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硝子体手術のワンポイントアドバイス 180.星状硝子体症を伴う裂孔原性網膜剥離(中級編)

2018年5月31日 木曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載180180星状硝子体症を伴う裂孔原性網膜.離(中級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに星状硝子体症(asteroidhyalosis:AH)は,リン脂質,ムコ多糖などの粒子状混濁(asteroidbody:AB)が硝子体腔内に散在し,眼底の視認性が低下する疾患である.AHを有する眼の特徴として,硝子体の液化が少なく後部硝子体.離(posteriorvitreousdetachment:PVD)が生じていない症例が多いことがあげられる.AHを有する眼に裂孔原性網膜.離(rhegmatogenousretinaldetachment:RRD)をきたすことはまれであるが,筆者らは過去にそのような2症例を経験し報告したことがある1).●症例162歳,男性.左眼はAHの混濁を通して,上耳側に網膜格子状変性巣の辺縁が裂けた約3乳頭径大の弁状裂孔を認め,上耳側から黄斑部にかけてRRDをきたしていた(図1a).硝子体手術時の所見として,ABはやや前方に濃縮された状態を呈しており,一見,PVDを生じているようにみえたが,トリアムシノロンアセトニド塗布後に,網膜全面にやや厚みのある硝子体皮質と一部ABが残存している所見が確認された(図1b).ダイアモンドイレイサーを用いて膜状の硝子体皮質を後極から周辺に向かって.離したが,黄斑部を含む網膜全面で癒着が強固で,双手法を必要とした.全周にわたって人工的PVD作成を行い,気圧伸展網膜復位術,眼内光凝固,ガスタンポナーデにて復位を得た.●症例270歳,男性.左眼はAHの混濁を通して上耳側に約3乳頭径大の弁状裂孔を認め,その周囲に赤道部を越えるRRDを認めた(図2a).硝子体手術所見としては,症例1と同様,網膜全面にやや厚みのある硝子体皮質と一部ABが残存している所見が確認された(図2b).人工的PVD作製時に網膜全面で硝子体の癒着がやや強固であったが,症例1のように双手法は必要としなかっ図1症例1の術前眼底写真(a)と術中所見(b)左眼の上耳側に網膜格子状変性巣の辺縁が裂けた約3乳頭径大の弁状裂孔を認め,上耳側から黄斑部にかけてRRDをきたしていた.硝子体手術所見として網膜全面にやや厚みのある硝子体皮質と一部ABが残存している所見が確認された.(文献1より引用)図2症例2の術前眼底写真(a)と術中所見(b)左眼の上耳側に約3乳頭径大の弁状裂孔を認め,その周囲に赤道部を越えるRRDを認めた.硝子体手術所見は症例1と同様であった.(文献1より引用)た.その後,同様の手技で網膜は復位した.●AHを有するRRDの特徴今回の2症例は一見PVDが生じているようにみえたが,比較的厚い膜様の硝子体皮質が網膜全面に付着しており,その癒着が強固であった.通常のRRD,とくに強度近視眼や若年のRRDでもこのような所見は認められるが,通常,赤道部までは比較的容易にPVDが作製できる.本症例はその癒着が後極部から強固で,症例1では双手法による人工的PVD作製を必要とした.また,本症例の硝子体膜は通常のRRDよりもやや厚いように思われ,網膜格子状変性巣の存在する象限以外の部位でも,中間周辺部から周辺側に強固な網膜硝子体癒着がみられた.AHを有するRRD例に対して硝子体手術を施行する場合には,このような解剖学的特徴を十分に理解しておく必要がある.文献1)OkudaY,KakuraiK,SatoTetal:Twocasesofrheg-matogenousretinaldetachmentassociatedwithasteroidhyalosis.CaseRepOphthalmol9:43-48,2018(93)あたらしい眼科Vol.35,No.5,20186570910-1810/18/\100/頁/JCOPY

眼瞼・結膜:マイボーム腺機能不全とドライアイ

2018年5月31日 木曜日

眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人38.マイボーム腺機能不全とドライアイ大矢史香大阪労災病院高静花大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室マイボーム腺機能不全(MGD)では,涙液油層の菲薄化により涙液安定性の低下を生じ,蒸発亢進型ドライアイを併発する.MGDに併発するドライアイに対してはドライアイ治療を主体に行う.●はじめにマイボーム腺は瞼板内にあり,上下の眼瞼縁に開口部をもつ脂腺である.マイボーム腺機能不全(meibomianglanddysfunction:MGD)はなんらかの原因でマイボーム腺機能に異常をきたした状態であり,さまざまな眼不快感を引き起こす.また,マイボーム腺から分泌される脂質(meibum)は涙液の最表層である油層を形成するため,マイボーム腺機能の低下は涙液安定性の低下,すなわちドライアイと密接に関連している.本稿ではMGDの定義,臨床的特徴,MGDとドライアイの関連について概説する.C●MGDの定義MGDは「さまざまな原因によってマイボーム腺の機能が瀰漫性に異常をきたした状態であり,慢性の眼不快感を伴う」と定義されている1).MGDは分泌減少型と分泌増加型に分類され,それぞれ原発性のものと続発性のものに分けられる.臨床的には分泌減少型CMGDが分泌増加型CMGDに比べて圧倒的に多い.分泌増加型MGDの病態についてはいまだ不明な点も多く,一般的表1分泌減少型マイボーム腺機能不全(MGD)の診断基準にCMGDというと分泌減少型CMGDをさすため,本稿でも分泌減少型CMGDを中心に述べる.分泌減少型CMGDのうち原発性・閉塞性のものがもっとも頻度が高く,これは過剰角化物によりマイボーム腺導管が閉塞することでCmeibumのうっ滞を引き起こし,最終的にはマイボーム腺の腺房の廃用性萎縮とマイボーム腺の脱落が生じる病態である.これとは異なり,原発性・萎縮性の分泌減少型CMGDは,マイボーム腺の腺房の萎縮が原発性に生じることでCmeibumの分泌が減少する.続発性分泌減少型CMGDはアトピー,Stevens-Johnson症候群,移植片対宿主病,トラコーマなどに続発して,マイボーム腺開口部の閉塞が生じた状態である.C●MGDの臨床的特徴分泌減少型CMGDの診断基準を表1に,症例写真を図1,2に示す.MGDでは自覚症状と所見に乖離がみられることがある.理学所見が重症なのにもかかわらず,自覚症状が軽度であったり,その逆もありえる.また,MGDの自覚症状としてあげられる症状はドライアイや図1分泌減少型マイボーム腺機能不全の1例マイボーム腺開口部周囲に血管拡張と閉塞所見(plugging)を認める.(91)あたらしい眼科Vol.35,No.5,2018C6550910-1810/18/\100/頁/JCOPY図2マイボーム腺開口部周囲異常所見(眼瞼縁不整)長期にわたるCMGDにより腺構造が線維化した結果,開口部付近にくぼみを生じている.その他の眼表面疾患とも共通するものが多い.MGDに特異的な症状は特定されておらず,また,前述のようにMGDとドライアイは互いに関連し,併発していることもあるため,それぞれの症状を切り離して考えることは困難である.MGDのリスクファクターとしては,加齢,乾燥,性ホルモンの変化,コンタクトレンズの使用,緑内障点眼薬の使用などが知られている.こうしたリスクファクターはCmeibumの性質や分泌量を変化させたり,マイボーム腺の形態異常を引き起こすことでマイボーム腺の腺房の萎縮を生じさせると考えられている.C●MGDとドライアイ近年,ドライアイのコア・メカニズムとして「涙液層の安定性の低下」と「瞬目時の摩擦亢進」が注目されているが,MGDに併発するドライアイにもこのコア・メカニズムが密接にかかわっている.分泌減少型CMGDでは,涙液油層の減少により涙液蒸発が亢進し,涙液安定性が低下すると同時に,潤滑油の減少のため眼瞼摩擦も増大している.MGDでは蒸発亢進型ドライアイを生じることが多い.MGDとドライアイの発現率は報告によってさまざまである.最近の報告では,Kawashimaらが,日本のドライアイ診断基準を満たした患者のうちC42.3%にマイボーム腺開口部周囲閉塞所見を,37.0%にCmeibumの圧出低下を認めた,と報告している2).C●MGDとドライアイの治療MGDに併発する蒸発亢進型ドライアイの治療には涙液油層を補充し,涙液の蒸発を抑制する必要があるが,直接油層を補充する薬剤は現在のところ存在しない.そのため,meibumの分泌をうながすための眼瞼温罨法や眼瞼清拭など,従来のCMGDに対するセルフケアに加え,ドライアイ点眼薬や涙点プラグを用い,症状を改善させることを目標に治療を行う.ジクアホソルが作用するP2Y2受容体はマイボーム腺上皮にも存在している3)ため,ドライアイだけでなくCMGDに対する効果も期待されている4).3カ月間のジクアホソルの使用で,ドライアイとCMGDの症状,マイボーム腺開口部閉塞所見が改善し,油層の厚みも増したという報告がある5).C●おわりに本稿では,MGDの病態とドライアイとの関連について概説した.MGDはそれ単体でも不快な症状を引き起こすが,ドライアイを併発してより複雑な病態を呈し,治療に難渋することもしばしば経験する.現在,MGDに対する特効薬はないが,常に病態を適切に把握し治療を検討するよう努める必要がある.文献1)天野史郎:マイボーム腺機能不全の定義と診断基準.あたらしい眼科27:627-631,C20102)KawashimaCM,CYamadaCM,CSuwakiCKCetCal:ACclinic-basedCsurveyCofCclinicalCcharacteristicsCandCpracticeCpat-ternofdryeyeinJapan.AdvTherC34:732-743,C20173)CowlenCMS,CZhangCVZ,CWarnockCLCetCal:LocalizationCofCocularCP2Y2CreceptorCgeneCexpressionCbyCinCsituChybrid-ization.ExpEyeResC77:77-84,C20034)AritaCR,CSuehiroCJ,CHaraguchiCTCetCal:TopicalCdiquafosolCforCpatientsCwithCobstructiveCmeibomianCglandCdysfunc-tion.BrJOphthalmol97:725-729,C20135)AmanoS,InoueK:E.ectoftopical3%diquafosolsodiumonCeyesCwithCdryCeyeCdiseaseCandCMeibomianCglandCdys-function.CClinOphthalmolC11:1677-1682,C2017656あたらしい眼科Vol.35,No.5,2018(92)

