胞膜を溶かすので,上皮層錆輪周囲の上皮細胞は融解してネクローシスが起こると考える.アポトーシスはプログラムされた細胞死で自殺にたとえられる.周囲から孤立して単独の細胞に起こる現象で,核クロマチンの凝縮,核内偏在,断片化が起こる.細胞質は縮小し強い好酸性を示し,周囲の細胞との間に間隙を作り,最後に核が断片化され細胞質が細分化されて小さな断片(アポトーシス小体)になる.このアポトーシス小体は実質組織では隣接する細胞に貪食されるが,上皮組織では表面から排出される.炎症細胞の出現はない.残存錆輪を覆う増殖上皮ではアポトーシスの全過程が存在する.生化学的検査は行っていないが,形態的特徴からアポトーシスと考える.残存錆輪を覆う増殖上皮細胞に起こるアポトーシスの発生機序を考察する.増殖上皮細胞は分裂をくり返して欠損部を充し,残存錆輪の錆を貪食する.錆を貪食した細胞は表面から排出され,同時に錆を含まない細胞も離脱落する.増殖細胞の4.1%がアポトーシスを起こすが,その細胞質内にはPerls染色に染まる顆粒や残滓がみられる.アポトーシス細胞に隣接して図5d核断片化数3,細胞質のくびれ細分化数:1~5(HE染色,バー:10μm)図5e核断片化数4,細胞質のくびれ細分化数:1~5(HE染色,バー:10μm)図5f核断片化数5以上,細胞質のくびれ細分化数:1~多数(HE染色,バー:10μm)———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009385(103)正常な細胞分裂像がみられるので,錆を貪食した細胞も細胞周期に従い同じ場所で分裂を始めたことが推測できる.アポトーシス細胞の84%は隣の細胞と対をなしており分裂の途中で変化をきたしたことを疑わせる.アポトーシス細胞は,細胞内に錆を含み,細胞分裂の多い場所に一致して発生し,細胞が対をなしていることから錆を貪食した細胞が分裂を始めるとアポトーシスを起こすと推測する.今研究ではTUNEL法によるアポトーシスの確定が将来の課題として残る.稿を終えるにあたり三重大学大学院医学系研究科ゲノム再生医学講座修復再生病理学吉田利通教授にご指導いただいたことに深く御礼申し上げます.文献1)KerrJFR,WyllieAH,CurrieAR:Apoptosis:Abasicbiologicalphenomenonwithwiderangingimplicationsintissuekinetics.BrJCancer26:239-257,19722)藤田和子:TUNEL法.アポトーシス実験プロトコール(田沼靖一監修),細胞工学別冊,p86-96,秀潤社,19983)恵口豊,辻本賀英:アポトーシス研究を支えた実験法.細胞死・アポトーシス(辻本賀英編),p28-37,羊土社,20064)松原稔,吉田宗儀,増子昇:角膜錆輪の組織学的研究.臨眼58:1957-1960,2004***

