あたらしい眼科Vol.28,No.4,20115110910-1810/11/\100/頁/JCOPY●プロスタグランジン(PG)関連薬PG関連薬は,内因性生理活性物質であるPGF2aから眼局所副作用を分離した誘導体で,プロストン系とプロスト系に大別される.プロスト系には,プロスタノイド誘導体とプロスタマイド誘導体がある(図1).プロストン系(ウノプロストン):代謝型誘導体でPGF2a活性が消失している.最近の報告では主経路からの房水流出促進も示唆されている.プロスタノイド誘導体(ラタノプロスト,トラボプロスト,タフルプロスト):おもにFP受容体を介した細胞外マトリックスのリモデリングにより,ぶどう膜強膜流出経路からの房水流出を促進するとされる.製剤はプロドラッグ型で,角膜で代謝され眼内へ移行する.タフルプロストとトラボプロストはフッ素を導入し,ラタノプロストよりFP受容体親和性が強い.プロスタマイド誘導体(ビマトプロスト):一部はプロスタノイド誘導体と同様の作用を示すが,アミド結合を有し,角膜代謝率は低い.大部分は未変化体のまま,プロスタマイド受容体(FP受容体バリアント複合体)に作用し,ぶどう膜強膜流出経路からの房水流出を促進する.●眼圧下降効果プロストン系の眼圧下降はプロスト系に劣る.プロスト系薬剤は,1日1回点眼で終日持続する強力な眼圧下降・日内変動抑制効果を有し,連用による減弱や全身副作用がない.プロスト系4剤すべてを直接比較した報告はまだない.海外のメタ解析1,2)では,眼圧下降効果はラタノプロスト≒トラボプロスト≦ビマトプロ(55)●連載130緑内障セミナー監修=岩田和雄山本哲也130.プロスタグランジン関連薬の比較中野聡子久保田敏昭大分大学医学部眼科プロスト系プロスタグランジン関連薬は,1日1回点眼で終日持続する強力な眼圧下降・日内変動抑制効果を有し,連用による減弱や全身副作用がない優れた薬剤である.わが国では4種の薬剤が使用可能で,それぞれの特徴を踏まえ,患者ごとに有効性,安全性,アドヒアランス,経済性を見きわめながら選択することが重要である.プロストン系系統プロスタノイドプロスタグランジン(PG)関連薬プロスタマイドプロスト系一般名ウノプロストンラタノプロストトラボプロストタフルプロストビマトプロスト主な国内製剤レスキュラR0.12%キサラタンR0.005%トラバタンズR0.004%タプロスR0.0015%ルミガンR0.03%点眼回数1日2回1日1回1日1回1日1回1日1回pH5.0~6.56.5~6.9約5.75.7~6.36.9~7.5防腐剤BAC0.005%BAC0.02%sofZiaTMBAC0.001%BAC0.005%貯法遮光,室温遮光,2~8℃1~25℃室温室温国内発売1994年1999年2007年2008年2009年ジェネリック医薬品ありありその他ディンプルボトルRBAC:塩化ベンザルコニウム,sofZiaTM:イオン緩衝系防腐剤.図1プロスタグランジン(PG)関連薬の特徴(2010年12月現在)PG関連薬はプロストン系(ウノプロストン)とプロスト系に大別される.プロスト系は,プロスタノイド誘導体(ラタノプロスト・トラボプロスト・タフルプロスト)と,プロスタマイド誘導体(ビマトプロスト)がある.512あたらしい眼科Vol.28,No.4,2011ストの傾向にあるとされる.ラタノプロスト,タフルプロスト,ビマトプロストの3剤を比較した自験例では,ビマトプロストが最も眼圧下降が良好であった(図2).プロスタノイド誘導体3剤の効果はほぼ同等で,プロスタマイド誘導体であるビマトプロストはやや効果が強い可能性がある.海外製剤のトラボプロスト(トラバタンR)は防腐剤として塩化ベンザルコニウム(BAC)を含有し,国内製剤(トラバタンズR)はホウ酸と亜鉛によるイオン緩衝系システム(sofZiaTM)を用いているが,同等の眼圧下降効果を示す.タフルプロストは,正常眼圧緑内障に対する強いエビデンス3)を有する.機序は不明であるが,各プロスト系薬剤への反応には個人差があり,ノンレスポンダーが10.40%存在する4).これまでは他系統の薬剤への変更・併用を要したが,別のプロスト系製剤を試みることで,プロスト系製剤1剤による治療が継続できる可能性がある.