抗VEGF治療:加齢黄斑変性:長期予後を見すえた治療・私のこだわり

2018年5月31日 木曜日

●連載監修=安川力髙橋寛二52.加齢黄斑変性:長期予後を見すえた川上摂子東京医科大学臨床医学系眼科学分野治療・私のこだわり加齢黄斑変性(AMD)は治療開始後数年たつと病状が多様化する.長期予後を見すえた治療には,EBMに基づく治療に加え,個々の症例から過不足なき治療について考えることが重要である.はじめにわが国で滲出型加齢黄斑変性(age-relatedCmaculardegeneration:AMD)に対し,最初の血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)阻害薬が認可されてからC9年が経過した.2012年に日眼会誌に掲載されたCAMDの治療指針1)では,typicalAMDはVEGF阻害療法,ポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalCvasculopathy:PCV)は光線力学的療法(pho-todynamicCtherapy:PDT)またはCVEGF阻害療法ないし併用,網膜血管腫状増殖(retinalCangiomatousCprolif-eration:RAP)はCPDTとCVEGF阻害療法の併用とされている.しかし,VEGF阻害療法とあるものの,薬剤選択や維持期の投与間隔などの治療方針に関しては明記されておらず,時を経るにつれ治療に対する考え方も変遷し,指針の内容は現在の治療方針と一部乖離している.Evidence-basedCmedicine(EBM)に基づくアルゴリズムの構築は必要だが,経過が長期化し再発形態が多様になると,一律の方法による治療継続に迷いを生じることも少なくない.そんなとき,どうするべきか.長期予後を見すえたリアルワールドのCAMD治療を筆者なりに考えてみたい.そのためには薬剤の種類やCPDTについても論じるべきだが,今回はおもに投与間隔について述べる.症例ごとに考える維持期の投与間隔維持期の追加投与は再発時投与(prorenata:PRN)が主流であったが,近年は計画的投与しながら滲出の有無で投与間隔を調節するCtreatandextend(TAE)が多くなっている.しかし,治療導入後滲出性変化が消退(ドライ化)した症例では,その後追加投与がなくても再発しない症例がC1年でC3割程度存在する2)ため,全症例にCTAEを導入するのは過剰投与であり,それに伴う(89)0910-1810/18/\100/頁/JCOPYRPE萎縮などの問題を回避するためにも,症例を選ぶ必要がある.最近,大中らによりCPRNとCTAEのハイブリッドともいえるCmodi.edTAEが提唱された3).必要かつ十分な投与に近づけるには非常にリーズナブルな方法である.その一方で,大きな漿液性(ときに出血を含む)網膜色素上皮.離(retinalCpigmentCepithelialCdetach-ment:PED)や線維血管性CPED,大型のポリープを伴うCPCVでは再発時網膜下出血をきたす場合があるため,最初からCproactiveを推したほうが安全なこともある.さらに患者背景も重要である.たとえば僚眼がすでに視力不良な症例では再発のリスクを極限まで下げる必要があるし,遠距離通院や認知症のある患者にとっては計画的投与のほうが好都合な場合もある.TAEでは調節間隔も議論となる.一般的なC2週間ずつでなくC4週間ずつ延長する方針のほうがドライ化の可否を速やかに判別できるが,易再発性を理由に症例を選んでCTAEにするならC2週の微調節で慎重に行うほうがよいのではないか.筆者はC1週間単位で調整することもある.また,短縮時もC2ないしC4週短縮するか,あるいはマンスリーに戻すか未だ方針は定まっていないが,これも病態に基づいて変えるべきである.上記のように網膜下出血を起こしやすい病態であればマンスリーに戻すべきであろう.症例提示投与間隔を考えるうえで印象に残った症例を紹介する.図1は導入期C3回アフリベルセプト硝子体内注射(intravitreousCinjectionCofCa.ibercept:IVA)を行い,その後C4週調節のCTAEを行ったCPCVの症例である.初診時にインドシアニングリーン蛍光造影(indocya-nineCgreenCangiography:IA)でポリープを認め,大型の漿液性CPEDを伴っていた.IVA開始後CPEDは減少あたらしい眼科Vol.35,No.5,2018C653図14週間隔で調節するTAEの方針で治療開始したPCVの症例IVA開始後C16週目にCPEDは消失,21週目に再発.22週目から4~5週間ごとに追加したがCPEDは消失せず,6週では増加,再度4~5週に戻した.IAで当初ポリープが認められたがCPED再発時には検出されなかった.し,16週目にCPEDは消失.12週間隔に延長しC28週目に再投与を予定したが,21週目に視力低下を訴え受診した.PEDの再発を認め,光干渉断層計でCPED内部にhyperre.ectiveCmaterialが認められた.22週目にCIVAを施行し,その後C4~5週間ごとの投与としたが,PEDの丈は減るも消失しなかった.減少がプラトーになり39週目でC6週へ延長すると増加したため,再度C4~5週に戻して投与を続けている.Hyperre.ectiveCmaterialの構成成分の特定は困難だが,VEGF阻害薬投与後も残るものはCPED内部の線維化の可能性も考えられる.この症例ではいったんドライ化したかにみえたが,4週調節のCTAEでは潜伏した活動性病変に対し治療不足で,PEDの再発ないし内部の線維化が引き起こされ,治療抵抗症例へと移行したかと思われる.線維血管性CPEDは長期視力維持を妨げ4),ときに急激な黄斑下出血の併発も経験する.難治が予想される症例では,初期の治療不足によりさらなる難治化の危険因子が上積みされる事態を起こさないようにしたい.過剰治療を回避する.その一方で治療不足により病態をこじらせると長期視力の維持が不可能になるばかりか,さらに治療の負担が増えてしまうこともある.各種スタディから学ぶとともに個々の症例と向き合い,考えることで理屈と実臨床との乖離を埋めていきたい.これが長期予後を見すえる治療を行ううえでの筆者のこだわりである.文献1)高橋寛二,小椋祐一郎,石橋達郎ほか;厚生労働省網膜脈絡膜・視神経萎縮調査研究班加齢黄斑変性治療指針ワーキンググループ:加齢黄斑変性の治療方針.日眼会誌C116:C1150-1155,C20122)KurodaY,YamashiroK,MiyakeMetal:Factorsassoci-atedwithrecurrenceofage-relatedmaculardegenerationafteranti-vascularendothelialgrowthfactortreatment.Aretrospectivecohortstudy.AmJOphthalmolC122:2303-2310,C20153)OhnakaCM,CNagaiCY,CShoCKCetCal:ACmodi.edCtreat-andCextendregimenofa.iberceptfortreatment-naivepatientsCwithneovascularage-relatedmaculardegeneration.Grae-fesArchClinExpCOphthalmolC255:657-664,C20174)HoersterCR,CMuetherCPS,CSitnilskaCVCetCal:FibrovascularCpigmentCepithelialCdetachmentCisCaCriskCfactorCforClong-termCvisualCdecayCinCneovascularCage-relatedCmacularCdegeneration.RetinaC34:1767-1773,C2014☆☆☆654あたらしい眼科Vol.35,No.5,2018(90)

