特集●屈折と調節アップデート―眼科診療におけるMissingData―あたらしい眼科31(5):667.674,2014特集●屈折と調節アップデート―眼科診療におけるMissingData―あたらしい眼科31(5):667.674,2014コンタクトレンズによる調節機能の再建AccommodationFunctionRecoverybyContactLens植田喜一*はじめにコンタクトレンズ(CL)は一般に近視,遠視,乱視などの屈折異常を矯正するために使用されるが,調節機能の補助を目的として使用されることもある.具体的には老視の矯正が主であるが,近業作業による調節緊張の緩和を図る目的で遠近両用CLの処方を考える場合がある.これらの目的には一般には眼鏡が使用されることが多いが,CLは涙流を介して眼表面に接するため眼鏡とは異なる光学特性をもつのでCLのほうが有効なことがある1).また,CLにはさまざまなデザインがあるため対応にあたっては多くのバリエーションがあることも利点である.医療機器であるCLを装用することで調節機能そのものが再建されるわけではないが,調節機能が改善される例は多くあるので,本稿では単焦点CLならびに遠近両用CL(二重焦点CL,累進屈折力CL)を用いた調節機能の補助について概説する.I遠近両用CLの種類素材の面からハードコンタクトレンズ(HCL)とソフトコンタクトレンズ(SCL)があるが,形状の面からセグメント型と同心円型に,光学的機能の面から交代視型と同時視型に分けられる2)(図1).交代視型は視線を上下に動かしてレンズの遠用光学部,近用光学部のいずれか一方を通して物を見る.同時視型は遠方と近方の像を同時に網膜に結像させ,脳がどちらか必要な像を選択す素材HCLHCL・SCLHCL・SCL形状セグメント型同心円型デザイン屈折力(焦点)二重焦点累進屈折力(多焦点)光学的機能交代視型同時視型図1一般的な遠近両用CLの種類〔文献2)より〕るもので,遠方像を集中して見ているときは近方像に抑制がかかり,近方像を見ようとすると逆になる.遠近両用CLは光学部の焦点あるいは屈折力から,二重焦点と累進屈折力に分けられる.二重焦点レンズは1枚のレンズに2つの異なる屈折力(度数)をもたせて,遠方と近方に焦点を合わせる.累進屈折力レンズは1枚のレンズに中心から周辺に向けて連続して累進的に度数を持たせているので遠方から近方までの境目のない見え方が得られやすい.以前は累進多焦点レンズといわれていたが,焦点がたくさん存在するのではなく,加入度数が徐々に変化していることから累進屈折力レンズと表現するようになった.遠近両用HCLは中心部が遠用光学部で周辺部が近用光学部であるが,遠近両用SCLは中心部が遠用光学部で周辺部が近用光学部のタイプと,逆に中心部が近用光学部で周辺部が遠用光学部のタイプがある.これらの遠近両用CLはそれぞれデザインに特徴*KiichiUeda:山口大学大学院医学系研究科眼科学/ウエダ眼科〔別刷請求先〕植田喜一:〒751-0872下関市秋根南町1-1-15ウエダ眼科0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(41)667があり,屈折力分布が異なっている2).II眼鏡とCLによる調節機能の補正の相異1.明視域調節機能の補正を行う場合に,まず患者の明視域(調節域)を考える.たとえば.3.00Dの近視眼では遠点33cmである.この患者の近点を測定して25cmであったとすると,調節力は1.00Dとなる.遠用度数が.3.00Dの単焦点レンズの眼鏡を使用すると遠点は無限遠で近点は100cmになる.遠用度数が.3.00Dで近用加入度数が+2.00Dの二重焦点レンズと累進屈折力レンズでは明視できる範囲が異なる.この患者の場合は二重焦点レンズでは中間距離が明視できないが,累進屈折力レンズでは遠方から近方まで境目なく見えるようになる.このように,明視域は患者の調節力と使用するレンズの種類,近用加入度数によって変わる2)(図2).