———————————————————————-Page10910-1810/09/\100/頁/JCLS(図3).もし内顆粒層の低反射が連続的に追えるようであれば,中心窩を含んでいない画像である可能性が高い.ただし例外として,中心窩低形成(fovealaplasia)はじめに光干渉断層計(OCT)は,タイムドメイン(TD)方式からスペクトラルドメイン(SD)方式への進化によって,深さ方向解像度が20μmから3~5μmに向上し,測定速度は70~100倍速くなった.網膜各層,外境界膜(ELM),視細胞内節外節接合部(IS/OS)がより鮮明に描出され,黄斑の網膜厚マップが数秒で得られる.本稿ではSD-OCTを中心に糖尿病黄斑浮腫の解釈について述べる.I中心窩(臨床的)を含む網膜断層像黄斑浮腫は,原則として,中心窩を含む網膜断面によって評価する.正常眼では中心窩が陥凹している(図1)が,OCTのスキャンラインが少しずれただけで中心窩の陥凹がなくなり,網膜膨化があるかのような画像になる(図2).患者の固視が不良である場合,得られた画像が中心窩を含むものであるかを判断しなければならない.OCT画像では,神経線維層,内外網状層,IS/OS,網膜色素上皮が高反射になり,神経節細胞層,内外顆粒層,視細胞層は低反射となる.中心窩では,外網状層(Henle線維層)が最内層となり,神経線維層・内網状層の高反射帯と神経節細胞層・内顆粒層の低反射層は存在しない.OCT画像を見た場合,まず内顆粒層の低反射層が連続的に追えるかどうかに注目する.中心窩を含むOCT画像であれば,網膜膨化や胞様変化の有無にかかわらず内顆粒層の低反射は中心窩付近で途絶える(45)625TO病371851133915病特集●光干渉断層計(OCT)はこう読む!あたらしい眼科26(5):625~629,2009糖尿病黄斑浮腫はこう読むInterpretationofOpticalCoherenceTomographyinDiabeticMacularEdema大谷倫裕*図1正常黄斑のSDOCT(水平,6mm)図3糖尿病黄斑浮腫のSDOCT(水平,6mm)中心窩には網膜膨化と胞様変化がある.内顆粒層を示す低反射(矢印)は中心窩の付近で途切れている.図2中心窩を含まないSDOCT(水平,6mm)中心窩の陥凹がない.内顆粒層を示す低反射(矢印)が途切れず連続している.———————————————————————-Page2626あたらしい眼科Vol.26,No.5,2009(46)く,網膜内層の層構造は保たれる.網膜内の水分貯留によって網膜組織は膨化し,OCTでは均質無構造な低反射となる(図5).2.胞様変化(胞様黄斑浮腫)糖尿病網膜症に併発した胞様黄斑浮腫の病理組織について,Tsoは,胞様変化はおもに外網状層にあり,進行例では内顆粒層・内網状層・神経節細胞層さらに神経線維層にも拡大すると述べている3).OCTでは,胞様変化は中心小窩とその周囲に胞様の低反射として描出され,網膜実質との境界は鮮明である.中心小窩では比較的大きな胞様変化が内境界膜に接するように存在する.中心小窩には内顆粒層は存在しないため,ここの胞様変化はおもに外網状層にあると考えられるが,内顆粒層と外網状層の胞様変化が融合して大きな胞になっているようにも見える.中心小窩の周囲では外網状層と内顆粒層に胞様変化が2列に存在することが多い.まれに神経線維層の付近にも胞様変化があることがあり,Tsoの報告と一致している.胞様黄斑浮腫はフルオレセイン蛍光眼底造影で花弁状あるいは蜂巣状の蛍光色素貯留として描出される.花弁状の過蛍光は,中心窩にある大きな胞に一致し,蜂巣状過蛍光のある部位では内顆粒層に胞様変化が存在した4)(図6).3.漿液性網膜離糖尿病黄斑浮腫では15%に漿液性網膜離が存在した2).OCTでは,離した神経網膜と網膜色素上皮に囲まれた低反射領域として観察され,網膜下液の背は中心窩下で最も高い(図7).ただし,網膜下液の混濁があると,下液の反射輝度が神経網膜のそれと同等になるのでは,中心窩の陥凹が消失し,網膜内層の組織も存在する.OCTで中心窩付近をスキャンしても内顆粒層の低反射は連続的に追うことができる(図4)1).II糖尿病黄斑浮腫の網膜断層像糖尿病黄斑浮腫は,浮腫の範囲や発症機転の違いによって局所性浮腫とびまん性浮腫に分類される.基本的には病的な網膜血管からの漏出によって黄斑浮腫は起こるが,硝子体の牽引が関与していることもある.糖尿病黄斑浮腫をOCTで観察すると,その網膜断層像は,網膜膨化・胞様変化・漿液性網膜離の組み合わせによって構成されている2).