ペニシリン耐性肺炎球菌結膜炎の1 例

2009年3月31日 火曜日

———————————————————————-Page1376あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009(00)376(94)0910-1810/09/\100/頁/JCLS45回日本眼感染症学会原著》あたらしい眼科26(3):376378,2009cはじめにペニシリン耐性肺炎球菌(penicillin-resistantStreptococ-cuspneumoniae:PRSP)は,ペニシリンG(penicillinG:PCG)の最小発育阻止濃度(minimuminhibitoryconcentra-tion:MIC)が2μg/ml以上を示す肺炎球菌と定義されている.PRSP感染症は,Hansmanら1)によって,1967年に世界で初めて報告された.わが国では,1988年に報告2)されて以来,他科領域では分離頻度が増加している35).そのためPRSP感染症は,「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」において第五類感染症として登録され,全国各地でのPRSP分離状況は,行政による基幹定点把握が実施されている.しかし,わが国の眼科領域におけるPRSPに関する報告は,筆者らが知りうる限り3編68)のみである.そこで本論文では,PRSPが起炎菌であることが明らかな結膜炎症例について,その報告が少ないことに対する若干の考察を加えて報告する.I症例患者:88歳,女性.主訴:両眼の充血と眼脂.家族歴:特記すべきことなし.既往歴:数年来,両眼に鼻涙管閉塞症を伴わない慢性結膜炎があり,数種類の抗菌点眼薬投与で緩解し,起炎菌は同定されていなかった.その他,高血圧と心不全で加療中であった.現病歴:数日前から両眼の充血と眼脂を訴え,無治療の状態で平成20年2月に医療法人三野田中病院を受診した.〔別刷請求先〕江口洋:〒770-8503徳島市蔵本町3-18-15徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部感覚情報医学講座眼科学分野Reprintrequests:HiroshiEguchi,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,InstituteofHealthBiosciences,TheUniversityofTokushimaGraduateSchool,3-18-15Kuramoto-cho,Tokushima-shi770-8503,JAPANペニシリン耐性肺炎球菌結膜炎の1例江口洋*1桑原知巳*2大木武夫*1塩田洋*1田中真理子*3田中健*3*1徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部感覚情報医学講座眼科学分野*2同生体制御医学講座分子細菌学分野*3医療法人三野田中病院ACaseofConjunctivitisCausedbyPenicillin-ResistantStreptococcuspneumoniaeHiroshiEguchi1),TomomiKuwahara2),TakeoOogi1),HiroshiShiota1),MarikoTanaka3)andTakeshiTanaka3)1)DepartmentofOphthalmology,2)DepartmentofMolecularBacteriology,InstituteofHealthBiosciences,TheUniversityofTokushimaGraduateSchool,3)MinoTanakaHospitalMedicalCorporation眼脂のグラム染色像と培養結果,および臨床経過から,ペニシリン耐性肺炎球菌(penicillin-resistantStreptococ-cuspneumoniae:PRSP)結膜炎と診断した症例を経験した.結膜炎は軽度であり,セフメノキシム点眼薬で容易に治癒した.わが国においてPRSPに関する報告は少ないが,日常診療で見逃している可能性がある.結膜炎症例では,眼脂の塗抹鏡検をすべきであり,その結果本症を疑った場合,薬剤の選択には注意が必要である.Wediagnosedacaseofpenicillin-resistantStreptococcuspneumoniae(PRSP)conjunctivitisonthebasisofgramstainingofthedischarge,cultureresultsandclinicalcourse.Theclinicalsymptomsweremildandeasilycuredusingcefmenoximeophthalmicsolution.PRSPconjunctivitiscanbeoverlookedbymanyophthalmologists,whichmaybewhyfewreportsarepublishedontheconditioninJapan.Inconjunctivitiscasesweshouldexaminethedischargesmear,andwhenPRSPissuspectedofbeingthepathogen,attentionshouldbefocusedonthedrugofchoice.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)26(3):376378,2009〕Keywords:ペニシリン耐性肺炎球菌,結膜炎,眼脂の塗抹・鏡検.penicillin-resistantStreptococcuspneumoniae,conjunctivitis,smearexaminationofdischarge.———————————————————————-Page2あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009377(95)眼所見:視力は右眼(0.8),左眼(1.2),眼圧は両眼とも正常,両眼の瞼・球結膜の中等度の充血と,粘性で白色の眼脂,および軽度の眼瞼炎を認めた(図1).その他,両眼とも中等度の白内障があり,眼底には特記すべき所見は認めなかった.経過:眼脂のグラム染色(図2)では,多核白血球と,莢膜をもつグラム陽性のレンサ球菌を確認し,Streptococcus属の感染を強く疑う像であった.眼脂の培養を検査機関に依頼したところ,PRSP疑いのStreptococcus属(2+)と報告を受けた.そこで同菌を検査機関より収集し,E-testストリップ(ABBIODISK,Solna,Sweden)でPCGのMICを測図1治療前の前眼部(左:右眼,右:左眼)両眼に,粘性白色の眼脂,軽度の球結膜と瞼結膜の充血,および軽度の眼瞼炎を認める.図2眼脂のグラム染色像好中球と,莢膜を有するグラム陽性双球菌を認める.図3EtestストリップでのMIC測定一見すると阻止帯中と思われる部位にコロニーが存在する(→)ため,MICは4μg/mlであった.表1各種抗菌薬のMIC(μg/ml)薬剤CTRXPCGDOXYEMNFLXLVFXGFLXMFLXTOBGMCPIPMVCMTEICMIC1484810.250.12532840.250.50.125テトラサイクリン系,マクロライド系,アミノグリコシド系には中間,または耐性を示した.CTRX:セフトリアキソン,PCG:ペニシリンG,DOXY:ドキシサイクリン,EM:エリスロマイシン,NFLX:ノルフロキサシン,LVFX:レボフロキサシン,GFLX:ガチフロキサシン,MFLX:モキシフロキサシン,TOB:トブラマイシン,GM:ゲンタマイシン,CP:クロラムフェニコール,IPM:イミペネム,VCM:バンコマイシン,TEIC:テイコプラニン.———————————————————————-Page3378あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009(96)定したところ4μg/mlであった(図3).他の抗菌薬に対する感受性(表1)では,ノルフロキサシン以外のキノロン系やセフェム系に対する感受性は良好であったが,マクロライド系,テトラサイクリン系,アミノグリコシド系には,中間または耐性であった.眼脂のグラム染色像,薬剤感受性試験の結果,および臨床経過が合致したため,本症例をPRSP結膜炎と診断した.結膜炎および眼瞼炎は,セフメノキシム点眼薬1日4回1週間の治療で迅速に改善した.II考按他科に比べて,眼科領域でのPRSP感染症の報告が少ない理由には,以下の2点があると推測される.まず1点目は,培養時・結果報告時の見逃しの可能性があげられる.通常Streptococcus属は微好気性菌であり,培養には45%炭酸ガス培養が必要となる.検体採取後,輸送培地をそのまま静置していると,好気条件で旺盛に増殖する菌が優勢となり,検体中のStreptococcus属が確認されにくくなる可能性がある.細菌検査機関のなかには,依頼がなければ眼科の検体は好気培養しか実施しない施設もある.Streptococcus属が分離された場合でも,やはり依頼がなければPCGのMIC測定は実施しない施設が多い.2点目として,眼科医による見逃しの可能性があげられる.日常診療における軽微な結膜炎症例のなかには,眼脂の塗抹・鏡検を実施せずに,何らかの抗菌点眼薬を投与され治癒しているものが多数例あると思われるが,そのような症例のなかにPRSP結膜炎が潜んでいる可能性がある.本症例の眼脂を提出した外部委託の検査機関では,眼科からの検体について,依頼の有無にかかわらず好気培養と炭酸ガス培養を実施していた.また,Streptococcus属が分離され,ディスク法でオキサシリンの阻止円が19mm以下の場合は,「ペニシリン耐性または中間の肺炎球菌の可能性がある」との報告をしていた.さらに今回は,検体提出日に検査機関の担当者に,Streptococcus属感染症を疑っている旨を,眼脂のグラム染色像を呈示しながら直接連絡をしていたことで,スムーズな菌株収集とPCGのMIC測定ができた.したがって,本症例の早期診断には,厳密な培養と眼脂の塗抹・鏡検が必須だといえる.感染症治療の第一歩は病巣からの起炎菌の検出であり,そのためには,軽微な結膜炎であっても,眼脂のグラム染色を施行する必要があることを,本症例は表している.他科領域では,PRSP感染症は大いに臨床的意義があると考えられているが,眼科領域では,現時点で重篤なPRSP感染症の報告がないためか,その臨床的意義が少ないかのような印象を受ける.本症例も,結膜炎は重篤な印象はなく,セフメノキシム点眼薬を,1日4回点眼で1週間使用したところ,容易に治癒せしめることができた.しかしPRSPにおいて,キノロンを含め,多剤耐性化が進行しているとの報告9)があり,さらには形質転換に伴い,病原性が変化する可能性も考慮しなければならないと思われる.わが国の眼科領域では,キノロン系抗菌点眼薬が頻用されており,前記のごとく眼脂の塗抹・鏡検をせずに,キノロン系抗菌点眼薬で治癒せしめている結膜炎症例が多いのであれば,注意が必要である.また,耳鼻科領域でPRSPの分離頻度が高いことや,涙炎とPRSPに関する眼科領域の報告6,7)があることから,涙道と関連のある慢性結膜炎では,本症を念頭に置く必要がある.そして,軽微な結膜炎症例でも,眼脂の塗抹・鏡検で起炎菌の観察を試みるべきである.その際Streptococcus属による感染症を疑ったら,検査機関との連携のもとPCGのMICを測定し,PRSPであった場合,薬剤の選択には注意を払うべきと思われる.謝辞:菌株収集にご協力頂いた,三菱化学メディエンス株式会社に深謝いたします.文献1)HansmanD,BullenMM:Aresistantpneumococcus.Lan-cet2:264-265,19672)有益修,目黒英典,白石裕昭ほか:bラクタム剤が無効であった肺炎球菌髄膜炎の1例.感染症誌62:682-693,19883)岩田敏:耐性肺炎球菌感染症にいかに対処するか.3.小児科の立場から.化学療法の領域16:1285-1293,20004)高村博光,矢野寿一,末竹光子ほか:耐性肺炎球菌感染症にいかに対処するか.6.耳鼻咽喉科の立場から.化学療法の領域16:1311-1318,20005)UbukataK,AsahiY,OkuzumiKetal:Incidenceofpeni-cillin-resistantStreptococcuspneumoniaeinJapan,1993-1995.JInfectChemother2:77-84,19966)大石正夫,宮尾益也,阿部達也:ペニシリン耐性肺炎球菌による眼科感染症の検討.あたらしい眼科17:451-454,20007)今泉利雄,松野大作,神光輝:ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)による涙炎の3例.あたらしい眼科17:87-91,20008)KojimaF,NakagamiY,TakemoriKetal:Penicillinsus-ceptibilityofnon-serotypeableStreptococcuspneumoniaefromophthalmicspecimens.MicrobDrugResistance12:199-202,20069)福田秀行:Streptococcuspneumoniaeにおけるキノロン系薬の作用機序に関する遺伝子解析.日化療会誌48:243-250,2000***

