———————————————————————- Page 1(89)ツꀀ 13870910-1810/09/\100/頁/JCOPYツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ あたらしい眼科 26(10):1387 1391,2009cはじめに細菌や真菌による角膜感染症は,日常診療において比較的よく遭遇する疾患で,ときに角膜穿孔や角膜混濁をひき起こして高度視力低下をもたらす場合もある点で,術後眼内炎とともに大きな臨床的課題となっている.発症メカニズムを考えるうえにおいて,原因病原体が角膜に接着,侵入する契機は重要であるが,先に行われた角膜感染症全国サーベイランスでは,角膜感染症(ウイルスを除く)の発症誘因として,〔別刷請求先〕鈴木崇:〒791-0295 愛媛県東温市志津川愛媛大学医学部眼科学教室Reprint requests:Takashi Suzuki, M.D., Department of Ophthalmology, Ehime University School of Medicine, Shitsukawa, Toon-shi, Ehime 791-0295, JAPAN洗面所における微生物汚染調査鈴木崇*1白石敦*1宇野敏彦*1江口秀一郎*2勝海修*3望月清文*4 井上康*5岡宮史武*6宮田和典*7大橋裕一*1*1 愛媛大学医学部眼科学教室*2 江口眼科病院*3 西葛西・井上眼科クリニック*4 岐阜大学医学部眼科学教室 *5 井上眼科*6 岡宮眼科*7 宮田眼科病院Microbial Contamination in SinkTakashi Suzuki1), Atsushi Shiraishi1), Toshihiko Uno1), Shuichiro Eguchi2), Osamu Katsumi3), Kiyofumi Mochizuki4), Yasushi Inoue5), Fumitake Okamiya6), Kazunori Miyata7) and Yuichi Ohashi1)1)Department of Ophthalmology, School of Medicine Ehime University, 2)Eguchi Eye Hospital, 3)Nishikasai Inouye Eye Clinic, 4)Department of Ophthalmology, School of Medicine Gifu University, 5)Inoue Eye Clinic, 6)Okamiya Eye Clinic,ツꀀ 7)Miyata Eye Hospitalコンタクトレンズ関連角膜感染症の発症には,レンズケアあるいは保管の舞台である洗面所の微生物汚染が関与している可能性がある.そこで今回,全国 6 カ所(北海道,東京,岐阜,岡山,愛媛,宮崎),計 60 家庭における夏季と冬季の洗面所の汚染状況を検討した.夏季と冬季の細菌の検出率は,それぞれ 83.3%,93.3%と冬季に高い傾向を示した.真菌のうち,糸状菌については夏季,冬季ともに 100%近く検出されたが,酵母状真菌については夏季(18.3%)よりも冬季(38.3%)に多く検出された.アカントアメーバの検出率は夏季 3.3%,冬季 6.6%とほぼ一定であった.検出菌種では,Sphingomonasツꀀ paucimobilis,Flavimonasツꀀ oryzihabitans,Pseudomonasツꀀツꀀ uorescens などのグラム陰性桿菌や Aspergillusツꀀ sp.,Penicilliumツꀀ sp. が年間を通じて多く,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,Klebsiellaツꀀ sp.,Fusarium sp. などに季節変動がみられた.わが国の洗面所の微生物汚染状況はほぼ一定ではあるが,気候や季節によって一部の菌種が変動している可能性が示唆される.Contact lens-related infectious keratitis is associated with microbial contamination of the lens, or with lens storageツꀀ inツꀀ theツꀀ sink.ツꀀ Thisツꀀ studyツꀀ investigatedツꀀ microbialツꀀ contaminationツꀀ ofツꀀ theツꀀ sinksツꀀ inツꀀ 60ツꀀ homesツꀀ inツꀀ 6ツꀀ di erentツꀀ areas(Hokkaido,ツꀀ Tokyo,ツꀀ Gifu,ツꀀ Okayama,ツꀀ Ehimeツꀀ andツꀀ Miyazaki)inツꀀ summerツꀀ andツꀀ winter.ツꀀ Bacteriaツꀀ wereツꀀ detectedツꀀ inツꀀ 83.3% or 93.3% of all homes in summer and winter, respectively;fungi were detected in 98.3% of all homes in summer andツꀀ winter.