特集●眼の先制医療あたらしい眼科33(4):501〜510,2016重篤な眼合併症を伴うStevens-Johnson症候群の発症予測PossibilityofPreemptiveMedicineforStevens-JohnsonSyndromewithSevereOcularComplications上田真由美*はじめに近年,病気の発症前にそれを予測し,予防的な対策を行うことにより病気の発症を予防する,あるいは遅らせるための先制医療が着目されている.本稿では,重篤な眼合併症を伴うStevens-Johnson症候群(Stevens-Johnsonsyndrome:SJS)について,筆者らが10年以上かけて解明してきた本症候群の病態ならびに遺伝素因を解説し,先制医療への応用の可能性を述べる.I重篤な眼合併症を伴うStevens-Johnson症候群SJSは,突然の高熱,口内炎,結膜炎,皮膚の小さな発疹につづいて,全身の皮膚と粘膜に水疱とびらんを生じる急性の皮膚粘膜疾患である.中毒性表皮壊死症(toxicepidermalnecrolysis:TEN)の一部はSJSの重症型と考えられ,日本では皮疹の面積が10%未満のものをSJS,それ以上のものをTENとよぶ1).1年あたり百万人に数人が発症する大変まれな疾患であるが,小児を含めあらゆる年齢に発症する.急性期に重篤な眼合併症(図1:偽膜ならびに角結膜上皮欠損の両方を認める重篤な結膜炎)を伴うのはSJS/TEN全体の約40%と報告されているが,その多くは慢性期に重篤な眼後遺症を生じる.重篤な眼後遺症としては,重症ドライアイ,睫毛乱生,眼瞼結膜の瘢痕形成,瞼球癒着,症例によっては角膜への結膜侵入または眼表面の角化による重度の視力障害があげられる(図2).眼合併症ならびに眼後遺症を生じているSJSとTENの眼所見は類似し,急性期ならびに慢性期をとおして,眼所見から両者を鑑別することは困難である.眼科では,瘢痕性角結膜上皮症に至った慢性期の患者を診ることが多く,重篤な眼合併症を伴うSJSとTENを併せて広義のStevens-Johnson症候群と呼称している2).IISJS⊘TENの原因薬剤とHLASJS/TENは,薬剤の投与が誘因となって発症することが多く,皮膚科からは,抗痛風薬であるアロプリノールや抗てんかん薬であるカルバマゼピンなどが代表的な原因薬剤として報告されている.しかし,アロプリノールで重篤な眼合併症を生じることは少なく3),カルバマゼピンによる重篤な眼合併症も多くはない.筆者らが,重篤な眼合併症・眼後遺症を伴うSJS/TEN患者を対象に行った調査では,約8割の患者が感冒様症状を自覚し,感冒様症状に対する薬剤投与が誘因となって発症していた4~6).また,大変興味深いことに,諸外国のSJS/TENのヒト白血球型抗原(humanleucocyteantigen:HLA)解析の結果報告から,原因薬剤によりその遺伝素因が異なることもわかってきた.抗痛風薬であるアロプリノールによるSJS/TEN発症には,漢民族7),欧米人8),日本人9)でHLA-B*58:01と強い関連があることが報告されている.また,抗てんかん薬であるカルマバゼピンによるSJS/TEN発症には,漢民族ではHLA-B*15:0210)と関連があることが,欧米人,日本人ではHLA-A*31:01と関連することが報告されている11,12).また,京都府立医科大学で診療するSJS/TEN患者のうち,抗てんかん薬による発症はわずか5%であった13).薬剤によって遺伝素因や眼合併症の有無が異なることは,それぞれの病態が異なる可能性を示している.つまり,現在,SJS/TENと診断されている患者は,複数の病態の集まりである可能性が示唆される(図3).III感冒薬関連眼合併型SJSのHLA筆者らは,感冒薬に関連して発症し,重篤な眼合併症・眼後遺症を伴うSJS/TEN(以下,感冒薬関連眼合併型SJS)日本人患者151名ならびに健康コントロール639名を対象にHLA解析を行い,HLA-A*02:06とHLA-B*44:03が感冒薬関連眼合併型SJSと有意に関連することを明らかにした5).とくにHLA-A*02:06では,p値2.7×10−20,オッズ比5.6と強い関連が示された5).大変興味深いことに,HLA-A*02:06ならびにHLA-B*44:03と感冒薬関連眼合併型SJSとの有意な関連は,同じ感冒薬に関連して発症していても,重篤な眼合併症・眼後遺症を伴わない症例では関連を認めなかった5).