緑内障:小児緑内障の診断と治療

2018年5月31日 木曜日

●連載215監修=岩田和雄山本哲也215.小児緑内障の診断と治療地庵浩司木内良明広島大学大学院視覚病態学小児緑内障はまれな疾患であるが,小児の長期にわたる視機能予後に影響するため,早期発見,早期治療が重要である.しかし,検査や治療に十分な協力が得られないことが多く,成人の緑内障診療とは異なることも多い.本稿では,小児緑内障の診断と治療について概説する.●診断基準と分類『緑内障診療ガイドライン』第4版では,WorldGlau-comaAssociation(WGA)のコンセンサスミーティングでの提言1)をふまえて,小児緑内障の診断基準(表1),分類(表2)が変更された.●診断に関する注意点小児は診察,検査などが困難なことが多く,得られた検査結果の信頼性も低いことが多い.眼圧,視神経乳頭,視野,眼球の構造変化などを総合的に評価する必要がある.第一次反抗期(魔の2歳児)にあるときは催眠下,全身麻酔下での検査が必要になる.催眠にはトリクロホスナトリウム(トリクロリールシロップ)を使用する.シロップの内服がむずかしい場合は,抱水クロラール(エスクレ座薬)を使用する.催眠下での検査が困難な場合は全身麻酔下で検査を行う.全身麻酔は子どもの発達に悪影響を及ぼすことがわかっており,必要最小限表1小児緑内障の診断基準(WorldGlaucomaAssociation)にする.●眼圧覚醒下でのGoldmann圧平眼圧計による測定が望ましいが,測定困難な場合が多い.iCareは点眼麻酔が不要であり,小児の眼圧測定に適している.iCareはGoldmann圧平眼圧計の測定値とよく相関し,測定値のばらつきも他の眼圧計より狭い.セボフルレンによる全身麻酔下では眼圧は低くなることから,15mmHgあるいは12mmHgを正常上限とする意見もある.角膜形状の異常を伴っているものでは眼圧測定値の信頼性が乏しい.可能であれば複数の眼圧計で測定することが望ましい.触診がもっとも有効な場合もある.●視神経乳頭小児の視神経乳頭は成人とは異なる特徴がある.陥凹乳頭比が0.3以上,左右差が0.2以上の場合は緑内障を疑う.視神経乳頭陥凹は同心円状に拡大することが多く,可逆性であり,眼圧の下降とともにしばしば縮小する.視神経乳頭の所見は診断や治療効果の判定などに重要であり,可能であれば眼底写真で記録することが望ましい.●視野小児は正確な視野検査が困難であることが多い.5歳表2小児緑内障の分類(87)あたらしい眼科Vol.35,No.5,20186510910-1810/18/\100/頁/JCOPY図1白内障術後の緑内障先天白内障の術後,両眼とも2回ずつ線維柱帯切開術を行った.さらに右眼は耳上側,耳下側からバルベルト緑内障インプラントを挿入した.耳上側のプレートが露出したため抜去し,鼻上側からアーメド緑内障バルブを挿入した.最終眼圧は11mmHgとなった.以上になれば成人と同様に検査ができることもある.Goldmann動的視野計で練習するとよい.SITAfastなど測定時間の短いプログラムから開始し,徐々に難易度を上げていく方法もある.自動視野計には小児の正常データベースがないが,meandeviation,patternstan-darddeviationなどのパラメータは,あまり年齢の影響を受けないと考えられている.●眼球の構造変化3歳頃までは眼球組織の脆弱性のため,高眼圧によって角膜径は拡大し,眼軸長は延長する.新生児では角膜径が11mm以上,乳児では12mm以上であれば緑内障を疑う.角膜径の拡大に伴うDescemet膜の断裂により,Haab線や角膜浮腫が起こることがあり,弱視の原因となる.また,眼軸長の延長による近視の進行がみられる.通常,乳児では前房は浅いが,深い場合は注意を要する.●隅角小児緑内障は隅角の発育異常がベースにある.隅角検査は病型診断に重要である.検査法はレンズの種類によって,間接法と直接法がある.また,超音波生体顕微鏡は隅角,虹彩,毛様体などの詳細な構造評価が可能である.●治療原発先天緑内障は隅角の発育異常が原因であり,手術治療が第一選択となる.まずは線維柱帯切開術,隅角切開術といった隅角手術が選択される.複数回の隅角手術にもかかわらず十分な眼圧下降が得られない場合は,線維柱帯切除術やチューブシャント手術が選択される.小児の線維柱帯切除術は,レーザー切糸術やneedlingなどの術後処置が困難であり,長期にわたって濾過胞感染のリスクもある.小児のチューブシャント手術は,高眼圧による強膜の菲薄化,眼をこする行為,眼球の成長などによる影響が懸念される.低眼圧,浅前房,脈絡膜.離,チューブの位置異常,角膜内皮障害,水晶体との接触,チューブ閉塞,チューブ・プレート露出,眼内炎,眼球運動障害などさまざまな合併症のリスクがある.近年は世界的に隅角手術が無効であった症例にチューブシャント手術が行われるようになっているが,線維柱帯切除術と異なるチューブシャント手術特有の合併症に対処できなければならない.薬物治療は根本的な治療ではなく,十分な眼圧下降が得られない.薬物治療の役割は手術までの対症療法,手術で眼圧が十分下降しない場合の補助療法と考えるべきである.また,小児期は視機能の発育時期であり,眼圧のコントロールだけでなく弱視治療も重要である.若年開放隅角緑内障は隅角異常の程度は軽く,自分で点眼できる年齢であれば薬物治療を試みる.隅角手術が有効である.点眼治療よりも手術治療を希望する子どももいる.続発小児緑内障はさまざまな疾患があり,いずれも治療抵抗性が高い.文献1)WeinrebRN,GrajewskiAL,PapadopoulosMetal:Child-hoodglaucoma.WorldGlaucomaAssociationconsensusseries9,KuglerPublications,Amsterdam,p1-270,2013652あたらしい眼科Vol.35,No.5,2018(88)