ツꀀ Furthermore,ツꀀ Acanthamoebaツꀀ wasツꀀ detectedツꀀ inツꀀ 3.3%ツꀀ andツꀀ 6.6%ツꀀ ofツꀀ allツꀀ homesツꀀ inツꀀ summerツꀀ andツꀀ winter, respectively.ツꀀ Althoughツꀀ gram-negativeツꀀ rodツꀀ suchツꀀ asツꀀ Sphingomonasツꀀ paucimobilis,ツꀀ Flavimonasツꀀ oryzihabitans,ツꀀ and Pseudomonasツꀀ uorescens andツꀀ lamentous fungi such as Aspergillus sp. and Penicillium sp. were predominant throughツꀀ theツꀀ year,ツꀀ coagulase-negativeツꀀ staphylococciツꀀ andツꀀ Fusariumツꀀ sp.ツꀀ wereツꀀ ofツꀀ tenツꀀ detectedツꀀ inツꀀ summerツꀀ andツꀀ Kleb-siella sp. was often detected in winter. Microbial contamination of sinks appears to be in uenced by climate or sea-son.〔Atarashii Ganka(Journal of the Eye)26(10):1387 1391, 2009〕Key words:コンタクトレンズ,角膜感染症,レンズケア,洗面所,細菌,真菌,アカントアメーバ.contactツꀀ lens, infectious keratitis, lens care, sink, bacteria, fungi, Acanthamoeba.———————————————————————- Page 21388あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(90)コンタクトレンズ(CL)装用が大きくクローズアップされている1).CL 装用に伴って生じる角膜感染症,すなわち CL 関連角膜感染症は,CL 装用に伴う角膜上皮障害や局所免疫の低下などのホスト側の要因に,CL 自体の微生物汚染が加わって発症すると考えられる2).CL への微生物汚染のメカニズムとしては,第一に,CL が結膜 内でブドウ球菌などの外眼部常在菌に汚染される経路,第二に,CL が眼外,すなわちレンズケースにおいて環境菌に汚染される経路とが考えられる2).特に,後者の汚染ルートにおいては,レンズケアが不十分な場合,multipurposeツꀀ solution(MPS)の消毒効果では間に合わないため,繁殖した環境微生物が容易に CL を汚染するものと思われる.さて,ほとんどの CL 装用者は,CL 装用,CL ケア,CLの管理を洗面所で行っていることから,洗面所に存在する微生物が CL やレンズケースを汚染する可能性は非常に高いと考えられるが,わが国の住環境下での洗面所にどのような微生物が存在するのかはこれまでほとんど明らかにされていない.そこで,今回,気候・風土の異なる 6 地点を全国から選抜し,家庭の洗面所にどのような微生物が存在するのか,また,微生物検出状況に季節変動は認められるかについて検討した.I方法北海道・東京・岐阜・岡山・愛媛・宮崎の各地点において,それぞれ 10 家庭(計 60 家庭)の洗面所を対象に,細菌,真菌,アカントアメーバによる汚染状況を調査した.細菌とアカントアメーバについては,直径 3 cm の滅菌広口瓶に滅菌蒸留水を入れ,蓋を開けたままで 1 週間洗面所に静置することで,多くの部位(空気中,蛇口からの水道水,手指・口内からの分泌物など)からの汚染の検出を試みた.真菌については,ポテトデキストロース培地面を上に向け,蓋を開けた状態で 1 日間洗面所に静置した.その後,両サンプルを回収し,細菌・真菌・アカントアメーバの培養・同定を財団法人ツꀀ 阪大微生物病研究会に依頼した.調査は夏季 7 月と冬季12 月の 2 回行った.また,調査時期の各地における気温と湿度も調べた.II結果1. 微生物検出率細菌,真菌,アカントアメーバの夏季・冬季の検出率を表1 に示す.細菌の検出率は,夏季で 83.3%,冬季で 93.3%と冬季で高かった.また,糸状菌が夏季・冬季ともに 98.3%と,ほぼすべての家庭で年間を通じて検出されたのに対し,酵母状真菌は,夏季で 18.3%,冬季で 38.3%と冬季で検出率が上昇した.アカントアメーバの検出率は,夏季 3.3%,冬季 6.6%とほぼ一定であった.なお,北海道と東京における細菌検出率が,夏季・冬季ともに他の地域よりも低い傾向を示した.2. 検出菌種夏季,冬季における上位検出菌種(細菌,真菌)と検出株数を表 2,3 に示す.