●連載203監修=岩田和雄山本哲也203.機能選択的視野計伊藤義徳中野匡東京慈恵会医科大学眼科光干渉断層計(OCT)の進歩により,明度識別視野検査(SAP)で捉えられない極早期の緑内障が検出可能になった.しかし一方で,視野と眼底の整合性がない症例において,OCTの検査結果をどう評価するかが新たな課題となってきた.そこで,SAPよりも早期視野異常の検出をめざす機能選択的視野計が,近年,改めて注目されるようになった.本稿では代表的な4機種の機能選択的視野計について,その原理と特徴について概説する.●はじめに網膜神経節細胞は判明しているだけでも10種類以上存在し,それぞれparvocellular系(P細胞系),koniocelllar系(K細胞系),magnocellular系(M細胞系)のいずれかのグループに分類され,外側膝状体のP細胞層,K細胞層,M細胞層に投影される.中でもK細胞系とM細胞系は比較的大きな細胞体で易障害性であること,余剰性が少ないことなどから,早期緑内障の異常を検出されやすいとされている.各種機能選択的視野計は,これらの網膜神経節細胞の細胞特性に注目し,SAPでは検出できない極早期の機能変化をより早期に検出するとされている(図1).●Shortwavelengthautomatedperimetry(SWAP)SWAPは選択的色順応法を用い,高輝度(100cd/m2)の黄色背景光(530nm)で赤,緑錐体の反応を抑制し,視標としてサイズVの青色視標(440nm)を呈示することからblue-on-yellowperimetryともいわれ,K細胞神経節細胞外側膝状体視野計MidgetcellsP細胞系HRPParvocellular・色覚・視カ・形状認識に大きく関与layer(80%)・高空間・低時間周波数に反応Smallbistrati.edcellsK細胞系SWAP・Blue-on-yellowの光刺激に反応Koniocellularlayer(8~10%)ParasolcellsM細胞系・輝度・動きに関与FDT・低空間・高時間周波数に反応MagnocellularFlickerlayer(8~10%)Pulsar図1細胞特性と機能選択的視野計(77)0910-1810/17/\100/頁/JCOPY系であるsmallbistrati.ed細胞の機能障害を評価することで早期緑内障の検出をめざしている.SWAPは視標サイズを大きくすることで屈折異常の影響を受けにくいが,青色視標を用いるため白内障の影響を受けやすいという欠点がある.●Frequencydoublingtechnology(FDT)FDTは検査視標として逆位相の縞模様を15Hz以上の高時間周波数で反転すると,その縞幅が実際の半分にみえるfrequencydoublingillusionという錯視現象を利用した視野計で(図2),M細胞系のサブタイプの機能を反映するとされている1).第一世代のFDTであるFDTスクリーナーでは,10°の視標サイズで20°内17カ所または,30°内19カ所を測定する.一方,第二世代のHumphreyMatrixは,視標サイズを5°とし,Humphrey視野計の30-2,24-2に対応する測定点配置にした検査プログラムもある.●フリッカー視野フリッカー視野は視標刺激にフリッカー光を用いた視野計で,FDTと同様にM細胞系の機能を反映するとされている2).フリッカー視野には,各測定点におけるフリッカー融合頻度(criticalfusionfrequency:CFF)を測定する方法と,時間変調感度を測定する方法がある.図2Frequencydoublingillusion(錯視現象)あたらしい眼科Vol.34,No.5,2017679図3Pulsar光空間解像度とコントラストを変化させ,①→④のように高空間解像度であるほど,また低コントラストであるほど視標は見えにくくなる.図5症例のHumphrey視野Humphrey30-2SITA-Standardでは,Anderson-Patellaの診断基準は満たさない.CFFを測定するフリッカー視野では,白内障などの中間透光体の混濁の影響や屈折異常の影響を受けにくいとされている.●Pulsar視野Pulsar視野は2014年に日本で発売された新しい機能選択的視野計で,コントラストレベルの異なる同心円パターンを10Hzで反転させる検査視標を使用している.この視標刺激はコントラストだけではなく空間解像度も調整しているため,SAPやFDTのようにdB単位ではなく,src(spatialresolutioncontrast:空間解像度コントラスト)の単位で表される(図3).Pulsar視野におい680あたらしい眼科Vol.34,No.5,2017図4症例の眼底写真とOCT下方にNFLDを認め,OCTにおいても同部位の菲薄化を認める.MatrixPATTERNDEVIATIONPalsar視野Correctedprobabilities図6症例のMatrix,Pulsar視野Matrix,Pulsar視野では,同じ30°の測定範囲においても視野異常を認める.てもFDT,フリッカー視野と同様にM細胞系の機能を反映するとされている3).●症例(52歳,男性)健康診断にて網膜神経線維層欠損(nerve.berlayerdefect:NFLD)を指摘され,受診した.右眼下方網膜にNFLDを認め,OCT上も同部位に菲薄化を認めるが(図4),Humphrey視野計30-2SITA-Standardでは,Anderson-Patellaの診断基準を満たす視野異常は認めなかった(図5).しかし,Humphrey-MatrixやPulsar視野では,中心30°内の測定範囲においても感度低下の検出が可能であった(図6).文献1)MaddessT,HenryGH:Performanceofnonlinearvisualunitsinocularhypertensionandglaucoma.ClinVisionSci7:371-383,19922)MatsumotoC,TakadaS,OkuyamaSetal:Automated.ickerperimetryinglaucomausingOctopus311:acom-parativestudywiththeHumphreyMatrix.ActaOphthal-molScand84:210-215,20063)ZeppieriM,BrusiniP,ParisiLetal:Pulsarperimetryinthediagnosisofearlyglaucoma.AmJOphthalmol149:102-112,2010(78)