特集●光干渉断層計アップデート2013あたらしい眼科30(1):15.23,2013特集●光干渉断層計アップデート2013あたらしい眼科30(1):15.23,2013前眼部編角膜の形態解析CornealTopographywithOpticalCoherenceTomography上野勇太*福田慎一*大鹿哲郎*はじめに角膜は眼球における最大の屈折要素である.角膜前面の曲率半径の測定については,1619年にScheinerがガラス球を使用して測定したのが最初といわれており,その後ケラトメータやプラチド型角膜形状解析装置が開発されてきた.これらマイヤーリングを使用した測定方法は,さまざまな検査方法が開発されてきた今でも角膜前面の形状解析においてgoldstandardである.しかし,マイヤーリングを使用した方法では,ドライアイのように涙液層が不安定であったり,形状変化が非常に強い症例に適さず,また角膜後面の測定ができないことも欠点である.エキシマレーザーを使用した屈折矯正手術の登場とともに,角膜前面のみならず,角膜後面や角膜厚についても正確に評価する必要性が生じている.この要求に応えるように広く利用されてきたのがスリットスキャン型角膜形状解析装置である.スリット状の可視光で角膜を連続的にスキャンし,得られたスリット像から三角測量法で角膜前面と後面の三次元的な形状解析が可能である.初めて角膜後面の形状解析が可能となった器械であり,正常眼1)だけでなく,屈折矯正手術後2,3)や円錐角膜4)などの角膜形状解析について報告されており,測定原理の違いからマイヤーリングでの測定がむずかしい病的眼でも精密な検査が可能である5).その後,シャインプルーク(Scheimpflug)カメラを使用した角膜形状解析装置が開発された.スリット状の可視光が回転しながら角膜をスキャンする測定方式で,従来のスリットスキャン型と比較して測定精度が高いとする報告もある6).しかし,どちらの方式も可視光を使用しているため角膜混濁に弱いという欠点があり,すべての症例に対して精密な検査が可能であるとはいえない.光干渉断層計(opticalcoherencetomography:以下,OCT)が黄斑部の形態評価に使用されるようになり,黄斑疾患の診断・治療に革新的な変化をもたらした.近年では,前眼部撮影用に改良され,角膜形状解析にも利用可能となった.赤外光を使用するために角膜混濁に強く,高解像度であることから角膜前面および後面の精密な測定が可能であり,角膜形状解析の他に各種前眼部手術前後の角膜形態評価にも汎用されている.本稿では,前眼部OCTによる角膜形状解析の機種や測定精度に関する過去の報告について概説し,角膜形状解析における現状での立ち位置を確認するとともに,前眼部OCTを利用して角膜前面・後面のフーリエ(Fourier)解析を行った筆者らの研究結果を報告する.また,前眼部OCTを使用した前眼部手術前後の角膜形態評価について,過去の報告や自験例を交えて概説する.I前眼部OCTによる角膜形状解析眼科領域でOCTが導入され,1994年には角膜・前眼部分野に応用された7).当初のOCTはTimedomain方式であり,スキャン速度や解像度は十分ではなかったものの,非接触で角膜・前房・虹彩などの前眼部形態評*YutaUeno,ShinichiFukuda&TetsuroOshika:筑波大学医学医療系眼科〔別刷請求先〕上野勇太:〒305-8575つくば市天王台1-1-1筑波大学医学医療系眼科0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(15)15表1角膜形状解析が可能であるOCTの比較VisanteCASIARTVue測定方式TimedomainFourierdomainFourierdomain(Sweptsource)(Spectraldomain)波長1,310nm1,310nm840nm解像度(深度)18μm10μm5μm解像度(横断面)60μm30μm15μmスキャン速度2,000A-スキャン/秒30,000A-スキャン/秒26,000A-スキャン/秒角膜形状解析モードradialscanradialscanradialscanスキャン範囲10mm10mm6mm測定点128点×16方向512点×16方向1,024点×8方向測定時間0.5秒0.3秒0.3秒価が可能という点で,画期的であった.現在,Timedomain方式で使用可能な前眼部OCTに,Visante(CarlZeiss)がある.その後,Fourierdomain方式が開発され,より高速・高解像度の検査が可能となった.前眼部専用のFourierdomainOCTとして現在使用可能な機種はCASIA(TOMEY)のみであり,眼底撮影用のOCTにアタッチメントを装着することで前眼部も撮影可能な機種が複数存在する.