細菌においては,夏季・冬季ともに,Sphingomonasツꀀ paucimobilis,Flavimonasツꀀ oryzihabitans,Pseudomonasツꀀ uorescens などのグラム陰性桿菌が 6 7 割を占め,coagulase-negative staphylococci(CNS)や Micrococ-cusツꀀ sp. などのグラム陽性球菌,Bacillusツꀀ sp. や Corynebacte-riumツꀀ sp. などのグラム陽性桿菌はそれぞれ 1 2 割程度であった.CL 関連角膜炎感染症の原因菌として知られる Pseu-domonasツꀀ aeruginosa,Serratiaツꀀ marcescens も検出されたが,検出菌の上位にはランクされなかった.季節変動がみられたものとしては,CNS(夏季>冬季)やStaphylococcusツꀀ aureus(夏季>冬季),Pseudomonasツꀀツꀀ uores-cens(夏季<冬季),Klebsiellaツꀀ sp.(夏季<冬季),Serratia marcescens(夏季<冬季),Streptococcusツꀀ sp.(夏季<冬季)などがあげられる.真菌では,同定ができないものも含めて糸状菌が多数を占め,Penicillium sp. と Aspergillus sp. が検出菌上位であった.夏季では,Acremoniumツꀀ sp.,Cladosporiumツꀀ sp.,Fusarium sp. が上位で検出されるなど,バリエーションが増加している.角膜炎の原因菌となりうる Aspergillus sp.,Penicillium sp., Fusarium sp. をピックアップし,地域別の検出数をみてみると,Aspergillusツꀀ sp. は全国に広く分布し夏季にやや多いこと,Penicilliumツꀀ sp. は東北日本に多く冬季に多いこと,Fusarium sp. は夏季に多いことが判明した(表 4).酵母状真菌については,冬季に増加する傾向が認められた.3. 調査時期の各地の気温と湿度表 5 に調査時期 1 週間の平均気温と平均湿度を示す.気温,湿度は夏季,冬季とも西高東低の傾向であった.表 1地域別微生物検出率─ 1 地域 10 家庭中,微生物が検出された家庭数を示す─北海道東京岐阜岡山愛媛宮崎計細菌夏季86109101053(83.3%)冬季971010101056(93.3%)酵母状真菌夏季42021211(18.3%)冬季33436423(38.3%)糸状菌夏季1010101010959(98.3%)冬季9101010101059(98.3%)アカントアメーバ夏季001001 2(3.3%)冬季000121 4(6.7%)———————————————————————- Page 3あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,20091389(91)III考察CL 装用者の増加に伴って,CL 関連角膜感染症の患者数も急増しており,若年層に多発することから大きな社会的問題ともなりつつある.先にも述べたように,こうした CL 関連角膜感染症の発症メカニズムには,レンズケースを介した微生物の CL 汚染が関与している可能性が高い.ほとんどのCL ユーザーが CL ケアを洗面所で行っていることから,わが国の住居内の洗面所にどのような微生物が存在するのかを調査することはきわめて重要である.これまでのわが国における家庭の洗面所の汚染状況についての検討は 1 報のみで3),表 2検出細菌の上位菌種と検出数夏季株数冬季株数○:Bacillus sp.15W*:Pseudomonasツꀀ uorescens22*:Sphingomonas paucimobilis14△:Micrococcus sp.13S△:Coagulase-negative staphylococci12*:Sphingomonas paucimobilis13△:Micrococcus sp.11○:Bacillus sp.12*:Flavimonas oryzihabitans 9*:Flavimonas oryzihabitans10*:Acinetobacter sp. 8W*:Klebsiella oxytoca 7W*:Pseudomonasツꀀ uorescens 7○:Corynebacterium sp. 6○:Corynebacterium sp. 6W*:Klebsiella pneumoniae 6*:Methylobacterium mesophilicum 6*:ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌 6*:Brevundimonas vesicularis 5W*:Serratia marcescens 5*:Comamonas acidovorans 5*:Acinetobacter sp. 5W*:Klebsiella oxytoca 3*:Stenotrophomonas maltophilia 5S*:Pseudomonas alcaligenes 3W△:Streptococcus sp. 5S△:Staphylococcus aureus 3*:Brevundimonas vesicularis 4*:ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌 3*:Acinetobacter baumannii 