裸眼(-3.00Dの近視眼)調節力1.00D33.3cm25cm(1/3)(1/3+1)単焦点レンズ(遠用度数-3.00D)装用∞100cm(1/1)二重焦点レンズ(遠用度数-3.00D/加入度数+2.00D)装用∞100cm(1/1)33.3cm(1/2+1)50cm(1/2)累進屈折力レンズ(遠用度数-3.00D/加入度数+2.00D)装用∞33.3cm(1/2+1)図2明視域(.3.00Dの近視眼を例とする)〔文献2)より〕2.遠近両用レンズの近用加入度数遠近両用眼鏡を処方する場合には他覚的屈折値および自覚的屈折値,年齢から考える調節力をもとに検眼を行うと,期待される遠方視力および近方視力が得られるが,遠近両用CLの場合にはこれらのデータをもとに検眼しても期待した視力が得られないことがある.すなわち表示された近用加入度数が有効に働いていないということである2.4)(表1).これは主として遠近両用CLのデザインによるものと考えられる.3.みかけの調節力眼鏡とCLとでは,屈折異常を矯正して近くにある物体を明視するのに必要な調節量は異なる.CLのほうが眼鏡よりも角膜頂点間距離が短いため,近視眼では近見に際してCLは眼鏡より調節力が必要になり,逆に遠視眼ではCLは小さい調節力で済む2)(図3).したがって近視眼では遠方に合わせた眼鏡で近方は見えていても,同じ度数のCLでは離さないと見えないということが起こる.逆に遠視眼では眼鏡よりもCLのほうが近方は見やすいということが起こる.III遠近両用CLの処方1.遠近両用HCLHCLの装用者が近見障害を訴えた場合に遠近両用HCLの処方を考える.これまでにHCLを装用したことのない人であっても,乱視を有するため遠近両用SCLでは十分な矯正視力が得られない場合も遠近両用HCLが適応となる.【セグメント型遠近両用HCLの処方例】48歳の女性で,通常の単焦点HCLでは両眼とも1.2表1遠近両用SCLの有効加入度数表示値+2.00D表示値+2.50D2ウィークアキュビューRバイフォーカル0.83D±0.63D1.18D±0.77DメニフォーカルソフトSR1.34D±0.77D1.90D±0.90DフォーカスRプログレッシブ1.06D±0.83Dロートi.Q.R14バイフォーカルDレンズ0.80D±0.65D1.30D±0.77Dロートi.Q.R14バイフォーカルNレンズ1.78D±0.83D2.40D±0.99D〔文献2)より〕668あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014(42)の遠方視力が得られるが,近方視力は0.2しか得られない.見え方に対する要求度が高いため,+2.50Dの近用加入度数のセグメント型の遠近両用HCL(上方が遠用光学部で,下方が近用光学部の二重焦点レンズ)を処方すると,遠方視力は両眼とも1.2で,近方視力は両眼とも1.0が得られた2)(図4).【同心円型遠近両用HCLの処方例】同心円型の遠近両用HCLは回転による影響を受けにくいため,セグメント型に比べて処方が容易であるが,瞳孔の中心とレンズの中心がなるべく一致するように処方する.後面が球面のものは通常の球面の単焦点HCL2.遠近両用SCL単焦点SCLの装用者が近見障害を訴えた場合に遠近両用SCLの処方を考える.これまでCLを装用したことのない人でも,乱視のためSCLでは十分な矯正視力が得られない場合を除けば,一度は遠近両用SCLを試してみるとよい.しかし,遠近両用SCLは眼鏡や遠近両用HCLに比べると明らかに見え方が劣るため,見え方に対する要求度の高い人や,長時間の近業をする人は遠近両用SCLに満足しないことがある.同心円型の遠近両用SCLは中心部の光学部の面積がと同様にベースカーブ(BC)を選択するが,後面が非球8面のものはそれぞれレンズによって後面デザインが大きく異なっているため,BCの選択が異なる2).48歳の女性で,通常の単焦点HCLでは両眼とも1.2の遠方視力が得られるが,近方視力は0.2.0.3しか得られない.+2.00Dの近用加入度数の同心円型の遠近両用HCL(中心部が遠用光学部で,周辺部が近用光学部必要な調節量(D)64:眼鏡(頂間距離12mm)装用時:コンタクトレンズの累進屈折力レンズ)を処方して遠近の見え方に満足し-216-12-8-40481216た(図5).