そのなかで,定量的な角膜形状解析が可能である機種として,RTVue-100(Optovue),3DOCT-2000(Topcon),RS-3000(NIDEK)などがあげられる.ここでは,前眼部OCTであるVisanteとCASIA,そして眼底撮影用のなかですでにいくつかの報告で使用されているRTVueについての比較を表1にまとめた.VisanteはTimedomain方式であるため,他の2機種に比べてスキャン速度や解像度が見劣りするのは否めない.CASIAはFourierdomain方式の波長走査型SweptsourceOCTであり,1,310nmという前眼部に最適な高波長でのスキャンを実現している唯一の機種である.前眼部専用であるため豊富なアプリケーションを備え,角膜形状解析においても測定断面が16本と,精密な測定が可能である.RTVueはFourierdomain方式の分光器型SpectraldomainOCTで,従来は眼底撮影用であるため,波長は830nmである.アタッチメントを装着することで前眼部の撮影が可能で,スキャン速度や解像度はCASIAと比べて見劣りはしない.しかし,眼底撮影用であるために角膜形状解析のアプリケーションは少ない.16あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013II前眼部OCTによる角膜形状解析の測定精度Tangらは,RTVueを用いて正常眼の角膜前面屈折力・後面屈折力・角膜厚から算出された角膜屈折力を測定し,そのrepeatabilityを検討したところ,正常眼の角膜屈折力測定におけるrepeatabilityは0.19Dで,過去の報告におけるオートケラトメータのrepeatabilityである0.14D,シャインプルークカメラの0.10.0.14Dと比べても遜色のない結果であると述べた8).また,彼らは以前Timedomain方式の前眼部OCTでも同様の報告を行っており,そのOCTではスキャン速度が2,000Aスキャン/秒と遅く,正常眼の角膜屈折力のrepeatabilityは0.71Dであった9).これらの報告より,前眼部OCTはTimedomain方式からFourierdomain方式に改良され,測定速度が飛躍的に向上し,角膜形状解析において従来装置に引けを取らない測定精度をもつことができたといえる.病的変化の強い症例に対する角膜形状解析については,従来のマイヤーリングを用いた角膜形状解析装置よりもスリットスキャン型角膜形状解析装置のほうがデータの欠損が少ないと報告されている5).これは,マイヤーリングを用いる場合,急激な曲率変化を有する症例ではマイヤーリング像の分離・解析が困難になるためである.前眼部OCTも撮影原理はスリットスキャン型と類似しており,図1に示すようなプラチド型角膜形状解析装置での撮影が困難な症例でも撮影可能である.また,NakagawaらはCASIAとシャインプルークカメラを用(16)図1円錐角膜症例左:プラチド型角膜形状解析装置,右:CASIA.円錐角膜症例を同一日にプラチド型角膜形状解析装置とCASIAで撮影した.プラチド型では角膜形状変化が強く,マイヤーリングの検出が不良でカラーコードマップが乱れている.CASIAでは前面(左map)・後面(右map)ともきれいに撮影されており,前面で下方の局所的な急峻化が顕著で,同部位は後面でも同様の形状変化をしていることがよくわかる.いて円錐角膜眼の角膜形状解析を行ったところ,CASIAのほうが角膜前面・後面のdigitizationが良好であり,測定精度が高いと報告している10).これは前眼部OCTの撮影が高速・高解像度であることに起因していると考察されている.Samyらは,角膜混濁眼の角膜厚解析において従来のスリットスキャン型角膜形状解析装置とRTVueの比較を行い,スリットスキャン型角膜形状解析装置ではRTVueの角膜厚より有意に低く測定されることを明らかにし,RTVueでは正常眼も角膜混濁眼もほぼ同様のrepeatabilityで測定が可能であることを示した11).スリットスキャン型角膜形状解析装置やシャインプルークカメラでは可視光を使用するため,角膜混濁のある症例では角膜後面まで光が透過せず,角膜後面を正確にスキャンすることはできない.一方で前眼部OCTは赤外光を使用するため角膜混濁眼でも非常に正確な角膜後面のスキャンが可能であり,その測定精度は正常眼と変わらないということが示された.以上より,前眼部OCTの角膜形状解析について,正常眼における角膜屈折力の測定精度は従来の器械とほぼ同等であり,病的眼の形状解析においては従来の器械より幅広い症例に適応があり,高精度の解析が可能であるといえる.III角膜前面・後面のフーリエ解析角膜の不正乱視を定量化する方法の一つとして,フーリエ解析が用いられている.