眼科医にすすめる100冊の本-3月の推薦図書-

2009年3月31日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.26,No.3,20093650910-1810/09/\100/頁/JCLS過日,三宅養三先生から長年のERG研究の集大成である「ElectrodiagnosisofRetinalDiseases」の御著書をお送りいただき,先生のボストンから帰られてからのご努力と快進撃を拝見しているだけに,数々のすばらしい発見に至る過程を行間に感じつつ拝読させていただきました.普段からも研究の成果がいかにして達成されたかを私たちに熱くお話しいただく機会が多かったのですが,実際の場面での三宅先生ご自身の感動や葛藤など,もっと人間くさい部分が知りたいなと思っていたところに,本書を読む機会をいただきました.珍しい名前の本だなと思いつつも読ませていただくと,三宅先生が東京医療センター・感覚器センター所長になられてから特に親交の深かった大出尚郎,篠田啓,角田和繁,木村至の4人の先生と,ElectrodiagnosisofRetinalDiseasesを見ながらの座談会形式で話が進みます.座談会形式は言葉のキャッチボールに妙味がありますが,話し言葉のほうが大切なことが頭に入りやすく,そのうえ肝心の話よりもそれにまつわる話題,たとえば論文採用に至るまでの経緯とか,誰かが違うことを主張したがそれが間違っていたとか,自分の発表が先を越されたとか,中心となる話よりもさまざまなエピソードを交えて教えていただけ,忘れにくいという特徴があります.本書はまさにそのような一冊です.また,じっくり腰を落ち着けて本を読む時間がなくて,診療の合間合間の時間ができたときに読んでも,丁寧な図の説明と語句の解説も要所要所に入っていますので,ページを開けたところから読んでも理解できる,すなわち座談会に途中から参加しても理解できるというような不思議な本です.内容は先生がいかにして成果をあげるに至ったかの回想が中心で,特に黄斑部局所ERGの発展,そして圧巻はなんといっても夜盲の部分,名古屋大学の伝統が三宅先生によって見事に花開き,新しいclinicalentityとしての先天停止性夜盲不全型の発見のくだりで読者は知らず知らず三宅ワールドに引き込まれます.またoccultmaculardystrophyの発見と最初の患者さんを高級レストランに招待して眼底を検査させてもらったなんて,私だとちょっと引いてしまう話ですが,三宅先生は妙なこだわりなくさらっとやってのけられる.本書にはその他多くの研究の経過も書かれていますので,読者の抱えている病名不明の疾患をもう一度考えてみるのに非常によい参考書にもなると思います.本書は若い眼科医に向けた先生の期待,メッセージがふんだんに散りばめられています.これから研究を始める人,あるいは,始めているが迷いの中にある若い眼科医に勇気を与え,研究とは運・鈍・根だよと,だんだん洗脳(?)されていきます.決してくさらず,じっくり,流行に流されず,でも時代遅れでなく,一つのことを究めた先には晴れ晴れとした喜びがあるということを教えていただいているのだと思いました.そう思ってみると,本書の中程にあり本のタイトルにもなっている「臨床ERG,運・鈍・根」の部分は本当は先生がもっとも若い人に伝えたかったことだとわかります.私は三宅先生は何でも自分でやってみないと気が済まないご性格と思っていますが(それって私もそうなんですが),これは一歩間違うと若い人に嫌われる.でもリサーチマインドに溢れ,次々に成果を発表されるお弟子さんがたくさんおられるのは,先生のその姿勢は若い人に感動を与えているからだと思います.たとえ自分独りでも,あることをずっと続けるのが新しい発見につながる,外からみれば何てバカなことをやっているのかと思えることもある,でも自分のポリシーでやっていかねば新しいことな(83)■3月の推薦図書■臨床ERG,運・鈍・根三宅養三+大出尚郎・篠田啓・角田和繁・木村至著(銀海舎)シリーズ─86◆宇治幸隆三重大学大学院医学系研究科神経感覚医学講座眼科学———————————————————————-Page2366あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009んてできないですよっていうこと.それって“鈍”,“根”ですよね.新しい研究テーマは未知のことだからこそテーマになるのに,すぐに結果を求める若い人がいます.しかし,最初からわかっていることなら研究する必要がない.あくまで未知のことを明らかにしたいという意欲が大切で,それが三宅先生には楽しくて楽しくてたまらないというのが伝わってきます.こう言うと病気をおもしろおかしくみているのではという不快感につながりそうですが,そうではなく根底に患者さんへの深い思いやりを持たれて研究を進めてこられたことが多くの逸話からよくわかります.偶然から「そうだ」っていうひらめきが生まれるのも,普段からいつも網を張っていなければ運良く出るものではないので,“運”も実は努力の賜っていうことかと私は思いました.発見しても,すぐに発表するのではなく,何度でも確かめ,経過を見て確信を持てるようになって発表するという流れが読みとれます.特に論文査読の内輪話にそれが表れていますが,結局自分が間違いがないと確信すればどんどん押し通すという力強さはその念押しからくるのだと確信しました.そして,ERGの仕事は終わったとは言わせない.まだまだ新しいことが発見されずに眠っている,だから若い人よ頑張れという先生の思いがひしひしと伝わり,読み終わった後も余韻として残っています.本書はERGの研究者だけでなく,あらゆる分野の研究者に,研究の楽しさとそれに至る苦労,そして喜びを感じさせてくれる本です.多くの人に読んでいただきたいと願っています.「臨床ERG,運・鈍・根MyMemoriesof40YearsERGs」B5並製,212頁,定価6,300円(税込),2008年10月,(株)銀海舎刊.☆☆☆(84)☆☆☆

眼科専門医志向者”初心”表明14.患者さんに喜んでいただけるような眼科医を目指して

2009年3月31日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.26,No.3,20093630910-1810/09/\100/頁/JCLS今でも忘れられずにいる瞬間があります.それは小学生のとき,急に視力が下がり眼鏡が必要になりました.そして,初めて眼鏡をかけた瞬間,視界が鮮明になり,世界はこんなにも奇麗だったのかと感動しました.振り返ってみれば,それが自分が眼科医を目指したきっかけだったのかもしれません.自分が専門を選ぶうえで考えたのが,まず,患者さんに喜んでもらえることでした.白内障術後の患者さんが眼帯を外し,「とても明るくなりました!」「すごくよく見えます!」と笑顔で仰しゃるのを聞くと,子供のころの自分の体験を思い出します.眼は「視覚」という日常生活にきわめて重要な感覚を担っており,患者さんのqualityoflife(QOL)を改善するという点において眼科手術以上の手術はないのではないかと思っています.つぎに考えたのが,全身も診たいということでした.「目は口ほどに物を言う」ということわざではありませんが,眼科疾患には全身の疾患と関連したものが多く存在します.眼というスペシャリティの高い分野でありながら,全身の疾患とも密接に関連しているというのも眼科の大きな魅力の一つだと思います.現在は,臨床家として一人ひとりの患者さんと向き合い,その方たちの笑顔を見たい,という思いもありますが,科学者としてまだ見ぬ多くの患者さんの笑顔のために研究を行いたい,という思いもあります.これから先,自分がどのような道を進むのかはまったくわかりません.医師はサイエンス(科学的思考),ヒューマニティ(人間性),アート(技量)のバランスが大切だと思います.これらのうちどれかに偏ってしまえば,たとえ良い仕事をしているようにみえても不十分だと思います.これらを兼ね備え,患者さんに喜んでいただけるような眼科医を目指して頑張ります.◎今回は山梨大学出身の宮崎先生にご登場いただきました.この連載でも今まで何人もの先生が書かれていますが,眼科手術は大いに患者さんのQOLを改善するという点で本当に魅力的だと思います.術前後の患者さんの変化に触れる機会を増やし,この魅力を伝えることができれば,もっと眼科に興味を持つ人が増えていくのではないでしょうか.(加藤)本シリーズ「“初心”表明」では,連載に登場してくださる眼科に熱い想いをもった研修医~若手(スーパーローテート世代)の先生を募集します!宛先は≪あたらしい眼科≫「“初心”表明」として,下記のメールアドレスまで.全国の先生に自分をアピールしちゃってください!E-mail:hashi@medical-aoi.co.jp(81)眼科専門医向者“初心”表明●シリーズ⑭患者さんに喜んでいただけるような眼科医を目指して宮崎康之(YasuyukiMiyazaki)京都市立病院1982年京都生まれ.山梨医科大学(現山梨大学)医学部卒業.現在は京都市立病院にてスーパーローテート中.4月からは京都府立医科大学で研修予定.(宮崎)編集責任加藤浩晃・木下茂本シリーズでは研修医~若手(スーパーローテート世代)の先生に『なぜ眼科を選んだか,将来どういう眼科医になりたいか』ということを「“初心”表明」していただきます.ベテランの先生方には「自分も昔そうだったな~」と昔を思い出してくださってもよし,「まだまだ甘ちゃんだな~」とボヤいてくださってもよし.同世代の先生達には,おもしろいやつ・ライバルの発見に使ってくださってもよし.第14回目はこの先生に登場していただきます!▲京都市立病院の同期と

