II.視路病変編抗AQP4抗体と抗MOG抗体陽性視神経炎の臨床像の相違点・類似点ClinicalCharacterizationofAnti-Aquaporin4-SeropositiveorMyelin-OligodendrocyteGlycoprotein-SeropositiveOpticNeuritis─PointofDi.erenceandSimilarity─毛塚剛司*はじめに一般的な眼科外来において,視神経炎はかなりまれである.実際,わが国における視神経炎の有病率は人口10万人中C1.6人である1).視神経炎はまれな疾患ではあるが,急激な視力低下を伴ううえに多くの鑑別疾患があり,眼科医を悩ませることが多い.視神経炎が確定した後でも,ステロイド内服治療に抵抗したり再発したりするケースもあり,治療に難渋することが多々ある.最近,眼底所見に加えて血清免疫抗体検査やCMRIデータなどを加味して視神経炎を分類する方法が確立しつつあり,臨床眼科医にとって治療戦略が立てやすくなった.本稿では,第C56回日本神経眼科学会総会のシンポジウムをベースに,抗CAQP4抗体と抗CMOG抗体陽性視神経炎の特徴および類似点,相違点につき述べる.CI視神経炎に関連する抗体である抗AQP4抗体,抗MOG抗体とは今までに視神経炎の病態と強く関連する抗体はいくつか提唱されている.そのうち,臨床においてとくに注目を集めているのが抗CAQP4(アクアポリンC4)抗体と抗MOG(ミエリンオリゴデンドロサイトグリコプロテイン)抗体である.どちらの抗体も神経グリア細胞由来の分子に対する抗体であり,抗CAQP4抗体はアストロサイト由来,抗CMOG抗体はオリゴデンドロサイト由来である(図1).抗CAQP4抗体は,最初は視神経脊髄炎のマーカーとして注目され,後にステロイド抵抗性の視神経炎において血清中に抗CAQP4抗体が多く含まれることが判明し,眼科医の知るところとなった経緯がある2,3).抗CMOG抗体は,当初はCMOG抗原がげっ歯類の視神経脊髄炎を引き起こす因子として注目され,多発性硬化症の動物モデルに関連して解析されてきた.2010年代にになって臨床的に血清中の抗CMOG抗体を測定できるようになり,眼科および神経内科領域で一気に注目されるようになった4,5).マウスモデルにおける病態解析ではあるが,抗CAQP4抗体では単独で視神経炎および脊髄炎を引き起こすことはできない.炎症や外傷などにより脳血液関門,もしくは網膜血液関門が破綻し,病的抗体が視神経もしくは脊髄に入り,臓器特異的な炎症が発症すると考えられている.しかし,なぜ病的抗体が発生するのかは未だ不明である.CII抗AQP4抗体と抗MOG抗体の測定法抗CAQP4抗体と抗CMOG抗体の測定法はどちらもELISA(enzyme-linkedCimmunosorbentassay)法とCBA(cell-basedassay)法があるが,精度の点からいって,両抗体ともCCBA法が推奨されている.しかし,保険収載されているのは抗CAQP4抗体ではCELISA法の*TakeshiKezuka:毛塚眼科医院,東京医科大学臨床医学系眼科学分野〔別刷請求先〕毛塚剛司:〒131-0033東京都墨田区向島C1-5-7毛塚眼科医院C0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(49)C619表1抗AQP4抗体陽性視神経炎の臨床的特徴図1視神経を構成するグリア細胞アストロサイト(星状膠細胞):AQP4を多く発現.ミエリン-オリゴデンドロサイト(稀突起膠細胞):MOG蛋白を多く含む.ミクログリア:スカベンジャー作用を有する.オリゴデンドロサイト図2抗AQP4抗体陽性視神経炎50歳,女性.初診時CMRI(T1強調ガドリニウム造影)で視神経に沿って造影効果(右眼>左眼)を認める(.).Ca:冠状断.b:水平断.表2抗MOG抗体陽性視神経炎の臨床的特徴図3図2の症例胸脊椎CMRI(T2強調単純)で脊髄に沿って高信号を認めた(.).図4抗MOG抗体陽性視神経炎の眼底像24歳,女性.左眼に視神経乳頭の発赤腫脹を認める.図5図4の症例初診時CMRI(T1強調ガドリニウム造影)で視神経に沿って造影効果(左眼)を認める(.).V抗AQP4抗体陽性視神経炎と抗MOG抗体陽性視神経炎の関係抗CAQP4抗体陽性例と抗CMOG抗体陽性例は,眼科分野において臨床像の違いはあるものの,全身からみればどちらも視神経炎と脊髄炎をきたしやすいという臨床的特徴があり,NMOSDの範疇に入ると思われる14).しかし,これまで述べたように,視神経炎としてはこれらの抗体陽性例でかなり臨床像が異なっている.そして何より視力予後が大きく異なるため,どちらの抗体の陽性例とも同一の疾患(NMOSD)とするには無理があると考えられている15).このため,最近では脱髄疾患には三つのカテゴリーが提唱されてきており,1)多発性硬化症,2)抗CAQP4抗体陽性疾患,3)抗CMOG抗体陽性疾患に分けることが提唱されている15).