さらに黄斑を牽引する部分的に離した後部硝子体皮質や硬性白斑が描出されることもある.1.網膜膨化網膜膨化は糖尿病黄斑浮腫のほぼ全例でみられるが,それが単独で起こることは少なく,胞様変化を伴っていることが多い.網膜膨化はおもに外網状層に起こる.内顆粒層にも起こるが,それよりも内層には起こりにくA4中心窩低形成A:カラー眼底.中心窩の陥凹がない.B:SD-OCT(垂直,6mm).中心窩の陥凹がなく,内顆粒層の低反射(矢印)が連続して追うことができる.B5網膜膨化SD-OCT(水平,6mm):おもに外網状層に均質無構造な網膜膨化がある(△).———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.5,2009627(47)で網膜膨化とまぎらわしいことがある.糖尿病網膜症や静脈閉塞症などの網膜血管病に漿液性網膜離を合併する場合,黄斑部の神経網膜にも膨化あるいは胞様変化が必ず存在する.4.硝子体牽引Lewisらは,肥厚した硝子体皮質による黄斑牽引がある症例に対し硝子体手術が有効であることを報告し,硝子体牽引が黄斑浮腫に関与していることを示した5).このような肥厚した硝子体皮質による牽引がある場合には,硝子体牽引によって網膜が変形していることが多い(図8).一方,硝子体が中心窩にピンポイントで接着して胞様黄斑浮腫が起こっていることがある.後部硝子体離や硝子体手術によって,硝子体と中心窩との接着がなくなると胞様黄斑浮腫が消失することから,このような場合にも硝子体牽引が黄斑浮腫に関与している可能性が高い6).ただし,正常眼でも中心窩の周囲で部分図6胞様変化A:蛍光眼底造影.中心窩に大きな花弁状の蛍光貯留があり,耳側に蜂巣状過蛍光がある.B:SD-OCT(水平,6mm).中心窩に大きな胞様変化があり,その耳側には外網状層に網膜膨化,内顆粒層に胞様変化(矢印)がある.BA7漿液性網膜離SD-OCT(水平,6mm):漿液性網膜離は離した神経網膜と網膜色素上皮に囲まれた低反射領域として観察される(△).網膜下液の背は中心窩下で最も高い.網膜内には,おもに外網状層に網膜膨化がある.図8硝子体牽引A:SD-OCT(水平,6mm):中心窩が,部分的に離した硝子体皮質(矢印)に牽引されている.その結果,胞様変化と網膜変形をきたしている.視力は0.2であった.B:SD-OCT(水平,6mm):1カ月後,硝子体の牽引は自然に解除された(矢印).胞様変化はまだ残っている.視力は0.3.C:SD-OCT(水平,6mm):4カ月後,胞様変化は消失している.視力は0.4.ABC———————————————————————-Page4628あたらしい眼科Vol.26,No.5,2009(48)6.ELMとISOS抗VEGF(血管内皮増殖因子)やステロイドの眼内投与によって,劇的に黄斑浮腫が改善しても視力は向上しないことがある.そのような症例ではOCTでIS/OSやELMが観察されないことが多い.また黄斑浮腫の程度が同じでも,ELMやIS/OSが消失している眼のほうが視力不良であり,黄斑網膜厚よりもこれらの状態が視力への影響が大きい(図10).OCT3でもIS/OSは観察可能であったが,ELMは描出できなかった.さらに黄斑浮腫があるとIS/OSもほとんど描出不能であった.SD-OCTは,高度な黄斑浮腫でなければELM・IS/OSの観察は可能である.ただし,網膜膨化や硬性白斑などによる測定光の減衰があるとELMやIS/OSが欠損しているように見えることがあるので注意が必要である.図11は胞様黄斑浮腫のSD-OCTであるが,胞様変化がない部位ではきれいにELMとIS/OSが描出されている.矢印の部位でIS/OSが脱落しているように見えるが,これは網膜膨化による測定光の減衰によるアーチファクトである.OCT画像上の大きな胞様変化的に硝子体皮質が離していることはまれではなく,中心窩周囲に部分的な硝子体離があるからといって網膜を牽引しているとまでは言い切れない.5.硬性白斑硬性白斑は網膜血管から漏出した脂質や血漿蛋白の沈着によって起こる.OCTの測定光は硬性白斑において強い反射が起こるため,硬性白斑は強い反射塊として描出される.一方,硬性白斑によって測定光がブロックされるため,その後方(強膜方向)は低反射領域となる(図9).これは超音波エコーのアコースティックシャドーに似ている.病理組織の報告では硬性白斑は外網状層に貯留する7).OCTでも,硬性白斑は外網状層に蓄積していることが多いが,さらに内層の網膜内に存在することもある.