後期臨床研修医日記9.バプテスト眼科クリニック

2009年3月31日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.26,No.3,20093590910-1810/09/\100/頁/JCLS下って家路につきます.火曜日この日は一日手術場です.午前中は角膜移植が多くDSAEK(Descemet’sstrippingautomatedendothelialkeratoplasty),DLKP(深層表層角膜移植術),PKP(全層角膜移植術)などの手術助手をします.移植がない日は自分の硝子体手術症例を入れて,上級医の先生の指導を受けながら手術を行います.最先端の角膜移植を見て,新しい知見を出している現場にいられることは大変貴重な経験です.火曜日は手術が多いためお昼をとる時間があまりありません.大盛り弁当を5分で食べて午後の手術に臨みます.午後はおもに白内障,眼瞼手術,ごくまれに緑内障手術を行います.白内障手術はほとんどが日帰り手術で,入院の場合は1泊2日です.私の助手はおもに看護師ですが,硝子体・緑内障手術などの手術には指導医の先生が助手についてもらえるため安心して手術症例の勉強ができます.(77)バプテスト眼科クリニックは京都駅から40分ほどの比叡山の麓にある眼科クリニックです.ここでは私を含めた常勤医が5人勤務しています.また非常勤医師として,京都府立医科大学のスタッフの先生方に,外来や手術に来ていただいています.当院では屈折矯正,内皮移植を含めた角膜移植といった最先端の医療に加えて,白内障はもちろん,緑内障,網膜硝子体,眼瞼,斜視手術まで幅広く手術を行っています.外来も一般外来に加えて,特殊外来(角膜,緑内障,網膜,眼形成,ドライアイ,屈折・老視矯正)が曜日ごとにあります.一般臨床を学べる病院としては最適な病院で,そこで働く私の一週間をご紹介いたします.月曜日毎朝7時頃に起床し鴨川沿いにある自宅を出発して,晴れた日には朝日を浴びながら東山にある大文字を目指して病院に向かいます.病院は比叡山の入り口で,登り坂の途中にあります.京都の寒い冬の中,自転車で通う私は,病院に着くころには少し汗ばみます.8時前に病棟に行き入院患者を診察します.病床は9床で,角膜移植後,硝子体手術後,緑内障患者が入院しています.あわただしく診察を終了した後,午前は手術出番のため,症例を確認して手術室へ行きます.手術場は2ルームあります.月曜日の午前は白内障・眼瞼・結膜弛緩症・斜視・硝子体の手術を行います.私自身の手術がないときは,大学スタッフの先生のオペ助手について勉強させていただきます.専門の先生方の素晴らしい手術を生で見ながら自分の手術との比較を行い,反省の毎日です.午後は13時半から外来開始.新患に対応しながら予約再診をします.毎日140人を超える外来患者が集まるため,忙しく診察しているとあっという間に時間が過ぎてしまい,気づくと外は暗く夜になっています.そして,病院での長い一日が終わりまた自転車で坂を後期臨床研修医日記●シリーズ⑨バプテスト眼科クリニック北澤耕司▲月1回の京都府立医科大学スタッフの先生の講演会の後(写真は左から成瀬繁太先生,稗田牧院長,足立絋子先生,筆者,山村陽先生)———————————————————————-Page2360あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009(78)が引き締まります.DSAEKやPKPのほかにIEKも当院では行っています.生でその手術をみることができ大変貴重な経験をさせていただいています.ドナー角膜をフェムトセカンドレーザーできれいにジグザグにカットできたときは,外回りですがホッとします.午前の手術が終われば木下教授と近所の中華料理屋にランチに行きます.ここでもいろいろなお話を聞くことができ,お昼時間も勉強になります.ただし,服が中華臭くなり,匂いが気になってしまい,消臭剤が手放せません.午後は相変わらずの外来でバタバタと時間が過ぎます.外来が終わると週に1回の医局会があります.毎週,屈折矯正外来の症例検討を行うほか,一般外来や手術症例の症例検討も月1回行っています.また月末には京都府立医大からスタッフの先生に講演に来ていただき,知識のレベルアップをはかります.土曜日いい天気の日に限って仕事があります.常勤医が隔週で外来診察を行います.外来がないときはオンコールですが,ときどき網膜離などの緊急手術が入ります.そのときは休日を返上して病院にかけつけます.携帯が鳴らないことを祈りながら残りの休日を過ごします.まとめ私の一週間をご紹介いたしました.眼科医になって3年経ちいろいろな手術もできるようになってきた時期ですが,常に専門の先生方が周囲にいる環境で仕事ができていることに刺激をうける毎日です.そういった先生方に少しでも近づけるようこれからも頑張っていく次第です.手術が終わった後は,NICU(新生児集中治療室)にいってベビーの診察を行います.バプテスト眼科クリニックから150mほど離れたところにバプテスト病院があります.新患が月に5人ほどいて,毎週3,4人の診察を行っています.700gぐらいの未熟児を診察することもあり,見落としがないか,急な変化がでていないかなど,いつも緊張しながら診察を行っています.水曜日昨日と代わって一日外来です.午前は府立病院のスタッフの先生が角膜外来をしに来てくださるため,その裏で新患に対応します.午前の新患は多岐にわたります.近くの開業医の先生からの紹介もたくさんあります.また手術症例も多く気が抜けません.白内障手術症例と思いきや水晶体亜脱臼だったなどの症例もあり大変勉強になります.京都の患者はすごく上品で外来にも着物で来られます.「どすえ」とか「でっしゃろ」など京都弁もでて,「私の人工レンズは一番いいレンズでっしゃろか?」などと言われたときにはその返答に困ってしまいます.木曜日この日は一日大学に研修にいっています.木曜日は網膜外来があり一般病院では出会わない珍しい症例や難治性疾患を目に焼き付けます.朝8時から網膜カンファランスで症例検討を行い,その後回診があります.そして外来.網膜外来だけに臨時手術となるような外傷や網膜離の紹介が多く,外来が終わるとそのまま臨時手術ということは日常茶飯事です.臨時手術が立て込むときは夜の12時くらいまで手術が続くこともあります.臨時手術がなければ,その日に診た患者さんのなかで珍しい症例をピックアップしてディスカッションしたり,英文論文の抄読会を行ったりします.網膜専門の先生方のディスカッションを聞くことができ大変勉強になり,充実した一日です.金曜日もうすぐ週末,とテンションが上がってくるところですが,その前に木下茂教授の移植手術があり気持ち?プロフィール?北澤耕司(きたざわこうじ)平成16年京都府立医科大学卒業.大阪府済生会吹田病院と京都府立医科大学で初期臨床研修.平成18年より京都府立医科大学医学部眼科学教室後期研修医.平成19年に町田病院に赴任.平成20年9月からバプテスト眼科クリニックに赴任.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009361(79)指導医からのメッセージ2年間のジェネラルな前期臨床研修を終了し,後期研修で専門とする眼科に入ったことになるわけですが,この後期研修では学会認定の専門医資格を取得することを目的とし,より高度で専門的な医学知識と医療技術を修得していくことになります.大学病院での研修はともすると,その眼科学教室の柱となる専門分野に偏った内容になりがちです.市中病院の当院では,屈折異常,前眼部炎症性疾患,白内障などの実際に多い症例に対する適切な治療を学びつつ,「こなす」テクニックを身につけながら,さらに自分の専門を磨くチャンスでもあります.後期研修医は新しい制度での新しい存在です.なにかと忙しいかもしれませんが,枠にとらわれることなく,興味があることに積極的かつ倫理的にチャレンジしていってください.バプテスト眼科クリニック・院長稗田牧☆☆☆