3S*:Aureobasidium sp. 2S△:Coagulase-negative staphylococci 3S*:Comamonas testosteroni 2*:Pseudomonas aeruginosa 3S*:Enterobacter cloacae 2*:Comamonas acidovorans 3*:Pseudomonas aeruginosa 2*:Methylobacterium mesophilicum 3W*:Serratia marcescens 2*:Pseudomonas putida 2*:Pseudomonas stutzeri 2*:グラム陰性桿菌,△:グラム陽性球菌,○:グラム陽性桿菌.S:検出株数が夏季>冬季である菌,W:検出株数が夏季<冬季である菌.表 5調査日1週間の平均気温と平均湿度地域7月12 月気温(℃)湿度(%)気温(℃)湿度(%)北海道18.6±1.575.1±6.20.2±1.168.3±7.1東京23.8±1.273.9±7.68.9±1.256.0±12.0岐阜24.3±1.575.7±9.78.0±0.974.4±10.9岡山24.8±1.077.7±6.48.5±1.575.1±8.4愛媛24.4±1.386.1±4.911.4±2.472.5±9.1宮崎25.5±1.383.4±5.811.6±3.075.9±9.6表 3検出真菌の上位菌種と検出数夏季株数冬季株数Aspergillus sp.22Penicillium sp.20Penicillium sp.15Aspergillus sp.15Acremonium sp.14酵母様真菌(同定不能)27Cladosporium sp. 9糸状菌(同定不能)91Fusarium sp. 8Absidia sp. 6Geotrichum sp. 6Alternaria sp. 5Paecilomyces sp. 3酵母様真菌(同定不能) 4糸状菌(同定不能)74表 4角膜炎原因糸状菌の地域別検出数北海道東京岐阜岡山愛媛宮崎計Aspergillus sp.夏季63232622冬季14224215Penicillium sp.夏季12721215冬季46360120Fusarium sp.夏季1200418冬季0000000———————————————————————- Page 41390あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,2009(92)5 家庭の洗面所を含む 90 カ所について,黄色ブドウ球菌,緑膿菌,大腸菌,好気性細菌の汚染を拭き取り試験によって調査したものである.真菌やアカントアメーバを含む詳細な分離菌の解析,季節性や地域性も考慮した検討はなされていないが,黄色ブドウ球菌は洗面所において 5 家庭中 1 家庭で検出され,緑膿菌が検出された家庭は一つもみられなかったという.筆者らの調査では,洗面所に 1 週間静置した滅菌蒸留水を培養検査しているため,CL ケースへの環境微生物汚染をより模擬しうるものであると考える.今回の調査により,洗面所には細菌や真菌などの微生物が常に存在していることが再確認された.これは,レンズケースに保存するタイプの CL を使用しているユーザーの MPSの使用法やレンズケースのケアに問題があれば,細菌や真菌による汚染が容易に起きる状況にあることを示唆している.検出菌種の調査では,水場などの環境中に生息しているグラム陰性桿菌や環境汚染菌である Bacillusツꀀ sp. が,また,真菌では Aspergillusツꀀ sp. や Penicilliumツꀀ sp. が多く検出されており,洗面所がこれら環境菌の温床である可能性が高い.一方で,環境菌だけでなく, Staphylococcus sp. や Coryne-bacterium sp. など,皮膚や粘膜の常在細菌も比較的高頻度に検出された.このことは,手指や顔面の洗浄,あるいは歯磨きなどの行為によって,生体内の常在細菌が洗面所にも存在する可能性を示している.重篤な角膜炎の病原体として近年注目されているアカントアメーバの検出率は夏季 3.3%,冬季 6.6%と,今回の検討では決して高いものではなかった.これは,アカントアメーバ角膜炎の発症頻度からもうなずける数字ではあるが,レンズケース細菌により汚染されている場合には,日常のレンズケアのなかで,アカントアメーバによる汚染が十分に起こりうることを示唆している.細菌の検出率は北海道,東京で,夏季・冬季とも他の地域よりも低い傾向にあった.このことは,洗面所の細菌汚染には気候や風土,特に気温が関与していると思われる.一般に寒冷地では細菌や真菌などによる感染症が少ないとされてはいるが,近年の地球温暖化に伴って,今後は様相が変わる可能性もある.地域,季節を問わず検出される微生物がある一方で,季節変動を示すものも少なからず見受けられた,特に,CL 関連角膜感染症の主要原因菌とされる CNS が夏季に多く検出されたことは,体表面の汗などの分泌物の曝露が夏に多く,CNS が汚染しやすいためではないかと推測される.