屈折矯正手術:ORA術中波面収差解析装置の使用経験

2018年5月31日 木曜日

監修=木下茂●連載216大橋裕一坪田一男216.ORA術中波面収差解析装置の使用経験坂谷慶子みなとみらいアイクリニックORA術中波面収差解析装置(アルコン製.以下,ORA)により,眼内レンズ(IOL)度数計算困難症例への対応,乱視度数と乱視軸の確認と決定,手術終了時における屈折誤差の確認が可能となった.乱視用CIOLにおいては,IOLを回転すべき方向を表示する.付加価値CIOLが普及してきた近年において重要なアイテムとして注目されている.●はじめに眼内レンズ(intraocularlens:IOL)の度数計算の精度は,光学式生体測定装置などの発達や度数計算式の改良により飛躍的に向上し,標準的な眼球であれば術後の屈折誤差は臨床上問題にならないことが多くなった.しかし,光学式眼軸長測定は,進行した白内障では測定困難であり,長眼軸・単眼軸眼においては測定精度が低くなる傾向がある.また,角膜手術後・円錐角膜などにおいてはCIOL度数計算の精度は不安定である.近年の白内障手術においては,術後に良好な裸眼視力を求められるケースが増加している.とくにトーリックIOLや多焦点CIOLのようなプレミアムCIOLを使用するケースでは,屈折誤差は患者の術後不満の大きな原因となるため,誤差を極小にすることが重要である.今回,アルコン製ORAの使用経験について述べる.C図1顕微鏡に取り付けられたアベロメータ(左)とサージカルカート(右)アベロメータは大きく,workingdistanceは小さくなる.サージカルカートは手術室に設置し,米国のサーバーと通信して最新の最適化がなされている.図2ORAのモニターにリアルタイムで表示される無水晶体眼の状態左上は計画されているCIOLモデル,右上にCTR(目標術後等価球面度数)とLP(推奨CIOL16度数).屈折度数とCLPはリアルタイムで変動する.●術中計測の実際ORAは,顕微鏡に取り付ける測定装置アベロメータとサージカルカートとよばれる本体(図1),AnalyzORとよばれるウェブベースデータシステムから構成される.AnalyzORはサージカルカートと連動しており,術前,AnalyzORに入力されたデータは術中計測の基本情報となる.術中,サージカルカートのモニター上にリアルタイムで測定された度数が表示され(図2),captureすると約C3秒間にC40回の測定が行われ,その標準化された測定結果と計算された最適CIOL度数が表示される(図3).サージカルカートは常に米国のデータベースと通信しており,全世界からのデータが逐次入力集計されるためCIOLの最適化係数は最新のものとなり,その係数を使用してCIOL度数計算を行っている.測定から結果の表示まで,約C5~7秒である.IOL挿入後にも測定図3無水晶体眼測定における測定結果画面画面左側はCAnalyzORに入力した術前のデータ(K値,眼軸長,屈折矯正手術の既往など)が示されている.中央右にはCORAが測定した乱視度数および軸(緑)と術前計測された角膜乱視度数およびスティープ軸(青)が示されている.いずれかを選択すると,中央左側にあるトーリックCIOLリストで残余乱視がもっとも小さくなるモデルが太字で示される(この場合CT4).同時に推奨IOLパワーが+8.00で,予想される術後屈折が+0.09Dであることが示される.右側にはCcaptureによる測定結果(屈折度数)が表示されている.(85)あたらしい眼科Vol.35,No.5,2018C6490910-1810/18/\100/頁/JCOPY図4顕微鏡にオーバーレイされた乱視軸図5a偽水晶体眼におけるトーリック測図5b図4の指示の通りにIOLを回転させ,赤色がCORA,緑色がCVERIONCTM(CAlcon社定結果画面再度測定した画面製)の示す乱視軸である.画面中央に挿入したトーリックCIOLパ残余乱視はC0.35Dとなり,画面右の屈折度数ワーから予測される乱視度数と軸が示さでSEはC.0.15Dであることが示されている.れ,現在のCIOL位置では残余乱視がNRR(CNoCRotationCRecommended)は残余乱1.03Dであるため,CIOLを反時計回りに視が度数C0.50未満,軸がC5度以内の範囲にあ回転する必要があることを示している.る場合に表示される.を行い,予定の度数になっていることを確認して手術を終了する.トーリックCIOLを使用する場合,最適な乱視軸を顕微鏡にオーバーレイすることができる(図4).トーリックCIOL挿入後には残余乱視度数およびCIOLの回転方向を指示する画面が表示され(図5a),乱視度数がC0.50D以下になると「NoCRotationCRecommended」と表示されて,トーリックCIOLが適切な位置に固定されたことが確認できる(図5b).術中測定におけるポイントは,正確なアライメントと角膜の適度で均一な水濡れ性と眼圧である.角膜の乾燥には注意を払う必要があり,眼圧はCORAの測定プロトコールではC20CmmHgを維持する必要があるとされている.術後,データベースにデータを入力すると,サーバー内でのノモグラム計算に反映され,術後結果の統計レポートを受けることができる.C●どのような症例に有用か1)光学的眼軸長測定が困難:超音波眼軸長測定は可能だが精度が劣る.また,水晶体の混濁が急に進行しやすいアトピー性や外傷性の白内障例は若年者に多く,多焦点CIOLを希望する症例も多い.2)角膜不正乱視:円錐角膜・翼状片術後・角膜手術後(LASIK/PRK/PTK/RK/角膜移植)などでは,IOL度数計算に採用するCK値と乱視軸の決定がむずかしい.3)標準的なプロポーションからはずれた症例:長眼軸眼・短眼軸眼,角膜曲率が非常にスティープ・フラットな症例などは,IOL度数計算の誤差が大きくなることが多いが,ORAでは無水晶体での屈折度数を計算式に導入するため,これらの例においても精度良く対応する650あたらしい眼科Vol.35,No.5,2018ことが可能となっている.4)トーリックCIOL:ORAの計測する乱視度数は角膜前後面を含めた全乱視であるので,トーリックCIOL挿入後に表示される乱視は残余乱視となる.挿入されたトーリックCIOLを用いた場合の最小の残余乱視となるようCIOLの回転方向が指示される.5)多焦点CIOL:術後の屈折誤差そのものが手術満足度に大きくかかわるのが多焦点CIOLである.Touchupの手段をもち,術前に説明がされていれば大きな問題とはならないが,Touchupの準備がない施設ではCIOL度数計算勝負となる.ORAで手術終了前に屈折の確認ができれば,その場でのCIOL入れ替えも可能で,術翌日の正視付近の屈折度数がほぼ保証され,術者のストレスを軽減することになる.術中測定にはCIOL度数決定と確認という二つの要素があり,白内障手術に対して高まる患者ニーズに応えるため,ORAは有益なツールである.文献1)DavisonCJA,CPotvinCR:PreoperativeCmeasurementCvsCintraoperativeaberrometryfortheselectionofintraocularlensCsphereCpowerCinCnormalCeyes.CClinCOphthalmolC11:C923-929,C20172)LanchulevCT,CHo.erCKJ,CYooCSHCetCal:IntraoperativeCrefractiveCbiometryCforCpredictingCintraocularClensCpowerCcalculationafterpriormyopicrefractivesurgery.Ophthal-mologyC121:56-60,C20143)WoodcockCMG,CLehmannCR,CCionniCRJCetCal:Intraopera-tiveCaberrometryCversusCstandardCpreoperativeCbiometryCandatoricIOLcalculatorforbilateraltoricIOLimplanta-tionwithafemtosecondlaser;One-monthresults.JCata-ractRefractSurgC42:817-825,C2016(86)