インターネットの眼科応用2. インターネットは個と個を繋ぐ

2009年3月31日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.26,No.3,20093570910-1810/09/\100/頁/JCLSWeb2.0とよばれる現象インターネットの新しい利用方法が,「交流」というコンセプトであることは,第1章で紹介しました.インターネットが国家機関や研究機関や民間企業にかぎられた所有物であった時代には,情報発信者は国家であり,研究機関であり,民間企業でした.インターネットの情報発信者の主体が民間企業から個人へ移行している,現在の潮流を「Web2.0」としばしば表現します.その例が,ブログや,ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)といったユーザー参加型の交流サイトであり,Wikiシステムを用いた文書作成Webサイトです.日本最大のSNSサイトはmixiといいます.参加登録者は1,000万人ともいわれていますので,活用されている方もいらっしゃるかもしれません.インターネットの世界では,これまで情報の受け手であったユーザー個人が情報の発信者へとシフトし,ユーザー参加型のモデルが広まっています.情報の発信者が飛躍的に増えたことで,「情報発信者の共同作業によって,より有益な情報が生み出される」という,現象が起こりつつあります.このようにして積み上げられた付加価値の高いインターネット上の情報を「集合知」とよびます.その成功例がインターネット上のフリー百科事典「ウィキペディア」です.ここでいう「フリー」とは,「無料」と「フリーアクセス」の両方の意味をもちます.Web2.0は単一の技術やキーワードを指すのではなく,いくつもの要素が折り重なりパラダイムシフトが起こっていくなかで,誰しもが感じていたインターネットの変化をTimO’Reilly(ティム・オライリー)氏らが言葉で表現したものです.2005年9月に同氏が発表した論文「WhatIsWeb2.0」(副題:Web2.0とは何か次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル)のなかで,次世代インターネットを象徴する言葉として紹介されたことで注目されるようになりました.彼のインタビュー記事からWeb2.0について理解することができます.『私が人に理解してほしいのは,コンピューター業界の根本的構造が変わりつつあるってことだ.(中略)つまり,インターネットはソフトウェアの価値を何か違うところに持っていこうとしている.それは何か.それが,Web2.0なんだ.私が考えているのは,まず,ユーザーが中心となって巨大データベースを作り,多くの人が使えば使うほどそのデータベースは良くなっているってこと.“ネットワーク外部性”が成功を導いている.1997年に私はこのことを“Infoware”と呼んでいた.でもそれは正しくなかった.きっと“People-ware”って言うのが正しいと思う.』1)Web2.0の世界観を簡潔に表現すると,インターネットが個人と個人の情報発信を繋ぐ「交流」として使われるようになり,無限の広がりと組み合わせを持つネットワークと巨大なデータベースがわれわれの生活のすぐそばにある,という状態です.そのような技術の進歩と意識の流れのなか,変わらぬものがあります.人の営みです.医療行為はどこまでいってもアナログな行為です.しかし医療情報のデジタル化はどんどん進んでいます.インターネットの潮流はどのように眼科医療と合流していくでしょうか.ファイリングシステムでしょうか,電子カルテでしょうか,私はもっと先に大きな合流点があるように思います.ティム・オライリー氏は,インターネット業界において,ハードウェアからソフトウェアに価値が移り,ソフトウェアも皆が同じモノを使うようになると,その先に価値を産むのは“Peopleware”であると述べています.個人の知識ノウハウが個人だけのものでなくなり皆でシェアできる環境,それがWeb2.0の世界です.医療情報の巨大なデータベースを世界の医療人がシェアできる環境って魅力的ではないですか?(75)インターネットの眼科応用第2章インターネットは個と個を繋ぐ武蔵国弘(KunihiroMusashi)むさしドリーム眼科シリーズ②———————————————————————-Page2358あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009Web2.0と医療Web2.0とよばれる,情報発信源が民間企業から個人へと移る,この大きなパラダイムシフトを医療界にあてはめるとどうなるでしょうか.私は,情報発信者が「大学」や「病院」から「医師個人」へシフトする,と考えます.従来,学会や研究会といった,実際に顔を合わせる場を通じて情報の発信・交流は行われました.この場合,所属は必須です.Web2.0の世界はこの既存の場に参加することなく,医師個人が所属に関係なく,自分の意思と管理のもと,自身の治療方針や治療成績を外部データベースに蓄積します.さらに別の医師が上書きをする,という新しい医療情報の交流形態を意味します.情報の蓄積量,情報の信頼度を,組織と個人で比較した場合,組織である「大学」,「病院」の優位性は揺らぎません.しかし,日本中の医師個人の知識が蓄積するとどうなるか,一人の専門家の知識との差はどう縮まっていくのでしょうか.その答えはブリタニカ百科事典とウィキペディアとの比較をみれば明らかです.ウィキペディアの記事の正確性は,世界で最も権威があるとされるブリタニカ百科事典と比べて遜色がありません.2005年12月のネイチャー誌によると,同程度の情報を含んだ双方の辞書項目を比較したところ,誤った記載の数は,一つの記事につき,ブリタニカが2.92個でウィキペディアが3.86個でした2).一人の専門家による記述と,多数の人間の集合知にはさほどの差がなかった,という証明です.一定の資格を得た専門家が参加し,インターネットで知的交流を行うのは時代の流れです.医療の世界でも,大学や病院といった組織からの情報発信だけでなく,医師個人が情報を発信し,ディスカッションしながら,集合知を創るのが次の10年に起こる流れと予測します.インターネットは個人を無限に繋ぐ道具です.個人と個人がエリアを越えて繋がる不思議な道具です.参加するメンバーの指向性によって,生き物のような変化を生みます.インターネットによる外部ネットワークがいい意味でも悪い意味でも人間性を帯びてくると,そのネットワーク自体が文化を持つようになります.先述したmixiにはmixiに参加するユーザーが作り上げた文化が(76)ありますが,残念ながら知的交流には不向きのようです.医療に関する媒体の文化は,医療者であるわれわれ自身で作ることになるでしょう.専門知識を持った医師同士がインターネットを「交流」の道具として用いると,どのような文化を創造できるかは,われわれが医療をどのように考えているかで決まります.医療行為が単なる生計を立てる手段ではないはずです.いい医療を目の前の患者に伝えたい,という基本のスタンスさえ変わらなければ,ウィキペディアのような成功事例を後世に伝えることができるでしょう.インターネットによって,医師個人と医師個人がエリアを越えて繋がれば,さまざまな臨床上の相談事が可能です.症例検討会の開催も可能です.医療機関と医療機関が繋がれば難症例の遠隔診断や,離島の医療を支援することができます.私は大阪で眼科クリニックを営む傍ら,有志とNPO法人MVCメディカルベンチャー会議(以下,MVC)を設立し活動しています.MVCは医療人の知的・人的な交流を活性化させ,蓄積された知的共有物を広く一般生活者に伝え,医療水準の向上に貢献したい,という理念のもとに活動しています.私は一臨床医ですので,システムやプログラムのことはよくわかりません.ですが,インターネットにはさらなる可能性を感じ実践してきました.連載を通じて,医療というアナログな行為と,眼科という職人的な業をインターネットでどう補完するか,実例を交えながら紹介していきたいと思います.皆さんとの意見交換を通じて,30年後の医療環境をともにつくっていければ幸いです.MVCの活動に共感いただき,k.musashi@mvc-japan.orgにご連絡いただければ,医療者限定インターネット会議室「MVC-online」http://mvc-online.jpから招待メールを送らせていただきます.先生方とシェアされた情報が日本の医療水準の向上に寄与する,と信じています.参考文献1)鳴海淳義CNETJapanhttp://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20361105,00.htm2)JimGiles.NaturePublishingGroup.http://www.nature.com/news/2005/051212/full/438900a.html