屈折異常(D)図3眼前25cmを注視する場合に必要とする調節力〔文献2)より〕症例:48歳,女性遠方視力右眼(1.2×単焦点HCL)遠用度数:-2.50D左眼(1.2×単焦点HCL)遠用度数:-2.50D近方視力右眼(0.2×単焦点HCL)左眼(0.2×単焦点HCL)遠方視力右眼(1.2×遠近両用HCL)遠用度数:-2.50D,近用加入度数:+2.50D左眼(1.2×遠近両用HCL)遠用度数:-2.50D,近用加入度数:+2.50D近方視力右眼(1.0×遠近両用HCL)左眼(1.0×遠近両用HCL)正面(正面視)側方(正面視)側方(下方視)図4セグメント型遠近両用HCLの処方例〔文献2)より〕(43)あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014669症例:48歳,女性遠方視力右眼(1.2×単焦点HCL)遠用度数:+1.50D左眼(1.2×単焦点HCL)遠用度数:+2.25D近方視力右眼(0.2×単焦点HCL)左眼(0.3×単焦点HCL)遠方視力右眼(1.2×遠近両用HCL)遠用度数:+1.75D,近用加入度数:+2.00D左眼(1.2×遠近両用HCL)遠用度数:+2.50D,近用加入度数:+2.00D近方視力右眼(0.7×遠近両用HCL)左眼(0.7×遠近両用HCL)正面(正面視)側方(正面視)側方(下方視)図5同心円型遠近両用HCLの処方例狭く,通常の瞳孔反応で遠用光学部と近用光学部の両方が瞳孔領を覆うようにデザインされているため,瞳孔の中心とレンズの中心が一致しないと十分な矯正効果が得られない.瞳孔の位置や大きさ,照度や近見に伴う瞳孔径の変化には個人差があることも考慮して,各症例に最も適するレンズデザインを選択する2).図6に1日ディスポーサブルタイプと2週間頻回交換タイプのおもな遠近両用SCLの屈折力分布のイメージ図を示すが,レンズデザインによって屈折力分布が大きく異なるので,ある特定のレンズを選択し,サイズ,BC,遠用度数,近用加入度数などの規格を決定して満足のいく結果が得られなかったとしても,その症例が遠近両用SCLの適応ではなかったと判断するのは早計である2).レンズデザインを変更するとうまくいくこもあるので,何種類かのレンズを試して最も患者が満足するものを選択する.【遠近両用SCLの処方例】48歳の女性で,通常のSCLでは両眼とも1.0の遠方視力が得られるが,近方視力は0.4.0.5しか得られない.+1.50Dの近用加入度数の遠近両用SCL(中心部が近用光学部で,周辺部が遠用光学部の累進屈折力レンズ)を装用すると遠方視力は両眼とも1.2で,近方視力は0.8であった(図7).IVCLを用いたモノビジョン片眼を遠方に,他眼を近方に見えるようにして,両眼視で遠方から近方までを見えるようにする方法(モノビジョン)がある5.8)が,CLを用いる場合には単焦点CLによるモノビジョンと遠近両用CLによるモノビジョン(モディファイドモノビジョンともいう)がある.単焦点CLの装用者が近見障害を訴えた場合には,単焦点CLを用いたモノビジョンを試す.老視が進行した人では遠近両用CLの近用加入度数には限度があるため十分に対応できないので,遠近両用CLを用いたモディファイドモノビジョンを試みる.両眼とも遠近両用CLを使用する場合には,一般に利き目を遠方.中間,非利き目を中間.近方がよく見えるように合わせる方法が用いられる.使用する遠近両用CLは,両眼に同じデザインのレンズを用いる場合と,左右眼に異なるデザインのレンズを用いる場合がある.左右のレンズ度数の決定は患者が求める作業距離を考慮し,片眼視ではなく両眼視による遠方視,近方視の検査を行い,患者が最も満足するレンズ度数(単焦点CLの場合は遠用度数と近用度数,遠近両用CLの場合は遠用度数と近用加入度数)を決定することが重要である.