また,重篤な眼合併症を伴っていても,感冒薬以外の薬剤による発症患者ではHLA-A*02:06またはHLA-B*44:03との関連を認めなかった5).このことは,HLA-A*02:06とHLA-B*44:03との有意な関連は,感冒薬関連眼合併型SJSに特異的な遺伝素因であることを示唆している5).続いて,韓国人,インド人,ブラジル人感冒薬関連眼合併型SJSサンプルを用いてHLA-A*02:06またはHLA-B*44:03との関連についての検証を行ったところ,韓国人感冒薬関連眼合併型SJSではHLA-A*02:06と関連があり,インド人ならびにブラジル人(とくに欧米系ブラジル人)感冒薬関連眼合併型SJSでは,HLA-B*44:03と強い関連が示された(表1)14).インド人は,民族的には欧米人と同じCaucasianに属する.このことは,HLA-B*44:03と感冒薬関連眼合併型SJSとの関連は欧米人でも認められる可能性が高いことを示しており,今後の解析が急がれる.IV感冒薬関連眼合併型SJSの疾患関連遺伝子上述のように感冒薬関連眼合併型SJS発症には,HLA-A*02:06とHLA-B*44:03が有意に関連し,本発症には遺伝素因が大きく関与することが示唆された.そこで,筆者らは,HLA解析に加えて,感冒薬関連眼合併型SJSを対象に遺伝子多型解析を行った.感冒薬関連眼合併型SJSでは,薬剤投与の前にウイルス感染症やマイコプラズマ感染症を思わせる感冒様症状を呈することが多い.また,急性期・慢性期ともにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistantStaphylococcusaureus:MRSA),メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(methicillin-resistantStaphylococcusepidermidis:MRSE)を高率に保菌し,眼表面炎症と感染症を生じやすい15).このことより,筆者は,感冒薬関連眼合併型SJS発症の素因として自然免疫応答異常が関与している可能性を考えた.そこで,まず自然免疫関連遺伝子を候補遺伝子とした解析を行った.その結果,ウイルス感染に対する生体防御に大きく関与しているtolllikereceptor3(TLR3)の遺伝子多型との有意な関連が確認された16).また,マウスモデルを用いた解析で,このTLR3は眼表面炎症ならびに皮膚炎症を促進していることがわかった.さらにその炎症促進には上皮系細胞が大きく関与していることが明らかとなった17,18).第1回目の全ゲノム関連解析では,プロスタグランジン(prostaglandin:PG)E2の受容体の一つであるEP3の遺伝子PTGER3の遺伝子多型との関連が確認された4).このEP3については,マウスモデルを用いた解析により,眼表面上皮細胞や気道上皮,表皮細胞に強く発現しており,眼表面炎症や気道炎症,皮膚炎症を抑制していることが明らかとなっている19~21).さらに,ヒト結膜組織のEP3の免疫染色を行ったところ,正常結膜ならびに結膜弛緩症,翼状片,化学外傷患者の結膜組織において,このEP3は結膜上皮に蛋白発現が強く認められるのとは対照的に,重篤な眼合併症を伴うSJS患者の結膜では著しくその蛋白発現は減弱していた(図4)22).これらのことから,重篤な眼合併症を伴うSJS患者眼表面におけるEP3の発現の減弱が,慢性期にも継続するSJSの眼表面炎症に関与していることが推測される.さらに,感冒薬関連眼合併型SJSがさまざまな感冒薬で発症していることより,感冒薬(非ステロイド抗炎症薬やアセトアミノフェンなど)共通の作用機序であるPG抑制作用がその発症に大きく関与している可能性が示唆される.発症の遺伝素因がない人では,なんらかの微生物感染が生じても,正常の自然免疫応答が生じ,薬剤服用後に解熱・消炎が促進され,感冒は治癒する.しかし,発症にかかわる遺伝素因がある人に,なんらかの微生物感染が生じると異常な自然免疫応答が生じ,さらに薬剤服用が加わって,異常な免疫応答が助長され,重篤な眼合併症を伴うSJSを発症するのではないかと筆者は考えている(図5)15,23).続いて筆者らは,アジア人向けに開発されたChipを用いて,感冒薬関連眼合併型SJS日本人患者117名ならびに健康コントロール691名を対象に再度全ゲノム関連解析を行った.その結果,感冒薬関連眼合併型SJSの発症に,IKZF1遺伝子が強く関与していることが明らかとなった(図6a)6).