硝子体手術のワンポイントアドバイス70.術後疼痛緩和の重要性(初級編)

2009年3月31日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.26,No.3,20093550910-1810/09/\100/頁/JCLS近年の網膜硝子体手術は,手術器具や術式の改良により短時間かつ低侵襲で施行できるようになり,術後の疼痛は以前よりも大幅に軽減しているものと思われる.しかし,増殖硝子体網膜症などの難治性疾患では手術侵襲が大きく,術後の疼痛に苦しむ患者が依然として存在する.手術が長時間に及んだ場合,幅広い強膜バックリングを設置した場合,再手術で既存のバックルを除去したうえで新しいバックルに置き換えた場合,角膜上皮擦過を施行した場合,術後に高度の眼圧上昇をきたした場合などに術後疼痛が強くなる傾向がある.ガスタンポナーデ施行眼では,疼痛のために術後の確実な体位保持が困難となることもある.また,糖尿病や高血圧などの全身疾患を有する患者では,術後の疼痛が全身状態を悪化させる可能性も考えられる.術後疼痛を緩和することは,患者の肉体的,精神的負担を軽減するのみならず,手術成績を向上させるうえでも重要である.剤による鎮痛効果眼科領域の術後疼痛の抑制には,従来から鎮痛剤の内服,坐薬,筋肉注射などが頻用されている.しかし,患者の疼痛がピークに達した時点で薬剤を投与しても,効果が発現するまでには一定時間を要するだけでなく,疼痛緩和効果が予防投与よりも弱くなる傾向がある.筆者は疼痛が出現しはじめた時点で,速やかに鎮痛剤を使用するように指示している.(73)術終了時の局所麻酔薬注射による鎮痛効果筆者は,強い術後疼痛が予測される症例に対して,塩酸ロピバカイン(アナペインTM)や塩酸ブピバカイン(マーカインTM)のTenon下注射(あるいは球後注射)を術終了時に行っている.これらの局所麻酔薬はリドカイン(キシロカインTM)よりも効果持続時間が約3倍長く,術後疼痛を数時間にわたって確実に軽減できる1).Tenon下注射の場合には各象限に約0.5mlの麻酔薬を注入している.瞼のテーピング角膜上皮擦過を施行した症例では,術終了時に滅菌テープで上下の眼瞼を貼り,開瞼できない状況にしておく(図1).この処置は術後疼痛緩和に有効なだけでなく,術後の上皮再生を促進する効果も期待できる2).文献1)DukerJS,NielsenJ,VanderJFetal:Retrobulbarbupiva-caineirrigationforpostoperativepainafterscleralbuck-lingsurgery.Aprospectivestudy.Ophthalmology98:514-518,19912)池田恒彦:網膜硝子体手術のトラブルと対処3.術後のトラブル.眼科41:1305-1311,1999硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載70術後疼痛緩和の重要性(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図1角膜上皮擦過施行例に対する眼瞼のテーピング術後疼痛緩和に有効なだけでなく,術後の上皮再生を促進する効果も期待できる.

眼科医のための先端医療99.細胞死と生体反応―Danger associated molecular patterns(DAMPs)―

2009年3月31日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.26,No.3,20093530910-1810/09/\100/頁/JCLS個体にとっての細胞死と生体反応生体での原因で細胞死り生に生のにの反応にの個体死とり細胞死個体のでり生細胞死細胞での生のでり個体の生にとってと細胞死わりで細胞死てお反応のりととでの原因で生細胞死に生体反応とて死細胞の細胞の反応結末(図1).この細胞死後の生体反応には,免疫が関与し,炎症反応の一つととらえることができます1).Dangerassociatedmolecularpatternsと細胞死反応とollliereceptors(s)本64(ol2o4)s生と体s生pathogenassociatedmolecularpatterns(PAMPs)とと細胞死生体反応体体生と細胞死反応とPAMPsdangerassociatedmolecularpatterns(DAMPs)とDAMPsalarminsendoinesdangersignalsと細胞死細胞と2)(表1).Highmobilitygroupbox1proteinHighmobilitygroupbox1protein(HM1)DAと細胞死細胞ととDAMPsHM1細胞DAMPsと細胞HM1体とreceptororadancedglycationendproducts(A)24Aadancedglycationendproducts100bなどとともにHMGB1を認識するパターン認識受容体です.(71)表1DAMPsとその受容体DAMPs受容体HMGB1RAGE,TLR2,TLR4尿酸TLR2,TLR4,CD14DNATLR9ヒートショックプロテインCD14,CD40,CD91,TLR2,TLR4ATPP1受容体,P2X/P2Y受容体S100プロテインRAGEヒアルロン酸CD44,TLR2,TLR4ヘパラン硫酸TLR4ATP:アデノシン三リン酸.(文献2より抜粋)◆シリーズ第99回◆眼科医のための先端医療=坂本泰二山下英俊有村昇(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科感覚器病学眼科学)細胞死と生体反応―Dangerassociatedmolecularpatterns(DAMPs)―図1細胞死の原因と結末生反応死細胞反応反応細胞死———————————————————————-Page2354あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009臨床的には,敗血症患者の血中でHMGB1が高値であり,敗血症モデルマウスにおいて抗HMGB1抗体を投与すると敗血症死が抑制できることから,敗血症の治療標的として注目されています.関節リウマチ患者の関節液中や,心筋梗塞,脳梗塞患者の血清中でも高値となることが知られ,現在さまざまな疾患におけるHMGB1の機能について研究が進められています.眼科領域では,増殖糖尿病網膜症患者,眼内炎患者3),網膜離患者4)の眼内液中でHMGB1が高値を示すことが報告されています.放出されたHMGB1は,状況に応じて,創傷治癒反応へかかわったり,他の炎症誘導物質と協働して炎症を増強したり,樹状細胞の成熟化やT細胞の活性化を促す免疫アジュバントとして働くなど,さまざまな機能をもっていることが報告されています5).おわりにDAMPsの眼疾患への関与はまだ十分に検討されていません.一方で,網膜神経節細胞死,視細胞死,網膜色素上皮細胞死など,細胞死とそれに伴う生体反応は多くの眼疾患において病態の中心となるものであり,網膜光凝固や冷凍凝固といった手術加療に伴っても生じる臨床的にもありふれた現象です.緻密に制御された眼内環境において,DAMPsがどのように機能しているかを探ることは,眼疾患のさらなる病態理解と治療の進歩につながる可能性があり,細胞死と生体反応は,眼科領域においても今後注目すべき研究分野といえます.文献1)MedzhitovR:Originandphysiologicalrolesofinamma-tion.Nature454:428-435,20082)KonoH,RockKL:Howdyingcellsalerttheimmunesys-temtodanger.NatRevImmunol8:279-289,20083)ArimuraN,Ki-IY,HashiguchiTetal:High-mobilitygroupbox1proteininendophthalmitis.GraefesArchClinExpOphthalmol246:1053-1058,20084)ArimuraN,Ki-IY,HashiguchiTetal:Intraocularexpressionandreleaseofhigh-mobilitygroupbox1pro-teininretinaldetachment.LabInvest89:278-289,20095)BianchiME,ManfrediAA:High-mobilitygroupbox1(HMGB1)proteinatthecrossroadsbetweeninnateandadaptiveimmunity.ImmunolRev220:35-46,2007(72)細胞死と生体反応Dangerassociatedmolecularpatterns(DAMPs)―」を読んでの有村昇生の細胞死のでての生体生てにとををってととをてにをってとでわっておそ生体の()をりての生ので有村生てっのとにてそのの因にて受容体てをわりてにりとのにてとのとでわわでってのにをて細胞死にととのとででののとのでと体の()をにでりそののをりんでをのにに細胞とりわ細胞死にてのをてそののをわてとのとで有てとでとでと有村生でのにりんでととでのでをとのをりにとてており山山下英俊