今まで知られていた脱髄疾患関連の分類では,1)多発性硬化症(古典的なもの,眼脊髄型),2)視神経脊髄炎(Devic病),3)同心円硬化症(Balo病)などがあげられていたが,抗AQP4抗体や抗CMOG抗体の発見により新しく脱髄性疾患の分類が変わるかもしれない.CVI特異的抗体陽性視神経炎と他の眼疾患との鑑別今まで,抗CAQP4抗体陽性視神経炎と抗CMOG抗体陽性視神経炎の臨床像について述べてきたが,この二つの特異抗体陽性視神経炎の鑑別を行うまでに行わなければならない眼疾患の鑑別がある.視神経疾患としては,高齢の場合には虚血性視神経症,若年者ではCLeber遺伝性視神経症などが鑑別にあがる.全年齢で注意すべき視神経疾患の鑑別には梅毒やヘルペスをはじめとした感染症があげられる.とくに梅毒は両眼性の視神経網膜炎の形を取ることがあり,脱髄性の視神経乳頭炎と混同しやすい.また,視神経疾患のみならず,ぶどう膜炎にも注意が必要である.全年齢でサルコイドーシス,原田病で視神経乳頭浮腫型が存在し,脱髄性視神経乳頭炎との鑑別が重要である.比較的若年者ではCBehcet病で両眼性の視神経乳頭浮腫が起こることがあり,しかも前眼部炎症をきたさないことが多い.これらの眼疾患としっかり鑑別し,いわゆる特発性視神経炎の診断がついてから特異抗体陽性か否かを判断したほうがよいと思われる.おわりに最近までに報告されている,抗CAQP4抗体と抗CMOG抗体陽性視神経炎の臨床像の相違点と類似点を解説した.わが国においては,ようやく全国調査が終わってこの二つの抗体陽性例の眼科的特徴がみえてきたところである.視神経炎における抗CAQP4抗体陽性例と抗CMOG抗体陽性例の大きな違いは,ステロイド治療に対する抵抗性であり,また再発の頻度にある.すなわち,これらの抗体例をよく理解することにより,難治性視神経炎の治療に大きく寄与する可能性が高くなると思われ,今後のさらなる臨床例の積み重ねが重要になることが予想される.文献1)石川均:日本における特発性視神経炎トライアルの結果について.神眼24:12-17,C20072)LennonCVA,CWingerchukCDM,CKryzerCTJCetal:ACserumCautoantibodyCmarkerCofCneuromyelitisoptica:distinctionCfrommultiplesclerosis.LancetC364:2106-2112,C20043)LennonCVA,CKryzerCTJ,CPittockCSJCetal:IgGCmarkerCofCoptic-spinalCmultipleCsclerosisCbindsCtoCtheCaquaporin-4Cwaterchannel.JExpMedC202:473-477,C20054)KezukaCT,CUsuiCY,CYamakawaCNCetal:RelationshipCbetweenCNMO-antibodyCandCanti-MOGCantibodyCinCopticCneuritis.JNeuroophthalmolC32:107-110,C20125)SatoDK,CallegaroD,Lana-PeixotoMAetal:DistinctionbetweenMOGantibody-positiveandAQP4antibody-posi-tiveCNMOCspectrumCdisorders.CNeurologyC82:474-481,C20146)KezukaCT,CFujitaCM,CUmazumeCACetal:ComparisonCofCantibodyCdetectionCassaysCforCserumCanti-aquaporin-4CantibodiesCinCopticCneuritis.CAmericanCAcademyCofCOph-thalmology(AAO)MeetingC2016,CChicago,COctC14-18,C20167)MatsudaR,KezukaT,UmazumeAetal:Clinicalpro.leofanti-myelinoligodendrocyteglycoproteinantibodysero-positivecasesofopticneuritis.Neuroophthalmol39:213-219,C20158)抗アクアポリンC4抗体陽性視神経炎診療ガイドライン作成委員会:抗アクアポリンC4抗体陽性視神経炎診療ガイドライン.日眼会誌118:446-460,C20149)IshikawaCH,CKezukaCT,CShikishimaCKCetal:Epidemiologi-calCandCclinicalCcharacteristicsCofCopticCneuritisCinCJapan.COphthalmology,inpress.10)JariusCS,CRuprechtCK,CKleiterCICetal;inCcooperationCwithC(53)あたらしい眼科Vol.36,No.5,2019C623