特集●眼科小手術PearlsandPitfallsあたらしい眼科29(7):891.898,2012特集●眼科小手術PearlsandPitfallsあたらしい眼科29(7):891.898,2012眼瞼腫瘍切除術DaySurgeriesforSmallEyelidTumors古田実*はじめに眼瞼小腫瘤の外科的治療の基本は,全切除と再建である.良性,悪性を問わず切除するならば,病変をすべて取り除くべきであろう.しかし,良性と悪性腫瘍では,safetymarginに対する考え方が異なるうえ,良性腫瘍の場合,手術の目的によっては機能,容姿,手術侵襲の大きさを勘案して部分切除にとどめることも臨床ではありうる.小腫瘤は,あらかじめ生検することなく切除術を行うため,術前の「見た目」診断が重要であり,万が一,術前の予想に反した病理診断であったとしても患者に不利益が生じないような管理方法を講じておく必要がある.悪性腫瘍に対して迅速病理診断を併用することが標準術式として認識されがちであるが,そればかりが正しい方法ではない.本稿においては,いわゆるexcisionalbiopsy(摘出生検)〔⇔incisionalbiopsy(切開生検)〕として日帰り(外来)手術が可能な範囲の手術方法をなるべく症例のバリエーションを供覧しながら解説する.I日帰り(外来)手術可能な症例の選択眼瞼小腫瘤の手術後に,急激に進行し,重篤な後遺症が残存するような手術合併症は一般的に想像しにくい.術後処置も頻繁である必要がないため,家族や本人が協力的であれば外来手術に適していると考えられる.しかし,悪性腫瘍の不完全切除を回避し,短時間手術で整容的にも受容される手術を行うためには,症例の選択が重要である.腫瘍を切除する際に必要なチェックポイントは,臨床診断(良性,悪性,予想される病理診断名など),腫瘍の大きさ,発生部位と深達度(眼瞼皮膚,眼瞼皮下,瞼板,瞼縁,涙点,内眼角,涙丘,外眼角など),および腫瘍の発育形態(結節性,びまん性,pagetoid)である.筆者の個人的見解ではあるが,小手術として外来手術が可能なのは,全身状態はもとより1),帰宅に患者本人が自動車運転を要さず,患者と家族の協力が得られ,切除後の眼瞼欠損が上下眼瞼ともに幅1/2未満で,再建に単純縫縮と初歩的な局所皮弁で対応できるものと思われる.瞼裂長を28mmとすれば,3mmのsafetymarginを取った眼瞼全層切除の場合には,理論上は径8mmの腫瘍まで対応可能である.Pearls&Pitfalls:安全な日帰り手術をするためには,手術の目的と方法をはっきりさせ,症例の選択をすることが肝要.まずは,最も疑う臨床診断名をあげ,腫瘍の局在を細隙灯顕微鏡で詳細に観察する.II切除範囲の設定切除する病変の種類と切除目的によって変える必要がある.良性腫瘍であればsafetymarginは必要なく,病変が確実に切除されるようにする.大きな母斑や血管腫で全切除が困難な場合には,患者やその家族と相談しながら部分切除の範囲を決定するのがよい.しかし,悪性腫瘍が疑われる場合には,safetymarginを取っての完*MinoruFuruta:福島県立医科大学眼科学講座〔別刷請求先〕古田実:〒960-1295福島市光が丘1番地福島県立医科大学眼科学講座0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(15)891全切除が必要である.皮膚悪性腫瘍ガイドライン2)では,20mm以下の境界明瞭な基底細胞癌の場合には,safetymargin4mmでは95%の症例で完全切除されるが,眼部のような高再発リスク部位ではさらに切除率が低下することが知られており,術中迅速病理検査やMohs手術を併用することが推奨されている3).扁平上皮癌では,腫瘍径20mm未満でも,眼部で皮下浸潤を伴う場合には6mmのsafetymarginを推奨している.