眼内レンズ:多角撮影による白内障手術教育

2018年5月31日 木曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋378.多角撮影による白内障手術教育秋元正行大阪赤十字病院眼科手術教育において,術野ビデオ映像は重要であるが,実際の手の動作を学習する機会は限られている.フットペダルの操作方法も,映像として確認されることはなかった.防犯カメラを手元の左右,足元などの術野周辺に多角的に設置して,顕微鏡術野映像と同時記録することで,専攻医の眼科手術研修に役立てた.●背景手術手技の習得にはビデオ動画撮影が有効である.ビデオを繰り返し見て,トラブル発生時の状況を確認することで,その経験を次回に生かすことができる.近年登場した3Dビデオ撮影では,通常撮影では得られない奥行き情報を得ることができるが,高額な設備投資が必要である.機械の条件設定やフットペダルの踏み込み状況などを映像にオーバーレイする方法も,通常の撮影方法では得られない情報を映像に追加することができるが,実際の手技を行うために手をどう動かすのか,足をどう使うのかは,介助者は顕微鏡から視線をはずして確認すDVI/HDMIDVI信号converterIkegamiHDMI信号手術用カメラRGB信号(フロントパネル画面)足元カメラHDMI信号(セッティング情報含む)4ch録画装置左方カメラることで学習するしかなく,トラブル時の手技がどうであったかを後から検討する方法はなかった.筆者らは,顕微鏡手術映像以外の情報も同時に記録することで専攻医の技術向上につなげたいと考え,近年安価となってきている防犯カメラを術野周囲に設置し,実際の動作の詳細をあとから確認できるシステムを構築し,手術教育へ導入した.●方法4チャンネル防犯カメラ装置を手術室に設置した(図1).入力は,顕微鏡を介した術野画像に機械条件をオーバーレイしたもの,患者用手術台の底面に設置したカメSDI信号通常顕微鏡像動画SDカード録画Constellationパネル情報(メトリックスなど)電子カルテへの取り込み右方カメラ4chカメラ動画HDDおよびUSBメモリ録画図14チャンネル防犯カメラの設置(83)あたらしい眼科Vol.35,No.5,20186470910-1810/18/\100/頁/JCOPY図2術者右方向カメラ映像図4ベッド下足元カメラ映像ラで足元を撮影したもの,術野の右上,左上から撮影したもの,これら合計四つの映像を同時に記録し,上級医の映像,専攻医の映像と比較した.●結果専攻医が実施する前.切開時の不安定な操作は,術野ビデオだけでは原因がわからなかったが,術野左からの映像によって,手の固定が不十分であることがわかった.術野右からの映像で,核分割の動作が不自由なのは左手の固定が不十分であることが原因であるとわかった(図2).超音波チップのコントロールが不得手だった理由は,ハンドピースの握り位置が高く,コントロール困難であったことが原因とわかった(図3).超音波発信・停止のコントロールが不得手であったのは,足元映像から,フットペダルのポジションが深くコントロールしにくいためであることがわかった(図4).これらの動作を上級医の映像と比べると,問題点はより明確になり,指摘された部分を修正することで専攻医の技術の向上につながった.●おわりに最近の防犯カメラは,より広角により鮮明に撮影できるように進歩しているが,その価格は通常医療機器と比べるときわめて安価であり,10万円程度でシステム構築が可能である.涙道手術においても,鼻内視鏡やドリルの使い方を記録できた.また,カメラの暗視機能も向上しており,硝子体手術教育への応用も期待される.一方,広角での撮影はより広範囲の情報が得られる反面,術野を拡大して撮影するには不向きであり,前置レンズなどによる改善がより望まれる.当院での使用経験から,多角撮影を導入することでより効果的な手術教育が可能になると考えられる.