遠近両用CLによるモディファイ670あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014(44)同心円型,同時視型遠用近用遠用二重焦点累進屈折力J&J2WアキュビューRバイフォーカルチバビジョンデイリーズRプログレッシブチバビジョンエアオプティクスR遠近両用LOボシュロムメダリストRマルチフォーカルメダリストRプレミアマルチフォーカルLowAddボシュロムメダリストRマルチフォーカルメダリストRプレミアマルチフォーカルHighAddチバビジョンエアオプティクスR遠近両用MEDロートi.Q.R14バイフォーカルDレンズロートi.Q.R14バイフォーカルNレンズ2week(SCL)1day(SCL)2week(シリコーンハイドロゲルレンズ)2week(SCL)図61日ディスポーサブルタイプと2週間頻回交換タイプの遠近両用SCLの屈折力分布(イメージ図)(ロート製薬株式会社により提供)ドモノビジョンを行う場合,まず遠用度数で調整するが,うまくいかない場合には近用加入度数を調整する.それでも満足しない場合には左右眼で異なるレンズデザインを選択する.【単焦点SCLを用いたモノビジョンの処方例】50歳の女性で,両眼とも単焦点SCLを装用しているが,近方が見づらいので遠近両用SCLを装用したいという希望で受診した.数種の遠近両用SCLを試したが,いずれも見え方に満足しなかったので,単焦点SCLを用いて利き眼の右眼を遠方重視に,非利き目の左眼を近方重視にしたモノビジョンを行った(図8).【単焦点SCLと遠近両用SCLを用いたモディファイドモノビジョンの処方例】51歳の女性で,単焦点SCLでは両眼とも遠方視力は1.0だが,近方視力は0.3であった.遠近両用SCLを試したが,遠方の見え方に満足しなかった.利き目は右眼だったので,右眼を遠方,左眼を近方に合わせた単焦点SCLを用いたモノビジョンも試したが,見え方に慣れなかったので,右眼に単焦点SCL,左眼に遠近両用SCLを用いたモディファイドモノビジョンを行った(図9).症例:48歳,女性遠方視力右眼(1.0×単焦点SCL)遠用度数:-4.00D左眼(1.0×単焦点SCL)遠用度数:-4.00D近方視力右眼(0.4×単焦点SCL)左眼(0.5×単焦点SCL)遠方視力右眼(1.2×遠近両用SCL)遠用度数:-4.00D,近用加入度数:+1.50D左眼(1.2×遠近両用SCL)遠用度数:-4.00D,近用加入度数:+1.50D近方視力右眼(0.8×遠近両用SCL)左眼(0.8×遠近両用SCL)図7遠近両用SCLの処方例【遠近両用SCLの遠用度数によるモディファイドモノビジョンの処方例】56歳の女性で,両眼に遠近両用SCLを処方したが,近方の見え方が不十分だったため,同じレンズデザイン,同じ近用加入度数で,非利き目の遠用度数:S+1.50DにS+0.50Dを加えたS+2.00Dで対応した(遠用度数によるモディファイドモノビジョン)(図10).(45)あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014671症例:50歳,女性遠方視力右眼0.04(1.0×単焦点SCL)遠用度数:S-5.25D左眼0.06(1.0×単焦点SCL)遠用度数:S-5.75D近方視力右眼0.5(0.4×単焦点SCL)遠用度数:S-5.25D左眼0.4(0.3×単焦点SCL)遠用度数:S-5.75D遠方視力右眼(1.0×単焦点SCL)遠用度数:S-5.25D左眼(0.5×単焦点SCL)近用度数:S-4.25D近方視力右眼(0.4×単焦点SCL)遠用度数:S-5.25D左眼(0.9×単焦点SCL)近用度数:S-4.25D(赤字は処方の変更を示す)図8単焦点SCLを用いたモノビジョンの処方例【遠近両用SCLの近用加入度数によるモディファイドモノビジョンの処方例】58歳の女性で,両眼に遠近両用SCLを処方したが,近方の見え方が不十分だったため,同じレンズデザインで非利き目の遠用度数にプラス度数を加える方法(遠用度数によるモディファイドモノビジョン)を試みたものの満足しなかった.そこで,非利き目の遠用度数をもとに戻し,近用加入度数を強くしたレンズ(LowAddからHighAddに変更)で対処した(加入度数によるモディファイドモノビジョン)(図11).