———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.8,200811110910-1810/08/\100/頁/JCLSPDT後における炎症反応と血管新生のどちらにも対抗できるものであり,合目的的であるといえる.実際の治療方法TA投与はTA20mgまたは40mgの後部Tenon下注射を行う方法と,TA4mgまたは25mgの硝子体内注射を行う方法が報告されている.海外では硝子体内注射の報告が多いが,わが国では安全性と副作用の点から,Tenon下注射20mgを行う方法が広く用いられている.薬剤の投与時期にはPDT前投与,同時投与,後投与などさまざまな議論があり,確定された時期はないが,まずTAのTenon下注射を行っておいて,一定の間隔(たとえば7日)後にPDTを行う方法(PPP:Pharmacology-Pause-Photodynamictherapy,Yan-nuzzi)は,理論的には良い方法であり,筆者らもこの方法を用いている.本方法の良い点(表1)TAは徐放性薬剤であり,一度投与すると数週~数カ月の間,投与した局所での濃度が高まった状態を維持できるとされている.TAをPDTよりも前に投与することによって,術前にあらかじめ網膜浮腫,網膜離などの滲出の軽減が得られ,術後の視機能の回復には好都合である.胞様黄斑浮腫(CME)がみられる場合,ベルテポルフィンが胞様腔に貯留し,PDTの際に感覚網膜を障害する可能性が指摘されている(Yannuzzi).新しい治療と検査シリーズ(65)バックグラウンド加齢黄斑変性に対する光線力学的療法(PDT)は一般的治療法となり,わが国では約80%の視力維持率を得ることが可能になったが,視力改善率は20~30%と限界があり,PDTを行っても再燃・悪化する症例がある.PDTの効果を高め,よりよい視力改善を得るため,また,より少ない治療回数で脈絡膜新生血管(CNV)を退縮させ安定化させる手段が期待されている.新しい治療法これらの目的を達成するため,薬物によってPDTの効果を高める薬物併用PDTが種々の薬剤とPDTの組み合わせで試みられている.併用が検討されている薬物はステロイド薬,抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬である.ステロイド薬としてはトリアムシノロン・アセトニド(TA),anecortaveacetae(未認可)があるが,実際使用されているのはTAである.ステロイド薬は抗血管新生作用,抗浮腫作用,抗炎症作用,抗線維化作用を併せもつとされ,抗血管新生作用の作用機序として,細胞外基質メタロプロテナーゼやVEGFの発現抑制,基底膜分解の抑制,細胞内接着因子(ICAM)-1の発現抑制,エンドスタチンの発現増強,抗浮腫効果の作用機序として細胞膜安定化作用,血液網膜関門の安定化,抗炎症作用の作用機序として単球,白血球,マクロファージの遊走と活性化の阻害,炎症性サイトカインの局所集積の抑制効果が考えられている.一方,PDT後には,一過性に網膜離,網膜浮腫など滲出が増加することが知られており,白血球浸潤の増加および炎症性サイトカインの発現増加,網膜色素上皮細胞やマクロファージからのVEGF発現の一時的増強が起こることも知られている.以上のことから,ステロイド薬をPDTに併用することは,加齢黄斑変性の過程自体による血管新生と183.加齢黄斑変性に対するステロイド併用光線力学的療法プレゼンテーション:髙橋寛二関西医科大学枚方病院眼科コメント:湯澤美都子日本大学医学部視覚科学系眼科学分野表1期待されるステロイド併用PDTの利点作用機序の点から臨床的効果の点から1.抗炎症作用2.抗血管新生作用3.抗浮腫作用4.抗線維化作用1.より良好な視力回復2.より強いCNV縮小3.治療回数の減少4.PDTの副作用抑制5.PDT抵抗例への対処———————————————————————-Page21112あたらしい眼科Vol.25,No.8,2008TA前投与によってCMEをあらかじめ軽減できれば,PDT時の感覚網膜の障害が抑制される可能性があり,PDTの副作用抑制という点でも有用であると考えられる.TA投与による炎症性および血管新生性サイトカインの発現抑制によって,PDT後の新生血管の再増殖抑制や抗線維化作用が発揮された場合,術後視機能の良好な回復と治療回数の減少につながる可能性が高い.