悪性黒色腫に至っては,顔面病変で腫瘍厚が2mm以上のものは,safetymarginを10.20mm,なるべく20mmに近づけて切除すべきであるとしている.脂腺癌は皮膚科ガイドラインには含まれないが,文献的には5mm以上のsafetymarginが推奨されている4,5).眼瞼腫瘍に対してこれらのガイドラインを無批判的に受け入れるならば,ほとんどすべての症例で,眼瞼欠損が広範となり,ときには眼球さえ安全のために摘出しなくてはならない.一般的に眼瞼腫瘍に関しては,眼科関連の総説や学会発表のなかでは,脂腺癌と悪性黒色腫は5mm,基底細胞癌と扁平上皮癌は3mm程度とし,なによりも術中迅速病理診断で腫瘍の残存がないようにするとの意見が多い.病変の範囲の捉え方も細隙灯顕微鏡で詳細に観察する場合と,肉眼的に決定する場合では大きく異なると思われる.実際10mm径程度までの腫瘤に対して,2.3mmで切除していても,追加切除が必要なことはほとんどない.Pearls&Pitfalls:腫瘍の辺縁がしっかりと評価できるような腫瘍切除術を行う.外来小手術で迅速病理診断を利用することは困難であるので,病理検査は通常よりも急いで結果を出してもらえるようコメントする.断端評価用の組織を合わせて採取することで,知りたい情報が確実に得られるように配慮するのも一法.万が一永久標本で,切除断端に悪性腫瘍陽性と判断されたならば,追加切除は準緊急的に行うようにする.III腫瘍切除の方法1.準備眼瞼皮膚は薄く,伸展性に富み,皮下の結合織もやわらかく疎である.このため,局所麻酔直前にマーキング892あたらしい眼科Vol.29,No.7,2012した切開線でさえ,麻酔直後の膨隆により予定とは異なったラインとなる可能性があり,眼瞼全層切除の場合には,瞼板の欠損程度にも大きく影響する.切開予定線を忠実に切開するためには,麻酔後に5.10分程度時間をおいて組織に浸透してから手術を開始すること,挟瞼器を積極的に用いることがポイントとなる.麻酔は27ゲージ(G)もしくは30G針を用いて,止血や麻酔作用時間に有利なキシロカインR注射液「1%」エピネフリン(1:100,000)含有で皮下浸潤麻酔と結膜円蓋部麻酔を行う.瞼板が病変の首座である場合には,瞼結膜側にマーキングをおいて,挟瞼器を裏表逆に使って瞼結膜側を展開するといった工夫もある.挟瞼器の使用は出血のコントロールにとても有用であるが,ネジ式のものであれば,過剰な組織の圧迫もなく,少しずつネジを緩めながら最小限のバイポーラ止血操作で済ませることができる.皮膚の良性腫瘍であっても,ネジ式であれば組織を障害しない程度の固定を行い,鑷子による無用な把持を避けながら,出血の少ない術野で,確実な切除を行うことができる.2.切開と切離基本的に皮膚と瞼縁はメスで切開,その他は剪刀で切離する.メスは円刃刀を基本とし,一般的にはフェザー外科用メスの15番もしくは10番が用いられることが多い.非常に小さな皮膚良性腫瘍を,くりぬくような場合には,11番のような尖刃刀や白内障手術用の15°ナイフを用いる.皮膚や瞼縁を切開したのちは,剪刀で必要な深さと範囲を切離していく.母斑や脂漏性角化症,尋常性疣贅などの皮膚良性腫瘍は,皮下浸潤はないため,眼輪筋への侵襲はないように心がける.良性,悪性を問わず,病理検査に提出するすべての腫瘍は,鑷子で直接把持しないようにすべきである.Pearls&Pitfalls:正確な手術と術後腫脹を軽減するために,出血のコントロールが重要.麻酔薬と挟瞼器を効果的に使用する.鑷子把持による組織破壊が病理診断と眼瞼再建の妨げになることがあるので,組織把持の持ち替えを減らして皮下組織などを把持するように心がける.(16)3.縫合糸と縫合方法の選択皮膚,瞼板,および瞼縁は11mmの角針がついた皮膚科用角針7-0ナイロン糸を基本として選択する.