【遠近両用SCLのデザインによるモディファイドモノビジョンの処方例】52歳の男性の両眼に遠近両用SCLを処方したが見え方に満足しなかったので,遠用度数によるモディファイドモノビジョンを,さらに近用加入度数によるモディファイドモノビジョンを試みたが,不十分だったので左右眼に異なるレンズデザインによるモディファイドモノビジョンを行った.利き目は右眼であったが,右眼に近方重視タイプ(中心部が近用光学部で,周辺部が遠用光学部の累進屈折力レンズ),左眼は遠方重視タイプ(中心部が遠用光学部で,周辺部が近用光学部の累進屈折力レンズ)を処方して患者は見え方に満足した(図12,13).おわりに一般に屈折異常の矯正を目的としてCLを装用することが多いが,こうしたCL装用者が加齢によって近見障672あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014症例:51歳,女性遠方視力右眼0.05(1.0×単焦点SCL)遠用度数:S-4.25D左眼0.06(1.0×単焦点SCL)遠用度数:S-4.00D近方視力右眼0.2(0.3×単焦点SCL)遠用度数:S-4.25D左眼0.3(0.3×単焦点SCL)遠用度数:S-4.00D遠方視力右眼(1.0×単焦点SCL)遠用度数:S-4.25D左眼(0.3×単焦点SCL)近用度数:S-1.25D近方視力右眼(0.2×単焦点SCL)遠用度数:S-4.25D左眼(0.9×単焦点SCL)近用度数:S-1.25D遠方視力右眼(1.0×単焦点SCL)遠用度数:S-4.25D左眼(1.0×遠近両用SCL)遠用度数:S-4.00D,近用加入度数:S+2.50D近方視力右眼(0.3×単焦点SCL)遠用度数:S-4.25D左眼(0.8×遠近両用SCL)遠用度数:S-4.00D,近用加入度数:S+2.50D(赤字は処方の変更を示す)図9単焦点SCLと遠近両用SCLを用いたモディファイドモノビジョンの処方例症例:56歳,女性遠方視力右眼0.4(1.2×S+2.00D)左眼0.7(1.2×S+1.50D)近方視力右眼0.1(1.0×S+4.00D)左眼0.1(1.0×S+3.50D)遠方視力右眼(1.2×遠近両用SCL)遠用度数:S+2.00D遠用加入度数:LowAdd左眼(1.2×遠近両用SCL)遠用度数:S+1.50D遠用加入度数:LowAdd近方視力右眼(0.4×遠近両用SCL)遠用度数:S+2.00D遠用加入度数:LowAdd左眼(0.5×遠近両用SCL)遠用度数:S+1.50D遠用加入度数:LowAdd遠方視力右眼(1.2×遠近両用SCL)遠用度数:S+2.00D近用加入度数:LowAdd左眼(0.8×遠近両用SCL)遠用度数:S+2.00D近用加入度数:LowAdd近方視力右眼(0.4×遠近両用SCL)遠用度数:S+2.00D近用加入度数:LowAdd左眼(0.5×遠近両用SCL)遠用度数:S+2.00D近用加入度数:LowAdd(赤字は処方の変更を示す)図10遠近両用SCLの遠用度数によるモディファイドモノビジョンの処方例(46)害を訴えた場合には屈折異常の矯正に加えて老視の矯正を行う.CLの上から近用眼鏡をかけるという方法があるが,遠近両用CLの処方や単焦点によるモノビジョン,遠近両用CLによるモノビジョンを行えばCL単独だけで対処できる場合がある.一方,若い人でも近業作業で眼精疲労を訴える場合には毛様体筋の調節緊張を緩和させる目的で遠近両用CLを処方するとよい.梶田は調節機能解析装置AA-1(株式会社ニデック製)を用いて,中心部が遠用光学部で,周辺部が近用光学部(近用加入度数:0.50D)の二重焦点の遠近両用SCLを装用すると単焦点SCLよりも調節緊張の緩和に有効であったこと症例:58歳,女性遠方視力右眼0.05(1.0×S-6.25D)左眼0.05(1.0×S-6.00D)近方視力右眼0.1(1.0×S-4.00D)左眼0.1(1.0×S-3.75D)遠方視力右眼(1.0×遠近両用SCL)遠用度数:S-6.00D近用加入度数:LowAdd左眼(1.0×遠近両用SCL)遠用度数:S-5.75D近用加入度数:LowAdd近方視力右眼(0.5×遠近両用SCL)遠用度数