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コンタクトレンズ:コンタクトレンズ装用とQOV

2018年6月30日 土曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方さらなる一歩監修/下村嘉一44.コンタクトレンズ装用とQOV高静花大阪大学大学院医学系研究科視覚先端医学寄附講座●はじめに屈折異常の矯正手段であるコンタクトレンズ(CL)に求められるものとして,安全性,利便性,視機能があげられる.このなかでも,安全性,利便性については,開発当初に比べかなりの進歩が認められるが,視機能については,大部分のCCL装用者で良好な矯正視力が得られているということもあり,その次として考えられることが多かった.CLは眼表面上で動く光学デバイスであり,装用時の視機能にはさまざまな因子が影響する.従来,CL装用時の見え方の評価は視力検査のほか,自覚症状に基づいて行われるものが多かったが,各種視機能検査の発展により,従来の視力検査では検出できない微妙な視機能評価や他覚的評価が可能になった.評価項目として,従来の視力のほかにコントラスト感度,波面センサーによる高次収差,角膜トポグラファーによる角膜不正乱視,前方散乱,実用視力などがあげられる.以下にレンズの水濡れ性・素材とソフトコンタクトレンズ(SCL)装用時の視機能評価法を紹介する.C●CL装用とQOVSCL装用者のC50~80%以上が,装用時の乾燥感や見えにくさなどのドライアイ症状を訴えることが国内外よ瞬目(sec)1234従来型レンズ保湿型レンズり報告されている.レンズの水濡れ性低下は乾燥感症状をもたらし,また眼光学的特性の低下にもつながり,それは「見えにくい」という症状をもたらす.各レンズメーカーの努力があって,水濡れ性を向上させたレンズが登場した.保湿成分を添加したレンズ,シリコーンハイドロゲルレンズである.図1に,従来型ハイドロゲルレンズ「ワンデーアキュビューCR」(素材:eta.lconCA,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー)装用時と,保湿成分添加型ハイドロゲルレンズ「ワンデーアキュビューCRモイストCR」(素材:eta.lconCA,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー)装用時の見え方を示す.波面センサーを用いて高次収差連続測定したところ,従来型レンズ装用時には瞬目後,時間が経過とともに見え方が悪化しているのに対し,保湿成分添加型レンズ装用時には瞬目後の見え方が安定している.また,図2にハイドロゲルレンズ「2ウィークアキュビューR」(素材:eta.lconA,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー)装用時と,シリコーンハイドロゲルレンズ「アキュビューCRオアシスCR」(素材:seno.lconCA,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー)装用時の見え方を示す.ハイドロゲルレンズ装瞬目56789図1従来型のハイドロゲルレンズ(従来型レンズ)装用時と保湿成分添加型ハイドロゲルレンズ(保湿型レンズ)装用時の高次収差および網膜像の変化(文献C1から引用)(79)あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018C7870910-1810/18/\100/頁/JCOPY瞬目(sec)1234ハイドロゲルレンズシリコーンハイドロゲルレンズ用時には瞬目直後からシミュレーションの網膜像がぼけているのに対し,シリコーンハイドロゲルレンズ装用時には見え方が安定しているのがわかる.このように,レンズの保湿成分,素材は視機能に影響する1).さらに,架橋剤の増加や製造方法の最適化によりレンズの水濡れ性の改善を図った毎日交換型シリコーンハイドロゲルレンズ「ワンデーアキュビューCRオアシスCR」(素材:seno.lconCA,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー)について,従来のC2週間交換型の同素材レンズ「アキュビューCRオアシスR」との比較をコントラスト感度の測定により行ったところ,毎日交換型のほうが有意に高かった.また,両者のコントラスト感度の差は,屈折度数でC1段階程度(0.25D)の改善を示したことから,レンズの配合比率や製造方法の最適化は自覚的な見え方の質の改善として認知されることが示唆される.そのほか,カラーCCL装用時の視機能をクリアCCL装用時と比較した研究2)によれば,暗所時ではカラーCCL装用時の高次収差が有意に高いこと,またカラーCCLのフィッティングが悪いと明所時でも高次収差が有意に高くなることが報告されている.また,SCLの球面収差補正効果を,球面レンズと非球面レンズにおいて度数別に調べた研究3)によれば,球面レンズ装用時には+1.0D瞬目よりプラス寄りで「正」,+1.0Dよりマイナス寄りで「負」の球面収差補正量を示したのに対し,非球面レンズ装用時にはレンズ度数で大きく変わらなかった.このことから,球面レンズではレンズ度数により球面収差補正効果が変化し,とくに遠視や強度近視で顕著になるが,非球面レンズではレンズ度数で大きく変わらないといえる.C●おわりにこのように,CL装用時に影響を及ぼす多様な因子について,各種視機能検査を用いてさまざまな評価がなされている.今後,装用者の眼の健康を守り,ライフスタイルに合わせて良好な視機能が得られるCCLを処方していくうえで,各種CCLの視機能評価は重要と考えられる.文献1)KohCS,CHigashiuraCR,CMaedaCN:OverviewCofCobjectiveCmethodsforassessingdynamicchangesinopticalquality.EyeContactLensC42:333-338,C20162)TakabayashiCN,CHiraokaCT,CKiuchiCTCetCal:In.uenceCofCdecorativeClensesConChigher-orderCwavefrontCaberrations.CJpnJOphthalmolC57:335-340,C20133)KohCS,CMaedaCN,CHamadaCTCetCal:E.cacyCofCsphericalCaberrationCcorrectionCbasedConCcontactClensCpower.CContLensAnteriorEye37:273-277,C2014CPAS106

写真:画像鮮明化ソフトによる涙液層破壊パターンへの応用

2018年6月30日 土曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦409.画像鮮明化ソフトによる涙液層福岡秀記横井則彦京都府立医科大学大学院医学研究科破壊パターンへの応用視覚機能再生外科学dimplebreakspotbreakareabreak図1画像鮮明化ソフトウェア処理前の画像dimplebreakspotbreakareabreak図2ドライアイ患者のフルオレセイン染色画像(画像鮮明化ソフトウェア処理後)多数の涙液層破壊像を認める.画像鮮明化ソフトウェア処理後の画像では,角膜全面の涙液層破壊像のほか,結膜の皺襞や角膜輪部と瞼裂斑部の点状表層角膜症が明確になった.C眼裂斑部のSPK涙液破壊像SPK結膜皺襞涙液破壊像角膜全面のSPK図3図2のシェーマ点状表層角膜症(super.cialpunctatekeratopathy:SPK)C(77)あたらしい眼科Vol.35,No.6,20187850910-1810/18/\100/頁/JCOPY016年にドライアイの定義および診断基準の改定が発表された1,2).その改定には,涙液層破壊時間(break-uptime:BUT)短縮型ドライアイに代表されるように,涙液層の安定性の低下こそがドライアイの本質であるという考え方がベースにある.涙液層の安定性の評価にはフルオレセインのCbreak-uptimeの測定が重要である.改定には含まれていないものの,涙液層の破壊パターンの評価からドライアイのサブタイプを診断する眼表面の層別診断(tear.lmori-entedCdiagnosis:TFOD)と層別治療(tearC.lmCorient-edtreatment:TFOT)の重要性が提唱されている.涙液層の液層には,ゴブレット細胞から分泌されるMUC5ACを主体とする分泌型ムチンが水分を保持する形で混じり,涙液層の安定性向上にかかわり,角結膜上皮細胞表面の膜型ムチンは眼表面の水濡れ性維持にかかわり,なんらかの原因によりバランスが崩れたときに涙液破壊が生じるとされる.この涙液層の破壊パターンは,通常広く臨床で用いられているフルオレセイン染色による観察が主である.フルオレセイン染色には最大吸収波長がC494Cnm(青色),励起蛍光波長がC521Cnm(緑色)のフルオレセインナトリウムを用いる.ドライアイにおいては,バリア機能の低下した角膜上皮の障害部位や角結膜の点状表層角膜症(super.cialCpunctateCkeratopathy:SPK)が検出できるほか,涙液層の液層の厚みやその動態観察が可能である.角結膜上皮の障害部位や涙液層の破壊パターンの観察には,強い青色波長の光の照射が必要となる3).それに加え,涙液層の破壊パターンは開瞼後のフルオレセインで染色された液層の動態のなかで鑑別されるものであり,熟練した技術が必要である.今回,画像鮮明化ソフトウェア「softDEF」(ロジックアンドシステムズ)によるドライアイ患者の眼表面の上皮障害や涙液層破壊パターン鮮明化技術の可能性を示した(図1~3).画像鮮明化処理ソフトウェアとは,デジタルの画像からオリジナリティを保持した状態で画像にソフト独自の処理を行うことで,画像全体を人間の眼に見えやすいように強調する技術である.具体的には,霧や煙の除去のほか,監視カメラの不得意とする暗所映像,逆光や半逆光映像の鮮明化など,さまざまな領域で応用され,他の領域への転用も期待される技術である.ドライアイの涙液層破壊パターンは大きく五つに分類できる.角膜上皮の水濡れ性低下によると考えられる開瞼直後にみられる類円形のCspotCbreak,水濡れ性低下により角膜上方への涙液の移動途中でみられるCdimplebreak,高度の涙液減少によると考えられる開瞼直後より涙液層の形成が得られないCareaCbreak,軽症から中等症の涙液減少によると考えられる角膜下方にみられる線状の涙液層破壊であるClinebreak,涙液の水分の蒸発亢進によると考えられ開瞼後に涙液層が完全に形成されてからその破壊がみられるCrandombreakである4).画像鮮明化ソフトウェアにより涙液層の破壊部位が明瞭に区別されるため,ドライアイ症例の涙液層破壊パターンの分類にこの処理は有用であると筆者らは考えている.文献1)島﨑潤,横井則彦,渡辺仁ほか:日本のドライアイの定義と診断基準の改定(2016年版).あたらしい眼科C34:C3-8,C20162)TsubotaK,YokoiN,ShimazakiJetal:NewperspectivesonCdryCeyeCde.nitionCandCdiagnosis:ACconsensusCreportCbytheAsiaDryEyeSociety.OculSurfC15:65-76,C20173)BadaroE,NovaisEA,PenhaFMetal:Vitaldyesinoph-thalmology:ACchemicalCperspective.CCurrCEyeCResC39:C649-658,C20144)YokoiCN,CGeorgievCGA,CKatoCHCetCal:Classi.cationCof.uoresceinbreakuppatterns:Anovelmethodofdi.eren-tialCdiagnosisCforCdryCeye.CAmCJCOphthalmolC180:72-85,C2017C