角膜前面においては,プラチド型角膜形状解析装置TMS-2(TOMEY)を用いた過去の報告12)で正常眼のデータから正常範囲が決定されており,広く臨床的に使用されている.一方,角膜後面に関しては正常範囲の決定はなされておらず,どの程度が角膜後面の不正乱視として正常であるかは判断しづらい状況にある.そこで,筆者らはCASIAを使用して正常眼の角膜形状解析を行い,得られたデータから角膜前面・後面のフーリエ解析の正常範囲を決定し,その数値を使用して強度乱視眼や病的眼の角膜前面・後面の形状評価を行ったので以下に示す.1.対象および方法正常群として,眼疾患を有さない150例300眼(男性85例,女性65例)を対象とした.平均年齢は41.0±20.4歳(6.86歳)で,2D以上の角膜乱視・.10D以上の最強度近視・眼科手術歴のある症例・コンタクトレンズ装用症例は除外した.また,K値の乱視度数が2D以上の角膜乱視群として直乱視群25例30眼と倒乱視群20例30眼,円錐角膜群として31例48眼,全層角膜移植後(以下,PKP後)として24例24眼,角膜内皮(17)あたらしい眼科Vol.30,No.1,201317移植後(以下,DSAEK後)として12例12眼を比較対象とした.上記の対象において,CASIAの“CornealMap”モードで撮影し,角膜前面(keratometricdata:以下,K値)と角膜後面のそれぞれ中心3mm領域のフーリエ解析を行った.フーリエ解析により角膜屈折力は球面成分・正乱視成分・非対称成分・高次不正乱視成分の4成分に細分化される.正常群300眼の各4成分について平均(mean)と標準偏差(SD)を算出し,その数値を使用して正常範囲をmean±2×SDと定義し,mean±3×SD以内をグレーゾーン,それを超える数値を異常値とした.強度乱視群・円錐角膜群・PKP後・DSAEK後についても同様に,角膜前後面におけるフーリエ解析を行い,正常範囲およびグレーゾーンに収まっている症例の割合を検討した.2.結果正常群300眼の平均値および標準偏差より得られた正常範囲は,角膜前面(K値)において,球面成分が40.66.46.24D,正乱視成分が0.0.90D,非対称成分が0.0.52D,高次不正乱視成分が0.0.20Dであった.一方,角膜後面については球面成分が.6.600..5.701D,正乱視成分が0.0.271D,非対称成分が0.0.104D,高次不正乱視成分が0.0.032Dであった.同様に,グレーゾーンについても表2に記載したとおりであった.各対照群が正常範囲・グレーゾーンに収まった割合を角膜前面と後面で比較すると,強度乱視群はいずれも角膜前面のほうが後面よりも異常値の割合が高く,円錐角膜群・DSAEK後では後面のほうが前面よりも異常値の割合が高く,PKP後では前面と後面で明らかな差は認めなかった(表3).代表症例の前面・後面のフーリエ解析結果を図2.4に提示する.解析結果は成分ごとに数値化されて表示されるが,今回算出した基準値を用いて,正常範囲に収まった数値は緑色で,グレーゾーンに収まった数値は黄色で,異常値は赤色で表示され,どの成分が正常か異常か容易に識別可能である.3.考察角膜前面(K値)のフーリエ解析結果は,以前プラチド型角膜形状解析装置を使用して算出された正常範囲と非常に近くなった.角膜後面に関しては,今までフーリエ解析の正常範囲を決定した報告はなく,筆者らの研究が初めてである.強度乱視群の結果より,角膜後面の乱視は直乱視と倒乱視で大きく傾向が異なることがわかる.近年toricIOL(眼内レンズ)を使用した白内障手術が盛んになってきたため,角膜後面乱視が術後成績に与える影響も検討されるようになってきた13).今後も角膜後面乱視についてさらなる検討がなされることを期待したい.病的眼の解析において,角膜前面と後面で変化の程度を比べると,円錐角膜では後面の変化が強く,PKP後では前面と後面で同等,DSAEK後では後面の変化が表2フーリエ解析で算出される各成分の正常範囲およびグレーゾーン〔上段:角膜前面(keratometricdata)下段:角膜後面〕球面成分正乱視成分非対称成分高次不正乱視成分正常値(mean±2×SD)40.66.46.240.0.900.0.520.0.20グレーゾーン(mean±3×SD)39.26.47.640.1.120.0.660.0.23(単位:D)球面成分正乱視成分非対称成分高次不正乱視成分正常値(mean±2×SD).6.600.-5.7010.0.2710.0.1040.0.032グレーゾーン(mean±3×SD).6.825.