すべての皮膚縫合は単結紮縫合で閉創するが,牽引力のかからない部分の縫合は,皮下の連続縫合も可能である.小児や診察に非協力的な患者に対しては,抜糸が簡単な連続縫合やテープによる固定も考慮し,場合によってはポリディオキサノン(PDS)などモノフィラメントの吸収糸を用いることもある.眉毛の上下は牽引力もかかり,皮膚も厚いので皮下を7-0PDSやバイクリルなどの吸収糸で埋没縫合しておくとよい.皮膚縫合糸の抜糸Grayline睫毛瞼板角針7-0ナイロン糸瞼板の中心線図1眼瞼の直接縫合皮膚科用角針7-0ナイロン糸で瞼板をマットレス縫合する.筆者らは瞼板の断面から開始して,far-near-near-farの順に通糸して結紮が瞼板前面皮下に埋没している.このとき,瞼板を貫通する針の位置は,結紮が結膜側に出にくいように瞼板の浅いところに置き,バランスを取るために瞼縁側の通糸は比較的深部に通糸するようにする.Grayline,マイボーム腺,睫毛列の整合が得られていることを確認する.は糸の瘢痕が残らないよう,1週間前後に抜糸する.瞼縁および瞼板の縫合にはマットレス縫合を用いると創の安定性がよい(図1).瞼板の断面同士の整合が良ければgrayline,マイボーム腺開口部および睫毛列の連続性は保たれる.結紮は瞼縁から離れた部位で結膜側に出ないようにする.下眼瞼の場合このマットレス縫合と他の1針,上眼瞼の場合は他に2針の端々縫合が必要である.結膜側に縫合糸が出ないように注意する.4.手術手技a.瞼縁を含まない眼瞼皮膚腫瘍の切除腫瘍切除そのもののルールは非常にシンプルであり,疑う腫瘍に応じてsafetymarginを設定し,単純縫縮の場合には皮膚の割線方向に長軸が来るような紡錘形のデザインを行う.皮膚は必ずメスのような鋭利なもので組織に対して垂直に切開する.深部断端は腫瘍組織が直接露出しないように注意し,バイポーラで止血しながら術野を確保して剪刀で切離する.基本的に良性腫瘍ならば眼輪筋よりも浅い部位で(図2),悪性腫瘍であれば眼輪筋を一部含めて切離する.皮膚の欠損が大きければ皮弁による再建が必要になるが,一般的に高齢者の上眼瞼外眼角皮膚は周囲の皮膚を.離するだけで被覆できることが多い(図3).内眼角-下眼瞼は,ある程度の欠損には皮弁が必要となる.皮弁のデザインは成書に譲る.内眼角付近は血流も豊富で創傷治癒が良好なため,opentreatmentとすることがある(図4).ABC図254歳の男性.左下眼瞼脂漏性角化症に対する単純切除(全切除)+単純縫合A:脂漏性角化症を疑って挟瞼器下,白内障手術用15°ナイフを使用して紡錘形に皮膚切開.B:皮膚を把持しながら皮下組織を剪刀で切離して腫瘍を全摘.眼輪筋層が露出.C:周囲の皮膚を眼輪筋から.離して7-0ナイロン糸で単純縫合.この程度の大きさの皮膚欠損であれば,皮弁による形成は不要.(17)あたらしい眼科Vol.29,No.7,2012893ABCABCA図370歳の男性.左上眼瞼扁平上皮癌に対する単純切除(全切除)+単純縫合A:上眼瞼に皮下結節を伴う皮膚腫瘍があり,周囲の皮膚に余裕あり.扁平上皮癌を疑って5mmのsafetymarginを取って黄色点線の部分で皮膚眼輪筋切除を施行.睫毛列部分では十分なsafetymarginが取れないため,断端評価用皮膚切除も行い冷凍凝固術を併用.切除周囲の皮膚を.離して7-0ナイロン糸で連続縫合.B:術後2週.切除断端は腫瘍細胞陰性.C:術後3カ月.創は目立たない.図491歳の女性.左内眼角部基底細胞癌に対する単純切除(全切除)+opentreatmentA:基底細胞癌を疑って2mmのsafetymarginを取って黄色点線部分の皮膚切除.B:術後3週.皮膚欠損は修復されていた.BPearls&Pitfalls:特に下眼瞼皮膚の無理な縫縮は,のちに下眼瞼外反症の原因となりうる.小さな欠損を縫縮する場合にも,周囲皮膚を眼輪筋から.離してから縫合する.