光線力学療法PhotodynamicTherapy(PDT)髙橋寛二*はじめに光線力学的療法(photodynamictherapy:PDT)は2004年にわが国で認可され,滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)の脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)を選択的に閉塞させる治療として現在も使用されている.光感受性物質ベルテポルフィンと赤外レーザーの光化学反応を利用する治療法であり,滲出型AMD治療の主力として使用された時代があったが,2009年に抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)薬の認可薬であるラニビズマブが一般的に使用され始めてから使用頻度は減少している.本稿では,抗VEGF療法全盛の時代に,いかにPDTを利用して効率よくAMD治療を行えばよいのか,また適応疾患として認可されていない疾患に対するPDTによる治療についても触れる.IPDTの標準的手技光感受性物質ベルテポルフィン(6mg/m2体表面積)の静脈内投与を10分かけて行い,薬剤静注開始後15分後からフルオレセイン蛍光眼底造影(.uoresceinangiography:FA)で同定した「病変(CNVのほかに出血,漿液性網膜上皮.離,蛍光ブロック部,光凝固瘢痕のすべてを含む)」+500μmの縁取り(safetymad-gin)を含む照射野に波長689nmのレーザー光(出力600mW/cm2)を83秒間照射する.視神経乳頭にはレーザー照射を避けるという原則があり,乳頭近傍の病変では乳頭縁から200μm以上距離をあけて照射を行う必要がある.IIPDTの利点と欠点PDTの利点として,①眼内炎や脳梗塞などの硝子体注射で起こりうる重篤な有害事象がなく,全身的に副作用が少ない,②すでに脳梗塞など脳心血管合併症を有する症例にも使用可,③血管閉塞効果が高く長期間持続する,④治療回数が少なくすむ,⑤治療後の受診は3カ月間隔でよいので受診回数が少なくすむ,などがあげられる.反面,欠点として,①治療後の2日間の行動制限(日光遮断),②脈絡膜循環障害(脈絡膜毛細血管や,さらに深層の脈絡膜血管の一時的閉塞),③複数回治療後の網膜色素上皮萎縮の発生,⑤出血や急性視力低下などの術後の副反応,⑥適応面で視力0.1~0.5,病変サイズ5,400μm未満が標準的適応であり,適応に限界があること,などがあげられる.III滲出型AMDに対するPDTの効果と問題点1.PDT単独療法(PDTmonotherapy)市販後に行われたPDT新ガイドライン調査1)では,PDT単独療法は日本人の滲出型AMD〔典型AMDとポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvascu-lopathy:PCV)〕において1年間視力維持が可能であり,特に病変最大径1,800μ未満の小さい病変やPCV*KanjiTakahashi:関西医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕髙橋寛二:〒573-1191枚方市新町2-3-1関西医科大学眼科学教室0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(57)199図1PDT単独療法後の網膜下出血上段:典型AMD症例の軽症出血例.このような出血は視力低下を伴わず,早期に吸収する.下段:PCV症例の重症出血例.吸収には時間がかかり,視力低下も回復しにくい.抗VEGF薬の併用によって,このような出血は最近少なくなった.下にはつながらず,早期に吸収していくものが大半であった.一方,重症出血はPCV,occultCNV(線維血管性色素上皮.離),RAPの進行期(stage3)に多い傾向にあった(図1).現在でも,PDT単独療法は,全身的な問題点(脳梗塞直後など)から抗VEGF薬が使用できない場合や,注射に対する恐怖心から硝子体注射を行えない症例には適応がある.ただし,先述したように,この治療を選択する際には,適応決定に十分な検討を行うともに,術後に起こりうる副反応についてよく説明を行っておくことが重要である.2.抗VEGF薬+PDT併用療法(Combinedtherapy)抗VEGF療法全盛の現在,PDTを用いる際には,抗VEGF薬との併用がもっとも頻度が高く一般的となっている.その理由は,抗VEGF薬がPDTの欠点を補い,治療後に副反応の少ない安定した結果をもたらすからである.併用療法の有効性についての報告は滲出型AMDの各病型(典型AMD,PCV,RAP)について,長期成績を含めてきわめて多数存在する.併用を行うメリットと機序は,①PDTによるCNVの閉塞・退縮効果を抗VEGF薬が相加的に高める可能性,②PDT後の副反応としての治療後1週以内の異常な滲出を抑制することによって急性視力低下を未然に防ぐ,③PDT後の脈絡膜血管閉塞(相対的虚血)によるVEGFのup-reg-ulationを抑えることによってCNVの異常増殖を抑制する,④PDT後の副反応としての術後出血を抑える,ことがあげられる.