-5.4760.0.3280.0.1320.0.038(単位:D)18あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(18)表3対照群における正常範囲およびグレーゾーンに収まった症例の割合上段:正常範囲に収まった割合下段:グレーゾーンに収まった割合10%以内となった成分は赤色,25%以内となった成分は黄色で色分けした.成分直乱視倒乱視円錐角膜PKP後DSAEK後前面後面前面後面前面後面前面後面前面後面球面9093939015433298317正乱視03701001368131750非対称879383870084250高次不正乱視1009380731520008(単位:%)成分直乱視倒乱視円錐角膜PKP後DSAEK後前面後面前面後面前面後面前面後面前面後面球面100979310023850388333正乱視77740100251313255058非対称939797900088580高次不正乱視100971009725600258(単位:%)図2円錐角膜代表症例の前面(keratometric)フーリエ解析マップ円錐角膜の症例をフーリエ解析し,カラーコードマップに表示した.上段左がK値のaxialpowermapであり,フーリエ解析前の屈折力を表している.フーリエ解析で分解された各4成分がカラーコードマップで表示され,上段中央が球面成分・上段右が正乱視成分・下段左が非対称成分・下段右が高次不正乱視成分である.左下に各成分の数値が算出されており,正常値は緑色・グレーゾーンは黄色・異常値は赤色で表示される.本症例では,3mm領域の球面成分は正常値で,正乱視成分と非対称成分は異常値,高次不正乱視成分はグレーゾーンである.(19)あたらしい眼科Vol.30,No.1,201319図3図2と同一症例の後面フーリエ解析マップ図2の症例の角膜後面のフーリエ解析をカラーコードマップに表示した.表示形式は図2と同様である.光は,角膜前面では空気から角膜実質に入る一方で,角膜後面では角膜実質から房水に入るため,媒質の屈折率の関係で角膜前面と後面で屈折力が逆になる.このため,axialpowermapや各4成分で図2と正反対のカラーコードマップを示していることがわかる.左下の数値をみると,角膜後面ではすべての成分が異常値であった.図4図2と同一症例のフーリエ解析―前面・後面・全角膜一括マップ(プロトタイプ画面)図2と3を同じ画面に一括表示する機能が追加される予定であり,そのプロトタイプを表示した.上段が角膜前面(keratometricではない)・中段が角膜後面・下段が角膜全体である.このように一括表示すれば,前面と後面の関係性がわかりやすく,前面の変化がある場所に一致して,後面の変化が逆方向の屈折として作用していることが直感的に理解できる.なお,当プロトタイプでは,前面と後面のカラースケールは3:1の大きさで表示していることに注意されたい.20あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(20)強いことが明らかとなった.円錐角膜の形状変化は,角膜前面より後面に先行して出るのではないか,と注目されている14).円錐角膜症例では前面より後面のほうが形状変化の強いことが示されたが,前面が正常で後面のみ異常という症例は確認できなかった.また,PKP後およびDSAEK後の結果は各手術手技の特徴を反映した結果となった.以上より,今回算出したフーリエ解析の正常範囲を用いて強度乱視眼・病的眼の解析を行うことで,各疾患の性質をよく捉えることができ,臨床的に十分使用可能であることが示された.球面成分・正乱視成分は眼鏡装用により矯正可能であり,非対称成分・高次不正乱視成分は眼鏡装用では矯正不能な不正乱視である.また,角膜前面の不正乱視はハードコンタクトレンズによる矯正が可能であるが,角膜後面の不正乱視はハードコンタクトレンズでも矯正不能であり,角膜後面フーリエ解析のもつ意味は決して少なくないといえる.今まで,角膜後面形状解析に関しては詳細に検討されていなかった現状があり,今後さらなる検討が行われることが望まれる.IV前眼部手術前後の角膜形態評価前眼部OCTは赤外光を使用するため,組織の混濁にも精度を落とすことなく精密な撮影が可能であることは前述したとおりであるが,この特徴を利用して各種前眼部手術前後の角膜形態評価に応用されている.たとえば,角膜菲薄化のある症例の白内障手術前では,創口やサイドポートの作製部位の決定に役立ち,外傷後やPeters奇形など角膜混濁と虹彩前癒着を伴う症例の白内障手術前では手術計画を立てる際の補助となる.