また,重篤な角膜炎をひき起こす Pseudomonasツꀀ aeruginosa や Ser-ratiaツꀀ marscescens については Pseudomonasツꀀ aeruginosa 夏季2 株,冬季 3 株,Serratiaツꀀ marscescens 夏季 2 株,冬季 5 株と,後者で冬季に多い傾向を示した.他のグラム陰性桿菌も同様な傾向を示しており,この理由としても,気温,湿度などの影響が考えられる.一方,Sphingomonas paucimobilis,Flavimonas oryzihab-itans,Pseudomonasツꀀツꀀ uorescens などのグラム陰性桿菌が 1年を通して多く検出された.しかしながら,これらは角膜に対しての病原性が確認されていないため,角膜炎の原因菌にはなりえない可能性がある.このことが,CL 関連角膜感染症が過剰に発症しない理由であると思われる.近年,CL 装用者における Fusarium 角膜炎が,アメリカやシンガポールなどで爆発的に発生し大きな問題となった4 6).Fusarium 角膜炎のアウトブレイクの原因については,感染者の MPS と同じロットナンバーにおける MPS 汚染調査において Fusariumツꀀ sp. の汚染が認められず,また,検出された Fusariumツꀀ sp. の遺伝背景が感染者によって異なることより MPS の汚染でないことが証明されている6).一方では,ReNuツꀀ Moistureツꀀ LocRの MPS を使用することで,ケース内でフィルムが形成され,このフィルムを足場に環境中のFusarium sp. が増殖したことがアウトブレイクの原因ではないかと推測されている7).そのため,わが国における洗面所の Fusariumツꀀ sp. の汚染状況を調べることは,今後の MPSの開発に多くの情報を与える.今回の検討では,Fusarium sp. は夏季のみに検出されており,気候に大きく左右される可能性が高い.わが国では,Fusariumツꀀ sp. による角膜炎は植物による角膜外傷後にみられることが一般的であり,CL装用者の報告はほとんどない.この要因の一つには,日本の気候風土,および生活習慣(靴を脱ぐ)などが関与していると思われるが,もしも ReNu Moisture LocRが販売されていたなら,同様の Fusarium 角膜炎が生じていた可能性も考えられる.今回の多施設調査により,わが国の洗面所での微生物汚染状況の輪郭が明らかになった.これらのデータは,CL 関連角膜感染症の発症機序を考えるうえで示唆を与えるものであり,レンズケアのあり方を再確認するうえでも有用である.今後,できれば学会ベースで継続的なサーベイランスを実施し,洗面所での検出菌の動向を監視していく必要があると思われる.文献 1) 感染性角膜炎全国サーベイランス・スタディーグループ:感染性角膜炎全国サーベイランス─分離菌・患者背景・治療の現況─.日眼会誌 110:961-972,2006 2) 大橋裕一,鈴木崇,原祐子ほか:コンタクトレンズ関連細菌性角膜炎の発症メカニズム.日コレ誌 48:60-67, 2006 3) Ojimaツꀀ M,ツꀀ Toshimaツꀀ Y,ツꀀ Koyaツꀀ Eツꀀ etツꀀ al:Bacterialツꀀ contamina-tion of Japanese households and related concern about sanitation. Int J Environ Health Res 12:41-52, 2002 4) Khor WB, Aung T, Saw SM et al:An outbreak of Fusari———————————————————————– Page 5あたらしい眼科Vol. 26,No. 10,20091391(93)um keratitis associated with contact lens wear in Singa-pore. JAMA 295:2867-2873, 2006 5) Bernal MD, Acharya NR, Lietman TM et al:Outbreak of Fusarium keratitis in soft contact lens wearers in San Francisco. Arch Ophthalmol 124:1051-1053, 2006 6) Chang DC, Grant GB, O’Donnell K et al:Multistate out-breakツꀀ ofツꀀ Fusariumツꀀ keratitisツꀀ associatedツꀀ withツꀀ useツꀀ ofツꀀ aツꀀ con-tact lens solution. JAMA 296:953-963, 2006 7) Zhang S, Ahearn DG, Noble-Wang JA et al:Growth and survival of Fusarium solani-F. oxysporum complex on stressedツꀀ multipurposeツꀀ contactツꀀ lensツꀀ careツꀀ solutionツꀀツꀀ lmsツꀀ on plastic surfaces in situ and in vitro. Cornea 25:1210-1216, 2006***