総説:緑内障の薬理学

2018年6月30日 土曜日

あたらしい眼科35(6):775.783,2018c第28回日本緑内障学会須田記念講演緑内障の薬理学PharmacologyofGlaucoma吉冨健志*はじめに日常診療で緑内障患者への薬物治療を考えるときには,眼圧の経過や副作用の状況が臨床家にとっては重要である.そして多くの薬剤の中から患者に最適なものを選択し,病状とともに追加,変更してゆく流れになっている.このように臨床医としての立場からの考え方は,薬剤の作用を考えるときには,薬剤が緑内障の病態とそれに関係する眼の組織にどのように作用するかに集中している.一方で薬理学という学問は生体と薬物の相互作用を調べることが目的で,薬物が疾患にどのように作用するかについてではなく,生体のどの分子(受容体)に作用するかを調べる学問である.したがって,臨床系で考える薬物の作用と副作用という概念は,薬理学にはない.つまり,臨床学的に考えるCb遮断薬の眼圧下降という作用と,点眼によってまれに発症する喘息発作誘発という副作用は,薬理学的には毛様体と気管支平滑筋に存在する同じCb受容体に対する作用であり,基本的に区別はない.筆者は,九州大学院生のときに眼科学教室を離れ,薬理学教室でC3年間研究に没頭した経験がある.臨床では患者の治療に集中し,薬剤の作用も一人一人の患者の症状から考えてゆくが,基礎薬理学は,薬剤について患者ではなく,さまざまな分子,受容体に対する作用を調べてゆく学問である.そして,このような学問が新しい薬剤の開発につながってゆくのであるから,これもまた広い意味で患者の治療につながってゆく学問であるといえる.緑内障の治療薬は多数あり,その作用機序について眼科学の視点からは数多くの知見が得られている.今回は,普段あまり考えない薬理学の視点からみた緑内障治療薬について解説する.CI薬理学研究の原点,ミドリンPRの作用機序平滑筋薬理について世界的研究を行っていた薬理学教室で,筆者が最初に手がけた研究は瞳孔の平滑筋に関与するもので,これが筆者の研究としての原点となっている.眼科学と薬理学からみた薬剤の違いについて瞳孔にかかわるものについて提示する.ミドリンCPCRの作用機序については,散瞳を惹起する薬剤で,フェニレフリン単剤の点眼薬であるネオシネジンRや,トロピカミド単剤の点眼薬であるミドリンCMCRよりも大きな散瞳を惹起するものというのが,眼科学的な見地からの薬剤の理解であると考える.しかし,薬理学的にはトロピカミドは副交感神経遮断薬で,フェニレフリンはCa受容体作動薬である.薬剤の作用を薬理学的に理解するためには,副交感神経とCa受容体が散瞳にどのようにかかわっているかを解明することが重要で,たとえば副交感神経は瞳孔括約筋を収縮させる作用と同時に,筆者の研究で瞳孔散大筋を弛緩させる作用があることが明らかになっている1,2).したがって,副交感神経遮断は,瞳孔括約筋の収縮を抑制すると同時に瞳孔散大筋の弛緩も抑制する.一方で,Ca受容体刺激は瞳孔散大筋を収縮させると同時に瞳孔括約筋への収縮作用もわずかにあることも筆者は明らかにした1,3).したが*TakeshiYoshitomi:秋田大学大学院医学系研究科医学専攻病態制御医学系眼科学講座〔別刷請求先〕吉冨健志:〒010-8543秋田市本道C1-1-1秋田大学大学院医学系研究科医学専攻病態制御医学系眼科学講座0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(67)C775図1瞳孔括約筋,瞳孔散大筋の神経支配とa,b受容体の作用ミドリンCPCRは,瞳孔括約筋に対して副交感神経による収縮の抑制とCa受容体刺激によるわずかな収縮,瞳孔散大筋に対しては副交感神経による弛緩の抑制とCa受容体刺激による強い収縮があり,これらの総合作用で散瞳を引き起こす.ってミドリンCPCRは,瞳孔括約筋に対しては副交感神経による収縮の抑制とCa受容体刺激によるわずかな収縮作用,瞳孔散大筋に対しては副交感神経による弛緩の抑制とCa受容体刺激による強い収縮作用があり,これらの総合作用で散瞳を引き起こすわけである(図1).CIIb遮断薬の薬理作用1.b遮断薬の眼圧に対する薬理作用a.眼圧日内変動瞳孔の研究を薬理学教室で行ったのち,筆者はCYale大学のCSears教授の下で眼圧の日内変動に関する研究を行った.眼圧の日内変動は臨床でも重要な要素であり,外来で眼圧測定している時間以外で高眼圧を示す患者の存在は,悩ましい問題である.眼圧に日内変動があることは,1904年にCMaslenikovらによって報告されており,1981年にCRowlandらは眼圧の日内変動に関する動物モデルを始めて報告した4).これはウサギをC12時間暗室,12時間明室というリズムで飼育すると,眼圧は明室で低く,暗室で高いという一定のリズムをもつようになるもので,このリズムは飼育室の明かりをC24時間消しても変化しないので,光に対する反応ではなく,体内時計によって制御されたものである.また,体内時計の中枢は視交叉上核にあるとされている.筆者らはこのモデルを用いて,房水産生の日内変動測定をCJones-Mauriceの方法5)に従ってフルオロフォトメトリーを用いて行った.この結果,房水産生にも眼圧とほぼ同様のリズムがあることが明らかとなった6,7).さらに日内変動と交感神経との関係を調べるために,眼圧や房水産生に対する上頚神経切除(CGX)の影響を検討した.その結果,CGXを行うと眼圧および房水産生の日内変動が著明に抑制された8,9).すなわち,ウサギの眼圧および房水産生の日内変動は,おもに交感神経を介して中枢から伝達されている情報で制御されていると考えられた(図2).Cb.交感神経とb受容体の作用b受容体はアドレナリンなどによって活性化すると,結合しているCG蛋白によって細胞膜にあるCadenylate300.60.4250.2020-0.2-0.415-0.60:006:0012:0018:000:006:0012:0018:00Control眼上頚神経節切除眼眼圧日内変動房水産生日内変動図2ウサギの眼圧と房水産生の日内変動正常眼と上頚神経節切除側眼の比較.(文献C9より引用)cyclaseを活性化させ,cAMPを合成させる(図3).日内変動における交感神経の働きからCb受容体およびadenylateCcyclase系に対する影響を詳しく調べる目的で,房水中のカテコラミンおよびCcAMPの濃度の日内変動を測定し,それに対するCCGX,あるいはチモロール点眼の影響も検討した7,8).房水中のノルアドレナリン(noradrenaline:NA)は日中に低く,夜間に高いが,CGXでどちらも消失したので,交感神経末端由来と考えられた9).房水中のCcAMPも日中に低く,夜間に高いが,CGXおよびチモロールで著明に抑制されたので,交感神経系とCb受容体を介したCadenylateCcyclase系への抑制効果が深く関与していると考えられた9)(表1).すなわち,房水産生についてはCadenylatecyclase抑制によって房水産生が抑制されると考えられた10.12).一方でCadenylatecyclase活性物質であるコレラ毒やForskolinが眼圧を下げるというデータも,同じCYale大学のグループから発表されている13,14).すなわち,ade-nylatecyclase抑制によって房水産生が抑制されるはずであるのに,adenylateCcyclase促進によって眼圧が下降するということで,これについては長年謎であった.Forskolinは緑内障治療薬として一時期臨床治験にまで進んだが,ウサギでは有効だったのに,ヒトではあまり効果がなかったともいわれている.しかし,近年CFor-skolinによる眼圧下降作用のメカニズムとして,線維柱交感神経帯の細胞に作用して眼圧を下げるとする報告が出ており15),再び臨床応用を検討する報告もある16).すなわち,adenylateCcyclase活性によって房水流出はおそらく促進されるが,一方で房水産生も促進するという,眼圧にとっては矛盾する作用をもっていると考えられる.したC表1前房中ノルアドレナリンとcAMP濃度の日内変動前房中CcAMP濃度(pmol/ml)の日内変動01:3C0(明)18:0C0(暗)CControlC12.2±2.014C28.7±2.0上頚神経切除(CGX)C19.6±0.7C16.9±0.4CTimololC17.3±1.8C15.4±2.3Cがって,Cb遮断薬の作用としては,毛様体上皮にあるCb受容体と,線維柱帯にあるCb受容体に対する効果を総合して考える必要がある.このように,Cb遮断薬の眼圧下降効果のメカニズムには,薬理学的にはまだよくわかっていないことが存在する.C2.b遮断薬の血流に対する薬理作用b受容体が毛様体と線維柱帯に存在して,さまざまな機能を有しているとすれば,眼内の他の部分にもCb受容体が存在する可能性がある.そのなかで筆者らは,血管平滑筋にもCb受容体が存在すると考え,既存のCb遮断薬の眼循環にかかわる効果を血管標本を用いた薬理学的実験で検討してきた.この研究は厳密には眼循環を測定するのではなく,血管平滑筋に対する薬剤の薬理作用を調べるものである.摘出血管を用いた研究は眼科以外の領域では広く行われており,たとえば冠動脈を摘出した標本を使って冠動脈スパスムの機序の研究,脳血管を用いた脳血管障害の機序の研究などが行われている17.19).しかし,血管平滑筋の性質には臓器特異性があり,他臓器の結果がそのまま眼の血管に当てはまるとは限らない.実験の具体的手法としては,ウサギの毛様動脈を長さC2Cmmにわたって摘出し,微小血管収縮記録装置(MyographCsystem,CJPCTrading,CDenmark)に設置した後,種々の薬剤,あるいは電気刺激による神経刺激に対する機械的反応を等尺性に測定した20,21)(図4).まず,摘出血管にCa作動薬であるフェニレフリンとCb作動薬であるイソプロテレノールを投与して血管の収縮弛緩を確かめたところ,毛様動脈はフェニレフリンで収縮反応を認めたが,イソプロテレノールでは効果がなかった22).すなわち,基本的にCb受容体は毛様動脈ではあまり機能していないと考えられた.しかし,それにもかかわらず現在までにさまざまなCb遮断薬で眼血流の増加作用が報告されている.レーザースペックルを用いた研究では,カルテオロール,ベタキソロール,ニプラジロール点眼で視神経近傍の眼血流が増加することが報告されている23,24).筆者らはウサギ摘出毛様動脈血管を高カリウム溶液で収縮させた状態でこれらの薬剤を投与した際に,どの程度の弛緩作用をもっているかを評価した(図5).まず,カルテオロールについて検討を行ったが,血管弛緩作用は見いだされなかった22).しかし,この薬剤はCinCvivoでは血流増加作用をもつという報告が多数存在する23.25).もしそれが正しいとすれば,この薬剤の血流に対する作用は血管平滑筋に対する作用ではなく,中枢などを介した間接的な作用と考えられる.ベタキソロールは,毛様動脈を濃度依存性に弛緩させたが,これはこの薬剤のもつCb受容体遮断作用ではなく,カルシウム拮抗薬様の作用のためと考えられた22).チモロールは毛様動脈に対してはベタキソロールと比較すると弱い弛緩作用しかもっていなかった22).ただ,この弛緩作用のメカニズムについては,やはりカルシウム拮抗薬様の作用のためと考えられた26).b遮断作用に関してはチモロールとベタキソロールに大きな差はないと考えられるので,この点からも血管弛緩作用とCb遮断作用が関係のないことが示唆される.ニプラジロールはベタキソロールよりもかなり強い弛緩反応を有しており,その作用機序もまったく異なっている.この薬剤はニトログリセリン様の作用を併せもっており,薬剤に含まれるニトロ基よりCNOを放出するCNO-Donorとして血管弛緩作用を有すると考えられる27).ニプラジロールの血管弛緩作用がL-NAMEでも内皮擦過除去でも抑制されないにもかかわらず,NO除去剤であるCcarboxy-PTIOで抑制されるところから明らかとなっている.さらにこの薬剤はCa受容体拮抗薬としての作用も知られており,これもアドレナリン投与で収縮作用を有するこの血管の性質から,血管弛緩作用に結びつく可能性が示唆される.さらにレボブノロールは,Cb遮断薬のなかでもっとも強力な弛緩反応を示している.