びまん性黄斑浮腫が吸収される過程で,硬性白斑が中心窩に沈着し高度な視力障害を残すことがある.このような場合,OCTでは硬性白斑と網膜色素上皮が融合しているように描出され,硬性白斑が網膜下に沈着していると考えられる8).図9硬性白斑A:カラー眼底.びまん性黄斑浮腫と硬性白斑がある.B:SD-OCT(水平,6mm).外網状層にある硬性白斑が測定光をブロックしているため,網膜外層にすじ状の低反射がある(矢印).AB10黄斑浮腫と外境界膜(ELM)および視細胞内節外節接合部(IS/OS)A:SD-OCT(水平,6mm).中心小窩には大きな胞様変化が内境界膜に接するようにある.ELMはわずかに観察されるが,IS/OSは消失している.視力は0.1であった.B:SD-OCT(水平,6mm).Aと同様に胞様変化があるが,ELM・IS/OSともに明瞭に観察できる.視力は1.0を維持している.AB———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.26,No.5,2009629(49)になり,より詳細に糖尿病黄斑浮腫を評価できるようになった.しかし,光の干渉現象によって網膜の断層画像を描出するOCTの基本原理は同じであり,OCT特有のアーチファクトに注意して画像を読影することが重要である.文献1)MarmorMF,ChoiSS,ZawadzkiRJetal:Visualinsigni-canceofthefovealpit:reassessmentoffovealhypoplasiaasfoveaplana.ArchOphthalmol126:907-913,20082)OtaniT,KishiS,MaruyamaY:Patternsofdiabeticmacu-laredemawithopticalcoherencetomography.AmJOph-thalmol127:688-693,19993)TsoMO:Pathologyofcystoidmacularedema.Ophthal-mology89:902-915,19824)OtaniT,KishiS:Diabeticmacularedema─Correlationbetweenopticalcoherencetomographyanduoresceinangiography.Ophthalmology114:104-107,20075)LewisH,AbramsGW,BlumenkranzMSetal:Vitrecto-myfordiabeticmaculartractionandedemaassociatedwithposteriorhyaloidaltraction.Ophthalmology99:753-759,19926)YamaguchiY,OtaniT,KishiS:Resolutionofdiabeticcystoidmacularedemaassociatedwithspontaneousvitre-ofovealseparation.AmJOphthalmol135:116-118,20037)MurataT,IshibashiT,InomataH:Immunohistochemicaldetectionofextravasatedbrinogen(brin)inhumandia-beticretina.GraefesArchClinExpOphthalmol230:428-431,19928)OtaniT,KishiS:Tomographicndingsoffovealhardexudatesindiabeticmacularedema.AmJOphthalmol131:50-54,2001の下にわずかに確認できるELMは網膜色素上皮側に弯曲しており(▽),IS/OSは確認できず,この部位では視細胞外節が消失していると考えられる.まとめSD-OCTによってELMやIS/OSが観察できるよう図11黄斑浮腫と外境界膜(ELM)および視細胞内節外節接合部(IS/OS)A:SD-OCT(水平,6mm),B:補足画像.中心窩とその周囲に胞様変化がある.胞様変化がない部位ではきれいにELMとIS/OSが描出されている.矢印の部位でIS/OSが脱落しているように見えるが,これは網膜膨化による測定光の減衰によるアーチファクトである.中心窩では,ELMは網膜色素上皮側に弯曲しており(▽),IS/OSは確認できず,この部位では視細胞外節が消失していると考えられる.BA