白内障手術後の自己閉鎖創の断面を客観的に観察することも可能で,FukudaらはCASIAを用いて白内障手術角膜切開創を経時的に撮影し,手術翌日には3.4割程度の症例でDescemet膜.離や内方弁のズレが生じたが,ほとんどの症例で2週間後には改善したと報告した15).角膜移植の分野では近年パーツ移植が増加傾向にあり,術後早期にhost-graft間の接着を確認する必要性術後1.5カ月手術翌日術後1週間術後3週間図5深層層状角膜移植術後の症例左上:手術翌日,左下:術後1週間,右上:術後3週間,右下:術後1.5カ月.手術翌日よりDescemet膜の.離(矢印)を認め,前房内にairを注入した.その後は徐々に生着し,1.5カ月後にはほとんど間隙がなくなった.(21)あたらしい眼科Vol.30,No.1,201321手術翌日術後1カ月手術翌日術後1カ月術後1週間術後2カ月図6角膜内皮移植術後の症例左上:手術翌日,左下:術後1週間,右上:術後1カ月,右下:術後2カ月.手術翌日より移植片の一部が生着不良(矢印)であったが,軽度であるため経過観察のみとした.徐々に移植片は生着し,2カ月後には完全に間隙がなくなった.がある.図5,6にCASIAの所見から角膜移植の術後管理を行った自験例を提示する.図5は深層層状角膜移植術後にDescemet膜.離を生じ,前房内にair注入を施行した症例である.注入後はDescemet膜.離も徐々に改善し,1.5カ月後にはほぼ改善した.図6は角膜内皮移植術後で,翌日からgraft生着不良部位が認められるも,経過観察のみで治癒した症例である.前眼部OCTで経時的な変化を追ったが,増悪なく経過したため術後1週間で退院とし,外来経過観察中に完全に生着した.このような症例では通常の細隙灯顕微鏡での観察はむずかしく,特に客観的な経時的変化を追うことは困難である.前眼部OCTが強力に効果を発揮した症例であった.おわりに前眼部OCTは角膜混濁眼でも撮影可能であることや,Fourierdomain方式の登場により高速・高解像度での撮影が可能となったことから,角膜形状解析において最先端の器械であるといえる.また,角膜形態評価においても,角膜の状態が悪い場合でも詳細な検査が可能であるため,前眼部手術の術前後評価に汎用されている.今後も外科的技術の進歩により,要求される検査項目も日々変わっていくことが予想されるが,現状で前眼部OCTが角膜疾患・前眼部手術の評価において重要な役割を担っていることは疑う余地もない.前眼部OCTでさらに詳細な解析がなされることで,外科的技術の精度向上や角膜疾患の早期診断につながることが期待される.文献1)OshikaT,TomidokoroA,TsujiH:Regularandirregularrefractivepowersofthefrontandbacksurfacesofthecornea.ExpEyeRes67:443-447,19982)NarooSA,CharmanWN:Changesinposteriorcornealcurvatureafterphotorefractivekeratectomy.JCataractRefractSurg26:872-878,20003)KamiyaK,OshikaT,AmanoSetal:Influenceofexcimer22あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(22)laserphotorefractivekeratectomyontheposteriorcornealsurface.JCataractRefractSurg26:867-871,20004)TomidokoroA,OshikaT,AmanoSetal:Changesinanteriorandposteriorcornealcurvaturesinkeratoconus.Ophthalmology107:1328-1332,20005)吉崎桃子,本田紀彦,天野史郎ほか:角膜形状解析装置のデータ欠損率の比較.あたらしい眼科23:397-399,20066)KawamoritaT,UozatoH,KamiyaKetal:Repeatability,reproducibility,andagreementcharacteristicsofrotatingScheimpflugphotographyandscanning-slitcornealtopographyforcornealpowermeasurement.JCataractRefractSurg35:127-133,20097)IzattJA,HeeMR,SwansonEAetal:Micrometer-scaleresolut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