:S-6.00D近用加入度数:LowAdd左眼(0.7×遠近両用SCL)遠用度数:S-5.75D近用加入度数:LowAdd遠方視力右眼(1.0×遠近両用SCL)遠用度数:S-6.00D近用加入度数:LowAdd左眼(0.6×遠近両用SCL)遠用度数:S-5.00D近用加入度数:LowAdd近方視力右眼(0.5×遠近両用SCL)遠用度数:S-6.00D近用加入度数:LowAdd左眼(0.7×遠近両用SCL)遠用度数:S-5.00D近用加入度数:LowAdd右眼(1.0×遠近両用SCL)遠用度数:S-6.00D遠方視力近用加入度数:LowAdd左眼(0.8×遠近両用SCL)遠用度数:S-5.75D近用加入度数:HighAdd近方視力右眼(0.5×遠近両用SCL)遠用度数:S-6.00D近用加入度数:LowAdd左眼(0.8×遠近両用SCL)遠用度数:S-5.75D近用加入度数:HighAdd(赤字は処方の変更を示す)図11遠近両用SCLの近用加入度数によるモディファイドモノビジョンの処方例症例:52歳,男性単焦点SCL使用中遠方視力右眼0.15(1.2×単焦点SCL)遠用度数:S-3.75D左眼0.15(1.2×単焦点SCL)遠用度数:S-3.50D近方視力右眼0.2(0.3×単焦点SCL)左眼0.2(0.3×単焦点SCL)遠方視力右眼(1.0×遠近両用SCL)遠用度数:S-3.75D近用加入度数:+2.00D(Dレンズ)左眼(1.0×遠近両用SCL)遠用度数:S-3.50D近用加入度数:+2.00D(Dレンズ)近方視力右眼(0.4×遠近両用SCL)遠用度数:S-3.75D近用加入度数:+2.00D(Dレンズ)左眼(0.6×遠近両用SCL)遠用度数:S-3.50D近用加入度数:+2.00D(Dレンズ)右眼(0.9×遠近両用SCL)遠用度数:S-3.75D遠方視力近用加入度数:+2.00D(Nレンズ)左眼(1.0×遠近両用SCL)遠用度数:S-3.50D近用加入度数:+2.00D(Dレンズ)近方視力右眼(0.7×遠近両用SCL)遠用度数:S-3.75D近用加入度数:+2.00D(Nレンズ)左眼(0.6×遠近両用SCL)遠用度数:S-3.50D近用加入度数:+2.00D(Dレンズ)(赤字は処方の変更を示す)図12遠方と近方でデザインが異なる遠近両用SCLの屈折力分布(イメージ)〔文献2)より〕遠方重視タイプ(Dレンズ)近方重視タイプ(Nレンズ)ロートi.Q.R14バイフォーカル(ロート製薬株式会社より提供)図13遠近両用SCLのデザインによるモディファイドモノビジョンの処方例〔文献2)より〕(47)あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014673を報告している9).高齢化やパーソナルコンピュータ,モバイルツールの普及による長期の近業作業などが進む現状では調節機能の改善をどう図るかが問題視されているが,CLをうまく使用すれば対応できるので積極的にCLを処方するとよい.文献1)植田喜一:コンタクトレンズにおける屈折矯正の基本.あたらしい眼科27:723-735,20102)植田喜一:コンタクトレンズによる老視治療.あたらしい眼科28:623-631,20113)植田喜一:遠近両用ソフトコンタクトレンズの特性.あたらしい眼科18:435-446,20014)上田哲生,櫻井寿也,原嘉昭ほか:バイフォーカルコンタクトレンズにおける近用加入度数について.日コレ誌42:142-145,20005)植田喜一:コンタクトレンズにおけるMonovision.日本眼内レンズ屈折手術学会誌18:110-117,20046)植田喜一:コンタクトレンズとモノビジョン.日本眼内レンズ屈折手術学会誌21:27-66,20077)不二門尚:調節機能,偽調節モノビジョン.IOL&RS17:91-97,20138)清水公也,伊藤美沙絵:モノビジョン.眼科12:13941402,20129)梶田雅義,山崎愛,入道香澄ほか:調節緊張を緩和する新デザインコンタクトレンズの評価.日コレ誌54:27-30,2012674あたらしい眼科Vol.31,No.5,2014(48)