韓国人,インド人感冒薬関連眼合併型SJSでもその有意な関連は確認されており,国際的に共通の疾患関連遺伝子であることがわかっている(図6b)6).さらに,IKZF1遺伝子の遺伝子多型の機能解析を行ったところ,感冒薬関連眼合併型SJS患者に多い遺伝子型では,ドミナントネガティブ型のスプライシングバリアントの発現比率が低下することが示唆され,感冒薬関連眼合併型SJSの病態にIKZF1の機能亢進が関与している可能性が示唆された(図7)6).感冒薬関連眼合併型SJSの病態へのIKZF1遺伝子の関連については,さらなる研究を継続している.V遺伝子間相互作用解析大変興味深いことに,HLA-A*02:06とTLR3rs3775296TTの両方をもつとオッズ比は,35以上に上昇することが明らかとなった24).そのため,ほかの組み合わせを模索したところ,HLA-A*02:06とPTGER3rs1327464GAまたはAAの両方をもつとオッズ比は,10以上に上昇することがわかってきた25).さらに,最近見つかった新規疾患関連遺伝子多型では,HLA-A*02:06と両方をもつと,オッズ比は100以上に上昇することも示唆されている.これらの複数の遺伝子多型が組み合わさることにより,発症リスクが高まることを,遺伝子間相互作用があるという.筆者は,この遺伝子間相互作用を応用して,感冒薬関連眼合併型SJSの発症予測,つまり前もってハイリスクの人を予測することが可能になるのではないかと考え,研究を継続している(図8).さらに,本疾患の発症に有意に関連することがわかっているいくつかの複数の疾患関連遺伝子には,機能的な相互作用があることも明らかとなっている.たとえば,EP3はTLR3を介した炎症を抑制していることが明らかとなっている(図9a)26).また,ほかの疾患関連遺伝子についても,TLR3によって誘導されることもわかってきている.以上のことより,感冒薬関連眼合併型SJSの発症に複数の疾患関連遺伝子,ならびに,それらの遺伝子間相互作用が大きく関与している可能性が示唆される15).つまり,生体内で複数の疾患関連遺伝子が遺伝子間ネットワークを構成し,ネットワークのバランスが良好であれば安定した生体内の恒常性が維持され,複数のリスク遺伝子多型を有する生体内ではネットワークのバランスが不安定になり,発症リスクにつながるのではないかと,筆者は考えている(図9b).おわりに今後,さらに感冒薬関連眼合併型SJSの遺伝素因の解明を進めることにより,ハイリスクの人を前もって見つけだし,予防的な対策を行うことにより病気の発症を予防する先制医療,そして個人の遺伝情報に応じた最適な医療(オーダーメイド医療)が可能となることが期待される.また,同定された疾患関連遺伝子がどのように相互作用して本疾患の発症機序に関与しているかを明らかにすることは,疾患発症予防法ならびに新しい治療法の開発に大きく貢献するものと期待される.文献1)北見周,渡辺秀晃,末木博彦ほか:Stevens-Johnson症候群ならびに中毒性表皮壊死症の全国疫学調査─平成20年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)重症多形滲出性紅斑に関する調査研究─,日皮会誌:121:2467-2482,20112)上田真由美,外園千恵,木下茂:“難病”診療の最前線Stevens-Johnson症候群の診療ならびに病態解析.京都府立医科大学雑誌117:793-799,20083)LeeHS,UetaM,KimMKetal:Analysisofocularmanifestationandgeneticassociationofallopurinol-inducedStevens-JohnsonsyndromeandtoxicepidermalnecrolysisinSouthKorea.Cornea35:199-204,20164)UetaM,SotozonoC,NakanoMetal:AssociationbetweenprostaglandinEreceptor3polymorphismsandStevens-Johnsonsyndromeidentifiedbymeansofagenome-wideassociationstudy.JAllergyClinImmunol126:1218-1225,20105)UetaM,KaniwaN,SotozonoCetal:IndependentstrongassociationofHLA-A*02:06andHLA-B*44:03withcoldmedicine-relatedStevens-Johnsonsyndromewithseveremucosalinvolvement.SciRep4:4862,20146)UetaM,SawaiH,SotozonoCetal:Newsusceptibilitygene,IKZF1,forcoldmedicine–relatedStevens-Johnsonsyndrome/toxicepidermalnecrolysiswithseveremucosalinvolvements.JAllergyClinImmunol135:1538-1545,20157)HungSI,ChungWH,LiouLBetal:HLA-B*5801alleleasageneticmarkerforseverecutaneousadversereactionscausedbyallopurinol.ProcNatlAcadSciUSA102:4134-4139,20058)LonjouC,BorotN,SekulaPetal:AEuropeanstudyofHLA-BinStevens-Johnsonsyndromeandtoxicepidermalnecrolysisrelatedtofivehigh-riskdrugs.PharmacogenetGenomics18:99-107,20089)TohkinM,KaniwaN,SaitoYetal:Awhole-genomeassociationstudyofmajordeterminantsforallopurinolrelatedStevens-JohnsonsyndromeandtoxicepidermalnecrolysisinJapanesepatients.PharmacogenomicsJ13:60-69,201310)ChungWH,HungSI,HongHSetal:Medicalgenetics:amarkerforStevens-Johnsonsyndrome.Nature428:486,200411)McCormackM,AlfirevecA,BourgeoisSetal:HLA-A*3101andcarbamazepine-inducedhypersensitivityreactionsinEuropeans.NEnglJMed364:1134-1143,201112)OzekiT,MushirodaT,YowangAetal:Genome-wideassociationstudyidentifiesHLA-A*3101alleleasageneticriskfactorforcarbamazepine-inducedcutaneousadversedrugreactionsinJapanesepopulation.HumMolGenet20:1034-1041,201113)UetaM:Stevens-Johnsonsyndromewithocularcomplication.biopharmaceuticsanddrughypersensitivity(MossilloP,PinziniJeds.)p129-150.NovaSciencePublishers,NewYork,201014)UetaM,KannabiranC,WakamatsuTHetal:Trans-ethnicstudyconfirmedindependentassociationsofHLA-A*02:06andHLA-B*44:03withcoldmedicine-relatedStevens-Johnsonsyndromewithsevereocularsurfacecomplications.SciRep4:5981,201415)UetaM,KinoshitaS:Ocularsurfaceinflammationisregulatedbyinnateimmunity.ProgRetinEyeRes31:551-575,201216)UetaM,SotozonoC,InatomiTetal:Tolllikereceptor3genepolymorphismsinJapanesepatientswithStevens-Johnsonsyndrome.BrJOphthalmol91:962-965,200717)UetaM,UematsuS,AkiraSetal:Toll-likereceptor3enhanceslate-phasereactionofexperimentalallergicconjunctivitis.JAllergyClinImmunol123:1187-1189,200918)NakamuraN,Tamagawa-MineokaR,UetaMetal:Tolllikereceptor3increasesallergicandirritantcontactdermatitis.JInvestDermatol135:411-417,201519)UetaM,MatsuokaT,NarumiyaSetal:ProstaglandinEreceptorsubtypeEP3inconjunctivalepitheliumregulateslate-phasereactionofexperimentalallergicconjunctivitis.JAllergyClinImmunol123:466-471,200920)KunikataT,YamaneH,SegiEetal:SuppressionofallergicinflammationbytheprostaglandinEreceptorsubtypeEP3.NatImmunol6:524-531,200521)HondaT,MatsuokaT,UetaMetal:ProstaglandinE(2)-EP(3)signalingsuppressesskininflammationinmurinecontacthypersensitivity.JAllergyClinImmunol124:809-818,200922)UetaM,SotozonoC,YokoiNetal:ProstaglandinEreceptorsubtypeEP3expressioninhumanconjunctivalepitheliumanditschangesinvariousocularsurfacedisorders.PLoSOne6:e25209,201123)上田真由美:眼科におけるStevens-Johnson症候群の病型ならびに遺伝素因.あたらしい眼科32:59-67,201524)UetaM,TokunagaK,SotozonoCetal:HLA-A*0206withTLR3polymorphismsexertsmorethanadditiveeffectsinStevens-Johnsonsyndromewithsevereocularsurfacecomplications.PLoSOne7:e43650,201225)UetaM,KaniwaN,SotozonoCetal:HLA-A*02:06andPTGER3polymorphismexertsadditiveeffectsincoldmedicine-relatedStevens-Johnsonsyndromewithsevereocularcomplications.HumanGenomeVariation2,Articlenumber:15023,201526)UetaM,TomiyaG,TokunagaKetal:EpistaticinteractionbetweenToll-likereceptor3(TLR3)andprostaglandinEreceptor3(PTGER3)genes.JAllergyClinImmunol129:1413-1416,2012501*MayumiUeta:京都府立医科大学感覚器未来医療学〔別刷請求先〕上田真由美:〒602-0841京都市上京区河原町広小路上ル梶井町465京都府立医科大学感覚器未来医療学0910-1810/16/¥100/頁/JCOPY図1眼後遺症を残す重篤な眼合併症を伴うSJS/TENの急性期の眼所見皮疹,粘膜疹とほぼ同時に両眼性の重度の結膜充血(a),角結膜上皮欠損(b),偽膜形成(c)を生じる.(文献23より転載)図2重篤な眼合併症を伴うSJS/TENの眼後遺症重篤な眼後遺症として,重症ドライアイ(a,b),眼瞼結膜の瘢痕形成(c),瞼球癒着(d),睫毛乱生(e:黄色矢印),症例によっては角膜への結膜侵入(f)または眼表面の角化(g)による重度の視力障害があげられる.502あたらしい眼科Vol.33,No.4,2016(20)図3原因薬剤によりSJS⊘TENの遺伝素因が異なる(文献6より転載)表1重篤な眼合併症を伴う感冒薬関連SJSとHLAとの関連(文献5,14を改変して転載)a.日本人感冒薬関連合併型SJSと健常コントロールとの比較HLAgenotype保持者頻度(%)重篤な眼合併症を伴う感冒薬関連SJS健常コントロールpOddsratio(95%CI)A*02:0671/151(47.0%)87/639(13.6%)2.72E-205.63(3.81-8.33)B*44:0339/151(25.8%)95/639(14.9%)0.001251.99(1.30-3.05)b.