特に日本人に多いPCVに対する併用療法の適応を考える際,われわれが参考にすべきはEVEREST試験2)であろう.この試験はアジア人に多いPCVに対して,ラニビズマブ単独,PDT単独,ラニビズマブ+PDT併用の治療効果を無作為前向き臨床試験で比較検討したものである.ポリープ状病巣の完全閉塞率はPDT+ラニビズマブ3回併用群(77.8%)とPDT単独群(71.4%)のほうがラニビズマブ単独群(28.6%)よりも明らかに高く,視力上昇は併用群+10.9文字,PDT単独群+7.5文字,ラニビズマブ単独群+9.2文字という結果が示され,併用療法はポリープ状病巣の完全閉塞,視力改善の両者ともにもっとも優れていた.ただし,この試験は症例数が少なく,6カ月間のみの短期間の成績であったため,現在,ノバルティス社は規模を拡大してアジア諸国のPCV症例を多数集めてラニビズマブ単独とラニビズマブ+PDT併用の間で2年にわたる試験(EVEREST-II試験)を行っており,昨年の米国眼科学会(AAO)で1年目の結果が報告された3).一方,2012年に発売されたアフリベルセプトは,単独療法でポリープ状病巣の完全閉塞率がラニビズマブ(20~30%)よりも高い(50%以上)という報告が多数なされている.現在,バイエル社が行っているPLANET試験(PCVにおけるアフリベルセプト単独療法とアフリベルセプト+PDTによるレスキュー療法の比較試験)において,1年後にアフリベルセプト単独療法が併用療法に比して非劣性であったとの報告がつい最近なされた4).今後,アフリベルセプトによるポリープ状病巣の退縮とPDT併用療法による退縮の差異や,アフリベルセプトの反応不良例に対するPDT併用療法の効果などについても検証する必要があると思われる.現時点での滲出型AMDに対する併用療法の適応としては,①抗VEGF薬投与例において,最初から治療抵抗性を示すinitialnon-responder(図2),②抗VEGF薬投与の途中から効果が減弱あるいは無効となり,投与がより頻回になりつつある耐性例,③患者がより少ない治療回数を望む場合(経済的負担の問題または高齢者で頻回の通院や家族の付添いが不可能な場合),④病態を早急に改善させたい症例(特にPCV症例),⑤脈絡膜血管透過性亢進や脈絡膜肥厚を伴う症例,などが考えられる.③④⑤に関しては,特にPCV例では,症例によっては初回治療から併用療法を積極的に取り入れて,治療回数を減らす方針もよいと思われる(図3).視力に関しては,最近報告されたPCVに対する併用療法の前向き研究Fujisanstudyでは,0.1~0.7までの症例を対象としており,結果的に8文字以上の改善が得られた5)ことから,併用療法を行う場合は視力0.7以下にまで適応を広げてもよいのかもしれない.なお,併用療法を行う際の実際上の問題点として,抗VEGF薬投与とPDTのタイミングの問題(抗VEGF薬(59)あたらしい眼科Vol.34,No.2,201720118M0.4図2抗VEGF薬導入期ノンレスポンダー症例に対する抗VEGF薬+PDT併用療法の例(PCV症例)ラニビズマブ(IVR)の3回投与で導入を図ったが,4カ月目に網膜.離の増加を認めた.視力良好例であったので1回のみ追加投与を行い経過をみたが,15カ月目に視力が0.4に低下したので併用療法を行い,速やかな網膜下液の消失をみた.併用療法はこのような反応不良例に対するレスキュー治療として速やかな効果が得られ有効である.図3初回から抗VEGF薬+PDT併用療法を行ったPCV症例中心窩上方に大きい橙赤色隆起病巣と強い滲出を伴った症例であったが,ラニビズマブ+PDT併用療法(IA-guidedPDT,PDTと硝子体注射同日施行)を行い,速やかにポリープ状病巣は退縮した.12カ月後に1度ラニビズマブ投与の追加を行ったが,治療回数計2回だけで18カ月間良好な視力が保持された.本症例のIA所見とレーザー照射野は図4bに示す.図4PCVに対するPDTのレーザー照射野の決定方法(図3と同一症例)標準的なFA-guidedPDT(a)では照射野は視神経乳頭を含む領域となり,過大かつ視神経乳頭を含むため治療を行えない(黄色円はGLD:7,300μm).異常血管網とポリープ状病巣をカバーするIA-guidedPDT(b)では,それ以外の病変は照射野から除去できるため,照射野を劇的に縮小できる(緑色円はGLD:2,550μm).ポリープ選択PDT(c)では,ポリープ状病巣のみに照射するのでさらに小さい照射野ですみ,中心窩の照射を避けられる(ピンク色円はGLD:1,050μm).図3の症例ではIA-guidedPDTを用いた.ができるため,より小さい照射野で効率的なCNV閉塞を行うことができる.CNVの境界が確実に同定されれば,FA-guidedPDTで用いていたレーザー照射野のsafetymargin(500μmの縁取り)除去も考慮してよいかもしれない.