この薬剤は,細胞内のCCaC2+濃度に影響を与えることなく,収縮を抑制する作用があるところから,血管平滑筋のCCa感受性を抑制することによる血管弛緩作用をもっていると考えられるが,詳細なメカニズムは不明である28).このように同じCb遮断薬であっても,血管に対する作用はまったく異なる薬理作用にウサギ毛様動脈Mechano-Transducer図4ウサギ毛様動脈を単離して,収縮,弛緩を測定する装置30μM100μM300μM1μM10μM30μMNipradilol100μMCarteolol1mM300μM1mM15min5mN5mN10min30μM100μM300μMBetaxolol1mMLevobunolol30μMHighK+Solution15min5mN1μM10μM100μM30μM100μM300μM300μM1mM5mN15minTimolol15min4mN図5毛様動脈血管平滑筋に対する各種b遮断薬の効果同程度の眼圧下降効果であることが知られているが,血管に対する作用は薬剤間で非常に異なる.よって生じていることが明らかになった.さらにレーザースペックルなどの機器を用いた眼循環に対する薬剤の効果をCinCvivoで検討した報告と,今回のCinCvitroの結果にはいくつか乖離があり,Cb遮断薬の眼循環に対する作用メカニズムも,薬理学的にはまだよくわかっていないことが存在する(表2).CIII毛様動脈血管平滑筋の神経支配ウサギの毛様動脈を電気刺激すると収縮反応が得られる.この収縮はCa1受容体拮抗薬であるブナゾシンの投与によって抑制された.すなわち,電気刺激によって起こるこの収縮は,アドレナリン作動性神経(交感神経)表2各種b遮断薬の血管平滑筋に対する作用機序わずかに収縮Cほとんど効果なしC電位依存性CCaC2+チャネル抑制による弛緩Cnipradilol分子の一部であるCNOによる弛緩とCa遮断作用CCa2+感受性抑制による弛緩Cによるものである.一方,ヒスタミンを投与してこの血管を収縮させた状態で電気刺激を行うと,血管弛緩反応が出現するが,この弛緩反応は血管内皮を除去した状態でもCL-NAME(一酸化窒素(NO)合成阻害薬)を投与することによって消失した.この結果はウサギの毛様動NONA血管平滑筋弛緩収縮aNO血管内皮副交感神経AChLatanoprostUnoprostoneTravoprost1μM3μM10μM1μM3μM1μM3μM10μM30μM10μM30μM30μM4mN10minHigh-KSolutionHigh-KSolutionHigh-KSolutionTa.uprost1μM3μM10μMBimatoprost1μM3μM10μM30μM100μM30μMHigh-KSolutionHigh-KSolution図7毛様動脈に対するPG関連薬の効果これも各薬剤で効果が異なっている.脈がC2種類の神経支配を受けていることを示している29).すなわち,収縮をコントロールする交感神経と,弛緩をコントロールする神経(この神経の起源は明らかではないが,NOを伝達物質とする神経)の二重支配である(図6).このような神経支配はサルの血管でも見いだされている30).このような神経に薬剤が影響して血管平滑筋に作用することもあり,緑内障治療薬の眼循環への作用機序を考えるときには,このようなことも考慮に入れる必要がある.交感神経でも副交感神経でもない神経交感神経図6毛様動脈血管平滑筋の神経支配血管平滑筋は交感神経と正常眼圧緑内障を化学伝達物質とする交感神経でも副交感神経でもない神経に支配されている.CIVプロスタグランジン関連薬の血流に対する薬理作用さまざまなCb遮断薬の血管平滑筋に対する薬理作用を検討してきたので,ウノプロストンを含めたプロスタグランジン関連薬についても検討してみた.血流増加作用については報告もあるが31),血管弛緩作用はやはり薬剤間で差があることがわかった32.35)(図7).興味深いことに,一部のプロスタグランジン関連薬でその代謝物を用いて実験を行ったところ,代謝物は血管弛緩作用をもたないことが明らかになった.角膜を通過するときに薬剤はほとんどすべてが代謝されて代謝物として前房内に存在する.したがって,点眼薬が血流を増加させるとすれば,それは眼球内に存在する代謝物としてではなく,眼球内に入らず結膜から眼球を迂回して非代謝物として後眼部に至るルートが想定される36).さらに,プロスタノイド(FP)受容体をノックアウトしたマウスではプロスタグランジン関連薬の眼圧下降効果はないにもかかわらず,血管に対する作用はあまり影響を受けないところから,これらの薬剤の血管に対する作用機序にCFP受容体が関与しておらず,眼圧下降作用とまったく異なる作用機序であることが明らかになった37).現在はこれらの薬剤の血管弛緩は容量性カルシウムチャネルを介した細胞外のCCa流入阻害によると考えている15).ManometerValve75mmHgBu.erColumn10mmHg35mmHg75mmHgHeightgas101.2cm35mmHgbubble10mmHggas47.2cmbubblegas13.5cmbubble103575mmHg30℃Waterbathラット眼杯標本図8exvivo眼杯標本に対する加圧の効果invivoとCinvitroの中間に位置するCexvivo眼杯標本を作製し,静水圧で加圧すると,10mmHg,35CmmHgで加圧しても変化はないが,75CmmHgで加圧すると,神経節細胞の軸索が腫脹する.(文献C40より引用)AlloP24(S)-HC75mmHg75mmHg75mmHg75mmHgAlloP1μM1μM24(S)-HC図9加圧による軸索腫脹に対するAlloP,24(S).HCの効果75CmmHgで神経節細胞の軸索の腫脹(矢頭)が認められるが,培養液中にCAlloPを添加したものでは,軸索の腫脹が抑制されている.同じようにC1μMのC24(S)-HCを培養液中に添加するとC75CmmHgでみられた軸索の腫脹が抑制されている.(文献C40より引用)CV神経ステロイドの神経保護作用き,加圧で神経節細胞の軸索が腫脹する(図8).神経ステロイド(neurosteroid:NS)は,1980年代に現在,本学の石川誠が中心となって,筆者らはラッE.Baulieuによって命名された,神経系においてコレスト分離眼杯標本を高圧下で培養する実験系(exCvivo加テロールから合成されるステロイド・ホルモンの総称で圧実験系)を独自に開発して,眼圧上昇時における神経ある.中枢神経系における神経伝達においては,興奮性ステロイドの神経保護効果を検討している.ExCvivo眼神経伝達物質であるグルタミン酸と興奮抑制性伝達物質杯標本は,網膜を構成する細胞間のネットワークを保持であるCg-アミノ酪酸(gamma-aminobutylicCacid:し,少なくともC24時間,生理活性を維持することがでCGABA)が主体であり,正常な神経細胞の機能維持のたCめには,グルタミン酸伝達系とCGABA伝達系のバランスが重要と考えられる.神経ステロイドは,これら二つの神経伝達系と密接なかかわりをもち,神経の興奮性を調節することが知られている.網膜においては,グルタミン酸は視覚情報主経路(視細胞-双極細胞-神経節細胞)における主要伝達物質であり,GABAは視覚情報主経路に対して,水平細胞・アマクリン細胞を介して興奮抑制性に作用する.グルタミン酸受容体に作用するCNSの代表がC24S-hydroxycholesterol(24SH)であり,GABA受容体に作用するCNSの代表がCAllopregnano-lone(AlloP)である.これまで緑内障とCNSに関して,24SHについてCFourgeuxらの報告があるのみで38),AlloPについては報告がなかった.加圧で神経節細胞の軸索の腫脹が発生するが,培養液中にC24SHとCAlloPを添加して,網膜神経節細胞に対する効果を検討した.その結果,加圧傷害時におけるC24SH39)とCAlloP40,41)の神経保護作用が明らかとなった.おわりに筆者の緑内障薬理学的研究について述べた.眼科学の発展には臨床的研究と基礎的研究の両輪が必要である.とくに薬理学的研究は,臨床研究で行われる薬剤に関する研究と区別できない点もあり,しかも利益相反にも関与してもっともやりにくい基礎研究分野である.さまざまな薬剤の薬理作用について,患者にどのような影響があり,治療に影響するかを調べるのが臨床的な考え方であるが,対象臓器に存在する受容体や化学物質に対する作用を調べる基礎的な考え方とはまったく異なっている.今回はさまざまな緑内障治療薬の毛様動脈血管平滑筋に対する作用をまとめてみた.それぞれの薬剤が,眼圧下降作用とは関連のない血管平滑筋細胞に存在する受容体やイオンチャネルにどのような作用を示すかを検討してきたが,これが実際の緑内障患者の視野進行や視機能維持にどのくらい役立つかはこれからの課題である.さまざまな緑内障治療薬が眼圧下降効果と異なる機序で視野維持効果を示している臨床研究は,最近注目されている.薬理学的基礎研究は,臨床では,まったく異なる薬剤と思われていたものが,想像できない疾患の治療薬剤として画期的な薬剤の開発につながることがある.筆者の研究ではできなかったが,将来若い先生方が緑内障患者に対する眼圧下降治療以外の治療の開発につながる研究を続けていただきたいと祈念して擱筆としたい.謝辞:薬理学の恩師,栗山熙先生,眼科学の恩師,猪俣孟先生に深謝申し上げるとともに,筆者が在籍してきた九州大学眼科,九州大学薬理,Yale大学眼科,北里大学眼科,和歌山県立医科大学眼科,秋田大学眼科の先輩,同僚,後輩の皆様に厚くお礼申し上げます.本総説は第C28回日本緑内障学会須田記念講演での講演内容に基づいて執筆した.文献1)YoshitomiT,CItoY:DoubleCreciprocalCinnervationsCinCtheCdogCirisCsphincterCandCdilatorCmuscles.CInvestCOphthalmolCVisSci27:83-91,C19862)YoshitomiCT,CItoCY,CInomataCH:AdrenergicCexcitatoryCandCcholinergicCinhibitoryCinnervationsCinCtheChumanCirisCdilator.ExpEyeResC40:453-459,C19853)YoshitomiCT,CItoCY,CInomataCH:FunctionalCinnervationCandCcontractilpropertiesCofCtheChumanCirisCsphincterCmus-cle.ExpEyeResC46:979-986,C19884)RowlandCJM,CPotterCDE,CRiterCRJ:CircadianCrhythmCinintraocularCpressure:ACrabbitCmodel.CCurrCEyeCResC1:C169-173,C19815)JohnsonCF,CMauriceCD:ACsimpleCmethodCofCmeasuringCaqueousChumorC.owCwithCintravitralC.uoresceinatedCdex-trans.ExpEyeResC39:791-805,C19846)SmithCSD,CGregoryCDS:ACcircadianCrhythmCofCaqueousC.owCunderliesCtheCcircadianCrhythmCofCIOPCinCNZWCrab-bits.InvestOphthalmolVisSciC30:775-778,C19897)GregoryDS:TimololreducesIOPinnormalNZWrabbitsduringthedarkonly.InvestOphthalmolVisSciC31:715-721,C19908)GregoryCDS,CAviadoCDG,CSearsCML:CervicalCganglionec-tomyCaltersCtheCcircadianCrhythmCofCintraocularCpressureCinCNewCZealandCwhiteCrabbits.CCurrCEyeCRessC4:1273-1279,C19859)YoshitomiT,GregoryDS:Ocularadrenergicnervescon-tributetocontrolofthecircadianrhythmofaqueous.owinrabbits.InvestOphthalmolVisSciC32:523-528,C199110)YoshitomiCT,CHorioCB,CGregoryCDS:ChangesCinCaqueousCnorepinephrineCandCcyclicCadenosineCmonophosphateCdur-ingCtheCcircadianCcycleCinCrabbits.CInvestCOphthalmolCVisCSciC32:1609-1613,C199111)NiiCH,CIkedaCH,COkadaCKCetCal:CircadianCchangeCofCade-nylateCcyclaseCactivityCinCrabbitCciliaryCprocesses.CCurrCEyeResC23:248-255,C200112)KiuchiCY,CGregoryCDS:RabbitsChaveCaCcircadianCrhythmCofCaqueousChumorCcyclicCAMP.CCurrCEyeCResC11:935-938,C199213)CaprioliJ,SearsM:Forskolinlowersintraocularpressureinrabbits,monkeys,andman.LancetC30:958-960,C198314)GregoryCD,CSearsCM,CBausherCLCetCal:IntraocularCpres-sureCandCaqueousC.owCareCdecreasedCbyCcholeraCtoxin.CInvestOphthalmolVisSciC20:371-381,C198115)WuCJ,CLiCG,CLunaCCCetCal:EndogenousCproductionCofextracellularCadenosineCbyCtrabecularCmeshworkCcells:Cpotentialroleinout.owregulation.InvestCOphthalmolVisSciC53:7142-7148,C201216)MajeedM,NagabhushanamK,NatarajanSetal:E.cacyandCsafetyCofC1%CforskolinCeyeCdropsCinCopenCangleCglau-coma-Anopenlabelstudy.SaudiJOphthalmolC29:197-200,C201517)GawAJ,BevanJA:Flow-inducedrelaxationoftherabbitmiddleCcerebralCarteryCisCcomposedCofCbothCendothelium-dependentand-independentcomponents.StrokeC24:105-110,C199318)SeebeckCJ,CLoweCM,CKruseCMLCetCal:TheCvasorelaxantCe.ectofpituitaryadenylatecyclaseactivatingpolypeptideandvasoactiveintestinalpolypeptideinisolatedratbasilararteriesCisCpartiallyCmediatedCbyCactivationCofCnitrergicCneurons.RegulPeptC107:115-123,C200219)LiCJS,CKnafoCL,CTurgeonCACetCal:E.ectCofCendothelinCantagonismConCbloodCpressureCandCvascularCstructureCinCrenovascularChypertensiveCrats.CAmCJCPhysiol271:H88-H93,C199620)MulvanyMJ,HalpernW:Mechanicalpropertiesofvascu-larCsmoothCmuscleCcellsCinCsitu.CNatureC260:617-619,C197621)MulvanyCMJ,CHalpernCW:ContractileCpropertiesCofCsmallCarterialCresistanceCvesselsCinCspontaneouslyChypertensiveCandnormotensiverats.CircResC41:19-26,C197722)Hayashi-MorimotoCR,CYoshitomiCT,CIshikawaCHCetCal:CE.ectsofbantagonistsonmechanicalpropertiesinrabbitciliaryCartery.CGraefe’sCArchCClinCExpCOphthalmolC237:C661-667,C199923)TamakiCY,CAraieCM,CTomitaCKCetCal:A.CE.ectCofCtopicalCbeta-blockersConCtissueCbloodC.owCinCtheChumanCopticCnervehead.CurrEyeResC16:1102-1110,C199724)KannoM,AraieM,TomitaKetal:E.ectsoftopicalnip-radilol,CaCbeta-blockingCagentCwithCalpha-blockingCandCnitroglycerin-likeCactivities,ConCaqueousChumorCdynamicsCandCfundusCcirculation.CInvestCOphthalmolCVisCSciC39:C736-743,C199825)SteigerwaltRD,LauroraG,BelcaroGVetal:OcularandretrobulbarCbloodC.owCinCocularChypertensivesCtreatedCwithCtopicalCtimolol,CbetaxololCandCcarteolol.CJOculCPhar-macolTherC17:537-544,C200126)DongCY,CIshikawaCH,CWuCYCetCal:E.ectCandCmechanismCofCbetaxololCandCtimololConCvascularCrelaxationCinCisolatedCrabbitciliaryartery.JpnJOphthalmolC50:504-508,C200627)YoshitomiCT,CYamajiCK,CIshikawaCHCetCal:VasodilatoryCe.ectsofnipradilol,ana-andsadrenergicblockerwithnitricCoxideCreleasingCaction,CinCrabbitCciliaryCartery.CExpCEyeResC75:669-676,C200228)DongCY,CIshikawaCH,CWuCYCetCal:VasodilatoryCmecha-nismCofClevobunololConCvascularCsmoothCmuscleCcells.CExpCEyeResC84:1039-1046,C200729)YoshitomiT,ItoY:Functionalinnervationofbovineoph-thalmicCartery.CGraefe’sCArchCClinCExpCOphthalmolC232:C122-126,C199430)TodaN,TodaM,AyajikiKetal:MonkeycentralretinalarteryCisCinnervatedCbyCnitroxidergicCvasodilatorCnerves.CInvestOphthalmolVisSciC37:2177-2184,C199631)TamakiCY,CAraieCM,CTomitaCKCetCal:E.ectCofCtopicalCunoprostoneoncirculationofhumanopticnerveheadandretina.JOculPharmacolTherC17:517-527,C200132)KurashimaCH,CWatabeCH,CSatoCNCetCal:E.ectsCofCprosta-glandinCF(2Ca)analoguesConCendothelin-1-inducedCimpair-mentCofCrabbitCocularCbloodC.ow:comparisonCamongCta.uprost,Ctravoprost,CandClatanoprost.CExpCEyeCResC91:C853-859,C201033)YoshitomiCT,CYamajiCK,CIshikawaCHCetCal:VasodilatoryCmechanismofunoprostoneisopropylonisolatedrabbitcili-aryartery.CurrEyeResC28:167-174,C200434)IshikawaH,YoshitomiT,MashimoKetal:Pharmacologi-calCe.ectsCofClatanoprost,CprostaglandinCE2,CandCF2aonisolatedrabbitciliaryartery.CGraefe’sArchClinCExpOph-thalmol240:120-125,C200235)DongY,WatabeH,SuGetal:Relaxinge.ectandmech-anismCofCta.uprostConCisolatedCrabbitCciliaryCarteries.CExpCEyeResC87:251-256,C200836)MizunoCK,CKoideCT,CSaitoCNCetCal:TopicalCnipradilol:Ce.ectsConCopticCnerveCheadCcirculationCinChumansCandCperioculardistributioninmonkeys.InvestOphthalmolVisSci43:3243-3250,C200237)AbeS,WatabeH,TakasekiSetal:Thee.ectsofprosta-glandinanaloguesonintracellularCa(2+)inciliaryarter-iesCofCwild-typeCandCprostanoidCreceptor-de.cientCmice.CJOculPharmacolTherC29:55-60,C201238)FourgeuxC,MartineL,BjorkhemIetal:Primaryopen-angleCglaucoma:associationCwithCcholesterolC24S-hydroxC-ylase(CYP46A1)geneCpolymorphismCandCplasmaC24-hydroxycholesterolClevels.CInvesCOpthalmolCVisCSciC50:C5712-5717,C200939)IshikawaCM,CYoshitomiCT,CZorumskiCCFCetCal:24(S)C-HydroxycholesterolCprotectsCtheCexCvivoCratCretinaCfromCinjuryCbyCelevatedChydrostaticCpressure.CSciCRepC6:C33886,C201640)IshikawaCM,CYoshitomiCT,CZorumskiCCFCetCal:NeurosC-teroidsCareCendogenousCneuroprotectantsCinCanCexCvivoCglaucomaCmodel.CInvestCOphthalmolCVisCSciC55:8531-8541,C201441)IshikawaCM,CYoshitomiCT,CCoveyCDFCetCal:TSPOCactiva-tionCmodulatesCtheCe.ectsCofChighCpressureCinCaCratCexCvivoCglaucomaCmodel.CNeuropharmacologyC111:142-159,C2016☆☆☆

