提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方つぎの一歩~症例からみるCL処方~監修/下村嘉一32.コンタクトレンズによる紫外線対策丸山邦夫ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社●はじめに前号において,紫外線(ultraviolet:UV)が眼に与える影響について概説されているように,UVは,皮膚だけでなく眼に対しても悪影響を与えるため,その対策が必要となる.眼に対するUV対策として,帽子,UVカット付き眼鏡やサングラスだけでなく,UVカットコンタクトレンズ(CL)も効果が期待できる.本稿では,UVカットCLに着目し,UVカットCLに期待されること,CLのUVカット技術に触れながら,UVカットCLの有効性について考えてみる.●紫外線をカットするコンタクトレンズに期待されること1.コロネオ現象の軽減眼のUV対策としてUVカット付きのサングラスが一般的である.サングラスの特性として,眼の正面から入射するUVに対しては防御ができるが,眼と眼鏡の隙間から侵入するUVに対して注意が必要である.図1に示すように,耳側から入射するUVが角膜周辺部で屈折した後,眼の鼻側の角膜輪部に20倍になって集中する現象(コロネオ現象)が知られている1).この現象により,サングラス装用時は,角膜輪部のUVの防御も必要と考えられる.そのためには,角膜輪部のUVを防御する目的でUVカットCLをサングラスと併用することで,鼻側の角膜輪部に集中するUVを抑えることが期待できる.UVカットサングラスのみの場合ビジョンケアカンパニー学術部2.子どもに対するUVカットCLへの期待環境省は,生涯に浴びるUV量の大半は18歳までに浴びるという事実をそのホームページで公開している2).また,世界保健機構は,子どもに対するUV対策の必要性を訴えている3).一方で,部活動を行う中学生に対してUVの影響を調査した報告では,屋内に比べて,屋外で部活動をしている中学生のほうが瞼裂斑の発症率が高かった2).中学校への入学を機に,CLを始める方が多いが,とくにサッカーや野球などの屋外での部活動を行う際には,UVカットCLを選択することで眼への影響を軽減することが期待できるかもしれない.3.老眼発症の遅延赤道に近い国,すなわち,よりUVの曝露を受けやすい国の人たちは老眼になりやすいと推察をしている報告がある5).UV曝露は白内障の発症原因の一つにもなりえるため,UVの曝露量の多い赤道近郊の国においては水晶体の硬化が進みやすく,その結果,老眼が早期に発症しやすくなることも容易に想像できる.このようなUV被曝量の多い国に対しては,CLの処方時にUVカットCLを選択することで老眼発症時期の遅延が期待される.●コンタクトレンズの紫外線カット技術UVカットCLの製造方法としては,CLの成形時にベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系などのUV吸UVカットサングラスとUVカットCLの併用の場合図1コロネオ現象(左図)とCL装用によるコロネオ現象対策(右図)(71)あたらしい眼科Vol.34,No.6,20178290910-1810/17/\100/頁/JCOPY図2波長違いによる紫外線透過率.3.00D(中心厚0.07mm)のレンズ中央部3~5mm部分での測定.(J&JVisionCareInc.のデータより)透過率(%)収剤を配合する方法がある.このUV吸収剤をCL素材に組み込む技術は比較的むずかしい.なぜならば,近年のソフトCLの製造方法は,モノマーという液体に光(とくにUV)を照射し硬化してポリマーにするレンズ成形方法が取られているが,UV吸収剤をモノマーに配合すると,UV吸収剤がUVを吸収してレンズ成形がむずかしくなるという課題がある.各CLメーカーは,UV吸収剤の種類や成形時に照射する光の種類などを検討し,UVカットするCLの開発に取り組んできているが,UVカットしないCLもまだ存在し,かつUVカット率もCLメーカーや製品により異なる.ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)ビジョンケアカンパニーのアキュビューRは全製品,高いUVカット特性を有している注).その製品のUV透過性(波長に対する光線透過率)の例を図2に示すが,UV領域で透過率が低いことがわかる.注)UV吸収剤を配合したコンタクトレンズは,UV吸収サングラスなどの代わりにはなりません.本品の使用と,紫外線に起因する眼障害リスク低減の関係については,臨床試験において確認されておりません.●おわりにUVは,眼に対して短期的もしくは長期的に影響を及ぼし,眼疾患を引き起こすこともある.そのため,UV対策が必要であり,その方法としては,サングラスだけではなく,UVカットCLも大切な選択肢となる.とくに中学生や高校生にとってはサングラスという選択がむずかしい場合もあるので,視力矯正を目的として装用するCLがUVカットすることが望ましい.また,UVカットCLを選択する際には,UVカット率にも注意する必要がある.文献1)CoroneoM:Ultravioletradiationandtheanterioreye.EyeContactLens37:214-224,20112)https://www.env.go.jp/chemi/matsigaisen2015/full/matsigaisen2015_full.pdf3)http://www.who.int/uv/publications/en/primaryteach.pdf4)柴田奈央子,初坂奈津子,田村美華ほか:中学生を対象とした紫外線蛍光撮影法による瞼裂斑の検討.第65回日本臨床眼科学会総会展示9-14,20115)https://www.env.go.jp/chemi/matsigaisen2015/full/matsigaisen2015_full.pdfhttp://www.who.int/uv/publications/en/primaryteach.pdfMirandaMN:Thegeographicfactorintheonsetofpres-byopia.Trans.AmOphthalmolSoc77:603-621,1979ZS982