考える手術④監修松井良諭・奥村直毅難治性緑内障へのロングチューブ手術三浦悠作高知大学医学部眼科学講座わが国ではロングチューブ手術として2012年にバルベルト緑内障インプラント(Baerveldtglaucomaimplant:BGI),2014年にアーメド緑内障バルブ(Ahmedglaucomavalve:AGV)が難治性緑内障に対して適応となりました.ロングチューブ手術はチューブを介して眼球後方へと濾過された房水がプレート周囲に形成された被膜に吸収されることで眼圧が下降します.従来のtrabeculectomyでは眼圧下降維持が困難である結膜瘢痕の強い症例や血管新生緑内障に対しても有効です.ロングチューブ手術の手術件数は増加傾向にあ縫合です.結膜切開はBGIでは120°,AGVでは90°の切開が必要です.子午線方向への結膜切開を長くしすぎると,切開した結膜が治癒する過程で直筋と癒着し,術後眼球運動障害を生じる可能性があります.Tenonと強膜を鈍的に.離し,プレート固定部位のスペースを確保します.直筋の上にプレートを固定すると術後眼球運動障害が生じるため,斜視鈎で確実に直筋の位置を確認し,BGIでは2直筋下,AGVでは2直筋間にプレートを挿入します.プレートは角膜輪部から9~10mmの位置でナイロン糸などの非吸収糸で固定します.チューブは前房または毛様溝,硝子体腔に挿入し,非吸収糸で強膜に固定します.術後のチューブ露出を予防するために,自己強膜や保存強膜でチューブを被覆します.自己強膜を使用する場合は強膜トンネルや強膜弁を作製し,保存強膜を使用する場合は適度な大きさにトリミングして使用します.最後に結膜を吸収糸で縫合し,ステロイドの結膜下注射またTenon.下注射を行います.聞き手:BGIとAGVの違いは何でしょうか?また,ります.それを予防するために吸収糸によるチューブ結どのように使い分けるのがよいでしょうか?紮が必須ですが,吸収糸が融解するまでの間は眼圧下降三浦:もっとも大きな違いは調圧弁の有無です.AGVが得られないため,チューブに針で穴を空けて房水を適はプレートとチューブの接合部に2枚のシリコーン膜か度に濾過するためのSherwoodslitを作製する必要があらなる調圧弁があるため,術後低眼圧が生じにくいでり,手術手技はAGVに比べて少し煩雑になります.す.BGIは調圧弁がないため,プレート周囲に結合組織プレートの面積はBGIが350mm2,AGVが184mm2の被膜が形成されるまでの術後1カ月程度は低眼圧になであり,プレートの面積が大きいBGIのほうが長期的(89)あたらしい眼科Vol.39,No.4,20224810910-1810/22/\100/頁/JCOPY考える手術な眼圧下降が得られると考えられています.過去のBGIとAGVの比較試験では,BGIはより低い眼圧を得やすく,AGVは低眼圧などの術後合併症が少ないという結果でした.これらの違いを考慮すると,最終的な目標眼圧が低い場合はBGIを選択し,高度な視神経障害のため早急な眼圧下降が必要な場合や唯一眼のため術後合併症を回避したい場合はAGVを選択するとよいと思います.また,無硝子体眼では低眼圧による脈絡膜出血などのリスクも高いため,硝子体手術後や硝子体手術併用の場合でもAGVがよい適応であると考えます.聞き手:チューブの挿入位置にはどのような違いがありますか?三浦:チューブの挿入位置は,前房,毛様溝,硝子体腔の3種類があります.挿入位置による眼圧下降効果の違いははっきりしませんが,チューブと角膜内皮の距離があるほど角膜内皮障害が生じにくいと考えられています.前房挿入では,角膜輪部から約1.5mmの位置で虹彩と平行にチューブを挿入します.