サプリメントサイエンス:ビタミンCと眼科

2009年3月31日 火曜日

———————————————————————-Page1OOOHHOOHCH2OHHあたらしい眼科Vol.26,No.3,20093510910-1810/09/\100/頁/JCLSビタミンCの構造式ビタミンC(L-アスコルビン酸:VC)の構造式を図1に示す.VCは分子式C6H8O6のラクトン環構造を有する化合物である.サプリメントとして市販されるVCは淡黄色を帯びていることが多い.しかし,純粋なVCは白色の結晶である.VCは固体で安定であるため,サプリメントに含まれる固体のVCも比較的安定である.ビタミンCの薬理,生理作用VCは活性酸素を消去して酸化ストレスを軽減することが知られる.また,VCはコラーゲンの重合やカテコールアミンを合成する酵素の補因子として働く.コラーゲンの重合やカテコールアミンを合成する酵素の反応にはFe2+など2価の金属イオンを必要とする.酵素反応の結果,2価の金属イオンは酸化される.VCは酸化された金属イオンをすみやかに還元して,コラーゲンの重合やカテコールアミンの合成を円滑に進める.ビタミンCの1日必要量(最低必要量と最適量)日本の食事摂取基準による1日当たりのVCの推奨摂取量は100mgである.しかし,100mgが本当に最適な摂取量であるかは明らかではない.冠動脈疾患の患者ではVCを1日に500mg摂取することにより血管内皮機能に改善効果が認められている1).イギリスのビタミン・ミネラル専門家委員会ではVCの過剰摂取による影響を包括的に検証した結果,VCの1回の過剰摂取による影響はほとんど認められないが,1日に1,000mg以上のVCを継続的に摂取すると悪影響を及ぼす可能性も否定できないと報告している2).このことから,VCの摂取は食品もしくはサプリメントによって,100mgのVCを1日に数回程度摂取することが効果的であると考えられる.食品中に含まれるビタミンC量五訂増補日本食品成分表に収載されている食品について,可食部100g中に含まれるVC含有量が多い食品を表1に示した.VCはアセロラに最も多く含まれており,そのつぎに乾燥パセリ,緑茶に多く含まれる.しかし,乾燥パセリや緑茶を1回に100g食べるのはむずかしい.一方,ジャガイモはVCを効率的に摂取できる.ジャガイモにはVCが可食部100g中35mg含まれており,デンプンを多く含むため調理による損失を受けにくいこと(69)サプリメントサイエンスセミナー●連載⑩監修=坪田一男10.ビタミンCと眼科佐藤安訓*1丸山直記*2石神昭人*1*1東邦大学薬学部生化学*2東京都老人総合研究所ビタミンCは抗酸化作用のほか,コラーゲンの重合やカテコールアミンを合成する酵素の補因子として働く.眼科領域において,ビタミンCの摂取は白内障の発症リスクを軽減し,加齢黄斑変性の進行を抑制することが報告されている.また,ビタミンCは1日に100mg以上1,000mgを超えない範囲で摂取するのが効果的である.表1五訂増補日本食品成分表に収載されている食品中のビタミンC含有量(抜粋)食品名ビタミンC含有量(mg/可食部100g)アセロラ乾燥パセリ緑茶グァバ焼きのり赤ピーマン芽キャベツイチゴレモン(果汁)ジャガイモ1,700820260220210170160625035図1ビタミンCの構造式———————————————————————-Page2352あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009が知られる3).1日1個のジャガイモ(約150g)を摂取することで,1日のVC推奨摂取量のうち,約50%を満たすことができる.摂取カロリーもジャガイモ1個当たり約125kcalと低いため,食品からのVC摂取源として適している.VCの摂取には,VC含有量の多い食品から摂取するのがよい.眼科領域におけるビタミンCの効果1日に150~250mgのVC摂取は,眼球のVC濃度を高い状態に維持する4).Jacquesらは,1日に400mg以上のVCサプリメントを10年以上使用していた人は,使用していない人に比べて白内障(cataract)の発症リスクが77%も少なかったと報告している5).また,Lyleらは1日に摂取した食事から総カロリー摂取量を計算して,1,000kcal当たりのVC摂取量で白内障の発症リスクを比較している.その結果,喫煙者でVCを多く摂取している集団(1,000kcal当たりVCは236mg摂取)はVC摂取量の少ない集団(1,000kcal当たりVCは19mg摂取)に比べて白内障の発症リスクが70%も少ないと報告している6).日本では食事からのVC摂取と白内障発症との関係について,約35,000人を対象とした5年間にも及ぶ大規模な追跡調査が行われた.その結果,食事から1日に平均211mgのVCを摂取した集団は,平均52mgのVCを摂取した集団に比べて,白内障の発症リスクが男性で35%,女性で41%も少なかった7).その一方でVCの摂取と白内障の発症には相関性がないという報告もある8).このように,白内障の予防についてVCの摂取が有効かどうかははっきりとした結論は出ていない.しかし,VCの摂取により白内障発症リスクが増加したという報告はない9).アメリカで加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration)に対して行われた多施設無作為化対照試験の結果から,VCを500mg,ビタミンEを400IU,b-カロテンを15mg,亜鉛を80mg含むサプリメントの長期投与により加齢黄斑変性の進行度が非投与群に比べて低下するとの報告がある10).(70)このように,VCは白内障や加齢黄斑変性に対してよい効果がいくつか報告されていることから,眼科領域におけるサプリメントとして有効であると考えられる.VCは1,000mgを超えない範囲で摂取するのが効果的である.摂取すべきかのエビデンスレベルA:摂取すべき(1日に100mg以上1,000mgを超えない範囲で摂取するのが効果的).文献1)GokceN,KeaneyJFJr,FreiBetal:Long-termascorbicacidadministrationreversesendothelialvasomotordys-functioninpatientswithcoronaryarterydisease.Circula-tion99:3234-3240,19992)ExpertGrouponVitaminsandMinerals:Safeupperlim-itsforvitaminsandminerals.Availableat:www.food.gov.uk/multimedia/pdfs/vitmin2003.pdf20033)HanJS,KozukueN,YoungKSetal:Distributionofascorbicacidinpotatotubersandinhome-processedandcommercialpotatofoods.JAgricFoodChem52:6516-6521,20044)CarrAC,FreiB:TowardanewrecommendeddietaryallowanceforvitaminCbasedonantioxidantandhealtheectsinhumans.AmJClinNutr69:1086-1107,19995)JacquesPF,TaylorA,HankinsonSEetal:Long-termvitaminCsupplementuseandprevalenceofearlyage-relatedlensopacities.AmJClinNutr66:911-916,19976)LyleBJ,Mares-PerlmanJA,KleinBEetal:Antioxidantintakeandriskofincidentage-relatednuclearcataractsintheBeaverDamEyeStudy.AmJEpidemiol149:801-809,19997)YoshidaM,TakashimaY,InoueMetal:ProspectivestudyshowingthatdietaryvitaminCreducedtheriskofage-relatedcataractsinamiddle-agedJapanesepopula-tion.EurJNutr46:118-124,20078)VitaleS,WestS,HallfrischJetal:Plasmaantioxidantsandriskofcorticalandnuclearcataract.Epidemiology4:195-203,19939)TaylorA,HobbsM:2001assessmentofnutritionalinuencesonriskforcataract.Nutrition17:845-857,200110)AREDSResearchGroup:Arandomized,placebo-con-trolled,clinicaltrialofhigh-dosesupplementationwithvitaminsCandE,betacarotene,andzincforage-relatedmaculardegenerationandvisionloss:AREDSreportno.8.ArchOphthalmol119:1417-1436,2001☆☆☆