コンタクトレンズ:コンタクトレンズの光学特性

2018年5月31日 木曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方さらなる一歩監修/下村嘉一43.コンタクトレンズの光学特性川守田拓志北里大学医療衛生学視覚機能療法学●コンタクトレンズによる屈折矯正の原理コンタクトレンズ(CL)の屈折矯正の基本的な原理は,角膜の前にレンズを置くことで見かけ上,形状を変化させ,屈折状態を変化させることによる.近視矯正であれば,レンズは平坦(フラット)な形状であり,遠視矯正であれば急峻(スティープ)な形状である.屈折力の変化量は,以下の面屈折力の式で計算することができる(図1).CP=(nCornea.nAir)×1,000CrConeaただし,P:面屈折力(D),r:曲率半径(m),nCorC-nea:角膜の屈折率,nAir:空気の屈折率とする.曲率半径は分母にあるので,曲率半径が大きくフラットになるほど角膜の屈折力が低下し,近視を矯正することができる.C●コンタクトレンズと眼鏡の光学的特性の比較CLは眼鏡と比べて眼に近いことから,眼鏡からCCLに矯正法を変更するときは,眼鏡の頂間距離の分,度数nAirrCornea図1コンタクトレンズによる屈折矯正の原理を補正する必要がある(表1).約C4.5Dの眼鏡レンズからその差がC0.25Dを超えるため,注意が必要である.そして,ハードコンタクトレンズ(HCL)では,レンズと角膜の間に涙液が入り込むことにより,涙液レンズとよばれる矯正効果が発生する.フラットなレンズではマイナスの矯正効果,スティープなレンズではプラスの矯正効果が発生するが,その大きさは,ベースカーブC0.05mmにつき約C0.25Dの差が生じることになる.また,式の詳細は割愛するが,Vergenceの式より,CLによる近視矯正では,眼鏡に比べて必要調節量と輻湊量が多くなり,遠視矯正ではその逆で小さくなる.したがって,老視症例や眼位異常が大きな症例では注意を要する.表1眼鏡レンズとコンタクトレンズの度数変換眼鏡(D)CL(D)眼鏡(D)CL(D)C10.00C11.36C0.00C0.00C9.50C10.72C.0.50C.0.50C9.00C10.09C.1.00C.0.99C8.50C9.47C.1.50C.1.47C8.00C8.85C.2.00C.1.95C7.50C8.24C.2.50C.2.43C7.00C7.64C.3.00C.2.90C6.50C7.05C.3.50C.3.36C6.00C6.47C.4.00C.3.82C5.50C5.89C.4.50C.4.27C5.00C5.32C.5.00C.4.72C4.50C4.76C.5.50C.5.16C4.00C4.20C.6.00C.5.60C3.50C3.65C.6.50C.6.03C3.00C3.11C.7.00C.6.46C2.50C2.58C.7.50C.6.88C2.00C2.05C.8.00C.7.30C1.50C1.53C.8.50C.7.71C1.00C1.01C.9.00C.8.12C0.50C0.50C.9.50C.8.53C0.00C0.00C.10.00C.8.93C(81)あたらしい眼科Vol.35,No.5,2018C6450910-1810/18/\100/頁/JCOPY矯正度数(D)図2眼鏡とコンタクトレンズの網膜像倍率(眼鏡倍率)CLが眼鏡よりも優れる点は,屈折矯正前後の網膜像倍率の変化の小ささである(図2).屈折矯正法は,瞳の面から離れれば離れるほど像の変化が大きくなる.そのため,眼鏡では強度の屈折異常や不同視の症例では不利となる.たとえば,C.20Dの屈折異常を眼鏡で矯正すると,眼鏡倍率はC.20%以下となり,網膜に投影されるCLandolt環も小さくなることから,理論的には矯正視力もC1段階程度,悪化する可能性がある.また,像倍率の変化には眼鏡倍率と相対眼鏡倍率がある.眼鏡倍率は,おもに矯正眼の網膜像の大きさと裸眼の網膜像の大きさの比であり,相対眼鏡倍率は矯正眼の網膜像の大きさと標準的な網膜像の大きさの比である1).相対眼鏡倍率は,軸性と屈折性の屈折異常で拡大縮小効果が大きく異なるが,あくまで標準的な網膜像との大きさとの比較であるので,眼鏡倍率のほうが自覚的な違和感や不等像に寄与しやすいと考えられる.C●コンタクトレンズの種類と光学特性涙液の状態や装用時間2),角膜とCCLのレンズ中心がずれる3)ことで,結像性に影響を与えやすい.そのため,少しでも涙液や角膜の状態,フィッティングのいいレンズを選ぶよう配慮が望まれる.また,CLは眼鏡と同様に各社さまざまな光学設計のコンセプトで作製されており,その度数と素材のバリエーションからすべての詳細な光学特性を把握することは困難である.しかし,概要として最近では,光学特性に影響を与えるCCLを非球面化することで,中心と周辺を通る光線が光軸との交点が一致しない現象である球面収差を減らすようなCCLや,遠近光学部の面積比を瞳孔径の加齢変化から最適化している斬新な設計の遠近両用CCLも登場している.C●おわりに以上,CLの光学特性の概要を述べたが,手術療法に比べて,CLによる保存療法の最大の利点は,屈折の経年変化への対応のしやすさ,そして,遠方から近方までのニーズへの対応のしやすさである.とくにディスポーサブルCCLはさまざまなレンズを試すことができ,可逆的に自分にあったレンズを選ぶことができる.これは大きな利点と思われる.一方で,バリエーションの多さにより,医療者がCCLの光学的特徴や素材の特徴をしっかりと学び,正確な情報をユーザーに提供することが求められる.また,CL装用後の光学特性を評価する方法論の確立も課題である.文献1)水流忠彦(監修),魚里博,清水公也(編):屈折矯正のプロセスと実際.金原出版,19982)Montes-MicoCR,CBelda-SalmeronCL,CFerrer-BlascoCTCetal:On-eyeopticalqualityofdailydisposablecontactlens-esCforCdi.erentCwearingCtimes.COphthalmicCPhysiolCOptC33:581-591,C20133)GuiraoCA,CWilliamsCDR,CCoxCIG:E.ectCofCrotationCandCtranslationConCtheCexpectedCbene.tCofCanCidealCmethodCtoCcorrectCtheCeye’sChigher-orderCaberrations.CJCOptCSocCAmCAOptImageSciVisC18:1003-1015,C2001CPAS105

写真:Alport症候群に伴う再発性角膜上皮びらん

2018年5月31日 木曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦408.Alport症候群に伴う再発性加藤久美子三重大学大学院医学系研究科角膜上皮びらん神経感覚医学講座眼科学図2図1のシェーマ①小水疱②角膜混濁C図1初診時の前眼部写真(強膜散乱法)角膜中央部に混濁と小水疱を認める.図3初診時の前眼部写真(フルオレセイン染色)角膜中央部に小水疱の集簇が認められた.図4初診時の前眼部OCT角膜上皮下に小水疱が多発し,角膜実質の浮腫が認められた.(79)あたらしい眼科Vol.35,No.5,2018C6430910-1810/18/\100/頁/JCOPY図5スペキュラー・マイクロスコープ写真(初診から1週間後)a:角膜中央部.内皮細胞数の減少と大小不同が著しい.Cb:角膜周辺部.内皮細胞密度はC2,457/mmC2と保たれている.Alport症候群は,IV型コラーゲンのa3鎖,a4鎖,a5鎖蛋白のいずれかの遺伝子変異に起因する進行性遺伝性腎炎である1).わが国での患者数は約1,200人で,Alport症候群の患者の30~50%に眼合併症が発生するといわれている2,3).IV型コラーゲンは基底膜の強度や接着に関与しており,眼においては角膜上皮細胞基底膜,Descemet膜,水晶体.,網膜内境界膜,そしてCBruch膜におもに発現している4).そのため,Alport症候群に合併する眼病変は,角膜,水晶体,網膜に生じる.角膜病変では再発性角膜びらんや後部多形性角膜変性症,水晶体病変では円錐水晶体,網膜病変では黄斑部斑点状病変,耳側網膜の菲薄化などがある.再発性角膜上皮びらんは,Alport症候群の患者の約C1割程度に発症すると報告されており,比較的まれな眼合併症である.好発年齢はC10代後半であり,腎症診断に先立って発症することがある4).突然発症する眼痛,羞明,流涙を特徴とし,夜間や起床時に起こることが多い.細隙灯顕微鏡では充血と角膜上皮レベルの混濁,フルオレセイン染色では小水疱が認められる.治療は,ヒアルロン酸点眼液や抗菌薬眼軟膏の点入である.二次感染予防目的で抗菌薬点眼液を適宜併用する.通常はC2~5日で治癒するが,治療に抵抗する場合には圧迫眼帯や治療用ソフトコンタクトレンズ装用を行うことがある1,4).筆者は,Alport症候群と診断され,10年前から角膜びらんを繰り返すC30代男性の症例を経験した.右眼の眼痛,羞明,流涙が出現したため近医を受診,ヒアルロン酸点眼液と抗菌薬点眼液を処方されたが,10日間が経過しても症状が軽快せず当院を受診した.細隙灯顕微鏡検査では,角膜中央部の混濁と小水疱,角膜実質の浮腫が認められ(図1~3),前眼部光干渉断層計(opticalcoherenceCtomography:OCT)でも上皮下の小水疱を確認することができた(図4).Alport症候群に起因する再発性角膜びらんに角膜実質炎が合併したものと考え,0.1%ベタメタゾン点眼液をC2回/日で開始した.角膜実質の浮腫,角膜上皮びらんはC1週間で消失したが,角膜中央部での角膜内皮密度が著しく低下しており(図5a),後部多形性角膜変性症にみられるような帯状病変は認められないものの,なんらかの角膜内皮異常を合併しているのではないかと考えた.文献1)日本小児腎臓病学会:アルポート症候群診療ガイドライン2017.診断と治療社,20172)JaisCJP,CKnebelmannCB,CGiatrasCICetCal:X-linkedCAlportsyndrome:naturalChistoryCinC195CfamiliesCandCgenotype-phenotypeCcorrelationsCinCmales.CJCAmCSocCNephrolC11:C649-657,C20003)GrossO,NetzerKO,LambrechtRetal:Meta-analysisofgenotype-phenotypeCcorrelationCinCX-linkedCAlportCsyn-drome:impactConCclinicalCcounselling.CNephrolCDialCTransplantC17:1218-1227,C20024)SavigeJ,ShethS,LeysAetal:OcularfeaturesinAlportsyndrome:pathogenesisCandCclinicalCsigni.cance.CClinCJCAmSocNephrolC10:703-709,C2015C