トリアムシノロン併用PDTの臨床報告は2003年のSpaideの報告に始まり,多数の報告があるが,Ariasら(2006年)のpredominantlyclassicCNVに対するPDT単独療法との前向きランダム化試験では12カ月後の平均視力,病変サイズの縮小,中心窩厚においてTA併用群が有意に良好な効果を示し,TA併用群で治療回数が有意に少なかったと報告している.ただし,欧米と異なり(66)(PEDPDT前VD0.5FAIAPEDRAP病巣bumpsign網膜出血液性色素上皮離RAP病巣(網膜血管と合)hotspot胞様黄斑浮腫(CME)CTPEDの光PEDの過光12カ月後VD0.7FAIAPEDCME消失CT図1網膜血管腫状増殖(RAP)に対するTA併用PDT有効例(治療前)眼底所見,画像診断からYannuzzi分類stageIIのPEDを伴うRAPと診断した.初回PDTの1週間前にトリアムシノロン20mgのTenon下注射を併用した.右眼視力0.5.図2図1の症例のTA併用PDT12カ月後1回の治療でRAP病巣と網膜出血,色素上皮離,胞様浮腫は消失し,右眼視力は0.7に改善し,12カ月維持された.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.8,20081113(67)わが国では,PDT単独療法で十分な治療効果が得られるポリープ状脈絡膜血管症が多いため,TA併用PDTの使用は加齢黄斑変性でPDTに抵抗する例や網膜血管腫状増殖などの難治例に限定される傾向があることも事実である.1)SpaideRF,SorensonJ,MarananL:Combinedphotody-namictherapywithvertepornandintravitrealtriamcino-loneacetonideforchoroidalneovascularization.Ophthal-mology110:1517-1525,20032)KaiserPK:Verteporntherapyincombinationwithtri-amcinolone:publishedstudiesinvestigatingapotentialsynergisticeect.CurrMedResOpin21:705-713,20053)AriasL,Garcia-ArumiJ,RamonJMetal:Photodynamictherapywithintravitrealtriamcinoloneinpredomimantlyclassicchoroidalneovascularization,one-yearresultsofarandomizedstudy.Ophthalmology113:2243-2250,20064)LeeYA,HoTC,ChenMSetal:Photodynamictherapycombinedwithposteriorsubtenontriamcinoloneacetonideinjectioninthetreatmentofchoroidalneovascularization.Eye:1-7,2008後ベバシズマブ投与群では中心窩の網膜厚の減少と視力の改善が得られたのに対し,トリアムシノロン併用PDTでは同様に網膜厚は減少するものの,視力の改善はみられていない.トリアムシノロンは網膜色素上皮に対して毒性をもつと報告されている.抗VEGF作用はベバシズマブやラニビズマブのほうがトリアムシノロンより強く,これらの抗VEGF薬併用PDTでは視力改善が得られたという報告もある.今後はPDT抵抗性の加齢黄斑変性や網膜血管腫状増殖に対しては,トリアムシノロン併用PDTよりはこれらの抗血管新生薬の単独投与あるいはPDTとの併用療法が主流になると考えられる.加齢黄斑変性の中心窩下脈絡膜新生血管(CNV)に対して,抗炎症作用と抗血管新生作用を有するステロイド薬を,それとは作用機序の異なる光線力学的療法(PDT)前に投与することは理にかなっている.理由は髙橋寛二先生が記載されたとおりであるが,PDT後に生じる照射野に一致した脈絡膜毛細血管板の虚血が血管内皮増殖因子(VEGF)の発現,ひいてはCNVの再発を増加させると考えられている点に対しても,VEGFの発現を抑制できるステロイドはPDTの回数を減少させるうえに有用であると考えられる.しかし,トリアムシノロンの硝子体内投与併用PDTとベバシズマブ(アバスチンR)の硝子体内投与の結果を比較したWeigertらの報告を読むと,6カ月本方法に対するコメント☆☆☆