術前に切除範囲を決めて皮膚の伸展性を確認しておく.b.瞼縁部腫瘍に対する切除+opentreatment縫合や皮弁による形成を行わず,感染予防に留意しつつ自然な肉芽形成と上皮化を待つ治療方法.予定線どおりに腫瘍全切除を行う場合には,挟瞼器を使用して瞼縁および皮膚を尖刃刀で深く切開し,その後瞼板を剪刀で切離する.おもに瞼縁の小腫瘍に対して行われ,粘膜と皮膚の再生は1週間以内,組織欠損部の平坦化は数カ月かかる(図5).眼瞼内側部や外側部の比較的目立たない部位では積極的に用いてもよい(図6,7).睫毛根を残せば多少なりとも睫毛乱生が生じる.良性腫瘍の場合には不完全切除となる可能性はあるが瞼縁から離れた睫毛列を残すようにすれば,整容的にも問題となることはほとんどない(図8).術前に患者との相談が必要である.Pearls&Pitfalls:瞼縁の腫瘍を全切除+opentreatmentする場合にも,挟瞼器は有用である.皮膚と瞼縁はメスで,瞼板は剪刀で切離すると予定どおりの切除が可能である.c.眼瞼全層に及ぶ腫瘍に対する眼瞼全層切除+直接縫合±外眼角靱帯離断術腫瘍が皮膚,瞼板および瞼縁にまたがる腫瘍を切除する際に標準的に用いられる術式である.瞼板縫合後に瞼板の形態が自然なカーブを描くよう,瞼板の欠損部は五角形になるようにトリミングする.高齢者であれば,眼瞼欠損の50%程度まで閉創自体は可能である(図9)が,瞼裂長の短縮や張力増加に伴う開閉瞼異常,眼球圧迫による眼圧上昇などが生じうるため,無理は禁物である.特に上眼瞼は動きが大きい組織であり,瞼裂長の1/3以上の欠損に対しては外眼角皮膚切開もしくは外眼角靱894あたらしい眼科Vol.29,No.7,2012(18)ABCABC図571歳の男性.左上眼瞼縁上皮内癌に対する単純切除(全切除)+opentreatmentA:扁平上皮癌を疑って瞼縁を,1mmのsafetymarginで切除.睫毛列も切除した.断端評価用の皮膚生検は後日陰性を確認した.B:術後2週.瞼縁の欠損がすでに埋まり始めている.C:術後3カ月.瞼縁の欠損は緩やかな陥凹程度で,皮膚の皺襞によって隠れる.睫毛乱生が生じ,処置を要する.図677歳の女性.涙点を含む左上眼瞼内側部脂腺癌に対する単純切除(全切A除)+opentreatmentA,B:脂腺癌を疑って涙点と瞼板を含む瞼縁を黄色点線部分で切除.断端評価用の瞼板を追加切除.筆者は悪性腫瘍を疑って上涙点切除をする場合には,涙道チューブ留置術を併用しないことが多い.C,D:術後1カ月.断端の組織は平滑になっており,切除部に軽度の陥凹がみられるのみである.上涙点は閉鎖しているが流涙の訴えはない.E,F:術後1年.腫瘍の再発なく,整容的にも満足が得られている.BCDEF(19)あたらしい眼科Vol.29,No.7,2012895ABCABC図769歳の男性.涙点近傍の左上眼瞼内側部脂腺腫に対する単純切除(全切除)+opentreatmentA:良性の脂腺腫を疑うが,脂腺癌の可能性も考えて上涙点を含めた黄色点線部分での全切除を行った.涙道チューブ留置術を併用した.B:術後1週間.断端の上皮化が生じ,異物感などはない.涙点のチューブの留置状態も良い.C:術後2週.瞼縁の欠損部が修復されてきている.ABC図850歳の男性.右上眼瞼外側部母斑に対する単純切除(部分切除)+opentreatmentA:母斑を疑って患者と相談し,病変の色素性部分を切除し,整容的に悪くならない程度になるべく大きく切除希望.病理診断の結果によっては追加手術がありうることも承諾.B:手術直後.睫毛列を1.2列は残して部分切除した.C:術後2週.整容的に問題なく,結膜刺激症状なし.睫毛乱生が1本みられる.ABC図972歳の女性.右下眼瞼の基底細胞癌に対する眼瞼全層切除(全切除)+直接縫合A:基底細胞癌を疑って2mmのsafetymarginをとって黄色点線部分で五角形に眼瞼を全層切除.さらに断端評価用に耳側と鼻側の皮膚を1mm追加切除.約50%の下眼瞼欠損となった.図1のごとく直接縫合を行った.外眼角の減張は併用しなかった.B:術後1週.瞼縁の整合は良いが,皮膚の緊張が高かったためか瘢痕がやや目立つ.C:術後6カ月.皮膚瘢痕は残存するが,赤みは消失.腫瘍の再発なし.896あたらしい眼科Vol.29,No.7,2012(20)図1095歳の女性.右上眼瞼の脂腺癌に対する眼瞼全層切除(全切除)+直接縫合+外眼角靱帯離断術A,B:右上眼瞼中央部.瞼結膜側に腫瘤があり,脂腺癌が疑われた.C:2mmのsafetymarginをとって眼瞼を切除.D:断端評価用の瞼板を追加切除して病理検査に提出.E:手術直後.瞼板を直接縫合し,外眼角皮膚切開および上眼瞼の外眼角靱帯を切腱して上眼瞼の減張を図った.F:術後2週.瞼縁の整合は良く,開閉瞼にも異常なし.ABCDEF帯離断術を併用して,減張をすべきである(図10).Pearls&Pitfalls:腫瘍を十分に切離した時点で,一度閉創すべき部位を鑷子で寄せてみて,閉創できる場合にはまず瞼板縫合と皮膚縫合を行う.その後,外眼角皮膚および外眼角靱帯に減張切開を加えて瞼裂全体の形態を整えるようにすると,過不足のない減張が可能となる.上眼瞼の腫瘍で特に配慮が必要である.IV術後処置手術当日は抗菌薬入り軟膏を塗布して軽度の圧迫ガーゼ眼帯を行う.痛みや翌日の腫脹軽減のために,眼帯の上から保冷剤などでの1時間程度のクーリングが有効である.手術翌日は,自院もしくは紹介元などで診察をう(21)け,出血や縫合離開がないことを確認する.抜糸までの間は,眼脂などを拭き取り保清につとめながら1日2回創部に軟膏を塗布するように患者や家族に指導する.出血,腫脹や痛みが後から生じてくる場合には受診するように説明する.抜糸は術後1週間程度を目安に行う.おわりに切除した腫瘍が悪性腫瘍であったならば,必ず頸部リンパ節転移をターゲットとした造影CT(コンピュータ断層撮影)や造影MRI(磁気共鳴画像)などを行い,臨床病期を確定したうえで長期経過観察を行う.眼瞼小病変には必ずしも血行性転移に対する検査は必要ではなく,希望者のみに全身検査を行うのがよい.眼部は腫瘤性病変の多発領域であり,疾患頻度が低いあたらしい眼科Vol.29,No.7,2012897との認識は大きな誤解である.腫瘤があっても,訴えなければ患者とはならないだけである.忙しい日常診療の際に,少しだけ観察し写真や所見に記録しておけば診断の眼を養うことができる.本稿が,眼腫瘍や眼形成の専門家と連携しながら患者のマネージメントに参加する契機となれば幸いである.文献1)木原真一:ワンポイントアドバイス日帰り手術の全身管理(後編):術中管理と術後のフォローアップ.眼科手術23:406-409,20102)皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン作成委員会:皮膚悪性腫瘍ガイドライン.http://www.dermatol.or.jp/medical/guideline/skincancer/3)SnowSN,LarsonPO,LucarelliMJetal:Sebaceouscarcinomaoftheeyelidstreatedbymohsmicrographicsurgery:reportofninecaseswithreviewoftheliterature.DermatolSurg28:623-631,20024)渡辺彰英:悪性眼瞼腫瘍の外科的治療.眼科手術23:379384,20105)DogruM,MatsuoH,InoueMetal:Managementofeyelidsebaceouscarcinomas.Ophthalmologica211:40-43,1997898あたらしい眼科Vol.29,No.7,2012(22)