ロービジョンケアを広めるための学会の役割

2018年5月31日 木曜日

ロービジョンケアを広めるための学会の役割TheRoleofAcademicSocietyinDisseminatingLowVisionCare加藤聡*はじめに日本ロービジョン学会(TheJapaneseSocietyforLow-visionResearchandRehabilitation)は,2000年4月に当時川崎医科大学眼科教授であった田淵昭雄先生を初代理事長として創設され,そのこともあり,学会事務局は現在も岡山県倉敷市にある.現在,26ある日本眼科学会の関連学会の一つとして承認されている.日本ロービジョン学会の設立の目的として,「本邦における視覚に障害を有する児・者へのハビリテーション・リハビリテーションに関する学術的研究および臨床の向上と会員同士および諸外国との交流」をあげている.日本ロービジョン学会の2018年1月1日現在の会員数は845名で,そのおよそ3分の1ずつが眼科医と視能訓練士で,残る3分の1のなかには他科の医師,看護師を含めたその他の医療従事者,教育関係,福祉関係,その他が含まれている.注意すべき点は視覚障害の当事者というだけでは学会員にはなれず,この点が大きな特徴のひとつともなっている.本稿では,近年,日本ロービジョン学会がロービジョンケアを広めるために行ってきたことを紹介する.I公的機関への要望1.ロービジョン検査判断料の新設に対する要望と実現眼科医療にロービジョンケアを広く普及させるために「ロービジョンケアの診療報酬化」を日本ロービジョン学会の前理事長である高橋広先生が積極的に推し進めた.その結果,日本眼科学会や日本眼科医会の協力が得られ,厚生労働省の担当者に理解されるとともに,視覚障害の当事者からの大きな声が追い風となり,2012年4月にD270-2ロービジョン検査判断料(250点)の名称で実現することができた.このロービジョン検査判断料は,つなぎ目のない連携を求めており,医療がその任を果たすべきであることを示している.2.遮光眼鏡給付の補装具として適応される対象疾患の解除への要望と実現以前は補装具における遮光眼鏡の対象者として,「網膜色素変性症,白子症,先天無虹彩,錐体杆体ジストロフィであって羞明感をやわらげる必要がある者」と限られていた.それに対し,日本ロービジョン学会補助具検討委員会をはじめとする各団体からの要望により,2010年3月31日に厚生労働省から出された「補助具費支給事務取扱指針の一部改正について」により,遮光眼鏡の補装具の対象者として,「1)視覚障害により身体障害者手帳を取得していること,2)羞明をきたしていること,3)羞明の軽減に,遮光眼鏡の装用より優先される治療法がないこと,4)補装具費支給事務取扱指針に定める眼科医による選定,処方であること」と規定された.すなわち,視覚障害による身体障害者手帳を持っており,羞明をきたしているのならば,その原因疾患が問われなくなったことになった.このことは,たとえば,*SatoshiKato:東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚・運動機能講座眼科学/日本ロービジョン学会理事長〔別刷請求先〕加藤聡:〒113-8655東京都文京区本郷7-3-1東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚・運動機能講座眼科0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(73)637表1日本ロービジョン学会主催の過去の講習会のタイトルと演者9:008:0010:009:0010:109:1012:1011:1013:0011:2014:0012:2014:1013:0016:1015:0016:2015:1017:2016:1017:3016:2019:3018:20図1第3回ロービジョンケア講習会プログラム図2日本ロービジョン学会発行の視覚障害者向けの災害対応リーフレット図3日本ロービジョン学会作成の補助具パンフレット

これからのロービジョンケア(NEXT VISION)