トクホや機能性食品としてのサプリメント

2018年6月30日 土曜日

トクホや機能性食品としてのサプリメントSupplementsasFoodsforSpeci.edHealthUsesorFoodswithFunctionClaims川崎佳巳*はじめに内閣府の調査では,約C6割の消費者が健康食品を利用しており,高齢化による健康への不安から利用者は増加傾向にある.健康食品には法的定義はなく,「健康に資する」ことを表示して販売される「食品」の総称であり,分類上は医薬品ではない.健康食品のうち,健康維持増進に役立つ機能表示が認められているものを保健機能食品とよび,特定保健用食品(いわゆるトクホ),栄養機能食品,機能性表示食品のC3種類がある.一方,これらに該当せず販売されているものを「いわゆる健康食品」とよぶ.これら健康食品のうち,錠剤やカプセルなど,見かけが薬に近い形状をしているものを,一般的に「サプリメント」とよぶ.われわれ眼科医が患者に健康食品やサプリメントを利用させる場合,その注意点や判断基準となる基礎知識について解説する.CI保健機能食品とその表示1.特定保健用食品(トクホ)その商品に対して,特定の保健効果が期待できる表示を国が許可した製品.区分として,特定保健用食品,特定保健用食品(疾病リスク低減表示),特定保健用食品(規格基準型),条件付き特定保健用食品があり,図1のマークが付けられる.現在許可されているトクホでは,血糖値,体脂肪,お腹の調子,骨粗鬆症のリスク低減などに関する保健効果が表示できるが,現在のところ眼に図1健康保険用食品のマーク関する保健効果は表示できず,「眼の健康によいトクホ」は存在していない.C2.栄養機能食品ビタミンC13種類,n-3系脂肪酸,ミネラルC6種類の計C20種類の成分に関して,国が認めた基準値に適合した成分量を含むもの(表1).表示には国への許可申請や届け出が必要ない.この「栄養機能食品」というお墨付きの表示をつけ,対象となる成分以外に保健機能があるように見せかけ,販売促進に利用する製品も出回っているので,注意が必要である.C3.機能性表示食品2016年から新たに基準を設けて始まった機能性表示食品制度により,事業者の責任において科学的根拠に基*YoshimiKawasaki:かわさき眼科クリニック〔別刷請求先〕川崎佳巳:〒569-1142大阪府高槻市宮田町C1-29-18たかつき宮田町ビルC3Fかわさき眼科クリニック0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(61)C769表1栄養機能食品の規格基準栄養成分1日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量栄養機能表示栄養成分1日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量栄養機能表示下限値上限値下限値上限値ビタミンCAは,夜間の視n-3系脂肪酸は,皮膚の健力の維持を助ける栄養素でn-3系脂肪酸C0.6CgC2.0Cg康維持を助ける栄養素でビタミンCAC231CμgC600Cμgす.ビタミンCAは,皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です.す.亜鉛C2.64CmgC15Cmg亜鉛は,味覚を正常に保つのに必要な栄養素です.亜鉛は,皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です.亜鉛は,たんぱく質・核酸の代謝に関与して,健康のビタミンCBC1C0.36CmgC25CmgビタミンCBC1は,炭水化物からのエネルギー産生と皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です.維持に役立つ栄養素です.ビタミンCBC2は,皮膚や粘カリウムは,正常な血圧をビタミンCBC2C0.42CmgC12Cmg膜の健康維持を助ける栄養カリウムC840CmgC2,800Cmg保つのに必要な栄養素で素です.す.ビタミンCBC6C0.39CmgC10CmgビタミンCBC6は,たんぱく質からのエネルギーの産生と皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です.カルシウムC204CmgC600Cmgカルシウムは,骨や歯の形成に必要な栄養素です.鉄C2.04CmgC10Cmg鉄は,赤血球を作るのに必要な栄養素です.ビタミンCBC12C0.72CμgC60CμgビタミンCBC12は,赤血球の形成を助ける栄養素です.銅C0.27CmgC6.0Cmg銅は,赤血球の形成を助ける栄養素です.銅は,多くの体内酵素の正ビタミンCCは,皮膚や粘ビタミンCCC30CmgC1,000Cmg膜の健康維持を助けるとともに,抗酸化作用を持つ栄常な働きと骨の形成を助ける栄養素です.養素です.マグネシウムは,骨や歯の形成に必要な栄養素です.ビタミンCDは,腸管でのビタミンCDC1.65CμgC5.0Cμgカルシウムの吸収を促進し,骨の形成を助ける栄養素です.マグネシウムC96CmgC300Cmgマグネシウムは,多くの体内酵素の正常な働きとエネルギー産生を助けるとともに,血液循環を正常に保つのに必要な栄養素です.ビタミンCEC1.89CmgC150CmgビタミンCEは,抗酸化作用により,体内の脂質を酸化から守り,細胞の健康維ナイアシンは,皮膚や粘膜持を助ける栄養素です.ナイアシンC3.9CmgC60Cmgの健康維持を助ける栄養素ビタミンCKは,正常な血です.ビタミンCKC45CμgC150Cμg液凝固能を維持する栄養素パントテン酸は,皮膚や粘です.パントテン酸C1.44CmgC30Cmg膜の健康維持を助ける栄養葉酸は,赤血球の形成を助素です.葉酸C72CμgC200Cμgける栄養素です.葉酸は,胎児の正常な発育ビオチンC15CμgC500Cμgビオチンは,皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素でに寄与する栄養素です.す.(消費者庁ホームページより)表2トクホと機能性食品の類似点と相違点類似点:特定の保健の目的が期待できることを表示できる.相違点トクホ機能性表示食品企業負担大きい小さい表示ができる機能評価方法が未確立のため現時点では限定的トクホでできなかった機能表示が可能(例:肌の水分,視機能など)審査・許可の手続き・国が個別製品毎に審査許可・最終製品で評価・企業責任で科学的根拠を評価・最終製品または機能性関与成分に関する既存文献のレビューでも可能図2機能性表示食品の表示(消費者庁ホームページより)表3三つの違い医薬品サプリメント製品の品質同じ品質のものが製造と流通「同じ名称」でもまったく品質の異なるものが存在エビデンスの量と質病者を対象とした安全性と有効性の試験が実施済試験管内実験や動物実験が主体病者を対象とした試験はほとんどされていない安全性確認の対象者は健常人利用環境医師薬剤師により安全な利用環境が整備あくまで食品,商品の選択と利用は消費者の自由評価機関=評価機関=日本健康・栄養食品協会日本健康食品規格協会図3GMPマーク図5JHFAマーク本認証制度は安全性、品質の確保を実現するために必要となる検証をその時点での知見に基づき確認したもので、その製品の絶対的な安全性を保証するものではありません。QRコードにより品質・安全性情報の閲覧が出来ます。図4ハイクオリティ認証マーク

緑内障におけるサプリメント治療の可能性

2018年6月30日 土曜日

緑内障におけるサプリメント治療の可能性Anti-OxidantTherapymightbeMoreE.ectiveinGlaucomaPatients檜森紀子*中澤徹*はじめに緑内障は40歳以上の約5%,70歳以上では11%が罹患することが明らかになっている.成人の中途失明原因の第1位であり,加齢に伴って有病率の増える疾患である.日本国民の人口動態の急激な変化に伴い,2040年に65歳以上の高齢者の割合は約40%となると推計されており,今後さらに緑内障有病者が増えることが予想されている.視覚は外界からの情報の80%を占めており,生活の質(QOL)や健康寿命を維持するためにも,失明を予防することは重要である.CollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudyで提唱された通り,現在,筆者らは視野保持のために眼圧を30%下降させる眼圧下降に重点を置いて治療しているが,眼圧が十分低いのにもかかわらず視野進行を認める症例は少なくないため,病態に即した新しい治療法の開発が望まれている.緑内障の基本病態である網膜神経節細胞死にかかわる障害因子として軸索障害,慢性虚血,グルタミン酸障害,血流障害,一酸化窒素,ミトコンドリア障害,酸化ストレスがあげられる.近年,緑内障の発症,進行に酸化ストレスが関与することが臨床・基礎研究において報告されている.本稿では酸化ストレスと緑内障の関係,酸化ストレスの発生源になっているミトコンドリアについて,サプリメントなどによる抗酸化治療の可能性について述べる.I酸化ストレスとはわれわれヒトは空気中の酸素を体内に取り入れ,酸素によって得たエネルギーを利用して生命を維持する能力を備えている.しかし,喫煙,過度の飲酒,ストレス,老化は血流を低下させ活性酸素を発生させる原因となる.これに対して生体内は多重な防御機構をもち,活性酸素の消去と障害の抑制・修復を行っている.しかし,防御機構が破綻すると,過剰な活性酸素が生体内の重要な構成成分であるDNA(核酸),蛋白,脂肪(脂質)を酸化的修飾し,機能低下が引き起こされる(図1).生体膜は脂質や蛋白で構成されており,活性酸素による障害は生体膜の構造破壊,蛋白質の酵素作用やレセプター機能に大きな障害を与えることになる.また,核酸が障害を受けると発癌や老化が進展すると考えられている.適量の活性酸素は体内に入ったさまざまな外敵(細菌など)を攻撃するために利用されているが,過度の活性酸素に対し抗酸化力のバランスが崩れることを「酸化ストレス」とよんでいる.酸化ストレスがそれに打ち勝つ力を上回ると多くの疾患(中枢神経変性疾患,悪性疾患,糖尿病,高血圧など)の発症・進行をもたらすと考えられている.*NorikoHimori&*ToruNakazawa:東北大学大学院医学系研究科神経感覚器病態学講座・眼科学分野〔別刷請求先〕檜森紀子:〒980-8574宮城県仙台市青葉区星陵町1-1東北大学大学院医学系研究科神経感覚器病態学講座・眼科学分野0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(53)761図1生体における活性酸素の作用a.初期・中期・後期NTGb.初期NTG20尿中8-OHdG(ng/mg・creatinine)15105尿中8-OHdG(ng/mg・creatinine)2015105000510152005101520視神経乳頭組織領域血流(AU)視神経乳頭組織領域血流(AU)図2酸化ストレスマーカーと視神経乳頭血流NTG73例で尿中C8-OHdGと視神経乳頭血流は相関を認め,初期CNTGにおいてとくに強い相関を認めた.Ca.65歳以下男女全体b.65歳以下男性c.65歳以下女性網膜神経節細胞数(cells)網膜神経節細胞数(cells)網膜神経節細胞数(cells)図3抗酸化力と緑内障重症度65歳以下の全緑内障患者においては,抗酸化力(BAP)と網膜神経節細胞数は相関を認めないが(Ca),65歳以下の男性緑内障患者においては,BAPと網膜神経節細胞数は負の相関を認める(Cb).一方,65歳以下の女性緑内障患者においては,BAPと網膜神経節細胞数は相関を認めない(Cc).表1抗酸化物質摂取の臨床研究結果ab生存網膜神経節細胞数(cells/mm2)5,0004,0003,0002,0001,0000生存網膜神経節細胞数(cells/mm2)2,0001,5001,0005000vehicleNrf2vehicleNrf2vehicleNrf2活性剤活性剤活性剤野生型マウス野生型マウスNrf2KOマウス図4Nrf2の神経保護効果の検討無処置野生型マウスではCvehicle投与群とCNrf2活性剤投与群の生存神経節細胞数は有意差を認めないが(a),軸索障害においてCNrf2活性剤投与群は有意な神経節細胞保護効果を認めた(Cb).CDNA障害をきたすと考えられる.ATP産生能の低下,カルシウムイオンの恒常性の破状から細胞死が誘導される.したがって,ミトコンドリア由来の活性酸素を減少させるのは,酸化ストレス機構を制御する際に中心となることが考えられるため,ここでミトコンドリアの役割にも注目したい.上述したように抗酸化剤を摂取することは,活性酸素によるミトコンドリア障害を抑え,これが有効な治療法になる可能性となることが考えられる.CoQ10は脂溶性の生理活性物質であり,動物はCCoQ10を生合成しているだけでなく,食事からも摂取している.CoQ10は呼吸鎖電子伝達系の成分としてCATP合成に働き,その抗酸化作用が注目されている.CoQ10はミトコンドリアだけでなく血液脳関門も通過することから,ATP合成を高め,乳頭黄斑神経線維の網膜神経節細胞保護効果をもつことが報告されている34).CoQ10の誘導体に属しているイデベノンは親水性を有するため,CoQ10よりも細胞への取り込みがよく,電子伝達系において呼吸鎖複合体CI-III間の電子運搬を仲介し,ミトコンドリアのCATP産生を助ける役割を担っている.イデベノンはかつて日本で脳代謝薬として販売されたものの,有効性が証明できずC1998年に承認取り消しとなっていたが,Leber遺伝性視神経症(LeberChereditaryCopticCneurop-athy:LHON)に対する有効性が報告されている.CarelliらはCLHON患者においてレトロスペクティブに調査したところ,イデベロン投与群は非投与群と比べて機能が改善する割合が高く,イデベノン投与群のほうが視機能の改善が早まっていた35).これらのことからミトコンドリア障害の強い緑内障患者においてCATP合成を高めることによって,視機能を改善する可能性が考えられることから,今後の緑内障への応用も期待したい.おわりに本稿では酸化ストレスと緑内障の関係,酸化ストレスの発生源になっているミトコンドリアについて,そしてサプリメントなどによる抗酸化治療の可能性について述べた.眼圧下降治療を行ったうえで,追加効果を期待できる神経保護治療が今後展開されることが望まれる.文献1)YukiCK,CTsubotaCK:IncreasedCurinaryC8-hydroxy-2C’-deoxyguanosine(8-OHdG)/creatinineClevelCisCassociatedCwithCtheCprogressionCofCnormal-tensionCglaucoma.CCurrEyeResC38:983-988,C20132)HimoriCN,CKunikataCH,CShigaCYCetCal:TheCassociationCbetweenCsystemicCoxidativeCstressCandCocularCbloodC.owCinCpatientsCwithCnormal-tensionCglaucoma.CGraefe’sArchCClinExpOphthalmolC254:333-341,C20163)NakanoCM,CKawanishiCY,CKamoharaCSCetCal:OxidativeDNACdamage(8-hydroxydeoxyguanosine)andCbodyCironstatus:aCstudyConC2507ChealthyCpeople.CFreeCRadicCBiolCMedC35:826-832,C20034)NucciC,DiPierroD,VaresiCetal:Increasedmalondial-dehydeconcentrationandreducedtotalantioxidantcapac-ityCinCaqueousChumorCandCbloodCsamplesCfromCpatientsCwithglaucoma.MolVisC19:1841-1846,C20135)RokickiCW,CZalejska-FiolkaCJ,CPojda-WilczekCDCetCal:CDi.erencesCinCserumCoxidativeCstatusCbetweenCglaucoma-tousCandCnonglaucomatousCcataractCpatients.CBMCCOph-thalmolC17:13,C20176)YukiK,MuratD,KimuraIetal:Reduced-serumvitaminCandincreaseduricacidlevelsinnormal-tensionglauco-ma.CGraefe’sCArchCClinCExpCOphthalmolC248:243-248,C20107)TanitoCM,CKaidzuCS,CTakaiCYCetCal:StatusCofCsystemicCoxidativeCstressesCinCpatientsCwithCprimaryCopen-angleCglaucomaCandCpseudoexfoliationCsyndrome.CPloSCOneC7:Ce49680,C20128)AsanoCY,CHimoriCN,CKunikataCHCetCal:Age-andCsex-dependencyCofCtheCassociationCbetweenCsystemicCantioxi-dantCpotentialCandCglaucomatousCdamage.CScienti.cCReportsC7:8032,C20179)KangCJH,CPasqualeCLR,CWillettCWCetCal:AntioxidantCintakeandCprimaryCopen-angleCglaucoma:aCprospectiveCstudy.CAmJEpidemiolC158:337-346,C200310)ColemanCAL,CStoneCKL,CKodjebachevaCGCetCal:GlaucomaCriskCandCtheCconsumptionCofCfruitsCandCvegetablesCamongColderwomeninthestudyofosteoporoticfractures.AmJOphthalmolC145:1081-1089,C200811)WangSY,SinghK,LinSC:GlaucomaandvitaminsA,C,andCECsupplementCintakeCandCserumClevelsCinCaCpopula-tion-basedCsampleCofCtheCUnitedCStates.CEye(London)C27:487-494,C201312)ParkCJW,CKwonCHJ,CChungCWSCetCal:Short-termCe.ectsCofGinkgobilobaextractonperipapillaryretinalblood.owinnormaltensionglaucoma.KJOC25:323-328,C201113)HarrisCA,CGrossCJ,CMooreCNCetCal:TheCe.ectsCofCantioxi-dantsonocularblood.owinpatientswithglaucoma.ActaOphthalmol96:e237-e241,C201714)MaekawaCS,CSatoCK,CFujitaCKCetCal:TheCneuroprotectiveCe.ectCofChesperidinCinCNMDA-inducedCretinalCinjuryCacts766あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018(58)—-’’