チューブ先端が角膜内皮に接触すれば角膜内皮障害が生じ,虹彩に接触すれば虹彩炎やチューブ閉塞が生じるため,慎重に行う必要があります.偽水晶体眼・有硝子体眼では,角膜内皮障保護の点から毛様溝挿入が第一選択となります.角膜輪部から約2mmの位置で,虹彩や眼内レンズと平行にチューブを挿入します.チューブは柔軟なシリコーン製であるため,ときにチューブ先端が硝子体腔に入ってしまうことがあります.それを避けるために,チューブ先端をベベルダウンにトリミングしたり,チューブ内にナイロン糸を通して腰がある状態にしてから挿入する方法などがあります.他の二つの挿入位置に比べると挿入手技の難易度はやや高いです.硝子体手術を併用する場合や硝子体手術の既往がある場合は,角膜内皮障保護また挿入手技の容易さの点から硝子体腔挿入が第一選択となります.トリミングしたチューブを角膜輪部から約4mmの位置で硝子体腔に挿入します.硝子体がチューブ先端に嵌頓すると眼圧下降は得られません.そのため以前に硝子体手術の既往があったとしても,再度,周辺部硝子体が残存していないかを確認するほうがよいと思います.聞き手:プレートの固定位置はどこがよいでしょうか?三浦:耳上側が第一選択となります.上方への固定は,下方に比べて眼瞼とチューブ被覆した強膜との摩擦が少なく,チューブが露出しにくいです.また,保存強膜を482あたらしい眼科Vol.39,No.4,2022使用する場合,保存強膜の白さが術眼の強膜よりも目立つため,眼瞼に覆われる上方に固定するほうが整容的によいです.また,耳側は手術の際のworkingspaceを広く確保できます.鼻上側にプレートを固定すると上斜筋の運動障害を生じやすいため避けるほうがよいです.AGVのプレートは縦方向に長いため,鼻下側に固定する場合,プレート後端が視神経へ接触する可能性があり,それを避けるために角膜輪部から約8mmの位置で固定するほうが安全です.よって,プレートの固定位置は,耳上側>耳下側>鼻下側>鼻上側の順に推奨されます.聞き手:ロングチューブ手術に特有な合併症であるチューブ露出はどのように予防すればよいでしょうか?三浦:チューブ露出を避けるためには,自己強膜か保存強膜によるチューブの被覆が必須となります.保存強膜はより厚みがあるため自己強膜よりチューブ露出しにくいですが,事前に用意をする必要があります.また,下眼瞼よりも上眼瞼のほうが強膜との摩擦が少なく,チューブが露出しにくいとの報告があります.チューブ被覆したあとの結膜縫合の際は,チューブをTenon組織で被覆するように縫合することが大切です.多くの場合,術中にTenon組織は円蓋部側へと後退してしまうので,開瞼器や制御糸をゆるめた状態でTenon組織を角膜輪部付近まで確実に引っ張り出す必要があります.なお,BGIの硝子体腔挿入用のHo.mannelbowは大きく,厚みがあるため,眼瞼との摩擦によって露出しやすく,使用は避けるほうがよいと考えます.聞き手:ロングチューブ手術を行う際のコツはありますか?三浦:患者の多くは高齢者で,プロスタグランジン関連薬の使用歴があります.加齢やプロスタグランジン関連薬の副作用による眼窩脂肪組織の減少,それに伴う上眼瞼溝深化によってプレートの固定に難渋することがあります.その際は,角膜輪部から9~10mmの位置で先に運針を行い,その運針した非吸収糸をプレート固定用の穴に通してからプレートを挿入すると,簡便にプレートを固定できます.また,毛様溝にチューブを挿入する際のチューブの適切な長さは,非散瞳下ではチューブ先端が見えず,散瞳下ではチューブが見える長さが理想的だと思います.そのため,チューブをトリミングしてから毛様溝に挿入するのではなく,チューブを挿入したあとに眼内でチューブを適切な長さにトリミングするほうが確実に理想的なチューブの長さにすることができます.(90)