2018年5月31日 木曜日

これからのロービジョンケア(NEXTVISION)LowVisionCareinFuture(NEXTVISION)仲泊聡*髙橋政代*はじめに2017年12月1日,神戸アイセンターが開設され,その玄関に位置するビジョンパークの活動が始まった(図1).筆者らは,公益社団法人NEXTVISIONとして,その運営を行うとともに,ここから次世代型のロービジョンケアを発信する.厚生労働省調べ(2011年度)によると,視覚障害の身体障害者手帳取得者は31.6万人で,そのうち1,2級の者が21.2万人(67%)を占める.一方,一般の眼科外来を受診した患者の矯正視力から割り出した1,2級相当の患者は,国立障害者リハビリテーションセンター病院眼科調べ(2014年度)では,視力障害で手帳が取得可能な人数の21%でしかなかった.この数値の乖離は,3級以下の身体障害者手帳を取得できても申請していない患者が相当数存在することを意味する.1,2級の手帳の恩恵は医療費免除を筆頭に多岐にわたっていることを眼科医も患者も理解しているため,眼科に受診していれば,これを取りこぼすことはまずない.しかし,それに満たない重度ではない視覚障害を有する者は「障害者としてのレッテルを貼られたくない」という心理や,なかには「この程度で保護を受けるのは申し訳ない」という思いから申請せずにいる.上記数字から約21万人の重度視覚障害者が視覚障害者の21%だとすれば,約100万人の「視覚障害者」がわが国には存在すると推計できる.視覚障害者支援の歴史は,この100年で目まぐるし図1神戸アイセンター・ビジョンパーク神戸アイセンターのエントランスから病院の受付までの約30mの廊下を挟み,約500平米の広さの一見図書館のような空間はビジョンパークとよばれている.病院の待合として利用されるとともに,視覚障害に関するさまざまな情報がここから発信される.(千葉正人氏提供)く変化した.戦前からの盲学校や点字図書館は,まさに全盲の視覚障害者のためにあった.戦後,傷痍軍人を社会復帰させるために身体障害者福祉法に準拠したさまざまな施設と制度が作られた.今では当たり前となった白杖の訓練が本格的に行われるようになったのは,実に1970年であり,そこからまだ50年も経っていない.失明原因もかつては白内障や感染症がほとんどであったのに対し,昨今の超高齢化による緑内障や加齢黄斑変性へと大きくシフトしてきた.おもな支援主体も盲学校から福祉施設へ,そして,今は医療機関がもっとも多くの視*SatoshiNakadomari&*MasayoTakahashi:理化学研究所・公益社団法人NEXTVISION〔別刷請求先〕仲泊聡:〒650-0047兵庫県神戸市中央区港島南町2-2-3理化学研究所・公益社団法人NEXTVISION0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(67)631覚障害者と対面することとなった.さらに今後,医療技術の進歩に加え,コンピュータ技術の進歩が,これまでの50年とはまったく異なった視覚障害者の環境変化を起こさせると予想できる.シンギュラリティ(技術開発と進化の主役が人間からコンピュータに移る特異点)は2045年に迫っている.今後の四半世紀には,視覚障害者が障害者ではなくなり,一般人と変わらずに社会で活躍するようになる変化をわれわれは目の当たりにしていくことになる.そして,筆者らNEXTVISIONは,その変化を促進し,一日も早くこれを実現するためのアプローチを今,神戸から行おうとしている.I連携のその先障害者権利条約の26条に「リハビリテーション」の項目がある.そのなかで,特筆すべきことに以下がある.1)障害者相互による支援を通じたものを含むこと2)保健,雇用,教育および社会にかかわる分野のサービスによること3)早期に始めること4)自発的なものであること5)住む地域のできるだけ近くで利用できることこれらが,これからのリハビリテーションの世界標準である.しかし,従来型の施設型リハビリテーションでは,これらを同時に実現することはできない.これを低コストで実現する鍵は,ICT(informationandcommu-nicationtechnology)による数少ない専門家の有効活用にある.視覚障害者に対するリハビリテーションにおいて,多職種が情報交換をする必要性は以前から唱えられ,各地にロービジョンネットワークという横断的組織が生まれ,そのなかでの効率よい運営を目標としたスマート・サイトというシステムが,各地の状況に合わせた形で開発・運用されてきた.2018年3月現在で全国には26のスマート・サイトが動いている.その多くは,眼科医療から,福祉や教育などの既存の視覚障害者サービスにシームレスにつなげるための仕組みである.ただ,視覚障害者は移動が困難なため,ここに行きなさいと言われてもすぐに行けるものではない.そこで,施設側から眼科外来に来ていただいて,そこで相談に乗るという中間型アウトリーチ支援が提唱されたが,この場合も,職員の移動にかかる物理的・経済的制約を度外視することができず,必ずしも大きな発展にはつながらなかった.しかしながら,ICT技術は移動なしでの相談を可能にした.さらには,NTTドコモの計画(https://www.nttdocomo.co.jp/corporate/technology/rd/tech/5g/)が実現し,2020年に移動通信システムが5Gへと更新されると,その通信速度は100倍に,通信量は1,000倍以上となり,これに伴うICTの変化は容易には想像できないほどである.筆者らは,2016年度から日本医療研究開発機構の研究資金を得て「ICTによる寡少専門家による地域・在宅ロービジョンケア」という研究事業を行っている.そこでは,タブレットやパソコンを使ったテレビ電話によって遠隔地の眼科医・福祉専門家と当事者を結び,医療相談および福祉相談を行っている.現段階では,調査員として当事者の近くにいる福祉専門家か視能訓練士がかかわることで相談支援の円滑化を図っているが,その延長線上には,眼科外来の一室のモニターに映った遠隔地にいる専門家による相談支援と眼科職員の教育が同時に可能となるシステムを想定している.神戸アイセンターでは,病院とビジョンパークをつなぐための連携カード(図2)を作成し,これにより超局所型のスマート・サイトを実現している.まだスタートしたばかりではあるが,月に約60名の患者が十数名の眼科医から紹介され,そしてビジョンパークにおいて近隣の関係施設に繋がっている.ビジョンパークには日替わりで近畿地方の福祉施設,視覚障害特別支援学校,当事者団体などの職員が中間型アウトリーチ支援要員として配備されている.連携カードを持って情報コンシェルジュとよばれるフロア担当の職員のところに来た患者は,彼らによってここに案内される.現在は,各施設からベテランの職員がビジョンパークまで足を運んでくれているが,将来的には,毎回ビジョンパークに来なくとも,ICTによる画面を介したかかわりで,その役割の多くを継承することができると考えている.IIビジョンパーク神戸アイセンター病院には,スタート時点よりロービ632あたらしい眼科Vol.35,No.5,2018(68)図2連携カード神戸アイセンター病院の眼科医師が,患者に手渡し,ビジョンパークの情報コンシェルジュが受付け,中間型アウトリーチ支援要員の地域の専門家に引き継いでいる.図3みちびクライミング光るホールドが散りばめられたボルダリングウォール.光覚レベルのロービジョン者でも,どこを掴むかがわかり,正しく掴めると音で正解を知らせてくれる.視覚障害者が健常者と対等に楽しむ空間として公益社団法人NEXTVISIONのめざすゴールを示すモニュメントである.https://www.youtube.com/watch?v=tkqCX_v1j30からのキャプチャー図4点字ブロックリレー目隠しをして点字ブロックの上をはみ出さないように白杖を頼りに歩くチーム対抗リレー.ここで一番頼りになるのは,全盲の人である.世界ゆるスポーツ協会主催のイベント「NoLookTour」にて.NEXTVISIONはisee!運動(http://isee-movement.org)と称して,視覚障害のこのイメージを変えることを目標とする.そして,その方策として,ロービジョンであることを気軽に他人に言うことができる環境をつくるということを提唱している.よくある事例として,眼の疾患が進行し,徐々に視力が低下して仕事が困難になっても,なかなかそれを職場で言い出せず,見えなくて犯してしまったミスを不注意で犯したものと周囲からみなされ,信頼をなくし,人間関係を悪くして職場にいられなくなるということがある.もし,自身の視機能が低下したことを周囲に告げていれば,それを補う方法を検討して就労を継続することができたかもしれない.見えないということがなにもできないに等しいという固定観念を日本社会全体がもちすぎている.このイメージは間違っている.これを変えることがNEXTVISIONの目標である.近視や老視であれば,誰でも気にすることなく周囲に話すことができる.それは,多くの人が当てはまる問題であるということとともに対処法が周知されているからである.ロービジョンであるとこれが言いにくいのは,その対処法が周知されていないためである.たとえ全盲であっても,その対処法があり,その方法を社会全体が認知していれば,社会は容易に彼らを受け入れられるはずである.しかし,現在,軽度のロービジョンに対する対処法すら周知されていないため,まだまだ仕事が続けられる状況にある人の多くが,つらい経験を余儀なくしている.確かに対処法が十分かと言われれば否である.しかし,障害の程度に応じて既存の用具や技術で対処できることが多数存在する.ただ知らなかったというだけで職を失うという事例はゼロにしなければならない.なにもできないというイメージは端的に暗い印象を与える.ロービジョンケアも視覚障害とともにこの暗いイメージを背負うこととなり,眼科患者ばかりか多くの眼科医が忌避する原因にもなっている.もっと「できる」を前面に出した積極的な明るいイメージに変化させる必要がある.筆者らがそれに使う方策に,三宅琢が提唱する「デジタル・ビジョン・ケア」がある.詳しくは三宅氏の稿を参照されたいが,コンピュータ技術のさらなる進歩とともに,その量質ともに今後の発展が期待できる.ICTの技術進歩は,ことさらに視覚障害者用と銘打たなくても,一般向けのツールに視覚障害者にも適しているというものを増やすこととなっている.最近テレビ広告が増えてきたスマートスピーカーは,映像を一切介さず,声だけのインターフェースで,ニュースや音楽を聞くことから買い物や他の家電の操作までを可能にしている.これは,全盲視覚障害者の生活を一変させる可能性を秘めている.ビジョンパークでは,これらも各種取り揃え,使用体験ができるようにしている.おわりに神戸アイセンターでは,診療と研究とロービジョンケアが一体となった活動をしている.そのメリットは,視覚障害の早期発見と早期支援につきる.診療と結びつくことで,可能な限り早い時期に情報提供が可能となる.そして,研究(iPSばかりではなく支援機器や技術も)によって得られた新たな支援方法といち早く紹介できるということも重要である.そして,この新しい試みは,マスコミを通じて社会啓発を促進する可能性をもつ.視覚に障害を負っても,その人の人格や生きる力,生活能力,知的能力などはなんら変わらないということを社会全体が認識すれば,視覚障害者はずっと生活しやすくなる.現在は,社会全体がそれを理解しておらず,実は視覚に障害を負った当事者自身もそれを理解していない.ここをもっと周知することが,これからの重要なアクションプランである.稿を終えるにあたり,視覚障害者と眼科医の皆様にお願いしたい.一人でも多くの方にビジョンパークに来ていただきたい.そして,その眼と肌で筆者らの理念を感じてほしい.賛同していただいた方は,その意思をぜひ発信してほしい.視覚障害関係者の総意に基づいた社会ムーブメントであるということを行政や国民全体に示していくことが,今後の視覚障害者支援にとって必ずや前進につながると信じている.そして,まねできるところがあれば大いにまねしていただいて,全国に第二第三のビジョンパークが生まれることを望んでいる.636あたらしい眼科Vol.35,No.5,2018(72)