ドライアイサプリメント

2018年6月30日 土曜日

ドライアイサプリメントSupplementationforTreatmentofDryEyeDisease井上佐智子*,**川島素子*はじめに近年,日本におけるサプリメント市場は1兆円を優に超え続けており,日本人の健康に対する意識の強さが推察される.サプリメント摂取の目的はさまざまであるが,診療におけるドライアイに対するサプリメントの認識に関しては,これまで比較的低い印象があった.ドライアイの治療が,点眼などを中心とした局所治療が主流であるためと考えられる.ドライアイの治療は眼表面の層別治療(tear.lmorientedtherapy:TFOT)の概念に則った点眼治療を中心に,マイボーム腺機能不全(meibomianglanddysfunction:MGD)に対するマイボケア,涙点プラグなどの外科的治療が主であるが,近年,これらに加えて環境因子の改善やライフスタイルへの介入が重要視されている(図1).また,ドライアイの発症には加齢だけでなく,喫煙やVDT(videodisplayterminal)負荷,環境因子などさまざまな要因が関係しており,そのいずれの背景にも酸化ストレスが大きく関与していることが解明されている1).サプリメントには,この酸化ストレスに介入することで,ドライアイの悪循環を断ち切る役割,予防的な役割が期待されている.膨張する医療費の問題や超高齢社会を迎えるにあたり,これからの社会は疾患治療だけでなく予防医学に対しても真剣に取り組む時期を迎えており,サプリメントの意義は高まってくるものと思われる.今回,ドライアイにおけるサプリメントの現状を,臨床研究結果など交えて述べる.I医療側におけるサプリメントへの意識現在,ドライアイサプリメントのエビデンスは多くなく,今後の研究や調査の動向が気になるところである.最近,ドライアイ研究会が同研究会会員の医師を対象に行ったアンケート調査では,約68%の医師が診療においてサプリメントを患者に推奨していることがわかった.そのなかでもサプリメント摂取を推奨する疾患は,エビデンスのある黄斑変性症に対するものが約98%ともっとも多く,次いでドライアイがあげられていたが,割合は約46%であった(図2).約半数の人が推奨しておらず,その理由として,エビデンスの欠如がもっとも多く,続けてどの成分を使用するべきかの情報が不足している,高価である,などの項目があげられた2)(図3).本調査はドライアイ研究会の会員医師を対象としているため,日本の医師全体を対象にした場合は,さらに推奨率が低くなるものと予想される.II日本におけるドライアイサプリメントドライアイサプリメントは「バイオティアーズR」をはじめとして海外のものが以前より知られていたが,国内のものでは,わかもと製薬の「オプティエイドDER」が2016年より販売され,現在まで安全に使用され,販売数を伸ばしている.内容成分は,いままでドライアイに有効性と安全性が報告されているラクトフェリン,エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoicacid:EPA)・*,**SachikoInoue:慶應義塾大学医学部眼科学教室,羽根木の森アイクリニック*MotokoKawashima:慶應義塾大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕井上佐智子:〒160-8582東京都新宿区信濃町35慶應義塾大学医学部眼科学教室0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(45)753.眼科疾患の診療において,先生はサプリメントの使用を推奨していらっしゃいますか?無回答1.0%「はい」の方:推奨する疾患は?(複数回答可)いいえ31.1%はい67.9%図2サプリメント推奨状況加齢黄斑変性129(人)97.0(%)ドライアイ6145.9眼精疲労4231.6老眼1410.5先生がドライアイの診療の際にサプリメントを推奨していない理由についてお答えください(いくつでも).(n=135)無回答10その他10メーカーが信用できない1摂取量が多い2収益が少ない3成分の摂取過多が気になる11医薬品ではない15説明が面倒16他のサプリメントや薬剤との相加相乗作用が不明23患者が購入しない27患者が購入しない32価格が高い(患者負担が増える)48情報が少ない.何を勧めてよいかわからない52エビデンスが少ない図3サプリメント非推奨理由ラクトフェリンC135CDHAC54CEPAC81ルテインC3.00乳酸菌(WBC2000)C10.0ビタミンCCC40.0ビタミンCEC8.04亜鉛C7.04CGABAC0.50図4ドライアイサプリメント「オプティエイドDER」の内容成分DHA:docosahexaenoicacid,EPA:eicosapentaenoicacid,GABA:Cg(gamma)-aminobutyricacid.活性酸素カタラーゼ*涙液分泌量2502001501005000123DCF.uorescenceintensity(%ofNT)RatiotoNT(/actin)図5オプティエイドDER摂取による酸化ストレスマーカーの減少(文献C3より転載)(mm/15sec)4C拘束送風投与3.5C正常マウス3C乳酸菌無投与2.5CE.faecium(WB2000)C2CE.faecium(JCM5804):標準株1.5CL.salivarius(WB21)B.longum(WB1001)1CL.acidophilus(WB2001)0.5CL.pentosus(TJ515)0InitialC2C4CDayCMean±S.E.,n=3,Dunnetttest*p<0.05C図6動物実験:WB2000株摂取後の涙液維持作用日本抗加齢医学会総会(福岡)平成C27年C5月C30日泉田ら(慶應大).サプリメント(WB2000なし)40日目サプリメント(WB2000あり)40日目Tearsecretion(mm/15sec)3.532.521.510.50図7動物実験:複合サプリメント摂取後の涙液分泌への影響日本抗加齢医学会総会(福岡)平成C27年C5月C30日泉田ら(慶應大).–