国際サンプル(インド,ブラジル,韓国)を用いた検証HLA-A*02:06EthnicgroupCarrierfrequency(%)DominantmodelanalysisCM-SJS/TENwithSOCControlpOddsratio(95%CI)Indian1/20(5.0%)3/55(5.5%)0.9380.91(0.09-9.31)Brazilian0/39(0.00%)0/134(0.00%)──Korean11/31(35.5%)14/90(15.6%)0.01813.00(1.18-7.57)HLA-B*44:03EthnicgroupCarrierfrequency(%)DominantmodelanalysisCM-SJS/TENwithSOCControlpOddsratio(95%CI)Indian12/20(60.0%)6/55(10.9%)1.07.E-0512.25(3.57-42.01)Brazilian10/39(25.6%)15/134(11.2%)0.02392.74(1.12-6.71)Korean6/31(19.4%)18/90(20.0%)0.9380.96(0.34-2.69)BrazilianCaucasian6⊘15(40.0%)⊘6⊘62(9.6%)⊘p=0.0037,OR=6.22(21)あたらしい眼科Vol.33,No.4,2016503結膜弛緩症患者の結膜慢性期SJS患者の結膜慢性期化学外傷患者の結膜亜急性期SJS患者の結膜図4重篤な眼合併症を伴うSJS/TEN患者の眼表面組織におけるEP3蛋白発現の減弱結膜弛緩症,化学外傷患者の結膜組織においてEP3蛋白は結膜上皮に強く認められるのとは対照的に,重篤な眼合併症を伴うSJS/TEN患者の結膜では著しくその蛋白発現は減弱している.(文献22より転載)504あたらしい眼科Vol.33,No.4,2016(22)図5重篤な眼合併症を伴うSJS⊘TENの発症機序についての仮説発症の遺伝子素因がない人では,なんらかの微生物感染が生じても,正常の自然免疫応答が生じ,薬剤服用後に解熱・消炎が促進され,感冒は治癒する.しかし,発症の遺伝子素因がある人に,なんらかの微生物感染が生じると異常な自然免疫応答が生じ,さらに薬剤服用が加わって,異常な免疫応答が助長され,SJSを発症する.(文献23より転載)あたらしい眼科Vol.33,No.4,2016505rs4917014遺伝子多型:発症しやすい高リスクタイプ(TT)を持つ人の観点から図6IKZF1遺伝子多型の機能解析a:感冒薬関連眼合併型SJS日本人患者117名ならびに健康コントロール691名を対象にした全ゲノム関連解析の結果(マンハッタンプロット).既報のHLA領域に加えて,IKZF1遺伝子に強い関連を認めた.b:韓国人,インド人感冒薬関連眼合併型SJSでもその有意な関連が確認された.(文献6より転載)506あたらしい眼科Vol.33,No.4,2016(24)IKZF1は,遺伝子発現のときに複数のスプライシングバリアントが存在する図7感冒薬関連眼合併型SJS発症関連遺伝子IKZF1a:IKZF1遺伝子の代表的なスプライシングバリアント(IK1~IK4).b:感冒薬関連眼合併型SJS患者に多い遺伝子型では,ドミナントネガティブ型のスプライシングバリアントの発現比率が低下している.(文献6より転載)疾患関連遺伝子の相互作用解析発症リスクを著明に上昇させるリスク遺伝子多型の組み合わせ図8遺伝子間相互作用を応用した感冒薬関連眼合併型SJSの発症予測HLA-A*02:06とTLR3rs3775296TTの両方をもつとオッズ比は35以上に上昇,HLA-A*02:06とPTGER3rs1327464GAまたはAAの両方をもつとオッズ比は10以上に上昇する.さらに,今後,新たに見つかる新規疾患関連遺伝子の組合せにより,さらにハイリスクの人の予測が可能となることが期待される.図9疾患関連遺伝子の相互作用a:EP3は,TLR3を介して産生されるさまざまな炎症性サイトカインの発現ならびに産生を抑制することにより炎症を抑制している.b:生体内で複数の疾患関連遺伝子が遺伝子間ネットワークを構成し,ネットワークのバランスが良好だと安定した生体内の恒常性が維持され,複数のリスク遺伝子多型を有すると,ネットワークのバランスが不安定になり,発症リスクにつながる.