●その他の特徴各製剤の特徴を図1に示す.副作用には眼瞼・虹彩色素沈着,睫毛成長,眼周囲皮膚の多毛,結膜充血,角膜上皮障害,deepuppereyelidsulcus(DUES)などがある.結膜充血はラタノプロスト<トラボプロスト≒ビマトプロストの傾向1,5)とされ,自験例ではラタノプロスト≒タフルプロスト<ビマトプロストであった(図3).なお,プロスト系製剤間の切り替えでは充血が目立たないことが多く,継続使用で軽減することもある.角膜上皮障害は基剤やBAC濃度に影響され6),多剤併用例や(56)ドライアイや糖尿病を基礎疾患にもつ症例では考慮を要する.まとめプロスト系薬剤は,他系統の薬剤と比較して優れた点が多い.各製剤の特徴を踏まえ,患者ごとに有効性,安全性,アドヒアランス,経済性を見きわめながら選択する.文献1)AptelF,CucheratM,DenisP:Efficacyandtolerabilityofprostaglandinanalogs:ameta-analysisofrandomizedcontrolledclinicaltrials.JGlaucoma17:667-673,20082)vanderValkR,WebersCA,SchoutenJSetal:Intraocularpressure-loweringeffectsofallcommonlyusedglaucomadrugs:ameta-analysisofrandomizedclinicaltrials.Ophthalmology112:1177-1185,20053)桑山泰明,米虫節夫,タフルプロスト共同試験グループほか:正常眼圧緑内障を対象とした0.0015%タフルプロストの眼圧下降効果に関するプラセボを対照とした多施設共同無作為化二重盲検第III相臨床試験.日眼会誌114:436-443,20104)NoeckerRS,DirksMS,ChoplinNTetal:Asix-monthrandomizedclinicaltrialcomparingtheintraocularpressure-loweringefficacyofbimatoprostandlatanoprostinpatientswithocularhypertensionorglaucoma.AmJOphthalmol135:55-63,20035)HonrubiaF,Garcia-SanchezJ,PoloVetal:Conjunctivalhyperaemiawiththeuseoflatanoprostversusotherprostaglandinanaloguesinpatientswithocularhypertensionorglaucoma:ameta-analysisofrandomisedclinicaltrials.BrJOphthalmol93:316-321,20096)KahookMY,NoeckerRJ:ComparisonofcornealandconjunctivalchangesafterdosingoftravoprostpreservedwithsofZia,latanoprostwith0.02%benzalkoniumchloride,andpreservative-freeartificialtears.Cornea27:339-343,2008患者数(%)平均眼圧下降率<20%20~30%≧30%806040200****■:ラタノプロスト■:タフルプロスト■:ビマトプロスト図2眼圧下降率正常眼圧緑内障を含む原発開放隅角緑内障,高眼圧症を対象とした自験例では,ビマトプロストは眼圧下降率30%以上の眼圧下降良好例が多く,20%以下の眼圧下降不良例が少なかった(n=27,12週間,**:p<0.01,*:p<0.05).平均球結膜充血スコア3210ラタノプロストタフルプロストビマトプロスト***図3結膜充血スコアプロスト系単剤治療群の球結膜充血の程度を4段階(なし,軽度,中等度,重度)で評価した.ラタノプロストとタフルプロストと比較して,ビマトプロストで有意に充血が強かった(n=27,12週間,**p<0.01,*:p<0.05).