AREDSサプリメント

2018年6月30日 土曜日

AREDSサプリメントAREDSSupplement沢美喜*はじめに滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegenera-tion:AMD)の患者数は日本社会の高齢化に伴って増加傾向にあり,失明原因疾患の第4位を維持している.AMDは一度発症してしまうと,完治することはきわめて困難である.失われた視機能を回復させることはできないものの,血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)を阻害する抗VEGF治療が進歩し,著明な視力低下を生じてしまう患者数は減少している.ただし,継続的な治療を要する長期経過例においては不可逆的な視細胞・網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)細胞障害を避けることはできない.また,視力を維持するための抗VEGF治療継続に伴う医療費高騰の問題も生じている.より良い視機能確保,そして「見える」楽しい生活を送るためにも,発症・進行予防がきわめて重要である.AMDの発症予防を考えていくうえで,AMDは多因子疾患であることに気づかされる.とくに,AMD関連遺伝子,酸化ストレス,喫煙,食生活(高脂肪食)など多様な因子が発症に関連していると考えられ,いわば生活習慣病の側面をもっている.なかでも,さまざまな疫学調査で共通している因子は,「加齢」と「喫煙」である1).最近では超高齢社会に伴い,親子でAMD治療を受けているケースもある.家族歴が濃厚であれば,禁煙を含めたAMD発症予防を早い段階で推奨していきたい.他の予防の手立てとして,加齢黄斑変性の診療ガイドラインで示されているように,サプリメント摂取が推奨されている.AMD患者の診療においてその知識を深めておくことは重要である.IAREDSサプリメントの成分の紹介光刺激に暴露され続ける網膜には酸素と光が同時に存在し,活性酸素が産生されている.すなわち,網膜が活性酸素による障害を受けやすい環境にあることが,抗酸化サプリメントにAMD発症抑制を期待する背景であるといえる.具体的には,視細胞外節に存在する視物質ロドプシンの分解・再生の過程,いわゆるvisualcycleで生じる残渣がリポフスチンとしてRPE細胞内に蓄積する.リポフスチンの主成分であるA2E(N-retinalylidene-N-reti-nylethanolamine)は光刺激依存性に酸化され,多量の活性酸素を発生させる.さらに,視細胞は高い代謝活性状態であること,脈絡膜毛細血管板の酸素分圧が高いために近接したRPEやBruch膜は高濃度の酸素下状態にあることも,活性酸素を作りやすい要因であると考えられる.活性酸素によって視細胞の不飽和脂肪酸は酸化され,その酸化物質が蓄積していくことでRPEそのものが障害されてしまう.このように光刺激による視細胞・RPE障害の積み重ねがAMD発症の始まりと考えることで,これを抑制することがAMD予防につながると考えられる.すなわち,活性酸素から黄斑をどのように守*MikiSawa:堺市立総合医療センターアイセンター〔別刷請求先〕沢美喜:〒593-8304堺市西区家原寺町1-1-1堺市立総合医療センターアイセンター0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(39)747るのかが予防の始点となり,抗酸化作用をもつサプリメントに期待が寄せられる.黄斑には黄斑色素が存在し,その構成成分はカロテノイドの一種であるルテイン,メゾゼアキサンチン,ゼアキサンチンである.黄斑色素には,エネルギーが大きく毒性の高い青色光を吸収するフィルター効果,光によって生じる一重項酸素(活性酸素の一つ)を消去する抗酸化作用がある.黄斑色素は黄斑の外網状層であるCHenle線維層にもっとも多くみられるが,内網状層や杆体外節にも存在する.残念ながら黄斑色素は体内で合成されないため,食事で摂取しなければならない.ホウレンソウ,ブロッコリー,ケールにはルテインが多く含まれ,トウモロコシや卵黄,パプリカにはゼアキサンチンが多く含まれている.黄斑を守るには黄斑色素が多いほど効果があるのだろうと推定され,黄斑色素を増加させるのが予防のターゲットの一つと考えられる.ただし,前述したような食事からの摂取には限界があると考えられる.さらに,抗酸化ビタミンであるビタミンCCとCE,抗酸化ミネラルである亜鉛が,AMDのサプリメント成分として期待される背景もあって,大規模臨床研究へとつながっていった.CII臨床研究の紹介―AREDSサプリメントのエビデンスとしてもっとも有名な臨床研究は,AREDS(Age-RelatedCEyeCDiseaseCStudy,エイレッズ)である.AREDSは,米国国立眼研究所(NationalCEyeCInsti-tute:NEI)が主導してC1992年からC1998年に行った,11の施設,3,640人(55.80歳,平均C69歳)を対象とした大規模な調査(多施設無作為化二重盲検比較試験)である2).平均観察期間はC6.3年で,AMD進行予防における第一級のエビデンスとして確立している.AREDSではドルーゼンの大きさ・数,RPEの色素異常,片眼性・両眼性に着目して,眼底所見(図1)から表1のように四つのカテゴリーに分類した.5年間のAMD発症率はカテゴリー1:0.4%,2:1.3%,3:18.0%,4:43.0%であった.そして,カテゴリーに分類された被験者に無作為に下記のC4種類のサプリメントが割り振られた.1.抗酸化ビタミン(ビタミンCCC500Cmg,ビタミンCE400IC,CbカロテンC15mg)2.微量ミネラル(亜鉛C80mg,銅C2mg)3.抗酸化ビタミン+微量ミネラル4.プラセボ経過観察中に滲出型CAMDに進行したのはC592人であり,なかでも検査眼に中型(63.125Cμm),または大型(125Cμm)のドルーゼンが存在する,あるいは片眼にAMDが存在する被験者(カテゴリーC3とC4)において,対象眼の滲出型CAMDへの進行率が抗酸化ビタミン+ミネラル群において,プラセボ群と比べて滲出型CAMDへの進行の危険性がC25%減少したという結果が得られた(図2).AREDSサプリメントは病期を遅延させるのに有効であるというエビデンスを得ることができた結果,多数のサプリメントやマルチビタミンの投与がCAMD患者に推奨される弾みとなった.AREDSでは,滲出型CAMD発症率という点で抗酸化物質+亜鉛群で有意な抑制効果を示すことができたものの,萎縮型CAMD発症率については,発症例数が少なかったため,抑制効果傾向はみられたものの,有意差を示すことはできなかった.一方でCAREDSの研究を通して,いくつかの注意点がでてきた.亜鉛のとりすぎによる男性の泌尿器科異常,貧血,Cbカロテン内服群では黄色皮膚の合併症(おそらく柑皮症),喫煙者が摂取することで肺癌のリスク上昇などが問題となった.また,黄斑色素のカロテノイド成分はルテイン・ゼアキサンチンであるが,Cbカロテンを内服することによって,かえってルテイン・ゼアキサンチンの血中濃度低下傾向が示された.その理由として,小腸での脂溶性カロテノイド吸収において,Cbカロテンとルテインが競合する結果,Cbカロテンがルテインの取り込みを阻害している可能性が考えられ,Cbカロテンの必要性についての疑問が生じることとなった.そのころ,Cw3多価不飽和脂肪酸(polyunsaturatedfattyCacid:PUFA),ドコサヘキサエン酸(docosaC-hexaenoicacid:DHA)・エイコサペンタエン酸(eicosa-pentaenoicCacid:EPA)を多く摂取していると,AMDのリスクが低下するという報告3)がCAREDSグループか748あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018(40)カテゴリー2カテゴリー3カテゴリー4図1AREDSカテゴリーの眼底所見参考例カテゴリーC2.4までの具体例を示す.表1AREDSカテゴリー分類%401小型ドルーゼン(直径C63Cμm未満)がC5個未満程度C2小型ドルーゼンがC5個以上,中型(直径C63Cμm以上C125Cμm未満)がC1個以上,または色素上皮異常(色素沈着または脱色素)を認めるC3a中型ドルーゼンC20個以上,または大型ドルーゼン(直径125Cμm以上)C1個以上,または中心窩を含まない地図状萎縮を認めるC3b対象眼はC3aの所見.かつ僚眼がCAMD以外の理由で視力0.6以下C4a対象眼はカテゴリーC1.C3aの所見.かつ僚眼が晩期CAMD(中心窩を含む地図状萎縮か脈絡膜新生血管)C4b対象眼はカテゴリーC1.C3aの所見.かつ僚眼がCAMDに関連し,視力がC0.6以下C28%302020%1001234567(年)プラセボ抗酸化物質+亜鉛図2進行期AMDの発症率AREDSReportNo.8(2001)より改変した.主試験(新規成分)n=4,203(カテゴリー3と4)プラセボ(コントロール)ω-3不飽和脂肪酸ルテイン・ゼアキサンチンω-3不飽和脂肪酸(10mg・2mg)(DHA350mg・EPA650mg)ルテイン・ゼアキサンチンn=1,012n=1,044n=1,068n=1,079除外副試験(AREDSベース)n=3,036n=659n=863n=689n=825図3AREDS2試験設計35内服30プラセボルテイン+ゼアキサンチン25DHA+EPAルテイン+ゼアキサンチン20とDHA+EPA15105Log-rankP=.400012345(年)進行期AMD発症眼数プラセボ1,6911,6471,5091,3771,243900ルテイン+ゼアキサンチン1,7091,6731,5351,4051,284938DHA+EPA1,7491,7021,5491,4201,260897ルテイン+ゼアキサンチンとDHA+EPA1,7421,6831,5421,4151,281923図4AREDS2における5年間のサプリメント別の進行期AMDの発症率の推移==表2市販されているAREDS処方を改変したサプリメント一覧オキュバイトプリザービジョンC2サンテルタックスC20+ビタミン&ミネラルメーカーカロテノイドビタミンCCCビタミンCEC亜鉛DHA販売価格(定価)ボシュロムルテインC10CmgゼアキサンチンC2Cmg408CmgC242CmgC亜鉛酵母C300Cmg(亜鉛C30Cmg相当)銅酵母C30Cmg(銅C1.5Cmg相当)Cなし4,900円(1カ月分)参天製薬ルテインC20CmgゼアキサンチンC3Cmg300Cmg150Cmg15CmgCなし4,600円(1カ月分)Cab図5市販されているAREDS2処方に準じたサプリメントa:左はボシュロム社のオキュバイトプリザービジョンC2.Cb:参天製薬のサンテルタックスC20+ビタミン&ミネラル.