眼感染アレルギー:ブドウ球菌による周辺部角膜浸潤

2009年3月31日 火曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.26,No.3,20093490910-1810/09/\100/頁/JCLS眼瞼,結膜にはブドウ球菌を主として常在菌が存在する.これらの菌は眼表面に侵入,定着,増殖し,感染症の原因となるが,たとえ侵入しなくとも,その菌体外毒素によって角膜に免疫反応を生じる.これがブドウ球菌による周辺部角膜浸潤である.菌体としては,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)ほか,黄色ブドウ球菌,アクネ菌,コリネバクテリウムがある.従来さまざまな疾患名でよばれており,ブドウ球菌性周辺部角膜浸潤以外に,たとえば,カタル性角膜辺縁潰瘍,カタル性潰瘍,辺縁部潰瘍など混沌としている.名称はさまざまであっても,すべて同様の病態と考えられる.一般外来にて最も多く遭遇する細菌性角膜炎は,この疾患であると思われる.それほど馴染み深いものであるが,実はその治療にはいくつかの落とし穴が存在する.態病態としては,角膜と接したブドウ球菌をはじめとする眼瞼常在菌の菌体成分あるいは外毒素が抗原となり,輪部血管からの抗体と抗原抗体複合体を形成する.これを受けて補体の古典経路が活性化され,多核白血球,リンパ球が遊走する.この細胞浸潤の状態から,さらに多核白血球から蛋白分解酵素が分泌されて潰瘍を生じる場合もある.いわゆるIII型アレルギーの病態を呈する.床所見中高年女性に好発するといわれている.角膜が眼瞼と接する2時,4時,8時,10時に円形の白色浸潤として観察される.典型所見を図1に示す.同部の軽度毛様充血を伴うが,輪部血管からの抗体が反応しているため,輪部と浸潤の間には一定の透明帯が存在する.侵入,定着,増殖した感染症と違い,その場での細菌増殖に伴う外毒素の加速度的産生は少ないので,びまん性の角膜浮腫は認めにくい.数回にわたり再発をくり返すことが多いため,患眼,僚眼ともに以前の浸潤によると思われる小円形の白濁を認めることがあり,鑑別の一助となる.眼瞼縁の炎症も併発していることが多い.意すべき鑑別周辺部に存在することから,いわゆるリウマチ,膠原病,Mooren潰瘍などの免疫原性角膜潰瘍と鑑別が必要である.①輪部との間に透明帯が存在すること,②自己免疫疾患などの既往がない,③潰瘍形状が深彫れしていない,などのポイントが免疫原性角膜潰瘍の否定とな(67)眼感染アレルギーセミナー─感染症と生体防御─●連載⑮監修=木下茂大橋裕一15.ブドウ球菌による周辺部角膜浸潤佐々木香る出田眼科病院感染には生体防御という免疫反応が必ず伴う.この両者のバランスを考えたとき,ブドウ球菌による周辺部角膜浸潤は,最も生体防御側に偏った状態である.病態としては,ブドウ球菌の菌体あるいは外毒素に対するⅢ型アレルギー反応である.重要な点は2つ.①治療にステロイドが必須であること,②非典型的な緑膿菌感染症との鑑別,である.図12WDSCL装用者(24歳,女性)角膜が眼瞼と接する8時方向に円形の白色浸潤を認める.同部の軽度毛様充血を伴い,輪部と浸潤の間には一定の透明帯が存在する.びまん性の角膜浮腫は認めず,その他の部位の角膜は透明である.さらに,マイボーム腺の閉塞も認める.———————————————————————-Page2350あたらしい眼科Vol.26,No.3,2009る.また,上皮欠損が線状に存在することも多いため,ヘルペスとの鑑別を要されることもある.本疾患では,①terminalbalbがないこと,②眼瞼常在菌の慢性刺激が存在するため,広い範囲で微少な血管侵入を認めることが鑑別となる.さらに,近年特に増加している2週間頻回交換型コンタクトレンズ(2WDSCL)装用者における緑膿菌性角膜感染症が本疾患の鑑別対象となりうる.従来,緑膿菌性角膜潰瘍は輪状膿瘍を中心として高度な角膜浮腫,前房蓄膿など比較的特徴的な所見を呈するとされてきた(図2a).ところが,2WDSCL装用下に発症した緑膿菌角膜潰瘍はその病態が修飾される.円形からやや地図状の小さな病巣で,輪状膿瘍や角膜浮腫を認めず,前房炎症も軽く,全体に臨床所見が軽症化し,ブドウ球菌による周辺部潰瘍に類似した所見を呈する(図2b).その軽症化の機序は不明であるが,コンタクトレンズ装用による低酸素状態も一因であると思われる.療治療は抗菌薬点眼とステロイド点眼(0.1%フルオロメトロン点)である.コンタクトレンズ装用による緑膿菌感染症との鑑別が困難な症例もあるので,まず抗菌薬の加療を先行させて,その後ステロイドを追加するのが(68)安全であると思われる.再発予防として眼瞼縁清拭指導などのマイボーム腺のケアが必要となる.マイボーム腺機能不全(MGD)が高度な場合には,ステロイドや抗菌薬(ミノサイクリンやテトラサイクリン)の内服投与を考慮する.ミノサイクリンに関しては文献的には23カ月の内服投与が推奨されているが,膀胱炎症状を呈する場合も多く,テトラサイクリンは小児では,歯芽の着色も報告されているので,眼科単独で処方する場合には注意を要する.文献1)北川和子,浅野浩一,佐々木一之:カタル性角膜辺縁潰瘍の臨床像.臨眼46:720-721,19922)佐々木香る:カタル性角膜浸潤.眼科インストラクションコース16アレルギー性眼疾患とドライアイ(高松悦子,前田直之編),p118-121,メジカルビュー社,20083)山田利津子,栗山茂,久志本晋ほか:移行性角膜浸潤を伴うカタル性角膜潰瘍.あたらしい眼科15:109-112,19984)庄司純,伊藤眞由美,稲田紀子ほか:カタル性角膜潰瘍における結膜内検出菌.あたらしい眼科10:247-251,1993図2a典型的な緑膿菌角膜感染症(18歳,男性)輪状膿瘍を認め,周辺部角膜を含めた高度な角膜浮腫,前房蓄膿が特徴的である.図2b2WDSCL装用下に発症した緑膿菌角膜潰瘍(24歳,男性)円形からやや地図状の小さな病巣で,輪状膿瘍や角膜浮腫を認めず,また前房炎症も軽い.病巣部の角膜擦過物から緑膿菌が検出された.☆☆☆