この方法を用いるとFA下では適応とならなかった大きい病変でもPDTを行うことができる利点がある(図4a,b).PCVに対するIA-guidedPDTの治療成績はFA-guidedPDTとほぼ同等とされているので,筆者は特にPCVにはこの方法を用いることが多い.b.減弱PDTまたは半量PDT(Reduced..uencePDT,Half.dosePDT)Reduced-.uence(RF)-PDTまたは半量PDTは脈絡膜循環への影響が少ない,より軽度のPDTで効果を得ようとする方法7)で,減弱を行う方法として,ベルテポルフィン投与量を半量にする方法,レーザー照射の時間短縮を行う方法(83秒間を60秒あるいは42秒とする),レーザーエネルギーを半量にする方法がある.滲出型AMDのなかでは,特にPCVのポリープ状病巣はこのような弱い条件でも閉塞しやすいと考えられ,一定の施設において併用療法も含めてRF-PDTがPCVに好んで用いられてきた8).しかし現在もっとも多くRF-PDTが使用されている疾患は,保険適用外ではあるが,慢性中心性漿液性脈絡網膜症であると推測される(後述).c.ポリープ選択PDT(Polyp.selectivePDT)Polyp-selectivePDTは,2007年にYannuzziの一派が報告し9),近年再注目されているPCVに対する治療法である10).PCVの異常血管網は,PDTを行っても一定期間後には再疎通することから,滲出の強いポリープ状病巣のみにレーザー照射を行ってポリープ状病巣を退縮させ,滲出を抑える方法である.過去にPCVに対する光凝固治療においても,ポリープ状病変のみを凝固する手技があったが(ポリープ凝固),この方法はその考え方をPDTに応用したものである.光凝固のように凝固部に暗点を生ずることがなく,また,中心窩下に標的病巣がなければ中心窩のレーザー照射を避けることができるので,PDTによる中心窩網膜のダメージを心配する必要がないという利点がある.治療にあたっては,眼底所見とOCT,IA所見から,滲出のもとになっている病巣を確認し,病巣が複数ある場合は,それぞれの病巣を狙って小さいスポットサイズで,病巣各々に83秒間の照射を複数回行う(図4c).PDTでは,ベルテポルフィン静注開始後20分以内に照射を終えるという原則があるので,このような複数回照射の場合も,その原則は守ったほうがよいであろう.中心窩を含む大きな病変で,異常血管網が中心窩下にある症例などが適応になると思われるが,慢性期に異常血管網からの漏出をきたしている症例には効果が少ないので,治療前所見をよく確認する必要がある.d.アイロ二ングPDT(IroningPDT)通常のスポットサイズでは照射できないような大きな病変や視神経乳頭近傍の病変に対してPDTを行う方法11)で,レーザー照射の83秒間の間,病変内でレーザースポットを一定速度でゆっくりとアイロンかけるように移動させる方法である.病変全体への照射エネルギーはstandardPDTよりも少なくなるが,きわめて大きく拡大した末期病変や,いびつな形態をとる病変で一定の滲出抑制効果と視力維持効果が得られる.IVCSCに対するPDTの効果6カ月以上にわたって網膜下への滲出が持続する慢性中心性漿液性脈絡網膜症(centralserouschorioretinop-athy:CSC)に対して,PDTは網膜下漏出を停止させるための治療として広く知られている(ベルテポルフィンの保険適用に関しては未認可).CSCの原発病態は脈絡膜血管の異常な透過性亢進であり,そのために網膜色素上皮のバリア破綻が起こり,網膜下に漿液が漏出している.PDTを行うと異常な脈絡膜血管の透過性が抑制されることから,バリアの回復と網膜下への漏出停止,網膜下液吸収効果が速やかに得られる.半量PDT(ベルテポルフィン投与量半量)を用いて日本人の慢性CSC204眼の1年成績をみた藤田らの報告では,1年後に89.2%で漿液性網膜.離の完全消失がみられ,著明な視力低下や全身的合併症は1例もなく,平均視力は治療前と比べ著明に改善したと報告されている12).方法としては,FAの網膜下蛍光漏出点を含むIAの透過性亢進領域をカバーしてレーザー照射を行うが,本症の場合,脈204あたらしい眼科Vol.34,No.2,2017(62)図5慢性中心性漿液性脈絡網膜症に対するRF.PDT黄斑部の漿液性網膜.離を繰り返す慢性例で,中心窩無血管野内のPEDの縁にmicroripをもつ症例.職業は運転手で運転業務困難を訴えていた.IAで脈絡膜血管透過性亢進の強い緑色円(直径2,900μm)の部位にRF-PDT(時間短縮:42秒間照射)を行ったところ,網膜.離,PEDは速やかに消失した.その後も1年間再発を認めない.FAIA図6孤立性脈絡膜血管腫に対するPDT視神経乳頭鼻上側に存在する脈絡膜血管腫に対し,視神経乳頭から200μm離し,safetymarginを設けず腫瘍部のみ(黄色円直径6,700μm)にfull-dosePDTを行った.血管腫からの滲出による黄斑部網膜.離は治療2カ月後に消失し,腫瘍部の網膜内浮腫も消失した.視力は治療前0.8から治療後1.2に回復した.