アスタキサンチン

2018年6月30日 土曜日

アスタキサンチンAstaxanthin北市伸義*はじめに「一般社団法人おにぎり協会」は,毎年全国大手コンビニエンスストアの人気おにぎりランキングを発表している.2017年は1位ツナマヨネーズ,2位ベニザケ,3位明太子となっており,いつも1位と2位は接戦である.ベニザケハラミ,北海道産イクラ,生ホタテ・イクラなども上位なので,これらを合わせるとサケ・イクラは圧倒的な人気である.なぜこれほど日本人に人気なのか.それには古来日本人の伝統と知恵があり,最近の医学的研究で明らかになってきた事実がある.サケは外洋から生まれた川へ産卵のために帰ってくるが,川では塩分濃度が大きく変化し,しかもエサを取らずに急流をさかのぼるという大きなストレスに対応する.サケは遡上前に体が橙色(オレンジ色)に変わり,この時期の体色は「婚姻色」ともいわれる.このサケやイクラの橙色色素こそアスタキサンチンであり,カロテノイドの1種である.アスタキサンチンは1日6~9mgが摂取の目安で,ベニザケの刺身であれば2~3人前(200~300g)に相当する(表1).筆者らの行った安全性試験では5倍量を4週間摂取しても全身にとくに影響はなく,安全性が高いと考えられる.本稿ではキング・オブ・カロテノイドともいわれるアスタキサンチン研究の成果と臨床応用への取り組みを解説する.表1おもな食品中のアスタキサンチン含有量Iカロテノイド1.カロテノイドは光合成され,植物を守る地球上では光合成により毎年1億トンほどのカロテノイドが生産されると推測されている.水圏では珪藻や褐藻はフコキサンチン,クロレラはルテイン,ヘマトコッカスはアスタキサンチンを産生する.陸上の植物では葉緑体がbカロテン,ルテイン,ゼアキサンチンなどを産生する.その役割は光エネルギーを吸収してクロロフィルに渡す光合成過程とともに,過剰な光エネルギーを熱エネルギーに変換して細胞を光酸化から保護することであり,果実,果皮,種子などの表面にさまざまなカロテノイドが存在する(表2).ミカンはbクリプトキサンチン,唐辛子やパプリカはカプサイシン,トマトはリコペンによって色づく.農家は収穫前に水を減らしてあえてストレスを与え,カロテノイドを増やして熟させる.*NobuyoshiKitaichi:北海道医療大学予防医療科学センター眼科学系〔別刷請求先〕北市伸義:〒002-8072札幌市北区あいの里2条5丁目北海道医療大学予防医療科学センター眼科学系0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(33)741表2生物のもつおもな抗酸化物質カロテノイドCC40H56を基本構造とするものポリフェノールフェノール(石炭酸)を多数もつものカロテンキサントフィルフラボノイドその他のポリフェノールCbカロテン(果物,野菜,卵黄など多数)リコペン(トマト)アスタキサンチン(サケ・イクラ)ルテイン(ほうれん草などの野菜,卵黄)ゼアキサンチン(トウモロコシ)フコキサンチン(海藻類)Cbクリプトキサンチン(ミカン)カテキン(茶)タンニン(茶,柿)アントシアニン(ブドウ,ブルーベリーなどベリー類)ルチン(ソバ)イソフラボン(大豆)プロシアニジン(リンゴ)レスベラトロール(ブドウ)クロロゲン酸(コーヒー)エラグ酸(イチゴ)セサミン(ゴマ)クルクミン(ウコン)クマリン(柑橘類)オレオカンタール(オリーブ油)細胞数(×105個)50403020100陽性対照110100プレドニゾロンAST(mg/kg)(10mg/kg)図1EIU惹起ラット前房水中の炎症細胞数前房水中の炎症細胞数はアスタキサンチン(AST)の投与量依存的に減少し,ASTC100Cmg/kg投与群はプレドニゾロンC10mg/kg投与群とほぼ同程度であった.Ca87***IndexofCNVvolume(×10-13m3)6543210Vehicle110100AST(mg/kgBW)bAST(mg/kgBW)Vehicle110100図2脈絡膜新生血管に対するアスタキサンチンの効果加齢黄斑変性の動物モデルである脈絡膜新生血管(CNV)モデルでは,アスタキサンチン(AST)の摂取により用量依存的にCCNVが縮小した(緑色).a:CNVの大きさを計算により比較したもの.Cb:網膜フラットマウントによる実際のCCNV像.DAPIDHEMerge図3アスタキサンチン点眼による活性酸素の抑制マウス紫外線角膜障害モデルで,点眼により角膜の活性酸素種(赤色)が抑制された.青色は核染色.Ca:紫外線照射のみ,b:紫外線照射+アスタキサンチン点眼,c:正常対照.Phospho-IκBαCOX-2UVBcontrolNano-ASTASToilLuteinBillberryNaive図4ナノ化アスタキサンチン摂取による炎症シグナルの抑制ナノ化アスタキサンチン摂取群(Nano-AST)ではCCOX-2(上段)やリン酸化CICkBa(下段)は抑制された(いずれも緑色).青色は核染色.C250準他覚的調節力(%)200150100500摂取日数図5健常成人におけるアスタキサンチン摂取後の調節力変化14日目以降,アスタキサンチン(AST)摂取群では有意に調節力が向上した(**p<0.01).a.AXTab125*120115110105100950図7医療機関向けアスタキサンチンサプリメントの1例a:アスタリールCACT2,Cb:アスタケア.Cb.Placebo125120115110105100950pre2weeks4weeks図6アスタキサンチン摂取による健常者の眼底血流速度の変化ヒトの眼底血流速度(SBR)は,アスタキサンチン摂取群(Ca)でC4週間後に有意に増加した(*p<0.05).一方,プラセボ群(b)では有意な変化はなかった.ChangingratesofSBRagainstpretreatmentlevel(%)pre2weeks4weeks

アントシアニン

2018年6月30日 土曜日

5アントシアニンAnthocyanin小沢洋子*Iアントシアニンとはアントシアニンは植物界において広く存在する色素であり,われわれは食物から摂取する.アントシアニンを含む食材は赤~紫色をしていて,ブルーベリーなどのベリー系の果物,赤いリンゴ,ブドウ,ワインなどに含まれる1).元来,このような色素は植物にとっては外敵から身を守るためのものであり,草食動物に対して色素により視覚的威嚇を与える,または強い光・風や感染などに対し抵抗性を発揮するなどの役割をもつとされる2).アントシアニンはアントシアンすなわち植物に含まれる赤・青・紫などの色素物質群のうち,アントシアニジンに糖や糖鎖が結びついた配糖体成分のことで,フラボノイドの一種である(図1)2).R1,R2の残基により物質名が決まり,色調が異なる(表1).植物には通常,いくつかの種類のアントシアニンが混在している.アントシアニンはプラスにチャージした酸素分子をもつ.水溶性でありCpHが低いと安定である.しかし,アスコルビン酸とともにあると安定性が低下することも知られる2).フラボノイドとはクマル酸CCoAとマロニルCCoAが重合してできる天然に存在する有機化合物群であり,ポリフェノールの一種である.つまり,ポリフェノールの一つにフラボノイドがあり,その一つにアントシアニンがあることになる.ポリフェノールはその名の通りフェノールの構造を複数もつ物質の総称で,そのなかにはフラボノイドとは別に,ワインに含まれて健康長寿に図1アントシアニジンの構造式表1図1のR1,R2の違いによるアントシアニジンの種類および色調CyanidinCOHCH橙赤色CDelphinidinCOHCOH青っぽい赤CPetunidinCOCH3COH青っぽい赤CPeonidinCOCH3CH橙赤色CPelargonidinCHCH橙色CMalvidinCOCH3COCH3青っぽい赤C関連し得ることが知られるレスベラトロールも含まれる.CIIアントシアニンと酸化ストレスアントシアニンは,通常の身体機能維持には必須ではないが健康によい影響を与えるかもしれない植物由来の化合物,すなわちフィトケミカルの一種であり,さまざまな生物活性が報告されている.その一つに抗酸化作用がある.細胞が生理的活動をするにはミトコンドリアなC*YokoOzawa:慶應義塾大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕小沢洋子:〒160-8582東京都新宿区信濃町C35慶應義塾大学医学部眼科学教室0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(27)C735プラセボ8週間ビルベリー抽出物のカプセル連日摂取のカプセル図2VDT作業者の眼精疲労に対するビルベリー抽出物の効果の研究8週間のビルベリー抽出物継続摂取後では1.VDT作業によるCCFF低下が,摂取前と比べ少ない.2.CVDT作業によるドライアイの自覚症状,二重に見えること,不快感のスコアの悪化が,摂取前と比べ少ない.3.VDT作業後の眼の疲労感,眼痛,眼が重い感じ,不快感,異物感スコアの悪化が,プラセボ群と比べ少ない.図3エンドトキシン誘導網膜ぶどう膜炎モデルにおけるビルベリー抽出物の効果ビルベリー抽出物は炎症と酸化ストレスの正のフィードバック機構(悪性サイクル)を抑制した.光暴露なし光暴露ありコントロール溶媒投与コントロール溶媒投与ビルベリー抽出物投与視細胞図4網膜光暴露モデルにおけるビルベリー抽出物の効果ビルベリー抽出物は光暴露による網膜視細胞の減少(死)を抑制した.(文献C3より引用)

EPA/DHA

2018年6月30日 土曜日

EPA/DHAEicosapentaenoicAcidandDocosahexaenoicAcid柳井亮二*はじめにエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoicacid:EPA)およびドコサヘキサエン酸(docosahexaenoicacid:DHA)はオメガ3脂肪酸とよばれる脂肪酸(不飽和脂肪酸)の一つで,一般にもよく知られている.図1に示すように不飽和脂肪酸はその構造に特徴があり,炭素=炭素の二重結合(不飽和結合,polyunsaturatedfattyacid:PUFA)を炭素鎖のメチル末端(オメガ末端)から3番目の炭素に二重結合をもっている.オメガ3脂肪酸は魚油やナッツ類に多く含まれ,抗炎症作用,抗動脈硬化作用などがある.EPAおよびDHAを含んだサプリメントはドラッグストアにも置かれており,簡単に購入することができるが,近年,眼科用サプリメントとして,眼疾患の予防に焦点を当てた製品が導入されている.本稿では眼科で取扱いのあるEPA,DHAのサプリメントを中心にその作用メカニズム,使用上の注意点について概説する.I成分紹介EPAやDHAなど多価不飽和脂肪酸は,分子中に二重結合を含むため(図1),酵素的な酸化反応によって生理活性を獲得し,脂質メディエーターとして機能している.前述のようにEPAやDHAはオメガ3脂肪酸とよばれており,メチル末端(オメガ末端)から3番目の炭素に二重結合をもっている.一方,オメガ6脂肪酸として知られているアラキドン酸はメチル末端(オメガ末COOH②③①CH3エイコサペンタエン酸(EPA)COOH③①CH3ドコサヘキサエン酸(DHA)COOHCH3アラキドン酸(ALA)図1不飽和脂肪酸の構造式不飽和多価脂肪酸はメチル基からの二重結合の位置でオメガ3脂肪酸(EPA,DHA)とオメガ6脂肪酸(アラキドン酸)に分類される.端)から6番目の炭素に二重結合があり(図1),オメガ3脂肪酸と同じ酵素反応を行うため,体内で拮抗している(図2).DHAは生体内で網膜外層にもっとも多く存在しており,DHAの減少は加齢黄斑変性の発症にも密接に関連している1).オメガ3脂肪酸もオメガ6脂肪酸も生体内では合成で*RyojiYanai:山口大学大学院医学系研究科眼科学〔別刷請求先〕柳井亮二:〒755-8505山口県宇部市小串1-1-1山口大学大学院医学系研究科眼科学0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(19)727細胞質リン脂質プロスタグランジンロイコトリエンエポキシテイコサトリエン酸プロスタサイクリンリポキサントロンボキサン図2EPA,DHAの作用メカニズムオメガ3脂肪酸はオメガ6脂肪酸の酵素代謝を拮抗することで抗血管新生,抗炎症作用を発揮する.VEGF(pg/mgtotalprotein)1007550250図4マウスAMDモデルマウスの脈絡膜血管新生のマクロファージ侵入およびVEGF発現a:蛍光発色ノックインマウスを用いて脈絡膜血管新生のマクロファージ侵入数を測定すると,オメガC6摂食(ALA)群に比べ,オメガC3摂食(EPA+DHA)群で有意に減少していた.Cb:脈絡膜血管新生のCVEGF蛋白質の発現量はオメガC6摂食(ALA)群に比べ,オメガC3摂食(EPA+DHA)群で有意に減少していた.(文献C2より許可を得て掲載)臨床スコア5****43210図5眼内炎症に対する効果実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(experimentalautoimmuneuveoretinitis:EAU)モデルマウスの臨床スコアは,オメガC6摂食(ALA)群に比べ,オメガC3摂食(EPA+DHA)群で有意に減少していた.(文献C3より許可を得て掲載)健常対照オメガ6オメガ3実験的ぶどう膜炎誘導g/人日120肉類1008060魚介類40200図6魚介類と肉類の摂取量の推移2006年に魚介類よりも肉類の摂取が上回り,魚介類摂取量は減少している.厚生労働省「国民栄養調査」「国民健康・栄養調査報告」表2EPA,DHA含有製品一覧表2011C2012C20102015(2015)C栄養機能食品C─機能性表示食品栄養機能食品60粒60粒31粒60粒3,500円4,600円1,848円3,000円2粒2粒1粒2粒5mgC20mgC10mgC3mg1mgC3mgC2mgC─150CmgC─(非表示)C40Cmg20mgC─C─C9.8mg9CmgC─(非表示)C7CmgC160mgC─C─C81mgC90CmgC200Cmg(非表示)C54Cmg─C─C─C135mg図7眼科取扱いのEPA,DHAサプリメント